JP4378004B2 - 色分解光学系及びそれを用いたテレビカメラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来の走査線数である625本(PAL方式)を超える高解像度の放送用テレビカメラに用いる色分解光学系およびそれを用いたテレビカメラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、カラーテレビカメラ等の撮像装置では、対物レンズからの光を色分解プリズムで青色、緑色、赤色の3つの色光に色分解した後、各々の色光に基づく被写体像を、対応する固体撮像素子面上に結像している。
【0003】
図4は、この様な従来のカラーテレビカメラの要部断面図である。同図において、Caはカメラの筐体、Leは対物レンズである。対物レンズLeは、カメラの筐体Caと接続するためのマウント部MTを有して交換可能であり、フランジ面Fを合わせて、カメラ筐体Caと接続されている。対物レンズLeは、不図示の被写体からの光束を集光し、色分解プリズムへと導光している。
【0004】
色分解プリズム1001の第1プリズムは、入射面1002より入射した対物レンズLeからの光を透過面1003に施した青反射ダイクロイック膜にて青色光のみを反射させ、残りを透過させる。反射した青色光は、入射面1002にて全反射し、出射面1004を射出して固体撮像素子1011Bに向かう。
【0005】
第1プリズムの透過面1003を透過した光は、空気間隙1005を通って第2プリズムの入射面1006より入射する。第2プリズムの透過面1007に施した赤反射ダイクロイック膜は、赤色光のみを反射し、残った緑色光を透過させる。反射した赤色光は、空気間隙1005と接する第2プリズムの入射面1006面にて全反射し、出射面1008を射出して固体撮像素子1011Rに向かう。
【0006】
第2プリズムの透過面1007を透過した緑色光は、出射面1010を射出し、固体撮像素子1011Gに向かう。このようにして、色分解プリズムは光束を分解する。
【0007】
プリズム系の形状は、特開昭60−42701号公報等に記載されるように、使用するプリズムのガラス(硝子)材の屈折率nおよびFno等の仕様により決定される。つまり、図4のように、第1プリズムの光入射面(1002)と、透過面のダイクロイック膜面(1003)との成す角をθ1、第2プリズムの光入射面(1006)と、透過面のダイクロイック膜面(1007)との成す角をθ2とすると、以下の条件式を満足しなければならない。
【0008】
θ1 ≦Sin-1(1/n)-Sin-1{1/(2n・Fno)} … (1)
2・θ1 ≧Sin-1(1/n)+Sin-1{1/(2n・Fno)} … (2)
2・θ2 ≧θ1+Sin-1(1/n)+Sin-1{1/(2n・Fno)} … (3)
ただし、条件式(1)は、ダイクロイック面1003で透過すべき波長領域光が全反射しないこと、条件式(2)は、ダイクロイック面1003で反射された波長領域光が入射面1002で全反射すること、条件式(3)は、ダイクロイック面1007で反射された波長領域光が入射面1006で全反射すること、のためにそれぞれ必要である。
【0009】
ここで、角θ1に注目すると、角θ1が存在できる範囲は、条件式(1),(2)より硝子材の屈折率とFnoから決定される。
【0010】
図5のグラフは、この事柄を示しており、硝子材の屈折率nをパラメータにして、Fnoと角θ1との関係を示している。例えば、n=1.5のグラフのAが条件(1)のグラフであり、Bのグラフが条件(2)のグラフである。このグラフより、式(1),(2)を同時に満足する角θ1の範囲は硝子材の屈折率nに関わらず、FnoがほぼF1.4より大きな範囲に限られることが分かる。即ち3個のプリズム系によって構成された色分解光学系では、F1.4付近が限界である。また、プリズムの硝子材の屈折率n=1.7の場合には、Aの条件(1)とBの条件(2)との交点は屈折率がn=1.5の場合よりも大きく、FnoがF1.4より僅かに大きい点である。
【0011】
図6のグラフ中Cは、対物レンズLeの径2/3″で、F1.4というほぼ限界のFnoにて第1プリズムに必要な最小の光路長(Lmin)を計算し、屈折率1.55の時の光路長を0とする基準に、それからの変化量を表わしたグラフである。
【0012】
条件としては、
Θ1は、式(1) の上限値と式(2) の下限値の中間値 … (4)
Fno は1.4 … (5)
