(繊維凸状構造部)
本発明の粘着テープ又はシートでは、支持体の少なくとも一方の面の粘着剤層に部分的に凹部が形成されており、且つ該粘着剤層の凹部の壁面(粘着剤層の凹部側の側面)に、粘着剤層の表面よりも外部側に繊維が突出している構造の繊維凸状構造部が形成されている。このように、繊維凸状構造部は、繊維が、粘着剤層の凹部壁面から、粘着剤層の表面よりも外部側に突出している構造を有しているが、すべての繊維が、必ず、粘着剤層の表面よりも外部側に突出している必要はなく、少なくとも一部の繊維(例えば、粘着剤層の凹部壁面の上部側に形成された繊維)が、粘着剤層の表面よりも外部側に突出していればよい。また、粘着剤層の表面よりも外部側に突出している繊維としては、1本の繊維の全長が粘着剤層の表面よりも外部側に突出している必要はなく、1本の繊維の少なくとも一部分が粘着剤層の表面よりも外部側に突出していればよい。さらにまた、繊維凸状構造部は、粘着剤層の凹部の壁面の全面に形成されている必要はなく、粘着剤層の凹部の壁面の少なくとも一部分に形成されていればよい。なお、本発明では、前記繊維凸状構造部としては、粘着テープ又はシートを被着体に仮接着させることができ、その後、圧着により、被着体に強固に接着させることができるような構成を有していることが重要である。
なお、粘着剤層の凹部が、下記に示されるように、孔部(貫通孔部)であり、且つ粘着テープ又はシートが、下記に示されるように、基材レスタイプの両面粘着テープ又はシートである場合、凹部としての孔部は、粘着剤層の両方の表面側とも開放部となっているので、繊維凸状構造部の繊維が、粘着剤層の表面よりも外部側に突出する粘着剤層の表面としては、粘着剤層の少なくともいずれか一方の表面とすることができ、好ましくは粘着剤層の片側の表面である。もちろん、粘着剤層の凹部が、下記に示されるように、陥没部である場合や、粘着テープ又はシートが、下記に示されるように、基材付きタイプの粘着テープ又はシートである場合は、凹部(陥没部や孔部など)は、粘着剤層の片面側のみが開放部となっているので、該開放部となっている粘着剤層の表面を、繊維凸状構造部の繊維が、粘着剤層の表面よりも外部側に突出する粘着剤層の表面とすることができる。
繊維凸状構造部としては、繊維が粘着剤層表面よりも外部側に突出した形状の凸状形状に形成されている構造部であれば特に制限されないが、例えば、繊維が粘着剤層の凹部の壁面から、粘着剤層表面よりも外部側に起立して突出している(特に、繊維の端部が突出している)構造を有している繊維起毛部、繊維の固まりが粘着剤層凹部壁面に設けられ、粘着剤層表面よりも外部側に繊維の一部分が突出したような構造の繊維凸状構造部などが挙げられる。繊維凸状構造部は、単一の構造よりなるものであってもよく、複数の構造が組み合わされた構造よりなるものであってもよい。
なお、1つの繊維凸状構造部は、通常、複数の繊維により構成されている。1つの繊維凸状構造部を構成する繊維の数や密度は、特に制限されず、目的とするリワーク性や貼付位置修正作業性、被着体の種類などに応じて適宜選択することができる。
繊維凸状構造部としては、繊維が粘着剤層に部分的に形成された凹部の壁面から、粘着剤層の表面よりも外部側に繊維が起立して突出している構造の繊維起毛部が好ましい。
図1は本発明の粘着テープ又はシートの一例を部分的に示す概略図であり、(a)は粘着テープ又はシートの上面から見た概略平面図、(b)は(a)におけるX−Y線の概略断面図である。図1において、1は粘着テープ又はシート、2は粘着剤層、2aは粘着剤層2の凹部、2a1は粘着剤層2の凹部2aの壁面、2bは粘着剤層2の表面、3は粘着テープ又はシート用剥離ライナー(単に「剥離ライナー」と称する場合がある)、4は孔部を有する剥離ライナー、4aは剥離ライナー4の孔部、5は繊維起毛部である。粘着テープ又はシート1は、支持体としての剥離ライナー3の片面に粘着剤層2が形成され、且つ粘着剤層2は、貫通孔の形態の凹部2aを有している。該凹部2aは、粘着剤層2に部分的に形成されている。すなわち、凹部2aの開口部は、粘着剤層2の表面に部分的に形成されている。また、この粘着剤層2は、その表面2bが、孔部4aを有する剥離ライナー4により保護されている構成を有しており、剥離ライナー4の孔部4aと、粘着剤層2の凹部2aとは、対応した位置関係を有している。具体的には、孔部4aの壁面と、凹部2aの壁面とは連続的に形成された構成を有している。さらに、粘着剤層2の凹部2aの壁面2a1には、繊維凸状構造部として繊維起毛部5が設けられている。この繊維起毛部5は、凹部2aの壁面2a1から、粘着剤層2の表面2bよりも外部側(すなわち、孔部4aを有する剥離ライナー4側)に繊維が起立して突出している構造を有している。
なお、図1では、前記粘着剤層2において、凹部2aは、全体として、複数のラインを形成するような形状で設けられている。従って、繊維起毛部5も、全体として、複数のラインを形成するような形状を有している。図1で示される凹部2aにおいて、各ラインの間隔(各ラインの中心部の間隔)は10mmとなっており、1つのライン内に含まれる各凹部間の間隔(各凹部の中心部の間隔)は10mmとなっている。また、1つの凹部の粘着剤層表面における開口部の形状は、半径が約0.5mmの略円形状(面積は約0.8mm2)となっている。さらにまた、隣り合ったラインでは、一方のラインにおける各凹部間の中央部に位置する部位に、他方のラインにおける各凹部が形成された構成となっている。このような凹部2aの壁面に、繊維起毛部5が形成されている。
なお、図2〜3に、粘着剤層の凹部壁面に形成されている繊維起毛部の形状に関する写真を示す。図2は、粘着剤層の凹部壁面に形成されている繊維起毛部の形状に関する写真を示す図であり、粘着剤層の上面から見た図である。図3は、粘着剤層の凹部壁面に形成されている繊維起毛部の形状に関する写真を示す図であり、図2に係る繊維起毛部の要部を示す図である。なお、図2〜3で示されている写真は、デジタルマイクロスコープとして商品名「VH−6200」(KEYENCE社製)を用い、倍率:50〜175倍の条件で撮影した写真である。
このような繊維起毛部の構造としては、例えば、(1)1本の繊維の一方の端部が粘着剤層の凹部壁面に接着されて固定され、他方の端部が固定されていない(自由となっている)状態で、粘着剤層表面よりも外部側に繊維が略I字型に起立して突出している構造(図1で示されている構造)、(2)1本の繊維の中央部が粘着剤層の凹部壁面に接着され、繊維の両端部が固定されていない(自由となっている)状態で、粘着剤層表面よりも外部側に繊維が略V字型に起立して突出している構造、(3)1本の繊維の両端部が粘着剤層の凹部壁面に接着されて固定され、繊維の中央部が固定されていない(自由となっている)状態で、粘着剤層表面よりも外部側に繊維が逆略U字型に起立して突出している構造の他、粘着剤層の凹部壁面から、粘着剤層表面よりも外部側に繊維が略W字型、略M字型、略N字型、略O字型などの形状で起立して突出している構造、さらには、これらの構造が組み合わされた構造などが挙げられる。繊維起毛部の構造としては、前記(1)の構造(粘着剤層の凹部壁面から粘着剤層表面よりも外部側に繊維が略I字型に起立して突出している構造)が好適である。もちろん、繊維起毛部は、粘着テープ又はシート用粘着剤層の凹部壁面から繊維が、I字型などのように直線状に起立して、粘着剤層表面よりも外部側に突出した状態であってもよく、ギザギザ状、波線状、ループ状などの形態を有する状態で、全体的に起立して、粘着剤層表面よりも外部側に突出した状態であってもよい。
