JP4389915B2 - ハイブリッド車両の降坂路走行制御装置 - Google Patents
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Description
このハイブリッド駆動装置は、エンジン回転を変速機に向かわせる軸に結合して、これらエンジンおよび変速機間にモータ/ジェネレータを具え、エンジンおよびモータ/ジェネレータ間を切り離し可能に結合する第1クラッチを有すると共に、モータ/ジェネレータおよび変速機出力軸間を切り離し可能に結合する第2クラッチをトルクコンバータの代わりに有した構成になるものである。
かかる第2クラッチのスリップ制御中において、車両が降坂路走行に差しかかった場合は、第2クラッチの駆動輪側回転数が降坂路故の駆動輪回転速度の上昇傾向に起因して高くなる傾向にある。
そして、降坂路走行が長く続いたり、急な降坂路走行である場合においては、第2クラッチが伝達トルク容量(締結力)を遂には0にされ、第2クラッチは解放状態となる。
この図13は、瞬時t1よりモータ/ジェネレータトルクTmの出力開始により第2クラッチの入力側(モータ/ジェネレータ側)回転数Niを図示のごとく上昇させ、
瞬時t2より第2クラッチを、伝達トルク容量Tc2の上昇により締結させ始めて、第2クラッチの出力側(駆動輪側)回転数Noの上昇により車両が走行を開始し、
瞬時t3より第2クラッチの伝達トルク容量Tc2を、その出力側回転数Noが目標値に一致するよう制御する、第2クラッチのスリップ制御を遂行し(第2クラッチスリップ制御フラグ参照)、
瞬時t4以後、平坦路走行から降坂路走行に移行して出力側回転数Noが上昇する結果、上記第2クラッチのスリップ制御によりその伝達トルク容量Tc2が0になって、第2クラッチの解放で上記のスリップ制御が終了した場合の動作タイムチャートである。
第2クラッチの出力側回転数Noは入力側回転数Niに一致した瞬時t5以後も図示のごとく更に上昇する。
つまり瞬時t4以後、アクセルペダルを釈放していても上記のごとく駆動輪回転速度が上昇する降坂路走行であるのに、エンジンブレーキを利用できなくして減速不足を生じさせたり、モータ/ジェネレータによる回生制動を行い得なくしてエネルギー効率の低下を招く。
動力源としてエンジンおよびモータ/ジェネレータを具え、これらエンジンおよびモータ/ジェネレータ間に伝達トルク容量を変更可能な第1クラッチを介在させ、モータ/ジェネレータから駆動輪に至る変速機を含む車輪駆動系に伝達トルク容量を変更可能な第2クラッチを挿置し、
エンジンを停止させ、第1クラッチを解放すると共に第2クラッチを締結することによりモータ/ジェネレータからの動力のみによる電気走行モードを選択可能で、第1クラッチおよび第2クラッチを共に締結することによりエンジンおよびモータ/ジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードを選択可能なハイブリッド車両を前提とし、
請求項1または2に記載のごとくに構成したものである。
前記第2クラッチの駆動輪側回転数が目標値となるよう該第2クラッチをスリップ制御している間、該第2クラッチが解放状態にされた後も該第2クラッチの駆動輪側回転数が上昇して第2クラッチのモータ/ジェネレータ側回転数に対し所定偏差内の回転数になった時、
第2クラッチを締結させて、第2クラッチおよび駆動輪間の車輪駆動系をモータ/ジェネレータにより回生制動させるよう構成したことを特徴とするものである。
前記第2クラッチの駆動輪側回転数が目標値となるよう該第2クラッチをスリップ制御している間、該第2クラッチが解放状態にされた後も該第2クラッチの駆動輪側回転数が上昇して第2クラッチのモータ/ジェネレータ側回転数に対し所定偏差内の回転数になった時、
前記動力源の出力制御により第2クラッチのモータ/ジェネレータ側回転数を駆動輪側回転数未満にして、前記解放状態にされた第2クラッチのスリップ制御を再開させるよう構成したことを特徴とするものである。
第2クラッチの上記スリップ制御中、降坂路走行に起因して第2クラッチの解放状態にもかかわらず第2クラッチの駆動輪側回転数が上昇する時は、第2クラッチおよび駆動輪間の車輪駆動系を少なくともモータ/ジェネレータで回生制動させることができ、降坂路走行での減速不足を生ずることがないし、回生制動によるエネルギー回収によりエネルギー効率の向上を図ることができる。
