本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
排気中に含まれる水を吸着する吸着剤を酸化触媒よりも上流側に備え、該吸着剤に水が吸着されるときの発熱により酸化触媒の温度を上昇させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2002−138824号公報
特開平8−93548号公報
特開平10−159543号公報
特表2006−512529号公報
ところで、吸着剤に吸着可能な水の量には限りがある。また、吸着剤の温度が高くなるに従い、該吸着剤に吸着可能な水の量が少なくなる。そのため、吸着剤の温度が高くなると、吸着剤に吸着されていた水が脱離する。このように吸着剤から水が脱離するときには、排気から熱を奪うため、排気の温度が低下する。これにより、下流側の触媒の温度が低下する虞がある。このように下流側の触媒の温度が低下すると、排気の浄化性能が低下する。
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、内燃機関の排気浄化装置において、排気の浄化性能の低下を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
上記課題を達成するために本発明による内燃機関の排気浄化装置は、以下の手段を採用した。すなわち、本発明による内燃機関の排気浄化装置は、
内燃機関の排気通路に設けられ排気を浄化する排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも上流に設けられ流入する第1成分が吸着して発熱することにより上限温度まで温度が上昇し該上限温度に達した後は温度が下降する吸着装置と、
前記排気浄化触媒で反応熱を発生する第2成分を、前記吸着装置の温度下降が始まる前に供給する発熱成分供給手段と、
を備えることを特徴とする。
排気浄化触媒はある程度温度が高くならないと排気中の有害物質を浄化することができない。例えば内燃機関の始動時または始動直後では、排気浄化触媒の温度が低い。ここで、吸着装置に第1成分が吸着されると発熱するので、排気に熱を与える。これにより、排気の温度が上昇するので、該排気が排気浄化触媒を通過することにより該排気浄化触媒の温度が上昇する。
吸着装置に吸着される第1成分は、内燃機関からの排気に元々含まれていた成分であっても良く、外部から排気中に供給した成分であってもよい。なお、以下において「排気中に含まれる成分」といった場合には、内燃機関からの排気に元々含まれていた成分と、外部から排気中に供給した成分と、の両方を含むものとする。また、発熱成分供給手段により供給される第2成分も、内燃機関からの排気に元々含まれていた成分であっても良く、外部から排気中に供給した成分であってもよい。さらに、第2成分は、吸着装置よりも上
流側から供給しても良く、吸着装置よりも下流側で且つ排気浄化触媒よりも上流側から供給しても良い。
吸着装置は、排気中に含まれる成分を吸着するものであれば良く、例えばゼオライトを挙げることができる。また、吸着装置は触媒等とは異なり、吸着による温度上昇には上限がある。この上限温度までは第1成分を吸着することにより発熱するが、上限温度を過ぎると吸着していた第1成分が脱離することにより吸熱する。つまり、この上限温度を過ぎると、吸着装置の温度が下降する虞がある。なお、ここでいう上限温度は、第1成分を吸着した結果の上限温度であり、内燃機関からの排気の温度が上昇することで吸着装置の温度は上限温度を超え得る。
発熱成分供給手段は、前記排気浄化触媒で反応させるための第2成分を供給するが、この供給開始時期を吸着装置の温度下降が始まる前としている。つまり、吸着装置の温度が上限温度以下のときに第2成分の供給を開始している。これは、第1成分を吸着することにより吸着装置の温度が上昇している間、または吸着装置の温度が上限温度のときに、第2成分の供給を開始していることになる。このようにすることで、その後、吸着装置において吸熱が起こっても、それ以上に排気浄化触媒にて発熱するので、該排気浄化触媒の温度下降を抑制することができる。
なお、吸着装置の温度は、吸着装置全体として見れば良い。つまり、吸着装置において吸熱反応と発熱反応とが同時に起きている場合であっても、全体としてどちらの影響が大きいのかを見れば良い。また、吸着装置の温度は、例えば温度検出手段を備えて、該手段により得ることができる。
また、本発明による内燃機関の排気浄化装置は、
内燃機関の排気通路に設けられ排気を浄化する排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも上流に設けられ流入する第1成分が上限温度までは吸着し該上限温度に達した後は脱離する吸着装置と、
前記排気浄化触媒で反応熱を発生する第2成分を、前記吸着装置に吸着されていた前記第1成分の脱離が始まる前に該排気浄化触媒へ供給する発熱成分供給手段と、
を備えることを特徴としても良い。
第1成分が吸着装置に吸着される間は、該吸着装置にて発熱が起きているため、該吸着装置及び排気浄化触媒の温度を上昇させることができる。また、第1成分が吸着装置から脱離していなければ、該第1成分が吸着装置から脱離することによる吸着装置及び排気浄化触媒の温度下降は起きない。これらの時期は、吸着装置から第1成分の脱離が始まる前といえる。そしてこの時期に、第2成分を供給することにより、排気浄化触媒の温度が下降する前に、該排気浄化触媒の温度を上昇させることができる。同様に、吸着装置に吸着されている第1成分の量が減少する前に第2成分を供給しても良い。
なお、吸着装置から第1成分の脱離が始まる前とは、吸着装置全体としての吸着量を見れば良い。つまり、吸着装置において第1成分の吸着と脱離とが同時に発生している場合であっても、吸着装置全体としてどちらが多いのかによって吸着しているのか又は脱離しているのかを判断すれば良い。また、吸着装置から第1成分の脱離が始まる前であるか否かは、例えば脱離を検出する手段を備えて、該手段により判定することができる。
なお、前記発熱成分供給手段は、前記第2成分を、前記排気浄化触媒の温度が活性温度の下限値以上のときに該排気浄化触媒へ供給することができる。
つまり、排気浄化触媒が活性温度以上となっていれば、発熱成分供給手段により供給さ
れる第2成分が排気浄化触媒へ到達したときに直ぐに発熱反応するため、該排気浄化触媒の温度を速やかに上昇させることができる。この活性温度は、発熱成分供給手段により供給される第2成分が、排気浄化触媒にて発熱反応する温度の下限値としても良い。
また、本発明による内燃機関の排気浄化装置は、
内燃機関の排気通路に設けられ排気を浄化する排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも上流に設けられ流入する第1成分が吸着して発熱することにより上限温度まで温度が上昇し該上限温度に達した後は温度が下降する吸着装置と、
前記排気浄化触媒で反応熱を発生する第2成分を、前記吸着装置の温度が前記上限温度となった後で且つ前記排気浄化触媒の温度が活性温度の下限値以上のときに該排気浄化触媒へ供給する発熱成分供給手段と、
を備えることを特徴としても良い。
つまり、吸着装置の温度が下降し始めても、排気浄化触媒の温度が活性温度以上であれば、該排気浄化触媒にて第2成分が発熱反応を起こすことができる。すなわち、このような時期であっても、第2成分を排気浄化触媒へ供給すれば、該排気浄化触媒の温度を上昇させることができる。
また、本発明による内燃機関の排気浄化装置は、
内燃機関の排気通路に設けられ排気を浄化する排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも上流に設けられ流入する第1成分が上限温度までは吸着し該上限温度に達した後は脱離する吸着装置と、
前記排気浄化触媒で反応熱を発生する第2成分を、前記吸着装置に吸着されていた前記第1成分の脱離が始まった後で且つ前記排気浄化触媒の温度が活性温度の下限値以上のときに、該排気浄化触媒へ供給する発熱成分供給手段と、
を備えることを特徴としても良い。
つまり、吸着装置から第1成分が脱離し始めても、排気浄化触媒の温度が活性温度の下限値以上であれば、該排気浄化触媒にて第2成分が発熱反応を起こす。すなわち、このような時期であっても、第2成分を排気浄化触媒へ供給すれば、該排気浄化触媒の温度を上昇させることができる。
同様に、吸着装置における第1成分の吸着量が減少し始めても、排気浄化触媒の温度が活性温度の下限値以上であれば、該排気浄化触媒にて第2成分が発熱反応を起こす。そのため、第2成分を排気浄化触媒へ供給すれば、該排気浄化触媒の温度を上昇させることができる。
そして、前記第2成分は前記吸着装置に吸着されずにすり抜ける成分であり、前記発熱成分供給手段は前記第2成分を前記吸着装置よりも上流から供給することができる。
発熱成分供給手段により供給される第2成分が、吸着装置よりも上流側から供給される場合、該第2成分が吸着装置に吸着されてしまうと、排気浄化触媒での発熱量が小さくなるため、該排気浄化触媒の温度上昇が緩慢となる。これに対し、第2成分が吸着装置において吸着されずにすり抜け、排気浄化触媒で発熱反応が起これば、該排気浄化触媒の温度を速やかに上昇させることができる。
また本発明においては、前記上限温度を、前記排気浄化触媒の活性温度の下限値近傍に設定することができる。
ここで、吸着装置の温度が上限温度を超えると、吸着装置に吸着されていた第1成分を
保持できなくなるため、該吸着装置から該第1成分が脱離する。このときに排気浄化触媒では活性温度の下限値近傍となっている為、排気浄化触媒へ第2成分を供給すれば該排気浄化触媒の温度が上昇される。つまり、排気浄化触媒の温度が活性温度の下限値まで上昇すれば、吸着装置による温度上昇は必要ない。
このようにして上限温度を設定すると、内燃機関の運転中に排気の熱により吸着装置の温度が上昇し、該吸着装置から第1成分が脱離する。そのため、内燃機関が停止されて吸着装置の温度が低下すれば、次回の内燃機関の始動時に吸着装置にて第1成分を再び吸着することができる。これにより、次回の内燃機関の始動時においても、排気浄化触媒の温度を速やかに上昇させることができる。
また本発明においては、前記排気浄化触媒の温度を上昇させないときには、前記吸着装置における第1成分の吸着量を規定値以下とすることができる。
排気浄化触媒の温度を上昇させないときとは、排気浄化触媒の温度が十分に高いとき、または排気浄化触媒の温度が低すぎて吸着装置による温度上昇の効果を殆ど得ることができないとき等を例示できる。これは、排気浄化触媒の温度を上昇させる必要のないときとしても良い。このような場合に、吸着装置における第1成分の吸着量を規定値以下としておけば、次に排気浄化触媒の温度を上昇させるときに、第1成分が吸着装置へ吸着することが可能となる。これにより、排気浄化触媒の温度を速やかに上昇させることができる。なお、ここでいう規定値は、吸着装置における第1成分の残存量であって、その後、排気浄化触媒の温度を例えば活性温度の下限値まで上昇させることが可能であるときの残存量とすることができる。規定値から飽和するまで第1成分が吸着されたときに、排気浄化触媒の温度が活性温度の下限値まで上昇するように、規定値を設定する。
また本発明においては、前記吸着装置における第1成分の吸着量を、前記内燃機関の停止直前に減少させることができる。
そうすると、次回の内燃機関始動時において、排気中に含まれる第1成分を吸着装置に吸着させることができるため、排気浄化装置の温度を速やかに上昇させることができる。内燃機関の停止直前は、例えば内燃機関の停止が予想されるときとしても良い。
この場合、前記吸着装置における第1成分の吸着量が規定値よりも多いときに、吸着量を減少させても良い。
つまり、吸着装置に吸着されている第1成分を脱離させる必要があるときに限り、該第1成分を脱離させることにより、該第1成分の脱離に要するエネルギを節約することができる。また、内燃機関からの排気の温度を上昇させて吸着装置から第1成分を脱離させる場合には、排気中の有害成分の量が増加することがあるため、必要時に限り温度上昇させることで排気中の有害成分の量を減少させることができる。