繊維凸状構造部は、粘着剤層に部分的に設けられた凹部の壁面に形成されており、そのため、繊維凸状構造部における全体としての形状は、凹部の全体としての形状に対応することになる。繊維凸状構造部における全体としての形状としては、特に制限されず、目的とするリワーク性や貼付位置修正作業性、被着体の種類などに応じて適宜選択することができ、所定のパターン形状を有していてもよい。
例えば、繊維凸状構造部が、全体として、図1で示されるようなパターン形状で形成されている場合、すなわち、繊維凸状構造部が、全体として、複数のラインを形成するような形状で設けられている場合、各ラインの間隔は、例えば、1〜100mm(好ましくは3〜50mm、さらに好ましくは5〜40mm)程度の範囲から選択することができる。また、1つのライン内に含まれる各繊維凸状構造部間の間隔は、例えば、1〜100mm(好ましくは3〜50mm、さらに好ましくは5〜40mm)程度の範囲から選択することができる。さらにまた、隣り合ったラインにおける各繊維凸状構造部の位置関係は、特に制限されず、全体として格子状となる位置関係であってもよく、全体として不定形状となる位置関係であってもよい。
なお、1つの繊維凸状構造部について、粘着剤層表面における形状としては、特に制限されず、例えば、略円形状や略多角形状であってもよく、不定形状であってもよい。また、粘着剤層に形成されている繊維凸状構造部の数は、特に制限されない。
粘着剤層表面において、繊維凸状構造部が設けられている部位の全面積(全繊維凸状構造部の面積)としては、特に制限されず、例えば、粘着剤層の全表面積に対して0.001〜20%(好ましくは0.005〜15%、さらに好ましくは0.01〜10%)の割合となる面積であることが望ましい。全繊維凸状構造部の粘着剤層表面における面積が、粘着剤層の全表面積に対して0.001%未満であると、初期接着力の低減効果が低下し、リワーク性や貼付位置修正作業性が低下する。一方、全繊維凸状構造部の粘着剤層表面における面積が、粘着剤層の全表面積に対して20%を越えると、リワーク性や貼付位置修正作業性は向上するが、粘着テープ又はシートの被着体への接着力が低下する。
また、各繊維凸状構造部の粘着剤層表面における面積としては、特に制限されず、例えば、0.1〜10mm2(好ましくは0.3〜5mm2、さらに好ましくは0.5〜3mm2)程度の範囲から選択することが好ましいが、0.1mm2未満であってもよく、10mm2を越えていてもよい。
さらにまた、例えば、各繊維凸状構造部の粘着剤層表面における面積が0.1〜10mm2であるように、繊維凸状構造部が複数設けられている場合、各繊維凸状構造部間の最短の間隔としては、例えば、1〜100mm(好ましくは3〜50mm、さらに好ましくは5〜40mm)程度であってもよい。
なお、繊維凸状構造部の粘着剤層表面における面積としては、繊維凸状構造部により囲まれた部分の面積とすることができる。すなわち、繊維凸状構造部の粘着剤層表面における面積は、凹部の粘着剤層表面における開口部の面積に相当している。
このような繊維凸状構造部を構成する繊維としては、特に制限されず、天然繊維、半合成繊維、合成繊維のいずれであってもよい。より具体的には、繊維としては、例えば、綿繊維、レーヨン繊維、ポリアミド系繊維[脂肪族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維(いわゆるアラミド繊維)など]、ポリエステル系繊維(商品名「テトロン」など)、ポリアクリロニトリル系繊維、炭素繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール繊維(いわゆるビニロン繊維)、ポリエチレン系繊維、ポリイミド系繊維、フッ素系樹脂繊維などが挙げられる。繊維としては、綿繊維、レーヨン繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維が好適である。
繊維は、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が組み合わせられて用いられていてもよい。
このような繊維としては、短繊維を好適に用いることができる。繊維の長さが長くなると、粘着テープ又はシートの被着体への接着力が低下するため好ましくない。繊維としては、その長さが0.1〜5mm(好ましくは0.3〜5mm、さらに好ましくは0.3〜2mm)程度であることが望ましい。なお、繊維の長さが短すぎると、粘着剤層を被着体に接着させる際にかける圧力が低くてもよくなるので、これによりリワーク性や貼付位置修正作業性が低下するため好ましくない。また、繊維の長さが短すぎると、製造が難しく、高価になるため、コスト的な観点からも好ましくない。一方、繊維の長さが長すぎると、接着力の回復率が低下するので望ましくない。
また、繊維の太さとしては、特に制限されないが、例えば、0.1〜20デニール(好ましくは0.5〜15デニール、さらに好ましくは1〜6デニール)程度の範囲から選択することができる。繊維の太さが太すぎると、柔軟性の低下により、粘着剤層を被着体に接着させる際にかける圧力が高くなるので好ましくない。一方、繊維の太さが細すぎると、初期接着力の低減効果が低下し、リワーク性や貼付位置修正作業性が低下する。
繊維凸状構造部(特に、繊維起毛部)を形成する方法としては、特に制限されないが、下記に示されるように、植毛加工方法(特に、静電植毛加工方法)を好適に利用することができる。前記静電植毛加工方法としては、アップ法、ダウン法、サイド法のいずれであってもよい。なお、植毛加工方法により粘着剤層の凹部の壁面に繊維凸状構造部を形成させる際には、粘着剤層の凹部(繊維凸状構造部を形成する凹部)に対応した位置に孔部を有している剥離基材(特に剥離フィルム)を用いることが好ましい。このような剥離基材は、剥離ライナーとしても利用することが可能である。
(粘着剤層)
粘着剤層には、部分的に凹部が形成されている。このような凹部としては、陥没部であってもよいが、孔部(貫通孔部)であることが好ましく、孔部の中でも、特に、穿孔部が好適である。このような凹部において、凹部全体としての形状、各凹部の粘着剤層表面における開口部の形状、凹部の粘着剤層表面における開口部の全面積、各凹部の粘着剤層表面における開口部の面積などとしては、前記繊維凸状構造部に対応したものとすることができる。
