JP4374294B2 - 安全キャビネット - Google Patents

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本発明は、医療、製薬など遺伝子操作の産業分野において、微生物・病原体などの取り扱いにより発生する災害を防止する清浄作業台、いわゆるバイオハザード対策用安全キャビネットに関する。
従来、バイオハザード対策の人・環境と生物材料・病原体を物理的に隔離する一次バリアとして安全キャビネットが用いられている。安全キャビネットは一部に開口部を有する仕切られた空間で隔離性能(細菌試験性能)を有している。この安全キャビネットを外部の雑菌から試料を保護しつつ、人への感染防止を図りたい試料の生産工程などでは、各工程別に試料を安全キャビネットから取り出す必要があり、コンタミの可能性が生じていた。このこと改善した従来技術による安全キャビネットを実開昭59―143672号公報に示す。従来技術では、安全キャビネット側面に連結口を空け、複数台の安全キャビネットの連結口を閉空間で繋げることにより、隔離性能を持つ安全キャビネットの作業空間から試料を外に出すことなく、次の安全キャビネットへの受け渡しを可能としている。
実開昭59―143672号公報
従来技術の安全キャビネットの横断面構造図を図9に、連結構造図を図10に示す。送風機6より吹き出された空気は、圧力チャンバ18を通り、一部は循環用HEPAフィルタ5により細菌・ウイルスを除去され清浄空気として作業空間3に供給される。また。他の一部は排気用HEPAフィルタ4により細菌・ウイルスを除去され装置外で放出される。作業者は、前面開口部10より手を挿入し、実験材料を取り扱うことにより試料との感染を防止するとともに、実験材料の他の細菌とのコンタミも防止している。前記従来技術では、作業空間3の側面に開口部を設け、また、他の安全キャビネットの側面にも開口部を設け、その両方を渡り空間19で連結することにより実験中の試料を安全キャビネットの作業空間3から出すことなく、他の安全キャビネットの作業空間3に移動することが可能となる。また、作業空間3と連結空間19の間には、空間を仕切る目的で連結部の扉21が設けられている。
従来技術による安全キャビネットでは、作業空間3の側面が外気と同じ圧力であるため、渡り空間19と作業空間3の連結部扉21は、細菌・ウイルスの外部への漏洩を防止するため、密閉性を高める必要があった。
また、作業空間3と渡り空間19の連結部扉21は、密閉性を有する扉にするため、スライド方式ではなく、蝶番による開閉方式とし扉と作業空間側面の当たり面は気密性のあるパッキンを設ける必要があった。また蝶番方式の扉では、開閉時に作業空間3内の気流を乱すという不具合が生じていた。
本発明の目的は、連結型の安全キャビネットの連結部構造の簡素化と圧力制御による細菌・ウイルスの防止を図った安全キャビネットを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は以下のように装置を構成したものである。
本発明は、送風手段により第一の空気清浄手段を通して作業空間に清浄空気を供給する給気系と、前記作業空間に連結する循環流路から排気手段により第二の空気清浄手段を介して装置外へ空気を排出する排気系と、前記送風手段と、前記第一の空気清浄手段に連接する圧力チャンバと、前記作業空間前面に形成する前面シャッタと、前記前面シャッタ下部の作業空間に連接する前面開口部と、前記開口部下側の前記作業空間底面の前面に形成した第一の空気吸い込み口と、前記第一の空気吸い込み口と相反する作業空間壁面に形成した第二の空気吸い込み口と、を有し、前記循環流路が、前記作業空間下部、前記前面シャッタに相反する側及び前記作業空間の両側面に形成された安全キャビネットにおいて、同一に構成した他の安全キャビネットと循環流路空間を共用し、共用した循環流路内には、前記複数台の安全キャビネットの作業空間を連結する空間を有することを特徴とする。
また、作業空間を連結する空間の作業空間側に開閉可能な扉を有することを特徴とする。
本発明の実施により、作業空間内から感染の恐れのある実験中の材料を安全キャビネットから取り出すことなく、他の安全キャビネットに受け渡すことが可能な、バイオハザード対策用安全キャビネットを提供できる。
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8により説明する。
図1は、本発明の第1実施の形態を示す、安全キャビネット横断面構造図である。
