JP4388748B2 - 水性塗料剥離剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装現場で使用される塗装器具、例えば治具、マスキング治具、塗装ブースの内壁、スノコ、スプレーガン、等に付着した塗料を除去する水性塗料剥離剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
塗装現場で使用される塗装器具及び周辺機材の塗料剥離方法として、主に苛性アルカリ水溶液をベースとした塗料剥離剤が使用されている。また、アルカリ成分に有機溶剤を含有する剥離剤が提案されている(特許文献1)。これらの塗料剥離剤については、塗膜に対する有機溶剤の浸透性及びアルカリ成分による塗膜の溶解性が塗料の剥離に対して大きく作用しているが、アルカリ成分の濃度が高いことから安全性に問題がある。使用される苛性アルカリについては、その濃度が10%以上である場合、毒物及び劇物取締法における劇物として指定されることから、取扱いが煩雑となる。
また、脂肪族二塩基酸のジアルキルエステルとエーテル類を含有する剥離用組成物が開示されているが(特許文献2)、エステルは化学的安定性に乏しく、アルカリ成分を配合することや、加温使用することは困難である。
また、ベンジルアルコールを連続層として水を分散させた油中水滴型エマルションからなる塗料剥離剤が提供されている(特許文献3〜5)。エマルションの場合は、分散した非連続層は、塗膜への接触が十分図れないため剥離効果が十分とはいえない。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−292138号公報
【特許文献2】
特表平11−502558号公報
【特許文献3】
特開平10−53734号公報
【特許文献4】
特開平10−330659号公報
【特許文献5】
特開平10−330660号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安全性が高く、塗膜の剥離性能が特に良好な水溶性塗料剥離剤を提供することである。
【0005】
【課題を解決する為の手段】
本発明は、水、芳香族アルコール、芳香族エーテル、及び可溶化剤を含有する水性塗料剥離剤を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明における芳香族アルコールは、塗膜に浸透することによって、塗膜を膨潤させるとともに、同時に用いる芳香族エーテルを可溶化させるものである。具体的に例示すると、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ヒドロキシベンジルアルコール、ヒドロキシフェネチルアルコールが挙げられる。好ましくは、ベンジルアルコールである。芳香族アルコールの使用濃度は、水性塗料剥離剤全体に対して、一般的には5〜90重量%であり、好ましくは10〜80重量%である。5重量%以下では、他の成分との相乗効果が乏しい。90重量%以上では引火点を発現するため危険性が著しく増加する。
【0007】
本発明における芳香族エーテル化合物は、塗膜に対する著しい浸透性によって、塗膜を膨潤させるものである。具体的に例示すると、ベラトロール、ヒロドキシアニソール、アルキル置換アニソール、ハロゲン原子を含有するアニソールが挙げられる。引火性及び剥離性能からブロモアニソールが好ましい。芳香族エーテルの使用濃度は、水性塗料剥離剤全体に対して、一般的には0.1〜30重量%であり、好ましくは、0.5〜20重量%である。0.1重量%以下では浸透効果が期待できず、30重量%以上では可溶化させることが困難となる。
【0008】
本発明に用いる可溶化剤は、芳香族系アルコール、芳香族エーテル化合物及び水を均一にするものである。本発明における可溶化とは、お互いに混ざり合わない溶剤を均一にお互いが混ざり合うことを意味する。一方の溶剤に他の溶剤が微粒子として分散した乳化を意味するものではない。可溶化によって組成をなすそれぞれの剤が塗膜に有効に作用することができる。乳化の場合は、分散した非連続層は、塗膜への接触が十分図れないため、効果が期待できない。また、このような場合、長期間の使用による成分変動によって、安定性が損なわれる可能性がある。本発明における可溶化剤を具体的に例示すると、芳香族スルホン酸塩、グリコールエーテルが挙げられる。好ましくは、トルエンスルホン酸ナトリウム塩、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルである。可溶化剤の使用濃度は、水性塗料剥離剤全体に対して、3〜60重量%であり、好ましくは4〜50%である。3重量%以下では可溶化能が十分ではなく、60重量%以上では他の成分の相乗効果を低減する。
【0009】
水、芳香族アルコール及び芳香族エーテルを可溶化剤を用いて均一に可溶化するが、用いる水としては、最低限1.9重量%必要である。好ましくは5重量%以上であり、更に好ましくは10重量%以上である。上限としては70重量%までであり、それ以上では剥離性能が低下する。
【0010】
本発明においてアルカリ成分を含有させることができる。アルカリ成分は、塗膜に対する溶剤成分の塗膜への浸透性を向上し、且つ、塗膜を溶解するという性能を持っている。具体的に例示すると、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、リン酸ナトリウム塩、リン酸カリウム塩、ケイ酸ナトリウム塩、ケイ酸カリウム塩、が挙げられる。好ましくは、水酸化カリウムである。アルカリ成分の使用濃度は、水性塗料剥離剤全体に対して、0.1〜10%であり、好ましくは1〜10%である。0.1重量%以下ではアルカリの効果は期待できず、10重量%以上では、より以上の効果は出ず、危険性が高くなる。
【0011】
本発明による水溶性塗料剥離剤に、必要に応じて防錆剤、界面活性剤、キレート剤、粘度調整剤、等を性能が低下しない範囲において添加することができる。
【0012】
本発明による塗料剥離剤は、更に、水に希釈して使用することができる。希釈倍率は、要求性能に応じて適宜変えればよい。
【0013】
使用温度は、室温から95℃で使用されるが、要求される性能に応じて温度を設定すればよい。
【0014】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0015】
[実施例1〜4]
表1に示す水溶性塗料剥離剤を調整し、次に示す評価方法により剥離性能を評価した。結果を表2に示した。
【0016】
塗料剥離性能の評価方法
剥離対象物:棒状鉄製テストピース
塗料:アクリルメラミン系塗料
剥離液温度:50℃
剥離性能評価方法:目視によりA及びBを判定し、次の式で剥離率を算出した。
・剥離率(%)={(B−A)/B}×100
A:剥離された面積
B:あらかじめ塗装された面積
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
[比較例1’〜5’]
表1に示した塗料剥離剤を調製し、実施例と同様に性能試験を行った。結果を表2に示した。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、特定の有機溶剤を水と可溶化することにより塗膜への浸透性を向上させ、引火性の危険性も少ない水性塗料剥離剤が得られる。
Claims (2)
- ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ヒドロキシベンジルアルコール及びヒドロキシフェネチルアルコールから選ばれる少なくとも1種の芳香族アルコール及びアニソール、メチルアニソール及びブロモアニソールから選ばれる少なくとも1種の芳香族エーテルをトルエンスルホン酸ナトリウム塩及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の可溶化剤を用いて水へ可溶化し、更に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及びテトラアルキルアンモニウム水和物から選ばれる少なくとも1種のアルカリ成分を含有してなる水性塗料剥離剤。
- 前記芳香族アルコール5〜90重量%、前記芳香族エーテル0.1〜30重量%を前記可溶化剤3〜60重量%を用いて少なくとも1.9重量%の水へ可溶化し、更に、前記アルカリ成分0.1〜10重量%を含有してなる請求項1に記載の水性塗料剥離剤。
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