JP4379844B2 - 高伸縮性不織布およびその製造方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、貼布材、保護カバー、サポーター、衣料芯地、下着材のように高度の伸長性と伸長回復性とを必要とする基布として好適な高伸縮性不織布およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
在来、例えば使い捨てのおむつでは、腰や大腿部など弾力的な密着を要する部分には、着用形態の保持と漏れを防止するために、天然ゴムやポリウレタン系の糸状物やテープ状物が使われてきた。 しかしこれらはどうしても局部的な緊迫となり、またギャザー状を呈するための不快感を伴い、おむつを取り去ると赤い締め付け跡が残るなどの不都合が生じていた。 またパンツ型使い捨ておむつにおいて、両側の緊締部に高弾性不織布を取り付けることも試みられているが、未だ緊迫力に欠ける不満が残されている。 いずれにせよ最近では、身体へのフィット性を向上させるために、不織布構造体自体に高度の伸縮性を持たせようとする方向へと動いている。
【0003】
不織布自体では未だ伸長回復性の点で根本的に不充分であり、その機能を補完するために弾力性シート材料の外面側に、1層またはそれ以上の非弾力性不織ウエッブ層を積層し、これを何らかの方法で一体化することで好適な弾力性、回復性能と、好ましい触感とを得ようとする複合不織布構造体の製造が提案されて来た。 これらの従来試みられて来た方法を凡そ次の3つに分類することができよう。
【0004】
第1の分類は、弾力性シート材料が熱可塑性エラストマーのフィルムであり、そのフィルムの片面または両面に不織布ウエッブを貼り合わせる複合構造体である。 実用的にはフィルムと不織布ウエッブとを点接着させ、風合いを保持することに留意されている。 また貼り合わせの前後において、不織布ウエッブを伸長、拡幅させて伸長性と回復性とを制御しようとの優れた提案がなされており、特公平7−91752、特開平5−222601、特開平5−245961、特開平7−252762にはこの分類の複合不織布構造体の体系化されたものが具現されている。 また特開平7−70936では、熱可塑性エラストマーフィルム自体が透湿性を保有することで、むれを防止しようとの試みが提案されている。 しかし本来の目的は、複合不織布構造体に充分の通気性を保持しつつ、高度の伸縮性を付与することであり、第1の分類としてのフィルムとの貼り合わせでは未だ不充分を免れない。
【0005】
第2の分類は、弾力性シート材料が熱可塑性エラストマーをメルトブローまたはスパンボンド法によって成形された弾力性不織構造体であり、その片面または両面に不織布ウエッブを積層し、これを熱融着、ニードルパンチング、水流交絡法などで一体化された複合不織布構造体である。 例えば、特公平7−863、特開平4−281059、特開平7−216707では、メルトブロー不織布、または特公平3−55152、特公平3−64157、特開平4−11062、特開平4−257363、特開平7−70902など一連の考案ではポリウレタン・スパンボンド不織布を弾力性シート材料として使用されている。
【0006】
またスチレン系ブロック共重合体を主成分とし、メルトブロー法によって成形された不織弾性ウエッブを予め伸長させた状態において、非弾性材料でできた不織ウエッブを積層し、さらに熱融着や水流交絡法によって一体化させる複合不織布構造体も提案されており、例えば特公平7−37703、特公平7−81230、特開昭62−33889、特開平5−272043、特開平6−10259、特開平6−184897などが一連の試みとして知られる。
【0007】
第3の分類は、熱可塑性ポリウレタンを熱溶融させ、メルトブロー的に非弾力性不織布ウエッブ上に捕集し一体化する方法があり、特公平6−70302に提案されている。 また類似の方法としては、特公平7−35631、特開平7−197382はホットメルト接着剤のスプレーにより、熱可塑性ポリマーの不織布ウエッブ上への捕集として挙げうるが、本発明の目的からは遠い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
いずれにしても在来提案され、一部実用されている伸縮性を有する複合不織布構造体を製造する試みは、すべて予め弾力性の不織布シートを別の工程で用意し、ある特定の手段で、非弾性短繊維ウエッブ構造体を積層するか、あるいは該短繊維ウエッブを形成しつつ一体化してゆく方法が基本となっている。 別工程で準備する弾力性の不織布は通常のシート状であり、ロールに巻きとられており不連続である。 また最終的な複合伸縮性不織布の製造と別製造工程となるため、コスト性または生産性において必ずしも有利であるといえない。 本発明は、基本的には複合不織布構造物を製造する一連の工程の中で本来の目的を達成することを主眼としている。
【0009】
また本発明の目的とは異なるが、不織布構造物を積層する際に使用する熱熔融性の接着剤を恰もメルトブロー法のような熔融紡糸的に非弾性不織布ウエッブ上に堆積させる方法(例えば特公平6−70302、特開平2−14057)や、ホットメルトスプレーによって同様の不織ウエッブ表面に吹き付ける方法(例えば特公平7−35631、特開平7−197382、特開平7−91770)もあるが、これらはいずれも積極的には弾性不織布層を形成し伸縮性機能を発揮させるには至っていない。 また実質的に通気性を有しない熱可塑性エラストマーを貼り合わせた構造のものは本発明本来の目的よりは遠いものと言える。
【0010】
これらの伸縮性の熱可塑性エラストマーを、いわゆるメルトブロー法によって成形する弾性不織布は、いずれも熱熔融によって流動化されたエラストマーを口金より溶出し、熱風流に載せながら長繊維(即ちフィラメント)不織布状に堆積させることを基本としている。 従ってこれらフィラメント状の繊維が、熱的手段で結合されているため、その結合部において風合いが固くなり、優しく十分に伸びるという適度な伸長回復性を具備させるという目的には不利があった。 例えば、おむつの腰周りや大腿部の弾性締め付け部分に適用した場合、その太さに応じて余り抵抗がなく十分に着用可能となり、また強い締め付け感がなく、かつずれないだけの回復性を持たせるという風合いのコントロールには問題を残している。 また接合の方法も熱的手段のみでは同様の問題が残される。
【0011】
かくして本発明は、叙上の課題を解決し、「優しく伸びてフィットする」という文句に表されるように、伸長時に過度の固さがなく、かつ速やかに伸長回復する機能を有し、さらに本質的に通気性をも保有する高伸縮性不織布構造体を提供することを目的としている。 さらに本発明は、使い捨ておむつのような本来低コストで使用される用途にも実用しうることを配慮し、実質的に連続する一製造工程の中で複合高伸縮性不織布構造体を製造する方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1層の短繊維不織ウエッブと、第2層として熱可塑性エラストマーの有機溶剤の溶液を空気流によって吐出し、該溶剤の揮散の下に短繊維状に集積交絡せしめた短繊維状不織ウエッブのスプレィド・ファブリックと、または/さらに第3層として短繊維不織ウエッブとが積層され、熱および高圧柱状水流によって一体化された複合織布構造体を提供するものであり、さらに該複合構造体が少なくとも一方向の破断伸度が100%以上、かつ100%伸長後の伸長回復率が80%以上であることを特徴とする高伸縮性不織布およびその製造方法を開示するものである。
【0013】
ここでいう「高伸縮性」という用語は、少なくとも一方向の破断伸度が100%以上、かつ100%伸長後の伸長回復率が80%以上であるような材料として定義する。 例えば、一方向の長さ10cmの試片が20cm以上にわたって実質的な材料破壊なく引延し可能であるとともに、20cmに伸長した後に荷重を解放してその長さが12cmより短くなるまでに十分に回復するということを意味している。
