JP4387514B2 - 脂取りフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚表面に分泌される皮脂や汗を拭き取る時に使用され、廃棄時に環境に与える影響を抑えた脂取りフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、皮膚表面に分泌される皮脂や汗を拭き取る時に使用されるものとして、不織布に薬剤を染み込ませたものや脂取り紙、多孔質フィルムを用いた皮脂吸収シートが知られている。不織布に薬剤を染み込ませたものは、顔の皮脂を十分に取り除くことが可能である。しかし、女性が使用する場合には顔の皮脂だけでなく、ファンデーションも拭き取ってしまうという欠点があった。
【0003】
脂取り紙は、金箔を延ばす時に使用される箔打ち紙と類似の物であり、ガンピ、サンピ、パルプ、みつまた、マニラ麻等の植物繊維と、絹繊維等の動物繊維に、泥などの無機填料を添加することによって作製される。又、植物繊維パルプと無機填料との組み合わせによって、皮脂を吸収した時に皮脂を吸収した部分とその他の部分との区別が明瞭となるように工夫されている。しかし、脂取り紙は、生産枚数を上げる必要があるために、多数の工程によって製造される箔打ち紙に比較して手間がかけられていない分、箔打ち紙と比較して皮脂を取り除く効果が十分でなく、又、拭き取り操作を何回か行う間に皮脂の吸収効果の低下や、紙が破けてしまうという欠点があった。
【0004】
一方の皮脂吸収シートは、上述したような不織布に薬剤を染み込ませて使用した時の場合や脂取り紙の欠点を解消する長所を持つものである。皮脂吸収シートは、多孔質構造を有するポリプロピレン、低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂にクレイ、炭酸カルシウムなどの無機物や液状炭化水素系重合体などの充填材を含んだものである。この皮脂吸収シートでは、樹脂フィルムが不透水性のために汗を吸収せずに、皮脂のみを吸収するので、強度の低下や、破れることがないので、複数回の使用が可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の皮脂吸収シートにおいては、不透水性の樹脂フィルムを用いるので汗を拭き取れないため、その後に汗をハンカチなどで拭き取らなければならないという問題点があった。又、使用された樹脂フィルムが使い捨てにされる場合、廃棄物として焼却する場合には有害ガスが発生するという問題点があり、或は道端などに放置された場合にはほぼ永久的にそのままの状態で残ってしまうという問題点もあった。
【0006】
本発明は上述した事情より成されたものであり、本発明の目的は、顔などの皮膚表面に分泌される皮脂と汗とを拭き取り、使用後に廃棄処分する時に環境に与える影響を低く抑えた脂取りフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、皮膚表面に分泌される皮脂や汗を拭き取る時に使用され、廃棄時において環境に与える影響を抑えた脂取りフィルムに関するものであり、本発明の上記目的は、ポリオレフィン系樹脂或は結晶性樹脂と、酢酸ビニルと、生分解性プラスチックと、無機填料と、吸水ポリマーと、顔料とを混合して成形することによって達成される。この時、前記ポリオレフィン系樹脂或は前記結晶性樹脂が55〜70wt%であり、前記酢酸ビニルが5〜15wt%であり、前記生分解性プラスチックが20〜30wt%であり、前記無機填料が5〜30wt%であり、前記吸水ポリマーが1〜10wt%であり、前記顔料が0.5〜10wt%の組成比を持つものが好適である。又、前記ポリオレフィン系樹脂はポリエチレン、ポリプロピレンの単体或は両者の混合物であり、前記結晶性樹脂はポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレートから選ばれる単独の当該結晶性樹脂であり、前記生分解性プラスチックは植物性澱粉を主成分とするものであり、前記無機填料は炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、シリコン、タルク、カオリン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の混合物であり、前記吸水ポリマーはポリアクリル酸であり、前記顔料はジルコニウム、セリウム或は亜鉛の酸化物、酸化クロム、黒、黄、赤及び茶の酸化鉄、マンガンヴァイオレット、ウルトラマリンブルー、鉄青、クロム水和物、銀粉或はアルミニウム粉の金属酸化物、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アゾ顔料、又は、シアン系顔料から選ばれる1種と酸化チタンとの組み合わせであることが望ましい。これらの場合において、前記脂取りフィルムをシート状に成形しても良い。又、前記シート状に成形された脂取りフィルムを重ね合せて、1辺を残して周辺を熱溶着によりシールして手指を挿入することができる袋状に成形することによって、或は、前記シート状に成形された脂取りフィルムを重ね合せて、対向する2辺を残して他の対向する2辺を熱溶着によりシールして手指を挿入することができる筒状に成形することによって、当該脂取りフィルムを使いやすくすることも可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の脂取りフィルム及びその製造方法について詳細に説明する。
