JP4384597B2 - キメラコイルドコイル分子 - Google Patents

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Description

関連出願
本出願は、2002年5月21日に提出された米国仮特許出願第60/382,541号の権利を請求する。その開示を本明細書に引用して援用する。
1.発明の分野
本発明は、生物学的活性が強化された新規キメラ分子であって、それの天然形態の分子に比較してそれの生産と精製の諸工程が容易である分子の新規生産方法を提供する。本発明はまた、生物学的に活性なキメラポリペプチドの生産に有用な核酸、および融合ポリペプチドそのものも提供する。
2.技術背景
膜貫通型プロテインキナーゼは、種々のポリペプチドリガンドのシグナル伝達受容体として働き、細胞の生存、増殖、ならびに多くの細胞および組織からの分化のような多様な応答を誘発する(非特許文献1:van der Geer等、1994、Annu Rev Cell Biol.10:251−337)。受容体チロシンキナーゼ(RTK)には、種々のリガンドと相互作用する能力があり、種々の細胞性応答を生じる。RTKの1つのタイプは、チロシンキナーゼであり、これは免疫グロブリンおよび表皮成長因子受容体相同ドメイン(Tie)であるTie2を有している(非特許文献2:Dumont等、1993、Oncogene 8:1293−1301;非特許文献3:Mustonen and Alitalo、1995、J.Cell Biol.129:895−898)。Tie2は内皮細胞、造血性細胞、またはそれらの胚性前駆物質上で主に発現され、正常な血管の発達に必要である(非特許文献4:Sato等、1995、Nature 376:70−74)。遺伝子導入マウスにおいてTie2の機能を破壊すると、E9.5から10.5日で胎児の死亡を生じる。微小血管に影響があり、これにより内皮細胞の数が減少し、血管の形態形成および造血に異常が生じる(非特許文献4)。従って、Tie2は、発達の間の血管形成および造血において重要な意味を持っている。
Davis等はAng1がTie2のリガンドであることを明らかにした(非特許文献5:Davis等、1996、Cell 87:1161−1169;特許文献1:国際公開番号WO96/11269)(図1)。Ang1は498個のアミノ酸を含み、アミノ末端に分泌シグナル配列を含む(図1)。ヒトAng1とマウスAng1は97.6%が同一である。残基100〜280から構成されるアミノ末端領域は、ミオシンおよびその類縁分子と、コイルドコイル四次構造を有することが知られているこれらのタンパク質中の領域において弱く結合する(図1)。第2の領域は残基280〜498により構成され、フィブリノーゲンのカルボキシ末端ドメインへの類似性が強い(図1)。Ang1は多量体であり、コイルドコイル構造とジスルフィド結合によって互いに結合している。組み換えAng1は70kDa(還元条件)の分泌された糖タンパク質であり、Tie2受容体に結合しそのKdはおよそ3.7nMであり、内皮細胞中でTie2のチロシンリン酸化を誘導する(非特許文献5)。
最近の知見によれば、Ang1タンパク質は、アミノ末端の分泌シグナル配列(残基1〜19)、特有のドメイン(残基20〜158)、コイルドコイルオリゴマー形成ドメイン(残基159〜254)、短いリンカー領域(残基255〜283)、およびカルボキシ末端のフィブリノーゲン様ドメイン(残基284〜498)により構成されている。
アンジオポエチン−1(Ang1)は血管形成についての特異的かつ重要な成長因子である(非特許文献5、非特許文献6:Yancopoulos等、2000、Nature 407:242−248)。最近の研究では、Ang1を血管の漏損を防ぐため、治療的脈管形成、治療的な内皮細胞の生存に使用できることが示されている(非特許文献7:Thurston等、2000、Nat.Med.6:460−463;非特許文献8:Chae等、2000、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.20:2573−2578;非特許文献9:Kwak等、2000、Circulation 101:2317−2342)。しかし、Ang1タンパク質は簡単には得ることができず、組み換えAng1の作製は現在の技術では極めて困難である。リガンドの生産の間にコイルドコイルドメインが多量体化することによって精製が阻まれる。
アンジオポエチン−2(Ang2)をコードする相補DNAは、プローブとしてAng1 cDNAを使用し、cDNAライブラリーを低いストリンジェンシーでスクリーニングすることによって単離された(非特許文献10:Maisonpierre等、1997、Science 277:55〜60)。Ang2は496個のアミノ酸を含み、分泌シグナル配列を有している。ヒトAng2とマウスAng2は85%が同一であり、Ang1に対してはおよそ60%が同一である。Ang1と同様に、Ang2も、アミノ末端にコイルドコイルドメインを、そしてカルボキシ末端にはフィブリノーゲン様ドメインを有する。Ang1とAng2はTie2に対して類似する結合親和性を有している。Ang2はTie2のアンタゴニストとして、Tie2のAng1により誘導されるリン酸化の阻害を通じて作用する(非特許文献10)。マウスのアンジオポエチン−3(Ang3)とヒトのアンジオポエチン−4(Ang4)は、Ang1およびAng2 cDNAを用いた低いストリンジェンシーでのハイブリダイゼーションスクリーニングによって同定された(非特許文献11:Valenzuela等、1999、Proc.Natl.Acad.Sci.96:1904−1909)。Ang3とAng4はおそらく、種間のオルソログである。Ang4はTie2をリン酸化し、一方、Ang3はTie2のAng1により誘導されるリン酸化を阻害する(非特許文献11)。
多量体型のAng1はTie2をリン酸化する。これに続いてリン酸化されたTie2は細胞質でGrb2、Grb7、Grb14、プロテインチロシンホスファターゼShp2、およびホスファチジルイノシトール3'−キナーゼ(PI 3'−キナーゼ)のp85サブユニットと、それらのSH2ドメインを介して相互作用する(非特許文献12:Jones等、1999、J.Biol.Chem.274:30896−30905)。p85とTie2との間での結合はPI 3'−キナーゼの活性化を生じ、これに続いてセリン−スレオニンキナーゼAktの誘導を生じる(非特許文献13:Kontos等、1998、Mol Cell Biol.18:4131−4140)。Ang1は、このPI 3'−キナーゼ/Aktシグナル伝達経路を介して内皮細胞の生存を誘導する(非特許文献14:Kim等、2000、Circ Res.86:24−29)。さらに、Ang1はPI 3'−キナーゼと局所接着キナーゼ(focal adhesion kinase)の活性化を通じて内皮細胞の芽形成(sprouting)を誘導する(非特許文献15:Kim等、2000、Circ Res.86:922−959)。従って、Tie2、PI 3'−キナーゼ、Akt、および局所接着キナーゼは、シグナル伝達経路を構成する重要な要素であり、内皮細胞の生存および移動を誘導する。リン酸化されたTie2はまた、Dok−R/Dok−2とも相互作用して、Dok−R/Dok−2の活性化を誘導する(非特許文献16:Jones and Dumont、1998、17:1097−1108)。リン酸化されたDok−RはrasGAP、Nck、およびCrkと相互作用する(非特許文献16)。これらのシグナル伝達分子は、細胞の移動および増殖、細胞骨格形成、ならびにRasシグナル伝達経路の調節に関係している可能性がある。最近、Dok−R/Dok−2が、活性化された受容体に対してNckおよびp21活性化キナーゼ(Pak/Pak1)を集めることに関与していることが示された(非特許文献17:Master等、2001、EMBO J.20:5919−5928)。このDok−R−Nck−Pak複合体が細胞膜の活性化されたTie2に局在化されることは、Pakキナーゼの活性化と同時に起こる(非特許文献17)。このシグナル伝達経路は内皮細胞中でのAng1によって媒介される移動に関係している可能性がある。転写のシグナル変換因子および活性化因子(STAT)もまた、Tie2の活性化の可能性のある標的であることが明らかにされている(非特許文献18:Korpelainen等、1999、Oncogene、18:1〜8)。これに続いて、リン酸化されたTie2はSTAT3およびSTAT5を活性化する(非特許文献18)。STAT3および/またはSTAT5は、多くの生物学的系において細胞の増殖、分化、移動、および生存の調節に関係していることが知られているので、内皮細胞中でのTie2の機能の一部は、STAT経路を通じて制御することができる可能性がある。
Tie2受容体は内皮細胞中だけではなく、造血幹細胞(HSC)中でも発現される。このことはAng1およびTie2について造血において別の役割がある可能性を示している(非特許文献19:Iwama等、1993、Biochem Biophys Res Commum 195:301−309)。実際、Tie2欠損マウスは造血のかなりの減少を示した(非特許文献4)。またHSCは、胚のいくつかの部位で内皮細胞にしっかりと接着する。さらに、HSCはAng1を生産し、このことはHSCが内皮細胞の移動を促進して造血環境を確立することができることを示唆している(非特許文献20:Takakura等、2000、Cell 102:199−209)。
Regeneron Pharmaceuticals,Inc社製のAng1*は、生産および精製が容易であるAng1の組み換え体バージョンである(非特許文献10、特許文献2:国際公開番号WO98/05779)。Ang1*は改変したアミノ末端と変異したCys265を含む。組み換え体Ang1およびAng1*の生物学的活性は類似している。しかしAng1*の生産においても同じ問題がいくつかあり、その理由はAng1*のサイズが大きすぎて効率的な組み換え体の作成ができないからである。
天然のAng1とAng1*のいずれもが、大規模で高価な手間のかかる精製スキームを必要とし、その結果得られる組み換えタンパク質は比較的少量である。臨床用途に意図される生物学的製剤についてコスト効果の高い簡単な精製スキームの必要性は強調し過ぎることはない。
特許文献3(米国特許第6,455,035号)では、哺乳動物にTie2受容体活性化因子を投与することにより哺乳動物中で血管の透過性を低下させるまたは阻害する方法が開示されている。さらに、上記特許文献3には、コイルドコイルドメインの多量体化がリガンドの精製の妨げとならないように、Ang1のコイルドコイルドメインを欠失させることも記載されている。
特許文献4(国際公開番号WO00/37462)には、キメラ融合Ang1(Ang1−1FD−Fc−FD)の四量体形態を作成するために、コイルドコイルドメインの欠失および免疫グロブリンのFc部分の挿入により、Ang1の生物学的活性を増強する方法が開示されている。しかし、特許文献4には、Ang1−1FD−Fc−FDは、Tie2受容体のリン酸化を刺激するその能力に関してAng1*と同等であることが開示されている。
国際公開番号WO96/11269 国際公開番号WO98/05779 米国特許第6,455,035号 国際公開番号WO00/37462 van der Geer等、1994、Annu Rev Cell Biol.10:251−337 Dumont等、1993、Oncogene 8:1293−1301 Mustonen and Alitalo、1995、J.Cell Biol.129:895−898 Sato等、1995、Nature 376:70−74 Davis等、1996、Cell 87:1161−1169 Yancopoulos等、2000、Nature 407:242−248 Thurston等、2000、Nat.Med.6:460−463 Chae等、2000、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.20:2573−2578 Kwak等、2000、Circulation 101:2317−2342 Maisonpierre等、1997、Science 277:55〜60 Valenzuela等、1999、Proc.Natl.Acad.Sci.96:1904−1909 Jones等、1999、J.Biol.Chem.274:30896−30905 Kontos等、1998、Mol Cell Biol.18:4131−4140 Klm等、2000、Circ Res.86:24−29 非特許文献14:Kim等、2000、Circ Res.86:922−959 Jones and Dumont、1998、17:1097−1108 Master等、2001、EMBO J.20:5919−5928 Korpelainen等、1999、Oncogene、18:1〜8 Iwama等、1993、Biochem Biophys Res Commum 195:301−309 Takakura等、2000、Cell 102:199−209
従って、天然の分子と実質的に同様またはそれ以上の効力を有し、可溶性であり容易に生産できる改変されたリガンド分子を作製することが当該分野で求められている。
特許請求の範囲に記載されている発明は、上記の課題を克服し、アンジオポエチンファミリーに属する成長因子を含む細胞上の特異的受容体に結合する、新規の生物学的に活性な、可溶性形態のキメラポリペプチドリガンドを提供する。このようなポリペプチドリガンドは、内皮細胞、造血幹細胞、および内皮前駆細胞のようなレセプターを保有している細胞の分化機能を促進もしくは阻害すること、ならびに/またはそれらの表現型、例えば、成長、生存、収縮性、移動、および/もしくは増殖に影響を与えることにおいて有用である。本発明はまた、このようなポリペプチドリガンドをコードする核酸、ならびにこのようなポリペプチドリガンドを生産するための原核生物および真核生物の両方の発現系も提供する。本発明に従って、本明細書中に記載されるポリペプチドリガンドの可溶性形態を使用して、受容体を発現する細胞中での生物学的応答を促進または阻害することができる。
本発明は、リガンドの受容体結合ドメインまたは受容体のリガンド結合ドメインのいずれかに連結させられたコイルドコイルドメインを含む、コイルドコイルキメラ分子に関する。これは、生物学的に活性な多量体を形成する。このキメラ分子はその非多量体形態では生物学的に不活性である。
本発明のコイルドコイルドメインの供給源または構造には全く制限はないが、1つの態様では、コイルドコイルドメインとしては、基質タンパク質ファミリー、転写因子ファミリー、成長因子ファミリー、または分泌タンパク質ファミリーに属するタンパク質が保有しているコイルドコイルドメインが挙げられる。さらに、コイルドコイルドメインは基質タンパク質のもの、特に、軟骨基質タンパク質または軟骨オリゴマー基質タンパク質のコイルドコイルドメインである場合もある。
コイルドコイルキメラ分子中では、受容体結合ドメインは種々の受容体、特に、Tie2またはTie1受容体に結合することができる。1つの態様では、受容体結合ドメインは、アンジオポエチン−1、アンジオポエチン−2、アンジオポエチン−3、またはアンジオポエチン−4のフィブリノーゲン様ドメインであり得る。
本発明の別の態様では、コイルドコイルキメラ分子を、受容体の細胞外ドメインに直接または間接的に連結することができる。
コイルドコイルキメラ分子中では、リガンド結合ドメインは、アンジオポエチン−1、アンジオポエチン−2、アンジオポエチン−3、またはアンジオポエチン−4に結合することができる。リガンド結合ドメインはTie2受容体またはTie1受容体の細胞外ドメインを含むことができる。リガンドはアゴニストまたはアンタゴニストであり得る。さらにリガンドがサイトカイン、ホルモン、または成長因子である場合もある。
リガンドはまた、アンジオポエチン関連タンパク質である場合もある。具体的には、リガンドはアンジオポエチン関連タンパク質−1(ARP1)、アンジオポエチン関連タンパク質−2(ARP2)、肝臓のフィブリノーゲン/アンジオポエチン関連タンパク質(HFARP)である場合がある。リガンドはエフェリンでもあり得る。具体的には、リガンドは、エフェリンA1、エフェリンA2、エフェリンB1、またはエフェリンB2であり得る。本発明の別の態様では、リガンドはトロンボスポンジンであってもよい。具体的には、トロンボスポンジンはTSP−1またはTSP−2であることができる。
本発明のさらに別の態様では、キメラ分子に関して、リガンドはVEGF、PDGF、EGF,エリスロポエチン、インターロイキン、RANKL、FGF、またはNGFであってよい。具体的には、リガンドは、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、PDGF−A、PDGF−B、PDGF−C、またはPDGF−Dであることができる。
本発明のさらに別の態様では、上記のコイルドコイルキメラ分子中のリガンドは、アンジオポエチン−1、アンジオポエチン−2、アンジオポエチン−3、またはアンジオポエチン−4であってもよい。具体的には、リガンドはアンジオポエチン−1であることができる。
本発明はまた、上記のコイルドコイルキメラ分子をコードする単離された核酸に関する。さらに本発明は、この核酸を含む発現ベクターに関する。このベクターを含む宿主細胞もまた、本発明の範囲に含まれる。
本発明には、上記のコイルドコイルキメラ分子を含む可溶性の生物学的に活性な多量体も含まれる。具体的には、多量体はホモマーである場合も、またヘテロマーである場合もある。多量体がヘテロマーである場合は、コイルドコイルドメインは少なくとも1つの種に関して不均一系であることが好ましい。多量体は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、または十量体などであり、これらに限定されない。さらに、多量体はコイルドコイルドメインを含み、これは平行または逆平行構造を形成する。
本発明はまた、上記リガンドの受容体結合ドメインに連結されたコイルドコイルドメインを含むコイルドコイルキメラ分子を、そのリガンドに特異的な受容体を発現する細胞の集団に接触させることを含む、細胞成長を促進させる方法にも関する。ここでは、上記リガンドは上記受容体のアゴニストであり、コイルドコイルキメラ分子の多量体形態は上記受容体と相互作用し、その結果細胞成長が促進される。特に、この方法では、いずれかの特定の細胞型に限定されることはなく、細胞は内皮細胞、造血細胞、またはそれぞれの特異的受容体を発現する他の細胞であり得る。
本発明の別の態様では、本発明は、上記リガンドの受容体結合ドメインに連結されたコイルドコイルドメインを含むコイルドコイルキメラ分子を、そのリガンドに特異的な受容体を発現する細胞の集団に対して接触させることを含む、細胞増殖を促進する方法に関する。ここでは、上記リガンドは上記受容体のアゴニストであり、コイルドコイルキメラ分子の多量体形態は上記受容体と相互作用して、その結果細胞増殖する。特に、この方法では、いずれかの特定の細胞型に限定されることはなく、細胞は内皮細胞、造血細胞、またはそれぞれの特異的受容体を発現する他の細胞であり得る。
本発明のさらに別の態様では、本発明は、上記レセプターのリガンド結合ドメインに連結されたコイルドコイルドメインを含むコイルドコイルキメラ分子を、そのレセプターに特異的なリガンドを発現する細胞の集団に対して接触させることを含む、細胞増殖を減少させるかまたは阻害する方法に関する。ここでは、コイルドコイルキメラ分子の多量体形態が上記リガンドと相互作用して、その結果細胞増殖が減少または阻害される。特に、この方法では、いずれかの特定の細胞型に限定されることはなく、細胞は内皮細胞、造血細胞、またはそれぞれの特異的受容体を発現する他の細胞であり得る。
本発明のさらに別の態様では、本発明は、上記受容体のリガンド結合ドメインに連結されたコイルドコイルドメインを含むコイルドコイルキメラ分子を、その受容体に特異的なリガンドを含む試料に接触させることを含む、リガンド活性を低下させるかまたは阻害する方法に関する。ここでは、コイルドコイルキメラ分子の多量体形態が上記リガンドに結合して、その結果リガンド活性が低下または阻害される。
本発明のさらに別の態様では、本発明は、以下の段階を含むキメラ分子を作成する方法に関する:(A)コイルドコイルドメインをコードする核酸を、リガンドの受容体結合領域または受容体のリガンド結合領域のいずれかをコードする核酸と組み換えによって連結して、キメラ遺伝子構築物を作成する段階;および(B)この遺伝子構築物を宿主細胞中で発現させて、キメラ分子を生産させる段階。本発明のこれらおよび他の目的は、以下の本発明の説明、本明細書に添付される図面、および本明細書に添付される特許請求の範囲からさらに完全に理解されるであろう。
本発明のさらに別の態様では、本発明は、放射線に曝されている哺乳動物について、内皮細胞を放射線障害から防護する方法に関する。この方法は、治療有効量の上記コイルドコイルキメラ分子をそれを必要としている哺乳動物に投与する段階を含む。