また本発明においては、前記吸着装置の温度を上昇させる温度上昇手段を備え、該吸着装置の温度を上昇させることにより該吸着装置から第1成分を脱離させて、前記吸着量を減少させることができる。
つまり、吸着装置の温度が高くなるほど、第1成分を吸着可能な最大量が少なくなるため、該吸着装置の温度を高くすることにより第1成分を脱離させることが可能となる。これにより、吸着装置における第1成分の吸着量を減少させることができる。また、吸着装置の温度が上限温度を超えると、第1成分を吸着することができなくなり且つ第1成分が脱離する。この上限温度以上とすることにより、吸着装置における第1成分の吸着量をよ
り減少させることができる。温度上昇手段は、内燃機関の排気の温度を上昇させたり、直接ヒータ等で加熱したりして吸着装置の温度を上昇させることができる。
また本発明においては、前記第2成分を供給することにより前記排気浄化触媒における排気の浄化度合いが高くなるか否かを判定する浄化度合判定手段と、
前記浄化度合判定手段により前記排気浄化触媒における排気の浄化度合いが高くならないと判定されたときに前記発熱成分供給手段による前記第2成分の供給を禁止する禁止手段と、
を備えることができる。
つまり、内燃機関の運転状態によっては排気の温度が十分に高くなったり、排気中の第1成分の量が十分に多かったりするため、排気浄化触媒の温度が排気の浄化が可能なほど上昇する。このような場合には、わざわざ第1成分や第2成分を供給して排気浄化触媒の温度を上昇させる必要はない。また、極低温時には、吸着装置による温度上昇の効果は低いため、吸着装置により排気浄化触媒の温度上昇を停止させても良い。このように、成り行きで排気浄化触媒の温度が上昇する場合や、排気浄化度合いが高くならない場合には、第1成分や第2成分を積極的に供給する必要はない。このような場合には、吸着装置へより多くの第1成分を供給するための制御や、第2成分の供給を停止する。これにより、エネルギの節約が可能となる。
また本発明においては、前記吸着装置は第1成分を吸着させるための複数の細孔を備えており、細孔径を第1成分の径以上で且つ第2成分の径よりも小さくなるように設定することができる。
つまり、第1成分は吸着装置の細孔内に進入することにより多く吸着され、第2成分は吸着装置の細孔内に進入することができないため殆ど吸着されずに該吸着装置をすり抜ける。このように、第2成分が吸着装置に吸着されるのを抑制できるため、より多くの第2成分を排気浄化触媒へ供給することができる。ここで、第2成分が吸着装置にて発熱するとは限らない。つまり、第2成分が吸着装置に吸着されると、その分、第1成分を吸着することができなくなるため、該吸着装置の温度上昇が抑制される虞がある。これにより、排気浄化触媒の温度上昇も抑制される虞がある。これに対し、細孔内への第2成分の進入を抑制することにより、排気浄化触媒の温度上昇を促進させることができる。
また本発明においては、前記排気浄化触媒の少なくとも上流側端部を含む上流側の部位では、それより下流側の部位よりも、活性温度の下限値を低く設定することができる。
このようにすることで、排気浄化触媒の上流側でより早く第2成分の反応が可能となる。そして、上流側で起こる発熱反応により、排気の温度が上昇されると、この温度の高くなった排気が排気浄化触媒の下流側へ流れるに従い、該下流側の温度も上昇される。つまり、上流側の活性温度の下限値を低く設定することにより、排気浄化触媒全体の温度を速やかに上昇させることができる。また、活性温度を低くするのは上流側だけなので、例えば貴金属の使用量を少なくすることができる。また、必要となる第1成分の量も減少させることができる。
また本発明においては、前記吸着装置にて第1成分を吸着させることにより前記排気浄化触媒の温度を上昇させるときには、温度を上昇させないときよりも、前記吸着装置に流入する第1成分の量を増加させることができる。
すなわち、排気中に含まれる第1成分の量をより多くすることにより、吸着装置における単位時間当たりの発熱量をより多くすることができる。これにより、排気浄化触媒の温
度を速やかに上昇させることができる。例えば、排気中の水が吸着装置に吸着される場合、内燃機関からより多くの水が排出されるように該内燃機関の負荷を増加させる。これにより、燃料噴射量が増加するため、より多くの水が排出されるようになり、より多くの水が吸着装置に吸着されるので、発熱量を多くすることができる。
また本発明においては、前記吸着装置の温度が前記上限温度となったときに計算により求められる吸着量と、実際の吸着量と、を比較して、前記排気浄化触媒の温度を上昇させるための制御において補正を行うことができる。
ここで、吸着装置の温度が上限温度に達したときの実際の吸着量は、該吸着装置の経年劣化により変化し得る。そのため、第2成分を供給する最適時期も変化し得る。また、内燃機関の経年変化により該内燃機関の排気中の第1成分量が変化する。そのため、第2成分を供給する最適時期も変化し得る。ここで、排気浄化触媒の温度を上昇させるための制御において補正を行えば、最適な発熱量を得られ、排気浄化性能を確保できる。なお、吸着装置における発熱量と、該吸着装置に吸着されている第1成分量と、には相関があるため、該吸着装置における発熱量を求めることにより、該吸着装置における実際の吸着量を得ることができる。
この場合、前記吸着量を計算する過程で用いるパラメータを補正することができる。
ここで、計算で求められる吸着量と実際の吸着量とを比較して、これらの差が小さくなるように補正を行う。このようにして補正されたパラメータを用いることで、該吸着装置における第1成分の吸着量を精度良く求めることができるため、排気浄化触媒の温度上昇時に適切な発熱量を得ることができる。
また、前記吸着装置に流入する第1成分の量を補正することができる。
つまり、内燃機関の経年変化等により排気中に含まれる第1成分量が変化すると、単位時間当たりに吸着装置により吸着される第1成分量が変化する。このため、吸着装置の温度上昇度合いが変化するので、第2成分を供給する最適時期も変化する。これに対し、吸着装置に流入する第1成分量を調節することで、吸着装置に吸着される第1成分量を調節すれば、該吸着装置における発熱量を一定に保つことができる。つまり、第2成分を供給する最適時期を変化させないことができる。
また、前記第2成分の供給時期を補正することができる。
例えば吸着装置の劣化等により該吸着装置で吸着される第1成分の量が減少すると、吸着装置の温度上昇が緩慢となるため、第2成分の供給時期を遅らせなければならない。つまり、第2成分を供給する時期を遅らせることにより、適正な時期での第2成分の供給が可能となる。
また、前記内燃機関の負荷を補正することができる。
例えば吸着装置の劣化等により該吸着装置で吸着される第1成分の量が減少すると、吸着装置の温度上昇が緩慢となる。これに対し、内燃機関の負荷を高くすることにより排気の温度を上昇させれば、吸着装置の温度上昇を補うことができるため、排気浄化触媒へより早い時期に第2成分を供給することが可能となる。なお、排気浄化触媒の温度上昇度合いが一定となるように内燃機関の負荷を調節しても良い。
また本発明においては、前記吸着装置へ流入する排気の温度と、該吸着装置から流出す
る排気の温度と、の差を測定する温度測定手段を備え、該温度測定手段により測定される温度差に基づいて該吸着装置における発熱量を推定し、該発熱量と該発熱量の閾値とを比較することにより該吸着装置の劣化度合いを判定する劣化判定手段を更に備えることができる。
吸着装置よりも下流側と上流側との温度差は、吸着装置における発熱量と相関がある。つまり、温度測定手段により測定される温度差に基づいて、吸着装置における発熱量を推定することができる。なお、発熱量を推定するときに、内燃機関の運転状態を考慮しても良い。ここで、吸着装置の劣化が進行すると、該吸着装置における発熱量が低下する。つまり、吸着装置の劣化が進行するほど、前記温度差に基づいて推定される発熱量が小さくなる。そして、推定される発熱量が閾値よりも小さいときに、吸着装置が劣化していると判定することができる。また、推定される発熱量が閾値よりも小さくなるほど、劣化度合いが高いと判定することもできる。
また本発明においては、前記上限温度と、該上限温度の閾値とを比較することにより前記吸着装置の劣化度合いを判定する劣化判定手段を更に備えることができる。
吸着装置の劣化が進行すると、それに従い該吸着装置の上限温度が低くなる。つまり、この上限温度が閾値よりも低くなったときに、吸着装置が劣化していると判定することができる。また、この上限温度が低くなるほど、劣化の度合いが高いと判定することもできる。なお、吸着装置の温度が上昇している途中で第2成分の供給を開始した場合であっても、その後に該吸着装置の上限温度を測定することにより該吸着装置の劣化判定を行うことができる。また、吸着装置の劣化判定を行うためだけに、該吸着装置の上限温度を測定しても良い。
また本発明においては、前記発熱成分供給手段により第2成分の供給を開始する時期に基づいて前記吸着装置の劣化度合いを判定する劣化判定手段を更に備えることができる。
吸着装置の劣化が進行すると、それに従い該吸着装置の温度が上限温度となる時期が変わる。この時期に合わせて第2成分を供給している場合には、該第2成分の供給時期が吸着装置の劣化度合いに応じて変わることになる。つまり、第2成分を供給する時期に基づいて、吸着装置の劣化の度合いを判定することができる。
また本発明においては、前記補正における補正量に基づいて前記吸着装置の劣化度合いを判定する劣化判定手段を更に備えることができる。
つまり、吸着装置における発熱により該吸着装置の温度が上限温度となったときの該吸着装置における計算吸着量と、該実際の吸着量との差が大きいほど、吸着装置の劣化の度合いが大きい。そのために、補正量が大きくなっている。つまり、補正量が大きくなるほど、吸着装置の劣化が進行しているという関係があるので、該補正量に基づいて劣化度合いを判定することができる。
また本発明においては、前記上限温度を、前記排気浄化触媒において排気を浄化可能な温度の上限値近傍に設定することができる。
排気浄化触媒には、排気を浄化可能な温度範囲がある。この温度範囲よりも高くなると、排気中の有害物質を殆ど浄化できなくなる。一方、吸着装置では、第1成分を保持できる上限温度を超えると、吸着されていた第1成分が脱離することにより、吸熱する。これにより排気の温度が低下するため、排気浄化触媒の温度を低下させることができる。つま
り、排気浄化触媒において排気を浄化可能な温度の上限値となったときに、吸着装置から第1成分を脱離させることにより、該排気浄化触媒の温度を低下させることができるため、排気浄化触媒において排気を浄化可能な温度に維持することができる。また、このときには排気浄化触媒の温度が十分に高いため、吸着装置に第1成分を吸着させる必要もない。
なお、排気浄化触媒において排気を浄化可能な温度の上限値は、排気浄化触媒の浄化ウィンドーの上限値としても良く、吸蔵還元型NOx触媒においてNOxの吸蔵及び還元が可能な温度の上限値としても良い。また、吸着装置が吸着した第1成分を保持できる上限温度を、排気浄化触媒が過熱する虞のある温度に設定することで、該排気浄化触媒の過熱を抑制することもできる。
また本発明においては、前記吸着装置を排気通路に直列に複数備え、上流側の吸着装置ほど、吸着した第1成分を保持できる上限温度を高くすることができる。
このようにすることで、排気浄化触媒の温度を活性温度まで速やかに上昇させることと、排気浄化触媒の温度が浄化ウィンドーの上限値を超えることとを抑制できる。つまり、排気浄化触媒の温度が活性温度よりも低い場合には、複数の吸着装置により速やかに温度上昇させることができる。ここで、上流側の吸着装置が上限温度を超えて排気の温度を上昇させることができなくなったとしても、下流側の吸着装置により排気の温度を上昇させることができる。また、下流側の吸着装置も上限温度を超えた場合には、吸熱により排気の温度を低下させることができるため、排気浄化触媒の温度が過剰に上昇することを抑制できる。
また本発明においては、前記吸着装置よりも上流側の排気通路と前記吸着装置よりも下流側で且つ前記排気浄化触媒よりも上流側の排気通路とを接続するバイパス通路と、
前記吸着装置又は前記バイパス通路の何れか一方に排気を流通させる切替弁と、
を備えることができる。
このようにすることで、吸着装置に排気を流す必要があるときにのみ排気を流すことができる。つまり、吸着装置における発熱反応により排気浄化触媒の温度を上昇させたい場合や、吸着装置における吸熱反応により排気浄化触媒の温度を下降させたい場合に限り、該吸着装置へ排気を流通させることができる。また、第2成分が吸着装置に流入しないため、該第2成分が吸着装置に吸着されるのを抑制できる。これにより、吸着装置に吸着され易い成分を第2成分として用いることができる。
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、排気の浄化性能の低下を抑制することができる。
以下、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
図1は、本実施例に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、4つの気筒2を有する水冷式の4サイクル・ディーゼルエンジンである。
内燃機関1の各気筒2には、該気筒2内に燃料を噴射する燃料噴射弁3が取り付けられ
ている。
また、内燃機関1には、排気通路4が接続されている。この排気通路4の途中には、上流側(すなわち内燃機関1側)から順に吸着剤5と排気浄化触媒6とが備えられている。
吸着剤5は、排気中に含まれる水を吸着する機能を有し、例えばNa/Y型ゼオライト、またはK/A型ゼオライトを用いることができる。なお、本実施例においては吸着剤5が、本発明における吸着装置に相当する。また、本実施例における吸着剤5では水を吸着するが、排気中に含まれる他の成分(排気中に供給される成分を含む)を吸着する性質のものであっても良い。そして、本実施例においては水が、本発明における第1成分に相当する。
また、排気浄化触媒6は、温度に応じて排気の浄化性能が変化する性質を持ち、且つ酸化機能を有するものであれば良く、例えば三元触媒、酸化触媒、吸蔵還元型NOx触媒を
用いることができる。例えば、吸蔵還元型NOx触媒は、温度が浄化ウィンドーの範囲内
にあるときであって、流入する排気の酸素濃度が高いときは排気中のNOxを吸蔵し、流
入する排気の酸素濃度が低く且つ還元剤が存在するときは吸蔵していたNOxを還元する
機能を有する。また、吸蔵還元型NOx触媒は、活性温度の下限値まで温度が上昇した後
にCO等の成分を供給することにより、浄化ウィンドーの範囲内まで温度上昇する。
また、吸着剤5よりも上流の排気通路4には、該吸着剤5に流入する排気の温度を測定する入ガス温度センサ11が取り付けられている。一方、吸着剤5よりも下流で且つ排気浄化触媒6よりも上流の排気通路4には、該吸着剤5から流出する排気の温度を測定する出ガス温度センサ12が取り付けられている。この出ガス温度センサ12により得られる温度を吸着剤5の温度、又は排気浄化触媒6の温度とすることもできる。なお、吸着剤5の温度、又は排気浄化触媒6の温度は、これらに直接センサを取り付けて測定しても良い。
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニットであるECU10が併設されている。このECU10は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態を制御するユニットである。
また、ECU10には、上記センサの他、運転者がアクセルペダル13を踏み込んだ量に応じた電気信号を出力し機関負荷を検出可能なアクセル開度センサ14、および機関回転数を検出するクランクポジションセンサ15が電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU10に入力されるようになっている。
一方、ECU10には、燃料噴射弁3が電気配線を介して接続されており、該ECU10により燃料噴射時期や燃料噴射量が制御される。
そして、本実施例では、内燃機関1の始動時等において、排気浄化触媒6の温度を速やかに上昇させるための触媒昇温制御を実行する。ここで、排気中には水が含まれるため、該水が吸着剤5に吸着される。このときに、発熱反応が起こる。この発熱反応により排気の温度が上昇するため、下流の排気浄化触媒6の温度を上昇させることができる。
下流の排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値まで上昇すると、該排気浄化触媒6で酸化反応が可能となるため、例えばCOやH2を供給することができる。このCOやH2は、排気浄化触媒6にて酸化されるが、このときに発熱するため、該排気浄化触媒6の温度が上昇される。そして、排気浄化触媒6の温度が浄化ウィンドー内に入るまでCOやH2の供給を続ければ、排気の浄化をより早く行なうことが可能となる。
なお、CO等の排気浄化触媒6で反応させる成分は、内燃機関1の負荷を調節することにより、該内燃機関1から排出させることができる。また、排気浄化触媒6へ供給する成分を以下「還元剤」という。この還元剤は、外部から排気中へ直接供給しても良い。そして、還元剤には、吸着剤5にて吸着され難いものを用いる。これにより、吸着剤5よりも上流から還元剤を供給したとしても、該還元剤は吸着剤5をすり抜けて排気浄化触媒6へ到達する。そして、本実施例においては還元剤が、本発明における第2成分に相当する。
ところで、吸着剤5は水を吸着することにより発熱するが、吸着可能な最大量は、温度が上昇するに従い少なくなる。ここで図2は、吸着剤5の温度と、該吸着剤5が吸着可能な水の最大量(以下、最大吸着量ともいう。)と、の関係を示した図である。吸着剤5の温度が上昇するに従がって、最大吸着量は減少していき、ある温度に達すると0となる。すなわち、吸着剤5の温度がある温度に達すると、水を吸着することができなくなるため、該吸着剤5の温度は水の吸着によっては上昇しなくなる。しかも、その後に吸着剤5から水が離脱し始めるため、該吸着剤5の温度が下降する。つまり、吸着剤5における水の吸着により上昇される温度には上限がある。そして吸着剤5の温度が下降すると、排気浄化触媒6の温度も下降するため、一旦活性温度まで上昇しても、その後に活性温度よりも低くなる虞がある。
これに対し、本実施例では、吸着剤5が上限温度となる前、または上限温度となったときに排気浄化触媒6へ還元剤を供給する。これは、吸着剤5の温度が水の吸着により上昇している途中に排気浄化触媒6へ還元剤を供給するとしても良い。つまり吸着剤5で水の吸着による温度上昇が始まった後であって該吸着剤5の温度下降が始まる前に還元剤の供給を開始する。そして、本実施例においては内燃機関1の負荷を調節することにより還元剤を供給するECU10が、本発明における発熱成分供給手段に相当する。
ここで図3は、吸着剤5に流入する排気の温度と、吸着剤5の温度と、排気浄化触媒6の温度と、の推移を示したタイムチャートである。実線が吸着剤5に流入する排気の温度、破線が吸着剤5の温度、一点鎖線が排気浄化触媒6の温度を夫々示している。
内燃機関1の始動直後では、吸着剤5及び排気浄化触媒6の温度は低いため、吸着剤5に流入する排気の温度が一番高い。このときには、例えば吸着剤5及び排気浄化触媒6の温度は外気温度と等しくなっている。
そして、吸着剤5を排気が通過するに従って、排気中に含まれる水が吸着剤5に吸着されることにより、吸着剤5の温度が上昇する。これにより、吸着剤5よりも下流の排気の温度が上昇するため、排気浄化触媒6の温度も上昇する。
そして、吸着剤5が上限温度に達すると、吸着剤5から水の脱離が始まるため、このときの吸熱により吸着剤5の温度が低下する。しかし、吸着剤5からの水の脱離が完了し、さらに吸着剤5に流入する排気の温度が上昇すると、これにより吸着剤5の温度も再び上昇を始める。
また、本実施例では、吸着剤5の温度が上限温度以下のときに還元剤の供給を開始している。つまり、吸着剤5の温度が上限温度に達する前、又は上限温度のときに還元剤の供給を開始している。そのため、排気浄化触媒6の温度が吸着剤5の温度よりも高くなる。しかも、吸着剤5の温度が上限温度に達して下降を始めた後であっても、排気浄化触媒6の温度は上昇を続ける。このようにして、排気浄化触媒6の温度を速やかに上昇させることができる。
なお、吸着剤5から水が脱離し始めるときに吸着剤5が上限温度となるため、吸着剤5から水が脱離し始めるときに還元剤の供給を開始するとしても良い。
また、還元剤を供給する時期は、排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値以上となったときとしても良い。つまり、排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値以上となっていれば、供給した還元剤が速やかに反応して排気浄化触媒6の温度が上昇するため、該還元剤の供給量を低減することができる。また、還元剤が排気浄化触媒6をすり抜けることを抑制できる。
さらに、排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値以上であれば、吸着剤5の温度が上限温度に達した後であっても還元剤の供給を開始しても良い。つまり、吸着剤5の温度が下降していても、排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値以上であれば、還元剤を酸化させることにより該排気浄化触媒6の温度を上昇させることができる。なお、本実施例においてはこのように還元剤を供給するECU10も、本発明における発熱成分供給手段に相当する。
次に図4は、本実施例に係る排気浄化触媒6の昇温制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、排気浄化触媒6の温度上昇を行なう要求があったときに実行される。この要求は、たとえば内燃機関1の冷間始動時になされる。
ステップS101では、吸着剤5の温度Tが取得される。これは、吸着剤5から流出する排気の温度としても良い。すなわち、出ガス温度センサ12からの出力信号が取得される。
ステップS102では、吸着剤5に流入する排気の温度Tinが取得される。すなわち、入ガス温度センサ11からの出力信号が取得される。
ステップS103では、吸着剤5の温度Tが吸着剤5に流入する排気の温度Tinよりも高いか否か判定される。つまり、吸着剤5に水が吸着されたことにより、該吸着剤5の温度が上昇されているか否か判定される。
ステップS103で肯定判定がなされた場合にはステップS104へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS101へ戻る。
ステップS104では、吸着剤5の温度Tが排気浄化触媒6の活性温度の下限値以上であるか否か判定される。ここで、吸着剤5の温度Tが排気浄化触媒6の温度と等しいものとして扱い、吸着剤5の温度Tが排気浄化触媒6の活性温度の下限値以上となっていれば、該排気浄化触媒6の温度も活性温度の下限値以上となっているものとして扱う。
ステップS104で肯定判定がなされた場合にはステップS105へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS101へ戻る。
ステップS105では、還元剤の供給が開始される。
このようにして、還元剤の供給開始時期を決定すれば、排気浄化触媒6の温度を上昇させることができる。
ところで、吸着剤5からの水の脱離が始まったとき、つまり吸着剤5が上限温度のときに還元剤の供給を開始すると、より速やかに排気浄化触媒6の温度を上昇させることができる。そこで、吸着剤5の温度を出ガス温度センサ12により測定し、該温度が低下し始
めたときに吸着剤5の温度が上限温度に達したとして、還元剤の供給を開始しても良い。
図5は、吸着剤5が上限温度のときに還元剤の供給を開始する場合の排気浄化触媒6の昇温制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、排気浄化触媒6の温度上昇を行なう要求があったときに実行される。この要求は、たとえば内燃機関1の冷間始動時になされる。なお、上述のフローと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
ステップS201では、今回取得された吸着剤5の温度Tnが、前回取得された吸着剤5の温度Tn−1よりも低いか否か判定される。つまり、吸着剤5の温度が下降しているか否か判定される。
ステップS201で肯定判定がなされた場合にはステップS202へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS203へ進む。
ステップS202では、今回取得された吸着剤5の温度Tnが排気浄化触媒6の活性温度の下限値以上であるか否か判定される。本ステップでは、前記ステップ104と同じ処理がなされる。
ステップS202で肯定判定がなされた場合にはステップS105へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS203へ進む。
ステップS203では、今回取得された吸着剤5の温度Tnが前回取得された吸着剤5の温度Tn−1として記憶される。この値は、次回のステップS201において、前回取得された吸着剤5の温度Tn−1として比較の対象となる。その後、ステップS101へ戻る。
このようにして、還元剤の供給開始時期を決定すれば、吸着剤5で発生する吸着熱を最大限に利用することができるため、排気浄化触媒6の温度を速やかに上昇させることができる。
なお、本実施例においては吸着剤5の温度に基づいて還元剤の供給時期を決定しているが、これに代えて、吸着剤5における水の吸着量に基づいて還元剤の供給時期を決定しても良い。ここで、吸着剤5の温度が上昇しているときは、吸着剤5において水が吸着され続けているときである。また、吸着剤5の温度が上限温度となり、その後下降を始めるのは、吸着剤5から水の脱離が始まることによる。
つまり、上記説明における吸着剤5の温度を、吸着剤5における水の吸着量に置き換えることができる。たとえば、吸着剤5から水が脱離し始める前、又は水が脱離し始めるときに還元剤の供給を開始しても良い。また、吸着剤5から水の脱離が始まった後であって、排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値以上のときに還元剤の供給を開始しても良い。なお、本実施例においてはこのように還元剤を供給するECU10も、本発明における発熱成分供給手段に相当する。
また、本実施例では、触媒昇温制御を実行することにより排気浄化触媒6における排気の浄化度合いが高くなる場合に限り、還元剤を供給しても良い。例えば、内燃機関1の運転状態により排気浄化触媒6の温度が十分に上昇する場合には、触媒昇温制御を行わない。これは、内燃機関1からの排気の温度が高い場合や、内燃機関1からの排気中に水が多く含まれているために吸着剤5にて多くの熱が発生する場合を含む。
また、極低温時では、吸着剤5において水が吸着することにより熱が発生しても、排気浄化触媒6の温度が上昇しないこともある。このような場合にも、触媒昇温制御を行わない。
さらに、排気浄化触媒6の温度が浄化ウィンドー内にある場合や過熱する虞がある温度となっている場合には、還元剤を供給する必要はないため、触媒昇温制御を行わない。
触媒昇温制御を行うか否かは、例えば内燃機関1の運転状態に基づいて判定することもできる。例えば、排気浄化触媒6の温度を浄化ウィンドーまで上昇させることができる運転状態を予め実験等により求めておく。そして、内燃機関1の実際の運転状態が予め求めてあった状態となっていれば、触媒昇温制御を禁止する。これは、排気浄化触媒6における排気の浄化度合いが高くなるか否かを判定している。
また、触媒昇温制御を行うか否かを排気浄化触媒6の温度または内燃機関1の温度に基づいて判定しても良い。そして、この温度が所定の温度範囲のときに限り、触媒床温制御を行う。この所定の温度範囲は、排気浄化触媒6の温度を活性温度の下限値まで昇温可能な温度として予め実験等により求めておく。ここで、内燃機関1の温度は、例えば、冷却水温又は潤滑油温度としても良い。
なお、本実施例においては触媒昇温制御を行うか否か判定するECU10が、本発明における浄化度合判定手段に相当する。また、本実施例においては、この判定に従い触媒昇温制御を禁止するECU10が、本発明における禁止手段に相当する。
以上説明したように本実施例によれば、吸着剤5における吸着熱を利用することにより、排気浄化触媒6の温度を上昇させることができる。また、吸着剤5の温度が排気の温度よりも高いとき、または吸着剤5が上限温度のときに還元剤の供給を開始することで、排気浄化触媒6の温度を速やかに上昇させることができる。
本実施例においては、吸着剤5が水を吸着可能な上限温度が、排気浄化触媒6の活性温度の下限値近傍となるように該吸着剤5の上限温度を設定する。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する。
ここで、図6は、吸着剤5の温度と、該吸着剤5が吸着可能な水の最大量(以下、最大吸着量ともいう。)と、排気浄化触媒6の活性温度の下限値と、の関係を示した図である。吸着剤5の温度が上昇するに従がって、最大吸着量は減少していき、ある温度Tlmtに達すると0となる。この最大吸着量が0となる温度Tlmtの近傍で排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値となるようにする。なお、最大吸着量が0となる温度の近傍には、最大吸着量が0となる温度も含むものとする。
このようにすることで、排気浄化触媒6の温度が活性温度に達するのと同時に吸着剤5からの水の脱離が開始される。ここで、排気浄化触媒6の温度が活性温度に達した後では、還元剤の供給により該排気浄化触媒6の温度を上昇させることができるので、吸着剤5による温度上昇は必要ない。つまり、排気浄化触媒6が活性温度に達すれば吸着剤5からの水の脱離が開始されても問題はない。一方、吸着剤5から水を脱離させることにより、該吸着剤5に吸着されている水の量を減少させることができる。吸着剤5に吸着可能な水の量には限りがあるため、該吸着剤5から水を脱離させることにより、次回排気浄化触媒6の温度上昇が必要となった場合に水を吸着することが可能となる。
このように、吸着剤5の上限温度を、排気浄化触媒6の活性温度の下限値近傍とすることにより、排気浄化触媒6の温度を速やかに上昇させることが可能となる。
本実施例では、排気浄化触媒6の温度上昇が必要ないときには、吸着剤5に吸着されている水の量を規定値以下に維持する。ここで、規定値の水が吸着剤5に吸着されている状態からさらに水を吸着させたときに、排気浄化触媒6の温度を活性温度の下限値まで上昇させることができるように該規定値を決定する。また、排気浄化触媒6の温度上昇が必要ないときとは、例えば、該排気浄化触媒6が活性温度となっているとき、または排気浄化触媒6の温度上昇を行なうことが困難なときをいう。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する。
そして本実施例では、吸着剤5に吸着されている水の量を減少させるために、吸着剤5の温度を上昇させる。ここで、図2に示したように、吸着剤5の温度が上昇すると、最大吸着量が減少する。すなわち、最大吸着量よりも多くの水が吸着されていた場合には、この最大吸着量よりも多い分の水が吸着剤5から脱離する。そして、最大吸着量が規定値となる温度(以下、規定温度ともいう。)以上に吸着剤5の温度を維持すれば、吸着剤5に吸着されている水の量を規定値以下に維持することができる。
図7は、吸着剤5から水を脱離させるためのフローを示したフローチャートである。本ルーチンは排気浄化触媒6の温度上昇が必要ないときに繰り返し実行される。なお、上述のフローと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
ステップS301では、吸着剤5の温度Tが規定温度Tlmt以上であるか否か判定される。つまり、吸着剤5に吸着されている水の量が規定値以下であるか否か判定される。
ステップS301で肯定判定がなされた場合にはステップS302へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS304へ進む。
ステップS302では、計算吸着量を減算する。計算吸着量は、計算により得られる吸着量であり、後述する図10に示すフローにより得ることができる。そして、吸着剤5による水の吸着量と、吸着剤5の温度と、吸着剤5からの水の脱離量と、の関係を予め実験等により求めてマップ化しておく。このマップに、計算吸着量と、吸着剤5の温度とを代入することにより、吸着剤5からの水の脱離量を求める。計算吸着量から脱離量を減じることにより、新たな計算吸着量を得る。
ステップS303では、計算吸着量が規定値以下であるか否か判定される。つまり、排気浄化触媒6の温度を活性温度の下限値まで上昇させるほどの空き容量が吸着剤5にあるか否か判定される。
ステップS303で肯定判定がなされた場合には本ルーチンを一旦終了し、一方否定判定がなされた場合にはステップS101へ戻る。
ステップS304では、内燃機関1の負荷が増加される。これにより、排気の温度が上昇するので、吸着剤5の温度も上昇する。例えば、燃料噴射弁3からの燃料噴射時期を遅らせつつ燃料噴射量を増加させても良い。なお、本実施例ではステップ304の処理を行うECU10が、本発明における温度上昇手段に相当する。
なお、内燃機関1の運転状態によっては、ステップS304において負荷を増加することができないこともある。このような場合には、内燃機関1を停止する直前に吸着剤5の温度を規定温度以上に上昇させても良い。例えば、運転者が内燃機関1を停止させようとしてキースイッチをOFFとしても、内燃機関1をすぐには停止させずに、排気の温度を
上昇させる。そして、計算吸着量が規定値以下となったときに内燃機関1を停止させる。
このようにすることで、内燃機関1がいつ停止されても、次回の内燃機関1の始動時に吸着剤5に水を吸着させることができるため、排気浄化触媒6の温度を速やかに上昇させることができる。
また、このように排気の温度を上昇させるのは、吸着剤5における水の吸着量が規定値よりも多いときに限っても良い。これにより、排気の温度を上昇させるために要する燃料を節約することができる。
本実施例では、排気浄化触媒6の上流側部分の活性温度の下限値が下流部分の活性温度の下限値よりも低くなるように排気浄化触媒6を製造する。具体的には、排気浄化触媒6の上流側部分に担持させる貴金属の量を多くする。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する。
図8は、本実施例に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。図1と比較して排気浄化触媒6のみが異なる。
排気浄化触媒6は、活性温度の下限値が低い上流側部分61と、該上流側部分61よりも活性温度の下限値が高い下流側部分62と、を含んで構成されている。なお、上流側部分61とは、排気浄化触媒6を流れ方向に2つの部分があるとした場合の上流側を示しており、上流側の端部を含んでいる部分である。上流側部分61の大きさは、吸着剤5による排気浄化触媒6の昇温能力等に基づいて決定しても良く、実験等により最適値を求めても良い。
この排気浄化触媒6は、先ず担体全体を触媒溶液に浸し、その後、上流側部分61だけを高濃度の触媒溶液に浸すことで製造できる。
このような構成により、吸着剤5で発生する熱によって排気浄化触媒6全体の温度を活性温度の下限値まで上昇させることが困難な場合であっても、排気浄化触媒6の上流側部分61だけを活性温度の下限値まで上昇させる。そして、上流側部分61の温度が活性温度の下限値まで上昇すれば、該上流側部分61にて還元剤を反応させて発熱させることができるため、排気浄化触媒6全体の温度を上昇させることができる。つまり、排気浄化触媒6の上流側部分61の活性温度の下限値が低いために、該上流側部分61がいち早く活性化する。そして、この活性化している上流側部分61に還元剤を供給することにより、該上流側部分61で熱が発生する。この熱は排気の温度を上昇させる。そして、温度の高くなった排気が排気浄化触媒6の下流側部分62を通過するときに、該下流側部分62の温度を上昇させる。
このようにして、吸着剤5で発生する熱が少ない場合であっても、排気浄化触媒6の温度を上昇させることができる。また、吸着剤5の温度がより低い状態から排気浄化触媒6へ還元剤を供給することができる。そのため、排気浄化触媒6の温度を速やかに上昇させることができるので、排気の浄化を早期に行なうことができる。さらに、排気浄化触媒6の上流側部分61だけを活性化させれば良いため、吸着剤5の容積を小さくすることもできる。
本実施例では、排気浄化触媒6の温度上昇が必要なときに、排気中に含まれる水の量を増加させる。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する。
ここで、排気中に含まれる水の量の増加は、燃料噴射弁3からの燃料噴射量を増加させることにより可能となる。例えば、燃料噴射弁3からの燃料噴射量を増加させつつ燃料噴射時期を遅らせることにより、排気中に含まれる水の量を増加させても内燃機関1の発生トルクの増加を抑制できる。
このように排気中に含まれる水の量を増加させることにより、吸着剤5へより多くの水を吸着させることができるため、より速やかに排気浄化触媒6の温度を上昇させることが可能となる。なお、吸着剤5が単位時間当たりに吸着できる水の量には限りがあるため、吸着剤5が単位時間当たりに吸着できる量の水を排出するように燃料噴射量を調節しても良い。
図9は、本実施例に係る排気浄化触媒6の温度上昇制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、排気浄化触媒6の温度上昇が必要なときに繰り返し実行される。
ステップS401では、内燃機関1の始動開始からの経過時間が、規定時間よりも長くなっているか否か判定される。この規定時間は、内燃機関1の始動直後に相当する時間の上限値として予め実験等により求めて設定しておく。
ステップS401で肯定判定がなされた場合にはステップS402へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS403へ進む。
ステップS402では、通常の制御を実行する。通常の制御とは、排気中に含まれる水の量を増加させることなく、排気浄化触媒6の温度を上昇させる制御であり、前記実施例にて実行される制御である。
ステップS403では、排気中に含まれる水の量が増加される。つまり、内燃機関1の負荷が増加される。その後、ステップS401へ戻る。
このようにして、内燃機関1の始動時において排気中に含まれる水の量が増加されるから、吸着剤5により多くの水を吸着させることができる。これにより、吸着熱がより多く発生するので、排気浄化触媒6の温度をより短時間で上昇させることができる。
なお、前述のように、排気浄化触媒6の温度が低温の場合、または、排気中に含まれる水の量が元々多い場合、さらには、排気浄化触媒6の温度が高い場合等、排気中に含まれる水の量を増加させても排気浄化触媒6における排気の浄化度合いが高くならない状態では、本実施例における制御を行なわなくても良い。
本実施例では、水の吸着により吸着剤5の温度が上限温度となったときに計算で得られる水の吸着量(以下、計算吸着量という。)と、実際の吸着量とを比較することにより、計算吸着量を得るときに用いられる補正係数を補正する。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する。
計算吸着量は、例えば実施例3において、吸着剤5に吸着されている水の量が規定値以下となったか否かを判定するために用いられる。また、排気浄化触媒6へ還元剤を供給する時期や内燃機関1の負荷を変化させるとき等に用いても良い。ここで、吸着剤5における水の最大吸着量は、該吸着剤5の劣化や内燃機関1の経年変化等により変化する。そのため、計算吸着量もこれに合わせて変化させる必要がある。
図10は、本実施例に係る計算吸着量を算出するためのフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、吸着剤5に吸着されていた水を脱離させた後に実行される。つまり、水の吸着量を正確に算出するために、吸着剤5に水が吸着されていない状態から開始される。
ステップS501では、吸着剤5における水の吸着量Qの計算が開始される。初期値は0である。
ステップS502では、内燃機関1からの単位時間あたりの水の排出量QW(g/s)が取得される。この水の排出量QWは、機関回転数及び燃料噴射量と相関があるため、水の排出量QWと機関回転数と燃料噴射量との関係を予め実験等により求めてマップ化しておく。そして、水の排出量QWは、内燃機関1の経年変化等により変化し得るため、本実施例では補正の対象となる。
ステップS503では、吸着剤5の温度と、吸着剤5への水の吸着速度QAD(g/s)及び吸着剤5からの水の脱離速度QRL(g/s)と、の関係が取得される。
図11は、吸着剤5の温度と、吸着剤5への水の吸着速度(g/s)及び吸着剤5からの水の脱離速度(g/s)と、の関係を示した図である。これらは、単位時間あたりの吸着量または脱離量としても良い。吸着剤5の温度が規定温度Tlmtよりも低いときには水が吸着し、且つ温度が低いほど吸着速度は速くなる。一方、吸着剤5の温度が規定温度Tlmtよりも高いときには水が脱離し、且つ温度が高いほど脱離速度は速くなる。この関係は予め実験等により求めてマップ化しておく。そして、吸着剤5への水の吸着速度(g/s)及び吸着剤5からの水の脱離速度(g/s)は、吸着剤の劣化等により変化し得るため、本実施例では補正の対象となる。
ステップS504では、吸着剤5の温度Tが取得される。これは、出ガス温度センサ12により得られる。
ステップS505では、吸着剤5の温度Tが規定温度Tlmtよりも低いか否か判定される。つまり、吸着剤5へ水が吸着するのか否か判定される。これにより、吸着量Qからその変化量を加算するのか又は減算するのかを判定している。ステップS505で肯定判定がなされた場合にはステップS506へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS507へ進む。
ステップS506では、吸着剤5における水の吸着量Qが算出される。本ステップでは、前回ルーチン時の吸着量Qn−1に、前回ルーチンから今回ルーチンまでの間の吸着量の変化分Qqを加えることにより、今回ルーチン時の水の吸着量Qnが算出される。
吸着量の変化分Qqは、以下の式により得ることができる。
Qq=MIN(QW、QAD)×K
ただし、MIN(QW、QAD)は、内燃機関1からの水の排出量QWと吸着剤5への水の吸着速度QADとで小さいほうの値を採用する。つまり、内燃機関1からの水の排出量QWが、吸着剤5への水の吸着速度QADよりも少ない場合には、吸着剤5へ吸着されるのは、内燃機関1からの水の排出量QWだけとなる。一方、内燃機関1からの水の排出量QWがいくら多くても、吸着剤5への水の吸着速度QADより多くは吸着できないため、吸着剤5へ吸着されるのは、吸着剤5への水の吸着速度QADとなる。また、Kは補正係数であり、図12に基づいて設定される。
ここで図12は、吸着剤5における水の吸着量Qと補正係数Kとの関係を示した図である。実線は吸着時の補正係数、破線は脱離時の補正係数を示している。ここで、吸着剤5における吸着量が多くなるほど、該吸着剤5に水が吸着し難くなる一方で、該吸着剤5から水が脱離し易くなるので、この補正を行うために補正係数Kが設定される。つまり、吸着剤5が水を吸着しているときには、吸着量Qが多くなるほど補正係数Kが小さくなる。一方、吸着剤5から水が脱離しているときには、吸着量Qが多くなるほど補正係数Kが大きくなる。
そして、吸着剤5における水の吸着量Qnは、以下の式により得ることができる。
Qn=Qn−1+Qq
ステップS507では、吸着剤5における水の吸着量Qが算出される。本ステップでは、前回ルーチン時の吸着量Qn−1に、前回ルーチンから今回ルーチンまでの間の吸着量の変化分Qqを減じることにより、今回ルーチン時の水の吸着量Qnが算出される。
吸着量の変化分Qqは、以下の式により得ることができる。
Qq=QRL×K
ただし、Kは補正係数であり、図12に基づいて設定される。
そして、吸着剤5における水の吸着量Qnは、以下の式により得ることができる。
Qn=Qn−1−Qq
このときに算出される吸着量Qnが負の値となる場合には、代わりに0を代入する。
ステップS508では、吸着剤5の温度Tが規定温度Tlmtとなっているか否か判定される。つまり、吸着剤5にて水の吸着も、水の脱離も起こらない状態であるか否か判定される。ステップS508で肯定判定がなされた場合にはステップS509へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS502へ戻る。
ステップS509では、補正係数が補正される。まず、乖離係数Kfを以下の式により得る。
Kf=Qn/Qid
ただし、Qidは吸着剤5の温度Tが規定温度Tlmtのときにおける水の吸着量の理論値である。つまり乖離係数Kfは、計算吸着量Qnが実際の吸着量Qidに対してどの程度大きいのかを示す値である。
ここで、実際の吸着量Qidは、吸着量の理論値としてもよい。この実際の吸着量Qidは、吸着剤5における発熱量と相関があるため、該発熱量に基づいて得ることができる。そして、発熱量は、出ガス温度センサ12により得られる排気の温度と入ガス温度センサ11により得られる排気の温度との差、及び吸着剤5の熱容量に基づいて得ることができる。
そして、前回ルーチン時の補正係数Kに乖離係数Kfを乗じることにより今回ルーチン時の補正係数Kを得る。つまり、補正係数Kは以下の式により補正される。
K=K×Kf
このようにして得られた補正係数Kを用いて次回のステップS506及びステップS507にて吸着量の変化分Qqを補正する。
これにより、水の排出量QW、吸着剤5への水の吸着速度(g/s)、または吸着剤5からの水の脱離速度(g/s)が補正される。なお、本実施例では補正係数K、吸着剤5
への水の吸着速度、または吸着剤5からの水の脱離速度が、本発明におけるパラメータに相当する。
以上説明したように本実施例によれば、計算吸着量を正確に得ることができるため、該計算吸着量から得られる発熱量も、より正確に得ることができる。
本実施例では、内燃機関1からの単位時間あたりの水の排出量QWを補正する。これは、吸着剤5に流入する水の量を補正することに等しい。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する。
ここで、内燃機関1の経年変化により、該内燃機関1から排出される水の量が変化する。そのため、吸着剤5に吸着される水の量も変化する。従って、吸着量を算出するときに、内燃機関1から排出される水の量の変化を考慮すれば、より正確な吸着量を得ることができる。
図13は、本実施例に係る計算吸着量を算出するためのフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、吸着剤5に吸着されていた水を脱離させた後に実行される。なお、前記フローと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
ステップS601では、内燃機関1からの水の排出量QWが補正される。まず、乖離係数Kfを前記フローと同様にして以下の式により得る。
Kf=Qn/Qid
そして、前回ルーチン時の水の排出量QWに乖離係数Kfを乗じることにより今回ルーチン時の水の排出量QWを得る。つまり、内燃機関1からの水の排出量QWは以下の式により補正される。
QW=QW×Kf
このようにして得られた排出量QWを用いて、次回のステップS506及びステップS507において計算吸着量を求める。これにより、計算吸着量を正確に得ることができるため、該計算吸着量から得られる発熱量もより正確に得ることができる。
