JP4384246B2 - 辛味増強剤 - Google Patents
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Description
なお、辛味とは、痛さと熱さの複合した舌への刺激であり、代表的にはからしやわさびのアリルイソチオシアネート、唐辛子のカプサイシンによって引き起こされる口腔内での痛覚である。
辛味製品に多く含まれる辛味成分としては、
(a)唐辛子のカプサイシンやコショウのピペリン、サンショウのサンショオールなどのアミド類化合物、
(b)わさび、からしなどに含まれる辛味成分であるイソチオシアネート類化合物、
(c)ねぎ、たまねぎに含まれる辛味成分であるスルフィド類化合物、
(d)しょうがの辛味成分であるバニリルケトン類化合物、
(e)蓼(たで)に含まれるセスキテルペン類化合物、
が挙げられる。
こうした化合物は揮発性の高いものや、熱に不安定なものが多いため、食品の加工、流通の段階で劣化が生じる。そのため、辛味成分の安定化や添加量の増加が必要であった。
従って、古来より飲食用に供されていて安全性が実証され、食品本来の香味に影響を与えることなく少量の使用で十分な効果を奏し、かつ経済性に優れる新たな辛味増強剤が要望されていた。
茶葉から水及び/又は極性有機溶媒を用いて抽出して得られるキナ酸を含む抽出物からなる辛味増強剤もキナ酸と同様に安全性、経済性に優れるが、特にキナ酸単独からなる増強剤に比べて食品に添加した場合の辛味増強効果は一層向上する。
コーヒー豆を加水分解処理し、加水分解処理物を精製して得られるキナ酸を含むコーヒー豆加水分解物からなる辛味増強剤も、上記増強剤と同様に、安全性、経済性に優れ、辛味増強効果も高い。
本発明において、辛味増強の対象とされ、辛味増強剤が適用される辛味製品とは、辛味成分を含む、例えば食品、飲料、医薬品や医薬部外品などの経口摂取可能な製品又は口腔内で使用される製品であるが、特に食品類、すなわちアミド類化合物を含むコショウ、トウガラシ、サンショウ、オランダセンニチ、イソチオシアネート類を含む大根、わさび、からし、スルフィド類化合物を含むたまねぎ、にんにく、バニリルケトン類化合物を含むショウガなどを挙げることができる。具体的な食品として練りわさび、練りからし、カレー、米菓、おろししょうが、練りショウガ、豆板醤、キムチ、しょうが、ハム、ドレッシング、ボルシチ、シチュー、スープ、トマトソース、ピザ、ソーゼージ、スパゲッティー、ハヤシライス、焼き豚、しょうが焼き、うなぎ蒲焼、サンショウ、ジンジャー油、オニオンエキス等の食品が挙げられる。
本発明の辛味増強剤に使用するキナ酸、すなわち1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸は、化学合成物や天然由来物、すなわちキナ酸もしくはキナ酸誘導体を含む天然物から抽出し単離して得られるものを広く使用することができ、通常の市販品をそのまま使用することもできる。
具体的にはクロロゲン酸等のカフェオイルキナ酸類、ジカフェオイルキナ酸類、フェルロイルキナ酸類、p−クマロイルキナ酸等のクマロイルキナ酸類、trans−シンナモイルキナ酸等のシンナモイルキナ酸類等を挙げることができるが、クロロゲン酸、1−、4−又は5−カフェオイルキナ酸、3,4−、3,5−又は4,5−ジカフェオイルキナ酸が好ましく、特にクロロゲン酸(すなわち3−カフェオイルキナ酸)が好ましい。
これらに関しても化学合成物や天然由来物を広く使用することができ、通常の市販品をそのまま使用することもできる。
例えば、生のコーヒー豆にはクロロゲン酸が多量に含まれるので、コーヒー生豆から抽出したクロロゲン酸を含む抽出物をそのままあるいは精製して辛味増強剤として使用することができる。
1)原材料
原材料の茶葉は、ツバキ科茶の樹(Camellia sinensis var.)の芽、葉、茎であり、品種、産地を問わず使用することができ、また、生であっても、前処理を施したものであってもよい。茶の前処理方法としては不発酵、半発酵、発酵があるが、いずれの処理方法によるものでもよい。不発酵茶としては緑茶(煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、玉緑茶、抹茶、ほうじ茶等)、半発酵茶としてはウーロン茶、包種茶等、発酵茶としては紅茶が挙げられる。
