JP4379993B2 - 圧力センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧力を検出する圧力検出装置に関し、特に故障発生を自己診断可能な圧力検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、圧力センサにおいては、半導体基板に薄肉のダイヤフラム部を形成し、このダイヤフラム部の中央部および周辺部に圧力検出素子(ゲージ抵抗)を2個ずつ設けてホイートストンブリッジ回路を構成している。そして、ダイヤフラム部に圧力が印加されると、ピエゾ抵抗効果によって圧力検出素子の抵抗値が変化し、この結果として中央部および周辺部の圧力検出素子における中点電位に電位差(出力電圧)を生じる。圧力センサでは、この出力電圧に適当な増幅、調整処理を施して圧力に応じた電気信号を出力するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、圧力センサはブリッジ回路が出力する電位差を増幅、調整しているだけであり、例えばブリッジ回路が汚染や傷等によって誤った電位差を発生した場合には、そのまま誤った電気信号を出力してしまう可能性がある。
【0004】
このような異常を検出する機能を持つ圧力センサとして、特表平10−506718号公報に記載された圧力センサがある。この圧力センサは、1つのダイヤフラム内での応力分布状況の異常を検知するために、ダイヤフラム部を中央から2分割し、それぞれにブリッジ回路を形成して両者の電圧出力を比較してずれを検知して故障を検出している。しかしながら、この圧力センサではダイヤフラム部が1つであるため、ダイヤフラムの故障が発生した場合に精度よく故障を検出することが難しく、高い信頼性を確保することができない。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、ブリッジ回路の出力が故障により変化した場合に、精度よく故障を検出することができる圧力センサを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体基板には複数の薄肉部(14、15)が設けられており、第1の薄肉部(14)に設けられ、圧力に応じて電気信号を出力する圧力検出用回路と、第2の薄肉部(15)に設けられ、圧力検出用回路に比較して高い感度で圧力に応じて電気信号を出力する故障検出用回路と、圧力検出用回路の出力信号と故障検出用回路の出力信号とに基づいて前記圧力検出用回路の故障判定を行う故障判定手段(28)とを備え、第2薄肉部(15)は、第1の薄肉部(14)に比較して面積が大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
このように、異なる感度を持つ圧力検出用回路の出力と故障検出用回路の出力を用いることにより、圧力検出用回路の出力が故障により変化した場合に、確実に故障を検出することができる。また、故障検出用路が圧力検出用回路より高感度になるように構成することで、故障検出用回路では薄肉部の故障や劣化(破壊)を圧力検出用回路より先に検出することが可能となり、高い精度で故障を検出でき、高い信頼性と故障に対する安全性を確保することができる。
【0008】
また、請求項に記載の発明のように、故障検出回路が形成された薄肉部(15)の面積を圧力検出用回路が形成された薄肉部(14)より大きくすることで、故障検出用回路の方が高感度になるように構成することができる
【0009】
また、上記圧力検出用回路および故障検出用回路は、請求項に記載の発明のように、それぞれゲージ抵抗(RA〜RD;RE〜RH)から形成されるブリッジ回路とすることができる。さらに、ゲージ抵抗は具体的には、請求項に記載の発明のように拡散抵抗とすることができ、あるいは請求項に記載の発明のように薄膜抵抗とすることができる。
【0010】
また、故障判定回路は、請求項に記載の発明のように複数の薄肉部が設けられているのと同じ半導体基板に設けるように構成することができる。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した実施形態を図1〜3に基づいて説明する。本実施形態における圧力センサは、例えば車両におけるブレーキ装置のブレーキ液圧や燃料噴射装置の燃料圧等の高い信頼性が必要とされる液圧制御系に用いられるものである。
【0013】
図1(a)は本実施形態の圧力センサのダイヤフラム部の平面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。本実施形態の圧力センサでは、半導体基板としてSOI(Silicon On Insulator)基板10を用いている。SOI基板10は、シリコンで構成された第1の基板11と第2の基板12とが酸化膜13を介して接合されている。第1の基板11にはエッチングにより2つのダイヤフラム部(薄肉部)14、15が形成されている。なお、本実施形態の圧力センサでは、第1のダイヤフラム部14の大きさは45μm角、第2のダイヤフラム部15の大きさは60μm角、各ダイヤフラム部14、15の厚みは8.5μmとなるように構成されている。