第2クラッチの上記スリップ制御中、第2クラッチが解放状態にされた後もその駆動輪側回転数が上昇して第2クラッチのモータ/ジェネレータ側回転数に対し所定偏差内の回転数になった時、動力源の出力制御により第2クラッチのモータ/ジェネレータ側回転数を駆動輪側回転数未満にして、前記解放状態にされた第2クラッチのスリップ制御を再開させるため、
第2クラッチの上記スリップ制御中、降坂路走行に起因して第2クラッチの解放状態にもかかわらず第2クラッチの駆動輪側回転数が上昇する時は、上記のごとく解放状態にされた第2クラッチのスリップ制御の再開により、第2クラッチおよび駆動輪間の車輪駆動系が少なくともモータ/ジェネレータに結合されていることとなり、該車輪駆動系をモータ/ジェネレータにより回生制動させることができ、降坂路走行での減速不足を生ずることがないし、回生制動によるエネルギー回収によりエネルギー効率の向上を図ることができる。
図1は、本発明の降坂路走行制御装置を具えたハイブリッド車両の車輪駆動系(パワートレーン)を、その制御システムと共に示し、
1は、第1動力源としてのモータ/ジェネレータ、2は、第2動力源としてのエンジン、3L,3Rはそれぞれ、左右駆動輪(左右後輪)である。
このモータ/ジェネレータ1およびエンジン2間、より詳しくは、軸5とエンジンクランクシャフト2aとの間に第1クラッチ6を介挿し、この第1クラッチ6によりエンジン2およびモータ/ジェネレータ1間を切り離し可能に結合する。
ここで第1クラッチ6は、伝達トルク容量を連続的または段階的に変更可能な乾式クラッチとし、例えば、電磁ソレノイドでクラッチ締結力を連続的に制御して伝達トルク容量を変更可能なものとする。
第2クラッチ7も第1クラッチ6と同様、伝達トルク容量を連続的または段階的に変更可能なものとするが、第2クラッチ7は、例えば比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
従って自動変速機4は、入力軸4aからの回転を選択変速段に応じたギヤ比で変速して出力軸4bに出力する。
この出力回転は、ディファレンシャルギヤ装置を含む終減速機8により左右後輪3L,3Rへ分配して伝達され、車両の走行に供される。
但し自動変速機4は、上記したような有段式のものに限られず、無段変速機であってもよいのは言うまでもない。
この状態でモータ/ジェネレータ1を駆動すると、当該モータ/ジェネレータ1からの出力回転のみが変速機入力軸4aに達することとなり、自動変速機4が当該入力軸4aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して変速機出力軸4bより出力する。
変速機出力軸4bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置を含む終減速機8を経て左右後輪3L,3Rに至り、車両をモータ/ジェネレータ1のみによって電気走行(EV走行)させることができる。
この状態では、エンジン2からの出力回転、または、エンジン2からの出力回転およびモータ/ジェネレータ1からの出力回転の双方が変速機入力軸4aに達することとなり、自動変速機4が当該入力軸4aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して、変速機出力軸4bより出力する。
変速機出力軸4bからの回転はその後、終減速機8を経て左右後輪3L,3Rに至り、車両をエンジン2およびモータ/ジェネレータ1の双方によってハイブリッド走行(HEV走行)させることができる。
図1の制御システムは、パワートレーンの動作点を統合制御する統合コントローラ20を具え、パワートレーンの動作点を、エンジントルク目標値tTeと、モータ/ジェネレータトルク目標値tTm(モータ/ジェネレータ回転数目標値tNmでもよい)と、第1クラッチ6の伝達トルク容量目標値tTc1と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量tTc2(クラッチ油圧ソレノイド電流でもよい)と、自動変速機4の目標変速段Gmとで規定する。
このときバッテリ21が過充電にならないよう、バッテリコントローラ23によりバッテリ21を充電制御する。
