次に、上述の第1実施形態における実施例について説明する。
本実施例の生産装置は、板金に複数の穴を開ける加工装置を本体部に備えている。生産装置への板金のセットは作業者が行うものとする。生産装置は図1に示した装置に相当しているため、図1で示した構成と同様な構成については同一の符合を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施例の情報処理装置は、品種選択手段12が品種編集手段14と品種表示手段13の機能も備えている。そのため、品種選択手段12は品種表示手段13としての表示部を備え、表示部は品種選択の際に作業者が参照するための品種選択画面を表示する。作業者が品種選択手段12を操作して品種名、数量、および順位を入力すると、本体制御部は入力された各品種について設定記憶部に品種名とともに数量および順位を格納する。なお、項目として順位を入力しなくても、品種の入力順位がそのまま生産順位になるようにしてもよい。例えば、作業者が品種Aとその数量を入力した後に品種Bとその数量を入力すれば、品種選択手段12は品種Aの生産順位を1とし、品種Bの生産順位を2と設定する。
また、品種編集手段14の編集機能のプログラムが本体制御部のメモリに格納されているため、作業者は品種選択手段12を操作して、一度設定された順位について、変更、切り取り、貼り付け、追加、挿入、削除、および入れ替えの編集を行うことが可能である。
また、品種選択手段12は表示部として現行品種の生産の進捗を品種選択画面に表示する。品種選択画面には現行品種とその数量を表示する欄が設けられている。そして、生産装置11が現行品種を1つ生産する毎に本体制御部は1つの処理が終了したことを示す単位処理信号を品種選択手段12に送出する。品種選択画面は生産の進捗を品種選択画面に表示するために、本体制御部から単位処理信号を受け取る毎に現行品種の数量の欄の数字を1ずつカウントダウンする。
ここで、品種選択画面について説明する。
図2は品種選択画面の一例を示す図である。
図2に示すように、品種選択画面023には、現行品種以降の品種が10個設定されている。各品種について、品種名の他に順位と数量が設定されている。品種Aとして220枚を加工後、品種Bとして50枚を加工し、品種Cとして470枚加工するというように順位にしたがって加工し、順位10の品種Cまで加工する指示の生産計画が表示されている。作業者は品種選択画面23を見ながら品種選択手段12を操作して、生産計画として図2に示すように10品種先までを入力してもよいが、品種Aだけを始めに設定しておき、品種Aの生産中に順位2以降の品種を順次設定してもよい。
なお、図2では、設定された品種が品種選択画面023に表示されているが、非表示であってもよい。非表示の場合には、作業者が確認するために品種選択手段12を操作して表示を要求する旨入力すると、本体制御部が品種選択画面023に設定された品種を表示させる。ここでは、図2に示すように、設定された品種が表示される場合で説明する。
生産装置11が順位1の品種Aについて加工を開始すると、品種選択画面23の現行品種の欄に順位1の品種Aとその数量の220が表示され、順位2以降の品種とその数量が順位の若い方の欄に繰り上げられる。そして、板金が1枚加工される毎に現行品種の数量の欄の数字が1ずつカウントダウンする。現行品種の数量の欄が0になり、現行品種について設定数量の220の板金の加工が終了すると、順位1の品種Bとその数量の50が現行品種の欄に表示される。以下、順位10に設定された品種まで繰り返す。
次に、上述した構成の生産装置における情報処理装置の動作手順について説明する。ここでは、作業者が品種を一つずつ設定するものとする。また、図2に示した生産計画で生産を行うものとする。
品種選択画面023は品種設定前の初期状態では全て空欄になっている。作業者は、生産装置11に加工をさせる前、品種選択画面023を見ながら品種選択手段12を操作して生産計画を入力するために順位1に品種Aとその数量の220を設定する。作業者の入力により品種が設定されると、品種選択画面023には、順位1に相当する欄に品種Aとその数量の220が表示される。また、品種選択手段12は品種が設定された旨を示す品種設定信号を生産装置11の本体部200に送出する。
本体部200の本体制御部は、品種選択手段12から品種設定信号を受け取ると、品種選択モードから生産モードに遷移し、品種設定信号に含まれる品種名に対応する基準情報ファイルをファイル記憶部から読み出して設定記憶部に格納するとともに、品種選択画面023の現行品種の欄に品種Aとその数量の220を表示させる。
本体制御部は、設定記憶部に格納した基準情報ファイルにしたがって品種Aの加工を開始することが可能な状態にした後、生産待機状態にする。続いて、作業者が加工装置に設定数量に相当する板金をセットして加工装置のスタートスイッチを押すと、本体制御部は加工装置を動作させ、加工装置は板金に品種Aの加工を行う。本体制御部は1枚加工が終了する度に単位処理信号を品種選択手段12に送出し、品種選択画面023は本体制御部から単位処理信号を受け取る度に現行品種の数量の欄の数字を1ずつカウントダウンする。
上述のようにして品種Aについて加工を開始し、現行品種となる品種Aの生産中に、作業者が品種選択手段12を操作して品種Bとその数量の50を入力すると、本体制御部は品種選択画面023の順位1の欄に品種Bとその数量の50を表示させる。これにより、作業者は現行品種の生産後に品種Bが50枚生産されることを確認できる。その後、作業者は品種選択手段12を操作して順位2以降に生産計画の残りの品種について設定を入力する。
加工装置は、品種Aについて生産数が設定数量の220枚に達したら生産を一旦終了するが、生産終了前までに品種選択画面023の順位1に品種Bが設定されているため、生産待機状態となる。作業者が次の品種である品種Bの板金を設定数量セットしてスタートスイッチを押すと、本体制御部が加工装置に品種Bの加工を開始させる。その後、品種Aと同様にして、図2で示した生産計画の順位10の品種Cまで、加工装置が加工を行う。
なお、図2で示した生産計画の順位10の品種C以降に品種が設定されていない場合は、生産装置11は生産終了状態となる。また、終了条件が個数などで指定できない場合、例えば、部材が足りなくて部材がなくなったときや、トラブル発生時に生産を停止させるための緊急用生産終了ボタンが押されたときに生産を終了する場合が考えられる。このような場合には、品種選択手段12により終了条件を入力する必要はなく、品種選択画面023は本体制御部から受け取る生産終了を示す信号により生産が終了した旨を表示する。
