JP4378993B2 - 電磁波遮蔽シート及びその形成方法 - Google Patents

電磁波遮蔽シート及びその形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁波遮蔽シート及びその形成方法に係り、特に、電磁波シールド性を向上させる電磁波遮蔽シート及びその形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話の普及、オフィスのコンピュータ化の促進等の情報通信の発達に伴い、これらの機器から発生される電磁波も増加し、問題視されるようになってきた。すなわち、電磁波による精密機器の誤作動や人体への障害等が問題となっている。
そのため、各種機器の電子ディスプレイの前面や窓のガラス面等に電磁波遮蔽シートを装着したり、配置することによって電磁波の遮蔽が図られている(例えば特許文献1参照)。ところで、このような電磁波遮蔽シートは、電磁波を遮蔽する機能、すなわち電磁波シールド性の他に光透過性を有することが必要とされている。このために電磁波遮蔽シートは、光透過性を有した基材上に、導電性を有した金属を用いて導電性パターンを形成することにより電磁波シールド性を確保し、さらに導電性パターンの線幅を繊細にすることにより高密度な導電性パターンを形成でき、電磁波シールド性を高めるとともに光透過性を確保している。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−40893号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、人体への影響をより低減するために、さらに高性能な電磁波遮光シートの開発が望まれている。電磁波遮光シートの高性能化において重要な要因としては、導電性パターンを微細化すれば、高密度な導電性パターンを形成でき、電磁波シールド性を高めることができるとともに、さらに導電性パターンが視認されにくくなり光透過性を高めることができる。
【0005】
本発明の課題は、微細な導電性パターンを形成することで電磁波シールド性及び光透過性の向上を図ることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に設けられた磁性遮蔽層と、
前記磁性遮蔽層及び前記基材の少なくとも一方の面上に形成された導電性パターンとを備え、
前記導電性パターンは、導電性微粒子及び分散剤を含んでなる導電性パターン形成用組成物によって形成され
前記分散剤は、第3級アミン型モノマーを主鎖に含み、かつポリエーテル型の非イオン性のモノマーを側鎖に含むポリマーであり、
前記導電性微粒子は、貴金属又は銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなることを特徴としている。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、導電性パターン形成用組成物が分散剤を含んでいるために、導電性パターン形成用組成物中において導電性微粒子は分散剤を保護コロイドとして、凝集することなく分散した状態となる。これにより、従来と比較して微小な導電性微粒子によって微細な導電性パターンを形成することが可能となり、高密度な導電性パターンを形成でき、電磁波シールド性を高めることができる。特に、光透過性の基材に対して導電性パターンを形成する場合においても、導電性パターンの線幅が細いために視認されにくくなり、電磁波遮蔽シート自体の光透過性を高めることができる。
また、導電性パターン形成用組成物中の導電性微粒子を微小化することができるため、基材の表面に導電性パターン形成用組成物によって描画された液滴パターンに対し、従来よりも低温の加熱によって導電性を付与することができる。
また、導電性微粒子が、貴金属又は銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなっているので、導電性パターン形成用組成物中の導電性微粒子を分散剤によって確実に分散化することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電磁波遮蔽シートにおいて、
前記導電性パターンは、インクジェット方式によって導電性パターン形成用組成物を吐出することで形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記のように、導電性パターン形成用組成物中の導電性微粒子は従来と比較して微小となっている。つまり、請求項2記載の発明のように、インクジェット方式によって導電性パターン形成用組成物を吐出して、導電性パターンを形成する場合においては、導電性微粒子が従来よりもノズルに詰まりにくいため、従来と比較して容易に導電性パターンを形成することができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の電磁波遮蔽シートにおいて、
前記導電性パターン上には、光硬化性樹脂からなる樹脂層が前記導電性パターンを覆うように設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、樹脂層が導電性パターンを覆っているので、導電性パターンが外気に晒されることを防止でき、導電性パターンの酸化を抑制することができる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の電磁波遮蔽シートにおいて、
前記光硬化性樹脂は、光重合開始剤と、多官能アクリル系モノマー又は多官能アクリル系オリゴマーとを主成分として含有する樹脂であることを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、光硬化性樹脂は光重合開始剤と、光重合性のアクリル系モノマーまたはアクリル系オリゴマーとを主成分として含有する樹脂であるので、光によって確実に硬化させることができる。従って、導電性パターンを酸化させることなく、導電性パターンの上に樹脂層を形成することができる。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートにおいて、
