JP4389094B2 - ピンタンブラー錠 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、複数列のピンとドライバーを有するピンタンブラー錠に関するものである。
【従来の技術】
【0002】
内筒および外筒によって構成されるピンタンブラー錠ならびに、一本の鍵によって複数列のピンを操作するピンタンブラー錠が公知である。ピンとドライバー各一個を一組として、それら多数組(たとえば五組)を一列に配置し、鍵山によってピンとドライバーの境界面を内筒と外筒の境界面に一致させ、内筒の回動を許す形式のピンタンブラー錠から出発して、複数列のピンとドライバーを鍵に対して放射状に配列し、一組の内筒と外筒に対してピンとドライバーの数を増加させることにより、鍵違いの数を増やし、またピッキングにより強力に防止しようとするピンタンブラー錠が各種公知である。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ピッキング防止について考えると、鍵孔に挿入されるピッキング用具(一般的にピンを操作する用具と内筒に回動力を与える用具)が簡単に作れなければ、防犯性が高いと言えるが、そのためには内筒回動の手掛かりをなるべく少なくしなければならず、究極的には鍵孔を断面円形にするところに到達する。
【0004】
また、ピッキングに対抗してピンの配列を工夫する方法も考えられるが、その場合には従来のピンタンブラー錠の構造的な概念から大きく異なる方向へ設計変更をしなければならない。たとえば、従来は鍵山を使用してピンの整列を行っていたものを、鍵の平面部に凹陥を穿設して、凹陥の深さの相違でピンの整列を行うものなどがこの形式である。
【0005】
ピッキング防止の観点から考えると、従来のピンタンブラー錠の大幅な設計変更が要求されることになるので、製造コストの面からはなかなか受け入れがたい問題があることになり、従来の基本的構造をそのまま流用し、新しい構成をそれに加えることによって、より防犯性の高い錠を獲得することが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
錠の基本的構成は、従来からある三列のピンを鍵孔の軸線に対して放射状に配置した形式のものを選択する。そして、三列の中央のピンは従来通り板鍵の鍵山で操作し、左右の二列を板鍵の側面を使用した操作に置き換える。
【0007】
板鍵の側面を操作のために利用するのは新しい試みではなく、たとえば乗用車などのドアロックに、鍵の側面に凹設した溝を利用してディスクタンブラー錠内部のディスクを整列させる形式のものが多用されているが、長い錠筒が使用できる乗用車の錠と、奥行きがせいぜい30mm程度の寸法しか取れない建物用の錠ではおのずとその発想は異ならざるを得ない。また、板鍵の側面を各種の操作に使用する形式も過去に多数の提案が試みられている。
【0008】
本発明に使用される鍵は、外形形状は一般のものと変わらないが、その鍵の側面に不定形の溝が穿設されている部分が普通のものとの相違点になる。また、鍵の側面に穿設した溝を使用して、鍵孔に対して放射方向に設置されたピンを操作するために、溝とピンを関連付けるための中間部材が必要になる。
【0009】
これまでこのような錠の構成が考えられなかった理由は、鍵の側面に溝Gを凹設して錠操作を行う形式が、もっぱらリバーシブル型の自動車用ディスクタンブラー錠に使用されていたため、並びに放射状にピンとタンブラーの複数の列を設置する形式をこの構造で操作する技術的および経済的効果が得られなかったためで、この形式で防犯性の高いピンタンブラー錠が得られると考えにくかったところに在る。ピンタンブラー錠にこの様なシステムを適用する場合の困難は、鍵の側面に凹設された溝Gによっていかにピンを正確に上昇させるかにかかっており、その構造がこれまで追求されることが無かったためである。
【0010】
また、板鍵の側面を利用して操作すると言う概念が、錠の安全性を高めると言う常識的な方向と一致しないと言う既成概念が存在するため、勢い錠内部の構造を無用に複雑化して、それに対抗しようとする傾向があり、そのため製造コストの上昇と機械的複雑さによる故障発生率の増加と言う問題を引き起こし、なかなか実用に耐える錠が生み出されなかった。
【0011】