【0009】
本発明による脂取りフィルムは、ポリオレフィン系樹脂或は結晶性樹脂、酢酸ビニル(EVA)及び生分解性プラスチックをフィルムを構成するための主成分とし、これに無機填料、吸水ポリマー、そして顔料を混合して皮脂及び汗の吸収及びフィルムの着色を行うようにするものである。
【0010】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが、結晶性樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0011】
酢酸ビニルは、合成された脂取りフィルムを軟化させるために混合される。
【0012】
生分解性プラスチックとしては、植物澱粉を主成分とするものを使用することができるが、より具体的には、トウモロコシコーンスターチを主成分とするもので、ワーナー・ランバート社が開発し、ノボンジャパン株式会社から販売されているデグラ・ノボン(商品名)などが使用できる。デグラ・ノボンには、トウモロコシコーンスターチのほかに自己酸化触媒とバインダー樹脂が含まれている。
【0013】
無機填料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、シリコン、タルク、カオリン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化マグネシウムなどを使用することができる。これらの物質は、フィルムの表面を荒らすためにフィルムに混合される。
【0014】
吸水ポリマーとしては、ポリアクリル酸塩系吸水性ポリマーが好適である。なお、吸水ポリマーは汗を吸収するために本発明の脂取りフィルムの原料として混合することが好ましいけれども、原料として混合しなくてもよい。
【0015】
顔料としては、ジルコニウム、セリウム或は亜鉛の酸化物、酸化クロム、黒、黄、赤及び茶の酸化鉄、マンガンヴァイオレット、ウルトラマリンブルー、鉄青、クロム水和物、銀粉或はアルミニウム粉の金属酸化物、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アゾ顔料、又は、シアン系顔料などから選ばれる1種と酸化チタンとの組み合わせを挙げることができる。ここで、酸化チタンを混合させるのは、隠ぺい力を持たせ、フィルムの透明感をなくし、更に皮脂を吸収した時のフィルムの色の変化を視覚化するためである。
【0016】
本発明の脂取りフィルムを作製するには、ポリオレフィン系樹脂或は結晶性樹脂を55〜70wt%、酢酸ビニルを5〜15wt%、トウモロコシ澱粉を主成分とする生分解性プラスチックであるデグラ・ノボン(商品名)を20〜30wt%、炭酸カルシウムなどの無機填料を5〜30wt%、吸水ポリマーであるポリアクリル酸を1〜10wt%、そして顔料を0.5〜10wt%の比で、各原料が配合されることが好ましい。これらの比で配合された原料は撹拌装置によって撹拌され、各原料が均一に混合された状態にされる。この時、撹拌により生じる摩擦熱は材料の軟化等を生じ均一な撹拌を行うことに悪影響を与えるので、ブレンダー、ミキサー等を使用しないことが望ましい。
【0017】
本発明による脂取りフィルムの形状は、特に制限されるものでなく、手で持てるサイズであり、使いやすい形状であれば良い。例えば、図1に示すようにシート状であっても良いし、図2に示すように袋状にしても良いし、図3に示すように筒状にしても良い。図2に示す袋状の場合にはフィルム1の三方の端を熱溶着部2として熱溶着によりシールし、図3に示す筒状の場合にはフィルム1の両サイドの端を熱溶着部2として熱溶着によりシールして、袋或は筒の部分に指を挿入できるように当該脂取りフィルムを持ちやすくしたものである。筒状の脂取りフィルムに手指を挿入すると、手指を挿入した脂取りフィルムの口11と対向する端の開口部12から手指の先端が突き出るような形態を持ち、この点で手指の先端がフィルムの外に出ない袋状の脂取りフィルムの構造と異なる。袋状の脂取りフィルムの場合において、その形状は、図2に示すように矩形状に限られず、図4(A)に示されるように三角形状であっても良く、同図(B)に示されるように袋の端部21がアール型になっていても良い。又、これらの形状に限定されず、本発明の脂取りフィルムの構成及び機能を持つものであればその形態は限定されない。
【0018】
撹拌装置によって各原料を均一に混合されたポリオレフィン系樹脂或は結晶性樹脂、酢酸ビニル、生分解性プラスチック、無機填料、吸水ポリマー、そして顔料の混合物からフィルムを作製する方法は、特に制限されるものではないが、例えば、均一に撹拌した原料を、押出し機のホッパーに投入し、投入した原料が溶融する温度以上で200℃を超えない温度範囲に加熱し、スクリューによりダイの先端から押し出されてきたチューブ状のものを冷却して巻き取る押し出し法が一般的である。押し出されたチューブは、そのまま製袋機でカットするか、シールカットして袋状或は筒状に仕上げる。
【0019】
【発明の効果】