前記導電性パターンの線幅は、20μm以下であることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、導電性パターンの線幅が、20μm以下であるので、電磁波遮蔽シートが光透過性を有する場合においても導電性パターンによってその光透過性が低下することを抑制することができる。
【0018】
請求項記載の発明は、
基材上に導電性パターンが形成された電磁波遮蔽シートの形成方法であって、
磁性遮蔽層を形成するためのゾルゲル溶液を前記基材の少なくとも一方の面に塗設、硬化させて前記磁性遮蔽層を形成し、
前記磁性遮蔽層及び前記基材の少なくとも一方の面上に、導電性微粒子及び分散剤を含んでなる導電性パターン形成用組成物を用いて液滴パターンを描画し、その後、前記液滴パターンを加熱して導電性を付与することで導電性パターンに変換することを特徴としている。
【0019】
請求項記載の発明によれば、導電性パターン形成用組成物が分散剤を含んでいるために、導電性パターン形成用組成物中において導電性微粒子は分散剤を保護コロイドとして、凝集することなく分散した状態となる。これにより、従来と比較して微小な導電性微粒子によって微細な導電性パターンを形成することが可能となり、高密度な導電性パターンを形成でき、電磁波シールド性を高めることができる。特に、光透過性の基材に対して導電性パターンを形成する場合においても、導電性パターンの線幅が細いために視認されにくくなり、電磁波遮蔽シート自体の光透過性を高めることができる。
また、導電性パターン形成用組成物中の導電性微粒子を微小化することができるため、基材の表面に導電性パターン形成用組成物によって描画された液滴パターンに対し、従来よりも低温の加熱によって導電性を付与することができる。
【0020】
請求項記載の発明は、
基材上に導電性パターンが形成された電磁波遮蔽シートの形成方法であって、
前記基材の一面に、導電性微粒子及び分散剤を含んでなる導電性パターン形成用組成物を用いて液滴パターンを描画し、その後、前記液滴パターンを加熱して導電性を付与することで導電性パターンに変換してから、
前記基材の前記導電性パターンが形成された面の裏面に、磁性遮蔽層を形成するためのゾルゲル溶液を塗設、硬化させて前記磁性遮蔽層を形成することを特徴としている。
【0021】
請求項記載の発明によれば、請求項記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
【0022】
請求項記載の発明は、請求項6又は7記載の電磁波遮蔽シートの形成方法において、
前記液滴パターンは、インクジェット方式によって前記導電性パターン形成用組成物を吐出することにより形成されていることを特徴としている。
【0023】
請求項記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
【0024】
請求項記載の発明は、請求項6〜8のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートの形成方法において、
前記導電性パターン上に、光硬化性樹脂を塗設して、光を照射することにより硬化させて、前記樹脂層を形成することを特徴としている。
【0025】
請求項記載の発明によれば、請求項3記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
【0026】
請求項10記載の発明は、請求項6〜9のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートの形成方法において、
前記導電性パターンの線幅は、20μm以下であることを特徴としている。
【0027】
請求項10記載の発明によれば、請求項5記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
【0028】
請求項11記載の発明は、請求項8〜10のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートの形成方法において、
前記インクジェット方式におけるノズル径は、0.1μm〜10μmであることを特徴としている。
【0029】
請求項11記載の発明によれば、ノズル径が0.1μm〜10μmであるので、導電性パターンの線幅を20μm以下に形成することが容易に行える。
【0030】
請求項12記載の発明は、請求項6〜11のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートの形成方法において、
前記分散剤は、第3級アミン型モノマーを主鎖に含み、ポリエーテル型の非イオン性のモノマーを側鎖に含むポリマーであり、
前記導電性微粒子は、貴金属又は銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなることを特徴としている。
【0031】
請求項13記載の発明によれば、導電性微粒子が、貴金属又は銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなっているので、導電性パターン形成用組成物中の導電性微粒子を分散剤によって確実に分散化することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明に係る電磁波遮蔽シートの実施形態について説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。図1は電磁波遮蔽シートの概略断面図である。
【0033】
電磁波遮蔽シート1は、光透過性を有するフィルム状の基材2を備えており、この基材2の少なくとも一方の面には、ゾルゲル法によって形成された磁性遮蔽層3が積層されている。
【0034】
磁性遮蔽層3は、例えばアルミニウム、マグネシウム、ニッケル、錫等の磁性遮蔽効果を有する磁性遮蔽金属を金属アルコキシドが金属ベースとされるゾルゲル溶液に対して、ゾルゲル法を活用し、前記ゾルゲル溶液を基材2上で硬化させることにより形成されるものである。