図1において、作業者は、安全キャビネット1の前面開口部10から腕を挿入し、前面シャッタ9から作業空間3を覗き込み、作業空間3内で細菌・ウイルス15を取り扱った作業を行う。
前面開口部10から吸い込まれた空気13は、作業台2下部、作業空間3背面の循環流路7を通り、送風機6に吸い込まれる。この汚染された空気が通り送風機6の吸込み側の領域を負圧汚染プレナム14と言う。送風機6に吸い込まれた空気は、圧力チャンバ18で加圧され、一部は給気用HEPAフィルタ5により濾過され、清浄空気として作業空間3内に、他の一部は排気用HEPAフィルタ4により濾過され、清浄空気として装置外に排出される。作業空間3内に供給される吹き出し気流12は、作業空間3内を清浄化し、一部は前面吸込みスリット16から、他の一部は背面空気吸込み口17から吸い込まれ、循環流路7を通り、送風機6に吸い込まれる。
このHEPAフィルタによる空気清浄と、前面開口部などの気流の制御により、感染の可能性のある実験中の材料を実験室環境や作業者から隔離し、感染を防止している。
図2は、本発明の第1実施の形態を示す安全キャビネット断面構造図である。
2台の安全キャビネット1の本体ケース1aの一部は連結されている。連結された部分中には、2台の安全キャビネットの作業空間3を連結する形で、連結部渡り空間19を形成している。ここで、循環用HEPAフィルタ5、5’から吹き出された空気12、12’と前面開口部10から吸い込まれた空気13は、作業空間背面と両側面を通り送風機6,6‘に吸い込まれる。構成としては、安全キャビネット1側面にも循環流路7が形成されているため、作業空間3,3’の正面を除く3方向は、全て負圧汚染プレナム14,14’になっていることになる。この負圧汚染プレナム14,14’で作業空間3,3’を囲うにより、作業空間3の外壁に漏れが生じても、細菌・ウイルス15は、負圧汚染プレナム14,14’に吸い込まれ、再び送風機6,6’に入り、細菌・ウイルス15が安全キャビネット1外へ漏れる可能性が少なくなる。
2台の安全キャビネット1は、負圧汚染プレナム14で繋がっている。連結部渡り空間19は、この共用する負圧汚染プレナム14内に形成しているため、連結部渡り空間19から細菌・ウイルス15が安全キャビネット1外で漏れる可能性も低減される。
連結部渡り空間19の安全キャビネット1の作業空間3側には、連結部扉21を形成している。従来実施の形態では、この連結部扉21が取り付いている作業空間側壁面8の反作業空間側は、外気であるため、作業空間3内の細菌・ウイルス15が、連結部扉21の作業空間側壁面8取り付け部から漏れる可能性があり、連結部扉21の密閉性を高める必要があった。第一実施の形態では、連結部扉21の反作業空間側は負圧汚染プレナム14、あるいは、作業空間3同一の空気である連結部渡り空間19であるため、連結部扉21に密閉性がなく、細菌・ウイルス15が漏れたとしても、負圧汚染プレナム14に入り、送風機6により回収されるため、連結部扉21の構造を簡素化することが可能となる。
図3は、本発明の第2実施の形態を示す安全キャビネット断面構造図である。
図3において、第1実施の形態と同じく、連結部渡り空間19の内壁22の周囲は負圧汚染プレナム14になっている。この渡り空間内壁22に渡り空間内壁開口部22aを形成することにより、強制的に連結部渡り空間19内の空気を負圧汚染プレナム14内に流すものである。
これは、両側の作業空間3には、HEPAフィルタにより清浄化された吹き出し空気12が供給されているが、連結部渡り空間19内の空気は循環しないで淀んでいる。気流の流れがないため、一旦、連結部渡り空間19内に入り込んだ細菌・ウイルス15は、殺菌灯を照射するなどしなければ、取り除くことはできない。
第2実施の形態では、連結部渡り空間19内に、わずかな気流の流れを形成するため、渡り空間内壁22に開口部22aを形成したものである。開口部22aから吸い込まれた空気と同じ量だけ、連結部扉21のわずかな隙間から、両側の安全キャビネット作業空間3内の空気が、連結部渡り空間19内に入り込む。
図4は、本発明の第3実施の形態を示す安全キャビネット断面構造図である。
図4は、連結部渡り空間19の両側に連結されている安全キャビネット1の吹き出し気流12の吹き出し風速は、左右で異なる風速に設定している場合を示している。この風速設定により、遅い風速12aより速い風速12bを持つ安全キャビネット内の作業空間3内の圧力が高くなる。この圧力差を設けることにより、連結部扉21にわずかな隙間が生じた場合でも、気流は圧力の高い安全キャビネット作業空間3から、圧力の低い安全キャビネット作業空間3に移動することとなり、気流を一方向のみに制御することが可能となる。