原材料の茶葉を水及び/又は極性有機溶媒を用いて抽出する。
極性有機溶媒としてはメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン等の溶媒が例示され、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができ、必要に応じて水との混合形態すなわち水溶液の形で使用される。抽出に用いる溶媒は人体への安全性と取扱性の観点から水またはエタノール、プロパノール、ブタノールのような炭素数2〜4の脂肪族アルコールが望ましく、特に水またはエタノールまたはこれらの混合物が最も望ましい。抽出に用いる溶媒の量は任意に選択できるが、一般には茶葉の1〜30倍量(重量)が用いられ、好ましくは5〜20倍量が用いられる。抽出の温度及び時間は任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて1〜12時間、好ましくは1〜2時間が適当である。
茶葉等から抽出した抽出液は不溶物を除去した後、そのまま濃縮して辛味増強剤として使用できるが、抽出液を必要に応じて濃縮した後、下記の精製処理を行うことにより、さらに増強効果に優れた辛味増強剤を得ることができる。
前記抽出処理に続く精製処理により、着色物質、カフェイン、ポリフェノール類、多糖類、たんぱく質、カルシウム、カリウム、ナトリウム等のミネラル成分、テアニン等のアミノ酸類等の夾雑物が除去され、辛味増強効果がさらに高められる。
好適な精製方法としては、以下に述べるように、(A)吸着剤による処理、(B)分離膜による処理、(C)有機溶媒添加による不溶物処理および(D)陽イオン交換樹脂による処理、を挙げることができ、中でも(A)吸着剤による処理が好ましい。
前記工程で得られた抽出液を、合成吸着剤または活性炭のような吸着剤に接触させる精製方法である。吸着剤の比表面積が300〜600m2/g、細孔径が50〜300Åのものが好適である。
吸着剤の種類としては、合成吸着剤であれば特に限定されるものではなく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体系樹脂の合成吸着剤である「ダイヤイオンHP」(三菱化学株式会社製、商品名)やアクリル酸エステル系樹脂の合成吸着剤「アンバーライトXAD−7」(オルガノ株式会社製、商品名)などが挙げられる。これら樹脂に接触させる方法はバッチ式、カラム式のいずれでも良いが、商業的生産規模ではカラム方式の方が一般的で、好ましい処理条件としては空間速度SV=1を挙げることができる。
膜(濾過)処理により高分子である多糖類およびたんぱく質を除去して精製する方法であり、膜の種類としては限外ろ過膜、逆浸透膜、透析膜を利用できる。
抽出液またはその濃縮液に有機溶媒を添加して、析出する不溶物を除去することにより精製する方法である。添加する有機溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、アセトン等が例示され、中でも安全性と取扱性の点からエタノールが好適である。添加量は特に限定されるものではないが抽出液または濃縮液に対して0.1〜10重量部が用いられる。
抽出液または濃縮液を陽イオン交換樹脂に接触することにより精製する方法である。吸着能力、強度の観点からイオン交換体のマトリックスが有機合成ポリマーのものが好ましい。
陽イオン交換樹脂の種類は特に限定されるものではないが、例えば好適なものとしてスチレン系樹脂でスルホン酸基を交換基とする「アンバーライトIRA−400」(オルガノ株式会社製、商品名)や「ダイヤイオンSK1B」などが挙げられる(三菱化学株式会社製、商品名)。
精製工程で得られた液状組成物はそのままで辛味の増強剤として使用できるが、減圧濃縮や凍結乾燥などにより溶媒を除去し、粉末状として使用するのが好ましい。
1)原材料
原材料のコーヒー豆は、産地品種により制限されることなく任意の豆を用いることができる。
生のコーヒー豆にはクロロゲン酸類が多量に含まれているが、焙煎したコーヒー豆には焙煎時にクロロゲン酸類が加水分解されてキナ酸が生じている。従って、原材料が焙煎したコーヒー豆である場合は、茶葉と同様に前述の精製工程を経て辛味増強剤とすることができる。
