JP4378202B2 - 水素貯蔵用複合シート体及びその製造方法 - Google Patents

水素貯蔵用複合シート体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、水素吸蔵合金微粉末を担持する複合シート体及びその製造方法に関する。
近年二次電池や燃料電池に用いる材料として水素吸蔵合金が注目されている。水素吸蔵合金は、周囲の温度を低下させるか周囲の水素圧力を上昇させることにより水素を吸収し、周囲の温度を上昇させるか周囲の水素圧力を低下させることにより水素を放出する特性を有しており、その特性を生かして、燃料電池等の水素貯蔵体、二次電池の電極材料、燃料電池の水素透過膜や水素透過電極等に用いられている。
水素吸蔵合金は、水素の吸収と放出を繰り返すと、結晶格子に歪みが生じて合金に多数の割れが発生し微粉化することが知られている。微粉化することで水素との接触面積が増加することから水素の吸収・放出作用が高まる反面、支持体から脱落して周囲に飛散したり、熱伝導性が悪化するといった問題点も指摘されている。
こうした問題点に対処するために、水素吸蔵合金に様々な処理を施すことが提案されている。例えば、特許文献1では、水素吸蔵合金材料粉末の表面を還元剤使用の自己触媒型の無電解鍍金法によってニッケル及び又は銅の多孔質金属膜で被覆し、この粉末を高熱伝導性の金属多孔体に充填し圧縮成形した水素吸蔵合金成形体が記載されている。また、特許文献2では、水素吸蔵合金用粉末の表面に導電性粉末及び亜酸化銅粉末が接合被覆され、そして全体が酸化防止剤で被覆されていることを特徴とする水素吸蔵合金用材料が記載されている。また、特許文献3では、水素吸蔵合金の粒子表面に金属メッキで被覆すると共に金属メッキ中に撥水性を有する樹脂を分散させて、金属メッキにより導電性を向上させると共に樹脂により他の粒子と結着するようにした点が記載されている。
こうして処理された水素吸蔵合金粉末をシート状に成形する方法としては、例えば、特許文献4では、無電解分散ニッケルメッキ法により、フッ素樹脂粉末とニッケルとの複合被覆メッキを形成した水素吸蔵合金粉末に、結着剤と導電剤と水とを添加したペーストを金属基板に塗布して電極材料とした点が記載されている。また、特許文献5では、表面に金属をメッキ又はコーティングした水素吸蔵合金粉末をシート状に成形し、薄い帯状金属と一緒に圧延して板状に成形する点が記載されている。
特公平3−50801号公報 特公平6−102802号公報 特開平5−159798号公報 特開平6−223824号公報 特開2001−11507号公報
上述した先行文献では、水素吸蔵合金の微粉化に対応するために、水素吸蔵合金粉末をいわゆるカプセル化して微粉化が進行しないようにしているが、このように粉末をカプセル化すると、粉末表面が被覆されるために水素の吸収・放出作用に影響を及ぼすことは避けられず、また微粉化に伴う水素吸蔵合金の表面積の増加による水素の吸収・放出作用の増大といったメリットが減殺されてしまう。さらに、粉末をカプセル化するための処理工程が必要となり、コストアップの要因となる。
そこで、本発明では、水素吸蔵合金の微粉化に伴う水素の吸収・放出作用の増大といったメリットを生かしつつ水素吸蔵合金微粉末の脱落や飛散を抑制し、さらにその製造を簡略化することができる複合シート体及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る水素貯蔵用複合シート体は、合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体と、前記シート基体に形成される空隙よりも粒径が大きく形成された水素吸蔵合金微粉末を用いて前記シート基体の表面に積層されて結着した水素吸蔵合金微粉末層と、前記シート体及び前記水素吸蔵合金微粉末層全体を被覆するように形成される多孔質金属メッキ層とからなることを特徴とする。
本発明に係る別の水素貯蔵用複合シート体は、合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体と、該シート基体の表面に形成されるとともに前記シート基体に形成される空隙よりも粒径が大きく形成された水素吸蔵合金微粉末を含む導電層と、前記シート体及び前記導電層全体を被覆するように形成される多孔質金属メッキ層とからなることを特徴とする。