とすると
Θ1=[3×Sin-1(1/n)-Sin-1{1/(2n・Fno)}]/4
となり、これと、
第1プリズムの射出面には走査方向の撮像サイズd1は6.6mm …(6)
プリズムの射出面から結像面までの距離を5mm … (7)
とから、対物レンズLeや第1乃至第3プリズムの形状や寸法、材質等が決定される。
【0013】
図8に示すように、撮像面より離れた位置(面)における有効光束長は、結像(撮像)面からの距離(空気換算長)とSin-1{1/(2・Fno)}の角度にて次式で表わせ、
(有効光束長)=d1+2× (撮像面からの距離) ×tan [Sin-1{1/(2・Fno)}] … (8)
の関係となる。
【0014】
これらの条件を使うと、
Lmin=(射出面の有効光束長)×sin (2×Θ1){ 2×cos( 2×Θ1)+1}… (9)
とすることができる。屈折率n=1.55の時のLは、18.347である。
【0015】
グラフから本質的に屈折率が高くなるほど色分解プリズム自体は小型化できることがわかる。
【0016】
放送分野に関する標準規格を作る任意団体の放送技術開発協議会(BTA)の高解像度のHDシステムの規定(放送技術開発協議会 技術資料BTA S−1005−A)においては、推奨の硝種として屈折率1.612としているため、ゴースト等を考慮したプリズムの光路長は、ほぼ34.0mmとなる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
放送用のテレビカメラ(以下、テレビカメラと略す)は、交換式のレンズを採用している。レンズの互換性を維持するため、レンズをテレビカメラに取り付けるためのレンズ取り付け面(F)から結像面までの空気換算長(以下、FB)が一定であるという取り決めが行われている。面Fと結像面の間のガラスの種類(屈折率)が変わっても、いつも撮像素子上にベストピントがとれるための、取り決めである。
【0018】
また、レンズと結像面の間のガラスの厚みが球面収差に影響するため、面Fと結像面の間のガラスの厚みも取り決められている。
【0019】
しかしながら、面Fと結像面の実際の(物理的な)距離(以下、FBr)は、プリズムの屈折率が変化することによって変化する。
【0020】
図7のグラフは、図6のグラフCを変化量としたものに、プリズムの屈折率が変化することによるFBr長の変化量のグラフDを付け加えたものである。変化量は屈折率1.55の時を0とし、そこからの伸び量として表した。
【0021】
図7よりわかるように、プリズムの屈折率をあげることにより、プリズムの光路長は短くなるものの、FBr長はより長くなるのである。
【0022】
最近のテレビカメラは、大衆の高画像への要求により高解像度を撮影できるものが求められている。しかし、高解像度の撮像素子は、その動作周波数が高くなるため、熱の放出も現行の2倍から3倍と非常に多い。さらに、特に放送用のテレビカメラはまだまだ大きく、高解像度になっても大型化が許されない状況である。ところが、カメラ筐体の大きさを現行と同じとして、プリズムの高屈折率化によるプリズムだけの小型化を図った場合、FBrが伸びてしまい、カメラ筐体内に収まりきれず、カメラ筐体を大型化せざるをえない問題が生じる。
【0023】
また、小型化の要望が強いハンドヘルドのテレビカメラにおいては、撮影時に十分な光量が与えられるとは限らないため、プリズムが通すことのできる光束は、より明るい光束を通さなければならず、Fnoを大きくできないという課題を持っている。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の色分解光学系は、走査線数が625本を超えるテレビカメラ装置に内蔵され且つ対物レンズと固体撮像素子の間の光路中に配置され、前記対物レンズ側から順に配置された第1のプリズム、第2のプリズム、第3のプリズムの3つのプリズムより構成される色分解プリズムであって、前記色分解プリズムは、F1.4の前記対物レンズの光束を通すことができ、前記第1のプリズム及び前記第2のプリズムの夫々は、それぞれ入射面及び出射面及び透過面を備えており、前記第1のプリズム及び前記第2のプリズムは、空気層を介して配置されており、前記第1のプリズム及び前記第2のプリズム及び前記第3のプリズムの3つのプリズムの夫々の屈折率neは、
1.55<ne<1.575
