JP4388908B2 - 蓄光ワイヤロープ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、安全対策や景観向上などのために、暗闇などにおいても光るワイヤロープが要望されている。その対策として、先行技術1(特開平11−148115号公報)や、先行技術2(特開2000−120648号公報)が提案されている。
先行技術2は、ワイヤロープの凹状溝に微細なパウダー状の蓄光性物質を装填し、ワイヤロープ外接円を囲んで光透過性樹脂被覆を施し、あるいは光透過性樹脂を積層構造にして、中間層にガラスビーズまたはガラスパウダーからなるガラス反射層を設けたものである。
1)先行技術1では発光材(蓄光材・蛍光材)を被覆材コンパウンドに混合させ、被覆しているが、被覆材にとって発光材はあくまで不純物であって、発光材の量を多くすると被覆が剥離しやすくなったり劣化を早めることになる。従って、混合比率を10%程度に抑えなければならないので、明るくすることに限界がある。また、先行技術2ではパウダー状の蓄光性物質それ自体をロープの谷に装填するとしているが、落下させることなく均一に装填することは困難で在るから、輝度のばらつきや不均一化が生じやすい。
3)ワイヤロープはいずれの使用形態においても端末金具を備えることが必要であるが、先行技術1,2では外周に円筒状の被覆を有するので、端末金具との締結強度を高めるには被覆を剥かなければならない。このため端末加工の工数が増え、また、被覆を剥いだところから雨水や海水を毛細管現象により吸い込み、被覆がある分だけ抜け切れにくいので、ワイヤロープ本体を腐食環境にさらすことになり、断線などにより強度の低下を引き起こす可能性がある。
また本発明の第2の目的は、上記性能を備えた蓄光ワイヤロープを容易に能率よく製造する方法を提供することにある。
本発明において「蓄光ワイヤロープ」はケーブルと称されるもの、コードと称されるものを含み、用途としては、たとえば、景観資材、港湾、道路、病院テラスなどにおける転落防止柵、駐車場などの進入防止柵、標識・照明器具吊り下げ手段、農事資材などが挙げられる。
また、本発明の蓄光ワイヤロープの製造方法は、蓄光顔料と水性樹脂を混合した粘性液状蓄光材中に、素線またはストランドを複数本撚り合わせたロープ本体を通過させてロープ本体に粘性液状蓄光材を塗布浸潤させ、ついで絞り機構を通過させることによりロープ本体におけるストランド間のらせん状の谷間を越える蓄光材を除去し、乾燥させることを特徴としている。
しかも、パウダー状の蓄光顔料を谷間に埋めるのではなく、蓄光顔料と水性樹脂を混合した蓄光材であるので、ストランドやこれを構成する素線の凹凸の隅々に密着した状態で接着される。したがってロープ本体との一体性がすぐれ、ロープを湾曲しても剥離したりせず、使用や用途の自由度を高くすることができる。
また、谷間に蓄光材が存するだけで、外周に筒状の被覆が存在しないので、端末加工が容易であるとともに、コストを安くすることができる。
これによれば、蓄光顔料とのなじみがよく、多量に配合することができるので、輝度を高くすることができる。しかも、柔軟性、強靭性、弾性がすぐれると同時にストランドや素線との接着性がすぐれるので、ロープが曲げられたり、振動されたりしても剥離を起こすことなく追従できる。したがって、明るさの低下なしに用途に応じたロープ形状にすることができる。
図1ないし図3は本発明にかかる蓄光ワイヤロープの第1実施例を示している。
Aは本発明ロープであり、1はワイヤロープ本体で、複数の素線100を撚り合せたストランド10を、1本中心に配し、他を中心のストランドの周りに配して撚り合せてなる。この例では7×19の構造であり、各ストランド10は1本の中心素線の周りに6本の素線を配しその外周に12本の素線を配した1+6+12の構成からなっている。
2は前記ワイヤロープ本体1の各ストランド10,10間に作られるらせん状の谷間3を埋めるように充填され、ストランド及びこれを構成している素線100と接着している蓄光材である。
いずれにしても隣接するストランド10,10間の蓄光材2、2は縁が切られ、それぞれ単独の層の形態で谷間を埋めていて、素線と接する部分は素線間の山谷の形状に従い、谷間に侵入して接着されている。
かかる水性樹脂としては、水系飽和ポリエステルなどの水性ポリエステル樹脂系、水性エポキシ樹脂などでもよいが、好ましくは軟質なものたとえば水性ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂を含む水性ウレタン系樹脂が用いられる。