【0035】
ここで、ゾルゲル法について説明する。ゾルゲル法は、ゾルゲル溶液を加熱或いは光を照射することで硬化させる手法である。ゾルゲル溶液中では目的材料の成分はイオンか分子の状態で溶解しており、合成目的の材料が多成分系であっても反応によって希望する化合物ができると期待される。磁界を遮蔽する機能を有する金属を数種類配合して活用することが可能となる。そのため、ゾルゲル法は複数の金属アルコキシドを混合して、縮合することが容易である特性を有する。
【0036】
ゾルゲル法に用いられるゾルゲル溶液は、一般的に金属アルコキシド、有機酸塩、金属錯塩、金属錯体等の有機金属化合物及び硫酸塩、硝酸塩等の無機金属化合物から選択された化合物が原料として使用される。金属アルコキシド誘導体はモノ、ジ、トリ、テトラアルコキシドである。金属アルコキシドのアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル等が挙げられる。
【0037】
本発明のゾルゲル溶液に使用するモノマー組成物には、例えば、In、Sn、Zr、Zn、Si等のアルコキシドが挙げられる。Inのアルコキシドとしては、例えばインジウム・メトキシエトキサイド、インジウムイソプロポキサイド、インジウム・メチル(トリメチル)アセチルアセトネ−ト等が挙げられる。また、Snのアルコキシドとしては、例えば錫メトキサイド、錫エトキサイド、錫2、4−ペンタンジオネ−ト、テトラ−n−ブトキシ錫等が挙げられる。Zrのアルコキシドとしては、例えばジルコニウムエトキサイド、ジルコニウム・メタクリル・オキシエチルアセトアセテート・トリ−n−プロポキサイド、ジルコニウム−n−プロポキサイド、ジルコニウムジメタクリレート・ジブトキサイド等が挙げられる。Znのアルコキシドとしては、例えば亜鉛N、N−ジメチルアミノエトキシド、亜鉛メトキシエトキサイド等が挙げられる。Siのアルコキシドとしては、例えばテトラメトキシ・シラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、トリメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0038】
ここで、ゾルゲル溶液のベースモノマーは、多価アルコキシドが一般的であるが、光重合が可能である官能基を導入してもよい。すなわち、樹脂化の機構は、ゾルゲル反応による高分子化と同時に光重合による高分子化の併用である。これらの代表的なモノマーとしては、例えばビニールアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピル・トリメトキシシラン、アクリロキシシラン等が挙げられる。
ゾルゲル溶液のベースモノマーは分散剤成分と共有結合する官能基を有する。官能基の種類としては、例えばエポキシ基、イソシアネ−ト基、あるいは更に、イソシアネ−ト基のブロック体である。
【0039】
ゾルゲル法の縮合反応による架橋反応を促進する触媒としては、例えば▲1▼水、メタノール等の低級アルコール、▲2▼酸類、例として、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、▲3▼Alキレート、Zrキレート等の金属触媒等が挙げられる。ここでキレート配位子としては、例えばサルチル酸、1,3−ジケトン類、ヒドロキシカルボン酸、アセト酢酸エステル等が挙げられる。
【0040】
また、ゾルゲル反応は出発物質のゾルゲル溶液の状態を均一、透明な状態にすれば組成物は、どの部分においても均一と考えられる。これらの化合物のゾル溶液を調整し、加水分解や重縮合反応によりゲル化させる。この方法により均一な有機−無機ハイブリッド体をうることができる。この有機−無機ハイブリット体が接着機能を有するバインダー組成物となる。このように、有機物がハイブリッド化されることにより、硬化後においても柔軟性を発揮でき、無機物の細孔がなくなり、ゲルが強化される。また、無機物が結合されることで耐熱性が向上し、特にナノ・コンポジット金属の液滴を線状にする工程に役立つ。また、有機−無機ハイブリッド体は含まれている有機物によって、応力の緩和が起こりやすいので無機物単独の場合と異なり基材2に対する接着力の向上に繋がる。
【0041】
磁性遮蔽層3の上面には、図1に示すように、導電性パターン形成用組成物からなる導電性パターン4が形成されている。この導電性パターン4は、格子状に形成されている。各格子の形状は、電磁波遮蔽シート1の使用目的に応じて設定されており、例えば二等辺三角形、正三角形、長方形、正方形、菱形、正五角形以上の正多角形、楕円形、円等が挙げられる。ここで、好適な電磁波シールド効果を得るためには、各格子の最大幅を50μm〜500μmの範囲に収める必要がある。各格子の最大幅が50μm未満では、光透過性を有する電磁波遮蔽シートの場合では光透過性が低下し、例えば電磁波遮蔽シート1を有した表示装置の画質を低下させてしまうおそれがあり、また、500μmより大きければ、電磁波遮蔽効果が低下してしまう。各格子の最大幅としては、例えば、多角形である場合には最も距離の離れた頂点間の距離であり、楕円形の場合には長軸、円形の場合には直径のことである。
【0042】
そして、導電性パターン4の線幅は、5μm未満であると十分な電磁波シールド性が得られず、50μmより大きければ光透過性を有する電磁波遮蔽シートの場合では光透過性を低下させてしまうので、5μm〜10μmに設定されている。
なお、表示装置等に用いられる光透過性を有する電磁波遮蔽シート1においては、モアレが生じないように表示装置の画素の配置仕様を考慮して、導電性パターン4の格子形状及び線幅を決定することが好ましい。
【0043】
導電性パターン4を形成するための導電性パターン形成用組成物について説明する。導電性パターン形成用組成物は、インクジェット方式などにより基材2の表面に導電性パターン4を形成するものであり、分散媒中に導電性微粒子と導電性微粒子を分散させる分散剤とを含有している。