なお、凹部が陥没部である場合、その深さは、特に制限されず、粘着剤層の厚みの1%以上(例えば、1〜99%、好ましくは30〜90%)に相当する深さの範囲から適宜選択することができる。
また、粘着テープ又はシートが、下記に示されるように、基材レスタイプの両面粘着テープ又はシートである場合、凹部としての陥没部は、該粘着剤層の少なくともいずれか一方の表面に形成することができ、好ましくは粘着剤層の片側の表面である。さらにまた、粘着テープ又はシートが、下記に示されるように、基材付きタイプの両面粘着テープ又はシートである場合、凹部(陥没部や孔部など)は、少なくともいずれか一方の粘着剤層の表面に形成することができ、好ましくは片側の粘着剤層の表面である。
凹部が孔部である場合、孔部を形成する方法としては、例えば、公知乃至慣用の孔部形成機[なかでも、各種形状の凸部構造(突起状構造)と、該凸部構造に相対する凹部構造とを有する穿孔形成機]を用いた穿孔加工方法、熱や光線による穿孔加工方法(例えば、サーマルヘッド、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フラッシュランプ、レーザー光線などにより穿孔する方法)、金型(例えば、凸部を有する金型など)を用いた成型加工方法などが挙げられる。なお、凹部が陥没部である場合、陥没部を形成する方法としては、孔部と同様の形成方法を採用することができる。
なお、粘着剤層の凹部に繊維凸状構造部を形成する際に、前述のように、粘着剤層の表面における繊維凸状構造部を形成する所定の部位に対応した位置に孔部を有している剥離基材(特に剥離フィルム)を用いる場合、粘着剤層の凹部は、前記剥離基材の孔部とともに形成することが好ましい。例えば、凹部が形成されていない粘着剤層表面に、孔部を有していない剥離基材を重ね合わせて積層し、剥離基材側から孔部形成機等を用いて、穿孔等の打抜き加工を行って、粘着剤層の凹部(特に、穿孔による孔部)と、剥離基材の孔部とを同時に作製することができる。このような方法では、粘着剤層の凹部と、剥離基材の孔部とが、対応した位置関係を有するように容易に形成することができる。すなわち、粘着剤層の凹部の壁面と、剥離基材の孔部の壁面とが、連続的に形成された構成で作製することができる。そのため、粘着剤層の凹部の壁面が、剥離基材の孔部を介してオープンになり(開放され)、例えば、剥離基材側から、剥離基材の孔部を介して、粘着剤層の凹部の壁面に、植毛加工を行うことにより、前記粘着剤層の凹部の壁面に、該壁面から粘着剤層の表面(孔部を有する剥離基材側の表面)よりも外部側に繊維が突出している構造の繊維凸状構造部を効率よく形成させることができる。
なお、粘着剤層の凹部として孔部を形成する際の打抜き加工に際しては、粘着テープ又はシートが基材レスタイプの粘着テープ又はシートであり、粘着剤層の両面が剥離ライナーにより保護されている場合、基材レスタイプの粘着テープ又はシート全体に打抜き加工が施されていてもよいが、一方の剥離ライナーのみに切り込み線が形成されないように、ハーフカットタイプの打抜き加工が施されていることが好ましい。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限されず、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤を用いることができる。また、粘着剤は、ホットメルト型粘着剤であってもよい。粘着剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。
なお、粘着剤は、粘着性成分(ベースポリマー)等のポリマー成分の他に、粘着剤の種類等に応じて、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン化合物系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂など)、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの適宜な添加剤を含んでいてもよい。粘着剤層を形成する際に粘着剤を架橋する場合は、加熱による加熱架橋方法、紫外線照射による紫外線架橋方法(UV架橋方法)、電子線照射による電子線架橋方法(EB架橋方法)、自然に硬化させる自然硬化方法のいずれであってもよい。
粘着剤としては、天然ゴムや各種の合成ゴム(例えば、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンなど)をベースポリマーとしたゴム系粘着剤;(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体(単独重合体又は共重合体)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。
なお、前記アクリル系粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C4-18アルキル(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル)エステル]などが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、目的とする粘着性などに応じて適宜選択することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、前記アクリル系粘着剤において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、必要に応じて前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)が併用されていてもよい。このような共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその無水物;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニル;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。また、共重合性単量体としては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性の共重合性単量体(多官能モノマー)などが挙げられる。共重合性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
粘着剤層の形成方法としては、公知乃至慣用の形成方法を採用することができ、例えば、粘着テープ又はシート用基材を有している基材付き粘着テープ又はシートの場合、支持体としての基材(粘着テープ又はシート用基材)上に、粘着剤を塗布する方法(塗布方法)、剥離ライナーなどの剥離フィルム上に、粘着剤を塗布して粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材上に転写する方法(転写方法)などが挙げられる。また、粘着テープ又はシート用基材を有していない基材レス粘着テープ又はシートの場合、粘着剤層の形成方法としては、支持体としての剥離ライナーの剥離面上に、粘着剤を塗布する方法(塗布方法)などが挙げられる。