また、品種Aの生産中に生産計画が変更になり、品種Aの生産の後、品種Bよりも先に品種Cを生産しなければならない場合、作業者は品種選択手段12を操作して順位1の品種Bおよびその数量と順位2の品種Cおよびその数量とを入れ換えればよい。作業者が順位を入れ換える入力をすることで、品種Aの生産の後に品種Cが生産され、続いて品種Bが生産される。そのため、本実施例の生産装置は生産計画の変更に対応できる。
また、一時的に生産を中断した後、再度生産を途中から続けたい場合、作業者は生産モードを一旦終了する前に品種選択画面023における順位1以降の順位を1つずつ下げ、さらに、現行品種の品種と数量を順位1となるようにずらしてから生産モードを終了するように品種選択手段12を操作する。これにより、生産装置11は再度生産モードに遷移したとき、順位1の品種および数量を現行品種として中断した時点から生産を再開し、作業者は順位1の数量欄で残数を確認できるため、数量の入力ミスを防ぐことができる。
また、品種Aの生産が終わる前に品種Bを優先するような生産計画の変更があった場合、作業者は品種Aの生産中に生産を中断させて品種選択手段12を操作して品種選択画面023の順位1と順位2を入れ換えた後、生産を再開させる。このように作業者が簡単な操作を行うだけで、品種Aの生産を中断し、品種Bを優先して生産可能となるため、生産計画の変更に柔軟に対応できる。
さらに、品種A生産中に穴あけ用ドリルの刃が磨耗し、その刃を交換せずに生産を続けてしまうと、バリなどによる不良品を作ってしまうため一時的に生産を中断する場合がある。このような場合においても、作業者が生産装置11を生産モードから一旦終了させてドリルの刃を交換するためのモードに遷移させた後、新しい刃に交換し、続いて、再度生産モードに遷移させるだけで、品種Aの生産を続行できる。
さらに、本実施例では、品種選択画面023において現行品種の欄を設けるようにしたが、現行品種の欄を設けずに、生産終了した品種を削除して順位を繰り上げるようにしてもよい。この場合でも、生産の進捗が表示される効果を得ることができる。また、繰り上げする方法の代わりに、現行品種の欄をカーソルで表示したり、現行品種の欄の色を変えたり、現行品種をブリンキングしたりする方法により現行品種を識別できるようにしてもよく、これらのうちいずれの方法であっても同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の効果について説明する。
図3は本発明の効果を説明するための図であり、図3(a)は従来装置の場合を示し、図3(b)は本実施例の場合を示す。
図3(a)に示すように、従来装置の場合、生産装置は品種Aの生産モードから品種選択モードに遷移するモード遷移作業031を行った後、品種選択モードにおいて作業者の入力による次の品種である品種Bを設定するための品種選択作業032を行う。続いて、品種選択モードから生産モードに遷移するモード遷移作業033を行った後、生産開始指示034の入力を待って、生産開始指示034が入力されると生産を開始していた。このように、従来装置では、一旦生産を中断してから再開するまで、モード遷移作業が多いため、非常に効率が悪く、装置の稼働率も低下していた。
一方、図3(b)に示すように、本実施例の場合、生産装置11は、従来装置のモード遷移作業031、品種選択作業032およびモード遷移作業033を行わず、ワークのセット完了後に生産開始指示034の入力があると生産を開始している。そのため、本実施例の生産装置は、従来装置に比べて効率的に生産を行うことが可能となる。さらに、作業者による作業ミスや操作ミスを防ぐことができる。
(第2実施形態)
本実施形態は、次の品種の生産準備のための処理時間が無視できない場合である。
多くの品種に対応した生産装置では、品種をパラメータとした基準情報ファイルで管理するのが一般的であるが、第1実施形態では、パラメータの読み取り、パラメータから生産条件を算出するための演算、生産条件の設定といった処理について詳細には説明していない。その理由は、次の品種の準備処理に掛かる時間が非常に短く、段取り換え時間が現行品種の生産に影響を及ぼさない場合だからである。第1実施形態の実施例では、品種Aの生産を終了してから品種Bの生産を開始するまでの間に準備処理を行っても、装置稼働率にはほとんど影響を与えなかった。
一方、背景技術でも述べたように、品種によっては非常に多くのパラメータを有していたり、複数のファイルなどに分散していたりする場合にはパラメータの読み取りに時間が掛かることになる。また、読み取ったパラメータを基にして複雑な演算を行って生産条件を求める場合には演算時間が掛かり、生産条件が多くなると設定するのに時間が掛かるようになる。このように、読み取り時間、演算時間、および設定時間が長いほど、装置稼働率を下げる要因となってしまう。生産装置が、例えば、半導体テスターの場合には、これらの処理に10分以上の時間が掛かり、準備のための処理時間が無視できないほど大きい。
上述のことを考慮して、本実施形態では、次の品種の生産準備のための処理時間が無視できない場合について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、基準情報ファイル等のファイルの構成についても第1実施形態と同様であるため、第1実施形態で説明した内容についての説明を省略する。
図4は本実施形態における情報処理装置を含む生産装置の一構成例と品種切り換えの処理を説明するための図である。
生産装置11は、本体部202と通信可能に品種設定部220が接続された構成である。本体部202は、本体制御部208に生産装置11を制御するための生産制御部49と、次の品種の生産準備を行う品種切換部230とを備えている。また、本体部202は、品種切換部230で設定された生産条件を格納するための生産条件記憶部48と、品種毎に異なる基準情報ファイルを格納するためのファイル記憶部50と、生産対象として設定された品種の基準情報ファイルを格納するための設定記憶部51と、図に示さない生産設備とを備えている。