【0014】
第1の基板11におけるダイヤフラム部14、15には、それぞれピエゾ抵抗素子であるゲージ抵抗(拡散抵抗)RA〜RD、RE〜RHが形成されている。本実施形態では(100)面方位に拡散抵抗が形成されている。これらの拡散抵抗RA〜RD、RE〜RHは、結線されて第1、第2のブリッジ回路を形成している。また、基板表面にはシリコン酸化膜からなる絶縁膜16が形成されている。この絶縁膜16にはコンタクトホール17が形成され、その上にAl等よりなる配線18がパターニングされ、さらにその上に保護膜(パッシベーション膜)19が形成されている。
【0015】
上記した構成において、ダイアフラム部14、15が圧力を受けて変形することによって生じる歪みを拡散抵抗RA〜RD、RE〜RHが検出する。この拡散抵抗からの検出信号は、外部に設けられた信号処理回路に出力され、これにより圧力が検出される。
【0016】
図2は、本実施形態の圧力センサの概略回路構成を示している。図2に示すように、定電圧電源Vccから供給された電圧は、電圧調整回路20を介して一定電圧(例えば5V)に変換された後、ブリッジ回路21、22に供給される。第1のブリッジ回路21は、第1のダイヤフラム部14に設けられた拡散抵抗RA〜RDにより形成されたものであり、圧力検出用回路を構成する。同様に第2のブリッジ回路22は、第2のダイヤフラム部15に設けられた拡散抵抗RE〜RHにより形成されたものであり、故障検出用回路を構成する。
【0017】
これらのブリッジ回路21、22は並列接続されており、それぞれ中点電位VB、VCと中点電位VF、VGを出力するように構成されている。これらのブリッジ回路21、22の出力は、第1、第2切替回路23、24によって切り替えられ、増幅回路25により増幅された後、第1、第2データ貯蔵部26、27において故障判定回路28で比較できる形で格納されるように構成されている。故障判定回路28では、2つのブリッジ回路21、22の出力値に基づいて故障判定が行われる。なお、第1、第2切替回路23、24は、タイミング回路30によりデータ錯誤が生じないようにタイミング制御される。
【0018】
なお、本実施形態では、2つのダイヤフラム部14、15に形成されたブリッジ回路21、22と、増幅回路25や故障判定回路28等の処理回路とが同一の半導体基板に形成されている。
【0019】
図3は、シリコン基板10におけるダイヤフラム部14、15の大きさ(面積)とブリッジ回路21、22の出力(感度)との関係を示している。図3に示すようにダイヤフラム部の大きさに比例して感度が上昇している。例えば本実施形態の圧力センサでは、60μm角のダイヤフラム部15に形成された故障検出用ブリッジ回路22は45μm角のダイヤフラム部14に形成された圧力検出用ブリッジ回路21に比較して、およそ2倍の出力が出ていることが分かる。すなわち、本実施形態では、故障検出用ブリッジ回路22の方が高感度となるように構成されている。
【0020】
次に、本実施形態の圧力センサの故障検出について説明する。まず、ダイヤフラム部14、15への圧力印可に対する圧力検出用ブリッジ回路21の出力電圧値の変化特性と、故障検出用ブリッジ回路22の出力電圧値の変化特性とを、記憶回路29に予め記憶させておく。これらの出力値の変化特性を得るためには、少なくとも2点以上の圧力点におけるブリッジ回路21、22の出力値が分かればよい。このとき、ブリッジ回路21、22の出力値が圧力変動に対して必ずしも直線的に変化するとは限らないことを考慮すれば、より精度よく変化特性を得るために任意の3点以上の出力値をとることが望ましい。
【0021】
これらの2つのブリッジ回路21、22の出力の間には、上記の図4に示すような固定された関係が成り立つ。すなわち、圧力センサが正常に作動していれば、ある圧力点における2つのブリッジ回路21、22の出力は、それぞれ常に同じ値になる。従って、圧力センサが作動している際に、圧力検出用ブリッジ回路21の出力と故障検出用ブリッジ回路22の出力とを比較し、これらの出力値の関係が記憶回路29に記憶されている関係を満たさなければ、ブリッジ回路21が正常な出力値を出力していないと判断することができる。
【0022】
このとき本実施形態では、上記のように2つのダイヤフラム部14、15の大きさを変えることにより、故障検出用ブリッジ回路22が圧力検出用ブリッジ回路21より高感度になるように構成している。このため、故障検出用ブリッジ回路22ではダイヤフラム部の故障や劣化(破壊)を圧力検出用ブリッジ回路21より先に検出することが可能となり、高い精度で故障を検出することができる。高い信頼性と故障に対する安全性を確保することができる。