本発明による脂取りフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどから選ばれる1種又は2種以上のポリオレフィン系樹脂或はポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレートなどから選ばれる1種の結晶性樹脂55〜70wt%、酢酸ビニル5〜15wt%、生分解性プラスチック20〜30wt%、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、シリコン、タルク、カオリンなどから選ばれる1種の無機填料5〜30wt%、ポリアクリル酸などの吸水ポリマー1〜10wt%、そしてジルコニウム、セリウム或は亜鉛の酸化物、酸化クロム、黒、黄、赤及び茶の酸化鉄、マンガンヴァイオレット、ウルトラマリンブルー、鉄青、クロム水和物、銀粉或はアルミニウム粉の金属酸化物、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アゾ顔料、又は、シアン系顔料などから選ばれる1種の顔料と酸化チタンとの混合物を0.5〜10wt%を配合された混合物で成形される。当該脂取りフィルムは、従来の多孔性フィルムによる脂取りフィルムとは異なり、無機填料の添加によってポリオレフィン系樹脂或は結晶性樹脂と酢酸ビニルと生分解性プラスチックを主成分とするフィルムの表面を荒らすことにより皮脂のフィルムへの吸着効果を高めた。又、吸水ポリマーを混合することによって、従来の脂取りフィルムでは取れなかった汗を同時に吸収することが可能となった。
【0020】
又、生分解性プラスチックをポリオレフィン系樹脂或は結晶性樹脂と酢酸ビニルに混合することによって、ポリオレフィン系樹脂のみのフィルムに比べて表面抵抗率が低下することがわかった。これにより、空気中の細かいほこりをよびにくくなり、少々机の上などに本発明による脂取りフィルムを放置しておいても、ほこりによる汚れを従来のものに比べて抑えることが可能となった。更に、生分解性プラスチックが混合されているため、微生物によって分解されやすいので、廃棄しやすいという特徴がある。
【0021】
更に、本発明による脂取りフィルムを袋状或は筒状にすることにより、手指に当該脂取りフィルムがはまるので、シート状の脂取りフィルムを使用する時よりも使いやすくすることができる。そして、筒状の脂取りフィルムの場合、手指のまわりで当該脂取りフィルムをスライドさせることが可能であるため、シート状でいちいち持ち替えていた作業を行わずに、皮脂の汚れのないシート部分を手指の中央にスライドさせるだけなので、大変使いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるシート状に成形した脂取りフィルムの概観を示す図である。
【図2】本発明による脂取りフィルムを袋状に成形したものの斜視図である。
【図3】本発明による脂取りフィルムを筒状に成形したものの斜視図である。
【図4】本発明による脂取りフィルムを袋状にした場合の形態の一例を示す図であり、(A)は三角形状であり、(B)は袋状の端部がアール型をしたものである。
【符号の説明】
1 脂取りフィルム
2 熱溶着部
11 口
12 開口部
21 端部

Claims (6)

  1. ポリオレフィン系樹脂或は結晶性樹脂と、酢酸ビニルと、生分解性プラスチックと、無機填料と、吸水ポリマーと、顔料とを混合して成形することを特徴とする脂取りフィルム。
  2. 前記ポリオレフィン系樹脂或は前記結晶性樹脂が55〜70wt%であり、前記酢酸ビニルが5〜15wt%であり、前記生分解性プラスチックが20〜30wt%であり、前記無機填料が5〜30wt%であり、前記吸水ポリマーが1〜10wt%であり、前記顔料が0.5〜10wt%の組成比を持つ請求項1に記載の脂取りフィルム。
  3. 前記ポリオレフィン系樹脂はポリエチレン、ポリプロピレンの単体或は両者の混合物であり、前記結晶性樹脂はポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレートから選ばれる単独の当該結晶性樹脂であり、前記生分解性プラスチックは植物性澱粉を主成分とするものであり、前記無機填料は炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、シリコン、タルク、カオリン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の混合物であり、前記吸水ポリマーはポリアクリル酸であり、前記顔料はジルコニウム、セリウム或は亜鉛の酸化物、酸化クロム、黒、黄、赤及び茶の酸化鉄、マンガンヴァイオレット、ウルトラマリンブルー、鉄青、クロム水和物、銀粉或はアルミニウム粉の金属酸化物、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アゾ顔料、又は、シアン系顔料から選ばれる1種と酸化チタンとの組み合わせである請求項1又は2に記載の脂取りフィルム。
  4. 前記成形された脂取りフィルムがシート状である請求項1から3のいずれかに記載の脂取りフィルム。
  5. 前記シート状に成形された脂取りフィルムを重ね合せて、1辺を残して周辺を熱溶着によりシールして手指を挿入することができる袋状に成形したことを特徴とする前記請求項1から3のいずれかに記載の脂取りフィルム。
  6. 前記シート状に成形された脂取りフィルムを重ね合せて、対向する2辺を残して他の対向する2辺を熱溶着によりシールして手指を挿入することができる筒状に成形したことを特徴とする前記請求項1から3のいずれかに記載の脂取りフィルム。
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