本実施形態の情報処理装置は、本体部202の本体制御部208、生産条件記憶部48、および設定記憶部51と、品種設定部220とを有する構成である。
図4には、品種切換部230の処理手順が模式的に示されている。品種切換部230は、設定された品種の生産に必要なパラメータである品種情報を読み出す品種情報読取処理41と、品種情報を演算して品種の生産条件を求める生産条件演算処理42と、生産条件を生産設備(不図示)に設定する生産条件設定処理43を実行する。
生産装置11は、生産の際、温度コントローラで生産装置11内の温度を制御するための温度制御装置、生産されたワークが規格通りか否かを測定するための測定器、排ガスを無害化する除害装置など、加工および製造等の本体部に対して外部的に独立して動作を行う装置が設けられており、以下では、これらの装置を総称して付帯設備47と称する。
品種情報読取処理41とは、品種切換部230が品種設定手段12から品種名を受け取ると、その品種の生産に必要なパラメータをファイル記憶部50から読み取ることである。生産条件演算処理42とは、品種情報読取処理41により読み取られた品種情報を演算して生産に必要な生産条件を求めることである。生産条件設定処理43とは、求めた生産条件を生産制御部49を介して生産条件記憶部48に送出することである。
生産制御部49は品種切換部230から生産条件を受け取ると、生産条件記憶部48に格納し、生産条件の一部として温度および測定条件等の生産補助情報を生産開始時および生産中に付帯設備47に送出する。また、生産中に適時、生産条件記憶部48に格納された生産条件を参照し、生産条件を元にして演算し、生産条件の書き換えを行って生産に携わる製造装置および加工装置等の全ての生産設備を制御する。
付帯設備47では、生産開始時に生産制御部49から生産補助情報を受け取り、また、生産中に生産制御部49から生産補助情報を受け取ると、温度制御装置、測定器および除外装置がプログラムにしたがって所定の処理を実行する。そして、付帯設備47は処理結果を生産制御部49に送出する。処理結果は、例えば、現在の温度、ワークの寸法などである。
生産制御部49はプログラムにしたがって所定の処理を実行するCPUと、プログラムを格納するためのメモリとを備えている。CPUは、生産制御部49が実行する生産設備の制御のための処理と、品種切換部230の処理とを実行する。プログラムには、第1実施形態におけるプログラムと同様に、次に生産対象となる品種の生産準備を実行するための内容として品種切換部230が実行する処理の内容が記述されている。なお、本実施形態では、図4に示すように、品種切換部230を生産制御部49と独立したものとして説明する。
品種切換部230は、生産制御部49から処理の実行を許可するための信号である処理許可通知を受け取ると、処理内容を複数に分割したうちの1つの処理単位をステップとすると、その1ステップ分の処理を実行した後、1ステップ分の処理が完了したことを示すステップ完了信号を生産制御部49に送出する。
また、品種切換部230は、通常、品種情報読取処理41および生産条件演算処理42の順で処理を実行するが、必ずしもその順で処理するとは限らない。例えば、生産条件演算処理42による、既読のパラメータの単独または組み合せを用いて演算した結果がファイル名を表わしており、そのファイル内の未読のパラメータを読む必要がある場合、生産条件演算処理42から品種情報読取処理41に戻ることになる。
生産にかかる全体の時間を短縮するためには、実際に生産設備がワークの加工等の処理を行っている時間以外をできるだけ短くする必要がある。例えば、生産制御部49が生産設備に所定の処理を要求してから実際に処理が開始されるまで遅延が生じており、この遅延時間はできるだけ短い方がいい。そして、生産装置によって要求されるリアルタイム性は異なる。そこで、生産装置を3つの場合に分類し、各場合についての対処方法を説明する。
上記3つの場合とは、(1)リアルタイム性を全く要求しない、またはほとんど要求しない場合と、(2)非常に高いリアルタイム性を要求するが、1つ生産完了するまでの時間と比較してリアルタイム性を必要とする処理時間が短時間の場合と、(3)非常に高いリアルタイム性を要求し、1つ生産完了するまでの時間と比較してもリアルタイム性を必要とする時間がほとんどまたは全ての場合である。
はじめに、生産装置が(1)の場合の対処方法について説明する。
品種切換部230が実行する処理内容を予め細かいステップに分割しておく。品種切換部230は品種情報読取処理41を実行することにより基準情報ファイルからパラメータを読み取るが、例えば、その基準情報ファイルに記述された処理内容を細かいステップに分割しておく。そして、生産制御部49はプログラムにしたがって所定の処理を実行するが、途中自分の処理を中断して品種切換部230に処理の実行を許可するために処理許可通知を品種切換部230に送出する。品種切換部230は生産制御部49から処理許可通知を受け取る毎に1ステップ分だけ処理を実行し、処理が完了する毎に生産制御部49に1ステップ分処理が完了したことを示すためにステップ完了信号を送出する。以下では、品種切換部230が1ステップ分だけ実行する処理を、ステップ処理と称する。また、処理内容をステップに分割することをステップ分割と称する。
ここで、品種切換部230による品種情報読取処理41に用いられるファイルについて説明する。
ファイルには、基準情報ファイルの他に、基準情報ファイル中のパラメータに情報を供給するための補助ファイルがある。本実施形態では補助ファイルが複数あるものとし、補助ファイルはそれぞれ内容が異なる。基準情報ファイルは生産設備を動作させてワークを1つ生産するための内容が記述されている。補助ファイルには、基準情報ファイルに記述された内容を実行可能とするために、演算などの処理に用いられるデータが記述されている。補助ファイルはファイル記憶部50に格納されている。
品種切換部230の実行する処理が品種情報読取処理41であれば、品種切換部230は、生産制御部49から処理許可通知を受け取る毎に、補助ファイルへの読み取りを含む基準情報ファイルの処理を1ステップ分実行し、ステップ完了信号を生産制御部49に送出する。
次に、品種切換部230の品種情報読取処理41におけるステップ処理について説明する。なお、ここでは、品種切換部230と生産制御部49との信号の送受信についての説明は省略する。また、基準情報ファイルは複数の補助ファイルを含むものとし、補助ファイルには複数の行にデータが記述されているものとする。