コーヒー生豆を用いる場合、クロロゲン酸として得られた抽出液を加水分解する際は、不溶物を除去した後、必要に応じて濃縮工程を経て、好適には以下のように酵素又はアルカリを用いて加水分解する。
得られた抽出液が水抽出液の場合はそのまま、水溶性溶媒を含む場合は濃縮等により水溶性溶媒の量を5%以下にした後、酵素処理を行うことが望ましい。酵素分解にはタンナーゼ又はクロロゲン酸エステラーゼが用いられる。利用できるタンナーゼの種類としては特に限定されるものではなく、麹菌などの糸状菌、酵母、細菌などの微生物、特にAspergillus属やPenicillium属から産生されるタンナーゼを挙げることができるが、好ましくはAspergillus属、特に好ましくはAspergillus oryzeから産生されるタンナーゼが用いられる。
また、吸着剤は比表面積が300〜600m2/g、細孔径が50〜300Åのものが好ましく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤「ダイヤイオンHP」(三菱化学株式会社製、商品名)などを使用でき、「ダイヤイオンHP−20」(三菱化学株式会社製、商品名)が特に好ましい。これら合成樹脂吸着剤に接触させる方法はバッチ式、カラム式いずれでも良いが、商業生産規模ではカラム方式の方が一般的で、好ましい処理条件としては空間速度SV=1が挙げられる。
アルカリ加水分解を行う場合は、コーヒー豆を微粉砕し、これにアルカリ水溶液を加えて60〜90℃で10〜60分間加熱攪拌する。アルカリ水溶液としては、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの水溶液が用いられ、好ましくは水酸化カルシウムが用いられる。加水分解後、反応液に、塩酸、硫酸、蓚酸、リン酸などの酸を加えて中和処理する。
なお、こうした粉末状のキナ酸を含む茶葉抽出物からなる辛味増強剤中のキナ酸、単糖類の含有率はそれぞれ約5〜35重量%、1〜40重量%であり、一方、粉末状のキナ酸を含むコーヒー豆加水分解物からなる辛味増強剤中のキナ酸、単糖類の含有率はそれぞれ約30〜50重量%、20〜40重量%である。
本発明の辛味増強剤は、辛味成分を含む経口摂取可能な製品又は口腔内で使用される製品の製造段階で適宜添加することができる。添加量は、辛味増強剤の濃度または辛味製品に含有されている辛味成分の種類や閾値によっても多少異なるが、一般的に辛味製品に対して0.01〜500ppmの添加量(抽出物の固形成分として)が適当である。食品や飲料などの本来の香味に影響を及ぼさない閾値の範囲内で添加する観点からは0.1〜200ppmが好ましく、特に0.1〜100ppmが好ましい。
緑茶葉100gに蒸留水2000gを加え、60℃で一時間攪拌した。40℃まで冷却後、遠心濾過器を用いて茶葉及び不溶物を分離後、分離液をセライトろ過し1780gの抽出液を得た。その抽出液を減圧下、液温50℃で液量が300gになるまで濃縮した。
この濃縮液300gに95%エタノール360gを加えた後、10℃まで冷却し生じた不溶物をセライト濾過し、濾液593gを得た。さらにその濾液に活性炭12gを加え、30分間攪拌後セライト濾過し、濾液を凍結乾燥することにより緑茶抽出物(以下「緑茶抽出物」という)2.2gを得た。
HPLCを用いて分析した結果、緑茶抽出物に含まれる成分は、重量比で、キナ酸7.6%、グルコース0.76%、フルクトース0.81%、スクロース7.95%、テアニン3.16%であった。
紅茶葉100gに蒸留水2000gを加え、1時間加熱還流した。冷却後、遠心ろ過器で固液分離し、濾液1920gを得た。その濾液に活性炭5gを加え、合成吸着剤(三菱化学社製「ダイヤイオンHP−20」(商品名))500mlを添加し、1時間攪拌した。その後濾過により合成吸着剤を除去し、濾液1890gを得た。
濾液1890gを陽イオン交換樹脂(三菱化学社製「ダイヤイオンSK1B」(商品名))1000mlを充填したカラムに供し、空間速度SV=1で送液した。通過液は限外濾過膜(日東電工社製「NTU−2120」)により濾過した。
得られた濾液1810gを凍結乾燥することにより、紅茶抽出物(以後「紅茶抽出物」という)5.9gを得た。