分散媒は、水不溶性の有機溶剤、具体的にはMEK(メチルエチルケトン)やMIBK(メチルイソブチルケトン)、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン等を主成分としている。
【0044】
導電性微粒子は少なくとも1種の金属から形成されており、本実施の形態においては銅から形成されている。導電性微粒子の平均粒径は0.1nm以上、かつ20nm以下となっている。
【0045】
分散剤は、複数の側鎖が櫛の歯のように主鎖に結合されたくし型の形状を有するオリゴマーであり、溶液重合などによってラジカル重合した複数のモノマーから形成されている。この分散剤の重量平均分子量は3000〜100000となっている。
【0046】
より詳細には、分散剤は、主鎖となるモノマー単位のところどころに他種のモノマーが側鎖として配列したグラフトポリマーであり、かつ複数種のモノマーがそれぞれ連続して重合することにより形成されたブロックポリマーである。
【0047】
分散剤の主鎖には、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルや(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等、窒素を含む含窒素第3級アミン型モノマーが共重合成分として含まれている。そのため、分散剤は第3級アミン型モノマー由来の部分の窒素原子から電子を供与することによって導電性微粒子を安定して保持する、つまり導電性微粒子を分散した状態とするようになっている。
また、分散剤の主鎖には、上記の含窒素第3アミン型モノマー以外にも(メタ)アクリル酸又はその誘導体が含まれることが好ましい。この場合には、モノマーを確実にラジカル重合させることができる。
また、分散剤の主鎖には、ステアリル基のような長鎖アルキル基やスチレンが含まれることが好ましい。この場合には、分散剤は、オルガノゾルの系において、導電性微粒子を確実に分散させることができる。なお、長鎖アルキル基としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや2−エチルヘキシル(メタ)アクリル酸エステル、ラウリル(メタ)アクリル酸エステル、ステアリル(メタ)アクリル酸エステル等がある。
更に、分散剤の主鎖には、導電性微粒子に対する反応性モノマーとして、グリシジル(メタ)アクリルエステルやグリシジル(メタ)アクリル酸エステルの第1級アミン誘導体、グリシジル(メタ)アクリル酸エステルのポリエチレンイミン誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸にポリエチレンイミン付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が含まれることが好ましい。この場合には、分散剤は導電性微粒子に対して効果的に付着し、これら導電性微粒子を分散させることができる。
【0048】
また、分散剤の側鎖には、ポリエーテル型の非イオン性のモノマー成分が含まれている。具体的に分散剤の側鎖には、親水性のポリエチレンノキサイドと、疎水性のポリプロピレンオキサイド又はポリブチレンオキサイドとが含まれている。
これら側鎖成分により、分散剤は導電性微粒子の分散効果を有効に発揮するようになっている。また、分散剤は、このように側鎖成分に親水性成分及び疎水性成分を含むため、分散媒中でミクロドメイン構造を形成するようになっている。また、この分散剤はエチレンオキサイド、或いはプロピレンオキサイドの付加モル数の自由なコントロールが可能なため、導電性微粒子を分散させる効果や、温度やpHの変化に対する安定性、分散媒との相性に優れたモノマーを形成することができるようになっている。更に、この分散剤は、側鎖成分に屈曲性の大きな分子鎖を付加することにより、導電性微粒子の表面をこの分子鎖で被覆して吸着層を作り、導電性微粒子の分散性を向上させるとともに、系を安定化させることができる。また、分散剤は、有機分散媒と水性分散媒との混合分散媒を、有機分散媒−水性分散媒の均一相、或いはマイクロエマルジョンの状態から、完全に2層に分離した状態にさせることができるようになっている。
【0049】
導電性パターン4上には、図1に示すように、導電性パターン4を覆う樹脂層5が設けられており、この樹脂層5によって導電性パターン4は外気に晒されず、酸化しにくくなっている。樹脂層5は、光重合開始剤と、光重合性のアクリル系モノマーまたはアクリル系オリゴマーとを主成分として含有する光硬化性樹脂から形成されている。
【0050】
光重合開始剤は、カルボニル化合物またはイオウ化合物である。カルボニル化合物としては、アセトフェノンやジトリクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラ−ケトン、ベンジル、ベンゾイン等がある。イオウ化合物としては、テトラメチルチウラムモノサルファイドやチオキサンソン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−ジアルキルアゾアセトフェノン等がある。
【0051】
アクリル系モノマーとしては、単官能モノマーや2官能モノマー、多官能モノマーを用いることができる。
単官能モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレートや2−エチルへキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート等がある。2官能モノマーとしては、1,3−ブタンジオールジアクリレートや1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ヒドロキシビバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等がある。多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレートやペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等がある。
官能アクリル系オリゴマーとしては、上記アクリル系モノマーからなるオリゴマーや、光重合性プレポリマーを用いることができる。光重合性プレポリマーとしては、骨格を構成する分子の構造から、ポリエステルアクリレートやエポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート等と分類されるものを用いることができ、特にポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレートが好ましい。
【0052】
なお、上記光硬化性樹脂には、光に対する感度を高める増感剤が含まれることが好ましい。このような増感剤としては、n−ブチルアミンやトリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリ−n−ブチルホスフイン等がある。
【0053】
次に、導電性パターン形成用組成物の製造方法について説明する。
まず、湯浴内のフラスコ内に溶媒としてのイソプロピルアルコールと、分散剤の前記モノマー成分と、重合開始剤としてのアゾイソブチロニトリルとを入れ、溶液重合を行う。これにより、複数のモノマーがラジカル重合し、分散剤が合成される。
【0054】
次に、銅などの金属化合物と上記分散剤とを酸性の水性分散媒に溶解する。なお、分散剤は第3級アミノ基を有するので、酸性の水性分散媒に対する溶解性が高くなっている。ここで、銅の化合物としては、例えば蟻酸銅や酢酸銅、ナフテン酸銅、オクチル酸銅、アセチルアセトン銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などがあり、このうち、安価な硫酸銅または硝酸銅を用いることが好ましい。
【0055】
次に、水性分散媒相の銅イオンを還元することにより、導電性微粒子を形成する(還元工程)。具体的には、常温下で、第1級アミンや第2級アミン等の有機アミンを水性分散媒に加えるとともに攪拌を行う。これにより銅イオンは還元されて水性分散媒相に析出する。ここで、水性分散媒相には分散剤が存在しているため、析出する導電性微粒子は分散剤を保護コロイドとして水性分散媒相に安定な状態で分散し、導電性微粒子の粒径は0.1nm以上、20nm以下となる。また、還元剤として有機アミン化合物を用いて還元工程を行うことにより、比較的弱い還元条件で銅イオンが還元されるため、析出する導電性微粒子の粒径のバラツキが小さくなる。なお、水性分散媒に加える有機アミンとしては、メチルアミノエタノールやエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンが好ましく、ポリエチレンイミンがより好ましい。ポリエチレンイミンを用いる場合には、銅イオンを還元するとともに、析出する導電性微粒子を分散させることができる。なお、ポリエチレンイミンは、ポリマー中に側鎖として含まれるものであっても良く、具体的には(メタ)アクリル酸誘導体を主鎖成分とするグラフトポリマー中に側鎖として含まれるものが好ましい。
【0056】
次に、導電性微粒子が分散した水性分散媒を、前記水不溶性有機溶剤を主成分とする有機分散媒と接触させ、導電性微粒子を水性分散媒相から有機分散媒相に相間移動させる(相間移動工程)。具体的には、水性分散媒に有機分散媒を接触させた後、アミン等の化合物を添加することによって水性分散媒相をアルカリ性とし、かつ水性分散媒及び有機分散媒を50〜90℃に加熱する。これにより、水性分散媒と有機分散媒とが2相に分離する。また、分散剤中のポリエーテル部分の酸素原子と水分子との水素結合による水和度が減少して水溶性が著しく低下するため、分散剤中のポリアルキレンオキサイド(メタ)アクリル酸誘導体由来の部分の水溶性が低下し、分散剤は有機分散媒相に相間移動する。また、導電性微粒子は、アミン等の化合物の添加時に銅イオンに由来して形成される有機酸塩または無機酸塩の塩析硬化によって有機分散媒相に相間移動する。その結果、導電性微粒子は水性分散媒相における場合と異なり、酸素から遮蔽された状態、つまり酸化され難い状態となる。また、導電性微粒子は、分散剤による分散効果とミクロブラウン運動とによって分散した状態で有機分散媒相で安定に保持される。
【0057】
なお、この相間移動工程においては、水性分散媒と有機分散媒とを均一に混合するため超音波ミキサーをかけることが好ましい。これにより、水性分散媒と有機分散媒とは均一相、或いはマイクロエマルジョンを形成する。ここで、マイクロエマルジョンの粒径は30nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。
【0058】
次に、上記のようにして水性分散媒相と分離して得られた有機分散媒相を取り出し、精製水により水洗する(精製工程)。これにより有機分散媒中に分散している水溶性成分、具体的には還元剤として使用したアミン化合物、分散剤の一部及び中和塩が除去され、加熱によって導電性微粒子同士を確実に融着させることが可能となる。なお、精製工程後に有機分散媒中に残存する分散剤量は、銅に対して重量換算で20Wt%以下とすることが好ましい。この場合には、有機分散媒中の導電性微粒子同士を接触させることができるため、導電性パターンを形成することができる。
【0059】
次に、有機分散媒を蒸発させて乾固させる。
そして、乾固した有機分散媒を樹脂成分及び硬化剤と混合し、混合物を混練して導電性パターン形成用組成物を製造する。
【0060】
次に、本発明の電磁波遮蔽シート1の形成方法について説明する。
まず、図1に示すように、フィルム状の基材2の少なくとも一方の面に、上記したゾルゲル溶液を塗設する。ここで、ゾルゲル溶液が熱硬化性の溶液である場合には、ゾルゲル溶液に対して熱を付与し、またゾルゲル溶液が光硬化性の溶液の場合には、ゾルゲル溶液に対して光を照射することにより、ゾルゲル溶液を硬化させて基材2上に磁性遮蔽層3を形成する。
【0061】