図5は品種切換部の動作手順を示すフローチャートである。
図5に示すように、品種切換部230は、基準情報ファイルを1行目から読み取り始め、次の品種に必要なファイルが何かを検索する(ステップS051)。そして、最初の補助ファイルとしてファイル1が記述されていると、ファイル1をオープンして(ステップS052)、ファイル1の最初の1行を読み取って品種情報とする(ステップS053)。続いて、ファイル1の2行目を読み取って品種情報とし(ステップS054)、さらに、3行目を読み取って品種情報とする(ステップS055)。このようにして、ファイル1の記述を1行目から順番に読み取り、最後の行まで読み取ったら、ファイル1をクローズする。
その後、品種切換部230は、基準情報ファイルの読み取りに戻って、次に必要な補助ファイルが何かを検索し、次の補助ファイルとしてファイル2が記述されていると、ファイル2をオープンして、ファイル2の最初の1行を読み取って品種情報とする(ステップS056)。続いて、ファイル2の2行目を読み取って品種情報とし(ステップS057)、さらに、3行目を読み取って品種情報とする(ステップS058)。このようにして、ファイル2の記述を1行目から最後の行まで読み取った後、ファイル2をクローズする。上記ファイル1、ファイル2の場合と同様にして、基準情報ファイルに記述された補助ファイルを全て読み取り、ステップS059で最後の補助ファイルをクローズする。
上述したように、補助ファイルの1行を読む動作を1つのステップとすることで、品種切換部230の実行する品種情報読取処理41において、基準情報ファイルの読み取り処理をステップに分割可能となる。
なお、図5で説明したステップ処理では、1ステップで補助ファイルの1行を読み取る処理としたが、1つの補助ファイルをオープンしてファイル内を全て読み取って品種情報とした後、ファイルをクローズするまでを1ステップとしてもよい。その反対に、図5で説明したステップ処理よりもステップを細かく分割してもよい。例えば、1行の記述を「“ ”」等の記号による区切りや単語で複数に分割することが可能な場合、分割による1単位の読み取りを1ステップとしてもよい。さらに、1ステップの処理時間を短くする必要があれば、記述文字の1文字の読み取りを1ステップとしてもよい。
このようにステップの分割方法を自由に設定可能であるが、ステップの分割方法が問題なのではなく、1ステップあたりの処理時間が重要であり、要求されるリアルタイム性を確保可能なようにステップを決めればよい。
一般的に生産設備には、ほとんどの場合、アクチュエータが設けられているため、ワークに施す処理(以下、「ワーク生産処理」と称する)にはアクチュエータの動作が含まれることになる。上記(1)の場合のように、ワーク生産処理にリアルタイム性が必要ないものほど、アクチュエータの動作完了待ちを行っている時間が長い。この場合は、生産制御部49におけるステップ分割は必要ない。生産制御部49は、品種切換部230からステップ完了信号を受け取ると、アクチュエータが動作を完了したかを確認する。アクチュエータが動作を完了していなければ処理許可通知を品種切換部230に送出し、アクチュエータが動作を完了していれば、アクチュエータに次の動作の指令を送る。その後、再びアクチュエータの動作が完了するのを待つ状態になるので、処理許可通知を品種切換部230に送出可能となる。そのため、生産中であっても品種切換部230が並行して動作し、段取り換えに掛かる時間を短縮できる。
次に、生産装置11が上記(2)の場合の対処方法について説明する。
生産装置11が上記(2)の場合においては、上記(1)の場合の対処方法に加えて、生産制御部49がステップ処理を行うようにすればよい。特に、リアルタイム性を必要とするステップを抽出し、その間だけ品種切換部230に対して処理許可通知を送出しないようにすれば、生産中であっても品種切換部230が並行して動作し、段取り換えに掛かる時間を短縮できる。
次に、生産装置が上記(3)の場合の対処方法について説明する。
生産装置11が上記(3)の場合、品種切換部230を動作させるためのCPUを生産制御部49のCPUとは別に備えるようにする。
図6は本実施形態における他の構成例を示すブロック図である。なお、図5に示した構成と同様な構成には同一の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
図6では、品種切換部230を含む品種設定部222にCPU(不図示)と、CPUが実行するプログラムを格納するためのメモリ(不図示)とを備えている。この場合には、品種設定部222に備えたCPUが品種選択手段12、品種表示手段13および品種編集手段14を制御するようにしてもよい。
図6に示す生産装置11では、生産設備を制御する情報処理装置は、本体部204の生産制御部49、設定記憶部51、および生産条件記憶部48と、品種設定部222とを有する構成である。
なお、単にCPUを1つ追加するだけでは、2つのCPU間の通信制御およびタイミング制御の処理に問題が発生してしまうおそれがある。この問題が発生すると、生産制御部49に対してワーク生産処理以外に通信制御およびタイミング制御等の処理で浪費する時間を増やすことになり、稼働率に影響を及ぼす場合がある。
上記(3)の場合となるのは、生産制御部49でマルチタスクを必要とする処理が、1製品の生産に掛かる時間が長いときである。生産設備が、例えば、ワイヤボンダ装置であれば、その軌跡制御にリアルタイム性を必要とする。また、生産設備が外観検査装置であれば、複雑な画像処理でCPUを独占して他の処理を行えない状況になる。ワイヤボンダ装置や外観検査装置のように、生産のほとんどをワーク生産処理に費やす場合、ワイヤボンダでは軌道制御を行うCPUを独立させる。また、外観検査装置では、加工および組み立ての工程と検査の工程とをシーケンシャルに動作させるために1つの装置で実行させるために、画像処理を実行するためのCPUを装置内に別に設け、生産中のリアルタイム性の必要性を低減している。このような装置では上記(1)または(2)の場合の対処方法を用いることが可能である。なお、ワイヤボンダおよび外観検査装置とは反対に、特定の処理を独立したCPUで実行させることが難しい場合もある。