【0014】
また「短繊維不織ウエッブ」とは、個々の短繊維をカーディング法、ランダムウエッビング法、空気開繊法などで開繊して集積し、さらに必要に応じて水流交絡法、熱融着法、ニードルパンチング法などの手段で交絡せしめた材料として定義する。
【0015】
本発明でいう「熱可塑性エラストマー」とは、常温では加硫ゴムのような弾性挙動を示すが、高温すなわち加熱することによって塑性流動が可能となって、プラスチックの種々の加工機で成形できる高分子材料として定義する。弾性挙動とは、少なくとも250%以上にわたって材料破壊なく伸長することができ、除重によって速やかに元の形状に戻り、20%以上の永久歪を残さないような性質をいう。 この性質は、高分子中の弾性を発揮するゴム成分(軟質ブロックまたはソフトセグメント)と樹脂あるいは結晶成分(硬質ブロックまたはハードセグメント)とから成る分子構造に由来している。 すなわち熱可塑性エラストマーには、エントロッピー弾性を有するソフトセグメントと、塑性変形あるいは流動を防止するための分子拘束成分としてのハードセグメントの両成分が必要であり、常温付近でハードセグメントが加硫ゴムのような架橋点として働くことによって弾性挙動が発揮される。
【0016】
さらに「スプレィド・ファブリック」とは、部分的に結晶性を有する高分子材料の揮発性有機溶剤の溶液を空気流とともにスプレー吐出し、該溶剤を揮発乾燥させつつ、繊維状に飛散した糸状物を集積させて得られる不織布状の材料として定義する。 繊維状物の太さは不規則であり、またその形状、長さも一定でなく不連続、したがって短繊維状となる。 また集積点での乾燥度、すなわち溶剤の残存度によって変化するが、繊維状物が部分的に接着し3次元的に絡み合った構造体を形成し、実用上充分の強度を発現する。 また短繊維状物の重ね合わせあるいは交絡部分の接着点のコントロールが容易であり、したがって不織構造体の風合いがきわめてソフトである。 高分子溶液をスプレー吐出した場合に繊維状に飛散させるには、その材料の曳糸性が問題になるが、本発明の熱可塑性エラストマーでは必要充分の結晶性ハードセグメントを持つため、本発明の加工が可能となった。
【0017】
スプレィド・ファブリックは、メルトブロー・ファイバーあるいはスパンボンデッド・ファイバーとは紡糸方法、形状において相違している。
メルトブロー法あるいはスパンボンド法では、溶融させた熱可塑性材料を細い円形の多数の毛細管を有する口金を通して長繊維すなわちフィラメントとして押し出し、高速のガス流あるいは静電気などの電気的手段によってさらに細く引き延ばして集合用表面に集積せしめることによって製造される。 したがってこれらのファブリックは、実質的に長繊維状で連続しており、フィラメント同士の重なり部分での接着が多く、その風合いは堅いものとならざるをえない。
【0018】
本発明は、熱可塑性エラストマーを基体とするスプレィド・ファブリックを必須の構成不織布層として、しかも複合不織構造体の形成の工程の中において成形することを基本としている。 図1および図2は本発明によって製造される高伸縮性不織布構造体の断面図を示している。 図中1および3は短繊維不織ウエッブ層、2は熱可塑性エラストマーを基体とするスプレィド・ファブリック層であり、図1は2層、図2は3層(サンドイッチ)構造体を図示している。 それぞれの層間は適切な温度に加熱プレスすることによって部分的に接着、一体化(図1および図2中、それぞれaで例示)されており、さらにそれぞれbで例示するように短繊維不織ウエッブ1または3の側より高圧柱状水流によって短繊維が第2層の中に絡み込まれた構造体を形成している。
【0019】
スプレィド・ファブリックは、熱可塑性エラストマーの有機溶剤の溶液を空気流によってスプレー吐出し、該溶剤を揮散させつつ実質的に乾燥された短繊維としてウエッブ状に堆積させることによって成形する。 本方式では、比較的低粘度の高分子重合体溶液を比較的低温度、低圧力の条件の下で細流として大気中に高速度で押し出し、該重合体溶液のもつ曳糸性を利用しながら溶剤を速やかに揮散、乾燥させることで極細の短繊維の集束体を成形することに特徴がある。 従って製造および制御装置としては大幅に簡素化でき、使用する有機溶剤の処理装置を勘案しても、有利である。
【0020】
本発明に使用する熱可塑性エラストマーは、高分子中にゴム弾性を発揮するソフトセグメントと加硫ゴムの架橋点のごとく機能するハードセグメントとを有するブロックポリマーである。 特に本発明に好ましい材料は、スプレィド・ファブリックの構成要件から、比較的低沸点、高揮発性の有機溶剤に可溶であること、および該エラストマー溶液が充分の曳糸性を発揮しうることが必須である。 第1のグループはポリスチレン系ブロックポリマーである。 ここでは、ハードセグメントであるポリスチレンが球状凝集相として架橋点を形成し、ソフトセグメントの連続相に分散した形態をとっている。 ソフトセグメントの選択に伴ってスチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレン(SIS)、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレン(SEBS)、スチレン・エチレン/プロピレン・スチレン(SEPS)などのブロックポリマー、あるいはランダムSBRの水素添加物(HSBR)が適切な例である。
これらのエラストマーは、比較的低沸点の炭化水素系溶剤中でのイオン重合あるいは水素添加反応によって製造されるため、反応溶媒をそのまま本発明に利用しうることも特記点である。
【0021】
第2の好ましいポリマーはポリウレタン系セグメントポリマーである。 ここでは、ポリアルキレンエーテル、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネートなどの分子量500−5000の両末端ヒドロキシル基を有するポリオールをソフトセグメント成分とし、有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応によって結晶性のハードセグメントを導入よることで得られる。 ポリウレタンは、反応成分の種類、ソフトセグメント成分の分子量、各成分の使用比率を変えることによって幅広く物性を変化させることができ、本発明の目的に応じて設計することとなる。 またポリウレタンの場合にも、一般に溶液重合反応によって製造されるため、反応溶媒がそのまま本発明に利用しうる。
【0022】
また単独では曳糸性が稍乏しいために使用し難いが、ポリジオレフィン系の熱可塑性エラストマー、例えばシンヂオタクチック・ポリ−1,2−ブタジエン(RB)、トランス・ポリイソプレン(TPI)は、比較的安価なため第1、第2のポリマーに適当量混合して使用することができる。 その他の熱可塑性エラストマー、例えばポリエステル系、ポリアミド系、塩素系ポリマーは、使用しうる溶剤の揮発性などの点で本発明にはあまり適切でない。
【0023】
本発明で熱可塑性エラストマーは溶液状態で使用される。 該有機溶剤としては、比較的低沸点、高揮発性、低コスト、無毒性のものが必要であり、好ましい例としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、p−キシレンなどの炭化水素系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸−n−ブチルなどのエステル系の溶剤が挙げられる。またポリウレタンの良溶媒であるジメチルフォルムアミドも必要成分として併用することができる。 これらは、重合溶媒そのものを利用するのが効果的である。表1には本発明に使用される主な有機溶剤の性質を拾っておく。
【0024】
【表1】
【0025】
表1において揮発速度比は、酢酸−n−ブチルを100とした数値である。 スプレーノズルから吐出されたエラストマー溶液の細流がスプレィド・ファブリックとして短繊維状に目的表面に堆積する間での該溶剤の揮発乾燥状態が該スプレィド・ファブリックの構造、物性を決定づける。 このため溶剤の選択は重要であり、必要に応じて揮発速度の異なる溶剤を混合することも特に好ましい手段となる。