このためバッテリコントローラ23は、バッテリ21の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出し、これに関する情報を統合コントローラ20に供給する。
エンジントルク目標値tTeはエンジンコントローラ24に供給され、モータ/ジェネレータトルク目標値tTmはモータ/ジェネレータコントローラ25に供給される。
モータ/ジェネレータコントローラ25はモータ/ジェネレータ1のトルクTmがモータ/ジェネレータトルク目標値tTmとなるよう、バッテリ21からの電力によりインバータ22を介してモータ/ジェネレータ1を制御する。
クラッチコントローラ26は、一方で第1クラッチ伝達トルク容量目標値tTc1に対応したソレノイド電流を第1クラッチ6の電磁力制御ソレノイド(図示せず)に供給し、第1クラッチ6の伝達トルク容量Tc1が伝達トルク容量目標値tTc1に一致するよう第1クラッチ6を締結制御する。
クラッチコントローラ26は、他方で第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2に対応したソレノイド電流を第2クラッチ7の油圧制御ソレノイドに供給し、第2クラッチ7の伝達トルク容量Tc2が第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2に一致するよう第2クラッチ7を締結制御する。
前者の第2クラッチ7の締結制御のために、第2クラッチ7の入力側回転数Niとしてモータ/ジェネレータ1の回転数を検出するクラッチ入力側回転数センサ13、および、第2クラッチ7の出力側回転数Noとして変速機入力軸4aの回転数を検出するクラッチ出力側回転数センサ14を設け、これら回転センサ13,14からの信号をクラッチコントローラ26を経て統合コントローラ20に入力する。
図2の制御プログラムは、EVモードにおいて定時割り込みにより繰り返し実行されるメインルーチンで、
先ずステップS1において、各コントローラ23〜27からのデータを受信し、バッテリ蓄電状態SOCや、第2クラッチ7の入力側回転数Niおよび出力側回転数Noや、自動変速機の選択変速段(選択ギヤ比)Gmを読み込む。
次のステップS3においては、例えば図5に示す予定の駆動力マップをもとに車速VSPおよびアクセル開度APOから車輪駆動トルク目標値tTdを検索により求める。
その後ステップS4において、上記の車輪駆動トルク目標値tTdをモータ/ジェネレータ1とエンジン2とで如何様に分担させるかを決めるためのモータトルク目標値tTmおよびエンジントルク目標値tTeを求める。
後者のエンジントルク目標値tTeはそのままステップS18において、対応するエンジンコントローラ24へ出力するが、
前者のモータトルク目標値tTmは、次のステップS5で降坂路走行用に補正されて降坂路走行時モータトルク目標値(同じ符号tTmで示す)にされた後、ステップS18において対応するモータ/ジェネレータコントローラ25へ出力する。
ステップS21においては、降坂路走行か否かをチェックする。このチェックに際しては、例えば第2クラッチ7の伝達トルク容量目標値tTc2が0(第2クラッチ7が解放)で、動力源から駆動力が第2クラッチ7の出力側へ伝わらない状態であるのに、第2クラッチ7の出力側回転数Noが上昇して第2クラッチの入力側回転数Niに対し所定偏差内の回転数になった時(第2クラッチ7の入出力側回転数差、つまりスリップ量が所定値未満になった時)をもって降坂路走行と判定する。
先ず、ステップS3で求めた駆動トルク目標値tTdから、予め求めておいた平坦路での車両走行抵抗Tr(但し、この平坦路走行抵抗Trは第2クラッチ7の出力側に換算した値)を差し引く次式の演算により、第2クラッチ7の出力側駆動トルク目標値tToを求め、
tTo=tTd−Tr ・・・(1)
次いで、この第2クラッチ出力側駆動トルク目標値tToと、車両慣性モーメントJoと、車輪駆動系における自動変速機4の選択変速段で決まる変速比Gmと、車輪駆動系における終減速機8の最終減速比Gfとに基づき、モータ/ジェネレータ1のモータ回転数目標値tNmを次式
tNm/tTo={(Gm・Gf)2/Jo}×(1/s) ・・・(2)
の演算により求める。
このモータ回転数規範値Nmrefの演算に当たっては実際には、タスティン近似などで離散化して得られた以下の漸化式を用いて当該演算を行うこととする。
(Nmref/tNm)=Gmref(s)