次に、上記(3)の場合の対処方法の生産装置として他の構成例について説明する。
図7は本実施形態における情報処理装置を含む生産装置の他の構成例を示すブロック図である。なお、図6に示した構成と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図7では、生産装置11は、品種切換部230を動作させるためのCPU(不図示)と、そのCPUが実行するための処理内容が記述されたプログラムを格納したメモリとを品種設定部222に備えている。そのため、品種切換部230は生産制御部49と独立して動作可能となる。なお、品種選択手段12、品種表示手段13および品種編集手段14を品種設定部222のCPUで動作させてもよく、生産制御部49のCPUで動作させてもよい。
また、図6で示した生産条件記憶部48と同種の記憶部を2つ設けており、図7に示すように、生産条件第1記憶部58と、生産条件第2記憶部68とを備えている。生産条件第2記憶部68は生産制御部49から見ると物理アドレスの異なる記憶領域であり、生産制御部49はメモリ管理技術であるページング処理により切り換えて仮想的に同一メモリ空間として使用してもよい。また、ポインタの先頭アドレスを切り換えて異なるメモリ空間のまま使用してもよい。
また、生産中に生産制御部49が生産条件第1記憶部58と生産条件第2記憶部68のどちらを参照しているかを示す記憶部使用情報を処理許可通知に含むようにしている。生産制御部49が生産中に記憶部使用情報を含む処理許可通知を品種切換部230に送出すると、品種切換部230は、生産制御部49から受け取る処理許可通知の記憶部使用情報を読み取り、生産中に使用されていない方の生産条件記憶部に次の品種の生産条件を設定する。これにより、生産制御部49は品種を切り換える際、新たに設定された方の生産条件記憶部を参照して切り換えた品種を生産することが可能となる。
また、図7に示すように、生産装置11は、次に生産する品種の準備状況を作業者に通知するための準備進捗表示手段61を備えている。準備進捗表示手段61は、表示部と、準備状況を表示するためのプログラムを有し、プログラムは品種設定部222に備えてメモリに格納されている。なお、準備進捗表示手段61の表示部は、品種表示手段13と共用であってもよい。
図7に示す生産装置11における情報処理装置は、本体部206の生産制御部49、生産条件第1記憶部58、生産条件第2記憶部68、および設定記憶部51と、品種設定部222と、準備進捗表示手段61とを有する構成である。
品種品種設定部222に備えたCPUは、品種情報読取処理41、生産条件演算処理42および生産条件設定処理43についての進捗情報を元にした進捗状況を準備進捗表示手段61に表示させる。進捗状況は、実行中の処理を示すものであってもよく、次の品種の生産準備に必要な全ての処理における実行中の処理を示すものであってもよい。なお、進捗状況として次の品種の生産準備に必要な全ての処理における実行中の処理を示す場合には、実行中の処理を正確に示す必要はなく、少なくとも進捗の概略であればよい。進捗の概略が、例えば、次の品種の生産準備を始めたばかりなのか、半分くらい処理を完了したのか、もうすぐ終わるのか、もう終わったのか等の程度の精度であれば、作業者に進捗を通知するものとして充分な効果がある。
上記準備進捗表示手段61を設けた場合の作用について説明する。
生産中に生産計画が変更され、現行品種よりも次の品種の方が優先度が高くなった場合、作業者は現行品種の生産を中断させて、次の品種の生産を開始させようとする。しかし、生産装置11が次の品種の生産準備をしている間は次の品種を生産できない。そのため、生産装置11が次の品種の生産準備を完了する前に作業者が生産装置11に現行品種の生産を中断させてしまうと、生産装置の稼動が一時停止することになる。準備進捗表示手段61を生産装置11に設けておけば、作業者は、生産装置11の稼動を一時停止させる前に、準備進捗表示手段61で次の品種の生産準備の進捗状況を確認可能となる。そのため、作業者は生産準備ができるまで生産装置11に現行品種の生産を続けさせ、次の品種の生産準備の完了を準備進捗表示手段61で確認してから現行品種の生産を中断させることで、生産装置11はすぐに次の品種の生産に開始し、装置稼働率を上げることができる。
上述したように、本実施形態では、生産設備の処理に高いリアルタイム性が要求される場合であっても、生産中に作業者が少なくとも次の品種を選択可能となるだけでなく、生産装置は次の品種の生産について内段取りの準備が可能となる。
また、準備進捗表示手段61を設けることにより、作業者は次の品種の生産準備がどの程度進んでいるか、進捗を確認することが可能であるため、段取り換えに掛かる時間を短縮でき、装置稼働率を上げることができる。
なお、図4では生産制御部49にCPUを備えるとしたが、本体制御部208にCPUを備え、本体制御部208に備えたCPUが生産制御部49の処理と品種切換部230の処理を実行するようにしてもよい。
[実施例1]
本実施例は、リアルタイム性をほとんど要求しない生産装置の一例として部品搭載機と呼ばれる組み立て装置の場合である。
部品搭載機は、基板の上に部品を搭載するためのハンドラを備え、ハンドラが予めペースト状のはんだを印刷した基板の上に抵抗やコンデンサなどの部品を異なる品種の基板毎に決められた位置に搭載する装置である。この部品搭載機を備えた生産装置11は図4に示した生産装置に相当するため、各構成についての詳細な説明は省略する。
本実施例の部品搭載機に用いられるファイルについて説明する。
図8は部品搭載機で用いられるファイルの一例を示す図である。図8では説明のために簡略化して示している。本実施例では、基板種類が品種に相当する。
図7に示すように、ファイルには、基板に関する情報が記録された基板情報ファイル071と、基板に搭載される部品に関する情報が記録された部品情報ファイル072〜074とがある。基板情報ファイル071が上述の基準情報ファイルに相当し、部品情報ファイル072〜074が上述の補助ファイルに相当する。
基板情報ファイル071には、基板の種類および名称の他に、基板の位置ずれを補正するための情報が記録されている。また、基板に搭載する複数の部品について部品毎に異なる位置と高さに搭載しなければならないため、部品に対応した部品種類と搭載位置を示すデータが記録されている。