【0026】
本発明では、スプレー方式によってポリマー溶液を吐出せしめるため、比較的低粘度の溶液を使用する。 スプレー機構、装置によって異なるが、使用粘度は1,000−100,000cps(センチポイズ)、好ましくは2,000−50,000cpsの範囲であり、該溶液の予熱温度も室温−80℃と比較的低温度であるため、ポリマーの固形分濃度も比較的低く調整される。
充分な曳糸性を保つことも考慮して、これに対応するポリマー固形分濃度としては10−50%、好ましくは15−40%の範囲で調整する。スプレー吐出に導かれる溶液温度は室温でもよいが、80℃までの温度に加温するのも極めて好ましい方法である。
【0027】
本発明の熱可塑性エラストマー溶液のスプレー装置は、基本的に該溶液を一定量スプレー機構へ給送する定量供給部および該溶液を繊維状に吐出するための溶液吐出口、高速(加熱)空気吐出口を有する吐出部より構成される。定量供給部に使用する供給装置は、溶液粘度が比較的低いため空気圧を利用するもよいが、ギァーポンプ、スクリューポンプなど該溶液を定量、定圧で給送できるものであれば特に限定はしない。 また供給ラインにおいて、溶液温度が一定温度に加温され、好適には2.000−50,000cpsの粘度範囲で一定に制御しうる加熱装置を備えていることがさらに望ましい。 吐出部は、溶液吐出口、空気吐出口が適宜配列した口金よりなり、目的に応じて設計することとなる。一般的には、溶液吐出口のノズルオリフィス径は、0.1−3.0mmφ、好ましくは0.2−1.5mmφのものが利用される。 吐出空気は通常溶液温度より高く調整する。 室温−100℃といった温度において一定に制御される。
空気圧は、0.2−4気圧、好ましくは0.4−2気圧で供給される。 さらにこれらの吐出部全体が、製造ラインに直角方向に所謂トラバース的に、あるいは円形的に可動するがごとき構成、装置が実際的である。
【0028】
該スプレー装置から吐出された熱可塑性エラストマー溶液は、積層体を形成べき表面に均一にスプレーされるが、スプレーノズルから吐出されたエラストマー溶液は、細流となって急速に溶剤を揮散させつつ次第に繊維状固体となって目的表面に達する。 スプレー吐出口から該表面までの距離は極めて重要であり、得られるスプレィド・ファブリックの構造、風合い、強度を決定づける。 使用する溶剤の組成、濃度、温度、吐出量、および空気流の温度、風量、風速によって変化するが、該距離は20−1,500mmの範囲において充分に調整されねばならない。 設備の大きさも考慮して、好ましくは30−1,000mmとしうるように、逆に温度要件を適宜設計する。 該距離が短い時は、溶剤の残存が多く、短繊維状の集積体は繊維間の癒着が著しく、極端には恰も該集積体がスポンジ状になる。 また該距離が長すぎる時は、実質的に完全に溶剤の揮発乾燥が進み、繊維間の密着がなく該集積体の強度は極端に小さくなってしまうため不適当である。 風合いもこれらの諸条件の変化にともなって相違する。したがって層間剥離がなく強度、風合いの良好な構造体、すなわちスプレィド・ファブリックの形成には、これらの諸加工条件のコントロールが最重要課題となる。
【0029】
熱可塑性エラストマーで形成されるスプレィド・ファブリックの目付量は、目的とする複合不織布構造体の要求特性によって設計されるが、コストも含めて一般的には完全に乾燥された状態において10−100g/m2の範囲、実用的には15−80g/m2になるように吹き付けされる。 同じ要求特性でも、該エラストマーの硬さ、すなわちモジュラスの大きさによって目付量は可変である。 例えば、高モジュラスのエラストマーの採用によって、目付量は少なくして調整可能である。 またスプレィド・ファブリックの繊維間の密着度によってもその物性は変化するため、該目付量もそれによって調整される。
【0030】
スプレィド・ファブリックの成形後、なお若干量の残存溶剤を完全に除去する目的で加熱乾燥する。 この場合の温度は決して高温度としてはならず、得られている構造体に実質的な変化を来さないよう充分配慮する。 乾燥温度はしたがって60−150℃の範囲において調整され、また乾燥空気の風速、風量も慎重に制御する。
【0031】
本発明では、叙上のごとき熱可塑性エラストマーを基体とするスプレィド・ファブリックを成形しつつ図1あるいは図2に例示する複合不織布構造体を製造する。 すなわち図1に例示される構造体は、短繊維不織ウエッブ上に、該エラストマーを短繊維状のスプレィド・ファブリック層として堆積せしめることによって2層構造体として製造される。 また図2に例示される構造体は、該2層構造体のスプレィド・ファブリック層の上に、さらに短繊維不織ウエッブを積層することによって3層のサンドイッチ構造体として製造される。
【0032】
本発明の第1層および第3層に用いられる短繊維不織ウエッブは特に限定するものでなく、目的に応じて従来公知のものが適宜採用できる。 第1層と第3層とは同じ組成、目付量のウエッブでも、また異なるウエッブでもよい。 短繊維材料としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系繊維をはじめ綿、レーヨンも使用でき、それぞれ単独あるいは混合してもよい。 中でも捲縮の強い短繊維を使用すれば、ウエッブ自体の伸縮性が改善されるので好ましい。 さらに加熱することで螺旋状の捲縮が発現するようなコンジュゲート型の繊維は、該ウエッブに高い伸縮回復性を与え、柔軟性、強度の改善も大きく、特に好ましい。 この場合捲縮発現のための熱処理は、ウエッブの成形、交絡加工の後に行うのがよい。 短繊維材料の選択にあたっては、熱可塑性エラストマーの溶剤に膨潤あるいは溶解しないこと、および本発明において採用する加工温度(捲縮、乾燥、ラミネート、熱融着、ヒートセットなど)に対して実質的な変化をしないことを充分に考慮する必要がある。 また例えば上記捲縮温度も、該加工温度よりも少なくとも20℃以上高く設定し、ウエッブの性能、寸法安定性を保たせるよう配慮が必要である。 その限りにおいては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリ塩化ビニリデンなどのポリオレフィン系、ビニル系繊維の使用は慎重を要する。 短繊維材料の断面形状、デニール、カット長は一般的な不織布に適する範囲において適宜選択されるが、1−5デニール、25−76mm長程度のものが使用される。
【0033】
短繊維材料は、カーディング、ランダムウエッビング、空気開繊などの手段によって開繊、集積されウエッブとする。 この場合の繊維の配列、すなわち配向は本発明の効果に重要な意味を有する。 例えば、数台のカード機あるいは空気開繊機を用いて短繊維の大部分を機械進行方向に配列、集積せしめることによって、本発明の複合不織布構造体が、機械方向には殆ど伸長されず横方向(機械方向に対して直角方向)に専ら伸縮性を発揮するように設計することができる。 またカード機を適宜組み合わせ、カードによって紡出されるフリースの交差角を調整しつつウエッブとして集積せしめることによって、該複合構造体の経(機械方向)緯(横方向)の伸長、伸縮性のバランスをとることもできる。後者の場合、コンジュゲート繊維を使用して加熱捲縮するよう選択することによって、ウエッブ自体が高伸長、高伸長回復性を発揮するよう設計することもできる。本発明では、いずれの場合にも少なくとも横方向の破断伸度が100%(2倍)、好ましくは150%(2.5倍)以上であることが必要である。
【0034】
得られるウエッブは、高圧水流交絡法あるいはニードルパンチング法によって交絡処理をして形態の安定した不織ウエッブとする。 該ウエッブの目付量は目的とする製品によって変化するが、10−150g/m2の範囲で調整される。 使い捨ておむつのような場合には10−30g/m2、貼布材基布のような場合には15−80g/m2の範囲が適当である。 厚さ、見かけ比重もこれらの目的に応じて選択される。
【0035】
叙上の構成要素を駆使して本発明の複合不織布構造体を製造する代表的な装置のライン構成の一例を図3に概念図として図示している。 図3は、図2bに図示した3層、すなわちサンドイッチ状構造体を製造するためのライン構成を模式化したものである。 1は短繊維不織ウエッブであり、張力制御が可能な送り出し装置からニップロール2を経てエンドレスのネットコンベァー3の上に導かれる。ネットコンベァーは空気が充分自由に通過するものであれば特に材質を問わないが、,熱風温度、不織ウエッブの剥離性、耐久性を考慮してステンレススチールなどの網状コンベァーが好ましい。
【0036】
第1工程は短繊維不織ウエッブ上にスプレィド・ファブリック層を形成する工程であり、熱可塑性エラストマーの溶液4をポンプあるいは空気圧の作用を借りてスプレー用口金に供給し、加圧空気5によってウエッブ上に吹き付ける。 該エラストマーおよび空気流のラインは所要の温度に調整され口金のノズルから吹き出し、速やかに溶剤を揮散させつつ短繊維状に該ウエッブ上に堆積する。 揮発する溶剤は吸引ダクト7を経て排気される。 加工諸条件については、すでに【0026】−【0031】項に記載した諸要件を考慮して設定される。 この過程で形成されるスプレィド・ファブリック層は実質的に乾燥されているが、さらに乾燥炉8を通過させる間に完全に溶剤を乾燥除去する。 残存溶剤を含む炉からの排気は、ダクト7からの排気とともに集塵機9を経て触媒酸化燃焼装置10に導かれ、完全燃焼して無公害化して大気中に放出される。 排気中の溶剤については、回収することによって再利用することも考えられるが、設備費用、ランニングコストをも勘案して、例えば白金触媒の下で溶剤を完全に酸化、燃焼せしめ、炭酸ガスと水蒸気として放出するのが有利である。 本発明では、これら溶剤の処理方法については特に限定しない。
【0037】
第2工程は短繊維不織ウエッブ層とスプレィド・ファブリック層とを積層結着(ラミネーション)する工程である。 図2のような3層構造体とするため、別の短繊維不織ウエッブ11を張力を制御しつつ送り出し、プレラミネーター12を通してスプレィド・ファブリック層上に載せる。 次いで加熱されたスチールロールと、軟質ゴムをライニングしたバックアップロールより構成されるホットラミネーター13によって加熱、加圧され結合一体化される。 この工程では、各層間の剥離をなくすることを目的としており、この場合、加熱ロールの表面がフラットで全面にわたって押し付けることは好ましくない。 全面に過度に加圧すれば、スプレィド・ファブリック層が高密度化し、また不織ウエッブとの接着点も増加するため、著しく硬い風合いのものとなり、また伸縮性も損なわれてしまう。 従って実質的な層間剥離が防止できる限度に対応して、部分的な熱圧着処理、すなわち不連続な結合に留めることが好ましい。 このような条件を満足させるためには、加熱ロールの表面にドット状の凹凸パターンを施した熱圧着機構の採用である。 本発明では、そのパターンについて限定はしない。熱融着固定の条件は加熱エンボスロールのパターン、深度、面積、および被圧着構造体の厚さなどによって変化するが、加熱温度は一般的に使用する熱可塑性エラストマーの軟化点より10−25℃低い温度とし、ロールの押圧は30−200g/cmの範囲が好ましい。
【0038】
目的とする複合不織布構造体がこの段階で必要とする機能を発揮するとされる場合は、このラミネーション工程の後、冷水によって冷却すべくクーリングシリンダー14を経て巻き取り装置15に引き取られる。
【0039】
また所要の機能、要求特性から、熱融着固定を最小限に抑え、繊維間の交絡によって強度、風合いを改善したいといった場合には、さらに高圧柱状水流の作用によって短繊維ステープルの一部を該ウエッブ側よりスプレィド・ファブリック層の中に押し込み一体化させる操作を追加するのが好ましい。 これには高圧水流(ウォータージェット)交絡法として公知の方法、設備が使用される。 高圧柱状水流とは、0.01−0.5mmφ径の噴射ノズルから、噴射圧力30−150kgf/cm2Gで水を噴射させることで得られる。 噴射は短繊維不織ウエッブの側からとし、図1の2層構造体ではその片面ウエッブ面を、図2の3層構造体では両面から行われる。 ウォータージェット流をウエッブ面に噴射すると、ステープルファイバー群の少なくともその一部がスプレィド・ファブリック層の間隙を通って他側に貫通しながら各層間に交絡を形成して複合構造体の一体感を増加させる。
【0040】
ウォータージェット交絡法の設備としては、例えば三菱レイヨン方式、Perfo−Jet方式などがあるが、図3ではHoneycomb方式に準じてその製造ラインを例示している。 ホットラミネーター13で一体化された構造体は、クーリングシリンダー14を経て巻き取られずに第3工程の高圧水流交絡ゾーンへ導かれる。 高圧水流は第1段ノズルユニット群16、第2段ノズルユニット群17から該構造体面に向けて噴射され、サクションドラム18および19に吸引される。 サクションドラムは該構造体の支持体も兼ね、該ドラム表面が穴開き構造となっており、高圧水流は有効に該構造体を貫通しドラム内に吸引され還流する。 吸引は気水分離タンク20に接続した真空ポンプ21によって行われ、排水ポンプ22により一旦貯水槽23に戻され、濾過などの処理を施される。 高圧水流は、送水ポンプ24を経て高圧ポンプ25によって発生しノズルユニット群へ送られる。 かくして第1段、第2段ウォータージェット・ゾーンを通過する間に、該構造体はその両表面より高圧水流の噴射を受け有効な繊維の交絡を生ずる。図1の2層構造体の場合は、第1段の処理を省略し、第2段ウォータージェット・ゾーンでの交絡処理のみで達成される。 あとシリンダードライァー26で乾燥され、クーリングシリンダー27を経て巻き取り装置28にまきとられて一連の連続した製造工程を完結する。
【0041】
【作用】
本発明は、少なくとも一方向の破断伸度が100%以上、かつ100%伸長後の伸長回復率が80%以上であるような高伸縮性の複合不織布構造体を目的として、該不織布構造体を連続的に製造する工程途中において、熱可塑性エラストマーのスプレィド・ファブリック層を形成し一体化させるものである。 複合不織布構造体の物性は、(1)不織ウエッブおよび(2)熱可塑性エラストマーの性状、(3)スプレィド・ファブリック成形条件、(4)結合一体化の加工条件によって決定付けられる。
【0042】
不織布構造体の物性を本発明では、強伸度特性および繰り返し伸長特性によって評価している。 測定に当たっては、いずれもオートグラフにより、幅5cm、長さ15cmの試験片を使用し、チャック間隔10cm、引っ張りおよび戻しの速度は20cm/分の条件を用いている。 図4は本発明に使用する代表的な不織ウエッブA、熱可塑性エラストマーのフィルムB、およびそのエラストマーから成形されるスプレィド・ファブリックの両面に不織ウエッブをラミネートした3層複合構造体Cの強伸度特性を図示したものである。 横軸は材料に荷重をかけて引っ張った時の伸度、縦軸はその荷重(引張応力)をプロットしており、その経過を辿るカーブをS−S曲線として図示されている。 数値としては、50、100、150、200%伸度での引張応力、および材料破壊する時の強度(引張強度)あるいは伸度(破断伸度)を以て比較評価することとする。 Aは1.5d(dは糸の太さを表すデニール単位)ポリエステル短繊維をカーディング法で30g/m2の目付量に積層し、0.15mmφノズルから70kg/cm2の高圧柱状水流で交絡処理して得られる不織ウエッブであり、機械進行方向(MD)には殆ど伸びず、横方向(CD)に伸度を大きくなるように繊維を配向させている。 不織ウエッブAは、伸ばされるに伴いその組織の弾力性に対応する応力が生ずるが、点A1(第1次降伏点)を過ぎると繊維の交絡による抵抗が加わり急速に応力を増し、点A2においてそれらの交絡が破壊され始め(第2次降伏点)、さらに伸ばされれるにつれ交絡が逐次損傷を受け最終的に破断(A3)する。 Bはスチレン・イソプレン・スチレン(SIS)ブロックポリマーの厚さ60μフィルムのS−S曲線である。 またCは、Aの上にSISポリマーのトルエン溶液(固形分濃度25%)をスプレー吐出させることでスプレィド・ファブリック層を形成し、さらにAを積層、120℃でホットラミネートすることで製造された3層構造体のS−S曲線である。
【0043】
繰り返し伸長特性は、試験片を例えば150%伸長し、次いで荷重を同じ速度で緩和することでヒステレシス曲線を得る。 加重時をOUT、除重時をINと表示することとし、それぞれ50、100、150%伸長時の応力値によって材料の伸長特性を評価する。 またそれぞれの伸長%におけるIN/OUTの応力の比率を求めることによって、その材料の弾性回復の評価とする。図5は、上記SIS−スプレィド・ファブリックを中間層とする3層構造体の3回連続繰り返し伸長のS−S曲線を例示している。 図5で例示される戻り(IN)曲線の横軸との交点の伸度から永久歪みも求めることができる。
【0044】
【表2】
【0045】
表2には、市販されている代表的なパンツ型使い捨ておむつのギャザー部の特性についての測定値を示している。 該測定に供されたギャザーは、予め所要本数の糸状弾性体を引き揃え、かつ所定の伸長倍率に引き伸ばして、2枚のサーマルボンド不織布(2.2dポリプロピレン繊維をランダムウエッバーで積層、サーマルボンドされた目付量25g/m2)の間に挟み込み、ホットメルト接着剤で固定した後緩和して得られたものでありる。 これによって腰、大腿部などへの緊締を達成する。 本発明では、これらのギャザー構造を改善すべく新規な複合不織布構造体を提案するものであるが、緊締力はこれらの実績値が参考になる。 例えば、パンツ型おむつのウエスト(腰)部の両サイドにはこの種のギャザーが取り付けられるが、表2の50%伸長時の応力、ことに天然ゴムテープがOUT:172、IN:145gであることを勘案し、これを本発明のごときシート材料を腰周りの両サイドに、幅としておよそ5cmの襠(まち、おくみ)を入れると見立てて一つの目処とする。 すなわち本発明では、例えば使い捨ておむつ用としての好適な複合不織布構造体の50%伸長応力値としてOUT:150±30g/5cm幅、IN/OUT比としては極力大きい数値、好ましくは80%以上となることを目標とすることとする。 あるいは伸縮性材料の締め付け感が戻り(IN)応力に対応することを考慮して、50%伸長応力IN:120±30g/5cm幅とするのも妥当である。
【0046】
本発明の目的である弾性回復性の評価については、図5のS−S曲線からヒステレシス・ロス、永久歪、IN/OUT応力比などの数値が有用であるが、さらに3cm幅の試験片を例えば150%に30分間伸長の後除重、緩和して30分静置し、その時に測定される「残留歪」を伸度に対して割り返した比率として採用する。 標線間の長さ10cmの試験片を150%伸長、即ち25cmまで引き伸ばし(15cm伸長)除重後、試験片の長さが11.8cm(1.8cm伸び)までに回復していたとすれば、残留歪は1.8÷15×100=12%として算出される。 また弾性回復率は88%となる。
【0047】
以上の評価方法、基準を念頭において、本発明では不織ウエッブ、および熱可塑性エラストマーの種類、組成、構造、配合の選択をし、さらにスプレィド・ファブリックの成形諸条件、熱圧着、高圧水流交絡処理の諸条件の調整をすることにょつて、通気性が高く、風合いがソフトで伸長回復性の優れた高伸縮性の不織布構造体を製造する。 特に熱可塑性エラストマーを熱熔融するメルトブロー法にはないソフト性を重視して本発明を完成させた。 メルトブロー法は、極細の繊維よりなる不織布を製造するために考案されており、ポリマーを300−350℃、低いものでも220℃以上といった高温度で熔融、ノズルより押し出し、これを300℃前後の高温かつ500m/秒のような高速の空気流で細く繊維状として支持体上にウエッブとして成形される。 捕集される半熔融状態の繊維は、空気流体の熱と風圧とで相互に強く熱圧着され、このため、得られる不織ウエッブの交絡点は融着接合して密度も高く、風合いの硬いものになってしまう。 これに対して本発明のスプレィド・ファブリックの成形法では、低温度でスプレー吐出され、風速の低い空気流で溶剤の揮発乾燥の下にウエッブが成形される。 繊維間の癒着は溶剤の乾燥度で随時調整され、ウエッブは密度も小さく、ソフトな風合いとなる。 メルトブロー法に比較して引張強度は低いが、本発明の複層構造体では問題にならない。
【0048】
表3および表4には、メルトブロー法および本発明法によって成形される代表的な不織ウエッブの成形条件および物性について例示しておいた。表3は、スチレン系ブロックポリマーによる両方式の比較について例示したものである。 表中、SEBSはスチレン・エチレン/ブチレン・スチレン、SEPSはスチレン・エチレン/プロピレン・スチレン、SISはスチレン・イソプレン・スチレン・ブロックポリマーで、PPは粘着防止のために併用されるポリプロピレンである。 メルトブローン不織布では300℃近くの温度で熔融され、300℃前後の熱風でブローされるため、不織布の強度は大きいがモジュラスは高く、風合いはよくない。 また高温で熔融するため、不飽和結合を有するようなスチレンブロックポリマーでは熱変色、劣化などが憂慮され、使用には制約を受ける。 本発明の方法では、トルエンのような溶剤に溶解された低粘度の溶液をスプレーするため、室温でも成形、乾燥ができ、変色、劣化の心配は全くない。一般的に風速は2−10m/秒程度と低く、また支持体までの距離によって溶剤の乾燥度が調整されるため、ファブリック自体の繊維間の接合、従ってモジュラスが十分に制御できる。また破断伸度も200%以上に充分保たれる。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
表4は、ポリウレタンエラストマーを使用して不織布とする両方式の比較について例示している。 ここでも同様にメルトブロー法では、220℃以上の高温度で熔融され、熱風温度も200℃を超える。 ポリエーテル系のエラストマーは熱安定性が余りよくなく熱変色も大きいので、熱熔融に際してはその使用には注意が必要となるが、本発明法では低温で成形されるため全く問題ない。 表中、PTMG−1100は両末端ヒドロキシルのポリテトラメチレングリコール(分子量1,100)、PMPA−1500は同じく3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とよりの分子量1,500のポリエステル、PEBA−2500は80%エチレングリコール/20%1,4−ブチレングリコールとアジピン酸とよりの分子量2,500のポリエステルグリコールである。BHEBは1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、BGは1,4−ブチレングリコール、MDIはジフェニールメタン−4,4’−ジイソシアネートである。 本発明のスプレィド・ファブリックは強度は低いが、破断伸度は200%以上あり、モジュラスは充分にソフトに調整することができる。 繊維は稍太く分布も広いが、通気度は他より大きい。
【0052】
以下実施例によって具体的に本発明の態様を詳細に説明する。
【0053】
【実施例】
(実施例1) スチレン系エラストマーによるCD方向高伸縮性複合体の製造
<短繊維不織ウエッブの調製> 1.5d、カット長45mmのポリエステル短繊維をローラーカードを用いてパラレルカードウエッブを調製した。 目付量は25g/m2、機械方向(以下MDと記す)と直角方向(以下CDと記す)との方向性はMD/CD=7のウエッブであった。 このウエッブに高圧柱状水流による交絡処理を施しスパンレース不織布とした。 交絡処理は第1段0.12mmφノズル、30kg/cm2水圧、第2段0.12mmφノズル、50kg/cm2水圧、第3段0.2mmφノズル、70kg/cm2水圧の3つのウォータージェット・ゾーンを通過させることで実施し、乾燥して得られた不織ウエッブは、目付量27g/m2、厚さ0.22mmであった。
【0054】
このウエッブを使い捨ておむつ用を想定して、図2のような3層複合構造体の第1および第3層として使用するが、次のようにMDには殆ど伸びず、CDに必要充分伸長される物性を有していた。
【0055】
<スチレン・ブロックポリマー溶液の調製> 3層複合構造体の中間層としてポリスチレン系エラストマーのスプレィド・ファブリック層を形成させるため、表5のポリマーを選択し、それぞれトルエンで撹拌下に均一に溶解し、スプレー溶液を調製した。
【0056】
【表5】
【0057】
SBSはスチレン・ブタジエン・スチレン・ブロックポリマーであり、SEBSはSBSを水素添加して製造される。 このためSBS、SISは不飽和結合を有しているが、SEBSは完全に飽和しており、熱安定性、熱変色に強い。 一般にメルトブロー方式では高温度での加工となり、不飽和結合を有するポリマーは制限を受けるが、本発明では遥かに低温度で成形するため、低コストのSBS、SISが活かされる。 本実施例では市販のペレットを使用したため溶剤としてトルエンを用いたが、ポリマーの重合溶媒、例えばn−ヘキサン、シクロヘキサンは、そのまま本発明に好ましく使用できる。
【0058】
<スプレィド・ファブリックの成形> 短繊維不織ウエッブの進行方向に直角に配備したノズルダイから表5のポリマー溶液をスプレーした。 ノズルのオリフィス径は0.8mmφを用い、2.0mmピッチ間隔とした。 スプレー用の空気流は、オリフィス配列の中心線より2.5mm離して平行に幅2mmのスリットから吹き出させた。 送風空気圧は4kgf/cm2Gで、ノズル出口での風圧は0.3kgf/cm2G、風速は12m/秒で、ノズル出口での空気温度が約50℃となるように調整した。 被噴射体であるウエッブはほぼ垂直に保ち、これに対してほぼ水平にスプレーした。 該ウエッブは、支持体として10メッシュのステンレス金網を使用して裏当てとし、ノズルとの距離を随時変更できるようにした。 各ポリマーの35%固形分濃度のトルエン溶液を約50℃に加温しつつ、流量3.8g/ホール/分で空気圧送、供給した。 始めに短繊維不織ウエッブを用いず、支持体の上にスプレィド・ファブリックを成形し、適性条件を探求し、表6のような結果を得た。
【0059】
【表6】
【0060】
表6での乾燥状態は、殆ど溶剤が揮発して繊維状に固定されるものを「良好」とした。 逆にタックとは、支持体上に堆積した繊維状アエッブが、相互に癒着するに充分の粘着性を有している状態を「良好」とした。 繊維間の自着性も同様である。 強度は、堆積したウエッブを伸長して250%以上破断しないものを「良好」とし、その程度に応じてランク付けした。
【0061】
Aポリマーは、スプレーによって得られる繊維長が3−10mmと短く、曳糸性は余り良好ではなかった。 曳糸性の点では、ポリマーCおよびAが良好で、乾燥性、繊維間の適当な結合の点から、SISを用いた40cm程度の距離、あるいはSEBSに於ける20−40cmの距離でのスプレーが最も良好であった。 SISからのスプレィド・ファブリックの物性については、その一例を表3に記載しておいた。
【0062】
<3層不織布構造体の調製>
【0054】に示したポリエステル・スパンレース不織布(目付量27g/m2、幅1.5m)を両表面とし、SISポリマーの35%トルエン溶液からのスプレィド・ファブリック層を中間層とした複合構造体を調製する。 該不織布を10メッシュのステンレス製ネットコンベァー上に載せ25m/分の速度で供給した。
【0063】
スプレー・ノズルはコンベァーに直角に配備する。 ノズル口金にはポリマー吐出口として、1.5mの幅にわたって一列に2.5mmのピッチで0.8mmφのオリフィスを配列し、さらにその両サイドに空気吹き出し口として幅2mmのスリットをセットされた構造のものを3連組み合わせた。 従って全体としてのノズル・プレートは、1,800ホール(1,200ホール/m)のオリフィスを有するノズル・プレートで、50−53℃の温度に保温した。ノズルの出口よりコンベァー面までの距離は40cmとなるように固定した。
これに50℃に加温した除湿空気を圧力4kgf/cm2G、風量15Nm3/分で送風したが、ノズル出口で風速はおよそ10−12m/秒と測定された。 その送風方向、ちょうどネットコンベァーの裏側には吸引排気ダクトを設け、揮発する溶剤を含む排気を25Nm3/分で吸引するように設備されている。 これによりノズル・プレートから吹き出された空気流は、ポリマー溶液流を線状に運びながら溶剤の揮発の下に繊維化し、不織布およびコンベァー・ネットを貫通してダクトより排気される。 ポリマーは短繊維となって不織布上に堆積する。
【0064】
ネットコンベァー上に不織布を連続に供給しながらSISポリマー(日本合成ゴム:JSR−SIS−5505)の35%トルエン溶液をスプレー吐出させる。 該溶液は圧送タンク内で予め50℃に加温され、窒素ガスで加圧しながら流量を7kg/分となるように調整され、ノズルへ供給される。 該溶液の50℃における粘度は1,780cpsであった。 該溶液は急速に揮発しながら不織布上に連続的に堆積した。 堆積したスプレィド・ファブリック層は、繊維状ポリマーが絡み合い、接合点および不織布のポリエステル繊維との自着性も良好であった。 次いで該スプレィド・ファブリック層の上に、さらに同じポリエステル・スパンレース不織布を連続に供給しつつ、プレラミネーターによって重ね合わす。 ラミネーターは、1.5kgf/cm2Gの蒸気加熱機構を有するスチールロールと、軟質ゴムをライニングしたバックアップロールとよりなり、第2の不織布を重ね合わせた後、クリァランス0.3mm、圧力3kgf/cm2Gでラミネートする。 この状態ではなお若干量の溶剤が残っているため、85℃の熱風乾燥機を約30秒通過させて完全に乾燥し、冷却して巻き取る。
この時点での3層構造体の厚さは0.69−0.74mm、幅方向の実質的な収縮はなく、目付量は110−116g/m2であった。
【0065】
<熱プレスによる複合構造体の調製> 得られる3層構造体は、ファブリックの層間および不織布繊維との接着が稍弱く、若干剥離しやすいので、さらに熱プレスによって部分的に接着、補強した。 熱プレスはエンボス方式を用い、エンボスロールには斜めラス目模様を施し、軟質ゴムをライニングしたバックアップロールに押し付けることで点接着とし、伸度、風合いを損なわないようにした。
該ラス目は4.5×3.0mm、深さ0.4mmのものを用いた。 エンボスロールは熱媒加熱方式によってロール表面温度を145℃に調整し、クリァランス0.2mm、圧力4kgf/cm2G、走行速度25m/分であった。 得られる構造体の厚さは0.63−0.66mm、目付量は108−110g/m2であった。 各層間の剥離強度は、すべて材料破壊を伴いいずれも200g/cm幅以上の値を示していた。
【0066】
<複合構造体の物性> 得られたSISエラストマーよりのスプレィド・ファブリックを中間層とした複合不織布構造体の強伸度特性および繰り返し伸長特性を表7に表示した。 ここでは市販のパンツ型ベビー用紙おむつより採取した3層不織布構造体(市販品と表記)との比較において検討する。 市販品は約25g/m2のポリエステル・スパンレースを両面にし、約60g/m2のSEPSフィルムを中間層としているものと分析されている伸縮性の材料である。 また図6には、これらの構造体のCD方向の繰り返し伸長における第1回のループの比較を図示した。
【0067】
【表7】
【0068】
これらの物性、とくに弾性回復性の比較では、表7および図6から本実施例の材料が市販品より優れることが示されている。 さらにこの関係を解析するために、繰り返し伸長におけるIN/OUT比、すなわち材料の引っ張りに要したエネルギーがどれだけ(%)有効に戻るかを比較することも大きい目安になる。 また第1回目と第2回目の引張応力の比率をみることで繰り返し伸張を加えたときの弾性率の衰退を推定することができる。 表7の数値からこれらの弾性挙動を比較してみると、本実施例の材料が市販品より格段に優れることが知られる。
【0069】
(実施例2) ウレタン系エラストマーによるCD方向高伸縮性複合体の製造
<短繊維不織ウエッブの調製> 実施例1と同様に3層複合構造体を目的として、中間層にポリウレタン・エラストマーのスプレィド・ファブリックを配した使い捨ておむつ用の材料を製造する。 両表面は実施例1と同じ1.5dポリエステル繊維の目付量27g/m2、厚さ0.22mmのスパンレース不織布を使用した。
【0070】
<ポリウレタン・エラストマー溶液の調製> ポリエステルグリコールを出発物質として溶液重合によってポリウレタンエラストマー溶液を調製した。 ポリエステルグリコールは、エチレングリコール80モル%と1,4−ブチレングリコール20モル%の混合グリコールとアジピン酸とのポリ縮合によって得られる分子量2500の両末端ヒドロキシルのポリオールを用いた。 このポリオール1モル、1,4−ブチレングリコール2.5モル、およびジフェニールメタン−4,4’−ジイソシアネート3.4モルを出発原料として溶液重合法によって実質的に線状のポリエステルウレタン溶液を得た。 さらにスプレーを容易にするために、固形分濃度を最終的に15%となるように調整し、粘度760cps(30℃)の溶液が得られたが、最終の溶剤組成はDMF/トルエン/MEKの重量比として15/25/60であった。 このポリウレタン・エラストマーのフィルム物性は、100%モジュラス14kgf/cm2、引張強度190kgf/cm2、破断伸度750%であった。
【0071】
<スプレィド・ファブリックを中間層とした3層構造体の成形> ハンディ・タイプの塗装用スプレーガンを用いて、ポウレタン・スプレィド・ファブリックの成形を試みた。 スプレーガンは、北伸精器製作所モデルRS−506で、ノズルのオリフィス径は1.2mmφ、平吹きエァーキャップから4kg/cm2G圧の圧搾空気を吹き出させることで該溶液を糸状に紡出した。 15%ポリウレタン溶液は室温(26−28℃)のまま使用し、この時の溶液の供給量は6.7g/分(固形分PUとして1.0g/分)と測定された。 該溶液の溶剤は室温でも十分に揮散し、少なくとも60cmの距離以上では良好な繊維状の束が得られた。
【0072】
目付量27g/m2のポリエステル・スパンレースを10メッシュの金網に固定し、スプレーブースにほぼ垂直に立て掛け、該被噴射体に直角方向、すなわち水平にスプレーガンを移動させ均等になるようにスプレーした。 繊維状エラストマーは蜘蛛の巣状にスパンレース上に堆積し、スプレィド・ファブリック層を形成するので、所要の目付量となるまで、根気よくスプレーした。エラストマーとスパンレースとの密着は十分でスプレー層が剥離することはなかった。被噴射体とスプレーガンとの距離およびスプレー層の目付量を変更して、まずそれぞれの2層構造体を調製し、さらにそのスプレー側面に同じポリエステル・スパンレースを重ね合わせ3層とした。 若干量の溶剤の残存が考えられるので、100℃熱風乾燥機で10分乾燥した。
【0073】
次いで熱プレスによって部分的に接着し補強した。 熱プレスは実施例1と同様のエンボス条件を用い、ロール表面温度のみ160℃に変更した。
【0074】
【表8】
【0075】
<複合構造体の物性> ポリウレタン・スプレィド・ファブリックを中間層とした複合不織布構造体の強伸長度特性および繰り返し伸長特性を表8に示した。
これらの結果では、スパンレース表面とスプレーガンの口金との距離は80cmのように近接する方が強度も大きく、弾性回復も速やかなことが判る。
【0076】
図7および図8には、表8に得られた複合構造体の繰り返し伸長の第1回目のループを比較したグラフを図示している。 とりわけ図8に示される近接距離80cmにおいて噴射して得られた60g/m2の目付量のポリウレタン・スプレィド・ファブリック中間層の構造体の挙動が、表2のAに示した天然ゴムテープの特性に極めて類似しているのが判る。 またこれは図5にみられるSIS・スプレィド・ファブリック中間層をもつ複合構造体と比較して、OUTの曲線において極めて類似しているが、INのループの位置は比較的高く、弾性回復がより速やかなことが示される。この点でポリウレタンの方がスチレン系より好ましいと考えられる。
【0077】
(実施例3) ポリウレタン・スプレィドファブリック中間層複合構造体の製造<短繊維不織ウエッブの準備> 中間層にポリウレタン・スプレィド・ファブリックを挿入し、両面にポリエステル・スパンレースを配した3層複合構造体を目的として、CD方向高伸縮性の不織布を製造する工程を例示する。 ポリエステル・スパンレースは実施例1と同じ1.5dポリエステル短繊維を使用して得られる目付量27g/m2、厚さ0.22mmの材料を選択した。 この不織布の物性は【0054】に示したものと同等であった。 幅1.5mのスパンレースを、予め内径7.5mmの紙管に巻き上げておいた。
【0078】
<ポリウレタン・エラストマー溶液の準備> 実施例2と同等のポリエステルウレタン・エラストマーを選択した。 ポリエステルポリオール、1,4−ブチレングリコール、ジフェニールメタン−4,4’−ジイソシアネートから溶液重合法によって線状ポリウレタン・エラストマー溶液を調製した。 最終的な溶剤組成は、重量比としてDMF/トルエン/MEKが60/10/30の混合組成となっており、固形分30%、常温での粘度120,000cpsとなるように調整された。 この溶液を60±2℃に調整し、スプレー機構に給送するが、この時の粘度は22,000cpsであった。
【0079】
<スプレー・ノズルの準備> 本実施例で採用する製造ラインは、実質的に図3に図示された構成のものである。 エラストマー溶液のスプレーのためのノズルヘッドとして、ダイナテック株式会社製のDynafiberノズルヘッドを使用した。 ノズルヘッドは幅381mmのユニットを4組連結して、進行方向に直角に配置した。 ヘッドには、直径0.5mmのノズルホールを2.54mmのピッチで直線上に設けており、従って全幅1.5mに亙って約600ホールとなっている。 ノズルヘッドには、各組ごとにギャーポンプ(75cc/rpm、10−90rpm)で溶液を給送するように接続した。 パイプラインも60℃に保温した。 スプレーのための熱風の吹き出し口をノズルホールの配列の両側に設け、80℃の熱風を0.4kgf/cm2Gの微圧で噴き出るように調整した。これによりエラストマー溶液の溶剤を速やかに揮発させると同時に、ノズルより吐出する細流が僅かに揺れながら結果的に繊維状の交絡を形成せしめることとなる。 本実施例では、ノズルの出口よりコンベァー面までの距離は50cmとなるように固定しておいた。
【0080】
<3層不織布構造体の製造> 図3に倣って本実施例の態様を説明する。 複合構造体の第1層となるポリエステル・スパンレースを送り出し装置1に架け、ニップロール2を経てネットコンベァー3の上に送り込む。 速度を30m/分となるように調整しておく。
【0081】
ポリウレタン・エラストマーの溶液をタンク4に貯え、60℃に調整し、ギァーポンプによってノズルヘッド6に給送する。 ギァーポンプの回転数を60rpmとし、これによって溶液の供給量が4.5kg/分となることを確認する。 これによりポリウレタン・エラストマーは乾燥後目付量が30g/m2のスプレィド・ファブリックとして形成されることになる。 給送のパイプラインも60℃に保温しておく。
【0082】
一方スプレーのためのエァーを80℃に加熱し、圧力が0.4kgf/cm2Gになるように調整しておく。 これにより加熱エァーは、ノズルヘッドのスリットより、エラストマー溶液の細流に対して向流方向に吹き出し、溶液中の溶剤を揮散させつつ、ネットコンベァーを通過して燃焼炉から大気中へと導かれる。ノズルヘッドも予め60℃に保温しておく。 ポリウレタン・エラストマー溶液のバルブを開けることで実質的にスプレーが開始されることになる。