さらに、上記の複合シート体の前記シート基体に形成される空隙は、前記水素吸蔵合金微粉末の粒径よりも小さく形成されていることを特徴とする。さらに、前記シート基体は、織布又は不織布である。また、上記複合シート体の前記多孔質金属メッキ層の金属は、Ni、Ni系合金、Cu、Cu系合金、Sn、Cr、Zn、Co、Ti、Al、Au、Ag、Pt、Pt系合金、Pd、Rh、Ruの群の中から選択されるひとつの金属である。さらに、前記多孔質金属メッキ層の金属は、Ni−P、Ni−B、Ni−Cu−P、Ni−Co−P、Ni−Cu−Bの群の中から選択されるひとつの金属である。さらに、前記多孔質金属メッキ層は、金属以外の微粒子を含む金属メッキ層である。さらに、前記微粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリスルフォン(PSU)、AS樹脂、ポリスチレン(PS)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ポリフェニレンエーテル(PFE)、メチルペンテン樹脂、メタクリル酸樹脂、炭素(C)、触媒担持微粒子、及び、熱硬化性樹脂の群の中から選択された少なくともひとつの微粒子である。
本発明に係る水素貯蔵用複合シート体の製造方法は、合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体の表面に当該シート基体に形成される空隙よりも粒径が大きく形成された水素吸蔵合金微粉末を積層して結着させ、金属化合物を溶解する溶液中で無電解メッキを施すことにより、前記シート基体及び前記水素吸蔵合金微粉末層全体を被覆するように金属メッキ層を形成し、前記金属メッキ層を多孔質化することを特徴とする。
本発明に係る別の水素貯蔵用複合シート体の製造方法は、合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体の表面に当該シート基体に形成される空隙よりも粒径が大きく形成された水素吸蔵合金微粉末を積層して結着させ、金属化合物を溶解すると共に金属以外の微粒子を分散させた溶液中で無電解メッキを施すことにより、前記シート基体及び前記水素吸蔵合金微粉末層全体を被覆するように金属以外の微粒子を含む金属メッキ層を形成することを特徴とする。
本発明に係るさらに別の水素貯蔵用複合シート体の製造方法は、合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体の表面に水素吸蔵合金微粉末を含む導電層を形成し、金属化合物を溶解する溶液中で無電解メッキを施すことにより、前記シート基体及び前記導電層全体を被覆するように金属メッキ層を形成し、前記金属メッキ層を多孔質化することを特徴とする。
本発明に係るさらに別の水素貯蔵用複合シート体の製造方法は、合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体の表面に水素吸蔵合金微粉末を含む導電層を形成し、金属化合物を溶解すると共に金属以外の微粒子を分散させた溶液中で無電解メッキを施すことにより、前記シート基体及び前記導電層全体を被覆するように金属以外の微粒子を含む金属メッキ層を形成することを特徴とする。
さらに、上記の製造方法において、前記導電層は、前記シート基体表面に塗布することで形成される。
本発明に係る複合シート体は、上記のような構成を有することで、シート基体に水素吸蔵合金微粉末を担持して全体を多孔質金属メッキ層で被覆するようにしているので、水素吸蔵合金微粉末の微粉化が進行してもシート基体から脱落したり飛散することが防止されるとともに、微粉化に伴う水素の吸収・放出作用が増大するようになり、急速な水素の吸収・放出動作にも対応することが可能となる。そして、シート基体が多孔質に形成されているので、金属メッキ層がシート基体内部にまで入り込んで水素吸蔵合金微粉末を密封するため、脱落や飛散に対する抑制効果をより高めることができる。
また、金属メッキ層は、多孔質に形成されており、ガス透過性及び導電性を備えており、水素吸蔵合金粉末が水素の吸収・放出作用を支障なく行うことが可能となる。