粘着剤層の厚さとしては、特に制限されず、例えば、1〜1000μm(好ましくは10〜500μm)程度の範囲から選択することができる。
(支持体)
粘着剤層を支持する支持体としては、粘着テープ又はシートが、基材付きタイプの片面又は両面が粘着剤層となっている粘着テープ又はシートの場合、基材(粘着テープ又はシート用基材)を用いることができ、一方、基材レスタイプの両面粘着テープ又はシートの場合、剥離ライナー(セパレータ)を用いることができる。なお、粘着テープ又はシートが、基材付きタイプの片面又は両面が粘着剤層となっている粘着テープ又はシートの場合、支持体としての基材の片面又は両面に粘着剤層が形成されているとともに、基材の片面又は両面に形成された粘着剤層の凹部の壁面に繊維凸状構造部が形成されており、粘着剤層の表面は、基材の背面側の剥離面や、剥離ライナーにより保護されていてもよい。一方、粘着テープ又はシートが、基材レスタイプの両面粘着テープ又はシートの場合、剥離ライナーが粘着剤層の支持体となっているとともに、粘着剤層の凹部の壁面に繊維凸状構造部が形成されている。この場合、粘着剤層に形成される凹部が、陥没部である場合は、粘着剤層のいずれか一方の粘着面に、凹部としての陥没部を形成することができる。なお、支持体としての剥離ライナーは、粘着テープ又はシートを使用するまでの間、粘着剤層を支持しているとともに、粘着剤層の表面を保護している。
(基材)
前記基材(粘着テープ又はシート用基材)としては、例えば、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;紙(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙等)などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体等の適宜な薄葉体を用いることができる。基材は、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。例えば、基材としては、ラミネートや共押し出しなどにより、プラスチック系基材と他の基材(紙系基材など)とを複層化したもの(2〜3層の複合体)などであってもよい。
基材としては、プラスチックのフィルムやシートが好ましい。このようなプラスチックのフィルムやシートの素材(プラスチック材)としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。プラスチック材は単独で用いられていてもよく、2種以上組み合わせられた混合状態で用いられていてもよい。なお、プラスチックのフィルムやシートは、無延伸タイプであってもよく、1軸または2軸の延伸処理が施された延伸タイプであってもよい。
なお、基材には、必要に応じて、無機質充填剤(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛など)、老化防止剤(例えば、アミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、ヒドロキノン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、リン系老化防止剤、亜リン酸エステル系老化防止剤など)、酸化防止剤、紫外線吸収剤(例えば、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤など)、滑剤、可塑剤、着色剤(例えば、顔料、染料など)等の各種添加剤が配合されていてもよい。
基材の片面または両面には、粘着剤層との密着力の向上等を目的に、コロナ処理やプラズマ処理等の物理的処理、下塗り剤等の化学的処理などの適宜な表面処理が施されていてもよい。
基材の厚さとしては、例えば、10〜300μm、好ましくは30〜200μm程度の範囲から選択することができる。
(剥離ライナー)
前記剥離ライナーとしては、例えば、剥離処理剤による剥離処理層を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。
剥離ライナーとしては、例えば、剥離ライナー用基材の少なくとも一方の面に剥離処理層が形成されている剥離ライナーを好適に用いることができる。このような剥離ライナー用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や、紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)などが挙げられる。
一方、剥離処理層を構成する剥離処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などを用いることができる。剥離処理剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
剥離処理剤としては、剥離性やコストなどの観点より、シリコーン系剥離処理剤が好適である。シリコーン系剥離処理剤は、ポリシロキサン系ポリマーを主成分とする公知のポリシロキサン系剥離処理剤(シリコーン系剥離処理剤)から適宜選択して用いることができる。シリコーン系剥離処理剤としては、なかでも、付加反応型のポリシロキサン系剥離処理剤を好適に用いることができる。付加反応型のポリシロキサン系剥離処理剤は、付加反応型の架橋(硬化反応)により硬化して剥離性被膜を形成し、有用な剥離特性を発現することができる。
付加反応型のポリシロキサン系剥離処理剤は、分子中に、Si−H結合を有する基に対して反応性を有する基(「Si−H結合反応性基」と称する場合がある)を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーと、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマー(特に、分子中にSi−H結合を有するケイ素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマー)とを含有するポリシロキサン系剥離処理剤組成物を用いることができる。なお、「Si−H結合」とは、「ケイ素原子(Si)と水素原子(H)との結合」を意味している。