を満足し、且つ前記第1プリズムの前記入射面と前記透過面との頂角が26.5度であり、前記第2プリズムの前記入射面と前記透過面との頂角が39.75度であることを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、交換レンズの互換性を保ち、走査線数が625本を超える高解像度のテレビカメラ装置に内蔵され、対物レンズと固体撮像素子の間に配置し、対物レンズ側から第1のプリズム、第2のプリズム、第3のプリズムの3つのプリズムより構成されて3色分解とし、前記第1と前記第2のプリズムはそれぞれ入射面と出射面と透過面の3面を備え空気層を介して配置され、ほぼF1.4のレンズの光束を通す能力を有するプリズムであって、前記3つのプリズムの屈折率neはそれぞれ1.6より小さいことを特徴とする色分解光学系が内蔵されたことを特徴とする。
【0026】
前記光学系を使用することにより、プリズム自体の小型化を疎外するものの、テレビカメラシステム全体の大型化を防止しながら、テレビカメラを長時間安定に使用することが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明による実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0028】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による色分解光学系の要部断面図である。
【0029】
図1において、Leは対物レンズ、MTは対物レンズをカメラに接続するためのマウント部、Fは対物レンズとカメラを接続するフランジ面、Caはカメラ筐体、101は色分解プリズムである。
【0030】
色分解プリズムは、対物レンズ側より第1のプリズム、第2のプリズム、第3のプリズムから構成され、第1のプリズムと第2のプリズムの間には空気間隙105を有し、第2のプリズムと第3のプリズムは接着によって結合されている。
【0031】
対物レンズLeは、不図示の被写体からの光束を集光し、色分解プリズムへと導光している。なお、Pはプリント基板である。
【0032】
プリズム101の第1プリズムは、対物レンズLeのレンズ面にほぼ面して入射面102を有し、入射面102より入射したレンズからの光を、透過面103に施した青反射ダイクロイック膜にて青色光のみを反射させ、残りを透過させる。反射した青色光は、入射面102にて全反射し、出射面104を射出して固体撮像素子111Bに向かう。
【0033】
透過面103を透過した光は、空気間隙105を通って第2プリズムの入射面106より入射する。第2プリズムの透過面107に施した赤反射ダイクロイック膜は、赤色光のみを反射し、残った緑色光を透過させる。反射した赤色光は、空気間隙105と接する第2プリズムの入射面106面にて全反射し、出射面108を射出して固体撮像素子111Rに向かう。
【0034】
透過面107を透過した緑色光は、第3プリズムの入射面109に入射し、出射面110を射出し、固体撮像素子111Gに向かう。このようにして、色分解プリズムは光束を分解する。第3プリズムの入射面109は第2プリズムの透過面107と接して配置されており、その傾斜面に第2プリズムの透過面107と接している。
【0035】
また、第1プリズムの透過面103と第2プリズムの入射面106とは空気間隙105を介してほぼ平行して面している。そして、第1プリズムの透過面103は青色の波長成分だけを反射し、入射面102で全反射して出射面104から青色成分を出射する角度で形成され、入射面102と透過面103との角度を角θ1とする形状としている。また、第2プリズムにおいても、入射面106と透過面107との角度を角θ2とする形状としている。
【0036】
図2は、F1.4における屈折率nの1.54〜1.64と、(θ1max−θ1min)の関係をグラフ化したものである。(θ1max−θ1min)の値がマイナスになる屈折率の範囲においては、図1のプリズムの頂角θ1がF1.4を実現するための実範囲を持たないことを表わす。したがって、第1のプリズムと第2のプリズムの間にエアギャップを持つ色分解プリズムの場合、屈折率をn=1.6より小さくすることで、F1.4という大口径を実現できる。
【0037】
図3は、プリズムのe線に対する屈折率を1.574(実施例1)と、1.551(実施例2)として、ゴースト等を考慮して設計したプリズムと、従来例の屈折率1.612のプリズムの主な数値を表にしたものである。
【0038】