本実施例では、部品はどの基板にも搭載可能な標準品であり、リールやトレーに保管され、そこから基板に供給される。部品情報ファイル072〜074には、部品に対応して部品種類と部品がどこに保管されているかを示す供給場所とを含むデータが記録されている。部品情報ファイル072、073、074のそれぞれは、部品A、部品B、部品Cのそれぞれに対応するファイルである。
生産制御部49と通信可能に接続された部品搭載機は、基板の位置ずれを補正して決まった位置に基板を移動させた後、部品情報ファイルに記述された供給場所から部品を取り出し、部品情報ファイルに記述された搭載位置に部品を運ぶ。このようにして、搭載する部品の数だけ供給場所から部品を取り、基板上に部品を搭載するという作業を繰り返し、基板情報ファイル071に記載された部品を全て基板に搭載すると1つの部品搭載基板の生産が完了する。
次に、品種切換部230のステップ処理について説明する。
まず、リアルタイム性について考慮すると、部品の搭載動作を繰り返すため、部品の搭載作業がリアルタイム性に大きな影響を及ぼすことになる。以下に、部品の搭載作業におけるリアルタイム性について述べる。
部品の搭載作業では、ハンドラは、部品が保管された供給場所に移動し、部品を把持(吸着の場合を含む)し、続いて、搭載位置および搭載高さに部品を移動して、把持を解除し、その後、ハンドラを上昇し、再び部品の供給場所に戻るという動作を順番に行う。この搭載作業を部品の数だけ繰り返すことになるが、搭載作業に掛かる時間は、生産制御部49との通信時間などよりも、ハンドラの移動、部品の把持、ならびに基板の搭載位置および高さへの移動によるものがほとんどである。そして、ハンドラの動作にかかる時間は、ハンドラを動作させるためのアクチュエータの動作完了待ちが大半を占めている。
アクチュエータの動作完了待ちの間、生産制御部49が動作完了を監視していなくても、アクチュエータは決められたとおりに動いて、動作が完了する。生産制御部49は、この動作完了状態を認識しなければ、次の動作の指令を出せないだけで、アクチュエータが不良品を生産してしまうほどの、生産自体への大きな問題に発展することはない。しかし、生産制御部49がアクチュエータから動作完了した旨の信号を受けるまでの時間が長すぎると、生産タクトに影響を及ぼしてしまう。
そのため、生産制御部49による、アクチュエータの動作完了の認識の遅れが生産タクトに影響しないように考慮する必要がある。アクチュエータの動作は重力や摩擦力などによる抵抗力を受ける限り、どんなに早くても数ミリ秒程度の時間がかかる。そのため、1/10秒を目安として数百マイクロ秒程度で1ステップの処理が終わるように処理内容をステップ分割すればよい。
一方、基板情報ファイル071は搭載する部品数に対応してファイル容量が変わり、非常に多くの部品を搭載する場合、品種切換部230が基板情報ファイル071を数百マイクロ秒で読み取れる保障はない。そこで、基板情報ファイル071を行単位でステップ分割する。そして、部品情報ファイルは数行程度のファイルであり、品種切換部230が部品情報ファイル1つを読み取る時間は数百マイクロ秒もあれば足りることから、1つの部品情報ファイルの読み取りを1ステップ分とする。
上述のようにして処理内容をステップ分割した場合で、生産中に次の品種の品種情報パラメータファイルを読み取って生産準備を行うまでの品種切換部230の動作について、図4および図8に示した構成を参照して説明する。
図9は本実施例の品種切換部の動作を示すフローチャートである。
生産装置11が所定の品種を生産中に、作業者が品種選択手段12を操作して次の品種を設定する指示を入力すると、品種選択手段12は品種名を含む品種設定信号を品種切換部230に送出する。品種切換部230は、品種選択手段12から品種名を含む品種設定信号を受け取ると、品種名で特定される基板情報ファイル071をファイル記憶部50から読み出してオープンにするステップ処理の後(ステップS081)、ステップ完了信号を生産制御部49に送出する。
生産制御部49は品種切換部230からステップ完了信号を受け取ると、アクチュエータが所定の動作を完了しているかチェックを行い、動作が完了していればアクチュエータに次の動作を実行させる。一方、生産制御部49は、アクチュエータの動作をチェックしたときに、アクチュエータが所定の動作を完了していなければ、処理許可通知を品種切換部230に送出して品種情報読取処理41の次のステップの処理を実行させる。このようにして、生産制御部49は自身の処理を実行するが、アクチュエータの動作完了待ちになっている場合には、品種切換部230に処理許可通知を送出しており、品種切換部230と生産制御部49は交互に処理を実行する。以下では、生産制御部49の動作についての説明を省略する。
続いて、品種切換部230は、生産制御部49から処理許可通知を受け取ると、1ステップ処理として基板情報ファイル071から基板種類を読み取った後(ステップS082)、ステップ完了信号を生産制御部49に送出する。生産制御部49から処理許可通知を受け取ると、1ステップ処理として基板情報ファイル071から部品の種類「A」とその搭載位置を読み取った後(ステップS083)、ステップ完了信号を生産制御部49に送出する。
品種切換部230は、ステップS083で部品Aについての生産条件を読み取ったので、生産制御部49から次の処理許可通知を受け取ると、生産条件演算処理42を実行することで部品Aが搭載されることを認識し、部品Aの補助ファイルを読み取る(ステップS084)。ここでは、生産条件演算処理42と品種情報読取処理41を連続して実行したが、品種切換部230は、部品Aが搭載されることを認識するステップ処理を実行した後、ステップ完了信号を生産制御部49に送出して生産制御部49の処理を優先させてもよい。
その後、品種切換部230は生産制御部49から処理許可通知を受け取ると、1ステップ処理として基板情報ファイル071から部品の種類「B」とその搭載位置を読み取った後(ステップS085)、ステップ完了信号を生産制御部49に送出する。続いて、生産制御部49から処理許可通知を受け取ると、生産条件演算処理42を実行することで、部品Bが搭載されることを認識し、部品Bの補助ファイルを読み取り(ステップS086)、ステップ完了信号を生産制御部49に送出する。以降、品種切換部230は、基板情報ファイル071に記述された全ての部品についての情報を読み取り終わるまで、補助ファイル読み取りのステップ処理を繰り返した後、基板情報ファイル071をクローズして終了する(ステップS087)。その後、生産装置11が現行品種の生産を終了すると、品種切換部230が生産条件設定処理43を実行することで、生産条件が生産条件記憶部48に転送され、生産装置11は次の品種の生産を開始できる。