かかる水性ウレタン系樹脂を蓄光材の基材として用いることにより、ウレタンという凝集力のきわめて高いポリマー骨格に起因して、鉄鋼基材に対するすぐれた接着性、強靭性が得られると同時に、すぐれた柔軟性と弾性が得られる。このため、ワイヤロープ本体1に曲げや引っ張りが与えられても、蓄光材2はワイヤロープ本体との一体化状態をよく保ち、剥離が抑制される。
水性樹脂の下限を60%、蓄光顔料の上限40%としたのは、輝度や残光特性はよいものになるが、水性樹脂がこれを下回る量ではストランドやワイヤに対する接着性などが不十分になるからであり、水性樹脂の上限を80%、蓄光顔料の下限20%としたのは、ストランドやワイヤに対する接着性はよいものの、蓄光顔料が少ないので、輝度や残光特性が低くなるからである。
前記範囲で蓄光顔料の酸化物系蓄光剤と硫化物系蓄光剤の選定と最適配合比を決定してブレンドすることにより、経過時間に対する残光輝度を良好なものにすることができる。
他の構成は第1実施例と同様であるから、説明は援用することとし、同じ部分に同じ符号を付し、省略する。
また、いわゆる金心のほか繊維心のものでもよく、単層撚り、複層撚りのいずれでもよい。撚り形式も点接触より、面接触より、フィラー形、シール形、ウオーリントン形、ストランドロープ、IWRC入り、CFRC入りなど任意であり、構造としては、たとえば、6×7、6×24、6×Fi(29),IWRC6×Fi(25),T6×7、3×7、3×S(19),3×SFi(41)、4×24、4×S(19),4×Fi(22+7)など多種のものに適用できる。
乾燥機7はトンネル炉が用いられ、熱媒体としては高周波などでもよいが、通常は、雰囲気たとえば熱風が用いられる。乾燥機7は図示するものでは横型であるが、縦型とすることも効果的である。
絞り手段61は適度の弾性を有し、内径が小さめにとなっているので、図5(b)と図6のように、ロープ本体1は各ストランドの谷間部分を除いてほぼ全周が絞り手段61に接し、外接円を越えて表面に付着している蓄光材2´が絞られて取り除かれる。これにより、ストランドの最外側の素線半径方向表面には蓄光材は付着されなくなり、各ストランド間の蓄光材は相互に縁切り状態にされる。
また、本発明の蓄光ワイヤロープは、接着性と柔軟性がすぐれているので、曲げを与えても蓄光材の剥離が生じにくく、単純な直線状の使用形態にとどまらず種々の形状で使用できる。たとえば、図7(a)のように上下の母線A1,A2間にらせん状に巻回して捕獲網やイルミネーションを構成でき、図7(b)のように、円形状に巻いてキーホルダーやバンド類に使用できる。
また、従来の被覆タイプやテーピングタイプと違って被覆を剥いたり、テープを剥がしたりする必要がないので、端末加工が容易である。
ロープ本体は構造が7×19の、直径が6mmのステンレスロープを用いた。水性樹脂としては、水性ウレタン樹脂を使用し、蓄光顔料としては、青色の発光色を得るべく、酸化物系蓄光顔料のブルーパウダーを使用した。
水性ウレタン樹脂を80wt%、蓄光顔料を20wt%均一に混合して粘度が約300cpsの蓄光材とした。この蓄光材を槽体に収容し、常温で攪拌しておき、前記ロープ本体を速度10m/secで槽体を通過させ、硬質ウレタン製のリング状絞り手段で絞り、続いて、乾燥機中を通過させ、60℃の熱風を連続的に作用させて乾燥した。
蓄光ワイヤロープを、曲げ方向が反対となるように直径が200mmの2つのローラ間にヘアピン状に順次経由させ、100回の繰り返し曲げを行なって蓄光材の剥離の有無を目視で調べたが、剥離箇所は確認されなかった。
なお、残光輝度が5(mcd/m2)以上は非常に明るく、物体をはっきりと認識することができる状態、3は物体の輪郭まで確認できる状態、2は薄くぼやけて物体を何とか確認できる状態とされている。
2 蓄光材
6 蓄光材塗布装置
7 乾燥機
10 ストランド
20 水性樹脂
21 蓄光顔料
22 有機または無機顔料
100 素線
Claims (3)
- 素線またはストランドを複数本撚り合わせたロープ本体における素線またはストランド間のらせん状の谷間に、蓄光顔料と水性樹脂を混合した蓄光材を充填接着していることを特徴とする蓄光ワイヤロープ。
- 水性樹脂が水性ウレタン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の蓄光ワイヤロープ。
- 蓄光顔料と水性樹脂を混合した粘性液状蓄光材中に、素線またはストランドを複数本撚り合わせたロープ本体を通過させてロープ本体に粘性液状蓄光材を塗布浸潤させ、ついで絞り機構を通過させることによりロープ本体におけるストランド間のらせん状の谷間を越える蓄光材を除去し、乾燥させることを特徴とする蓄光ワイヤロープの製造方法。
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