Si−H結合反応性基を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーにおいて、Si−H結合反応性基としては、炭素−炭素不飽和結合を含む基(例えば、アルケニル基など)を用いることができる。前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基(好ましくはビニル基、プロペニル基、特にビニル基)などが挙げられる。なお、Si−H結合反応性基は、通常、主鎖又は骨格を形成しているポリシロキサン系ポリマーのケイ素原子(例えば、末端のケイ素原子や、主鎖内部のケイ素原子など)に結合しており、この場合、例えば、モノマー成分として「HOSi(R1)(R2)OH」(R1はSi−H結合反応性基、R2は水素原子又は炭化水素基)を用いることにより、Si−H結合反応性基が分子中に導入される。
また、Si−H結合反応性基を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーにおいて、主鎖又は骨格を形成しているポリシロキサン系ポリマーとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン系ポリマー、ポリジエチルシロキサン系ポリマー、ポリメチルエチルシロキサン系ポリマー等のポリアルキルアルキルシロキサン系ポリマーや、ポリアルキルアリールシロキサン系ポリマーの他、ケイ素原子含有モノマー成分が複数種用いられている共重合体[例えば、ポリ(ジメチルシロキサン−ジエチルシロキサン)など]などが挙げられ、ポリジメチルシロキサン系ポリマーが好適である。
一方、分子中にSi−H結合を有するケイ素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーにおいて、Si−H結合を有するケイ素原子としては、主鎖中のケイ素原子、側鎖中のケイ素原子のいずれであってもよく、すなわち、主鎖の構成単位として含まれていてもよく、あるいは、側鎖の構成単位として含まれていてもよい。なお、Si−H結合のケイ素原子(水素原子が結合しているケイ素原子)の数は、2個以上であれば特に制限されない。
分子中にSi−H結合を有するケイ素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーとしては、分子中にモノマー単位として「−Si(R3)(H)O−」(R3は炭化水素基)を少なくとも2個有しているポリシロキサン系ポリマーが好ましく、なかでも、ポリジメチルハイドロジェンシロキサン系ポリマー[例えば、ポリ(ジメチルシロキサン−メチルシロキサン)等]が好適である。
なお、ポリシロキサン系剥離処理剤において、分子中にSi−H結合を有するケイ素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーは、架橋剤としての機能を有している。
分子中にSi−H結合のケイ素原子を2個以上有するポリシロキサン系ポリマーの使用量としては、特に制限されないが、例えば、分子中にSi−H結合のケイ素原子を2個以上有するポリシロキサン系ポリマーにおけるSi−H結合のケイ素原子のモル数(「モル数(X)」と称する場合がある)と、Si−H結合反応性基を2個以上有するポリシロキサン系ポリマーにおけるSi−H結合反応性基のモル数(「モル数(Y)」と称する場合がある)とが、モル数(X)>モル数(Y)となる割合が好ましいが、モル数(X)/モル数(Y)が0.8〜2.0(好ましくは1.0〜1.8)程度となる割合の範囲から選択してもよい。
分子中にSi−H結合反応性基を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマーを、分子中にSi−H結合を有するケイ素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマー(架橋剤)により硬化させる際には、触媒を用いることができ、該触媒としては、白金系触媒(例えば、白金微粒子、塩化白金酸又はその誘導体等の白金系化合物など)を好適に用いることができる。触媒の使用量としては、特に制限されないが、例えば、分子中にSi−H結合反応性基を2個以上有するポリシロキサン系ポリマー100重量部(固形分)に対して0.5〜10重量部(好ましくは1〜7重量部)の範囲から選択することができる。
本発明では、ポリシロキサン系剥離処理剤としては、分子中にSi−H結合反応性基(特に、ビニル基)を2個以上有しているポリジメチルシロキサン系ポリマーと、分子中にモノマー単位として「−Si(R3)(H)O−」(R3は炭化水素基)を2個以上有しているポリジメチルハイドロジェンシロキサン系ポリマーとによるポリジメチルシロキサン系剥離剤を好適に用いることができる。
ポリシロキサン系剥離処理剤は、前記構成成分(例えば、分子中にSi−H結合反応性基を2個以上有しているポリジメチルシロキサン系ポリマー、分子中にSi−H結合を有するケイ素原子を2個以上有しているポリシロキサン系ポリマー、必要に応じて触媒や各種添加剤など)を、必要に応じて有機溶剤を用いて混合することにより調製することができる。なお、ポリシロキサン系剥離処理剤は、ポリシロキサン系ポリマー等のポリマー成分が有機溶剤に溶解された状態で用いることができる。なお、ポリシロキサン系剥離処理剤には、公知乃至慣用の添加剤(例えば、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(染料や顔料等)など)が配合されていてもよい。
このようなポリシロキサン系剥離処理剤としては、例えば、商品名「TPR6600」(GE東芝シリコーン社製)、商品名「KS−778」(信越化学社製)、商品名「KS−837」(信越化学社製)などが市販されている。
剥離処理層は、剥離処理剤を剥離ライナー用基材の所定の面(少なくとも一方の面)に塗布した後、乾燥や硬化反応等ための加熱工程を経て形成することができる。なお、乾燥や硬化反応等ための加熱工程では、公知乃至慣用の加熱方法(例えば、熱風式乾燥機を用いる方法など)を利用することができる。なお、付加反応型のポリシロキサン系剥離処理剤は、剥離ライナー用基材の所定の面に塗布した後、乾燥工程又は硬化反応工程などで、付加反応型の硬化反応を行って剥離性皮膜を形成させることにより、優れた剥離特性を発揮させることができる。
また、剥離処理剤は、適正な塗布量で塗布することが重要である。剥離処理剤の塗布量が、少なすぎると、剥離力(剥離に要する力)が大きくなって実用上問題が生じ、一方、多すぎると、コストが高くなって経済的に不利になる。剥離処理剤の適正な塗布量(固形分)としては、用いる粘着剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜0.5g/m2程度である。
なお、剥離ライナーの厚み、剥離ライナー用基材の厚みや、剥離処理層の厚みなどは特に制限されず、繊維凸状構造部の形状などに応じて適宜選択することができる。