本実施例では、次の品種の生産準備のために品種情報読取処理41と生産条件演算処理42を交互に実行しているが、生産条件設定処理43については準備段階では実行せず、次の品種の生産開始直前に実行する。そのため、品種情報読取処理41と生産条件演算処理42が次の品種の生産準備に必要な全ての処理を含んでいることがわかる。
また、作業者に通知すべき進捗状況について、品種切換部230の処理内容が図9に示したステップS081の基板情報ファイル071をオープンして始まり、ステップS087の基板情報ファイル071をクローズして終わることから、準備進捗表示手段61は品種情報読取処理41の進捗を表示すればよい。品種情報読取処理41による進捗度合を、図9に示したステップS081を実行する前を0%とし、ステップS087を実行した時点を100%とする処理中ステップの割合で示してもよく、基板情報ファイル071の全ての行数に対する読み取った行数の割合で示してもよい。
本実施例では、上述したように、現行品種の生産中に次の品種の生産に品種情報読取処理時に必要なパラメータを予め読み取らせることで、品種切り換えに掛かる時間を短縮できる。また、作業者が準備進捗を確認可能なため、上述したような生産計画の変更に柔軟に対応できる。
[実施例2]
本実施例は、非常に高いリアルタイム性を要求するが、1つ生産完了するまでの時間と比較してリアルタイム性を必要とする生産装置の一例として周波数調整装置の場合を示す。なお、この周波数調整装置を備えた生産装置11は図4に示した生産装置に相当するため、各構成についての詳細な説明は省略する。
周波数調整装置は、水晶発振器の周波数を調整するが、所望の周波数より高い周波数で発振するように計算された厚さの水晶板に電極が取り付けられていて、真空雰囲気の中で電極にプロービングして電圧を印加し、測定を行える状態で、電極とは逆面の水晶板に銀を熱蒸着して、所望の周波数に調整する装置である。
品種は水晶板の種類に対応しており、水晶板ごとに発振周波数や電極形状などが異なる。銀の蒸着レートは銀の温度により調節され、蒸着量は銀の蒸発部と水晶の間に設けられたシャッタの開時間をコントロールすることで決められる。水晶板に銀が蒸着されると、その重さによって水晶板の固有振動周波数が小さくなるため水晶発振器の発振周波数が小さくなる。ここで、水晶発振器の周波数特性は数ppmという精度で微調整しなければならず、所望の周波数に近いところでは微調整として、銀の温度を下げて蒸着レートを落とし、さらに所望の周波数より許容範囲を超えて小さくならないように、シャッタを適切なタイミングで閉じなければならないため、このシャッタ閉を行う際に非常に高いリアルタイム性が要求される。
周波数調整装置は、生産(調整)を開始すると水晶板上の電極にプロービングを行い、水晶に電圧を印加して発振周波数を測定できるようになる。ここまでの動作は1つの生産時間と比較した場合、非常に短い時間であるため、ここでは、この時間での品種切換部230の並列動作は考慮しないが、アクチュエータ動作が大半を占めるため並列動作を行ってもよい。
次に、図10を用いて、生産制御部49による微調整動作のステップ処理について示す。
生産を開始して調整が開始されたら、生産制御部49は処理許可通知を品種切換部230に送出して(ステップS091)、品種切換部230は処理を実行する。品種切換部230の動作に関しては、実施例1と同様であるためここではその詳細な説明を省略する。
続いて、生産制御部49が微調整開始状況を確認し(ステップS092)、微調整を開始していなければ繰り返すが、開始していたら品種切換部230の処理を不許可とするために処理許可通知を品種切換部230に送出しない(ステップS093)。次に、微調整の終了状況を確認し(ステップS094)、終了していなければ微調整の終了状況確認を繰り返し、終了したら、次の水晶板にプロービングするなどの調整準備を行い(ステップS095)、ステップS091に戻って処理許可通知を品種切換部230に送出して調整を繰り返す。
本実施例では、上述したように、周波数調整装置の生産に係る処理をステップに分割して、リアルタイム性の必要な微調整を行っていない間に、次の品種の生産準備を行うことができるため、品種切り換えに掛かる時間を短縮できる。
[実施例3]
本実施例では、非常に高いリアルタイム性を要求し、1つワークを生産完了するまでの時間と比較してもリアルタイム性を必要とする時間がほとんどである生産装置の一例として、IC(Integrated Circuit)外観検査装置の場合を示す。なお、外観検査装置を備えた生産装置は図6に示した装置に相当するため、各構成についての詳細な説明は省略する。
IC外観検査装置では、検査工程以外の工程を持たず、ICを1つずつカメラで撮像する位置に搬送し、外観検査を行い、場合によっては不良の仕分けも行う装置である。品種はICの種類に対応しており、IC毎に検査内容や、検査の条件などが異なり、品種情報もやや複雑である。
次に、IC外観検査装置で用いられるファイルについて説明する。
図10はファイルの一例を示す図である。
図10に示すように、品種毎に基準情報ファイルとして品種情報ファイル101が用意され、品種情報ファイル101にはIC種別を識別するコードがあり、品種名やIC型番を表わす。次の行以降は、外観検査の内容で、例えば、検査Aは捺印検査で、捺印文字検査の検査条件や合否判別条件などの設定が検査A条件に記される。検査Bはリード検査で、リードの間隔,太さ,長さを検査といった検査条件や合否判定が検査B条件に記される。また、モールドを形成する樹脂の欠けや傷など複数の検査の内容も記述されている。検査を行う際は、補助ファイルとなる検査A情報ファイル102に示すように、画像処理に先立って行われる前処理や、画像処理の方法,処理後により欠陥などを識別しやすくするための後処理などが記載されており、このようなファイルが検査毎に用意されている。