HPLCを用いて分析した結果、紅茶抽出物に含まれる成分は重量比で、キナ酸17.0%、グルコース19.7%、フルクトース15.1%、スクロース2.2%、テアニン7.6%であった。
コーヒー生豆500gを微粉砕した後、70重量%エタノール水溶液5000mlを加え、2時間加熱還流した。冷却後、遠心濾過器で固液分離し、濾過液をエタノール含量5重量%以下まで減圧濃縮し、クロロゲン酸エステラーゼ(キッコーマン社製)1000単位を加え40℃で3時間攪拌した。
処理液を、遠心分離により不溶物を取り除き、合成吸着剤(三菱化学社製「ダイヤイオンHP−20」(商品名))1000mlを充填したカラムに通導し、溶出してきた液を凍結乾燥することにより、生コーヒー豆から得られたキナ酸含有抽出物(以下「コーヒー生豆抽出物」という)26.6gを得た。
HPLCを用いて分析した結果、コーヒー生豆抽出物中の成分は重量比で、キナ酸32%、グルコース16%、フルクトース15%であった。
なお、クロロゲン酸エステラーゼの1単位は30℃の水中において3−カフェオイルキナ酸を1分間に1マイクロモル加水分解する酵素量である。
各種辛味成分を有する天然物辛味物質を摩り下ろして(唐辛子については搾り汁を用いた)、それぞれにキナ酸(ナカライテスク株式会社製の試薬)1ppm、キナ酸誘導体としてクロロゲン酸(和光純薬工業株式会社製の試薬)1.8ppm、および上記実施例で得られた抽出物をキナ酸が1ppmとなるように加え、パネル20名にて官能評価を行い辛味増強の程度を確認した。
それらの結果を表1に示す。評価点は、無添加品を2点とし、非常に辛味が強くなった場合を5点、逆に辛味が弱くなった場合を1点とした5段階評価試験をブラインドで行った。評価結果の平均値を表1に示した。
また、キナ酸誘導体であるクロロゲン酸等モルにおいても増強効果はあるもののキナ酸よりも効果は弱いことがわかった。
辛味増強効果は、キナ酸単独よりもそれを含む抽出物のほうが高かった。すなわち、増強効果は、キナ酸含有抽出物>キナ酸>クロロゲン酸の順であり、キナ酸含有抽出物が極めて高かった。
食塩16部、グルタミン酸ナトリウム10部、核酸系調味料0.5部、グルコース10部、マルトース10部、チキンエキスパウダー8部、脱脂粉乳8部、蛋白加水分解物6.5部、スパイス系香料製剤6部、パプリカパウダー4部、ジンジャーパウダー3部、ガーリックパウダー3部、クミンパウダー2.5部、コリアンダーパウダー2.5部、レッドペッパーパウダー2部、ガラムパウダー2部、ホワイトペッパーパウダー0.5部、ターメリックパウダー0.5部、実施例1の緑茶抽出物0.1部を混合によりカレーシーズニングを調製した。
このカレーシーズニング5部をポテトチップス100部に付着させて評価したとき、スパイスの辛味が向上し良好なカレー風味ポテトチップスが得られた。
白菜100部、塩6部、生姜1部、ニンニク1部、粉唐辛子1部、鷹の爪0.5部、ダシ汁10部にて作成した白菜キムチに実施例2の紅茶抽出物0.1部を添加して評価した。その結果、発酵臭が抑えられ、生姜、ニンニクの風味が良好で、唐辛子の辛味が増強していた。
酢100部、醤油100部、砂糖15部、ごま油25部、すりおろし生姜3部をよく混合して作成した中華ドレッシングに実施例2の紅茶抽出物を0.1部添加して評価した。その結果、生姜の辛味が引き立ち、より風味豊かになっていた。
冷凍ニンニクペースト100部に、食塩2部、澱粉2部、オリゴ糖2部、キサンタンガム0.2部、にんにく香料0.5部にて作成したニンニク加工品に、キナ酸(ナカライテスク株式会社製試薬)を0.01部添加して評価した。その結果、ニンニクの辛味がより強く感じられ、フレッシュ感がアップした。
Claims (2)
- キナ酸のみ又はキナ酸誘導体のみを有効成分として含有することを特徴とする、わさび、にんにく、ショウガ、唐辛子の辛味増強剤。
- キナ酸誘導体が、3−カフェオイルキナ酸(クロロゲン酸)、1−カフェオイルキナ酸、4‐カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸又は4,5−ジカフェオイルキナ酸である請求項1記載の辛味増強剤。
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