本実施例では、吸着剤5における水の最大吸着量の変化を考慮して還元剤の供給時期を補正する。この最大吸着量の変化は、吸着剤5の劣化が原因で起こり得る。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する。
ここで、吸着剤5の劣化により、吸着剤5における水の最大吸着量が減少する。これにより、吸着剤5で発生する熱量が変化するため、排気浄化触媒6の温度上昇度合いも変化する。つまり、吸着剤5の劣化が進行するに従って、上限温度が低くなるため、これに合わせて、より低い温度で還元剤の供給を開始する。このようにして、還元剤の供給時期を変更する。
図14は、本実施例に係る排気浄化触媒6の温度上昇制御のフローを示したフローチャートである。なお、前記フローと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
ステップS701では、吸着剤初期温度T0が取得される。この吸着剤初期温度T0は
、吸着剤5の温度を上昇させる前の温度であり、例えば内燃機関1の始動時の吸着剤5の温度とすることができる。また、例えば外気温度としても良い。
ステップS702では、前回ルーチン時の吸着剤5の温度Tn−1と今回ルーチン時の吸着剤5の温度Tnとが等しいか否か判定される。つまり、吸着剤5の温度が変化していない状態であるかいなか判定される。ステップS702で肯定判定がなされた場合にはステップS703へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS701へ戻る。
ステップS703では、乖離係数Kfが以下の式により算出される。
Kf=Qn/Qid
ただし、Qidは吸着剤5の温度Tが規定温度Tlmtのときにおける実際の吸着量である。またQnは、計算吸着量である。これらは、前記フローと同様にして得る。
ステップS704では、還元剤供給開始温度Tlmtが以下の式により補正される。つまり、前回ルーチンにおける還元剤供給開始温度Tlmtに乖離係数Kfを乗じることにより、今回ルーチンにおける還元剤供給開始温度Tlmtを得る。
Tlmt=Tlmt×Kf
この還元剤供給開始温度Tlmtは、還元剤の供給を開始する温度である。つまり、吸着剤5の劣化により上限温度が下がるため、これに合わせて還元剤供給開始温度Tlmtも低下させる。
ステップS705では、吸着剤の温度Tnが還元剤供給開始温度Tlmtよりも高いか否か判定される。つまり、還元剤の供給を開始する温度となっているか否か判定される。ステップS705で肯定判定がなされた場合にはステップS105へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS705を再度実行する。
このようにして還元剤の供給時期を吸着剤5の劣化度合いに応じて補正することができるため、より効率の高い時期に還元剤を供給することができる。
本実施例では、吸着剤5の劣化により生じる最大吸着量の変化を考慮して内燃機関1の負荷を補正する。ここでいう「内燃機関1の負荷を補正する」とは、内燃機関1の負荷を変化させることを示している。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する。
ここで、吸着剤5の劣化により、該吸着剤5における水の最大吸着量が減少する。これにより、吸着剤5で発生する熱量が変化するため、排気浄化触媒6の温度上昇度合いも変化する。そこで、排気浄化触媒6の温度上昇度合いが吸着剤5の劣化によらず一定となるように、吸着剤5の劣化に応じて内燃機関1の負荷を高くして排気の温度を上昇させる。この場合、最大吸着量時の吸着剤5の温度が所定の温度となるように内燃機関1の負荷を高くしても良い。
図15は、本実施例に係る排気浄化触媒6の温度上昇制御のフローを示したフローチャートである。なお、前記フローと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
ステップS801では、吸着剤5の温度が理論値Tidよりも低いか否か判定される。この理論値Tidは計算吸着量により得られる吸着剤5の温度である。なお、この理論値Tidは、排気浄化触媒6の温度を活性温度の下限値まで上昇させることができる温度と
して、予め実験等により定めておいても良い。
つまり、本ステップでは、吸着剤5の温度上昇が不十分であるか否か判定される。理論値Tidは、前記フローと同様にして得られる計算吸着量に基づいて発熱量を算出し、該発熱量と吸着剤5の熱容量とから得ることができる。ステップS801で肯定判定がなされた場合にはステップS802へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS701へ戻る。
ステップS802では、内燃機関1の負荷が増加される。つまり、吸着剤5の温度上昇が不十分のため、内燃機関1の負荷を増加させて排気の温度を上昇させることにより、排気浄化触媒6の温度を上昇させる。内燃機関1の負荷は、一定値だけ増加させても良く、吸着剤5の温度Tnと理論値Tidとの差に応じて増加させても良い。この増加量は、予め実験等により求めておくこともできる。
このようにして内燃機関1の負荷を吸着剤5の劣化度合いに応じて補正することができるため、吸着剤5の劣化が進行したとしても排気浄化触媒6の温度を速やかに上昇させることができる。
本実施例では、吸着剤5の発熱量に基づいて該吸着剤5の劣化判定を行う。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する。
ここで、吸着剤5の劣化が進行するほど、吸着可能な水の量が減少するため、水吸着時の吸着剤5の発熱量が少なくなる。そのため上限温度が低くなる。つまり、発熱量に基づいて吸着剤5の劣化度合いを求めることができる。
図16は、本実施例に係る吸着剤5の劣化判定のフローを示したフローチャートである。なお、前記フローと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
ステップS901では、劣化判定条件が成立しているか否か判定される。劣化判定条件とは、劣化判定を正確に行うために必要となる条件である。
例えば、吸着剤5からの水の脱離が完了しているか否か判定される。つまり、吸着剤5に元々水が吸着されている状態では、その後の水の吸着量が少なくなるため、発熱量が少なくなる。これにより、吸着剤5が劣化していないにも関わらず劣化していると判定される虞がある。そこで、水の脱離が完了しているときに限り吸着剤5の劣化判定を行う。
また、例えば、内燃機関1の運転状態がアイドル状態で安定しているか否か判定される。つまり、内燃機関1の負荷に応じて吸着剤5の温度が変わるため、吸着剤5の劣化判定時には内燃機関1の運転状態をいつも同じにする。
さらに、例えば、規定の距離を走行した後であるか否か判定される。つまり、頻繁に劣化判定を行う必要はないため、劣化が生じ得る距離を走行後に劣化判定を行う。
このように、吸着剤5の劣化判定を行うための前提条件が成立しているか否か判定される。ステップS901で肯定判定がなされた場合にはステップS902へ進み、一方否定判定がなされた場合には劣化判定をせずに本ルーチンを一旦終了させる。
ステップS902では、吸着剤5に流入する排気の温度Tinと、吸着剤5から流出す
る排気の温度Toutと、が取得される。これらは、入ガス温度センサ11及び出ガス温度センサ12により得る。なお、本実施例では入ガス温度センサ11及び出ガス温度センサ12が、本発明における温度測定手段に相当する。
ステップS903では、ステップS902で得られた温度に基づいて算出される発熱量が、閾値よりも小さいか否か判定される。ここでいう閾値は、吸着剤5が劣化していないとすることができる発熱量の下限値である。つまり、本ステップでは、吸着剤5が劣化しているか否か判定される。
吸着剤5における発熱量は、ステップS902で得られる吸着剤5から流出する排気の温度Toutと吸着剤5に流入する排気の温度Tinとの差と、吸着剤5の熱容量と、に基づいて算出される。なお、本実施例ではステップS903の処理を行うECU10が、本発明における劣化判定手段に相当する。
ステップS903で肯定判定がなされた場合にはステップS904へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS905へ進む。
ステップS904では、吸着剤5が劣化していると記憶される。
ステップS905では、吸着剤5が劣化しておらず正常であると記憶される。
ステップS906では、吸着剤5の交換を運転者等に促すために、例えば警告ランプを点灯させる。
このようにして、吸着剤5の劣化判定が可能となる。なお、吸着剤5の発熱量に基づいて、劣化の度合いを求めても良い。発熱量と劣化の度合いとの関係は予め実験等により求めておく。
また本実施例では、吸着剤5の上限温度に基づいて該吸着剤5の劣化判定を行うことができる。つまり、吸着剤5の劣化が進行するほど、吸着可能な水の量が減少するため、吸着剤5の上限温度が低くなる。そのため、この上限温度が閾値よりも低くなったときに吸着剤5が劣化したと判定することができる。また、理論値との差に基づいて劣化度合いを判定することもできる。この劣化判定は、前記実施例における触媒昇温制御に付随して行うことができる。つまり、触媒昇温制御では、吸着剤5の上限温度近傍で還元剤の供給が開始されるため、該上限温度が求められる。このときに、吸着剤5の劣化判定を行うことができる。また、劣化判定を行うためだけに、吸着剤5に水を吸着させて上限温度を求めても良い。
さらに、還元剤の供給を開始する時期に基づいて吸着剤5の劣化判定を行うこともできる。つまり、還元剤の供給は吸着剤5の上限温度近傍で開始されるため、吸着剤5の劣化に伴い上限温度が変化すると、還元剤の供給開始時期も変化する。つまり、還元剤の供給開始時期と、吸着剤5の劣化の度合いとには相関がある。したがって、還元剤の供給開始時期に基づいて吸着剤5の劣化の度合いを判定することができる。なお、本実施例ではこのように劣化判定を行うECU10も、本発明における劣化判定手段に相当する。
また、実施例6、8、9における補正量に基づいて吸着剤5の劣化判定を行うこともできる。つまり、吸着剤5の劣化が進行するほど補正量が大きくなるため、該補正量が閾値を超えた場合に吸着剤5が劣化していると判定することができる。
ここで、吸着剤5における水の最大吸着量は、該吸着剤5の劣化や内燃機関1の経年変
化等により変化する。そのため、計算吸着量もこれに合わせて変化させる必要がある。計算吸着量を変化させるための補正量は、吸着剤5の劣化の度合いに応じて変化する。
また、吸着剤5の劣化が進行するに従って上限温度が低くなるため、これに合わせて還元剤の供給開始時期を補正した場合、還元剤供給開始時期の補正量は吸着剤5の劣化の度合いに応じて変化する。
さらに、吸着剤5の劣化に応じて内燃機関1の負荷を高くして排気の温度を上昇させた場合、排気の温度の上昇度合いは吸着剤5の劣化の度合いに応じて変化する。
このように、補正量と吸着剤5の劣化の度合いとには相関があるため、該補正量に基づいて劣化の度合いを判定することができる。なお、本実施例ではこのように劣化判定を行うECU10も、本発明における劣化判定手段に相当する。
以上説明したように本実施例によれば、吸着剤5の劣化判定が可能となる。そして、吸着剤5が劣化していると判定された場合には、吸着剤5の交換を促すことができる。また、内燃機関1の負荷を増加させて排気浄化触媒6の温度上昇を補うこともできる。
本実施例では、吸着剤5が水を吸着可能な上限温度と、排気浄化触媒6の浄化ウィンドーの上限値と、が等しくなるように、吸着剤5及び排気浄化触媒6の特性を設定する。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する