特に、剥離ライナーが、繊維凸状構造部の繊維が外部に突出している側の粘着剤層の表面を保護するために用いられる場合、剥離ライナーとしては、粘着剤層の表面には繊維が突出している部分又は部位が形成されているので、粘着剤層の表面の繊維が突出している部分又は部位に対応する部位に凹部(孔部や陥没部など)を有している剥離ライナーを好適に用いることができ、なかでも、図1で示されるような、粘着剤層の凹部に対応する部位に孔部(特に、穿孔部)を有している剥離ライナーが好適である。このような孔部を有する剥離ライナーとしては、繊維凸状構造部の繊維が倒れないように保護するため、少なくとも孔部(特に、穿孔部)の外周領域部の厚みが、繊維凸状構造部の繊維が粘着剤層表面から突出している高さと同程度またはそれ以上となっていることが好ましい。
剥離ライナーの凹部(特に、穿孔部)を形成する方法としては、例えば、公知乃至慣用の凹部形成機[なかでも、各種形状の凸部構造(突起状構造)と、該凸部構造に相対する凹部構造とを有する穿孔形成機]を用いる方法、熱や光線による方法(例えば、サーマルヘッド、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フラッシュランプ、レーザー光線などにより穿孔する方法)、金型(特に、凸部を有する金型)を用いた成型加工による方法などが挙げられる。
(粘着テープ又はシート)
粘着テープ又はシートとしては、(1)粘着剤層が、支持体としての基材の両面に形成されており、前記基材の少なくとも一方の面の粘着剤層に部分的に凹部が形成され、且つ該凹部の壁面に、粘着剤層の表面よりも外部側に繊維が突出している構造の繊維凸状構造部を有している基材付きタイプの両面粘着テープ又はシート、(2)粘着剤層が、支持体としての基材の片面に形成されており、前記粘着剤層に部分的に凹部が形成され、且つ該凹部の壁面に、粘着剤層の表面よりも外部側に繊維が突出している構造の繊維凸状構造部を有している基材付きタイプの粘着テープ又はシート(片面粘着テープ又はシート)、(3)粘着剤層に部分的に凹部が形成され、且つ該凹部の壁面に、粘着剤層の表面よりも外部側に繊維が突出している繊維凸状構造部を有しており、また粘着剤層の両面が1つ又は2つの剥離ライナーで保護されている基材レスタイプの両面粘着テープ又はシートなどを例示できる。
このように、粘着テープ又はシートは、片面のみが粘着面となっている粘着テープ又はシートの形態を有していてもよく、両面が粘着面となっている粘着テープ又はシートの形態を有していてもよい。また、両面粘着テープ又はシートの場合、前述のように、片側の粘着面のみに外部側に繊維が突出している繊維凸状構造部が形成されていてもよく、両方の粘着面に外部側に繊維が突出している繊維凸状構造部が形成されていてもよい。
なお、粘着テープ又はシートは、ロール状に巻回した形態の粘着テープ(巻回体又は巻重体)であってもよく、単層又はシートを積層した形態の粘着シートであってもよい。
このように、粘着テープ又はシートは、支持体の少なくとも一方の面の粘着剤層の表面に、粘着剤層に部分的に形成された凹部の壁面から、粘着剤層の表面よりも外部側に繊維が突出している構成を有しているので、表面に繊維が突出している側の粘着剤層表面(粘着面)を、被着体に、小さな荷重をかけて貼り合わせた際には、仮接着をすることができ、貼り直しや貼付位置を修正した後、大きな荷重をかけることにより、強固に接着させることができる。なお、仮接着の際にかける荷重の大きさとしては、特に制限されず、繊維凸状構造部の繊維が粘着剤層表面から突出している高さ、繊維凸状構造部の繊維の太さや素材の種類などによりコントロールすることができる。すなわち、繊維凸状構造部により、粘着テープ又はシートの貼り付け直後の接着力を所望の大きさにコントロールすることができる。
本発明の粘着テープ又はシートは、支持体の少なくとも一方の面の粘着剤層における所定の部位に形成された凹部の壁面(粘着剤層の凹部側側面)に、繊維凸状構造部を形成することにより製造することができる。具体的には、植毛加工方法を利用して、支持体の少なくとも一方の面の粘着剤層に部分的に形成された凹部の壁面に植毛加工を施すことにより、前記粘着剤層の凹部の壁面に、粘着剤層の表面よりも外部側に繊維が突出している構造の繊維凸状構造部を形成することにより、粘着剤層の凹部の壁面から、粘着剤層の表面よりも外部側に繊維が突出している繊維凸状構造部を有する粘着テープ又はシートを製造することができる。このような植毛加工方法としては、特に静電植毛加工方法が好適である。
なお、静電植毛加工方法としては、例えば、1つの電極に対し、粘着剤層を有する被植毛物を対電極となるようにセットして、これに直流高電圧を印加し、この電極間にフロック(短繊維)を供給して、クーロン力によって、フロックを電気力線に沿って飛翔させて、被植毛物の表面(粘着剤層の凹部の壁面)に突きさせることにより、植毛を行う加工方法などが挙げられる。このような静電植毛加工方法としては、公知の静電植毛方法であれば特に制限されず、例えば、「繊維」第34巻 第6号(1982−6)において「静電植毛の原理と実際」などで記載されているようなアップ法、ダウン法、サイド法のいずれであってもよい。
粘着剤層の凹部の壁面に、植毛加工方法(特に、静電植毛加工方法)により繊維凸状構造部を形成させる際には、前述のように、少なくとも一方の面が剥離面であり且つ孔部を有する剥離基材(「孔部を有する剥離基材」と称する場合がある)を用いることが好ましい。孔部を有する剥離基材を用いると、粘着剤層の凹部の壁面に、繊維凸状構造部を、効率よく且つ容易に形成することができる。具体的には、粘着剤層の凹部に対応する部位に孔部を有している剥離ライナーを粘着剤層の表面に重ね合わせた状態で、粘着剤層の凹部の壁面に植毛加工(特に、静電植毛加工)を施すことにより、剥離基材の孔部に対応した粘着剤層の凹部の壁面に、繊維凸状構造部を形成することができる。
なお、孔部を有する剥離基材としては、前述のような孔部(特に、穿孔部)を有する剥離ライナーを用いることができ、なかでも、剥離ライナー用基材がプラスチック系基材である孔部(特に、穿孔部)を有する剥離フィルムが好適である。
なお、粘着剤層がすでに孔部を有していない剥離ライナーにより保護されている場合、該剥離ライナーを剥がした後、孔部を有する剥離基材を粘着剤層表面に貼り合わせ、植毛加工を施すことができる。
前記孔部を有する剥離基材は、繊維凸状構造部を形成した後は、剥離させてもよいが、そのまま、剥離ライナーとして用いることが好ましい。すなわち、粘着剤層の凹部の壁面に繊維凸状構造部を有する粘着テープ又はシートを製造する方法としては、例えば、孔部(特に穿孔部)を有する剥離ライナーを粘着剤層の凹部が形成されている側の表面に重ね合わせた状態で、粘着剤層の凹部の壁面に植毛加工を施す方法が好適である。
なお、孔部を有する剥離基材を、繊維凸状構造部を形成した後に剥離させて除去する場合は、粘着剤層における繊維凸状構造部の繊維が突出している表面は、凹部を有する剥離ライナー(特に、粘着剤層における繊維凸状構造部の繊維が突出している部分又は部位に凹部を有する剥離ライナー)により保護することができる。