=1/ (τmref・s+1) ・・・(3)
ただし、τmref :モータ/ジェネレータ制御用規範応答時定数
このモータトルク補正量ΔTmfbの演算に当たっては実際には、タスティン近似などで離散化して得られた以下の漸化式を用いて当該演算を行うこととする。
ΔTmfb={Kmp+(Kmi/s)}・Nmerr ・・・(4)
Kmp:比例制御ゲイン
Kmi:積分制御ゲイン
なお、図3のステップS21において降坂路走行でないと判定する場合は制御をステップS26に進め、ステップS22〜ステップS24で上記のごとくモータトルクフィードバック補正量ΔTmfbを求める時に用いた積分器を初期化して、この積分器に演算誤差などが蓄積されるのを防止する。
このチェックに当たっては、例えば第2クラッチ7の入力側回転数Niおよび出力側回転数No間における回転差である第2クラッチ7のスリップ量が設定値(図3のステップS21で降坂路走行の判定を行う時に用いる所定スリップ量に同じ)以上である間は、第2クラッチ7の出力側回転数Noに基づく締結制御を行うべきと判定し、第2クラッチ7のスリップ量が設定値未満になったら、第2クラッチ7の当該締結制御を行うべきでないと判定する。
つまり、第2クラッチ7の入力側回転数Niに対する出力側回転数Noの比で表される速度比E(=No/Ni)から、図6に例示するトルクコンバータ特性に基づき第2クラッチ7の伝達トルク容量係数Cclを求め、これと、第2クラッチ7の入力側回転数Niとを用いた次式の演算により、基本クラッチ伝達トルク容量目標値tTclbaseを求めてもよい。
tTclbase=Ccl×Ni2 ・・・(5)
ステップS8は、図4に示すフィードフォワード(位相)補償演算部31に相当するもので、ここにおいてはフィードフォワード(位相)補償器Gff(s)を用い、上記の基本クラッチ伝達トルク容量目標値tTclbaseに位相補償を施し、フィードフォワード制御用クラッチ伝達トルク容量目標値tTclffを演算する。
(Tclff/tTclbase)=GFF(s)={Gclref(s)/Gcl(s)}
=(τcl・s+1)/ (τclref・s+1) ・・・(6)
τcl :クラッチのモデル時定数
τclref :クラッチ制御用規範応答時定数
tTo=tTclbase−Tr ・・・(7)
次いで、この第2クラッチ出力側駆動トルク目標値tToと、車両慣性モーメントJoと、車輪駆動系における自動変速機4の選択変速段で決まる変速比Gmと、車輪駆動系における終減速機8の最終減速比Gfとに基づき、第2クラッチ7のクラッチ出力側回転数目標値tNoを次式
tNo/tTo={(Gm・Gf)2/Jo}×(1/s) ・・・(7)
の演算により求める。
tNomax=Ni−Nslipmin ・・・(8)
(Noref/tNo)=Gclref(s)
=1/ (τclref・s+1) ・・・(9)
τclref :クラッチ制御用規範応答時定数
このクラッチ伝達トルク容量補正値Tclfbの演算に当たっては実際には、タスティン近似などで離散化して得られた以下の漸化式を用いて当該演算を行うこととする。
Tclfb={Kclp+(Kcli/s)}・Noerr ・・・(10)
Kclp:比例制御ゲイン
Kcli:積分制御ゲイン
ステップS13においては、前記したフィードフォワード制御用クラッチ伝達トルク容量目標値tTclffと、上記したクラッチ伝達トルク容量補正値Tclfbとを合算して、クラッチ出力側回転数制御用クラッチ伝達トルク容量目標値Tclfbonを求め、
ステップS16においては、このクラッチ出力側回転数制御用クラッチ伝達トルク容量目標値Tclfbonを最終クラッチ伝達トルク容量目標値tTclとする。
なお、第2クラッチ7を締結状態にしたり、この定常状態に保つためのクラッチ通常制御用クラッチ伝達トルク容量目標値Tclfboffは、第2クラッチ7が実現可能な最大値とし、第2クラッチ7を解放状態にしたり、この定常状態に保つためのクラッチ通常制御用クラッチ伝達トルク容量目標値Tclfboffは、第2クラッチ7の現在における伝達トルク容量から徐々に低下させる。
ステップS14およびステップS15を通るループが選択される場合、第2クラッチ7の出力側回転数Noに基づく締結制御を行うべきでないと判定したのに呼応して、ステップS15で求めたクラッチ通常制御用クラッチ伝達トルク容量目標値Tclfboffを最終クラッチ伝達トルク容量目標値tTclとする。