本実施例では、吸着剤5の温度が水を吸着可能な上限温度に達すると、排気浄化触媒6の温度は浄化ウィンドーの上限値に達する。これ以上温度が高くなると、排気浄化触媒6では排気を浄化できなくなる。一方、吸着剤5の温度が上限温度よりも高くなると、該吸着剤5から水が脱離する。このときに排気から熱を奪う。これにより、排気浄化触媒6の温度を下降させることができるため、該排気浄化触媒6の温度を浄化ウィンドーの範囲内に戻すことができる。
図17は、温度と、吸着剤5における水の最大吸着量と、排気浄化触媒6における排気の浄化率との関係を示した図である。温度がTlmtのときに、吸着剤5の温度が水を吸着可能な上限温度になり、排気浄化触媒6の温度が浄化ウィンドーの上限値となっている。つまり、温度がTlmtとなると、吸着剤5における水の吸着量が0となり、且つ排気浄化触媒6の浄化率が0となる。
このようにすることで、排気浄化触媒6の温度を浄化ウィンドーの上限値以下に維持することができるため、排気をより好適に浄化することができる。なお、吸着剤5の上限温度と、排気浄化触媒6が過熱する虞のある温度と、が等しくなるように夫々の特性を設定しても良い。このようにすることで、排気浄化触媒6が過熱しそうになったときに、吸着剤5から水が脱離して、該排気浄化触媒6の過熱を抑制することができる。
図18は、本実施例に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
上流側に第1吸着剤51が備わり、下流側に第2吸着剤52が備わる。そして、第1吸着剤51の上限温度は、排気浄化触媒6の浄化ウィンドーの上限値と等しくなるように設定される。また、第2吸着剤52の上限温度は、排気浄化触媒6の活性温度の下限値と等しくなるように設定される。
図19は、第1吸着剤51及び第2吸着剤52の温度と最大吸着量との関係を示した図である。実線が第1吸着剤51を示し、破線が第2吸着剤52を示している。第1吸着剤51は、温度が例えば摂氏500度のときに最大吸着量が0となる。また、第2吸着剤52は、温度が例えば摂氏200度のときに最大吸着量が0となる。つまり、水を吸着可能な上限温度が高い吸着剤をより上流側に配置している。
本実施例によれば、排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値よりも低い場合には、第1吸着剤51及び第2吸着剤52に水が吸着することで、より速やかに該排気浄化触媒6の温度を上昇させることができる。
そして、第2吸着剤52の温度が上限温度を超えた後であって、第1吸着剤51の温度が上限温度を超える前は、第2吸着剤51による吸熱と、第1吸着剤51による発熱とが打ち消し合うため、還元剤を供給することにより排気浄化触媒6の温度を上昇させることができる。
さらに、第1吸着剤51も上限温度を超えた場合には、第1吸着剤51及び第2吸着剤52における吸熱により排気の温度を低下させることができるため、排気浄化触媒6の温度を浄化ウィンドーの上限値以下に維持することができる。
なお、仮に第2吸着剤52を第1吸着剤51の上流側へ配置すると、第2吸着剤52で温度上昇した排気が先ず第1吸着剤51の温度を上昇させた後に排気浄化触媒6の温度を上昇させることになる。この場合、排気浄化触媒6の温度を活性温度の下限値まで上昇させるのに時間がかかるため好ましくない。
ここで、排気浄化触媒6の浄化ウィンドーの上限値は、吸蔵還元型NOx触媒において
NOxの吸蔵及び還元が可能な温度の上限値としても良い。
以上説明したように本実施例によれば、排気浄化触媒6の温度を活性温度まで速やかに上昇させることと、排気浄化触媒6の温度を浄化ウィンドーの上限値以下にすることとを両立できる。
本実施例では、吸着剤5の細孔径を、水は浸入できるが還元剤は進入できない大きさに設定する。他の装置や制御については実施例1と同じため、説明を省略する。
ここで、吸着剤5よりも上流側から還元剤を供給した場合、吸着剤5の細孔径が還元剤よりも大きいと還元剤が細孔内に進入し、該還元剤が吸着剤5に吸着されてしまう。そのため、排気浄化触媒6へ還元剤が到達しなくなる虞がある。また、吸着剤5に還元剤が吸着されると、その分、水の吸着量が少なくなる。そして還元剤を吸着するときの発熱量が水を吸着するときの発熱量よりも小さいと、排気浄化触媒6の温度を活性温度の下限値まで上昇させることができなくなる虞がある。
例えば還元剤にメタンを含むHCを用いる場合、該HCの径は0.4から0.5nm程度である。一方、水の径は0.3nm程度である。つまり、吸着剤5の細孔径を0.3nm程度又はそれ以下とすれば、細孔内へ水は浸入できるが、HCは進入できなくなる。そのため本実施例では、細孔径が0.3nm程度のK/A型ゼオライトを吸着剤5として用いている。
また、排気の温度が高くなると想定される場合には、より耐熱温度の高いゼオライトを
用いる。例えば、Na/Y型ゼオライトは耐熱温度が摂氏600度以上ある。しかし、Na/Y型ゼオライトの細孔径は、0.74nmと大きい。そこで、細孔に例えばテトラエトキシシランを付着させ、細孔径を小さくする。これにより、高い耐熱性を得ることができ且つHCの進入を阻止することができる。
以上説明したように本実施例によれば、吸着剤5の細孔径をHCより小さくし、且つ水と同等以上とすることにより、HCの吸着を阻止しつつ水を吸着させることができる。これにより、排気浄化触媒6へより多くのHCを供給することが可能となるため、該排気浄化触媒6を速やかに昇温することができる。また、吸着剤5において、より多くの水を吸着させることができるため、より多くの熱を発生させることができる。
なお、吸着剤5よりも下流で且つ排気浄化触媒6よりも上流の排気中へ還元剤を供給することにより、還元剤が吸着剤5に吸着されることを抑制してもよい。つまり、吸着剤5に還元剤が流入しなくなるため、排気浄化触媒6へより多くの還元剤を供給することができる。例えば吸着剤5よりも下流で且つ排気浄化触媒6よりも上流の排気中へ還元剤を供給する還元剤供給ノズルを備えていても良い。
図20は、本実施例に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
本実施例では、吸着剤5よりも上流側の排気通路4と、吸着剤5よりも下流側で且つ排気浄化触媒6よりも上流側の排気通路4と、を接続するバイパス通路41を備えている。他の装置については実施例1と同じため、説明を省略する。
そして、吸着剤5よりも上流側の排気通路4であってバイパス通路41の上流側が接続される箇所には、吸着剤5又はバイパス通路41の何れか一方を選択して流路を切り替えるための切替弁42が備えられている。つまり、切替弁42を切り替えることにより、吸着剤5またはバイパス通路41の何れか一方に排気が流される。
このようにすることで、吸着剤5へ排気を流す必要があるときにのみ該吸着剤5へ排気を流すことができる。例えば、吸着剤5における発熱反応により排気浄化触媒6の温度を上昇させたい場合や、吸着剤5における吸熱反応により排気浄化触媒6の温度を下降させたい場合に限り、該吸着剤5へ排気を流通させることができる。
また、吸着剤5よりも上流側で且つ切替弁42よりも下流側の排気通路4には、該吸着剤5に流入する排気の温度を測定する入ガス温度センサ11が備えられている。また、吸着剤5よりも下流側で且つバイパス通路41の下流側が接続される箇所よりも上流の排気通路4には、該吸着剤5から流出する排気の温度を測定する出ガス温度センサ12が備えられている。
そして本実施例では、入ガス温度センサ11により得られる排気温度よりも、出ガス温度センサ12により得られる排気温度のほうが高い間は、吸着剤5へ排気を流し、バイパス通路41へは排気を流さないようにする。入ガス温度センサ11により得られる排気温度よりも、出ガス温度センサ12により得られる排気温度のほうが高い間とは、吸着剤5において水が吸着されていることを意味する。
つまり、吸着剤5にて発熱が起きている間は、該吸着剤5へ排気を流すことにより排気の温度を上昇させる。これにより、排気浄化触媒6の温度を上昇させることができる。
また、吸着剤5に吸着されている水が脱離を始めると、吸着剤5から流出する排気の温度が、吸着剤5へ流入する排気の温度よりも低くなり、排気浄化触媒6の温度を低下させる虞がある。このような場合には、バイパス通路41へ排気を流すことにより、排気浄化触媒6の温度低下を抑制できる。バイパス通路41へ排気を流すのと同時に還元剤の供給を開始しても良い。この場合、還元剤が吸着剤5を通過しないため、還元剤が吸着剤5に吸着されることがない。
図21は、本実施例に係る排気浄化触媒6の昇温制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、排気浄化触媒6の温度上昇を行なう要求があったときに実行される。
ステップS1001では、吸着剤5に流入する排気の温度Tin及び吸着剤5から流出する排気の温度Toutが取得される。すなわち、入ガス温度センサ11及び出ガス温度センサ12により排気温度を得る。
ステップS1002では、吸着剤5に流入する排気の温度Tinよりも、吸着剤5から流出する排気の温度Toutのほうが高いか否か判定される。つまり、吸着剤5に水を吸着可能であるか否か判定される。ステップS1002で肯定判定がなされた場合にはステップS1003へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS1004へ進む。
ステップS1003では、吸着剤5側へ排気を流すように切替弁42が制御される。つまり、吸着剤5により排気の温度が上昇されているため、引き続き排気の温度を上昇させる。これにより、排気浄化触媒6の温度をより上昇させることができる。
ステップS1004では、バイパス通路41側へ排気を流すように切替弁42が制御される。つまり、吸着剤5から水が脱離しているため、排気の温度の下降を抑制するためにバイパス通路41側へ排気を流す。
ステップS1005では、吸着剤5から流出する排気の温度Toutが、排気浄化触媒6の活性温度の下限値以上となっているか否か判定される。つまり、吸着剤5の発熱による排気浄化触媒6の昇温が必要ないか否か判定される。ステップS1005で肯定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させ、一方否定判定がなされた場合にはステップS1001へ戻る。また、ステップS1005で肯定判定がなされた場合には、還元剤の供給を開始しても良い。
このようにして、排気浄化触媒6の昇温を効率良く行なうことができる。
なお、本実施例においては、吸着剤5から流出する排気の温度Toutと、吸着剤5に流入する排気の温度Tinと、の差(Tout−Tin)を学習し、この値が閾値以下となった場合は、吸着剤5が劣化していると判定しても良い。
また、本実施例では吸着剤5に水を吸着可能な上限温度を、排気浄化触媒6の活性温度の下限値に合わせても良い。このようにすれば、実施例2で説明したように、排気浄化触媒6の温度を活性温度まで確実に上昇させることができ、且つその後に吸着剤5から水を脱離させることができるので次回も排気浄化触媒6の昇温が可能となる。
本実施例では、排気浄化触媒6の昇温時に吸着剤5に吸着された水を保持しておき、排気浄化触媒6が過熱する虞のあるときに吸着剤5から水を脱離させることにより、排気浄化触媒6の温度を下降させる。他の装置については実施例14と同じため、説明を省略す
る。
図22は、内燃機関1からの排気の温度と、排気浄化触媒6へ流入する排気の温度と、排気浄化触媒6の温度との推移を示したタイムチャートである。実線は排気浄化触媒6の温度、一点鎖線は内燃機関1からの排気の温度、破線は排気浄化触媒6に流入する排気の温度であってバイパス通路41へ排気を流したときの温度、二点鎖線は排気浄化触媒6に流入する排気の温度であって吸着剤5へ排気を流したときの温度、を夫々示している。
また、「過熱」で示される温度は、排気浄化触媒6が過熱する温度を示している。また、「閾値」で示される温度は、排気浄化触媒6が過熱する虞のある温度であり、排気浄化触媒6の温度が閾値よりも高くなった場合には、排気浄化装置6の温度を低下させる。閾値は、排気浄化装置6が過熱する温度に対して余裕を持たせている。