本発明は、本明細書中以下の詳細な説明、および説明だけのために提供される添付の図面からさらに完全に理解されるであろう。従って以下の詳細な説明および添付の図面は本発明を限定しない。本出願において使用される場合には、軟骨基質タンパク質、CMP、マトリリン−1、およびMATはほぼ同じ意味で使用されると理解される。
本出願では、「a」および「an」は単数および複数の対象物の両方を意図するように使用される。
以下にさらに詳細に記載されるように、出願人らは、コイルドコイルドメインを使用してリガンドを「多量体化する」方法を発見した。この多量体化によりリガンドの生物学的活性はレベル上昇するが、そのように多量体化していない場合には生物学的活性はレベル低下する。この方法を使用すれば、任意のリガンドに由来する受容体結合ドメインは多量体化し、多量体化していない形態のリガンドに比較して親和性が向上し、および/または活性(すなわち、シグナル伝達能力)が上昇する。
本発明はまた、コイルドコイルドメインを使用して可溶性受容体を「多量体化する」方法を提供する。この多量体化により、不活性な可溶性受容体は生物学的に活性化し、あるいは受容体の生物学的活性および結合活性が増強する。もしこのように多量体化しない場合には生物学的活性および結合活性はレベル低下する。この方法を使用すれば、任意の受容体に由来するリガンド結合ドメインは多量体化し、天然形の可溶性受容体に比較して親和性が向上し、および/または活性(すなわち、結合活性)が上昇する。
本明細書中で使用される「約」または「実質的に」は、一般的に、正確な値からの幅を与える。例えば、ポリペプチド配列の長さに関して使用される場合には、「約」または「実質的に」は、ポリペプチドがアミノ酸の記載数には限定されないことを示す。数個のアミノ酸がN末端またはC末端に付加されている、あるいは数個のアミノ酸がN末端またはC末端から欠失しているものも、その結合活性のような機能的な活性が存在する限りは含まれる。
本明細書中で使用される場合に、1つ以上のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与には、同時(平行した)投与および任意の順序での連続した投与が含まれる。
本明細書中で使用される場合に、「アゴニスト」とは受容体に結合するリガンドをいう。これは受容体を活性化し、生理学的活性を刺激する。例えば、Ang1はTie2レセプターのアゴニストと考えられる。
本明細書中で使用される場合に、「アミノ酸(単数または複数)」は、全ての自然界に存在しているL−α−アミノ酸をいう。この定義は、ノルロイシン、オルニチン、およびホモシステインを含むことを意味する。
本明細書中で使用される場合に、一般的に、用語「アミノ酸配列変異体」とは、参照(例えば、天然の配列の)ポリペプチドと比較してそれらのアミノ酸配列のいくつかが異なる分子をいう。アミノ酸の変更とは、天然のアミノ酸配列における置換、挿入、欠失、あるいはこのような変化の任意の望ましい組み合わせであり得る。
置換変異体とは、天然の配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去されており異なるアミノ酸がその代わりに同じ位置に挿入されている変異体である。置換は、分子中の1つのアミノ酸だけが置換されている場合には単一であり、また2つ以上のアミノ酸が同じ分子中で置換されている場合には複数である。
配列中のアミノ酸の置換は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンがある。極性の中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンがある。正電荷を有する(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン、およびヒスチジンがある。負電荷を有する(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸がある。同じまたは類似する生物学的活性を示すタンパク質またはその断片もしくは誘導体、および例えば、グリコシル化、タンパク質分解的切断、抗体分子または他の細胞性リガンドへの連結などによって、翻訳の間または翻訳後に異なった形で改変される誘導体もまた、本発明の範囲に含まれる。
挿入変異体とは、天然のアミノ酸配列中の特定の位置のアミノ酸に直接隣接して1つ以上のアミノ酸が挿入されている変異体である。アミノ酸に直接隣接しているとは、アミノ酸のα−カルボキシル官能基またはα−アミノ官能基のいずれかに連結されていることを意味する。
欠失変異体とは、天然のアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が除去されている変異体である。通常、欠失変異体は分子の特定の領域の1つまたは2つのアミノ酸が欠失している。
本明細書中で使用される場合に、「アンタゴニスト」とは、生物学的応答を誘発することなく細胞受容体に結合するリガンドのような、別のリガンドの作用を取り消す傾向があるリガンドをいう。
本明細書中で使用される場合に、本発明のリガンドに関する「生物学的活性」とは、天然の受容体、例えば、天然のTie2受容体に特異的に結合し、そしてそれを通じてシグナルを伝達する分子の能力、または天然のTie受容体(例えば、Tie2)のシグナル変換を行う能力を遮断する能力をいう。従って、本発明の(天然のまたは変異体である)リガンドとしては、天然の受容体、例えば、Tie2受容体のアゴニストおよびアンタゴニストが挙げられる。本発明のリガンドの好ましい生物学的活性としては、血管新生を誘導または阻害する能力が挙げられる。血管新生を誘導する能力は、血管新生が望まれる生物学的な症状および疾患の処置に有用である。一方、血管新生を阻害または遮断する能力は、例えば、細胞増殖および腫瘍の成長を妨げるまたは弱めることにおいて有用である。
本発明のリガンドの好ましい生物学的活性としては、血管の透過を阻害する能力が挙げられる。血管の透過を阻害する能力は、糖尿病性網膜症、浮腫、および腹水のような医学的症状および疾患の処置に有用である。本発明のリガンドの好ましい生物学的活性としては、内皮細胞の完全性を維持する能力(アポトーシスを防ぐ能力が含まれる)が挙げられる。内皮細胞の完全性を維持する能力は、マンニトール療法、放射線治療、および敗血症のような医学的症状および疾患の処置に有用である。
可溶性形態のキメラ受容体の生物学的活性としては、そのリガンドに結合することによってリガンド活性を阻害または競合阻害するその能力が挙げられる。従って、リガンドが細胞増殖のアゴニストである場合には、この方法で細胞増殖を阻害することができる。あるいは、キメラ受容体の投与は、リガンドが細胞増殖のアンタゴニストである場合に、細胞増殖のエンハンサーとして作用し得る。
キメラリガンドおよびキメラ受容体はまた、リガンド−受容体結合相互作用を測定するために、放射性同位体、蛍光タグ、酵素タグ、または化学発光タグのような検出可能な標識で標識されると予想される。このように、キメラ分子を使用する検出系もまた考えられる。
本明細書中で使用される場合に、「担体」としては、曝される細胞または哺乳動物に対して、使用される投薬量および濃度では毒性のない医薬的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤が挙げられる。多くの場合、医薬的に許容可能な担体は、pH緩衝水溶液である。医薬的に許容可能な担体の例としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、および他の有機酸の緩衝液のような緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンのようなアミノ酸;単糖、2糖、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の糖質;EDTAのようなキレート試薬;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩を形成する対イオン;ならびに/あるいはTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(登録商標)のような非イオン性界面活性剤を挙げることができるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用される場合に、「キメラリガンド」、「キメラ受容体」、「キメラポリペプチド」または「キメラ分子」とは、コイルドコイルドメインと受容体結合ドメインまたはリガンド結合ドメインの組み合わせをいう。得られるキメラポリペプチドは、可溶性の生物学的に活性な多量体を形成することができる。コイルドコイルドメインはどのような供給源に由来するものであってもよく、供給源の例としては、任意の動物または哺乳動物のタンパク質、具体的には、任意のヒトタンパク質を挙げることができ、また、コイルドコイルドメインには合成によって作成されるものも含まれる。さらに、コイルドコイルドメインとリガンドまたは受容体との構築物は、同じ供給源に由来するものであってもよく、異なる供給源に由来するものであってもよい。キメラ構築物はコイルドコイルドメインとリガンドの受容体結合ドメインまたは受容体のリガンド結合ドメインを含み、そしてさらにそのものが含まれることによって、可溶性が高くなり、キメラポリペプチドの組み換え生産の容易さ、さらには天然のリガンドまたは天然の可溶性受容体と実質的に同等またはそれよりも大きな効力を有している生物学的に活性な多量体の形成が妨害されない限りは、他の構成要素をも含むことができると理解される。例えば、FLAG配列が、それが含まれることによってキメラ分子の機能を妨害しない限りは、精製を簡単にするために含めることができる。FLAG配列はまた、ヒト化構築物が望まれる場合には除去することもできる。
本明細書中で使用される場合に、「有効量」とは、有益なまたは望ましい臨床的または生化学的結果を得るために十分な量である。有効量は1回または複数回で投与することができる。本発明の目的においては、有効量の阻害因子化合物とは、疾患状態を軽くする、改善する、安定させる、回復させる、その進行を遅くするまたは遅らせるために十分な量である。
本明細書中で使用される場合に、「断片」または「機能性誘導体」とは、本発明の天然のリガンドまたは受容体の生物学的に活性なアミノ酸配列変異体および断片、ならびに共有結合による改変体をいい、これには有機誘導物質との反応、翻訳後改変、非タンパク質性ポリマーでの誘導、および免疫接着によって得られる誘導体が含まれる。
本明細書中で使用される場合に、「宿主細胞」としては、本発明のベクターの受領体であることができるかまたは受領体となる個々の細胞または細胞培養物が挙げられる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれる。この子孫は自然に生じる偶発的または故意の突然変異および/または変化が原因で、元の親細胞とはかならずしも完全に同一(形態論的又は総DNAコンプレント)ではない。
本明細書中で使用される場合に、「リガンド」とは、ポリペプチドのような分子に特異的に共有結合または一時的に結合する任意の分子、または因子、または化合物をいう。特定の状況で使用される場合は、リガンドとして抗体が挙げられる場合がある。リガンドの捕捉のような他の状況においては、「リガンド」とは、別の分子によって高い親和性で結合されると考えられる分子をいう場合もある。
本明細書中で使用される場合に、「リガンド結合ドメイン」とは、そのリガンドに結合する受容体の部分をいい、これにはそのリガンドに結合するために必要な受容体の最小部分が含まれる。
本明細書中で使用される場合に、「連結された」とは、多量体化ドメインとリガンドまたは受容体との間での直接または間接的な結合をいう。これらの2つのドメインの間での直接の融合、あるいはリンカーまたは介在ドメインもしくは介在要素によりドメインが分かれている間接的な融合もまた、キメラ融合体の活性が存在する限りにおいて想定される。
本明細書中で使用される場合に、処置の目的とされる「哺乳動物」とは、哺乳動物として分類される任意の動物をいう。このような動物としては、ヒト、家畜、農業用家畜、動物園の動物、競技用動物、ペット動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタなどが挙げられる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
本明細書中で使用される場合に、「多量体」または「多量体の」とは、コイルドコイルドメインのような多量体化因子が互いに結合して、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体などを形成することをいう。これらは、分子内または分子間結合を介して平行または逆平行の形態であり得る。
本明細書中で使用される場合に、「医薬的に許容可能な担体および/または希釈剤」としては、任意の全ての溶媒、分散媒体、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤、および吸収遅延剤などを挙げることができる。このような媒体および薬剤を医薬的に活性な物質について使用することは当該分野で十分に知られている。任意の従来の媒体または薬剤が有効成分と不適合であるである場合を除いて、治療用組成物にそれらを使用することは想定される。補助的な有効成分をもまた組成物中に配合することができる。
投与を容易にし、投与量を均一にするための単位投与量形態で非経口用組成物を処方することが特に効果的である。本明細書中で使用される単位投与量形態とは、処置される哺乳動物である被検体について単一の用量として適している物理的に分離している単位をいう。個々の単位は必要な医薬的担体とともに、所望される治療効果が得られるように計算された規定量の活性のある物質を含む。本発明の単位投与量形態についての詳細は、(a)活性のある物質に固有の特徴と得られる特定の治療効果、および(b)健常な体が損なわれる疾患状態にある生存している被検体の疾患を処置するためのそのような活性のある物質を配合する技術における固有の限界に依存して直接決定される。
主な有効成分は、適切な医薬的に許容可能な担体を含む有効量を単位投与量形態で適切に有効に投与するために配合される。単位投与量形態は、例えば、0.5μgから約2000mgまでの範囲の量で、主な活性のある化合物を含むことができる。割合で示すと、活性のある化合物は、一般的には、担体1mlあたり約0.5μgからの量である。補助的な有効成分を含む組成物の場合には、投与量は、上記成分の投与についての一般的な用量および様式を参照して決定される。
本明細書中で使用される場合に、「受容体結合ドメイン」とは、受容体に結合するリガンドの部分をいい、これにはその受容体に結合するために必要なリガンドの最小部分が含まれる。本発明は、それを含む組み換えタンパク質の単離を妨げる原因となることがすでに明らかにされているコイルドコイルドメインのような多量体化因子が、組み換えタンパク質の発現および精製を容易にすること、コイルドコイルドメインを含む天然のタンパク質と比較して大きい可溶性、さらにはコイルドコイルドメインを含む天然のタンパク質と比べて実質的に同程度またはそれ以上の効力といった有用な特徴を提供することを見出した発見に基づくものである。
本明細書中で使用される場合に、「試料」または「生物学的試料」とはその最も広い意味をいい、これには、個体、体液、細胞株、組織培養物、または行われるアッセイのタイプに応じて異なるキメラAng1結合因子を含む他の供給源から得ることができる生物学的試料が含まれる。示されるように、生物学的試料としては、精液、リンパ液、血清、血漿、尿、滑液、脊髄液などの体液を挙げることができる。哺乳動物から組織生検試料および体液を採取するための方法は、当該分野で十分に知られている。
本明細書中で使用される場合に、用語「特異的に結合する」とは、2つの分子間でのランダムではない結合反応、例えば、抗体分子と抗原との間での免疫反応、またはTie2と特異的に結合するキメラAng1のような別のポリペプチドとの非抗体リガンド反応をいう。
本明細書中で使用される場合に、「被験体」とは脊椎動物であり、好ましくは哺乳動物であり、さらに好ましくはヒトである。
本明細書中で使用される場合に、「処置」とは、効果的なまたは望ましい臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的においては、効果的なまたは望ましい臨床結果としては、症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の進行の遅延または遅らせること、疾患状態の改善または軽くすること、および緩解(部分的であるかまたは全体的であるかは問わない)を挙げることができるがこれらに限定されない。これらは検出できるかどうかは問われない。「処置」とは、処置を受けていない場合に予想される生存と比較して生存期間が長いこともまた意味する。「処置」とは、治療的な処置と、予防的または防御的処置の両方をいう。処置が必要なものとしては、すでに障害を起こしているもの、さらには障害を予防したいものを挙げることができる。疾患を「軽くすること」とは、処置を行っていない状況と比較して、疾患状態の程度および/または望ましくない臨床症状が小さくなること、および/または進行の時間的経過が遅くなるまたは長くなることを意味する。
本明細書中で使用される場合に、「ベクター」、「ポリヌクレオチドベクター」、「構築物」および「ポリヌクレオチド構築物」はほとんど同じ意味で使用される。本発明のポリヌクレオチドベクターとしては、RNA、DNA、レトロウイルス外皮に封入されたRNA、アデノウイルス外皮に封入されたDNA、別のウイルスまたはウイルス様形態に包まれたDNA(例えば、単純ヘルペスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV))、リポソーム中に封入されたDNA、分子を免疫学的に「隠蔽」、そして/または半減期を延長させるために、ポリリジンと複合体化させられたDNA、合成のポリカチオン分子と複合体化させられたDNA、ポリエチレングリコール(PEG)のような化合物と複合体化させられたDNA、あるいは非ウイルスタンパク質に結合させられたDNAが挙げられるがこれらに限定されないいくつかの形態のいずれであってもよい。ポリヌクレオチドはDNAであることが好ましい。本明細書中で使用される場合は、「DNA」には、A、T、C、およびGの塩基だけではなく、例えば、メチル化ヌクレオチド、電荷を持たない結合およびチオエートのようなこれらの内部塩基のアナログまたは改変体、ポリアミドのような、糖アナログの使用、ならびに改変されたおよび/または別の骨格構造などのヌクレオチド内改変体もまた含まれる。
本発明には、多量体形成ドメインが含まれる。具体的には、コイルドコイルドメインが例示される。コイルドコイルドメインはコイルドコイル構造を形成する任意のアミノ酸配列であり得る。本明細書中で例示されるコイルドコイルドメインは種々のタンパク質からクローニングされたものであるが、種々の変異体および誘導体が、得られるコイルドコイルドメインが当業者によってコイルドコイル構造と認められ、コイルドコイルドメインを含むキメラが多量体を形成することができ、容易に溶け、そして天然のリガンドまたは受容体と同様またはそれ以上の効力を提供することができる限りは、本発明に含まれると理解される。
リガンドの受容体結合ドメインまたは受容体のリガンド結合ドメインのいずれかと多量体化ドメインが互いに結合している特定の状況においては、多量体化ドメインと結合ドメインは同じタンパク質に由来するものであってもよく、また、これらは異なるタンパク質に由来するものであってもよいことがさらに理解される。例えば、Ang1コイルドコイルドメインはより効果的な様式でその自身のフィブリノーゲン様ドメインに結合することができる。または、軟骨オリゴマー基質タンパク質(COMP)はAng1フィブリノーゲン様ドメインに結合することができる。
キメラAng1
キメラ構築物GCN−Ang1、MAT−Ang1、またはCOMP−Ang1について述べる場合に、Ang1と呼ばれる部分はAng1のフィブリノーゲンドメインであると理解する。さらに、MAT−Ang1はまた、図においてはCMP−Ang1、CMP−Ang1/FD、またはCMP/CC−Ang1/FDと時には記載される。