ピンタンブラー錠型のシリンダー錠に関しては特に詳細な基礎説明をしないが、いずれにせよピン3とドライバー4の境界面を錠の内筒1と外筒2の境界面に整列させることによって内筒の回動を可能にすると言う概念に変更は無い。本発明に示す実施の形態においては、複数のピン3とドライバー4によって構成されるピンの列が三列あるが、中央の一列のピンの数が実働で六本であるとすると、その六本の間の空間を利用して中央列の左右に各五本のピンを設置することができる。この場合のピンの総数は16本であり、錠筒の長さが約30mmとなる。
【0012】
図面にしたがってその構造を説明すると、図1において、1はピンタンブラー錠の内筒、2は同じく外筒、3はピン、4はドライバーである。図中、ピン3とドライバー4は、説明のため中央、右、左の三箇所に同一断面上に示されているが、実際には中央のピン3とドライバー4のセットと左右のセットは中央のピン3の列の間に設置されており、同一断面上に現れることはない。内筒1にはその軸線に沿って鍵孔5が穿設されており、さらに内筒1には鍵孔5に近接して内筒1の軸線に直角に摺動自在のシフトバー6が設置されている。
【0013】
シフトバー6は、たとえば断面円形で、一端は鍵孔5付近に下降している左右のピン3に当接し、他端は内筒1の外周面にあって外筒2の内壁に接触している。さらに、シフトバー6はその側面に係合突起7を備えており、係合突起7は鍵孔5内にその先端を突出させている。
【0014】
一般のピンタンブラー錠と同様に、各ドライバー4はピン孔8に内挿されたスプリング9の作用下に、ピン3を鍵孔5方向へ押圧している。従って、鍵孔5に鍵Kが挿入されていない状態では、中央ピン3並びに左右のピン3はいずれもピン孔8の最下端の位置にあり、左右のピン3はシフトバー6の上端に当接している。
【0015】
本発明に使用される鍵Kは、一般のピンタンブラー錠用の鍵と同様に、板鍵の一端面に鍵山Aを有しているが、鍵山Aの刻まれた端面の左右に隣接する板面には、不定形の溝Gが連続して凹設される。鍵Kの先端部分において、溝Gはシフトバー6の係合突起7が陥入出来る位置まで下がった状態で凹設されている。従って、鍵Kを鍵孔5に挿入すると、鍵山Aが中央のピン3を押し上げ、また側面の溝Gが係合突起7をすくいあげて上昇させつつ、鍵孔5内部に侵入して行く。
【0016】
鍵Kが所定の位置まで挿入されたとき、中央のピン3とドライバー4の全てのセットは、鍵山Aによってそれらの境界面が内筒1と外筒2の境界面に整列せしめられ、また左右のピン3とドライバー4のセットは、鍵Kの溝Gによって所定の位置に押し上げられたシフトバー6に押圧されて、ピン3とドライバー4の境界面が内筒1と外筒2の境界面に整列せしめられる。これによって内筒の回動が可能となり、解錠と施錠が可能になる。
【0017】
シフトバー6の形状は各種の物が考えられるが、製造段階における容易性と、使用時の作動の円滑さを考慮するならば、断面円形の棒状の形態が最も望ましい物と推測される。また、シフトバー6自体は自重によって内筒の最下端に位置せしめれば良く、それにシフトバー6に接しているピン3のドライバー4を付勢しているスプリング9の作用が伝達されて、余分の付勢手段を設置することなく円滑な作動が保証される。
【0018】
【発明の効果】
本発明によると、鍵違いの数の多い、しかも鍵の複製がより困難で防犯性の高いピンタンブラー錠を得ることが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明によるピンタンブラー錠の内部構造を示す断面図である。
【図2】図2は本発明に使用される鍵の部分的斜面図である。
【符号の説明】
1 内筒
2 外筒
3 ピン
4 ドライバー
5 鍵孔
6 シフトバー
7 係合突起
8 ピン孔
9 スプリング
K 鍵
A 鍵山
G 溝

Claims (1)

  1. ピンとドライバーを組み合わせたセット三列を鍵孔の軸線に対して放射状に配置したピンタンブラー錠において、セットの中央の列は鍵の鍵山により操作し、それ以外のセットの列に関しては、鍵の側面に凹設した溝により移動せしめられる係合突起と一体のシフトバーを介して操作することを特徴とする、ピンタンブラー錠。
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