次に、リアルタイム性について考えると、ICの撮像位置への搬送や、不良ICの仕分けを行う時間は検査の時間に比較して非常に短く、検査時間は長くても数秒であり、検査中はCPUの処理能力を100%使用するほど他の処理を実行する余裕はない。そのため、生産制御部に備えたCPUで検査に並行して品種切換部230に処理を実行させることは非常に困難であり、図6に示したように、品種切換部230の処理を実行させるCPUを別に設ける。
次に、本実施例の情報処理装置の動作について、図6参照して説明する。ここでは、付帯設備47についての説明を省略する。
実施例1と同様にして作業者の操作により品種が指定されたら、品種切換部230は、品種情報ファイル101をオープンし、1行目のIC種別を読み、次に2行目の検査Aの検査条件を読み取ったら、検査A情報ファイル102を順次読み取って、品種情報ファイル101の3行目の検査Bの検査条件を読む。というふうに、品種情報ファイル101の最後まで読み取る。全ての読み取りを完了したら、生産条件演算処理42を実行して読み取ったデータから生産条件を演算により求める。続いて、生産条件第1記憶部58に現行品種の生産条件が格納されているかどうかを調べ、生産条件第1記憶部58に現行品種の生産条件が保存されていれば、生産条件設定処理43により生産条件を生産条件第2記憶部68に格納する。反対に、生産条件第1記憶部58に何も保存されていなければ、生産条件設定処理43により生産条件を生産条件第1記憶部58に格納する。
上述のようにして、品種切換部230が生産条件をいずれかの生産条件記憶部に格納して設定を完了したら、設定した方の生産条件記憶部の準備完了を生産制御部49に通知する。ここでは新たな制御線を増やさず簡単にするため、準備完了か否かを確認するために各生産条件記憶部の先頭に1ビット分の容量を確保し、確保した容量に準備完了フラグとなる情報を格納する。生産条件が格納されていれば準備完了フラグとして「1」の情報が格納され、生産条件が格納されていなければ準備完了フラグとして「0」の情報が格納される。このようにして、準備完了フラグを追加することで、生産制御部49が生産条件記憶部の保存状況を確認できるようにする。
生産モードに遷移した時点で、既に次の品種の設定が完了している場合があるため、生産制御部49は生産条件第1記憶部58と生産条件第2記憶部68の準備完了フラグを確認して、準備完了している方の生産条件記憶部のアドレスにポインタを設定する。どちらも準備完了ではない場合は、まだ品種の設定がされていないため、生産完了状態として次の品種の生産準備が完了するのを待つ。
次に、準備完了フラグを用いた場合の情報処理装置の動作について説明する。なお、ここでは、始めの状態で、現行品種についての生産条件が生産条件第1記憶部58に格納され、生産条件第1記憶部58の準備完了フラグを「1」とする。
生産制御部49は生産条件第1記憶部58が使用中である情報を含む処理許可通知を品種切換部230に送出する。品種切換部230は次の生産条件を生産条件第2記憶部68に設定する。生産が次の品種に切り換わると、生産制御部49は、生産条件第2記憶部68が使用中で、かつ生産条件第1記憶部58は未使用である情報を含む処理許可通知を品種切換部230に送出し、生産条件第2記憶部68にポインタを移す。その後、品種切換部230が生産条件を生産条件第1記憶部58に設定する。続いて、生産が次の品種に切り換わると、生産制御部49は生産条件第1記憶部58が使用中で、かつ生産条件第2記憶部68は未使用である情報を含む処理許可通知を品種切換部230に送出し、生産条件第1記憶部58にポインタを移す。このようにして、品種を切り換える毎に生産条件記憶部を交互に使用する。
なお、生産制御部49が準備完了フラグを「0」から「1」に変更しているが、その変更は生産条件記憶部の使用中の情報を品種切換部230に通知する際にしてもよい。また、品種切換部230が生産条件設定処理43を実行する際に、生産条件を格納した生産条件記憶部の準備完了フラグを「0」から「1」に変更してもよい。
次に、上記準備完了フラグを用いた場合の生産制御部49の動作について説明する。
生産制御部49は生産条件記憶部のどちらかのアドレスにポインタを設定したら、1つのICを撮像位置に搬送し、ポインタの示すアドレスから生産条件となる検査条件を読み取って外観検査を行う。そして、不良品の場合はマークをつけて1つのICの検査を終了する。これを所定数繰り返して、次の品種に切り換えるが、品種を切り換える際は上述の生産条件記憶部のアドレスへのポインタ切り換えを伴う。
次に、本発明の効果について説明する。
図12は本発明の効果を説明するための図であり、図12(a)は従来装置の場合を示し、図12(b)は本実施例の場合を示す。
図12に示すように、従来装置の場合では、生産装置は、品種切り換えにおける段取り換え作業および段取り換え処理として、モード遷移作業031、品種選択作業032、品種情報読取処理41、生産条件演算処理42、生産条件設定処理43、およびモード遷移作業033を行っていた。なお、モード遷移作業033は品種情報読取処理41の前に実行する装置もあるので、必ずしもこの順番とは限らない。
一方、図12(b)に示すように、本実施例の場合では、生産装置11は段取り換え作業および段取り換え処理を現行品種である品種Aの生産中に並行して行うことができ、従来装置に比べて品種切り換えに掛かる時間を短縮することができる。
なお、上記第1実施形態および第2実施形態において、基準情報ファイルと補助ファイルを本体部のファイル記憶部に格納していたが、本体部にファイル記憶部を設けずに複数の基準情報ファイルおよび補助ファイルを格納したコンピュータおよびサーバ等の情報処理装置を備え、この情報処理装置と品種選択手段12とが通信ネットワークを介して接続されるようにしてもよい。この場合、作業者が品種選択手段12を操作して情報処理装置に格納された複数の基準情報ファイルから1つを選択することで、選択された基準情報ファイルが設定記憶部に格納される。
また、ファイル記憶部、生産条件記憶部、および設定記憶部は、1つの記憶部であってもよい。この場合、記憶部の記憶領域が複数に分割され、分割された記憶領域毎に格納する情報を本体制御部が管理する。
さらに、本発明は、上記第1実施形態および第2実施形態における情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであってもよい。