JP4379970B2 - オレフィン化合物の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医農薬中間体として重要であるオレフィン化合物を、ウィッティッヒ反応により製造する際に、反応混合物より簡便にホスフィンオキシドを除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン化合物を得る方法として、カルボニル化合物とホスフォランを反応させるウィッティッヒ反応は重要である(Org.Reac.14,270(1965))。しかしウィッティッヒ反応では、生成物であるオレフィンと等モルのホスフィンオキシドが副生するため、ホスフィンオキシドの除去方法の開発が必須であった。従来、ウィッティッヒ反応混合物からホスフィンオキシドを除去する方法としては、以下の3つの方法が知られている。
▲1▼カラムクロマトグラフィーによる方法
▲2▼カルボキシル基またはアミノ基を分子内に有する、酸またはアルカリ水に可溶なホスフィン化合物を使用する方法(Chem.Rev.74,87(1974))
▲3▼低級脂肪酸に溶解する方法(特開平05−213779号公報)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記方法には工業的に利用する上で下記の欠点があった。
▲1▼の方法 工業的に利用するには高価な特殊設備を必要とし、また使用溶媒量が多く経済的に不利である。
▲2▼の方法 原料であるホスフィン化合物が高価であり経済的に不利である。
▲3▼の方法 析出するホスフィンオキシドの粘度が高く分液操作時の取り扱いが困難である。また低級脂肪酸に溶解する化合物の分離には不適である。
以上よりホスフィンオキシドの効率的な工業的除去法が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、ホスフィンオキシドを効率的に除去し、純度の高いオレフィン化合物を工業的に有利に製造するための方法について鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0005】
すなわち本発明は、カルボニル化合物とホスホランとをウィッティッヒ反応して得られるオレフィン化合物とホスフィンオキシドを主成分とする反応混合物から、ホスフィンオキシドを硫酸を使用して除去することを特徴とするオレフィン化合物の製造法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0007】
本発明に用いるオレフィン化合物としては例えば、一般式(1)
(式中、R1は、水素原子または低級アルキル基を示し、 Aは炭素原子または窒素原子を示し、Eは低級アルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアザカルボニル基、アルキルアザカルボニル基またはカルバニル基を示す。ここでAはEと直接結合していてもよく、その場合はR1はなくてもよい。R2、R4は水素原子または低級アルキル基を示し、R3は水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化アルキル基を示し、Dは炭素原子または窒素原子を示し、Arは置換されていてもよいアリール基を示す。)
で示される化合物が挙げられる。
【0008】
一般式(1)においてR1、R2、R3、R4、Eの低級アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基等が挙げられる。R3のハロゲン化アルキル基のハロゲン原子としてはクロロ、フルオロ、ブロモなどであり、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピルなどである。ハロゲン化アルキル基の具体例としては例えば、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基等が挙げられる。Eのアルコキシカルボニル基としては例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基等が挙げられる。Eのジアルキルアザカルボニル基としては例えば、ジメチルアザカルボニル基、ジエチルアザカルボニル基、ジ−n−プロピルアザカルボニル基、ジイソプロピルアザカルボニル基等が挙げられる。Eのアルキルアザカルボニル基としては例えば、メチルアザカルボニル基、エチルアザカルボニル基、n−プロピルアザカルボニル基、イソプロピルアザカルボニル基等が挙げられる。AとEの結合としては例えば、アミド基、エステル基、ケトンによる結合が挙げられる。Arとしては例えばフェニル基が挙げられ、より具体的には一般式(3)
(式中、 Xは水素原子またはハロゲン原子を示し、Yはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはトリフルオロメチル基を示し、Zはヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基を示す。)
で示されるフェニル基が挙げられる。XおよびYのハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子があげられる。Zの低級アルコキシ基としては例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、ter−ブトキシ基等が挙げられる。
【0009】
一般式(1)で示される化合物の二重結合の立体は、それぞれE体、Z体どちらでもよく、特に限定されない。
【0010】
本発明に用いられるホスホランとしては、トリフェニルホスホラニリデンブタン、トリフェニルホスホラニリデン酢酸、トリフェニルホスホラニリデン酢酸メチル、トリフェニルホスホラニリデン−N−メチルアセトアミド、トリフェニルホスホラニリデン−N,N−ジメチルアセトアミド、トリフェニルホスホラニリデンアセトアミド、トリ(p−メチルフェニル)ホスホラニリデン酢酸メチル、トリ(p−メトキシフェニル)ホスホラニリデン酢酸メチル、トリナフチルホスホラニリデン酢酸メチル等が挙げられる。
【0011】
ウィッティッヒ反応で副生するホスフィンオキシドとしては例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、トリ−n−ブチルホスフィンオキシド、トリ−n−ヘキシルホスフィンオキシド等が挙げられるが、工業的には比較的安価で入手容易なトリフェニルホスフィンを原料としたトリフェニルホスフィンオキシドであることが多い。
【0012】
ウィッティッヒ反応の終了後の反応混合物中の目的化合物であるオレフィン化合物と副生物であるホスフィンオキシドのモル比は、通常、オレフィン化合物/ホスフィンオキシド=0.5〜2程度の範囲である。
【0013】
本発明において、ホスフィンオキシドを硫酸を使用して除去する方法としては、例えば、硫酸を用いて再結晶する方法あるいは硫酸を使用して洗浄する方法等が挙げられ、硫酸を用いて再結晶する方法が好ましい。
硫酸を用いて再結晶する場合には、硫酸−アルコール−水の混合系で行うのがより好ましい。
【0014】
ウィッティッヒ反応は通常、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類の単独もしくは2種以上の混合溶媒で行われるので、ウィッティッヒ反応終了後溶媒を濃縮により除去した後、硫酸−アルコール−水を加えるのが好ましい。
【0015】
アルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。水の硫酸に対する重量比(水/硫酸)は、通常0.01〜100、好ましくは0.01〜10程度、より好ましくは、0.03〜5程度である。
アルコールの硫酸に対する重量比(アルコール/硫酸)は、通常0.01〜100、好ましくは0.1〜10程度、より好ましくは、0.5〜5程度である。
【0016】
使用量は特に限定されないが、硫酸の使用量は、オレフィン化合物に対する重量比で、通常、0.1〜5程度、好ましくは、0.4〜2程度である。
【0017】
再結晶後、濾過、乾燥することにより通常、純度99%以上のオレフィン化合物を得ることができる。ホスフィンオキシドの含有率は通常、0.5%以下である。
【0018】
一般式(1)で示されるオレフィン化合物とホスフィンオキシドを主成分とする反応混合物は、一般式(4)
(式中、R1、R2、R3、A、D、Arは前記と同じ意味を示す。)
で示されるカルボニル化合物と一般式(5)
(式中、R4、Eは前記と同じ意味を示す。R5は低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。)
で示されるホスホランを反応させるとにより得ることができる。
【0019】
一般式(5)で示される化合物においてR5の低級アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられれ、置換基を有してもよいアリール基としては例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。使用量は一般式(4)で示されるカルボニル化合物に対して通常0.5〜2モル倍程度、好ましくは0.8〜1.5モル倍程度の範囲である。
【0020】
反応温度は、通常0℃〜100℃、好ましくは10℃〜70℃の範囲である。
【0021】
反応溶媒は通常、炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類の単独あるいはその2種以上の混合物が使用される。炭化水素類としては例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、リグロイン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素類としては例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等が挙げられる。エーテル類としては例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等が挙げられる。使用量は特に限定されない。
【0022】
一般式(4)で示されるカルボニル化合物と一般式(5)で示されるホスホランの加える順序は、特に限定されない。
【0023】
一般式(1)で示される化合物のうちA、Dが窒素原子であり、Eがアルコキシカルボニル基あるいはカルボキシル基であり、R1が水素原子であり、置換基EとR3がトランスの位置関係にある場合は、前記反応条件で、置換基EとAが縮合し環化することにより、一般式(2)の化合物となる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の製造法によれば、高純度のオレフィン化合物を工業的有利に製造することができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0026】
(製造例1)
3,3,3−トリフルオロ−2−オキソプロパナール−1−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニルヒドラゾン)9.47gと2−(トリフェニルホスホラニリデン)プロピオン酸エチル12.1gをトルエン70.5gに溶解し、室温で10時間反応させた。反応終了後室温まで冷却した後、反応マスを濃縮し、トリフェニルホスフィンオキサイドを含む粗2−(2−フルオロ−4−クロロ−5−ヒドロキシフェニル)―4−メチル−5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オンを22.8g得た。
(反応収率82.8%)
(LC面百値 粗2−(2−フルオロ−4−クロロ−5−ヒドロキシフェニル)―4−メチル−5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オン 25.7%、トリフェニルホスフィンオキサイド 10.5%)
【0027】
(実施例1)
製造例1と同様に操作して得られる粗2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オン5.62gに、2−プロパノール6.08gを添加し45℃で溶解させた。この溶液に水3.94gを加えた後、96%硫酸3.88gを徐々に滴下した。その後、室温まで放冷し、析出した結晶を濾過して、精2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オンを1.92g得た。
( 回収率85.3%、LC面百値100%)
【0028】
(実施例2)
製造例1と同様に操作して得られる粗2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)―5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オン18.1gに、2−プロパノール14.5gを添加し50℃で溶解させた。この溶液に水7.46gを加えた後、96%硫酸10.4gを徐々に滴下した。室温まで放冷した後、0℃にして30分静置した。析出した結晶を濾過して、精2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オン5.05g得た。( 回収率79.1%、 LC面百値100%)
【0029】
(実施例3)