本発明に係る複合シート体の製造方法は、上記のような構成を有することで、多孔質に形成されたシート基体の表面に水素吸蔵合金微粉末を積層し、金属化合物を溶解する溶液中で無電解メッキを施すことにより、前記シート体及び前記水素吸蔵合金微粉末層全体を被覆するように金属メッキ層を形成し、前記金属メッキ層を多孔質化することで、簡単に複合シートを製造することができる。
また、本発明に係る別の複合シート体の製造方法は、上記のような構成を有することで、水素吸蔵合金を含む導電層をシート基体に形成して、全体に金属化合物を溶解すると共に金属以外の微粒子を分散させた溶液中で無電解メッキを施しているので、簡単に製造することができ、製造工程が簡略化されて製造コストを低減させることができる。
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態の断面図を模式的に示したものである。シート基体1の上面には、水素吸蔵合金微粉末20を含む粉末層2が積層されており、シート基体1及び粉末層2の全体を被覆するように多孔質金属メッキ層3が形成されている。
粉末層2は、シート基体1の表面に水素吸蔵合金微粉末20を積層してメッキ等により結着させるようにしてもよいし、予め水素吸蔵合金微粉末20を練り込んだ導電性ペーストにより積層して結着させるようにしてもよい。
シート基体1は、多孔質に形成されており、具体的には、メッシュ、紗等の織布、不織布、発泡体等が挙げられる。多孔質の孔の大きさは、水素吸蔵合金微粉末20の粒径よりも小さく設定されており、0.01μm〜1000μm、望ましくは1μm〜10μmに設定される。厚さはできるだけ薄いものが好ましく、簡単に湾曲できる程度の柔軟性を備えている。材質としては、合成樹脂、金属又はセラミック等の無機物、合成繊維、天然繊維、ガラス繊維等の無機繊維が挙げられる。また、金属繊維や、導電性を予め付与した繊維も用いることができる。
メッシュ、紗等の織布を用いると、孔の大きさを均等に形成することができる等多孔質の設計が容易に行うことができる。また、織布を用いると、細い糸で極めて薄いシート基体を構成することが可能となる。こうした薄いシート基体を用いることで柔軟性に富んだ複合シート体を得ることができる。
粉末層2は、水素吸蔵合金微粉末20を積層してメッキ処理により結着すれば、水素吸蔵合金微粉末20以外の物質が積層されないため、水素吸蔵合金微粉末20の性能がより発揮しやすい。また、導電性ペーストにより結着させる場合には、水素吸蔵合金微粉末20の他に導電材及び接着材が含まれており、導電材により導電層全体の導電性が確保され、接着材によりシート基体1への定着性を良好なものとする。
粉末層の層厚は、0.01〜1mm程度が好ましいが、これより薄く形成することもできる。水素吸蔵合金としては、以下に挙げるような従来公知の合金を用いることができ、粒径は0.01μm〜2mmのものを用いることができ、好ましくは0.1〜10μmのものがよい。
(1)AB5型(希土類系)合金
LaNi5、LaNi4Cu、LaNi4Al、LaNi2.5Co2.5、La0.8Nd0.2Ni2Co3、La0.7Nd0.2Ti0.1Ni2.5Co2.4Al0.1、La0.8Nd0.2Ni2.5Co2.4Si0.1、La0.9Zr0.1Ni4.5Al0.5、MmNi5(Mm=ミッシュメタル)、MmNi3.55Co0.75Mn0.4Al0.3、MmNi4.2Mn0.6Al0.2、MmNi3Co1.5Al0.5、MmBx(x=4.55〜4.76,B=Ni,Co,Mn,Al)。
(2)AB/A2B型(チタン系)合金
TiNi、Ti2Ni、TiMn1.5、Ti2Ni−TiNi基多成分合金(V,Cr,Zr,Mn,Co,Cu,FeなどでNiを部分置換 );Ti1-yZryNix(x=0.5〜1.45,y=0〜1)。
(3)AB2型(ラーベス相)合金
Ti2-xZrx4-yNiy、 Ti1-xCrx2-yNiy、 ZrV0.4Ni1.6、ZrMn0.6Cr0.2Ni1.2、 Ti17Zr1522Ni39Cr7、 LaNi2、 CeNi2
導電性ペーストに含まれる導電材としては、カーボンブラックが挙げられる。また、接着材としては、メチルセルロース、ポリビニルアルコールといったものが挙げられる。水素吸蔵合金微粉末20の添加量は、性能により調整すればよく、電池の電極材として用いる場合には、電極の特性に応じて適宜設定可能で、一般に容積比で50%〜95%を添加すればよい。