出願人らは、Ang1のキメラ形態であるCOMP−Ang1が天然のタンパク質を上回る多くの利点を有する可能性があることを発見した。天然のAng1の作成は困難であり、精製されたタンパク質の活性は、おそらく、多量体を形成する傾向が原因で変化する。天然のAng1について回転式シャドウイングTEMにより本発明者らが行った構造解析では、天然のAng1が多様な大きさの多量体として存在することが示された。本発明者らは最初は基質タンパク質の短いコイルドコイルドメインを使用して三量体および五量体Ang1を作成するつもりであったが、興味深いことに、MAT−Ang1とCOMP−Ang1はさらに高次のオリゴマーを生じた。それにもかかわらず、MAT−Ang1およびCOMP−Ang1は精製が容易であり、天然のAng1よりも可溶性である。注目すべきは、COMP−Ang1が天然のAng1よりもおよそ3〜5倍強力であることである。理論に束縛されることなく、COMP−Ang1がTie2およびAktのリン酸化に対して最も強い効果を生じる理由としては2つの可能性がある。第1の理由は、その迅速な会合および解離速度から、COMP−Ang1が変異体のなかで最も生物学的活性の高いものであり得ることである。第2の理由は、COMP−Ang1が内皮の小窩の中でのTie2のクラスター形成を他の組み換えAng1タンパク質よりも効率よく誘導できることである。本発明者らのデータでは、Tie2分子が内皮の小窩に局在化していることが示されている。従って、小窩の中でのTie2のクラスター形成に良好に適しているオリゴマー構造をとるように操作されたAng1タンパク質は、Tie2の多量体化およびリン酸化をより効果的に促進する。
マウスの角膜マイクロポケット試験では、Ang1は単独で投与された場合には血菅形成応答を刺激することができなかった。しかしVEGFと同時に投与した場合には、Ang1は出生後の血管形成を増大させた。本発明者らは、天然のAng1は血菅形成の応答を刺激できなかったことを示した。しかし、COMP−Ang1は単独で血管形成を刺激する。さらに、COMP−Ang1は基部角膜輪部の管腔直径を大きくした。この役割は、Ang1を過剰発現する遺伝子導入マウスの血管直径が大きくなる頻度が増大することと一致する(Suri,C.等、1998、Science 282:468−471;Thurston,G.等、1999、Science 286:2511−2514)。ウサギの虚血後肢モデルにおいて、本発明者らはAng1遺伝子の送達によりVEGF遺伝子の送達と比較して大きな血管が生じることを示した(Chae,J.K.等、2000、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.20:2573−2578)。従って、COMP−Ang1は動脈内腔の直径を大きくすることによってさらに効率のよい血流を生じることができる。さらに、Ang1は、浮腫および炎症のようなVEGFによって誘導される副作用を中和し、一方で、血管形成に対してさらなる効果を有する(Kwak,H.J.等、2000、Circulation 101:2317−2324;Thurston,G.等、1999、Science 286:2511−2514;Kim,I.等、2001、Circ.Res.89:477−479)。従って、COMP−Ang1タンパク質の送達は、迅速で安全な治療的血管形成に有用であり得る。
物理的、生化学的、および免疫によって媒介される損傷に対する応答における血管内皮の完全性は、内皮機能を維持するため、および血管の疾患を予防するために重要である(Cines,D.B.等、1998、Blood 91:3527−3561)。最近の報告によると、固有板の微小血管内皮細胞の広範囲のアポトーシスは、原発病変であり、ここから腸の放射線障害が始まる(Paris,F.等、2001、Science 293:293−297)。従って、腹部の放射線治療の間に起こる消化管の損傷は、ガンの処置に使用できる線量を制限する。血管内皮細胞の放射線障害はVEGF(Okuniff,P.等、1998、Radiat.Res.150:204−211)または塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)(Paris,F.等、2001、Science 293:293−297)によって防ぐことができる。重要なことは、VEGF受容体は、腫瘍の進行のような脈菅形成および血管形成に積極的に関係している内皮細胞中で発現されるが、bFGF受容体はガン細胞を含む内皮および内皮以外の細胞の両方で発現されることである(Paris,F.等、2001、Science 293:293−29;Veikkola,T.and Alitalo,K.1999、Seminars in Cancer Biol.9:211−220)。従って、内皮を損傷から保護するためにVEGFおよびbFGFを投与することにより、腫瘍の進行を助ける場合がある。興味深い点は、Tie2が正常な成体の血管の内皮細胞中で選択的に活性な形態で発現されることである(Wong,A.L.等、1997、Circ.Res.81:567−574)。本発明者らは最近、正常な成体の血管中のアンジオポエチン/Tie2系が増殖していない内皮細胞の完全性を維持することにおいて重要であることを報告した(Kim,I.等、2001、Cardiovas.Res.49:872−881)。本発明者らによる免疫組織化学的染色は、Tie2が正常な成体の血管および毛細血管のほとんどの内皮細胞中で選択的に発現されることを示している。さらに、Tie2は、COMP−Ang1の実際の投与によって効果的に活性化される。1つの懸念は、Ang1を繰り返し投与することにより放射線治療の間に腫瘍の血管形成を増大させてしまう可能性があることである。しかしなお、腫瘍の血管形成におけるAng1の役割についてはいまだに意見が分かれている。Ang1が腫瘍血管の「安定化」を通じて腫瘍の進行を抑制している可能性があることが示唆されている(Tian,S.等、2002、Br.J.Cancer 286:645−651;Hawighorst,T.等、2002,Am.J.Pathol.160:1381−1392)。従って、Ang1を放射線によって誘導される内皮細胞の損傷を保護するために使用することは、理想的であり得る。実際、COMP−Ang1での処置は、広範囲にわたる放射線によって誘導される広範囲にわたる内皮のアポトーシスから絨毛を保護するが、内皮以外の細胞に対しては効果が観察されていない。さらに、COMP−Ang1処置は、消化管への損傷を減少させ、おそらくその結果として生存期間を長くする。COMP−Ang1の投与量および投与経路を最適化することにより、放射線によって誘導される内皮細胞の損傷後の内皮細胞の生存性をさらに改善することができる。
COMP−Ang1は、作成効率、効力、インビボでのTie2の活性化、血管形成、およびインビボでの内皮細胞の損傷に対する保護を含むいくつかの点で、天然のAng1よりも優れている。これはさらに、血管の漏損を防ぐため、敗血症によって誘導される内皮細胞の損傷に対する保護、血管形成術後の内皮再生の増強、およびTie2陽性内皮前駆幹細胞のインビトロでの増殖に応用できると考えられる。最後に本発明者らは、可溶性の、非凝集性の、強力で安定なキメラAng1変異体である、COMP−Ang1を設計し、作成した。これは、治療的な血管形成および内皮細胞の保護を含む臨床的な治療に有用であり得る。
コイルドコイル
α−へリックスコイルドコイルはおそらく、タンパク質について見出されている最もよく知られているサブユニットであるオリゴマー化モチーフである。従って、コイルドコイルは多様な種々の機能を果たす。転写活性化因子のいくつかのファミリーにおいては、例えば、短いロイシンジッパーが、DNA上にDNA結合領域を位置決めすることにおいて重要な役割を果たす(Ellenberger等、1992,Cell 71:1223−1237)。コイルドコイルはまた、中間体フィラメントタンパク質のオリゴマーを形成するためにも使用される。コイルドコイルタンパク質はさらに、小胞膜の融合とウイルス膜の融合の両方において重要な役割を果たすようである(SkehelおよびWiley、1998、Cell 95:871−874)。いずれの場合にも、融合される膜の中に埋められた疎水性配列は、長いα−へリックスの束状構造から構成される桿型複合体の同じ末端に配置される。その複合体が膜の融合のために組み立てられるにともない、この分子配置により膜は緊密に並列すると考えられる。
コイルドコイルは多くの場合、オリゴマーの形成を制御するために使用される。このことは、例えば、限定的ではないが、GCN4、ウイルス融合ペプチド、SNARE複合体、および特定のtRAN合成酵素などの転写因子を含む多くのタイプのタンパク質において見出されている。非常に長いコイルドコイルが、トロポミオシン、中間体フィラメント、および紡錘体極成分のようなタンパク質中で見出されている。
コイルドコイルは多数のα−へリックスを含んでおり、これらは平行または逆平行の方向性で会合する高度に体系化された様式で互いの周辺にスーパーコイルを形成する。とはいえ、二量体および三量体が最も一般的である。へリックスは同じタンパク質に由来するものである場合もあり、異なるタンパク質に由来するものである場合もある。
コイルドコイルは、構成要素であるヘリックスがそれらの疎水性の層の間を埋めるように互いに現れることにより形成される。疎水性層はそれぞれのへリックスを取り巻くようにねじれているので、へリックスはさらにねじれて互いの周辺に巻きつき、疎水性の層の間を埋めてスーパーコイルを形成する。隣り合うヘリックスの間の側鎖の相互嵌合が特徴的であり、これはknob−into−holesパッキングとして知られている。これによりその構造がコイルドコイルとして定義されている。ヘリックスはこのタイプの相互作用が起こるように同じ方向に走行する必要はないが、平行な立体配置がより一般的である。逆平行立体配置は三量体においては極めて稀であり、五量体においては知られていない。しかし、2つのヘリックスがたいてい短いループによって結合されている分子内二量体においてはより一般的である。
細胞外空間では、ヘテロ三量体のコイルドコイルタンパク質であるラミニンが、基底膜の形成において重要な役割を果たす。他の例はトロンボスポンジンおよび軟骨オリゴマー基質タンパク質(COMP)であり、これらのタンパク質では3個(トロンボスポンジン1および2)または5個(トロンボスポンジン3、4、およびCOMP)の鎖が連結されている。これらの分子は花束様の外観を有しており、そしてオリゴマー構造をとる理由はおそらく、細胞性受容体のC末端ドメインの多価相互作用である。
GCN4
酵母の転写活性化因子GCN4は、塩基性領域であるロイシンジッパー(bZIP)DNA結合モチーフを含むとして同定されている30個の真核生物タンパク質のうちの1つである(Ellenberger等、1992、Cell 71:1223−1237)。bZIP二量体は2つの連続しているα−ヘリックスの対である。これらは、そのカルボキシ末端の34個の残基を取り巻く平行なコイルドコイルを形成し、アミノ末端に向かって徐々にそれてDNA結合部位の主溝を通り過ぎる。コイルドコイルの二量体形成の界面はDNA軸に対してほぼ垂直な方向を向いており、これによってこの複合体はT字型の概観を呈する。bZIPは疎水性および非極性残基による7アミノ酸の4〜3回の反復を含み、これらは互いに、平行なαヘリックスコイルドコイルへとパッケージングされる(Ellenberger等、1992、Cell 71:1223−1237)。二量体の安定性は、7残基の反復の位置aおよびdのロイシンと非極性残基が並んでパッケージングされることによって生じる。一部のヘリックス内塩架橋およびヘリックス間塩架橋が、GCN4ロイシンジッパーペプチドの結晶構造中に示されている(Ellenberger等、1992、Cell 71:1223−1237)。
軟骨基質タンパク質(CMPまたはMAT)
CMP(マトリリン−1)は、分子量52000のサブユニットのホモ三量体としてウシの気管軟骨から単離された(PaulssonおよびHeinegard、1981、Biochem J.197:367−375)。ここでは、各サブユニットは、vWFA1構成部分、1つのEGFドメイン、vWFA2構成部分、および5回の7残基の反復にまたがるコイルドコイルドメインから構成されている(Kiss等、1989、J.Biol.Chem.264:8126−8134;Hauser and Paulsson、1994、J.Biol.Chem.269:25747−25753)。精製されたCMPの電子顕微鏡写真は花束様の三量体構造を示し、この構造中でそれぞれのサブユニットは、コイルドコイルに相当する共通する点から表面に現れる楕円形を形成する(Hauser and Paulsson,1994、J.Biol.Chem.269:25747−25753)。マトリリン−1のコイルドコイルドメインは広く研究されている。三量体構造は、非変性条件下で鎖間のジスルフィド結合を完全に還元した後でもなお維持される(HauserおよびPaulsson,1994、J.Biol.Chem.269:25747−25753)。
軟骨オリゴマー基質タンパク質(COMP)
非コラーゲン性糖タンパク質であるCOMPは、最初に軟骨で同定された(Hedbom等、1992、J.Biol.Chem.267:6132−6136)。このタンパク質は、5個のサブユニットからなる524kDaのホモ五量体である。このサブユニットはN末端の7残基の反復領域(cc)、それに続く4個の表皮成長因子(EGF)様ドメイン(EF)、7個のカルシウム結合ドメイン(T3)と、C末端の球状ドメイン(TC)から構成されている。このドメイン構成により、COMPはトロンボスポンジンのファミリーに属する。7残基の反復(abcdefg)nは、配置aおよびdに優先的に疎水性残基を有し、ヘリックスコイルドコイルドメインを形成する(Cohen and Parry、1994、Science 263:488−489)。最近、COMPの組み換えの5本鎖のコイルドコイルドメイン(COMPcc)が結晶化させられ、その構造が0.2nmの解像度で分析された(Malashkevich等、1996、Science 274:761−765)。
核酸構築物
本発明ではまた、リガンドの受容体結合ドメインの少なくとも1つのコピーを含む第1のサブユニットを含有している融合ポリペプチドをコードする核酸が提供される。ここでは、第1のサブユニットは多量体化構成要素のC末端に融合されている。
あるいは本発明では、リガンドの受容体結合ドメインの少なくとも1つのコピーを含む第1のサブユニットを含有している融合ポリペプチドをコードする核酸が提供される。ここでは、第1のサブユニットは多量体化構成要素のN末端に融合されている。具体的には、多量体化構成要素はコイルドコイルドメインであり得る。
本発明ではまた、受容体のリガンド結合ドメインの少なくとも1つのコピーを含む第1のサブユニットを含有している融合ポリペプチドをコードする核酸が提供される。ここでは、第1のサブユニットは多量体化構成要素のC末端に融合されている。
あるいは本発明では、受容体のリガンド結合ドメインの少なくとも1つのコピーを含む第1のサブユニットを含有している融合ポリペプチドをコードする核酸が提供される。ここでは、第1のサブユニットは多量体化構成要素のN末端に融合されている。具体的には、多量体化構成要素はコイルドコイルドメインであり得る。
また、本明細書中に記載されている本発明の核酸分子を含む発現ベクターも提供される。ここでは、核酸分子は発現制御配列に動作可能なように連結されている。本発明の発現ベクターを含む、融合ポリペプチドを生産するための宿主ベクター系もまた提供される。発現ベクターは融合ポリペプチドの発現に適している宿主細胞中に導入されている。適切な宿主細胞は、E.coliのような細菌細胞、ピキアパストリス(Pichia pastoris)のような酵母細胞、Sf細胞(Spodoptera frugiperda)のような昆虫細胞、またはCOSもしくはCHO細胞のような哺乳動物細胞であり得る。
本発明ではまた、本明細書中に記載されている宿主−ベクター系の細胞を融合ポリペプチドの生産が可能な条件下で増殖させ、そのように生産された融合ポリペプチドを回収することによる、本発明の融合ポリペプチドの生産方法が提供される。本発明の実施に有用な融合ポリペプチドは、原核生物または真核生物の発現系中での発現によって調製することができる。
あらゆる方法を利用して組み換え遺伝子を発現させ、そしてポリペプチドを精製することができる。遺伝子を、例えばpZErOのような、しかしこれには限定されない細菌の発現ベクターにサブクローニングすることができる。
融合ポリペプチドは任意の技術によって精製することができ、これをその後、安定であり生物学的に活性なタンパク質へと形成させる。例えば、限定するものではないが、因子を可溶性タンパク質または封入体のいずれかとして細胞から回収することができ、これらから、因子を8Mの塩酸グアニジン抽出および透析により定量的に抽出することができる。因子をさらに精製するためには、あらゆる精製方法を使用することができ、精製方法としては、従来のイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、種々の糖クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、またはゲル濾過を挙げることができるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用される場合に、融合ポリペプチドには機能的に等価な分子が含まれる。この分子では配列内の残基がアミノ酸置換されるので、結果的にはその変化はサイレントまたは保存的である。例えば、配列内の1つ以上のアミノ酸残基を、機能的に均等な残基として作用する類似の極性を有する別のアミノ酸によって置換した場合には、結果的にはその変化はサイレントまたは保存的であり得る。配列内のアミノ酸についての置換は、そのアミノ酸が属するクラスの他のアミノ酸から選択することができる。例えば、非極性(疎水性)のアミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンがある。極性の中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンがある。正電荷を有する(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン、およびヒスチジンがある。負電荷を有する(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸がある。同じまたは類似する生物学的活性を示すタンパク質またはその断片もしくは誘導体、および例えば、グリコシル化、タンパク質分解的切断、抗体分子または他の細胞性リガンドへの連結などによって、翻訳の間または翻訳後に異なった形で改変される誘導体もまた、本発明の範囲に含まれる。
本発明の融合ポリペプチドを発現する細胞は、例えば、形質転換、形質導入、エレクトロポレーション、またはマイクロインジェクション技術によって、融合ポリペプチドを生じるように遺伝子操作されている。
さらに本発明では、本明細書に記載の融合ポリペプチドをタグを付した形態で使用することが想定される。