製造例1と同様に操作して得られる粗2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)―5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オン5.95gに、エタノール5.64gを添加し50℃で均一溶解させた。この溶液にモノクロロベンゼン11.1gを加えた後、96%硫酸6.23gを徐々に滴下した。室温まで放冷した後、3時間氷冷した。析出した結晶を濾過して、精2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−5−トリフルオロメチルピリダジンー3−オン1.29g得た。( 回収率64.1%、LC面百値100 %)
【0030】
(参考例1)
製造例1と同様に操作して得られる粗2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)―5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オン4.68gに、トルエン4.95gとヘキサン4.96gを加え、58℃で溶解させた。2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)―5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オンの種晶を添加した後、室温まで放冷し、続けて1.5時間0℃で静置した。析出した結晶を濾過することで、2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)―5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オンとトリフェニルホスフィンオキサイドの混合物を2.50g得た。
2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)―5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オンとトリフェニルホスフィンオキサイドのLC面百値の比は、52.0:20.0であった。
【0031】
(参考例2)
製造例1と同様に操作して得られる粗2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)―5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オン3.83gに、エタノール8.44gを添加し40℃で溶解させた。この溶液に水2.61gを徐々に滴下し、0℃で静置したが結晶の析出は見られなかった。
【0032】
(実施例4)
3,3,3−トリフルオロ−2−オキソプロパナール−1−(4−クロロ−2−フルオロ−5−イソプロポキシフェニルヒドラゾン)4.36gとトリフェニルホスホラニリデン酢酸メチル6.23gをトルエン42.47gに溶解し、50℃、2時間反応させた。反応終了後室温まで冷却した後、反応マスを濃縮しトルエンを除去した。得られたトリフェニルホスフィンオキシドを含む粗生成物に、2−プロパノール9.22gを加え60℃に加熱した。この溶液に水4.42gを加えた後98%硫酸6.40gを、内温が70℃を超えないように徐々に加えた。その後、室温まで放冷し、析出した結晶を濾過した。濾別した結晶を50%2−プロパノール水15gで洗浄し、減圧下50℃で3時間乾燥することで、精2−(4−クロロ−2−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−5−トリフルオロメチルピリダジン−3−オンを2.95g得た。(収率59.8%、LC面百値99.54%、トリフェニルホスフィンオキシドのLC面百値0.46%)
Claims (4)
- 一般式(4)
(式中、R 1 は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基を示し、Aは炭素原子または窒素原子を示す。R 2 は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基を示し、R 3 は水素原子、、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基またはハロゲン化アルキル基を示し、Dは炭素原子または窒素原子を示し、Arは一般式(3)
[式中、Xは水素原子またはハロゲン原子を示し、Yはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはトリフルオロメチル基を示し、Zはヒドロキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基又はtert−ブトキシカルボニル基を示す。]
で示されるフェニル基を示す。)
で示されるカルボニル化合物と一般式(5)
(式中、R 4 は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基を示し、Eは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、ジメチルアザカルボニル基、ジエチルアザカルボニル基、ジ−n−プロピルアザカルボニル基、ジイソプロピルアザカルボニル基、メチルアザカルボニル基、エチルアザカルボニル基、n−プロピルアザカルボニル基、イソプロピルアザカルボニル基またはカルボニル基を示す。R 5 はメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基又はナフチル基を示す。)
で示されるホスホランとを、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類及びエーテル類から選ばれる少なくとも1種の溶媒の存在下、ウィッティッヒ反応して得られる一般式(1)
(式中、R 1 、R 2 、R 3 、A、D、Arは前記と同じ意味を示す。ここでAはEと直接結合していてもよく、その場合はR 1 はなくてもよい。)
で示されるオレフィン化合物及びホスフィンオキシドを主成分とする反応混合物から、前記溶媒を除去し、該オレフィン化合物及び該ホスフィンオキシドの混合物に硫酸、アルコール及び水を加えて、得られた混合溶液から該オレフィン化合物を再結晶することを特徴とするオレフィン化合物の製造法。 - 硫酸の重量比がオレフィン化合物に対して0.1〜5重量部であることを特徴とする請求項1記載の製造法。
- 硫酸に対する水の重量比が0.01〜100重量部であり、硫酸に対するアルコールの重量比が0.01〜100重量部であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造法。
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