【0023】
さらに、本実施形態の圧力センサでは、故障が発生していると判定された場合には、故障判定回路28はセンサ出力を通常の出力電圧範囲(例えば0.5〜4.5V)の範囲外(ダイアグ領域)に強制的にシフトさせ、異常発生を示す信号を出力するように構成されている。
【0024】
なお、本実施形態のように、2つの異なる出力変化特性を有するブリッジ回路を設けることにより、ブリッジ回路の感度の温度特性の補正を行うことができる。
【0025】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態の圧力センサでは、半導体基板としてSOI基板を用いたが、これに限らず、例えば図5に示す単結晶シリコン基板を用いても同様に実施できる。図5に示す圧力センサでは、単結晶シリコン基板30に2つのダイヤフラム部14、15を形成し、面方位(100)に拡散抵抗RA〜RD、RE〜RHを形成している。単結晶シリコン基板30はガラス台座31に陽極接合によって接合されている。以上の圧力センサの構成でも、上記実施形態と圧力センサと同様の効果を得ることができる。
【0026】
また、上記実施形態の圧力センサでは2つのダイヤフラム部14、15を備えているので、圧力検出用ブリッジ回路21が故障した場合には、故障検出用ブリッジ回路22を暫定的に圧力検出用ブリッジ回路として代用することも可能である。
【0027】
また、上記実施形態の圧力センサでは、各ダイヤフラム部の大きさを変えることによって、それぞれに形成したブリッジ回路の出力が異なるように構成したが、各ダイヤフラム部の厚みを変えることにより、それぞれのブリッジ回路において異なる出力が得られるように構成してもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、シリコン基板に2つのダイヤフラム部を設け、それぞれに出力変化特性の異なるブリッジ回路を形成したが、シリコン基板にさらに多くのダイヤフラム部を設けてもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、圧力検出用ブリッジ回路および故障検出用ブリッジ回路を拡散抵抗から構成したが、これに限らず、拡散抵抗に代えて薄膜抵抗から構成することもできる。
【0030】
また、上記実施形態では、圧力検出用回路および故障検出用回路としてブリッジ回路を用いたが、これに限らず、例えば容量型センサを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は上記実施形態の圧力センサのダイヤフラム部の平面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】図1の圧力センサの概略構成を示す回路図である。
【図3】ダイヤフラム部の大きさと感度の関係を示す特性図である。
【図4】圧力センサのブリッジ回路の出力特性を示す特性図である。
【図5】本発明の変形例における圧力センサのダイヤフラム部の断面図である。
【符号の説明】
10…シリコン基板、14、15…ダイヤフラム部(薄肉部)、21…圧力検出用ブリッジ回路、22…故障検出用ブリッジ回路、28…故障判定回路、RA〜RD、RE〜RH…ゲージ抵抗。

Claims (5)

  1. 複数の薄肉部(14、15)が形成された半導体基板(10、30)と、
    第1の前記薄肉部(14)に設けられ、圧力に応じて電気信号を出力する圧力検出用回路と、
    第2の前記薄肉部(15)に設けられ、前記圧力検出用回路に比較して高い感度で圧力に応じて電気信号を出力する故障検出用回路と、
    前記圧力検出用回路から出力される電気信号と前記故障検出用回路から出力される電気信号とに基づいて前記圧力検出用回路の故障判定を行う故障判定手段(28)とを備え、
    前記第2薄肉部(15)は、前記第1の薄肉部(14)に比較して面積が大きくなるように構成されていることを特徴とする圧力センサ。
  2. 前記圧力検出用回路および前記故障検出用回路は、それぞれゲージ抵抗(RA〜RD;RE〜RH)から形成されるブリッジ回路(21、22)であることを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
  3. 前記ゲージ抵抗は、拡散抵抗であることを特徴とする請求項に記載の圧力センサ。
  4. 前記ゲージ抵抗は、薄膜抵抗であることを特徴とする請求項に記載の圧力センサ。
  5. 前記故障判定回路は、前記薄肉部が形成されている半導体基板に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の圧力センサ。
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