本発明の粘着テープ又はシートは、粘着剤層の表面に部分的に繊維凸状構造部の繊維が突出しているので、前述のように、被着体に重ね合わせた後、小さな荷重をかけて仮接着を行うことができ、しかも、仮接着後に、貼り直しや、貼り付け位置の修正を十分に且つ容易に行うことができる。すなわち、本発明の粘着テープ又はシートは、被着体を接着させる際のリワーク性や貼付位置修正作業性が優れている。
なお、本発明では、粘着剤層に部分的に形成される各凹部の大きさ(1つの凹部の占有面積)や形状、粘着剤層に形成された全凹部の粘着面全面に対する割合(全凹部の占有面積の割合)、繊維凸状構造部における繊維の形状(長さや太さなど)や素材などによって、粘着テープ又はシートの貼り付け直後の接着力(初期接着力)と、貼り付け後に強固に接着させる接着力(貼り付け保存後の接着力)とを所望の大きさにコントロールすることができる。
従って、本発明の粘着テープ又はシートは、仮接着後に、貼り直しや、貼り付け位置の修正を行うことが求められる用途の粘着テープ又はシートとして好適に用いることができ、なかでも、フローリング材を床に貼り合わせる際に用いられる粘着テープ又はシート(フローリング材貼付用粘着テープ又はシート)として有用である。なお、フローリング材貼付用粘着テープ又はシートとして用いる場合、粘着テープ又はシートとしては、両面が粘着面となっており、且つ一方の粘着面に部分的に繊維凸状構造部の繊維が突出している構成の両面粘着テープ又はシート(基材レスタイプ又は基材付きタイプの両面粘着テープ又はシート)[すなわち、両面の粘着面のうち、一方の粘着面が、部分的に繊維凸状構造部の繊維が突出している粘着面(繊維凸状構造部形成粘着面)であり、他方の粘着面が、表面に繊維凸状構造部の繊維が突出していない粘着面(繊維凸状構造部非形成粘着面)である両面粘着テープ又はシート]を好適に用いることができる。
本発明の粘着テープ又はシートを用いて、フローリング材を床に貼り合わせる方法としては、粘着テープ又はシートを介してフローリング材を床に貼り合わせる方法であれば特に制限されないが、例えば、次のような貼り合わせ方法が好適である。
[フローリング材の床への貼り合わせ方法]
粘着テープ又はシートとして、例えば、一方の面が繊維凸状構造部形成粘着面であり、且つ他方の面が繊維凸状構造部非形成粘着面である両面粘着テープ又はシート(基材レスタイプ又は基材付きタイプの両面粘着テープ又はシート)を用い、該粘着テープ又はシートにおける繊維凸状構造部非形成粘着面側の粘着面をフローリング材に貼り合わせた後、フローリング材を所定の場所に差し込み、繊維凸状構造部形成粘着面側の粘着面を床に貼り合わせて仮接着させ、さらに、フローリング材を床に沿って所定の場所まで移動させた後、強い圧着により、粘着テープ又はシートを介してフローリング材を床に強固に貼り合わせる。
なお、粘着テープ又はシートが、片面のみが粘着面となっている粘着テープ又はシートである場合、片面の粘着面が繊維凸状構造部形成粘着面となっており、基材側の面を接着剤等を用いてフローリング材に貼り合わせた後、フローリング材を所定の場所に差し込み、繊維凸状構造部形成粘着面側の粘着面を床に貼り合わせて仮接着させ、さらに、フローリング材を床に沿って所定の場所まで移動させた後、強い圧着により、粘着テープ又はシートを介してフローリング材を床に強固に貼り合わせることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
ポリエステルフィルム(商品名「ルミラー#38」東レ社製;厚み38μm)の片面に、ポリジメチルシロキサン系のシリコーン系剥離処理剤(商品名「KS−778」(信越化学社製)の1重量%ヘプタン溶液を、塗工した後、120℃で2分間乾燥を行って、剥離ライナー(剥離紙;「剥離ライナーA1」と称する場合がある)を作製した。なお、この剥離ライナーA1において、シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、0.05g/m2であった。
前記剥離ライナーA1の剥離処理面上に、アクリル系粘着剤(ベースポリマーがアクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体であるアクリル系粘着剤)を、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗工して、粘着剤層(「粘着剤層A」と称する場合がある)を形成し、さらに、前記粘着剤層Aの表面に、前記剥離ライナーA1と同様の構成の剥離ライナー(剥離紙;「剥離ライナーA2」と称する場合がある)を、その剥離処理面が粘着剤層Aの表面に接触するように重ね合わせて、粘着シート(「粘着シートA」と称する場合がある)を得た。すなわち、該粘着シートAは、「剥離ライナーA1/粘着剤層A/剥離ライナーA2」の層構成を有している。
さらに、1mmφ(直径が1mm)の形状の打抜き刃を、10mm間隔に有する金型により、前記粘着シートAをハーフカットによるカッティング処理して(剥離ライナーA2と、粘着剤層Aとに打抜き加工を施して)、図4に示されるような構造の粘着シートAを得た。すなわち、この打抜き加工を行った粘着シートAは、「剥離ライナーA1/部分的に穿孔部が形成された粘着剤層A/部分的に穿孔部が形成された剥離ライナーA2」の層構成を有している。
図4は、ハーフカットによる打抜き加工が施された粘着シートを示す概略断面図である。図4において、11はハーフカットによるカッティング処理が施された粘着シート、21は穿孔部を有している粘着剤層、21aは粘着剤層21の穿孔部、21a1は粘着剤層21の穿孔部21aの壁面、31は穿孔部を有していない剥離ライナー、41は穿孔部を有している剥離ライナー、41aは剥離ライナー41の穿孔部である。なお、剥離ライナーA1は、穿孔部を有していない剥離ライナー31に、部分的に穿孔部が形成された粘着剤層Aは、穿孔部21aを有している粘着剤層21に、部分的に穿孔部が形成された剥離ライナーA2は、穿孔部41aを有している剥離ライナー41に相当している。
この打抜き加工を行った粘着シートAに、ポリアミド系繊維(繊維太さ3デニール、繊維長さ0.5mm)を用いて、穿孔部が形成されている剥離ライナーA2側から、静電植毛加工を施し、粘着剤層Aの穿孔部の壁面に、前記ポリアミド系繊維を植毛させることにより、図1に示されるような、粘着剤層の穿孔部の壁面に繊維起毛部(「繊維起毛部A」と称する場合がある)を有する両面粘着シート(「繊維凸状構造形成粘着シートA」と称する場合がある)を作製した。すなわち、該繊維凸状構造形成粘着シートAは、「剥離ライナーA1/部分的に形成された穿孔部の壁面に繊維起毛部Aを有する粘着剤層A/穿孔部を有する剥離ライナーA2」の層構成を有している。なお、粘着剤層Aの表面から最も突出している繊維は、粘着剤層Aの表面から約0.5mm突出していた。すなわち、繊維起毛部Aの繊維として、粘着剤層Aの表面から最も突出している繊維の先端と、粘着剤層Aの表面との間の距離は、約0.5mmであった。
(実施例2)