多孔質金属メッキ層3を構成する金属としては、Ni、Ni系合金、Cu、Cu系合金、Sn、Cr、Zn、Co、Ti、Al、Au、Ag、Pt、Pt系合金、Pd、Rh、Ruの群の中から選択される金属、又は、Ni−P、Ni−B、Ni−Cu−P、Ni−Co−P、Ni−Cu−Bといった合金の中から選択される。こうした金属を用いることで、物性のばらつきの少ない金属メッキ層とすることができる。そして、金属メッキ層であることから、熱伝導性に優れ、接触抵抗が小さく、水素吸蔵合金微粉末の酸化も抑制される。特に、Niは、耐食性が高く、水素の電気化学反応に対して触媒としても作用するので、高分子固体電解質型燃料電池としても好適である。
こうした金属を多孔質に形成する場合には、メッキ処理後多孔質に形成すればよい。多孔質に形成する場合には、例えば、炭酸カルシウム粉末やアルミニウム粉末を含ませてメッキ処理し、メッキ層を形成後酸性溶液又はアルカリ性溶液により粉末を溶出するようにすればよい。
また、上述した金属中に金属以外の微粒子を分散して含ませることで、多孔質金属メッキ層を構成することもできる。金属以外の微粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリスルフォン(PSU)、AS樹脂、ポリスチレン(PS)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ポリフェニレンエーテル(PFE)、メチルペンテン樹脂、メタクリル酸樹脂、炭素(C)、触媒担持微粒子、及び、熱硬化性樹脂の中から選択される。微粒子の粒径は、0.01μm〜500μmのものが好ましい。こうした化合物を微粒子として用いることで、金属メッキ層が多孔質に形成され、優れたガス透過性を確保できると共に、それぞれの化合物の特性を金属メッキ層に付与することができる。
次に、本実施形態に関する製造方法について説明する。まず、水素吸蔵合金微粉末は、インゴットを機械的に粉砕して分級し、粒径の揃ったものを使用する。そして、微粉末を公知の方法で脱脂し、活性化処理を行った後、シート基体1に積層する。
水素吸蔵合金微粉末をメッキによりシート基体1に結着させる場合には、図2に示すような公知のメッキ処理装置を用いるとよい。メッキ処理装置は、回転台10上にセルベース11を固定し、セルベース11上に、リング状の陰極板12をパッキングを介してカバー13により挟持固定して略円盤状のセルを構成している。このセル内にはメッキ液14が貯留されており、メッキ液14中には陽極15が挿入されている。陰極板12は回転台10を介してブラシ16により図示せぬ外部電源に接続されている。メッキ液14中に水素吸蔵合金粉末を入れ、回転台10を高速で回転(400rpm)させると、粉末は遠心力によりセルの外周部であるリング状陰極板12に押し付けられるように積層されるようになる。したがって、予め陰極板12の内面に沿ってシート基体を配置しておけば、シート基体上に粉末が層状に積層された状態に形成することができ、所定の厚みに積層された状態で、陽極15及び陰極板12の間を通電することで電解メッキ処理が行われてシート基体上に粉末が結着された状態で積層される。なお、電解メッキ処理を行う場合には、シート基体に予め導電性を付与しておく。この場合、水素吸蔵合金粉末がメッキ層により被覆されることから、メッキ層を多孔質化するとよい。多孔質化する方法としては、上述したように、金属以外の微粒子をメッキ層に含ませるようにすればよい。
また、水素吸蔵合金微粉末を導電材及び接着材と混合してペースト状に仕上げ、図3に示すように、ブレード4により均一な厚さになるようにシート基体1上全体に塗布して粉末層2として導電層を形成するようにしてもよい。ペーストをシート基体1に塗布する方法としては、ブレード以外の方法を用いてもよい。例えば、塗布ローラやスプレーを用いて行う方法でもよい。ペーストを塗布後シート基体1の表面にほぼ均一な層厚の導電層を形成することができる。
シート基体1に粉末層2を形成した後、無電解メッキにより金属メッキ層を形成する。無電解メッキを行う場合には、図4に示すように、メッキ槽5にメッキ液を貯留して粉末層2が形成されたシート基体1を浸漬することで行われる。
メッキ液には、炭酸カルシウム粉末又はアルミニウム粉末を適量添加しておき、メッキ処理後酸性溶液によりこれらの粉末を溶出してメッキ層を多孔質化する。また、メッキ液に、上述した微粒子を適量添加しておき、メッキ処理することで、多孔質な金属メッキ層を形成することができる。この製造方法であれば、メッキ処理により多孔質金属メッキ層が形成できるので、製造工程をより簡略化できる。