【0083】
以上の準備完了後、コンベァー上の不織布に連続的にスプレーを開始し、僅かに残っている溶剤を乾燥炉8に導きさらに乾燥する。 これによって第1層不織布、第2層スプレィド・ファブリックの2層構造体が得られる。
【0084】
次いで第3層となるポリエステル・スパンレースを送り出し装置11に架け、ニップロール12を経て該2層構造体の上に連続的に積層する。
さらに接着を固定するために、ホットラミネーター13に導き圧着し3層構造体とする。 ホットラミネーターの加熱ロールの温度は予め135℃としておいた。構造体はクーリングシリンダー14に導かれ冷却され、ここで一部を巻き取り装置15に引き取る。 別に3層構造体を次のウォータージェット交絡装置に導きさらに3層間の交絡を向上させるよう加工を追加する。
【0085】
ウォータージェット装置はドラム18および19の2段階において構造体の両面から高圧水流を噴射できるように配列されている。 それぞれのド上にはノズルユニットが配備されており、0.12mmφのノズルより水圧50kgf/cm2Gのウォータージェット流を構造体にほぼ垂直に噴射し、充分な交絡を形成させる。 さらにシリンダードライァー26、クーリングシリンダー27に導かれることによって乾燥、冷却され、最終的に巻き取り装置28に巻き取られる。
【0086】
<複合構造体の物性> 得られた3層複合構造体の強伸度特性および繰り返し伸長特性を表9に表示した。 Aは3層構造体の形成後ウォータージェット交絡処理を行わなかったもの、Bはさらにウォータージェット交絡処理を行ったものである。 これらの構造体の繰り返し伸長特性からは、実施例2のAに比較していずれもソフトな風合いのものとなったことが認められる。
【0087】
【表9】
【0088】
<複合不織布構造体の伸長回復率の比較> 実施例1、2、および3によって得られた3層不織布構造体の弾性回復率を測定した。 試験は【0046】に規定した方法に準じ、標線間10cmの試片を100%に30分伸長の後除重、緩和して30分静置する方法を採用し、伸長に対しての回復率を測定した。 表10にまとめて表示したが、本実施例で得られる複合構造体は、いずれも市販品材料より優れた弾性回復率を有していた。
【0089】
【表10】
【0090】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明は、複合不織布構造体を製造する一連の工程の中で、熱可塑性エラストマー溶液をスプレーし、溶剤を揮散させる方法によりスプレー・ファブリック層を挿入し、100%伸長後の伸長回復率が80%以上の高伸縮性を付与する方法を提供した。 この本発明の方法では、溶液状態で繊維状交絡を形成させるため、公知の方法に比較して極めて低温度、低圧力の下で実施しうることが示された。 このため幅広い繊維材料が使用でき、オンラインで高速度の加工が可能となった。 また本発明の方法では、熱可塑性エラストマーを溶液化して噴射するため、公知のホットメルト材料のように低軟化点のエラストマー、および配合を必須とせず、従って高性能、高弾性の状態で使用できることも大きい特徴となる。
【0091】
本発明で得られる複合不織布構造体はいずれも大きい伸長回復率を示しており、繊維材料、熱可塑性エラストマー、目付量、加工条件の選択によって、幅広い特性の変化が可能となることが判る。 また本発明で得られた複合構造体はいずれも、目的とした使い捨ておむつ、ナプキン、貼布材などに適合する特性のものであることも示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の2層型複合不織布構造体の断面図。 図中1は短繊維不織布ウェッブ層、2は熱可塑性エラストマーを基体とするスプレィド・ファブリック層を示しており、<a>は1および2の各層が熱的に接合された構造、<b>は各層が高圧水流によって交絡された構造の模式図。
【図2】 本発明の3層型複合不織布構造体の断面図。 図中1および3は短繊維不織布ウェッブ層、2は熱可塑性エラストマーを基体とするスプレィド・ファブリック層を示しており、<a>は各層が熱的に接合された構造、<b>は各層が高圧水流によって交絡された構造の模式図。
【図3】 本発明の3層型複合不織布構造体を製造する代表的な装置のライン構成の一例を示す模式図。 図中の各装置の名称を次に示す。
1:短繊維不織ウェッブ送り出し装置
2:ニップロール
3:エンドレスのネットコンベァー
4:熱可塑性エラストマー溶液の貯蔵・供給タンク
5:加熱された加圧空気
6:ノズルヘッド
7:揮発する溶剤を吸引するためのダクト
8:乾燥炉
9:集塵機
10:酸化燃焼装置
11:短繊維不織ウェッブ送り出し装置
12:プレラミネーター
13:ホットラミネーター
14:クーリングシリンダー
15:複合不織布構造体の巻き取り装置
16:第1段高圧水流ノズルユニット
17:第2段高圧水流ノズルユニット
18:第1段サクションドラム
19:第2段サクションドラム
20:気水分離タンク
21:真空ポンプ
22:排水ポンプ
23:貯水槽
24:送水ポンプ
25:高圧送水ポンプ
26:シリンダードライァー
27:クーリングシリンダー
28:複合不織布構造体の巻き取り装置
【図4】 シート材料に伸長を加えた時の応力−伸長曲線図。 Aは本発明の実施例に使用したポリエステル・スパンレース不織布(目付量30g/m2)、Bは熱可塑性エラストマー(SIS)のフィルム(厚さ60μ)、Cは本発明によって得られた3層複合不織布構造体(実施例1;SISより形成されたスプレィド・ファブリックを中間層とした構造体、目付量110g/m2)。
【図5】 本発明の実施例1において得られた3層複合不織布構造体の3回繰り返し応力−伸長曲線図。
【図6】 本発明の実施例1において得られた3層複合不織布構造体と市販品材料とを比較した繰り返し応力−伸長曲線図。
【図7】 本発明の実施例2によって得られた3層複合不織布構造体の繰り返し応力−伸長曲線図。 ポリウレタン・エラストマー溶液を、ノズルから第1層不織ウェッブまでの距離の変更の下に、目付量85g/m2のスプレィド・ファブリックとして挿入した構造体の比較。
【図8】 本発明の実施例2によって得られた3層複合不織布構造体の繰り返し応力−伸長曲線図。 ポリウレタン・エラストマー溶液を、ノズルから第1層不織ウェッブまでの距離の変更の下に、目付量60g/m2のスプレィド・ファブリックとして挿入した構造体の比較。
Claims (3)
- 第1層の短繊維不織ウエッブと、第2層として熱可塑性エラストマーの有機溶剤の溶液を空気流によってスプレー吐出し、該溶剤の揮散の下に短繊維状に集積交絡せしめた短繊維状不織ウエッブのスプレイド・ファブリックと、またはさらに第3層として短繊維不織ウエッブとが積層され、熱および高圧柱状水流によって一体化された、少なくとも一方向の破断伸度が100%以上、かつ100%伸長後の伸長回復率が80%以上であることを特徴とする高伸縮性不織布。
- 短繊維不織ウエッブ上に、熱可塑性エラストマーの有機溶剤の溶液を空気流によってスプレー吐出し、該溶剤を実質的に完全に揮散除去しつつ該エラストマーを短繊維状に堆積せしめる高伸縮性不織布の製造方法において、該短繊維不織ウエッブと該短繊維状エラストマーとを加熱による融着および高圧柱状水流による交絡処理を施すことを特徴とする高伸縮性不織布の製造方法。
- 短繊維不織ウエッブ上に、熱可塑性エラストマーの有機溶剤の溶液を空気流によってスプレー吐出し、該溶剤を実質的に完全に揮散除去しつつ該エラストマーを短繊維状に堆積せしめ、さらにその上に短繊維ウエッブを積層せしめる高伸縮性不織布の製造方法において、該短繊維不織ウエッブと該短繊維状エラストマーとを加熱による融着および高圧柱状水流による交絡処理を施すことを特徴とする高伸縮性不織布の製造方法。
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