ポリエチレンをラミネートしたクラフト紙の上に、ポリジメチルシロキサン系のシリコーン系剥離処理剤(商品名「TPR6600」GE東芝シリコーン社製)の1重量%ヘプタン溶液を、塗工した後、120℃で2分間乾燥を行って、剥離ライナー(剥離紙;「剥離ライナーB1」と称する場合がある)を作製した。なお、この剥離ライナーB1において、シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、0.05g/m2であった。
前記剥離ライナーB1の剥離処理面上に、ゴム系粘着剤(天然ゴムとスチレン−ブタジエンゴムとが、天然ゴム/スチレン−ブタジエンゴム=50/50(重量比)の割合で配合されているゴム系粘着剤)を、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗工して、粘着剤層(「粘着剤層B」と称する場合がある)を形成し、さらに、前記粘着剤層Bの表面に、前記剥離ライナーB1と同様の構成の剥離ライナー(剥離紙;「剥離ライナーB2」と称する場合がある)を、その剥離処理面が粘着剤層Bの表面に接触するように重ね合わせて、粘着シート(「粘着シートB」と称する場合がある)を得た。すなわち、該粘着シートBは、「剥離ライナーB1/粘着剤層B/剥離ライナーB2」の層構成を有している。
さらに、1.5mmφ(直径が1.5mm)の形状の打抜き刃を、5mm間隔に有する金型により、前記粘着シートBをハーフカットによるカッティング処理して(剥離ライナーB2と、粘着剤層Bとに打抜き加工を施して)、実施例1と同様に、図4に示されるような構造の粘着シートBを得た。すなわち、この打抜き加工を行った粘着シートBは、「剥離ライナーB1/部分的に穿孔部が形成された粘着剤層B/部分的に穿孔部が形成された剥離ライナーB2」の層構成を有している。
この打抜き加工を行った粘着シートBに、レーヨン繊維(繊維太さ3デニール、繊維長さ1mm)を用いて、穿孔部が形成されている剥離ライナーB2側から、静電植毛加工を施し、粘着剤層Bの穿孔部の壁面に、前記レーヨン繊維を植毛させることにより、図1に示されるような、粘着剤層の穿孔部の壁面に繊維起毛部(「繊維起毛部B」と称する場合がある)を有する両面粘着シート(「繊維凸状構造形成粘着シートB」と称する場合がある)を作製した。すなわち、該繊維凸状構造形成粘着シートBは、「剥離ライナーB1/部分的に形成された穿孔部の壁面に繊維起毛部Bを有する粘着剤層B/穿孔部を有する剥離ライナーB2」の層構成を有している。なお、粘着剤層Bの表面から最も突出している繊維は、粘着剤層Bの表面から約1mm突出していた。すなわち、繊維起毛部Bの繊維として、粘着剤層Bの表面から最も突出している繊維の先端と、粘着剤層Bの表面との間の距離は、約1mmであった。
(実施例3)
ポリエチレンフィルム(商品名「NSO」大倉工業社製;厚み60μm)の片面に、ポリジメチルシロキサン系のシリコーン系剥離処理剤(商品名「KS−837」(信越化学社製)の1重量%ヘプタン溶液を、塗工した後、120℃で2分間乾燥を行って、剥離ライナー(剥離紙;「剥離ライナーC1」と称する場合がある)を作製した。なお、この剥離ライナーC1において、シリコーン系剥離処理剤の塗布量は、0.04g/m2であった。
前記剥離ライナーC1の剥離処理面上に、アクリル系粘着剤(ベースポリマーがアクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体であるアクリル系粘着剤)を、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗工して、粘着剤層(「粘着剤層C」と称する場合がある)を形成し、さらに、前記粘着剤層Cの表面に、前記剥離ライナーC1と同様の構成の剥離ライナー(剥離紙;「剥離ライナーC2」と称する場合がある)を、その剥離処理面が粘着剤層Cの表面に接触するように重ね合わせて、粘着シート(「粘着シートC」と称する場合がある)を得た。すなわち、該粘着シートCは、「剥離ライナーC1/粘着剤層C/剥離ライナーC2」の層構成を有している。
さらに、1mmφ(直径が1mm)の形状の打抜き刃を、20mm間隔に有する金型により、前記粘着シートCをハーフカットによるカッティング処理して(剥離ライナーC2と、粘着剤層Cとに打抜き加工を施して)、実施例1と同様に、図4に示されるような構造の粘着シートCを得た。すなわち、この打抜き加工を行った粘着シートCは、「剥離ライナーC1/部分的に穿孔部が形成された粘着剤層C/部分的に穿孔部が形成された剥離ライナーC2」の層構成を有している。
この打抜き加工を行った粘着シートCに、ポリアミド系繊維(繊維太さ3デニール、繊維長さ1.2mm)を用いて、穿孔部が形成されている剥離ライナーC2側から、静電植毛加工を施し、粘着剤層Cの穿孔部の壁面に、前記ポリアミド系繊維を植毛させることにより、図1に示されるような、粘着剤層の穿孔部の壁面に繊維起毛部(「繊維起毛部C」と称する場合がある)を有する両面粘着シート(「繊維凸状構造形成粘着シートC」と称する場合がある)を作製した。すなわち、該繊維凸状構造形成粘着シートCは、「剥離ライナーC1/部分的に形成された穿孔部の壁面に繊維起毛部Cを有する粘着剤層C/穿孔部を有する剥離ライナーC2」の層構成を有している。なお、粘着剤層Cの表面から最も突出している繊維は、粘着剤層Cの表面から約1.2mm突出していた。すなわち、繊維起毛部Cの繊維として、粘着剤層Cの表面から最も突出している繊維の先端と、粘着剤層Cの表面との距離は、約1.2mmであった。
(比較例1)
前記粘着シートAと同様にして作製された粘着シート(「両面粘着シートD」と称する場合がある)を用いた。
(評価)
実施例、比較例により得られた粘着シート(繊維凸状構造形成粘着シートA〜C、両面粘着シートD)を、実施例1〜3では表面に繊維起毛部の繊維の先端が突出している側の粘着剤層表面(粘着面)、比較例1では、後で積層した剥離ライナー側の粘着剤層表面(粘着面)を、アクリル板に、剥離ライナー側から、25g/22.5cm2の荷重をかけて仮接着させた後、各粘着シートを貼り付けた位置より6mm移動させてから、強く圧着させ、この時の移動が容易であるかどうかによって、貼付位置修正作業性を評価した。
また、貼り付けた後、24時間、室温(23℃)で放置した後、各粘着シートに、ポリエステルフィルム(商品名「ルミラー#38」東レ社製;厚み38μm)を裏打ちし、テンシロン引張試験機を用いて、アクリル板に対する接着力を測定し、比較例1の両面粘着シートDの接着力に対する割合により、表面に繊維起毛部を有する粘着剤層による接着力を評価した。
これらの評価結果は、それぞれ、表1の「貼付位置修正作業性」、「接着力回復率(%)」の欄に示した。
表1より明らかなように、実施例に係る粘着シート(粘着剤層の表面に繊維起毛部の繊維が突出している粘着シート)は、初期貼り付け後の位置修正が容易であり、強く貼り付けた後の接着力は良好であることが確認された。