ベクター中にDNA断片を挿入するための当業者に公知である任意の方法を使用して、適切な転写/翻訳制御シグナルとタンパク質のコード配列を使用して本発明の融合ポリペプチドをコードする発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、インビトロでの組み換えDNAおよび合成技術、ならびにインビボでの組み換え(遺伝子組み換え)を挙げることができる。本発明の融合ポリペプチドをコードする核酸配列の発現は第2の核酸配列によって調節することができ、その結果、融合ポリペプチドが組み換えDNA分子で形質転換された宿主中で発現される。例えば、本明細書中に記載されている融合ポリペプチドの発現は、当該分野で公知であるプロモーター/エンハンサーエレメントによって制御することができる。融合ポリペプチドの発現を制御するために使用することができるプロモーターとしては、以下を挙げることができるが、これらに限定されない:Squinto等(1991、Cell 65:1−20)に記載されているような長末端反復;SV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon、1981、Nature 290:304−310)、CMVプロモーター、ラウス肉腫ウイルスの3'長末端反復が含まれているM−MuLV 5'末端反復プロモーター(Yamamoto等、1980、Cell 22:787−797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner等、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:144−1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster等、1982、Nature 296:39−42);β−ラクタマーゼプロモーター(Villa−Kamaroff等、1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727−3731)またはtacプロモーター(DeBoer等、1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21−25)のような原核生物の発現ベクター(「組み換え細菌由来の有用なプロモーター」(Useful proteins from recombinant bacteria)、Scientific American,1980,242:74−94もまた参照のこと);Gal4プロモーター、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターなどの酵母または他の真菌由来のプロモーター要素、ならびに組織特異性を示し、トランスジェニック動物において利用されてきた以下のような動物の転写制御領域:膵臓の腺房細胞中で活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift等、1984,Cell 38:639−646;Ornitz等、1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399−409;MacDonald,1987,Hepatology 7:425−515);膵臓β細胞中で活性であるインシュリン遺伝子の制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115−122)、リンパ球様細胞中で活性である免疫グロブリン遺伝子の制御領域(Grosschedl等、1984,Cell 38:647−658;Adames等、1985,Nature 318:533−538;Alexander等、1987,Mol.Cell.Biol.7:1436−1444)、精巣細胞、乳房細胞、リンパ球様細胞、および肥満細胞中で活性である、マウスの乳ガンウイルスの制御領域(Leder等、1986,Cell 45:485−495)、肝臓中で活性であるアルブミン遺伝子の制御領域(Pinkert等、1987,Genes and Devel.1:268−276)、肝臓中で活性であるα−フェトプロテイン遺伝子の制御領域(Krumlauf等、1985,Mol.Cell.Biol.5:1639−1648;Hammer等、1987,Science 235:53−58);肝臓中で活性であるα1−坑トリプシン遺伝子の制御領域(Kelsey等、1987,Genes and Devel.1:161−171)、骨髄性細胞中で活性であるβ−グロビン遺伝子の制御領域(Mogram等、1985,Nature 315:338−340;Kollias等、1986,Cell 46:89−94);脳の乏突起膠細胞中で活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子の制御領域(Readhead等、1987,Cell 48:703−712);骨格筋で活性であるミオシン軽鎖−2遺伝子の制御領域(Shani,1985,Nature 314:283−286)、および視床下部で活性である性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子の制御領域(Mason等、1986,Science 234:1372−1378)。
従って、本発明によれば、本明細書中に記載されている融合ポリペプチド、具体的には、改変されたアンジオポエチンをコードする核酸を含む、細菌または真核生物宿主中で複製することができる発現ベクターが宿主に遺伝子導入するために使用され、これによりそのような核酸が直接発現されて融合ポリペプチドが生産され、次いでこれらを生物学的に活性な形態で回収することができる。本明細書中で使用される場合は、生物学的に活性な形態には、関連する受容体に結合して、種々の機能を生じ、そして/またはレセプターを発現する細胞の表現形に影響を与えることができる形態が含まれる。このような生物学的に活性な形態は、例えば、Tie2受容体のチロシンキナーゼドメインのリン酸化、または細胞性DNAの合成の刺激を誘導する。
核酸挿入部分を含む発現ベクターは、以下の少なくとも3つのアプローチによって同定することができるが、これらに限定されない:(a)DNA−DNAハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能が存在するかどうか、および(c)挿入された配列の発現。第1のアプローチでは、発現ベクター中に挿入された異種核酸の存在を、挿入された核酸配列に相同な配列を含むプローブを使用して、DNA−DNAハイブリダイゼーションによって検出することができる。第2のアプロ−チでは、組み換えベクター/宿主系を、ベクター中に異種の核酸配列を挿入することによって生じる特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質耐性、形質転換の表現形、バキュロウイルス中での封入体(occlusion body)の形成など)が存在するかどうかに基づいて同定し、選択することができる。例えば、efl核酸配列がベクターのマーカー遺伝子配列中に挿入される場合には、挿入部分を含む組み換え体は、マーカー遺伝子の機能がないことによって同定することができる。第3のアプローチにおいては、組み換え発現ベクターを、組み換え構築物によって発現される異種核酸の産物をアッセイすることによって同定することができる。このようなアッセイは、例えば、目的の核酸産物の物理的または機能的特性に基づいて、例えば、受容体もしくは検出可能な抗体もしくはその一部でタグをつけられた部分へのリガンドの結合によって、あるいは目的のタンパク質またはその一部に対して生産された抗体への結合によって、行うことができる。
融合ポリペプチド、特に本発明の改変されたアンジオポエチンは、一時的に、構成的に、または恒常的に宿主細胞中で発現させることができる。
本発明は本明細書中では、Tie2レセプターを発現する細胞、組織、または器官に関係している障害に罹患している患者を処置するための治療薬としての融合ポリペプチドの開発が提供される。このような分子は、ヒトおよび動物の体の処置方法において、あるいは診断方法において使用することができる。
Tie2受容体は内皮細胞と結合して同定されており、Ang−1のような受容体のアゴニストを遮断することにより血管新生を妨げることが示されているので、出願人らは、本発明のTie2アゴニスト融合ポリペプチドが、血管新生が指摘されている疾患または障害において血管新生を誘導するために有用であると予想する。このような疾患または障害としては、創傷治癒、虚血、および糖尿病を挙げることができる。リガンドは、動物モデルで試験することができ、そして別の内皮細胞特異的血管形成因子である血管内皮成長因子(VEGF)のような他の因子について記載されているように、治療的に使用することもできる。
米国特許第5332671号、および他の研究には、血管形成因子の、虚血性心筋に対して血流を増大させる効果、創傷治癒を増強する効果、および新血管形成が所望される他の治療状況における効果を発揮するように使用することができる、インビトロおよびインビボでの研究が記載されている。欧州特許出願番号0550296 A2;Banai等、Circulation 89:2183−2189(1994);Unger等、Am.J.Physiol.266:H1588−H1595(1994);およびLazarous等、Circulation 91:145−153(1995)もまた参照のこと。本発明によれば、アゴニスト融合ポリペプチドは単独で使用することができ、また、例えばVEGFもしくは塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)のような1つ以上のさらなる医薬的に有効な化合物と組み合わせて使用することもできる。
逆に、国際公開番号WO96/31598の実施例9に記載されているTie2レセプター体またはAng−2のようなTie2受容体のアンタゴニストは、特定の状況下でそして特定の量で血管新生を妨げるかまたは弱めることが示されている。同様に、本発明のTie2アンタゴニスト融合ポリペプチドもこれらの目的のために有用である。これらのアンタゴニストは単独で使用することができ、また、治療目的が血管形成を遮断することである治療状況に有用であることが示されている坑VEGF抗体のような他の組成物と組み合わせて使用することもできる。
他の実施形態では、本明細書中に記載されている本発明のTie2アゴニスト融合ポリペプチドは、造血因子として使用することができる。種々の造血因子およびそれらの受容体は、血液中に含まれる種々の細胞型の増殖および/または分化および/または移動に関係している。Tie2受容体は初期の造血細胞中で発現されるので、Tie2リガンドはこれらの細胞の増殖または分化または移動において類似する役割を果たしていると予想される。従って、例えばTie2アゴニスト融合ポリペプチド組成物は、インビトロおよびインビボの生物学的系で調製し、アッセイし、試験することができ、そして以下のいずれかに記載されているように治療的に使用することができる:米国特許第4,810,643号;Lee等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:4360−4364(1985);Wong等、Science,228:810−814(1985);Yokota等、Proc.Natl.Acad.Sci(USA)81:1070(1984);国際公開番号WO91/05795;および同WO95/19985。
従って、融合ポリペプチドを使用して、正常な造血が抑制されている状態を診断または処置することができる。このような状態としては、貧血症、血小板減少症、白血球減少症、および顆粒球減少症を挙げることができるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、融合ポリペプチドを使用して、患者が正常な血球の数の減少に関係しているか、または造血性細胞の集団の増強が所望される臨床状況である後天性免疫不全症候群(AIDS)のような疾患に罹患している状況において、例えば、骨髄移植と組み合わせて、または放射線によって引き起こされる形成不全症または骨髄抑制の処置、化学的処置もしくは化学療法において、血球前駆体の分化を刺激することができる。
本発明の融合ポリペプチドは単独で使用することもでき、また、例えば、サイトカイン、ニューロトロフィン、インターロイキンなどのような他の医薬的活性のある薬剤と組み合わせて使用することもできる。好ましい実施形態では、融合ポリペプチドは、幹細胞または他の造血細胞前駆体の増殖を誘導することが知られている多数の因子のいずれかと、あるいは造血性の成熟因子、トロンボポエチン、幹細胞因子、エリスロポエチン、G−CSF、GM−CSFなどを含むがこれらに限定されない、造血経路の後期細胞に対して作用する因子のいずれかと組み合わせて使用することができる。
別の実施形態では、Tie2受容体アンタゴニスト融合ポリペプチドを使用して、望ましい結果が造血経路の阻害である患者を診断または処置することができ、例えば、骨髄増殖性または血小板血症、血小板増加症、および白血病のような造血臓器のような他の増殖性障害の処置に使用することができる。このような実施形態では、処置には、治療有効量の本明細書中に記載されている融合ポリペプチドを使用することが含まれる。
これらまたは他の疾患または障害を処置するために有効用量は、当業者に公知の方法を使用して決定することができる(例えば、Fingl等、「治療の薬理学的規準(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、Goodman and Gilman編、Macmillan Publishing Co,New York、1−46頁(1975)を参照のこと)。本発明に使用される医薬的組成物には、インビボでの投与の前に担体または標的分子(例えば、抗体、ホルモン、成長因子など)に連結された、あるいはリポソーム、マイクロカプセル、および徐放調製物中に取り込まれた、医薬的に許容される液体、固体、または半固体の担体中の上記の融合ポリペプチドが含まれる。例えば、医薬的組成物は、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、またはデキストロース溶液のような水溶液中に融合ポリペプチドを含むことができる。あるいは、活性のある薬剤は固形(例えば、ロウ状)または半固形(例えば、ゼラチン様)製剤中に含められ、これはそのような処置が必要な患者に移植される。投与経路は、当該分野で知られている投与の態様のいずれであってもよく、そのような投与の態様としては、静脈内、随腔内、皮下、子宮内で、関係している組織への注射によって、動脈内、鼻腔内、経口的に、あるいは埋め込まれた器具を介する投与を挙げることができるが、これらに限定されない。
投与により、全身に、または局部に本発明の活性のある薬剤の分布させることができる。例えば、神経系の離れた範囲に関係しているいくつかの症状については、静脈内または随腔内での薬剤の投与が望ましい場合がある。いくつかの状況では、活性のある薬剤を含む移植物を、病変の範囲内にまたはその近くに置くことができる。適切な移植物としては、ゲルフォーム、ワックス、スプレー、または微粒子をベースとする移植物を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明ではまた、本明細書中に記載されている融合ポリペプチドを医薬的に許容される媒体中に含む医薬的組成物も提供される。この組成物は全身投与することができ、また局所投与することもできる。当該分野で知られている任意の適切な投与の態様を使用することができ、そのような投与の態様としては、静脈内、随腔内、動脈内、鼻腔内、経口的に、皮下、腹膜内、あるいは局所注射または外科手術による移植を挙げることができるが、これらに限定されない。徐放処方物もまた提供される。
遺伝子治療
特異的な実施形態では、キメラAng1ポリペプチドをコードする配列を含む核酸が、血管の漏損を防ぐために、また治療的な脈菅形成のために、遺伝子治療によって投与される。遺伝子治療とは、被検体に、発現されるかまたは発現することができる核酸を投与することによって行われる治療をいう。本発明のこの実施形態では、核酸はそれがコードするタンパク質を生産し、このタンパク質が治療効果を媒介する。
当該分野で利用できる任意の遺伝子治療方法を本発明に従って使用することができる。例示的な方法が以下に記載される。
遺伝子治療方法の一般的な概要については、Goldspiel等、Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);Wu and Wu、Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan、Science 260:926−932(1993);およびMorgan and Anderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)。使用することができる組み換えDNA技術について当該分野で一般的に公知の方法は、Ausubel等、(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、NY(1993);およびKriegler、Gene Transfer and Expression、A Laboratory Manual、Stockton Press、NY(1990)に記載されている。
好ましい態様では、核酸配列はキメラ−Ang1またはTie2ポリペプチドをコードする。ここでは核酸配列は発現ベクターの一部であり、発現ベクターは適切な宿主中でポリペプチドを発現する。具体的には、このような核酸配列はポリペプチドをコードする領域に動作可能なように連結されているプロモーターを含み、上記プロモーターは誘導性または構成的であり、場合によっては組織特異的である。別の特定の実施形態では、ポリペプチドをコードする配列と任意の他の所望される配列とに隣接してゲノム中の所望される部位での相同組み換えを促す領域である核酸分子が存在する核酸分子が使用される。これにより、抗体をコードする核酸の染色体内での発現が提供される(Koller and Smithies、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:8932−8935(1989);Zijlstra等、Nature 342:435−438(1989))。
患者への核酸の送達は、患者が核酸または核酸を含むベクターに直接曝される場合には直接、また細胞が最初にインビトロで核酸で形質転換され、その後、患者に移植される場合には間接的のいずれかである。これらの2つのアプローチはそれぞれ、インビボまたはエキソビボでの遺伝子治療として知られている。
特異的な実施形態では、核酸配列はインビボで直接投与され、ここで核酸配列が発現させられてコードされる産物が生産される。これは、当該分野で公知の多数の方法のいずれかによって、例えば、適切な核酸発現ベクターの一部として核酸配列を構築し、そしてそれらが細胞内に入るように、例えば、欠損性レトロウイルスもしくは弱毒化レトロウイルス、または他のウイルスベクターを用いて感染によって、あるいは裸のDNAの直接の注入、または脂質もしくは細胞表面受容体でのコーティングによって、あるいは薬剤のトランスフェクション、リポソーム、微粒子、もしくはマイクロカプセル中に被包すること、あるいは核に侵入することが知られているペプチドにそれらを連結して投与することによって、受容体によって媒介される食作用の対象であるリガンドにそれを連結して投与すること(例えば、Wu and Wu、J.Biol.Chem.262:4429−4432(1987))(これを用いて、受容体を特異的に発現する細胞型を標的化することができる)などによって行うことができる。別の実施形態では、リガンドが融合誘導因子ウイルスペプチドを含む核酸−リガンド複合体を形成させて、エンドソームを破壊させることができる。これにより、核酸をリソソームの分解から回避させることができる。さらに別の実施形態では、核酸を、特異的受容体を標的化することにより、細胞特異的取り込みおよび発現のためにインビボで標的化することができる。あるいは、核酸を細胞内に導入し、相同組み替えによって発現のために宿主細胞のDNA中に取り込ませることができる。(Koller and Smithies、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935(1989);Zijlstra等、Nature 342:435−438(1989))。
特異的な実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸配列を含むウイルスベクターが使用される。遺伝子治療に使用されるポリペプチドをコードする核酸配列は、患者に遺伝子を容易に送達する1つ以上のベクターにクローニングされる。レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスが、使用することができるウイルスベクターの例である。レトロウイルスベクターには、ウイルスゲノムの正確なパッケージング、および宿主細胞のDNA中への組み込みに必要な構成要素が含まれる。
アデノウイルスは、呼吸上皮細胞に遺伝子を送達することについて特に魅力的な媒体である。なぜなら、アデノウイルスは呼吸上皮細胞に自然に感染して、ここで軽い病気を生じるからである。アデノウイルスをベースとする送達系についての他の標的としては、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉がある。アデノウイルスには、分裂していない細胞に感染することができるという利点がある。さらに、アデノ随伴ウイルス(AAV)もまた、遺伝子治療での使用が提案されている。
遺伝子治療への別のアプローチとしては、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、またはウイルス感染のような方法によって組織培養物中の細胞に遺伝子を導入することが挙げられる。通常、導入方法には、細胞に選択マーカーを導入することが含まれる。次いで、細胞は選択下におかれ、導入された遺伝子を取り込みそしてそれらを発現する細胞が単離される。その後、そのような細胞が患者に送達される。
この実施形態では、核酸が細胞に導入され、その後、得られた組み換え細胞がインビボで投与される。このような導入は、当該分野で公知の任意の方法によって行うことができ、このような方法としては、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクターでの感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子導入、マイクロセル媒介遺伝子導入、スフェロプラスト融合などを挙げることができるが、これらに限定されない。細胞中に異種遺伝子を導入するための多数の技術が当該分野で知られており、レシピエント細胞に必須の発生上の機能および生理学的機能が破壊されない限りは、本発明に従って使用することができる。核酸を細胞に安定に導入するための技術も提供されるべきであり、その結果、核酸が細胞によって発現され、好ましくは遺伝性であり、そしてその細胞の後代によっても発現される。