図22では、Aで示した時間において排気浄化触媒6の温度が閾値となっている。このときに、切替弁42により吸着剤5側へ排気が流される。これにより、吸着剤5から水が脱離するため、排気浄化触媒6へ流入する排気の温度が、バイパス通路41へ排気を流したときと比較して低下する。これに従い、排気浄化触媒6の温度も低下する。そのため、排気浄化触媒6が過熱することが抑制される。なお、吸着剤5は閾値以上の温度で水が脱離するように設定されている。
図23は、本実施例に係る排気浄化触媒6の過熱抑制制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、排気浄化触媒6の温度上昇制御が完了した後の所定時間後に繰り返し実行される。つまり、本ルーチンが実行されるときの吸着剤5には、既に水が吸着されている。
ステップS1101では、排気浄化触媒6の温度Tnsrが取得される。この温度は出ガス温度センサ12により得られる排気温度に基づいて推定しても良く、排気浄化触媒6に直接センサを取り付けて測定しても良い。また、排気浄化触媒6よりも上流側又は下流側の排気の温度を測定し、該温度に基づいて推定しても良い。
ステップS1102では、排気浄化触媒6の温度Tnsrが閾値よりも高いか否か判定される。この閾値は、図22で説明したものと同一である。ステップS1102で肯定判定がなされた場合にはステップS1103へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS1104へ進む。
ステップS1103では、吸着剤5側へ排気を流すように切替弁42が制御される。つまり、吸着剤5から水を脱離させることにより、排気浄化触媒6の温度が下降する。
ステップS1104では、バイパス通路41側へ排気を流すように切替弁42が制御される。つまり、排気浄化触媒6の温度は過熱する虞のある温度よりも低いため、バイパス通路41側へ排気を流す。
このようにして、排気浄化触媒6が過熱する虞のあるときには、吸着剤5における吸熱を利用することで該排気浄化触媒6の温度を下降させることができる。これにより、排気浄化触媒6の過熱を抑制することができる。
なお、本実施例では、「閾値」を、排気浄化触媒6が過熱する虞のある温度として説明したが、これに代えて、排気浄化触媒6の温度が浄化ウィンドーの上限値を超える虞のある温度、又は浄化ウィンドーの上限値としても良い。このようにすることで、排気浄化触媒6の温度が浄化ウィンドーの上限値を超える虞がある場合に吸着剤5側へ排気が流され
るようになり、該排気浄化触媒6の温度を下降させることができる。
図24は、本実施例に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
本実施例では、第1吸着剤51及び第2吸着剤52を並列に備え、さらに第1吸着剤51及び第2吸着剤52よりも上流側の排気通路4と、第1吸着剤51及び第2吸着剤52よりも下流側で且つ排気浄化触媒6よりも上流側の排気通路4と、を接続するバイパス通路41を備えている。
また、第1吸着剤51よりも上流側の排気通路4であってバイパス通路41が接続される箇所には、第1吸着剤51又はバイパス通路41の何れか一方を選択して排気を流すための第1切替弁421が備えられている。
一方、第2吸着剤52よりも上流側の排気通路4であってバイパス通路41が接続される箇所には、第2吸着剤52又はバイパス通路41の何れか一方を選択して排気を流すための第2切替弁422が備えられている。
第1吸着剤51は、温度が例えば摂氏500度のときに最大吸着量が0となる。また、第2吸着剤52は、温度が例えば摂氏200度のときに最大吸着量が0となる。これらの温度と最大吸着量との関係は、図19と同一である。
すなわち、第1吸着剤51が水を吸着可能な上限温度は、第2吸着剤52よりも高い。そして本実施例では、第2吸着剤52が水を吸着可能な上限温度と、排気浄化触媒6の活性温度の下限値と、が等しくなるように設定している。さらに、第1吸着剤51が水を吸着可能な上限温度と、排気浄化触媒6が過熱する虞のある温度と、が等しくなるように設定している。
そして、本実施例では、排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値よりも低いとき、すなわち、排気浄化触媒6の温度を上昇させる要求のあるときには、第2吸着剤52へ排気を流す。また、排気浄化触媒6の温度が過熱する虞のある温度のとき、すなわち、排気浄化触媒6の温度を下降させる要求のあるときには、第1吸着剤51へ排気を流す。これらに該当しないときには、バイパス通路41へ排気を流す。つまり、排気浄化触媒6の温度に応じて、第1切替弁421及び第2切替弁422を制御する。
図25は、本実施例に係る排気浄化触媒6の温度制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、所定時間後に繰り返し実行される。なお、前記フローと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
ステップS1002で肯定判定がなされた場合、すなわち第2吸着剤52にて発熱しているときには、ステップS1201へ進む。このときには、第1吸着剤51においても発熱している。一方、ステップS1002で否定判定がなされた場合には、ステップS1004へ進む。
ステップS1201では、第1吸着剤51及び第2吸着剤52へ排気が流される。第1吸着剤51及び第2吸着剤52へ排気を流すことにより、水が吸着されるので、排気の温度を上昇させることができる。これにより、排気浄化触媒6の温度が上昇する。また、排気浄化触媒6の温度が高くなったときに第1吸着剤51から水を脱離させて該排気浄化触媒6の温度を下降させるためには、該第1吸着剤51に水が吸着されていなければならな
い。そのため、該第1吸着剤51に予め水を吸着させておく。
ステップS1102で肯定判定がなされた場合、すなわち排気浄化触媒6が過熱する虞のある場合には、ステップS1202へ進む。一方、ステップS1102で否定判定がなされた場合には、ステップS1104へ進む。
ステップS1202では、第1吸着剤51へ排気が流される。このときには、第1吸着剤51へ流入する排気の温度が、該第1吸着剤51で水を吸着可能な上限温度を超えている。そのため、第1吸着剤51へ排気を流すと、該第1吸着剤51から水が脱離する。これにより、排気浄化触媒6の温度を下降させることができる。
以上説明したように本実施例によれば、吸着剤を並列に2つ備えることにより、排気浄化触媒6の温度上昇と、過熱抑制とを行なうことができる。
なお、第1吸着剤51が水を吸着可能な上限温度と、排気浄化触媒6の温度が浄化ウィンドーの上限温度を超える虞のある温度又は浄化ウィンドーの上限温度と、が等しいとしても良い。このようにすることで、排気浄化触媒6の温度が浄化ウィンドーの上限温度を超える虞がある場合に第1吸着剤51側へ排気が流されるようになり、該排気浄化触媒6の温度を下降させることができる。これにより、排気浄化触媒6の温度を浄化ウィンドーの範囲内に維持することができる。
本実施例では、排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値に達した後で且つ排気の温度が規定温度以上のときに、吸着剤5から水を脱離させる。ここでいう規定温度とは、吸着剤5から水を脱離させることが可能な温度である。他の装置については実施例14と同じため、説明を省略する。
つまり、排気浄化触媒6の温度が活性温度の下限値に達した後に吸着剤5から水を脱離させる。このようにして、吸着剤5に水が吸着されていない状態とすることができるため、次回の内燃機関1の始動時において吸着剤5に水を吸着させることができる。
図26は、本実施例における吸着剤5からの水の脱離制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、排気浄化触媒6が活性温度に達した後の所定時間毎に繰り返し実行される。
ステップS1301では、排気の温度が取得される。この排気の温度は入ガス温度センサ11により得る。
ステップS1302では、ステップS1301で取得される排気の温度が規定温度以上であるか否か判定される。この規定温度は、吸着剤5から水を脱離させることが可能な温度である。なお、吸着剤5から水を脱離させることにより排気の温度が低下しても、排気浄化触媒6の温度が浄化ウィンドーを維持できる温度の下限値としてもよい。この規定値は、予め実験等により求めておく。ステップS1302で肯定判定がなされた場合にはステップS1303へ進み、一方否定判定がなされた場合にはステップS1302を再度実行する。
ステップS1303では、吸着剤5へ排気が流される。
このようにして、吸着剤5から水を脱離させることができるため、その後に内燃機関1が停止されたとしても、次回の内燃機関1の冷間始動時に吸着剤5へ水を吸着させること
ができる。つまり、常に排気浄化触媒6の温度上昇が可能な状態を維持することができる。これにより、排気浄化触媒6の温度上昇が必要となったときに、排気浄化触媒6の温度を速やかに上昇させることができる。
実施例に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
吸着剤の温度と、最大吸着量と、の関係を示した図である。
吸着剤に流入する排気の温度と、吸着剤の温度と、排気浄化触媒の温度と、の推移を示したタイムチャートである。
実施例1に係る排気浄化触媒の昇温制御のフローを示したフローチャートである。
吸着剤が上限温度のときに還元剤の供給を開始する場合の排気浄化触媒の昇温制御のフローを示したフローチャートである。
吸着剤の温度と、最大吸着量と、排気浄化触媒の活性温度の下限値と、の関係を示した図である。
吸着剤から水を脱離させるためのフローを示したフローチャートである。
実施例4に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
実施例5に係る排気浄化触媒の温度上昇制御のフローを示したフローチャートである。
実施例6に係る計算吸着量を算出するためのフローを示したフローチャートである。
吸着剤の温度と、吸着剤への水の吸着速度及び吸着剤5からの水の脱離速度と、の関係を示した図である。
吸着剤5における水の吸着量と補正係数との関係を示した図である。
実施例7に係る計算吸着量を算出するためのフローを示したフローチャートである。
実施例8に係る排気浄化触媒の温度上昇制御のフローを示したフローチャートである。
実施例9に係る排気浄化触媒の温度上昇制御のフローを示したフローチャートである。
実施例10に係る吸着剤5の劣化判定のフローを示したフローチャートである。
温度と、吸着剤における水の最大吸着量と、排気浄化触媒における排気の浄化率との関係を示した図である。
実施例12に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
第1吸着剤及び第2吸着剤の温度と最大吸着量との関係を示した図である。
実施例14に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
実施例14に係る排気浄化触媒の昇温制御のフローを示したフローチャートである。
内燃機関からの排気の温度と、排気浄化触媒へ流入する排気の温度と、排気浄化触媒の温度との推移を示したタイムチャートである。
実施例15に係る排気浄化触媒の過熱抑制制御のフローを示したフローチャートである。
実施例16に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
実施例16に係る排気浄化触媒の温度制御のフローを示したフローチャートである。
実施例17における吸着剤からの水の脱離制御のフローを示したフローチャートである。
符号の説明
1 内燃機関
2 気筒
3 燃料噴射弁
4 排気通路
5 吸着剤
6 排気浄化触媒
10 ECU
11 入ガス温度センサ
12 出ガス温度センサ
13 アクセルペダル
14 アクセル開度センサ
15 クランクポジションセンサ
41 バイパス通路
42 切替弁
51 第1吸着剤
52 第2吸着剤
61 上流側部分
62 下流側部分
421 第1切替弁
422 第2切替弁