つまり、先ず図7に例示する予定のマップをもとに最終クラッチ伝達トルク容量目標値tTclを実現する第2クラッチ7のクラッチ油圧を検索し、次いで図8に例示するマップをもとに当該クラッチ油圧を発生する第2クラッチ7の油圧ソレノイド電流を決定する。
かように決定した第2クラッチ7の油圧ソレノイド電流をステップS17において、対応するクラッチコントローラ26へ供給し、このコントローラにより第2クラッチ7を、その伝達トルク容量が最終クラッチ伝達トルク容量目標値tTclに一致するよう締結制御する。
基本クラッチ伝達トルク容量目標値演算手段41では、ステップS7につき前述したごとく、車両運転操作や、車両走行状態に応じた第2クラッチ7の基本的な伝達トルク容量目標値tTclbaseを演算し、
クラッチ出力側回転数目標値演算手段42では、ステップS9につき前述したごとく、この基本クラッチ伝達トルク容量目標値tTclbaseから第2クラッチ7の出力側回転数の目標値tNoを演算する。
クラッチスリップ制御フラグ生成手段45は、第2クラッチ7を解放すべき間はクラッチスリップ制御フラグFLAGを0にして第2クラッチ7の解放を指令し、
第2クラッチ7のスリップ制御を開始させるべき時にクラッチスリップ制御フラグFLAGを1にして第2クラッチ7のスリップ制御開始を指令し、
クラッチ出力側回転数制御用クラッチ伝達トルク容量目標値Tclfbonが第2クラッチ7の解放を示す0になっているのに、第2クラッチ7の出力側回転数Noが降坂路走行のため上昇して第2クラッチの入力側回転数Niに対し所定偏差内の回転数になるまでの間(第2クラッチ7の入出力側回転数差、つまりスリップ量が所定値未満になるまでの間)、クラッチスリップ制御フラグFLAGを1に保って第2クラッチ7のスリップ制御継続を指令し、
第2クラッチ7を締結すべき間はクラッチスリップ制御フラグFLAGを2にして第2クラッチ7の締結を指令する。
クラッチスリップ制御フラグFLAGが0(解放指令)または2(締結指令)である間、手段44からのモータトルク目標値tTmに対応した(このモータトルクをスリップすることなく伝達可能な)クラッチ容量tTclonをクラッチ伝達トルク容量目標値tTclとして第2クラッチ7の締結制御に用いる。
図10は、瞬時t1よりモータ/ジェネレータトルクTmの出力開始により第2クラッチ7の入力側(モータ/ジェネレータ側)回転数Niを図示のごとく上昇させ、
瞬時t2より第2クラッチ7を、伝達トルク容量Tc2の上昇により締結させ始めて、第2クラッチの出力側(駆動輪側)回転数Noの上昇により車両を走行開始させ、
瞬時t3より第2クラッチ7の伝達トルク容量Tc2を、その出力側回転数Noが目標値tNoに一致するよう制御する、第2クラッチ7のスリップ制御を遂行し(第2クラッチスリップ制御フラグFLAG=1参照)、
瞬時t4以後、平坦路走行から降坂路走行に移行して出力側回転数Noが上昇する結果、上記第2クラッチ7のスリップ制御によりその伝達トルク容量Tc2が0になって、第2クラッチ7が解放された場合の動作タイムチャートである。
このスリップ制御継続中も第2クラッチ7は解放状態のままであり、駆動輪がモータ/ジェネレータ1およびエンジン2から切り離されたままにされることから、第2クラッチ7の出力側回転数Noは降坂路走行故の駆動輪の回転上昇に伴って図示のごとくに徐々に高くなる。
つまり降坂路移行時t4以後、アクセルペダルを釈放していても上記のごとく駆動輪回転速度が上昇する降坂路走行であるのに、エンジンブレーキを利用できなくして減速不足を生じさせたり、モータ/ジェネレータによる回生制動を行い得なくしてエネルギー効率の低下を招く。
クラッチ出力側回転数制御用クラッチ伝達トルク容量目標値Tclfbonに代え、手段44で求めたモータトルク目標値tTm対応のクラッチ容量tTclonがクラッチ伝達トルク容量目標値tTclとして第2クラッチ7の締結制御に供され、第2クラッチ7がモータトルク目標値tTmを伝達可能な容量をもって締結されることとなる。
よって、従来のようにモータ/ジェネレータ1による回生制動を利用できなくて、エネルギー効率の低下を招いたり、減速不足を生じたりするようなことがない。
ところで上記はEV走行時について述べたが、第1クラッチ6をも締結させたHEV走行時は、エンジンブレーキの利用も可能になって上記減速不足の解消を更に確実なものにすることができる。