遺伝子治療の目的のために核酸をその中に導入することができる細胞は、任意の望ましい利用可能な細胞型が含まれ、そのような細胞としては、表皮細胞、内皮細胞、角質細胞、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞;T−リンパ球、B−リンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球のような血球;種々の幹細胞または前駆細胞、具体的には、例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児の肝臓から得られる造血幹細胞または造血前駆細胞などを挙げることができるがこれらに限定されない。
好ましい実施形態では、遺伝子治療に使用される細胞は患者の自己のものである。
組み換え細胞が遺伝子治療において使用される1つの実施形態では、ポリペプチドをコードする核酸配列が、それらが細胞またはその子孫によって発現されるように細胞中に導入され、その後、組み換え細胞が治療効果のためにインビボで投与される。特異的な実施形態では、幹細胞または前駆細胞が使用される。単離することができインビトロで維持することができる任意の幹細胞および/または前駆細胞を、本発明のこの実施形態に従って使用できる可能性がある。
特異的な実施形態では、遺伝子治療の目的のために導入される核酸は、コード領域に動作可能であるように連結されている誘導性プロモーターを含む。その結果、拡散の発現は、適切な転写誘導因子の存在またはそれが存在しないことを制御することによって制御可能である。
治療用組成物
1つの実施形態では、本発明は、血管の漏損または血管の形成ができないことを特徴とする種々の疾患の処置に関する。この方法では、本発明の治療用化合物を、Tie2を活性化する化合物を提供することにより、そのような疾患に罹患しているか、またはそのような疾患になりやすいかのいずれかであるヒト患者に投与することができる。
治療用化合物の処方は当該分野で広く知られており、通常はRemingtonのPharmaceutical Science、第17版、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,USA編が参照される。例えば、1日に体重1kgあたり約0.05μgから約20mgを投与することができる。用法は、最適な治療効果を提供できるように調節することができる。例えば、数回分に分けられた用量を毎日投与することができ、また治療状況の緊急性に応じて指示されるように用量を比例的に減少させることもできる。活性のある化合物は、経口、静脈内(水溶性の場合)、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮内、座薬のような経路で、または移植(例えば、腹腔内経路によって徐放分子を使用して、あるいはインビトロで感作させられ、レシピエントに養子導入される単球または樹状細胞のような細胞を使用することによって)投与することができる。投与経路に応じて、ペプチドを、上記の成分を不活化させる可能性がある酵素、酸、および他の自然な条件の作用からペプチドを保護するための物質でコーティングする必要がある場合もある。
例えば、ペプチドは親油性が低いので、ペプチドはペプチド結合を切断可能な酵素によって消化管で、および酸加水分解によって胃で分解される。非経口的投与以外によってペプチドを投与するためには、ペプチドはその不活化を防ぐ物質でコーティングされるか、またはそのような物質とともに投与される。例えば、ペプチドは、アジュバント中で投与することができ、また酵素阻害因子とともに、もしくはリポソーム中で同時投与することができる。ここで想定されるアジュバントとしては、レゾルシノール、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、およびn−ヘキサデシルポリエチレンエーテル)を挙げることができる。酵素阻害因子としては、膵臓のトリプシン阻害因子、ジイソプロピルフルオソホスフェート(DEP)、およびトラシロールを挙げることができる。リポソームとしては、水中油中水CGFエマルジョン、さらには一般的なリポソームをあげることができる。
活性のある化合物はまた、非経口的にまたは腹膜内で投与することができる。分散液は、液体グリセロール、ポリエチレングリコール、それらの混合物、および油中に調製することもできる。通常の保存および使用条件下では、これらの調製物には、微生物の増殖を防ぐための保存料が含まれる。
注入物質としての使用に適している医薬的な形態としては、滅菌の水溶液(水溶性である場合)または分散液、および注射可能な溶液または分散液を即座に調製するための滅菌粉末を挙げることができる。全ての場合において、このような形態は滅菌でなければならず、容易に注射器に装填することができる程度に流動性でなければならない。これは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、また細菌および真菌のような微生物の混入の作用を防がなければならない。担体は、溶媒または分散媒体であり得、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体のポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油である。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子の大きさを維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。微生物の作用を防ぐことは、種々の抗菌剤および坑真菌剤、例えば、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、theomersalなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の長期間にわたる吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中で使用することによって生じることができる。
滅菌の注射可能な溶液は、必要とされる量の活性のある化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて種々の上記に列挙された他の成分とともに配合し、その後濾過滅菌することによって調製される。一般的には、分散液は種々の滅菌の有効成分を滅菌の媒体中に配合することによって調製される。滅菌の媒体には、塩基性の分散媒体と、上記に列挙されたものから必要な他の成分が含まれる。滅菌の注射可能な溶液を調製するための滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は減圧乾燥、凍結乾燥技術であり、これにより、有効成分と任意のさらなる所望の成分との粉末が、予め濾過滅菌されたその溶液から得られる。
ペプチドを上記のように適切に保護する場合には、活性のある化合物は、例えば、不活性な希釈剤とともに、または吸収される食用の担体とともに経口投与することができ、硬質または軟質殻ゼラチンカプセル中に被包することもでき、また圧縮して錠剤にすることもでき、食事療法用の食品に直接配合することもできる。経口での治療的投与のためには、活性のある化合物は賦形剤とともに配合され、経口摂取用の錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、坐剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用することができる。このような組成物および調製物は、少なくとも1重量%の活性のある化合物を含むべきである。組成物および調製物の割合は、もちろん変化し、通常は1単位あたり約5から約80重量%である。このような治療に有用な組成物中での活性のある化合物の量は、適切な投与量が得られる量である。本発明の好ましい組成物または調製物は、経口用の単位投与量形態が約0.1μgから2000mgの間の活性のある化合物を含むように調製される。
錠剤、丸剤、カプセル剤などには、以下を含ませることもできる:トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプン、またはゼラチンなどの結合剤;リン酸ニカルシウムのような賦形剤;トウモロコシデンブン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;さらには、スクロース、ラクトース、またはサッカリンなどの甘味剤、ペパーミント、メチルサリチル酸油、またはサクランボ香味剤のような香味剤もまた添加することができる。単位投与量形態がカプセル剤である場合は、これは上記のタイプの物質に加えて、液体の担体を含むことができる。種々の他の物質を、コーティングとして、または別の方法で投与量単位の物理的な形態を改変するために存在させることができる。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤を、シェラック、糖、またはそれら両方でコーティングすることができる。シロップ剤またはカシェ剤には、活性のある化合物、甘味剤としてスクロース、保存料としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにサクランボまたはオレンジ香味剤のような香味剤を含ませることができる。もちろん、任意の単位投与量形態を調製する際に使用される全ての物質は、薬学的に純粋で、使用される量で実質的に非毒性でなければならない。さらに、活性のある化合物を、徐放調製物および処方物中に配合することもできる。
送達系
種々の送達系が知られており、本発明の化合物を投与するために使用することができ、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル中への被包、化合物を発現することができる組み換え細胞、受容体媒介食作用、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築などがある。導入方法としては、皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口による経路を挙げることができるがこれらに限定されない。化合物または組成物は、任意の従来の経路によって、例えば、点滴または急速静注法によって、表皮もしくは粘膜(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)の内層を通じた吸収によって投与することができ、また他の生物学的活性のある薬剤とともに投与することもできる。投与は全身的である場合も、また局所的である場合もある。さらに、本発明の医薬的化合物または組成物を、脳室内および髄腔内注射を含む任意の適切な経路によって中枢神経系に導入することが望まれる場合もある。脳室内注射は、脳室内カテーテル、例えば、オマヤレザーバーのような貯留槽に取り付けられたカテーテルによって容易に行うことができる。肺投与もまた、吸入器または噴霧器と、噴霧剤を含む処方物の使用により用いることができる。
特異的な実施形態では、本発明の医薬的化合物または組成物を、処置の必要な範囲に局所的に投与することが望まれる場合がある。これは、例えば、限定的ではないが外科手術の間の局所点滴、局所塗布によって、例えば外科手術後に創傷包帯と組み合わせて、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、または移植によって行うことができる。上記移植は、シアル酸の膜(sialastic membrane)または繊維のような膜を含む、多孔性、無孔性、もしくはゼラチン様の物質の移植である。好ましくは、本発明の抗体またはペプチドを含むタンパク質を投与する場合には、タンパク質を吸収しない物質を使用することに注意を払わなくてはならない。別の実施形態では、化合物または組成物を、媒体、具体的にはリポソーム中で送達することができる。さらに別の実施形態では、化合物または組成物を、徐放系で送達することができる。1つの実施形態では、ポンプを使用することができる。別の実施形態では、ポリマー性物質を使用することができる。さらに別の実施形態では、徐放系を治療標的の近くにおくことができ、これによれば全身的な用量のごく一部だけが必要である。
標識
適切な酵素標識としては、例えば、基質との反応による過酸化水素の生産を触媒する、オキシダーゼのグループに由来する酵素標識を挙げることができる。グルコースオキシダーゼが特に好ましい。なぜなら、これは安定性が優れており、その基質(グルコース)が容易に入手できるからである。オキシダーゼ活性のレベルは、酵素標識抗体/基質反応によって形成される過酸化水素の濃度を測定することによりアッセイすることができる。酵素以外の他の適切な標識としては、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(112In)、およびテクネチウム(99mTc)のような放射性同位元素、ならびにフルオレセインおよびローダミンおよびビオチンのような蛍光標識が挙げられる。
本発明のキメラ−Ang1、Tie2、またはキメラAng1/Tie2複合体特異的抗体についてさらに適している標識が以下に提供される。適切な酵素標識の例としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、δ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母のアルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
適切な放射性同位元素標識の例としては、H、111In、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pdなどが挙げられる。インビボでの画像化が使用される場合には111Inが好ましい同位元素である。なぜなら、これにより肝臓による125Iまたは131Iで標識されたポリペプチドの脱ハロゲン化の問題を回避できるからである。さらに、この放射性核種は画像化にさらに好ましいγ線放射エネルギーを有している。例えば、1−(P−イソチオシアナトベンジル)−DPTAとともにモノクローナル抗体に結合させた111Inは、非腫瘍組織、特に肝臓ではほとんど取り込みを示さず、従って腫瘍の局在の特異性を高める。
適切な非放射性同位元素標識の例としては、157Gd、55Mn、162Dy、2Tr、および56Feが挙げられる。
適切な蛍光標識の例としては、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリスリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、o−フタルアルデヒド標識、およびフルオレサミン標識が挙げられる。
適切な毒素標識の例としては、緑膿菌(Pseudomonas)毒素、破傷風毒素、リシン、およびコレラ毒素が挙げられる。
化学発光標識の例としては、ルミナール(luminal)標識、イソルミナール(isoluminal)標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、およびエクオリン標識が挙げられる。
核磁気共鳴造影剤の例としては、Gd、Mn、および鉄のような重金属核が挙げられる。重水素もまた使用できる。他の造影剤としては、EPR、PET、または当業者に公知の他の画像化機構も存在する。
ポリペプチドに上記標識を結合させるための典型的な技術は、Kennedy等(1976)Clin.Chim.Acta 70:1−31およびSchurs等(1977)Clin.Chim.Acta 81:1−40に提供されている。カップリング技術としては、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸塩法、ジマレイミド法、m−マレイミドベンジル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル法が挙げられ、これらの方法は全て、参照により本明細書中に編入される。
それらの断片を含む本発明のポリペプチドおよび抗体は、バイオチップおよびバイオセンサー技術を使用して、キメラ−Ang1、Tie2、またはキメラAng1/Tie2複合体を検出するために使用することができる。本発明のバイオチップおよびバイオセンサーには、抗体を検出するための本発明のポリペプチドを含ませることができ、抗体はキメラAng1/Tie2複合体を特異的に認識する。本発明のバイオチップおよびバイオセンサーにはまた、本発明のポリペプチドを特異的に認識する抗体を含ませて、キメラAng1/Tie2複合体を検出することもできる。
本発明は、本明細書中に記載されている特定の実施形態によって範囲が限定されない。実際、本明細書中に記載されているものに加えて、本発明の種々の改変が上記の記載および添付の図面から当業者に明らかとなる。このような改変は、添付の特許請求の範囲内にあると意図される。以下の実施例は、本発明の説明のために与えられ、決して限定ではない。
Tie2のリン酸化のためのAng1の多量体化
Tie2受容体に対するアミノ末端領域の役割を決定するために、フィブリノーゲン様ドメイン(アミノ酸284−498)のみを含む短縮型Ang1(Ang1/FD)を作成した。組み換えAng1/FDは約34kDaの分泌型単量体であり、一方、組み換えによって生産された天然のAng1は多量体である(未公開データ)。興味深い点は、単量体Ang1/FDは可溶性Tie2に結合せず、Tie2をリン酸化することもなかったことである。対照的に、天然のAng1はTie2に結合して、これをリン酸化した。従って、Ang1のアミノ末端と多量体化の両方が、Tie2への結合および活性化に必要であり得ると考えられた。
Ang1の多量体化におけるCys41、Cys54、およびCys265の役割を決定するために、アミノ酸17〜80の領域を欠失させ(Ang1−D1)、そしてCys265をSer265で置換した(Ang1S265)。SDS−PAGEゲル分析によって、組み換えAng1−D1が三量体として存在し、Ang1S265が、二量体および単量体を含むいくつかのタイプの多量体の形態をとっていることが明らかになった。これらのデータは、Ang1のCys41、Cys54、およびCys265が分子内および分子外ジスルフィド結合の形成に関与してAng1の多量体を形成することを示唆している。
Ang1の多量体化についてのコイルドコイルドメインの役割を決定するために、本発明者らはAng1のアミノ末端部分を段階的に欠失させた。SDS−PAGEゲル分析では、アミノ酸17〜119の欠失(Ang1−D2)、アミノ酸17〜153の欠失(Ang1−D3)、およびアミノ酸17〜212の欠失(Ang1−D4)が三量体および二量体の形成を生じたことが明らかになった。可溶性Tie2−Fcを用いたインビトロでの結合アッセイでは、Ang1−D2、Ang1−D3、およびAng1−D4がTie2に結合したことを示した。興味深い点は、三量体Ang1によって誘導されるTie2のリン酸化が、二量体Ang1によって誘導されるTie2のリン酸化よりも多かったことである。このデータは、より高次の多量体によってより大きなレベルのTie2のリン酸化が誘導されることを示唆している。さらに、第2のコイルドコイルドメイン(アミノ酸153〜261)およびリンカードメインは、高次の多量体化体を作成する重要な因子であると思われる。さらに、Ang1の多量体化はTie2の結合に不可欠である。
天然のAng1についての遺伝子構築物の作成
ヒトAng1の全長cDNAを、ヒトの成体の心臓cDNAライブラリー(Clontech)から、以下のプライマーを使用して52℃のアニーリング温度での30サイクルのPCRによって増幅させた:BamHI制限酵素部位を含む正方向プライマー5'−GTGCGGATTCACAATGACAGTTTTC−3'(配列番号9);もともとは、5'−GTGCGGCAGTACAATGACAGTTTTC−3'(配列番号10))およびEcoRV制限酵素部位を含む逆方向プライマー(5'−GCTTTCAGATATCTAAAGGTCGAAT−3'(配列番号11);もともとは5'−GCTTTCAAAAATCTAAAGGTCGAAT−3'(配列番号12))。増幅したDNAをpCR−Bluntベクター(Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。
得られたヒトAng1 cDNAをCMVプロモーターにより駆動される哺乳動物細胞発現ベクターpcDNA3.1/Myc−His(Invitrogen)に再度サブクローニングした。pcDNA3.1/Myc−Hisは、c−mycをコードするDNA断片(63bp)と、オープンリーディングフレームとしてのコード領域の3'末端に6×Hisタグを有している(AMV−Ang1−M−H)。