以上のように製造された複合シート体は、柔軟性に富んだものとなっており、例えば図5(a)に示すように、螺旋状に巻いた状態に形状を変更することも容易で、電極材料に好適である。また、図5(b)に示すように、予め容器状にシート基体を形成しておき、ペースト状の導電層を塗布して無電解メッキを施すことで、容器状の複合シート体とすることも可能である。本発明に係る複合シート体は、このように様々な形状に容易に形成することができる。
[例1]シート基体として、ポリエステル繊維で平織りしたメッシュ(300メッシュ;網目の大きさ30μm;厚さ55μm)を用いた。水素吸蔵合金微粉末として、MmNi3.55Co0.75Mn0.4Al0.3を機械粉砕し分級して平均粒径約40μmのものを用いた。水素吸蔵合金微粉末の重量に対して、導電材としてカーボンブラック粉末5%、接着材としてメチルセルロース水溶液(濃度1%)5%の重量比で混合撹拌してペースト状にし、シート基体表面全体にブレードにより塗布し、層厚約0.1mmの導電層を形成した。導電層を十分乾燥させた後、無電解ニッケルメッキを行った。メッキ液の浴組成及び条件は以下の通りである。
<メッキ液>
硫酸ニッケル 15g/リットル
次亜リン酸ナトリウム 14g/リットル
水酸化ナトリウム 8g/リットル
グリシン 20g/リットル
PTFE(粒径0.3μm) 15g/リットル
界面活性剤 0.5g/リットル
<条件>
pH 9.5
浴温 90℃
撹拌時間 40分
無電解メッキ処理を行った後、十分水洗して真空減圧乾燥を5時間行った。その結果形成された金属メッキ層の層厚は、平均1μmであった。金属メッキ層には、PTFEの微粒子が分散して含まれている。
[例2]シート基体として、銅メッキにより導電性を付与されたポリエステル繊維で平織りしたメッシュ(300メッシュ;網目の大きさ30μm;厚さ55μm)を用いた。水素吸蔵合金微粉末として、MmNi3.55Co0.75Mn0.4Al0.3を機械粉砕し分級して平均粒径約40μmのものを用いた。図2で説明したメッキ処理装置を用い、以下のメッキ液の浴組成及び条件で電解ニッケルメッキを行い、メッシュ上に層厚約0.1mmの粉末層を形成した。
<メッキ液>
Ni(NH2SO32・4H2O 350g/リットル
NiCl2・6H2O 45g/リットル
3BO3 40g/リットル
界面活性剤 1.0g/リットル
PTFE 100g/リットル
<条件>
pH 4.0
陰極電流密度 10A/dm2
温度 50℃
陽極 Ni板
攪拌 循環
メッキ時間 30分(通電時間15分)
粉末層は、PTFEが含まれたメッキ層によりメッシュに結着される。粉末層を十分乾燥させた後、メッシュ全体に無電解ニッケルメッキを行った。メッキ液の浴組成及び条件は以下の通りである。
<メッキ液>
硫酸ニッケル 15g/リットル
次亜リン酸ナトリウム 14g/リットル
水酸化ナトリウム 8g/リットル
グリシン 20g/リットル
炭酸カルシウム粉末(粒径1μm) 15g/リットル
<条件>
pH 9.5
浴温 60℃
撹拌時間 40分
こうして形成された金属メッキ層中の炭酸カルシウム粉末を酢酸水溶液により溶出して多孔質化した。
以上の製造工程により、厚さ約100μmの複合シート体を作成した。作成された複合シート体は柔軟性があり、簡単に巻き取ることができた。また、シート体の表面から水素吸蔵合金微粉末が飛散することはなかった。そして、金属メッキ層が多孔質化されているので、十分なガス透過性が確保されていた。
本発明に係る複合シート体は、燃料電池等の水素貯蔵体、二次電池の電極材料、燃料電池の水素透過膜や水素透過電極等に用いることができる。また、水素ガスセンサーや水素圧縮装置の材料としても好適である。
本実施形態に関する断面の模式図である。 製造装置に関する断面図である。 製造工程に関する説明図である。 製造工程に関する説明図である。 本実施形態を用いた物品形状を示す図である。
符号の説明
1 シート基体
2 粉末層
3 多孔質金属メッキ層
4 ブレード
5 メッキ槽
20 水素吸蔵合金微粉末

Claims (11)