この代わりに、図3のステップS22においてモータ回転数目標値tNmを次式の演算により求め、第2クラッチ7の降坂路走行時目標スリップ回転tNslip(所定の負値)を達成するためのモータ回転数目標値tNmとしてもよい。
tNm=Gm×No+tNslip ・・・(11)
Gm:自動変速機4の変速比
No:第2クラッチ7の出力側回転数検出値
降坂路走行時モータトルク目標値演算手段47では、図3のステップS21〜S25におけるようにして、降坂路走行時モータトルク目標値tTm(HEV走行時は降坂路走行時エンジントルク目標値を含む降坂路走行時動力源トルク目標値)を求める。
つまり、第2クラッチ7の伝達トルク容量目標値tTc2が0(第2クラッチ7が解放)であるのに、第2クラッチ7の出力側回転数Noが上昇して第2クラッチの入力側回転数Niに対し所定偏差内の回転数になる時(降坂路走行判定時)以後(ステップS21)、
前記(11)式の演算により、第2クラッチ7が前記降坂路走行時目標スリップ回転tNslip(所定の負値)となるのに必要なモータ回転数目標値tNmを求め(ステップS22)、
このモータ回転数目標値tNmを達成するのに必要なモータトルク補正量ΔTmfbを算出し(ステップS24)、
図2のステップS4で求めたモータトルク目標値tTmをこのモータトルク補正量ΔTmfbだけ補正(tTm+ΔTmfb)して降坂路走行時モータトルク目標値(同じ符号tTmで示す)とし(ステップS25)、
これを図11に示すようにモータ/ジェネレータ1の駆動力制御に資する。
また、図9のクラッチスリップ制御フラグ生成手段45に代わる同名のクラッチスリップ制御フラグ生成手段49において、クラッチスリップ制御フラグFLAGを上記の降坂路走行判定時以後も1に保ってスリップ制御の継続を指令すると共に、降坂路走行判定信号を出力する。
クラッチスリップ制御フラグFLAGが1(スリップ制御指令)であり、且つ、降坂路走行判定信号が出力さる間や、クラッチスリップ制御フラグFLAGが0(解放指令)または2(締結指令)である間、手段44からのモータトルク目標値tTmに対応した(このモータトルクをスリップすることなく伝達可能な)クラッチ容量tTclonをクラッチ伝達トルク容量目標値tTclとして第2クラッチ7の締結制御に用いる。
図12は、瞬時t1よりモータ/ジェネレータトルクTmの出力開始により第2クラッチ7の入力側(モータ/ジェネレータ側)回転数Niを図示のごとく上昇させ、
瞬時t2より第2クラッチ7を、伝達トルク容量Tc2の上昇により締結させ始めて、第2クラッチの出力側(駆動輪側)回転数Noの上昇により車両を走行開始させ、
瞬時t3より第2クラッチ7の伝達トルク容量Tc2を、その出力側回転数Noが目標値tNoに一致するよう制御する、第2クラッチ7のスリップ制御を遂行し(第2クラッチスリップ制御フラグFLAG=1参照)、
瞬時t4以後、平坦路走行から降坂路走行に移行して出力側回転数Noが上昇する結果、上記第2クラッチ7のスリップ制御によりその伝達トルク容量Tc2が0になって、第2クラッチ7が解放された場合の動作タイムチャートである。
このスリップ制御継続中も第2クラッチ7は解放状態のままであり、駆動輪がモータ/ジェネレータ1およびエンジン2から切り離されたままにされることから、第2クラッチ7の出力側回転数Noは降坂路走行故の駆動輪の回転上昇に伴って図示のごとくに徐々に高くなる。
つまり降坂路移行時t4以後、アクセルペダルを釈放していても上記のごとく駆動輪回転速度が上昇する降坂路走行であるのに、エンジンブレーキを利用できなくして減速不足を生じさせたり、モータ/ジェネレータによる回生制動を行い得なくしてエネルギー効率の低下を招く。
第2クラッチ7のスリップ量を降坂路走行時目標スリップ回転tNslip(所定の負値)となすようモータ/ジェネレータ1(モータトルクTm)を駆動制御すると共に、この降坂路走行時目標スリップ回転tNslipが得られるよう第2クラッチ7の伝達トルク容量Tc2を制御するため、第2クラッチ7が降坂路走行時目標スリップ回転tNslip のスリップ状態で締結されることとなる。
よって、従来のようにモータ/ジェネレータ1による回生制動を利用できなくて、エネルギー効率の低下を招いたり、減速不足を生じたりするようなことがない。