N末端にFLAGタグを有する組み換えAng1を作成するために、以下のプライマーを使用して、60℃のアニーリング温度での25サイクルのPCRを、CMV−Ang1−M−Hに対して行った:正方向プライマー(5'−CAGAAAAGCTTGGGAGAAGATAT−3'(配列番号13))および逆方向プライマー(5'−TAGAAGGCACAGTCGAGGCTGA−3'(配列番号14))。PCR産物をクローニングベクターpCR2.1(Invitrogen)中にサブクローニングし、配列決定した。挿入部分をHindIIIおよびPmeIで切断し、その後、pFLAG−CMV1(Sigma)のHindIIIおよびEcoRV部位にサブクローニングした。このベクターを「天然のAng1(native Ang1)」と名づけた。
キメラコイルドコイル含有Ang1の遺伝子構築物の作成
多量体ではあるが低分子量のAng1を作成するために、Ang1のアミノ末端部分(261個のアミノ酸)を、酵母の転写活性化因子GCN4、軟骨基質タンパク質(CMP;マトリリンまたはMAT)、および軟骨オリゴマー基質タンパク質(COMP)の短いコイルドコイルドメインで置き換えた。GCN4のコイルドコイルドメインは31個のアミノ酸であり、平行な二量体を形成する。CMPのコイルドコイルドメインは43個のアミノ酸であり、平行な三量体を形成する。COMPのコイルドコイルドメインは45個のアミノ酸であり、平行な五量体を形成する。Richard A.Kammerer博士(Department of Structural Biology,University of Basel)により、酵母GCN4、ニワトリMAT、およびラットCOMPのコイルドコイルドメインをコードするcDNAが提供された。
BglIIおよびBamH1制限酵素部位を含むGCN4、CMP(MAT)、およびCOMPのコイルドコイルドメインについてのPCRプライマーを設計した。
GCN4 BglII、正方向プライマー:5'−cagatcttaatgaaacagctggaagacaa−3'(配列番号15)。
GCN4 BamHI、逆方向プライマー:5'−ttggatccttcaccaaccagttttttcagac−3'(配列番号16)。
CMP BglII、正方向プライマー:5'−ccagatcttagaagaagatccgtgcgaatg−3'(配列番号17)。
CMP BamHI、逆方向プライマー:5'−aaggatccgatgattttgttttccagcgc−3'(配列番号18)。
COMP BglII、正方向プライマー:5'−ccagatcttagacctagccccacagatgct−3'(配列番号19)。
COMP BamHI、逆方向プライマー:5'−ttggatcctccgcaagcgtcacattccatc−3'(配列番号20)。
PCRを、52℃のアニーリング温度で30サイクル行った。PCR産物をクローニングベクターpZErO−2(Invitrogen)にサブクローニングし、配列決定した。これを、「pZErO−2CCD」と名づけた。
HindIII、BamH1およびXhoI制限酵素部位を含む血球凝集素およびFLAGの分泌シグナル配列を作成するために、以下の正方向のオリゴヌクレオチドおよび逆方向のオリゴヌクレオチドを合成した。
SHG−FLAG HindIII−BamH1−XhoI(HBX)正方向プライマー:5'AAGCTTAAGCTTGCCACCATGAAGACGATCATCGCCCTGAGCTACATCTTCTGCCTGGTATTCGCCGACTACAAGGACGATGATGACAAGGGGATCCACTAGTCTCGAG−3'(配列番号21)。
SHG−FLAG XhoI−BamH1−HindIII(XBH)逆方向プライマー:5'CTCGAGACTAGTGGATCCCCTTGTCATCATCGTCCTTGTAGTCGGCGAATACCAGGCAGAAGATGTAGCTCAGGGCGATGATCGTCTTCATGGTGGCAAGCTTAAGCTT−3'(配列番号22)。
正方向および逆方向のヌクレオチドをアニーリングさせた。アニーリングした反応産物を、哺乳動物細胞発現ベクターpCDNA3.1(Invitrogen)のHindIIIおよびXhoI部位に連結した。このベクターを「pCDNA−Signal−FLAG」と名づけ、これをBglIIおよびBamHIとともにインキュベートした。遊離させたPCR断片をBamHIで消化したpCDNA−Signal−FLAGに挿入した。このベクターを「pCDNA−シグナル−FLAG−CC」と名づけた。
BamH1およびXhoI制限酵素部位を含む、リンカーおよびAng1のフィブリノーゲンドメイン(Leu261から末端まで)についてのPCRプライマーを設計した。
A1LF BamH1、正方向プライマー:5'−ttggatcccttgtcaatctttgcactaaag−3'(配列番号23)。
A1LF Xho1、逆方向プライマー:5'−ttctcgagtcaaaaatctaaaggtcgaatcatc−3'(配列番号24)。
52℃のアニーリング温度で30サイクルのPCRを行った。PCR産物をクローニングベクターpZErO−2(InVitrogen)にサブクローニングし、配列決定した。これを「pZErO−2A1LF」と名づけ、BamHIおよびXho1とともにインキュベートした。遊離させたPCR断片を、BamH1およびXhoIで消化したpCDNA−シグナル−FLAG−CCに挿入した。このベクターを「pCDNA−Signal−FLAG−CC−A1LF」と名づけた。図14は、多量体キメラ−Ang1についての遺伝子構築物を作成するための模式図を示す。
上記のように、4つの遺伝子構築物を作成し、配列分析によって確認した、図15を参照のこと。
(1)pCDNA−シグナル−FLAG−ヒトAng1(天然のAng1)。
(2)Ang1のGCN4−フィブリノーゲンドメインのpCDNA−シグナル−FLAG−コイルドコイルドメイン(GCN4/CC−Ang1/FD;またはGCN4−Ang1)。
(3)Ang1のMAT−フィブリノーゲンドメインのpCDNA−シグナル−FLAG−コイルドコイルドメイン(CmP/CC−Ang1/FD;またはMAT−Ang1)。
(4)Ang1のCOMP−フィブリノーゲンドメインのpCDNA−シグナル−FLAG−コイルドコイルドメイン(COMP/CC−Ang1/FD;またはCOMP−Ang1)。
上記の核酸分子の全てを、標準的な組み換えDNA技術によって構築し(例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Sambrook等、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY;Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel等、.編,Greene Publ.Assoc.,Wiley−Interscience,NYを参照のこと)、ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems,Foster City,CA)およびTaq Dideoxy Terminator Cycle Sequencing Kitを使用して、BigDye Terminator Cycle Sequencingバージョン2.0(Applied Biosystems,Inc.,Foster City,CA)、ABI 373A DNAシーケンサーを使用して標準的な技術によって配列を確認し、そして哺乳動物発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen,Inc.)にサブクローニングした。
以下に記載する架橋配列を導入して、便利な制限部位を提供し、ドメイン間の結合に柔軟性を与えた。しかし、これらの架橋配列について重要な性質があるとの指示はなく、従って、これらの構築物のいくつかにおいてリンカーの長さを変化させることにより、タンパク質の産生量が多少変動した。
天然のAng1の構築
天然のAng1は、分泌を可能にするためのそのアミノ末端のプレプロトリプシンリーダー配列(Met−Ser−Ala−Leu−Leu−Ile−Leu−Ala−Leu−Val−Gly−Ala−Ala−Ala(配列番号25))(塩基1〜42)、FLAGタグ配列(Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号26)、塩基43〜66)、架橋アミノ酸Leu(塩基67〜69)、Ang1のコード配列(塩基70〜1470)、アミノ酸Asp−Ile−Gln−His−Ser−Gly−Gly−Arg−Ser−Ser−Leu−Glu−Gly−Pro−Arg−Phe(配列番号27)より構成される別の架橋配列(塩基1471〜1518)、およびMycエピトープ(Glu−Gln−Lys−Leu−Ile−Ser−Glu−Glu−Asp−Leu(配列番号28)、塩基1519〜1548)、ならびにアミノ酸Asn−Met−His−Thr−Gly(配列番号29)より構成される短い架橋配列(塩基1549〜1563)、この後ろの、His−Tag(His−His−His−His−His−His(配列番号30)、塩基1564〜1581)から構成される。
GCN4/CC−Ang1/FDの構築
GCN4/CC−Ang1/FDは、分泌を可能にするためのそのアミノ末端の血球凝集素のシグナル配列(配列番号3の塩基1〜48(図5)、FLAGタグ配列(配列番号3の塩基49〜72(図5))、配列番号3のアミノ酸Gly−Ile−Leuから構成される短い架橋配列(図5))、GCN4のコイルドコイルドメインのコード配列(配列番号3の塩基82〜174(図5))、アミノ酸Gly−Serの別の架橋配列(配列番号3の塩基175〜180(図5))、およびAng1のリンカー領域のコード配列(配列番号3の塩基181〜249(図5))、その後ろの、Ang1のフィブリノーゲンドメイン(FD)(配列番号3の塩基250〜897(図5〜7))から構成される。
CMP/CC−Ang1/FDの構築
CMP/CC−Ang1/FDは、分泌を可能にするためのそのアミノ末端の血球凝集素のシグナル配列(配列番号5の塩基1〜48(図8))、FLAGタグ配列(配列番号5の塩基49〜72(図8))、アミノ酸Gly−Ile−Leuから構成される短い架橋配列(配列番号5の塩基73〜81(図8))、MATコイルドコイルドメインのコード配列(配列番号5の塩基82〜210(図8))、アミノ酸Gly−Serから構成される別の架橋配列(配列番号5の塩基211〜216(図8))、およびAng1のリンカー領域のコード配列(配列番号5の塩基217〜285(図8))、その後ろの、Ang1のフィブリノーゲンドメイン(FD)(配列番号5の塩基286〜933(図8〜10))から構成される。
COMP/CC−Ang1/FDの構築
COMP/CC−Ang1/FDは、分泌を可能にするためのそのアミノ末端の血球凝集素のシグナル配列(配列番号7の塩基1〜48(図11))、FLAGタグ配列(配列番号7の塩基49〜72(図11))、アミノ酸Gly−Ile−Leuにより構成される短い架橋配列(配列番号7の塩基73〜81(図11))、COMPコイルドコイルドメインのコード配列(配列番号7の塩基82〜221(図11))、アミノ酸Gly−Serから構成される別の架橋配列(配列番号7の塩基222〜227(図11))、およびAng1のリンカー領域のコード配列(配列番号7の塩基228〜296(図11))、その後ろのAng1のフィブリノーゲンドメイン(FD)(配列番号7の塩基250−949(図11〜13))から構成される。
キメラAng1タンパク質の特性決定−分子量分析
還元状態の天然のAng1、Ang1/FD、CC−Ang1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1についての予想分子量を、Swiss−PROTプログラムを使用して決定した。FLAGタグがつけられた天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1の予想分子量は、それぞれ、58810.82Da、32044.28Da、33330.88Da、および33522.96Daであった。天然のAng1には5個のN結合グリコシル化部位があるが、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1のそれぞれにおいてはN結合グリコシル化部位は1つしか予想されなかった。これらの予想されるN結合グリコシル化部位により、およそ2500Da/部位で分子量が大きくなる可能性がある。従って、還元条件下の天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1についての予想分子量は、それぞれ、およそ71.3kDa、34.5kDa、35.8kDa、および36.0kDaである。その後の以下に記載するCOS細胞から誘導したタンパク質のSDS PAGE分析(図16)により、これらのおおよその分子量を確認した。天然のAng1(約75kDa)、GCN4−Ang1(約40kDa)、MAT−Ang1(約43kDa)、およびCOMP−Ang1(約44kDa)の分子量を還元条件下で決定した。
非還元条件下では、種々の大きさの天然のAng1と、予想した大きさのGCN4−Ang1(約80kDa)が見られた。しかし、組み換えMAT−Ang1(約135kDa)およびCOMP−Ang1(約220kDa)が非還元条件下で予想した分子量を示したことと比較して、MAT−Ang1(約130kDaおよび約180kDa)、およびCOMP−Ang1(約180kDaおよび約220kDa)は、非還元条件下では予想よりも大きな分子量を示した(図16)。
COS細胞中での発現レベル
天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1の組み換えタンパク質を、COS−7細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション、Manassas、VA)中での一過性の発現によって、エフェクテン(リポソームの一種)トランスフェクション法を使用して製造業者の説明書(Qiagen,Inc.)に従ってアッセイした。簡潔にいうと、COS−7細胞を、10%のFBSを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含むゼラチンでコーティングした100mmの皿の中で、37℃で5%のCO雰囲気で増殖させた。細胞集密率約40〜50%のCOS−7細胞の皿を形質導入に使用した。エフェクテン形質導入試薬をDNA−エンハンサー混合物と混合した。形質導入複合体を形成させるための10分間のインキュベーションの後、形質導入複合体を細胞に添加し、そして細胞を5%のFBSを加えたDMEMとともに、37℃で5%のCO雰囲気でインキュベートした。48〜60時間後に、形質導入した細胞から上清回収した。
COS細胞株の上清の精製
組み換えタンパク質がFLAG配列を含むので、精製は比較的単純で簡単であり、これには、抗−FLAG M1抗体−アガロースアフィニティーゲルカラムクロマトグラフィー(Sigma−Aldrich,Inc.)を使用した。簡単に言うと、抗−FLAG M1抗体−アガロースゲルを0.1Mのグリシン/HCl(pH3.5)で洗浄し、1×TBS緩衝液(50mMのTris、150mMのNaCl、pH7.4)で平衡状態にした。それぞれの組み換えタンパク質を含む上清を、抗−FLAG M1抗体−アガロースゲルを充填したカラムに通過させた。上清を3回通過させた後、カラムを1mMのCaClを含む1×TBS緩衝液で洗浄した。M1ゲルに結合した組み換えタンパク質を、1×TBSおよびFLAGペプチド(Sigma−Aldrich,Inc.)を含む溶出緩衝液で溶出させた。比較的容易な組み換えタンパク質の精製により、大規模で手間のかかる精製スキームが必要であるもともとのタンパク質アンジオポエチン−1の精製を上回る明確な利点が提供される。COS−7の上清の精製後、組み換えタンパク質を従来のBradford法を使用してDU 800分光光度計(Beckman,Inc.)を用いて定量し、そしてSDS−PAGEゲルのクマシーブルー染色により確認した。これらの分析は、COS−7細胞の上清1Lあたり600〜700μgのそれぞれの組み換えタンパク質が得られたことを示しており、これらは中程度の発現レベルを示している。
組み換えタンパク質はCOS−7細胞から効率よく分泌され、培養培地中に存在している全タンパク質の98%を超えた。全ての組み換えタンパク質が、高い効率(>95%)でそれらのそれぞれの精製基質に結合した。組み換えの天然のAng1のおよそ40〜50%が精製基質から回収され、一方、GCN4−、MAT−、およびCOMP−Ang1変異体については約80%が回収された。酸沈殿を用いた溶解度のアッセイは、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1は溶解度が高いが、天然のAng1は溶解度が低いことを示した(表1)。さらに、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1は極めて安定であり、時間がたっても凝集しなかったが、天然のAng1がその活性を徐々に失い、時間とともに凝集した(表1)。
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変性条件下での精製したタンパク質のSDS−PAGE分析により、予想した分子の質量のほぼ単一のバンドが明らかになった(図16A)。非還元条件下では、全長のAng1は種々の大きさの特徴的なジスルフィド結合した多量体を形成し、一方、GCN4−Ang1はジスルフィド結合した二量体を形成し、MAT−Ang1はジスルフィド結合した三量体および四量体を形成し、そしてCOMP−Ang1はジスルフィド結合した五量体および六量体を形成した(図16A)。天然のAng1およびキメラAng1変異体のオリゴマー構造を確認するために、本発明者らは回転式シャドウイング透過電子顕微鏡を使用してオリゴマーを直接画像化した。
材料および方法−グリセロールスプレー/低角回転式金属シャドウイングおよびTEM − グリセロールスプレー/低角回転式金属シャドウイングのために、TBS中の0.02〜0.1mg/mlのタンパク質試料20μl、および30%のグリセロールを新しく切断した雲母の上に室温でスプレーし、回転式シャドウイングをBA 511 M凍結−エッチング装置(freeze−etch apparatus(Balzers))上で白金/炭素を用いて3〜5°の仰角で行った(36)。電子顕微鏡写真を、Megaview III CCDカメラを取り付けたPhilips Morgagni TEMを80kVで操作して、撮影した。
天然のAng1について得られた画像のうちの約20〜25%が、三量体状態の分子を示し、これらはマッシュルーム型の構造を生じ、「茎」構造(4本鎖のコイルドコイル)の末端にある不規則な球根状の「キャップ」構造(結合ドメイン)と、「茎」の他方の末端にある小さい球状構造(クラスター形成ドメイン)とから構成されている(図16B)。天然のAng1について得られた画像の大部分(75〜80%)は、「マッシュルーム様」の基礎的要素に複数のバリエーションを示し、中心部分でクラスターを形成することにより互いに接近する塩基性三量体である(図16B)。これらのデータは、組み換え天然のAng1が多量体化の程度が不均一である塩基性三量体構造を有することを示している。これらの結果は、Davis and colleagues(Davis,S.等、2003,Nat.Struct.Biol.10:38−44)によって得られた結果と本質的に一致するが、彼らはそれらのAng1の塩基性の単位が、アミノ末端のコイルドコイルドメインについては起こりそうもない二量体であると結論付けた。それにもかかわらず、天然のAng1調製物の活性についてのバリエーションはその多量体化の程度の結果であり得る。対照的に、GCN4−Ang1、CC−Ang1、およびCOMP−Ang1について得られた最も多い画像は、それぞれ、二量体(>95%)、三量体(>95%)、および五量体(約65%)であった。興味深い点は、MAT−Ang1が、三量体よりもむしろ四量体(約70%)を形成すると思われることであり、このことはゲルのデータと一致する(図16B)。
COS−7細胞の上清はおよそ1mgのそれぞれの精製された天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1を生じた。これらを、タンパク質のさらなる特性決定するために下記の研究に使用した。
COS細胞から誘導したキメラ−Ang1の受容体結合分析
GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1の可溶性Tie2−Fc受容体に対する結合の分析を、インビトロでの結合アッセイおよびBiacoreアッセイを使用して行った。インビトロでの標準的な結合アッセイにより、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1が可溶性Tie2受容体に結合することが明らかになった(図17)。