基材2上のゾルゲル溶液が硬化し磁性遮蔽層3が形成されると、磁性遮蔽層3上にインクジェット方式のプリンタによって導電性パターン形成用組成物を吐出して、液滴パターンを所定形状の格子状となるように描画する。ここで用いられるプリンタには、導電性パターン形成用組成物を磁性遮蔽層3に対して吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドが備えられている。この記録ヘッドのノズルは、導電性パターン4の線幅が20μm以下に形成しやすくするために、ノズル径が0.1μm〜10μmとなるように形成されている。
【0062】
そして、描画された液滴パターンに対して熱を付与し、1〜60分の間、液滴パターンを60〜450℃に加熱する。これにより液滴パターン中の導電性微粒子同士が融着するため、液滴パターンは導電性パターン4となる。ここで、加熱温度を60℃以上としたのは、60℃未満だと有機物質が十分に蒸発、或いは燃焼されないためである。また、加熱温度を450℃以下としたのは、450℃を超えると導電性パターン4が熱的ダメージを受けるためである。なお、ここで行われた加熱は、導電性パターンの酸化を防ぐべく、真空雰囲気中またはほぼ4%以下の水素を含んだ不活性ガス雰囲気中で行われることが好ましい。
【0063】
また、この加熱に際して、磁性遮蔽層3のバインダー組成物と導電性微粒子とが、その境界面で強力に接着される。なお、上記したようにバインダー組成物は、十分な耐熱性を有しているので、加熱によって磁性遮蔽層3にひび割れ等が生じることなく、導電性微粒子の融着を安定して行うことができる。
【0064】
導電性パターン4が形成されると、導電性パターン4上に、光硬化性樹脂を少なくとも導電性パターン4を覆うように塗設する。その後、光硬化性樹脂に光を照射して硬化させて、樹脂層5を形成する。
【0065】
なお、上記した形成方法においては、導電性パターン4が磁性遮蔽層3上に形成する場合について説明したが、導電性パターン4を基材2上に直接形成してもよい。こうした場合、基材2の導電性パターン4が形成された面の裏面に磁性遮蔽層3を形成すれば、電磁波シールド性を確保することができる。また、このように基材2の表裏面にそれぞれ導電性パターン4及び磁性遮蔽層3が形成される場合においては、導電性パターン4及び磁性遮蔽層3の形成順序はどちらが先であってもよく、上記した形成方法と同様に先に磁性遮蔽層3が形成される形成方法だけでなく、例えば、基材2の一面に、導電性パターン4を描画し、その後、導電性パターン4を加熱して導電性を付与してから、基材2の導電性パターン4が形成された面の裏面に、ゾルゲル溶液を塗設、硬化させて磁性遮蔽層を形成する形成方法が挙げられる。
【0066】
以上のように、本実施形態の電磁波遮蔽シート1によれば、導電性パターン形成用組成物が分散剤を含んでいるために、導電性パターン形成用組成物中において導電性微粒子は分散剤を保護コロイドとして、凝集することなく分散した状態となる。これにより、従来と比較して微小な導電性微粒子によって微細な導電性パターン4を形成することが可能となり、高密度な導電性パターン4を形成でき、電磁波シールド性を高めることができる。特に、光透過性の基材2に対して導電性パターンを形成する場合においても、導電性パターン4の線幅が細いために視認されにくくなり、電磁波遮蔽シート1自体の光透過性を高めることができる。
また、導電性パターン形成用組成物中の導電性微粒子を微小化することができるため、基材2の表面に導電性パターン形成用組成物によって描画された液滴パターンに対し、従来よりも低温の加熱によって導電性を付与することができる。
【0067】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更を行ってもよい。
例えば、上記実施の形態においては、導電性微粒子を銅から形成されていることとして説明したが、金や銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの他の金属から形成されていることとしてもよい。
また、導電性パターンの形成をインクジェット方式により行うこととして説明したが、スクリーン印刷など、他の方式により行うこととしてもよい。
【0068】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例では、以下のように分散剤の合成、銅微粒子の製造、導電性パターン形成用組成物の製造及び導電性パターンの形成を行った。なお、以下の説明において、括弧内の数値は重量の比率を示すものとする。
【0069】
《分散剤の合成》
まず、窒素流入下で75℃の湯浴内に配置された4ツ口フラスコ内に溶媒としてのイソプロピルアルコール(100)と、分散剤のモノマー成分と、重合開始剤としてのアゾイソブチロニトリル(1)とを入れ、溶液重合を行った。モノマー成分としては、メタクリル酸メチル(30)、ステアリルメタクリレート(10)、メタクリル酸(エチレンオキサイド)20(プロピレンオキサイド)5末端メトキシ付加物(30)、メタクリル酸(エチレンオキサイド)120(ブチレンオキサイド)10付加物(20)及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル(10)を用いた。
重合の開始から3時間後、さらにアゾイソブチロニトリル(0.5)を添加した。
更に3時間後、アゾイソブチロニトリル(0.5)と、重合調整剤としてのラウリルチオカルコール(10)とを添加し、2時間、溶液重合させた。
【0070】
以上のように合成された分散剤の重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて求めた。GPC装置のカラムとしてはTKSgelSuper1000,TKSgelSuper2000,TKSgelSuper3000(東ソー株式会社製)を用い、視差屈折率を利用して定量を行った。なお、キャリヤーとしてはテトラヒドラフラン(THF)を用いた。
測定された重量平均分子量は35000であった。
【0071】
《銅微粒子の製造》
まず、撹拌しながら硝酸銅(50)を精製水(300)中に溶解した。