なお上記はEV走行時について述べたが、第1クラッチ6をも締結させたHEV走行時は、エンジンブレーキの利用も可能になって上記減速不足の解消を更に確実なものにすることができる。
降坂路走行が終わって、第2クラッチ7をその出力側回転数が目標値に一致するよう締結容量制御(スリップ制御)するに際し、かかる第2クラッチ7のスリップ制御の再開がスリップ状態からのものとなり、当該スリップ制御の再開を高応答に行わせることができる。
2 エンジン
3L,3R 左右駆動輪
4 自動変速機
5 モータ/ジェネレータ軸
6 第1クラッチ
7 第2クラッチ
8 終減速機
11 アクセル開度センサ
12 車速センサ
13 クラッチ入力側回転センサ
14 クラッチ出力側回転センサ
20 統合コントローラ
21 バッテリ
22 インバータ
23 バッテリコントローラ
24 エンジンコントローラ
25 モータ/ジェネレータコントローラ
26 クラッチコントローラ
27 変速機コントローラ
31 フィードフォワード補償演算部
32 クラッチ出力側回転数目標値演算部
33 クラッチ出力側回転数規範値演算部
34 クラッチ出力側回転数偏差演算部
35 クラッチ伝達トルク容量補正値演算部
36 最終クラッチ伝達トルク容量目標値演算部
41 基本クラッチ伝達トルク容量目標値演算手段
42 クラッチ出力側回転数目標値演算手段
43 クラッチ出力側回転数制御用伝達トルク容量目標値演算手段
44 第2クラッチ締結用伝達トルク容量目標値演算手段
45 クラッチスリップ制御フラグ生成手段
46 クラッチ伝達トルク容量目標値選択手段
47 降坂路走行時モータトルク目標値演算手段
48 第2クラッチスリップ制御用伝達トルク容量目標値演算手段
49 クラッチスリップ制御フラグ生成手段
Claims (2)
- 動力源としてエンジンおよびモータ/ジェネレータを具え、これらエンジンおよびモータ/ジェネレータ間に伝達トルク容量を変更可能な第1クラッチを介在させ、モータ/ジェネレータから駆動輪に至る変速機を含む車輪駆動系に伝達トルク容量を変更可能な第2クラッチを挿置し、
エンジンを停止させ、第1クラッチを解放すると共に第2クラッチを締結することによりモータ/ジェネレータからの動力のみによる電気走行モードを選択可能で、第1クラッチおよび第2クラッチを共に締結することによりエンジンおよびモータ/ジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードを選択可能なハイブリッド車両において、
前記第2クラッチの駆動輪側回転数が目標値となるよう該第2クラッチをスリップ制御している間、該第2クラッチが解放状態にされた後も該第2クラッチの駆動輪側回転数が上昇して第2クラッチのモータ/ジェネレータ側回転数に対し所定偏差内の回転数になった時、
第2クラッチを締結させて、第2クラッチおよび駆動輪間の車輪駆動系をモータ/ジェネレータにより回生制動させるよう構成したことを特徴とするハイブリッド車両の降坂路走行制御装置。 - 動力源としてエンジンおよびモータ/ジェネレータを具え、これらエンジンおよびモータ/ジェネレータ間に伝達トルク容量を変更可能な第1クラッチを介在させ、モータ/ジェネレータから駆動輪に至る変速機を含む車輪駆動系に伝達トルク容量を変更可能な第2クラッチを挿置し、
エンジンを停止させ、第1クラッチを解放すると共に第2クラッチを締結することによりモータ/ジェネレータからの動力のみによる電気走行モードを選択可能で、第1クラッチおよび第2クラッチを共に締結することによりエンジンおよびモータ/ジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードを選択可能なハイブリッド車両において、
前記第2クラッチの駆動輪側回転数が目標値となるよう該第2クラッチをスリップ制御している間、該第2クラッチが解放状態にされた後も該第2クラッチの駆動輪側回転数が上昇して第2クラッチのモータ/ジェネレータ側回転数に対し所定偏差内の回転数になった時、
前記動力源の出力制御により第2クラッチのモータ/ジェネレータ側回転数を駆動輪側回転数未満にして、前記解放状態にされた第2クラッチのスリップ制御を再開させるよう構成したことを特徴とするハイブリッド車両の降坂路走行制御装置。
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