20ngの各組み換えキメラ−Ang1タンパク質と100ngの可溶性Tie1−Fcまたは可溶性Tie2−Fcを、0.02%のTritonX−100を含む500μlのTris緩衝液(50mMのTris、100mMのNaCl、pH7.4)中で4℃で2時間インキュベートした。その後、20μlのプロテイン−Aアガロースビーズ(Oncogene)を添加し、4℃でさらに1時間インキュベートした。プロテイン−Aに結合した試料を、0.02%のTritonX−100を含む1mlのTris緩衝液で2回洗浄した。試料を試料緩衝液で溶出させ、熱変性させた。試料をさらに10%のSDS−PAGEによって分離させ、ニトロセルロース膜上にエレクトロブロッティングし、そして抗−FLAG M1抗体を用いてウェスタンブロットを行って、結合した組み換えキメラ−Ang1を検出した。これをさらに洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体とともにインキュベートした。シグナルを、製造業者のプロトコール(Amersham Pharmacia Biotech)に従って化学発光分析計(LAS−1000、富士フィルム、東京)を使用して目に見えるようにした。図17を参照のこと。天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1のそれぞれおよそ75%、20%、95%、または100%がsTie2−Fcに結合した。対照的に、これらのいずれもがsTie1−Fcには結合しなかった。
あるいは、天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1のCOS−7細胞から誘導した組み換えタンパク質がTie−2受容体に結合することができるかどうかを決定するために、標準的なBiacore分析をBIA2000(BIAcore,Inc.)によって行った。簡潔に言うと、Tie−2受容体のエクトドメインとヒトIgG1のFcドメインからなる融合タンパク質であるTie−2−Fc受容体タンパク質(R&D Inc)600ngをBiacoreチップ(センサーチップCM5)上に固定した。対照として、ヒトIgG1のFcドメインのみを有しているFcタンパク質600ngもまた、同じチップ上に固定した。結合親和性は、Tie−2−Fcタンパク質を使用して得られた値からFcタンパク質を使用した場合の応答値を減算することによって得た。
天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1を含む組み換えタンパク質をチップ上に通過させて、Tie−2受容体のエクトドメインと組み換えタンパク質との間で結合させた。結合段階の後に解離段階を行って、結合したタンパク質をTie−2受容体のエクトドメインから解離させた。GCN4−Ang1は5分以内に固定化されたTie−2受容体のエクトドメインから完全に解離したが、MAT−Ang1、COMP−Ang1、および天然のAng1は容易には解離しなかった。このことは、MAT−Ang1、COMP−Ang1、天然のAng1とTie−2受容体のエクトドメインとの間に強力な相互作用があることを暗に意味している。これらのタンパク質を受容体から解離させるために、種々のHCl溶液(pH4.0〜2.0)および塩濃度の高い(1MのNaCl)溶液を、チップ上に通過させた。しかし、これらの溶液はTie−2受容体のエクトドメインと組み換えタンパク質との間の相互作用を壊すことはできず、このことは、Tie−2受容体のエクトドメインと組み換えタンパク質(MAT−Ang1、COMP−Ang1、および天然のAng1)との間に強い相互作用が存在することを示している。図18A〜18Dおよび図19を参照のこと。
さらに、天然のAng1の解離フェーズはGCN4−Ang1/FD、MAT−Ang1/FD、COMP−Ang1/FDよりも遅く、このことは、天然のAng1のコイルドコイルドメインの改変により、Tie2受容体に対するその解離定数が大きくなったこと、および天然のAng1の高い親和性がその遅い解離によって生じたことを暗示している。
Tie2のリン酸化アッセイ
ヒトの臍静脈内皮細胞(HUVECs)を、コラゲナーゼ消化によってヒトの臍帯から調製し、以前に記載されたように維持した(Kim等、2000、Circ.Res.86:24−29)。生化学的アッセイに使用した一次培養細胞は、第2継代から第3継代の間であった。一次培養されたHUVECを、対照緩衝液、および200ngの天然のAng1、および100ngのGCN4−Ang1、MAT−Ang1、またはCOMP−Ang1とともに10分間インキュベートした。細胞を抽出緩衝液中で収集し、そして0.5mgのタンパク質を免疫沈降に使用した。試料中のTie2タンパク質を、抗−Tie2抗体を用いて免疫沈降させて、回収した。免疫沈降させた試料を抗−ホスホ−チロシン抗体を用いてウェスタンブロットし(図20A、上のバンド)、そして膜を抗−Tie2抗体で再度ブロットして(図20A、下のバンド)、それぞれのレーンに等量のタンパク質がロードされたことを確認した。このアッセイによって、COMP−Ang1によって誘導されたTie2のリン酸化(約8.8倍)が、天然のAng1(約3.6倍)またはMAT−Ang1(約4.0倍)によって誘導されたリン酸化よりもはるかに多かったことが明らかになった。しかし、GCN4−Ang1はTie2のリン酸化は変化させなかった(図20)。
Akt(Ser473)のリン酸化アッセイ
HUVECを、対照緩衝液、200ngの天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、またはCOMP−Ang1ともに15分間インキュベートした。あるいは、HUVECを、対照緩衝液、および種々の量のCOMP−Ang1とともにインキュベートした。HUVECをまた、200ngのCOMP−Ang1とともに種々の時間の間インキュベートした。処理後、細胞溶解物を収集した。各レーンには、細胞溶解物に由来する50μgの全タンパク質を含ませた。ウェスタンブロットを抗−リン−Akt(Ser473)抗体でプローブした。ブロットを抗−Akt抗体で再度プローブして(図21A〜21C、下のバンド)、それぞれのレーンに等量のタンパク質がロードされたことを確認した。このアッセイにより、COMP−Ang1によって誘導されたAkt(Ser473)のリン酸化(9.7倍)が、天然のAng1(3.7倍)またはMAT−Ang1(3.3倍)によって誘導されたAkt(Ser473)のリン酸化よりも多かったことが明らかになった。しかし、GCN4−Ang1はAkt(Ser473)のリン酸化は変化させなかった。COMP−Ang1によって誘導されたAkt(Ser473)のリン酸化は、用量依存性の様式で生じ、60分まで持続した(図21A〜21C、上のバンド)。
アポトーシスアッセイ
アポトーシスを誘導するために、HUVECを、20%のFBSを含むM−199中のゼラチンで覆った24ウェルプレート上にプレーティングし(1ウェルあたり7×10個の細胞)、12時間インキュベートした。ウェルをPBSで十分に洗浄し、培地を、対照緩衝液、200ng/mlの天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、またはCOMP−Ang1を含む無血清M−199培地に変え、30時間インキュベートした。浮遊しているアポトーシス性細胞をPBSでの2回の洗浄によって回収した。接着細胞をトリプシン化によって回収した。すべての細胞をAnnexin V FLUOS染色キット(Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,Germany)で20℃で15分間染色した。Annexin−Vおよびヨウ化プロピジウム(PI)での染色の後、細胞をフローサイトメーターで分析し、データをCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)で分析した。結果は以下の通りである:天然のAng1(細胞の生存性が約47%増大した)、GCN4−Ang1(細胞の生存性が約12%増大した)、MAT−Ang1(細胞の生存性が約55%増大した)、およびCOMP−Ang1(細胞の生存性が約71%増大した)。図22A〜22E。表2もまた参照のこと。
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インビトロでの創傷移動アッセイ
細胞移動アッセイを、わずかに改変を加えてSato and Rifkin(1989、J.Cell.Biol.109:309−315)に従って行った。一次培養したHUVECを直径30mmの皿の中で1mlの通常の増殖培地中で集密状態にまで増殖させた。2枚刃のかみそりの刃で細胞層を引っ掻くことによって単層中に創傷を作成し、損傷の線をつけた。引っ掻き傷は5〜7mm幅の範囲に広がった。創傷をつくった後、培養物を無血清培地ですぐに洗浄して細胞破片と放出された全ての可溶性因子を取り除いた。傷をつけた細胞をさらに、対照緩衝液、または200ng/mlの天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、またはCOMP−Ang1を含む無血清培地中でインキュベートした。HUVECを10時間移動させ、PBSでリンスし、その後、純メタノールで固定し、そしてギムザで染色した。移動を、基準線を越えて移動した細胞の数を数えることによって定量した。全ての実験を3連で行った。結果は以下の通りであった:天然のAng1(細胞の移動が1.86倍増加した)、GCN4−Ang1(細胞の移動が1.20倍増加した)、MAT−Ang1(細胞の移動が2.06倍増加した)、およびCOMP−Ang1(細胞の移動が2.58倍増加した)。図22F〜22Jを参照のこと。表2もまた参照のこと。
菅形成アッセイ
マトリゲル(Sigma−Aldrich Inc.)を4℃で一晩かけて解凍し、冷却したピペットチップを使用して均質になるまで混合した。マトリゲルを4℃で24ウェル組織培養プレート(250μl/ウェル)に添加した。24ウェルプレートを37℃の細胞培養インキュベーターに移し、1時間インキュベートしてマトリゲルを固化させた。HUVECをトリプシン化し、計数し、無血清M−199培地中に再懸濁し、対照緩衝液、および200ng/mlの天然のAng1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、またはCOMP−Ang1の存在下でマトリゲルに添加した(1×10個の細胞/ウェル)。細胞を12時間インキュベートしてキャピラリー様構造を形成させた。12時間後、ウェルをPBSで洗浄し、0.5%のグルタルアルデヒド中で30分間固定し、そしてキャピラリー様の管の長さをImage Pro−Expressソフトウェア(Cyber Media)を使用して定量した。結果は以下の通りである:天然のAng1(管形成が約1.49倍増大した)、GCN4−Ang1(管形成が約0.90倍増大した)、MAT−Ang1(管形成が約1.53倍増大した)、およびCOMP−Ang1(管形成が約1.96倍増大した)。図22K〜22Oを参照のこと。表2もまた参照のこと。
芽形成アッセイ
ブタの肺動脈内皮細胞(PPAEC)について細胞の芽形成アッセイを、以前に記載されているように行った(Kim等、2000,Circ.Res.86:952−959)。簡単に言うと、PPAECをマイクロキャリアビーズ上(直径175μm;Sigma)で集密状態になるまで増殖させ、2.0%の熱不活化FBSおよび表示した組み換えタンパク質を含む2.5mg/mlのフィブリノーゲンゲルに入れた。フィブリンゲルを、同じ量の組み換えタンパク質を毎日添加しながらDMEM中でインキュベートした。3日後、そのことを知らない無関係な2人の治験者に、倒立顕微鏡を使用して、実験のもの、または対照について、芽形成の数を数えさせた。50個のマイクロビーズあたりの、マイクロビーズの直系(175μm)を超える長さの内皮の芽形成の数を数えさせた。治験者間の偏差は、<5%であった。2人の治験者による平均の数を使用して芽形成の数を推定した。結果は以下の通りであった:天然のAng1(芽形成が2.58倍増大した)、GCN4−Ang1(芽形成が1.20倍増大した)、MAT−Ang1(芽形成が2.22倍増大した)、およびCOMP−Ang1(芽形成が3.42倍増大した)。図22P〜22Tを参照のこと。表2もまた参照のこと。
COMP−Ang1は単独でインビボでの強力な血管形成を誘導する
天然のAng1およびCOMP−Ang1についてインビボでの血管形成に対する効果を評価するために、本発明者らは組み換えタンパク質を含むペレットの移植を用いる角膜マイクロポケット試験を行った。
材料および方法 − 8週齢の雄性C57BL/6Jマウス(Jackson Labs,Bar Harbor,Maine)を全ての実験に使用した。術前麻酔をペントバルビタールの腹腔内注射によって行った(160mg/kg)。眼を0.5%のプロパラカイン(Alcaine,Alcon,Belgium)で麻酔した。手術用顕微鏡(SZ4045TRPT,Olympus,Japan)を使用して、中心におよそ0.6mmの長さの基質内直線角膜切開を、外科手術用メス(Bard−Parker no.15;Becton Dickenson,Franklin Lakes,New York)を用いて行い、マイクロポケットを、改良型von Graefeナイフ(Muthukkaruppan,V.& Auerbach,R.1979,Science 205:416−1418)を使用して側頭周辺に向かって解剖した。ポケットを側頭周辺に1.0mm以内まで伸ばした(Kenyon,B.M.等、1996,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.37:1625−1632)。スクロース硫酸アルミニウムのペレット(0.4×0.4×0.2mm;Sigma−Aldrich)を、以下の1つを含むハイドロンポリマー(Sigma−Aldrich)でコーティングした:対照緩衝液(0.05mol/LのTris−HCl、pH7.5、150mmol/LのNaCl、0.05%のChaps);天然のAng1(600ng/ペレット);またはCOMP−Ang1(300ng/ペレット)。ペレットを角膜輪部から0.5mmに置き、エリスロマイシン眼軟膏をそれぞれ手術した眼に塗った。ペレットの移植後の術後6日目に、全てのマウスの角膜を、SZ4045TRPT立体顕微鏡(Olympus、日本)に取り付けたCoolpix995デジタルカメラ(Nikon、日本)によって試験し、写真を撮影した。管長および血管形成によって占められた角膜の外周の円弧(外周の血管形成の程度)を測定した。これらの測定が完了した後、マウスにFITCに結合させた500μgの内皮細胞特異的マーカーBS−1レクチン(Vector Laboratories,Burlingame,California)を静脈注射した。30分後に動物を屠殺した。眼を摘出し、1%のパラホルムアルデヒド中に固定した。固定後、角膜をガラススライドの上に載せ、Axioplan2 Imaging蛍光顕微鏡に取り付けたAxioCAM CCDカメラ(Carl Zeiss,Germany)によって試験した。
ペレットの移植後6日目に、角膜の血管形成を立体顕微鏡を使用して評価した(図24A)。以前の報告(Asahara,T.等、1998,Circ.Res.83:233−240)と一致して、対照緩衝液または天然のAng1を含むペレットは、単独では顕著な血管形成を誘導できなかった。しかし、COMP−Ang1を含むペレットは角膜の血管形成を誘導し、これは角膜を通過して縁から伸びた(0.96±0.22mmの長さ)(図24A〜24D)。このように、COMP−Ang1は、インビボで強い血管形成効果を示した。本発明者らはまた、インサイチュBS−1レクチン蛍光顕微鏡を使用して同じ動物において角膜輪部の動脈の管腔直径を測定した(図24B、左のパネル)。興味深い点は、COMP−Ang1が基部周辺動脈の管腔直径を増大させたことに対して、天然のAng1は全く変化を生じなかったことである(図24D)。周囲の動脈の前方部分を示す角膜切片の組織学的分析により、血管形成は、対照で処置された角膜および天然のAng1で処置された角膜と比較して、COMP−Ang1で処置された角膜において活発であることが確認された(図24B、右のパネル)。これらのデータは、COMP−Ang1が単独で血管形成効果を生じることができ、より大きな動脈を通じて大きな血流を生じることができることを示唆している。
COMP−Ang1の迅速な注射により肺ではTie2のリン酸化が誘導される
成体マウスでのTie2の組織発現の試験によって、このタンパク質が肺に最も豊富に存在することが明らかになった(図25A)。免疫組織化学的分析により、Tie2が大きな血管中および微小血管のほとんどの内皮細胞で発現されていることが明らかになり、このことは内皮細胞の表面マーカーPECAM−1についての免疫染色によって明らかである(図25A〜F)。従って本発明者らは、成体マウスの肺でのTie2の活性化に対する天然のAng1およびCOMP−Ang1の迅速な投与の効果を試験した。COMP−Ang1によって誘導されたTie2のリン酸化だけが大きいわけではなく、天然のAng1によって誘導されたTie2のリン酸化もまた顕著により持続した(図25B〜25C)。一貫性のある結果がまた、Aktのリン酸化についても得られた(未公開データ)。従って、COMP−Ang1はインビボでのTie2の活性化について天然のAng1よりも強力である。さらに、これらのデータは、COMP−Ang1の迅速な投与によってインビボにおいてほとんどの内皮細胞中のTie2を活性化できることを暗に意味している。
COMP−Ang1は放射線によって誘導されるアポトーシスおよび死から保護する
消化管(GI)の損傷は、ガンの処置における放射線の使用を制限する。腸絨毛中の微小血管内皮のアポトーシスは、高い放射線量によって生じる原発病巣である(Paris,F.等、2001,Science 293:293−297)。従って本発明者らは、マウスの全身照射モデルにおいて微小血管の内皮細胞の生存性に対するCOMP−Ang1の静脈内(i.v.)処置の効果を試験した。
材料および方法 − 6mev線形加速装置(NELAC−1006X,東京、日本)を用いて、12〜15Gyの放射線を照射した。タンパク質の注射については、放射線照射の30分前、30分後、および90分後に、マウスに33μgの用量で100μgのCOMP−Ang1を与えた。対照マウスについては、100μgのBSAを同じ時間に注射した。生存性を照射後12時間ごとに観察した。生命表法による生存性を、積限界Kaplan−Meier法(Kaplan,E.& Meier,P.1958,J.Am.Statist.Assoc.53:457−816)によって計算し、P値をFisher両側検定によって評価した。
免疫組織化学およびアポトーシスアッセイ − マウスを屠殺する際に、組織をメチルブタン(Sigma−Aldrich)中のOCT中で、氷上で凍結させ、10%の中性緩衝ホルマリン中に固定し、パラフィンで包埋した。凍結組織のブロックを10μmの切片に切り、この切片を抗−Tie2抗体(C−20,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)または抗−PECAM−1抗体(MEC13.3,BD PharMingen,San Diego,California)とともに4℃で一晩インキュベートした。シグナルを細胞および組織染色キット(R&D Systems)で眼に見えるようにした。切片をメチルグリーン又はMeyer'sヘマトキシリンで対比染色した。角膜のパラフィン組織ブロックを5μmの切片に切り、ヘマトキシリンとエオシンで染色した。放射線照射した組織のパラフィン組織ブロックを8μmの厚さの切片に切り、PECAM−1およびTUNEL法(Intergen,Norcross,Georgia)で同時に染色して、内皮のアポトーシス性細胞を検出した。微小血管内皮細胞、ならびに小腸絨毛および肺内皮のアポトーシス性細胞を観察し、計数し、カラーCCDカメラ(ProgResC14,Jenoptik,Germany)およびモニターが取り付けられているAxioskope2 plus顕微鏡(Carl Zeiss,Germany)を用いて写真を撮影した。2人の無関係な何も知らされていない治験者により、それぞれのグループについて5匹の異なる動物に由来する1000個の絨毛(マウス一匹あたりおよそ200個の絨毛)中のアポトーシス性内皮細胞を数えさせた。治験者間での偏差は<5%であった。
統計データ − データは、平均±標準偏差として表す。統計的有意性は、Student−Newman−Keuls検定に従って一元配置分散分析(one−way ANOVA)を使用して試験した。統計的有意性をp<0.05に設定した。