図3において、実施例1,2のそれぞれのプリズムの光路長はともに34.5mmとすることができた。従来例で示した屈折率1.612のプリズムの光路長34.0と比較してプリズムの長さが0.5ほど大きくなっている。しかし、FBrは、屈折率1.612の従来例を基準にすると、その変化量はそれぞれ約−0.5と約−0.8と、FBrを小さくすることができる。
【0039】
従来例で示した屈折率1.612のプリズムの光路長が34.0より1割程度小さく、従来例のプリズムの光路長が34.5より1割程度大きく設計されても、屈折率1.612のプリズムの光路長の分は、実施例の屈折率(実施例1では1.574、実施例2では1.551)に置き換わるので、FBrを小さくできることには変わりはない。
【0040】
図3の表中に、e線の分散を示しているが、実施例1、実施例2共に実施例で示す従来例の分散(46.5)の近傍に設定し、レンズの色収差に与える影響は従来例と変えないことが可能となっている。
【0041】
そして、好ましくは、プリズムの屈折率neを、1.55<ne<1.575、として、その分散νeを、42.5<νe<50.5、の硝子材を用いることが望ましい。また、前述の実施例のように、第1プリズムと第2プリズムの両頂角を、θ1=26.5度、θ2=39.75度とするとよい。
【0042】
また図3の表の最後に、第1プリズムの頂角(θ1)と第2プリズムの頂角(θ2)を示した。これらは、条件式(1),(2),(3)を考慮し、実施例と従来例で異なったものである。
【0043】
上述したように、本実施形態では、屈折率nを1.60より小さい値とすることが好ましいとしたが、あまりに小さいと色分解プリズムレンズの形態サイズが大きくなるなるので、小さい値にも限度があることは技術常識的に判断すればよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明のプリズムを使用することで、F1.4という大口径を実現しつつ、フランジ面から撮像面までの距離を小さく保つことができる。これにより、高解像度の撮像素子が多大な熱を出すようになっても、電気基板との距離を十分に保つことが可能であり、結果的にテレビカメラシステムの大型化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高解像度の撮像カメラの要部概略図である。
【図2】本発明の屈折率とプリズム頂角の存在範囲の関係図である。
【図3】本発明の実施例の屈折率を指標とする特性表である。
【図4】従来の技術を説明する要部概略図である。
【図5】従来例におけるFnoとプリズム頂角の関係図である。
【図6】従来例におけるFnoとプリズム光路長の関係図である。
【図7】従来例におけるFnoとフランジ面と結像面の実距離の関係図である。
【図8】従来例の条件を説明する図である。
【符号の説明】
101,1001 プリズム
102,1002 入射面
103,1003 透過面
104,1004 出射面
105,1005 空気間隙
106,1006 入射面
107,1007 透過面
108,1008 出射面
109,1009 入射面
110,1010 出射面
111B,R,G 撮像部
Le 結像レンズ
MT マウント部
F 接触部
Claims (3)
- 走査線数が625本を超えるテレビカメラ装置に内蔵され且つ対物レンズと固体撮像素子の間の光路中に配置され、前記対物レンズ側から順に配置された第1のプリズム、第2のプリズム、第3のプリズムの3つのプリズムより構成される色分解光学系であって、
前記色分解プリズムは、F1.4の前記対物レンズの光束を通すことができ、
前記第1のプリズム及び前記第2のプリズムの夫々は、それぞれ入射面及び出射面及び透過面を備えており、
前記第1のプリズム及び前記第2のプリズムは、空気層を介して配置されており、
前記第1のプリズム及び前記第2のプリズム及び前記第3のプリズムの3つのプリズムの夫々の屈折率neは、1.55<ne<1.575
を満足し、
前記第1プリズムの前記入射面と前記透過面との頂角が26.5度であり、
前記第2プリズムの前記入射面と前記透過面との頂角が39.75度であることを特徴とする色分解光学系。 - 前記色分解プリズムの分散νeが
42.5≦νe≦50.5
であることを特徴とする請求項1記載の色分解光学系。 - 請求項1又は2記載の色分解光学系及び前記固体撮像素子が内蔵されたテレビカメラ。
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