次に、上記のように合成された分散剤(10)を溶液中に加え、均一に溶解した。
次に、30分かけてモノエタノールアミン(30)を攪拌しながらゆっくりと溶液中に添加し、これにより銅イオンを還元して銅微粒子を形成した。水性分散媒相のpHは8.5とした。その後2時間、水性分散媒相を50℃に維持するとともに撹拌を継続した。
次に、水性分散媒に有機分散媒として酢酸エチル(100)を加え、超音波ミキサーを10分間かけることにより水性分散媒と有機分散媒とをマイクロエマルジョンとした。
次に、撹拌しながら20分かけて上記マイクロエマルジョンを60℃まで昇温した。
次に、撹拌を中止することによりマイクロエマルジョンを静止させ、水性分散媒相と銅微粒子が分散した有機分散媒相との2相に分離した。
次に、有機分散媒相を取り出して精製水(300)により2回水洗し、平均粒子径8nmの銅微粒子分散液を得た。
【0072】
《磁性遮蔽材料(ゾルゲル液)の製造》
まず、4ツ口フラスコ内に溶媒としてのインジウムメチルトリメトキシ(15)と、錫テトラエトキサイド(30)、ジエトキシメチルシラン(40)をイソプロピルアルコール(100)と、アセチルアセトン(200)中でパラトルエンスルホン酸(0.5)を触媒として、30℃、5時間の条件で縮合反応を行う。アセチルアセトンはシランの縮合反応以外は非常に反応速度が早いため、縮合反応速度のコントロールのために使用する。その後、更に、ジメタキシシランジアクリレート(5)。及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(10)を加えて継続して、30℃、3時間の条件で縮合反応を遂行する。ゾルゲル液を、基材となるトリアセテートフィルム上に塗設し、120℃で5分間加熱して硬化させる。
【0073】
《導電性パターン形成用組成物の製造及び導電性パターンの形成》
まず、上記のように得られた有機分散媒を蒸発させ乾固させた。
次に、乾固した有機分散媒を樹脂成分及び硬化剤と混合し、混合物を3本ロールにて混練して導電性パターン形成用組成物を調製した。より詳細には、樹脂成分としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828、油化シェルエポキシ製)と、ダイマー酸をグルシジルエステル化したエポキシ樹脂(YD−171、東都化成製)(以下、ダイマー酸由来のエポキシ樹脂とする)とを用いた。また、硬化剤としてはアミンダクト硬化剤(MY−24、味の素製)を用いた。また、上記混合物中において、乾固した有機分散媒を85重量%、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を3重量%、ダイマー酸由来のエポキシ樹脂を9重量%、アミンダクト硬化剤を3重量%とした。
次に、上記導電性パターン形成用組成物をガラスエポキシ基材上にスクリーン印刷し、オーブン中にて導電性パターン形成用組成物を20分、150℃に加熱して熱硬化させた。
形成された導電性パターンの線幅は30μmであり、比抵抗は7×10-5Ω・cmと良好な導電性を示した。
【0074】
《導電性パターン形成用組成物の製造及び導電性パターンの形成》
まず、上記のように得られた有機分散媒を蒸発させ乾固させた。
次に、乾固した有機分散媒をイソプロピルアルコールと混合し、導電性パターン形成用組成物を調整した。なお、混合物中において、上記乾固した有機分散媒の割合を25重量%とした。
次に、上記導電性パターン形成用組成物をガラスエポキシ基材上にインクジェット印刷し、オーブン中にて導電性パターン形成用組成物を20分、150℃に加熱して熱硬化させた。
形成された導電性パターンの線幅は10μmであり、比抵抗は8×10-5Ω・cmと良好な導電性を示した。
【0075】
《樹脂層》
上記導電性パターンを形成した基材(導電性パターン)上に、ベンゾフェノン(1)、ミヒラーケトン(1)、2―ヒドロキシプロピルアクリレート(15)、1、4−ブタンジオールジアクリレート(35.0)、トリメチロールプロパントリアクリレート(15)、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート(35)を塗設し、紫外線照射により硬化させ樹脂層を形成した。
【0076】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、従来と比較して微小な導電性微粒子によって微細な導電性パターンを形成することが可能となり、高密度な導電性パターンを形成でき、電磁波シールド性を高めることができる。特に、光透過性の基材に対して導電性パターンを形成する場合においても、導電性パターンの線幅が細いために視認されにくくなり、電磁波遮蔽シート自体の光透過性を高めることができる。
また、導電性パターン形成用組成物中の導電性微粒子を微小化することができるため、基材の表面に導電性パターン形成用組成物によって描画された液滴パターンに対し、従来よりも低温の加熱によって導電性を付与することができる。
また、導電性パターン形成用組成物中の導電性微粒子を分散剤によって確実に分散化することができる。
【0077】
請求項2記載の発明によれば、従来と比較して容易に導電性パターンを形成することができる。
請求項3記載の発明によれば、導電性パターンが外気に晒されることを防止でき、導電性パターンの酸化を抑制することができる。
請求項4記載の発明によれば、光硬化性樹脂を光によって確実に硬化させることができる。従って、導電性パターンを酸化させることなく、導電性パターンの上に樹脂層を形成することができる。
請求項5記載の発明によれば、電磁波遮蔽シートが光透過性を有する場合においても導電性パターンによってその光透過性が低下することを抑制することができる
【0078】
請求項記載の発明によれば、従来と比較して微小な導電性微粒子によって微細な導電性パターンを形成することが可能となり、高密度な導電性パターンを形成でき、電磁波シールド性を高めることができる。特に、光透過性の基材に対して導電性パターンを形成する場合においても、導電性パターンの線幅が細いために視認されにくくなり、電磁波遮蔽シート自体の光透過性を高めることができる。