  1. 合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体と、前記シート基体に形成される空隙よりも粒径が大きく形成された水素吸蔵合金微粉末を用いて前記シート基体の表面に積層されて結着した水素吸蔵合金微粉末層と、前記シート体及び前記水素吸蔵合金微粉末層全体を被覆するように形成される多孔質金属メッキ層とからなることを特徴とする水素貯蔵用複合シート体。
  2. 合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体と、該シート基体の表面に形成されるとともに前記シート基体に形成される空隙よりも粒径が大きく形成された水素吸蔵合金微粉末を含む導電層と、前記シート体及び前記導電層全体を被覆するように形成される多孔質金属メッキ層とからなることを特徴とする水素貯蔵用複合シート体。
  3. 前記多孔質金属メッキ層の金属は、Ni、Ni系合金、Cu、Cu系合金、Sn、Cr、Zn、Co、Ti、Al、Au、Ag、Pt、Pt系合金、Pd、Rh、Ruの群の中から選択されるひとつの金属である請求項1又は2に記載の水素貯蔵用複合シート体。
  4. 前記多孔質金属メッキ層の金属は、Ni−P、Ni−B、Ni−Cu−P、Ni−Co−P、Ni−Cu−Bの群の中から選択されるひとつの金属である請求項1から3のいずれかに記載の水素貯蔵用複合シート体。
  5. 前記多孔質金属メッキ層は、金属以外の微粒子を含む金属メッキ層であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水素貯蔵用複合シート体。
  6. 前記微粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリスルフォン(PSU)、AS樹脂、ポリスチレン(PS)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ポリフェニレンエーテル(PFE)、メチルペンテン樹脂、メタクリル酸樹脂、炭素(C)、触媒担持微粒子、及び、熱硬化性樹脂の群の中から選択された少なくともひとつの微粒子である請求項5に記載の水素貯蔵用複合シート体。
  7. 合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体の表面に当該シート基体に形成される空隙よりも粒径が大きく形成された水素吸蔵合金微粉末を積層して結着させ、金属化合物を溶解する溶液中で無電解メッキを施すことにより、前記シート基体及び前記水素吸蔵合金微粉末層全体を被覆するように金属メッキ層を形成し、前記金属メッキ層を多孔質化することを特徴とする水素貯蔵用複合シート体の製造方法。
  8. 合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体の表面に当該シート基体に形成される空隙よりも粒径が大きく形成された水素吸蔵合金微粉末を積層して結着させ、金属化合物を溶解すると共に金属以外の微粒子を分散させた溶液中で無電解メッキを施すことにより、前記シート基体及び前記水素吸蔵合金微粉末層全体を被覆するように金属以外の微粒子を含む金属メッキ層を形成することを特徴とする水素貯蔵用複合シート体の製造方法。
  9. 合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体の表面に水素吸蔵合金微粉末を含む導電層を形成し、金属化合物を溶解する溶液中で無電解メッキを施すことにより、前記シート基体及び前記導電層全体を被覆するように金属メッキ層を形成し、前記金属メッキ層を多孔質化することを特徴とする水素貯蔵用複合シート体の製造方法。
  10. 合成樹脂製の織布又は不織布を用いて多孔質に形成された柔軟性を有するシート基体の表面に水素吸蔵合金微粉末を含む導電層を形成し、金属化合物を溶解すると共に金属以外の微粒子を分散させた溶液中で無電解メッキを施すことにより、前記シート基体及び前記導電層全体を被覆するように金属以外の微粒子を含む金属メッキ層を形成することを特徴とする水素貯蔵用複合シート体の製造方法。
  11. 前記導電層は、前記シート基体表面に塗布することで形成される請求項9又は10に記載の水素貯蔵用複合シート体の製造方法。
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