放射線照射(15Gy)の4時間後のFVBマウスの腸標本についての末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼによって媒介されるdUTPのニック末端標識(TUNEL)は、絨毛中で最大かつ広範囲の内皮のアポトーシスを示した。これは、以前の報告と一致している(Paris,F.等、2001,Science 293:293−297)。15Gyの放射線照射の直前および直後のFVBマウスへのCOMP−Ang1の静脈注射により、アポトーシス性内皮の損傷が劇的に減少したが、腸の表皮細胞および陰窩の細胞のアポトーシスに対しては影響がなかった(図26A〜26H)。本発明者らは、放射線に曝された後の胸腺、脾臓、唾液腺の細胞、直腸の陰窩の細胞、リンパ様組織、および多核白血球において広範囲のアポトーシスを見出したにもかかわらず、COMP−Ang1での処置は、これらの非内皮細胞に対しては有意な効果はなかった。従って、COMP−Ang1は内皮細胞に対して特異的に、放射線障害に対する保護を提供する。これにより、15Gyの放射線を照射したマウスの実際の生存性は平均して、対照マウスについての144±7時間(中央値144時間)から、静脈内でCOMP−Ang1で処置したマウスについての190±8時間(中央値192時間)にまで延びた(図26I)。静脈内でのCOMP−Ang1での処置後に12Gyの放射線を照射したマウスについての生存性は、平均して、対照マウスについての220±9時間(中央値216時間)から、静脈内でCOMP−Ang1で処置したマウスについての258±11時間(中央値260時間)にまで延びた。従って、COMP−Ang1での静脈内処置は腸の絨毛での微小血管内皮のアポトーシスから保護することが、消化管での放射線治療の副作用を抑制することに非常に有効であり得る。
本明細書中で引用した全ての参考文献は、それらの全体を引用することにより本明細書中に組み込むものとする。
当業者は、日常的な実験以上のものを用いることなく、本明細書中に詳細に記載されている本発明の具体的な実施形態の多くの均等例を認識し、確認することができる。そのような均等例は特許請求の範囲に含まれるものと意図される。
図1は、アンジオポエチン−1の模式的な構造を示す。アミノ酸1〜19は分泌シグナル配列(S)であり、アミノ酸158〜255はコイルドコイルオリゴマードメイン(CCOD)であり、アミノ酸226〜283はリンカー(L)であり、そしてアミノ酸284〜498はフィブリノーゲン様ドメイン(FLD)である。システイン(C)は、アミノ酸41番、54番、265番、315番、435番、437番、439番、および452番に存在する。 図2は、Ang1/FD(Ang1のフィブリノーゲン様ドメイン)の核酸配列(配列番号1)および予想されるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。 図3は、Ang1/FD(Ang1のフィブリノーゲン様ドメイン)の核酸配列(配列番号1)および予想されるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。 図4は、Ang1/FD(Ang1のフィブリノーゲン様ドメイン)の核酸配列(配列番号1)および予想されるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。 図5は、GCN4/CC−Ang1/FD(GCN4−Ang1/FDのコイルドコイルドメイン)の核酸配列(配列番号3)および予想されるアミノ酸配列(配列番号4)を示す。 図6は、GCN4/CC−Ang1/FD(GCN4−Ang1/FDのコイルドコイルドメイン)の核酸配列(配列番号3)および予想されるアミノ酸配列(配列番号4)を示す。 図7は、GCN4/CC−Ang1/FD(GCN4−Ang1/FDのコイルドコイルドメイン)の核酸配列(配列番号3)および予想されるアミノ酸配列(配列番号4)を示す。 図8は、CMP/CC−Ang1/FD(CMP−Ang1/FDのコイルドコイルドメイン)の核酸配列(配列番号5)および予想されるアミノ酸配列(配列番号6)を示す。 図9は、CMP/CC−Ang1/FD(CMP−Ang1/FDのコイルドコイルドメイン)の核酸配列(配列番号5)および予想されるアミノ酸配列(配列番号6)を示す。 図10は、CMP/CC−Ang1/FD(CMP−Ang1/FDのコイルドコイルドメイン)の核酸配列(配列番号5)および予想されるアミノ酸配列(配列番号6)を示す。 図11は、COMP/CC−Ang1/FD(COMP−Ang1/FDのコイルドコイルドメイン)の核酸配列(配列番号7)および予想されるアミノ酸配列(配列番号8)を示す。 図12は、COMP/CC−Ang1/FD(COMP−Ang1/FDのコイルドコイルドメイン)の核酸配列(配列番号7)および予想されるアミノ酸配列(配列番号8)を示す。 図13は、COMP/CC−Ang1/FD(COMP−Ang1/FDのコイルドコイルドメイン)の核酸配列(配列番号7)および予想されるアミノ酸配列(配列番号8)を示す。 図14は、多量体キメラ−Ang1の遺伝子構築物の作成の模式図を示す。「M」はマルチクローニング部位を示す。 図15は、天然のAng1、GCN4−Ang1/FD、MAT−Ang1/FD、およびCOMP−Ang1/FDの模式図を示す。 図16A〜Bは、Ang1変異体が低次のオリゴマーを生じることを示す。図8Aは、還元条件(R)下および非還元条件(NR)下での、組み換えた天然Ang1、Ang1/FD、CC−Ang1、GCN4−Ang1、MAT/CC−Ang1、およびCOMP/CC−Ang1の分子量分析を示す。数字および棒は分子の大きさ(kDa)を示す。100ngのそれぞれの組み換えタンパク質(還元条件および非還元条件)を4〜15%のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離させ、ニトロセルロース膜に電気によってブロッティングした。ニトロセルロース膜を抗FLAG M1抗体でウェスタンブロッティングし、洗浄し、そして西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体とともにインキュベートした。シグナルを製造業者のプロトコール(Amersham Pharmacia Biotech)および化学発光分析計(LAS−1000、富士フィルム、東京)に従って化学発光検出によって目に見えるようにした。図8Bは、TEMによって画像を撮影した、グリセロールスプレー/低角回転式金属シャドウイング標本(glycerol sprayed/low−angle rotary metal−shadowed specimens)を示す。天然Ang1は、基本的な「マッシュルーム型」の三量体構造の眼で見ることができる大きさの多量体であることが明らかである。CC−Ang1は三量体であることが明らかになり、GCN4−Ang1は二量体であり、MAT−Ang1はほとんどが四量体であり、そしてCOMP−Ang1はほとんどが五量体であることが明らかになった。 図17は、組み換えの天然Ang1、Ang1/FD、CC−Ang1、GCN4−Ang1、MAT/CC−Ang1、およびCOMP/CC−Ang1と、可溶性Tie1−Fc(sTie1−Fc、T1)および可溶性Tie2−Fc(sTie2−Fc、T2)との間でのインビトロ結合アッセイを示す。天然のAng1、Ang1/FD、CC−Ang1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1の全タンパク質量の、それぞれおよそ75%、0%、8%、20%、95%、および100%が、Tie2に結合した。TAPは、結合アッセイに投入したタンパク質の全量である。20ngのそれぞれのタンパク質を100ngのsTie1−FcまたはsTie2−Fcとともに4時間インキュベートし、その後プロテインA結合アガロースビーズを添加した。沈殿を10%のSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜上に電気によってブロッティングした。ニトロセルロース膜を抗FLAG M1抗体を用いてウェスタンブロッティングし、洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体とともにインキュベートした。シグナルを製造業者のプロトコール(Amersham Pharmacia Biotech)および化学発光分析計(LAS−1000、富士フィルム、東京)に従って化学発光検出によって目に見えるようにした。 図18A〜Dは、Biacoreアッセイを使用した、組み換えの天然Ang1、GCN4−Ang1/FD、MAT−Ang1/FD、またはCOMP−Ang1/FDと、固定された可溶性Tie2−Fcとの間でのインビトロ結合アッセイを示す。それぞれの組み換えタンパク質を、Tie2−Fcの細胞外ドメインを有するBiacoreセンサーチップに通した。Fcタンパク質がそれに共有結合で結合し、その後、組み換えタンパク質が存在しない条件で解離させた。組み換えタンパク質の濃度をそれぞれのパネルに示す。結合の特異性を、測定の間のTie2−Fc結合値からFcタンパク質の結合値を引き算することにより算定した。センサーチップの結合を共鳴単位(RU)で示す。それぞれの組み換えタンパク質の最大の結合を種々の濃度で観察した。A、GCN4−Ang1/FDおよびB、MAT−Ang1/FDの結合は約30nMで飽和し、一方、C、COMP−Ang1/FDおよびD、天然のAng1の結合の飽和点は、125nMよりも高い濃度の範囲にあった。GCN4−Ang1/FD、MAT−Ang1/FD、COMP−Ang1/FD、および天然のAng1の結合親和性はそれぞれ、158.5nM、67nM、20.5nM、および7.5nM(KD、解離定数)と推定される。 図19は、チップ上に固定したsTie2−Fcを用いた、Ang1(NA)、GCN4−Ang1(G)、MAT−Ang1(M)、またはCOMP−Ang1(C)のBIAcore分析を示す。60nMの組み換えタンパク質の会合と解離のプロフィールを示す典型的なセンサーグラムである。等量のVEGFを対照として使用した。 図20A〜Bは、ヒトの臍静脈内皮細胞(HUVEC)を用いたTie2のリン酸化アッセイにおける、天然Ang1(N)、GCN4−Ang1(G)、MAT−Ang1(M)、またはCOMP−Ang1(C)の比較を示す。血清を枯渇させたHUVECを200ng/mlの天然Ang1または100ng/mlのAng1変異体で10分間(A)または表示した時間(B)の間処理し、Tie2のリン酸化を測定した。倍:デンシトメトリー分析は、リン−Tie2のTie2に対する相対的な割合を示す。0時間でのリン−Tie2(pTei2)のTie2に対する相対的な割合を恣意的に1とした。数値は3回の実験による平均±S.D.を示す。*はCBに対してP<0.05。#はNAに対してP<0.05。細胞を抽出緩衝液から収集し、0.5mgのタンパク質を免疫沈降に使用した。試料中のTie2タンパク質を抗Tie2抗体で免疫沈降させて回収した。免疫沈降させた試料を坑−リン−チロシン抗体(上段のパネル)でブロットし、そして膜を抗−Tie2抗体で再度ブロットして、それぞれのレーン中に等量のタンパク質をロードしたことを確認した(下段のパネル)。結果は3回の実験において類似していた。 図21A〜Cは、HUVEC中でのAkt(Ser473)リン酸化アッセイにおける、天然Ang1、GCN4−Ang1/FD、MAT−Ang1/FD、またはCOMP−Ang1/FDの比較を示す。それぞれのパネルにおいて、上のバンドは抗−リン−Akt(Ser473)抗体でプローブしたウェスタンブロットを示す。下のバンドは坑Akt抗体で再度プローブしてそれぞれのレーンに等量のタンパク質をロードしたことを確認したブロットを示す。Aでは、HUVECを、対照緩衝液(CB)および200ngの天然のAng1(N)、GCN4−Ang1/FD(G)、MAT−Ang1/FD(M)、またはCOMP−Ang1/FD(C)とともに15分間インキュベートした。Bでは、HUVECを、対照緩衝液(CB)および表示した量のCOMP−Ang1/FDとともにインキュベートした。Cでは、HUVECを200ngのCOMP−Ang1/FDとともに表示した時間の間インキュベートした。処理後に細胞溶解物を収集した。それぞれのレーンには細胞溶解物に由来する全タンパク質を50μg含ませた。結果は3回の別々の実験において類似していた。倍:デンシトメトリー分析は、リン−Akt(Ser472)のAktに対する相対的な割合を示す。対照緩衝液について測定した相対的な割合を恣意的に1とした。数値は3回の実験による平均±S.D.を示す。 図22A〜Tは、一次培養された内皮細胞の生存性、移動、管形成、および芽形成活性における、天然Ang1、GCN4−Ang1、MAT−Ang1、およびCOMP−Ang1の比較を示す。それぞれの写真を示す。天然Ang1およびMAT−Ang1によって誘導すると、生存性、移動、管形成、および芽形成活性は顕著に増強された。注目すべきは、COMP−Ang1で誘導した生存性、移動、管形成、および芽形成活性が、天然Ang1およびMAT−Ang1によって誘導した生存性、移動、管形成、および芽形成活性よりも大きかったことである。しかしGCN4−Ang1は、生存性、移動、管形成、または芽形成活性に顕著な変化を示さなかった。 図23A〜Dは、生物学的活性の定量を示す。CB、対照緩衝液;NA、天然のAng1;G、GCN4−Ang1;M、MAT−Ang1;C、COMP−Ang1。*、CBに対するP<0.05、#、NAに対するP<0.05(200ng/ml)。 図24A〜Dは、COMP−Ang1が単独で、マウスの角膜マイクロポケット試験において血管形成を生じたことを示す。Aはマウスの角膜の顕微鏡写真である。角膜の血管形成は、対照緩衝液(CB)を用いた場合、または天然のAng1を用いた場合には観察できなかった。COMP−Ang1は、角膜輪部から角膜を超えて伸びる角膜の血管形成を誘導した。Bの左側のパネルは、ペレットの植え込みから6日後の角膜輪部の血管のインサイチュでのBS−1レクチン蛍光染色を示す。COMP−Ang1は、角膜輪部の動脈の直径を大きくし、一方、CBおよび天然のAng1によっては全く変化が生じなかった。Bの右側のパネルは、ヘマトキシリンとエオシンでの染色を示し、これによってCOMP−Ang1が血管形成を誘導し、顕著な血管形成を生じたことが確認できる。矢印は赤血球を含む血管を示す。C〜Dは、マイクロポケット試験後の角膜輪部の動脈の長さ(C)と直径(D)を示す。*、CBに対するP<0.01(n=12)、#、天然のAng1に対するP<0.05(n=12)。COMP−Ang(n=12)。 図25A〜Fは、COMP−Ang1を迅速に注射することにより、肺においてTie2のリン酸化が誘導されることを示す。Aは、成体マウスの脳(B)、心臓(H)、肺(Lu)、肝臓(Li)、腎臓(K)、小腸(I)、脾臓(S)、および耳(E)を含むいくつかの臓器中でのTie2の分布を示す。それぞれの臓器に由来するタンパク質溶解物を免疫沈降させ、抗Tie2抗体で免疫ブロッティングした(上段のパネル)。それぞれのタンパク質溶解物をまた抗アクチン抗体で免疫ブロッティングして、等量の全タンパク質がロードされたことを確認した(下段のパネル)。B〜Dは、注射後の表示した時間にアッセイした、天然のAng1(60μg)またはCOMP−Ang1(30μg)の静脈注射によって刺激したTie2のインビボでのリン酸化を示す。Tie2を肺のタンパク質溶解物から免疫沈降させ、抗ホスホチロシンで免疫ブロッティングして、リン酸化されたTie2を検出した(B、C−pTie2、上段のパネル)。膜をはがし、抗−Tie2抗体で再度プローブ化して(下段のパネル)、それぞれのレーンに等量のタンパク質がロードされたことを確認した。Dについては、0時間で測定した相対的な割合を、恣意的に1とした。点は5回の実験による平均±S.Dを示す。*、天然のAng1に対するP<0.05。E〜Fは、メチルグリーンで対比染色したTie2(E)、およびMayer'sヘマトキシリンで対比染色したPECAM−1(F)の免疫組織化学的染色を示す。ほとんどのTie2の染色はPECAMの染色と一致している。白矢印は大きな血管を示しており、これは陽性に染色されている。灰色の矢印は細気管支を示しており、これは陰性に染色されている。 図26A〜Iは、COMP−Ang1が放射線によって誘導される微小血管でのアポトーシスおよび死から防護することを示す。A〜Gは、体全体を15Gyで照射し、4時間後に屠殺したマウスを示す。対照マウスの小腸の絨毛と腺窩にはほとんどアポトーシスはなかったが(A、E)、照射したマウスの絨毛と腺窩には明らかに広範囲に及ぶ固有層細胞のアポトーシス(矢印)があった(B、F)。COMP−Ang1の静脈注射により、放射線によって誘導される固有層細胞のアポトーシスは顕著に減少したが、腺窩の細胞については減少しなかった(C、G)。PECAM−1(薄い灰色;矢印の先端)とTUNEL(濃茶色、矢印)とでの同時染色によって、固有層細胞のうちアポトーシス性の内皮細胞の数を数えた(D)。Hはそれぞれのグループに由来するおよそ1000個の絨毛の固有層のうちのアポトーシス性の内皮細胞の割合の頻度を表すヒストグラムである。COMP−Ang1の静脈注射を行って、またはそれを行わずに、15Gyでの照射の4時間後に小腸の標本を採取した。データは、5回の実験による平均値を示す。Iは、COMP−Ang1での処理によって12または15Gyを照射したマウスの生存期間が延びたことを示す。生存率を放射線照射の12時間後毎に観察した。括弧内の数値は1つのグループあたりの動物の個体数を示す。フィッシャーの両側検定を行って、対照のマウスとCOMP−Ang1で処置したマウスとを比較した(12GyについてはP=0.002;15GyについてはP=0.003)。

Claims (18)

  1. Tie2受容体の結合ドメインであるアンジオポエチン−1のフィブリノーゲン様ドメインに連結されたGCN4、軟骨基質タンパク質または軟骨オリゴマー基質タンパク質のコイルドコイルドメインを含むコイルドコイルキメラ分子であって、該キメラ分子は生物学的に活性な多量体を形成し、該キメラ分子はその非多量体形態では生物学的に不活性である、コイルドコイルキメラ分子。
  2. 前記コイルドコイルドメインが受容体の細胞外ドメインに連結されている、請求項1に記載のコイルドコイルキメラ分子。
  3. 請求項1に記載のコイルドコイルキメラ分子をコードする単離された核酸。
  4. 請求項3に記載の核酸を含む発現ベクター。
  5. 請求項4に記載のベクターを含む宿主細胞。
  6. 請求項1に記載のコイルドコイルキメラ分子を含む、可溶性の生物学的に活性な多量体。
  7. ホモマーである、請求項6に記載の多量体。
  8. ヘテロマーである、請求項6に記載の多量体。
  9. 二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、または十量体である、請求項6に記載の多量体。
  10. 前記コイルドコイルドメインが平行または逆平行構造を形成する、請求項6に記載の多量体。
  11. 請求項1に記載のコイルドコイルキメラ分子を、リガンドに特異的な受容体を発現する細胞の集団に接触させることを含む細胞成長を促進する方法であって、該リガンドが該受容体のアゴニストであり、該コイルドコイルキメラ分子の多量体形態が受容体と相互作用し、その結果細胞成長が促進される方法。
  12. 請求項1に記載のコイルドコイルキメラ分子を、リガンドに特異的な受容体を発現する細胞の集団に接触させることを含む細胞増殖を促進する方法であって、該リガンドが該受容体のアゴニストであり、該コイルドコイルキメラ分子の多量体形態が受容体と相互作用し、その結果細胞増殖が促進される方法。
  13. 前記細胞が内皮細胞、造血細胞、またはそれぞれの特異的受容体を発現する他の細胞である、請求項11又は請求項12に記載の方法。
  14. 請求項1に記載のコイルドコイルキメラ分子を、受容体に特異的なリガンドを発現する細胞の集団に接触させることを含む細胞増殖を減少させるまたは阻害する方法であって、該コイルドコイルキメラ分子の多量体形態がリガンドと相互作用し、その結果細胞増殖が減少または阻害される方法。
  15. 前記細胞が内皮細胞、造血細胞、またはそれぞれの特異的受容体を発現する他の細胞である、請求項14に記載の方法。
  16. 請求項1に記載のコイルドコイルキメラ分子を、受容体に特異的なリガンドを含む試料に接触させることを含むリガンド活性を低下させるまたは阻害する方法であって、該コイルドコイルキメラ分子の多量体形態がリガンドに結合し、その結果リガンド活性が低下または阻害される方法。
  17. (A)コイルドコイルドメインをコードする核酸を、リガンドの受容体結合領域または受容体のリガンド結合領域のいずれかをコードする核酸と組み換えにより連結して、キメラ遺伝子構築物を作製する段階;および(B)該遺伝子構築物を宿主細胞中で発現させてキメラ分子を生産させる段階を含む、請求項1に記載のキメラ分子の作成方法。
  18. Tie2受容体の結合ドメインであるアンジオポエチン−1のフィブリノーゲン様ドメインに連結されたGCN4、軟骨基質タンパク質または軟骨オリゴマー基質タンパク質のコイルドコイルドメインを含むコイルドコイルキメラ分子を含む放射線に曝された哺乳動物の内皮細胞を放射線障害から防護するための治療用組成物。
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