また、導電性パターン形成用組成物中の導電性微粒子を微小化することができるため、基材の表面に導電性パターン形成用組成物によって描画された液滴パターンに対し、従来よりも低温の加熱によって導電性を付与することができる。
請求項記載の発明によれば、請求項記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
請求項記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
請求項記載の発明によれば、請求項3記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
請求項10記載の発明によれば、請求項5記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
請求項11記載の発明によれば、ノズル径が0.1μm〜10μmであるので、導電性パターンの線幅を20μm以下に形成することが容易に行える。
請求項12記載の発明によれば、導電性パターン形成用組成物中の導電性微粒子を分散剤によって確実に分散化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における電磁波遮蔽シートを表す側断面図である。
【符号の説明】
1 電磁波遮蔽シート
2 基材
3 磁性遮蔽層
4 導電性パターン
5 樹脂層

Claims (12)

  1. 基材と、
    前記基材の少なくとも一方の面に設けられた磁性遮蔽層と、
    前記磁性遮蔽層及び前記基材の少なくとも一方の面上に形成された導電性パターンとを備え、
    前記導電性パターンは、導電性微粒子及び分散剤を含んでなる導電性パターン形成用組成物によって形成され
    前記分散剤は、第3級アミン型モノマーを主鎖に含み、かつポリエーテル型の非イオン性のモノマーを側鎖に含むポリマーであり、
    前記導電性微粒子は、貴金属又は銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなることを特徴とする電磁波遮蔽シート。
  2. 請求項1記載の電磁波遮蔽シートにおいて、
    前記導電性パターンは、インクジェット方式によって導電性パターン形成用組成物を吐出することで形成されていることを特徴とする電磁波遮蔽シート。
  3. 請求項1又は2記載の電磁波遮蔽シートにおいて、
    前記導電性パターン上には、光硬化性樹脂からなる樹脂層が前記導電性パターンを覆うように設けられていることを特徴とする電磁波遮蔽シート。
  4. 請求項3記載の電磁波遮蔽シートにおいて、
    前記光硬化性樹脂は、光重合開始剤と、多官能アクリル系モノマー又は多官能アクリル系オリゴマーとを主成分として含有する樹脂であることを特徴とする電磁波遮蔽シート。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートにおいて、
    前記導電性パターンの線幅は、20μm以下であることを特徴とする電磁波遮蔽シート。
  6. 基材上に導電性パターンが形成された電磁波遮蔽シートの形成方法であって、
    磁性遮蔽層を形成するためのゾルゲル溶液を前記基材の少なくとも一方の面に塗設、硬化させて前記磁性遮蔽層を形成し、
    前記磁性遮蔽層及び前記基材の少なくとも一方の面上に、導電性微粒子及び分散剤を含んでなる導電性パターン形成用組成物を用いて液滴パターンを描画し、その後、前記液滴パターンを加熱して導電性を付与することで導電性パターンに変換することを特徴とする電磁波遮蔽シートの形成方法。
  7. 基材上に導電性パターンが形成された電磁波遮蔽シートの形成方法であって、
    前記基材の一面に、導電性微粒子及び分散剤を含んでなる導電性パターン形成用組成物を用いて液滴パターンを描画し、その後、前記液滴パターンを加熱して導電性を付与することで導電性パターンに変換してから、
    前記基材の前記導電性パターンが形成された面の裏面に、磁性遮蔽層を形成するためのゾルゲル溶液を塗設、硬化させて前記磁性遮蔽層を形成することを特徴とする電磁波遮蔽シートの形成方法。
  8. 請求項6又は7記載の電磁波遮蔽シートの形成方法において、
    前記液滴パターンは、インクジェット方式によって前記導電性パターン形成用組成物を吐出することにより形成されていることを特徴とする電磁波遮蔽シートの形成方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートの形成方法において、
    前記導電性パターン上に、光硬化性樹脂を塗設して、光を照射することにより硬化させて樹脂層を形成することを特徴とする電磁波遮蔽シートの形成方法。
  10. 請求項6〜9のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートの形成方法において、
    前記導電性パターンの線幅は、20μm以下であることを特徴とする電磁波遮蔽シートの形成方法。
  11. 請求項8〜10のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートの形成方法において、
    前記インクジェット方式におけるノズル径は、0.1μm〜10μmであることを特徴とする電磁波遮蔽シートの形成方法。
  12. 請求項6〜11のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートの形成方法において、
    前記分散剤は、第3級アミン型モノマーを主鎖に含み、かつポリエーテル型の非イオン性のモノマーを側鎖に含むポリマーであり、
    前記導電性微粒子は、貴金属又は銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなることを特徴とする電磁波遮蔽シートの形成方法。
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