図5は、本発明の第4実施の形態を示す安全キャビネットの断面構造図で、また、図6は、図5の安全キャビネットの正面図である。
図5において、4”は排気用HEPAフィルタ、5”は循環用HEPAフィルタ、6”は送風機、7”は循環流路、8”は作業空間内壁面、14”は負圧汚染プレナム、15は細菌・ウイルス、18”は圧力チャンバ、20”は吹出し口整流板である。また、図6において、9”は前面シャッタ、10”は前面開口部である。
図5及び図6において、一つの作業空間3に対し、2分割した全面シャッタ9を設けている。
作業空間3の上部には、吹出し整流板20“を介して2個の循環用HEPAフィルタ5”を有し、その各々のフィルタ5“の上部には、圧力チャンバ5”を設け、圧力チャンバ5“に設けられた送風機6”により送風する。
作業空間3内の空気は、作業空間3の左右の循環流路7を通って、上部の負圧汚染プレナム14に送られる。図面には記載していないが、背面側にも循環通路は存在する。
負圧汚染プレナム14に送られた空気は、送風機6により作業空間3に送られるものと、排気用HEPAフィルタ4“を介して安全キャビネット外へ排気されるものに分かれる。
第4の実施例の安全キャビネットは、横幅が略4m程度のものを考慮しており、前面シャッタ9の間に中間枠23を設けることにより、前面シャッタの大型化の対策を取っている。また、ここでは前面シャッタを2分割したものを記載しているが、1枚のものでも構わない。
また、図5において、HEPAフィルタを例えば略4m弱のものを製造することは困難であるため、従来のHEPAフィルタを直列に並べて配置することになる。このようにHEPAフィルタを並べた場合、作業空間内に清浄空気を均一に吹出すことが必要であるがHEPAフィルタの連結部の個所で均一性を欠く。従って本発明は、整流板の孔の大きさを連結部の個所付近で変化させて均一性を保つ。すなわちフィルタの連結部は吹出し空気が少ないので、整流板の孔は周囲より大きくすることで均一にする。
図7は、本発明の第5実施の形態を示す安全キャビネット連結部構造図である。
2台の安全キャビネットの本体ケース1aはフランジ部で連結している。連結部の本体内部側は負圧汚染プレナム14となっているため、フランジ部の連結が甘くとも、細菌・ウイルス15が漏れる可能性は少ない。
また、渡り空間内壁22と作業空間側壁面8の連結部も負圧汚染プレナムに接しているため、連結部から細菌・ウイルス15が漏れる可能性も少ない。したがって、連結部渡り空間19と作業空間3とを仕切る連結部扉21は、スライドして開閉するなど簡単な構造で対応することが可能となる。
図8は、本発明の第6実施の形態を示す、安全キャビネット連結部構造図である。
安全キャビネットの本体ケース1aにはフランジ部を設けていない。
作業空間内壁8や作業台2と繋がる形で、作業空間内壁延長板24を設け、それを安全キャビネットの本体ケース1a外で出し、そこにフランジ部を形成することにより、そこで、2台の安全キャビネットを連結している。作業空間内壁延長板24の更に、渡り空間19側には、渡り空間内壁22を形成している。作業空間内壁延長板24には、開口部を設け、作業空間内壁延長板24と渡り空間内壁22の間の空間を負圧汚染プレナム14に繋がる空間に形成している。
この構造により渡り空間内壁22に2台の安全キャビネット1の連結接続部が渡り空間内に出なくなり、綺麗な面での物品の受け渡しが可能となる。
本発明は、外部の雑菌から試料を保護しつつ、人への感染防止を図りたい試料の生産工程などでは、各工程別に試料を安全キャビネットから取り出すことなく、次の工程に試料を受け渡すことが可能となるバイオハザード対策用安全キャビネットを提供する。
本発明の第1実施の形態を示す、安全キャビネット横断面構造図である。 本発明の第1実施の形態を示す、安全キャビネット断面構造図である。 本発明の第2実施の形態を示す、安全キャビネット断面構造図である。 本発明の第3実施の形態を示す、安全キャビネット断面構造図である。 本発明の第4実施の形態を示す、安全キャビネット断面構造図である。 本発明の第4実施の形態を示す、安全キャビネット正面図である。 本発明の第5実施の形態を示す、安全キャビネット連結部構造図である。 本発明の第6実施の形態を示す、安全キャビネット連結部構造図である。 従来技術による安全キャビネット横断面構造図である。 従来技術による安全キャビネット断面構造図である。
符号の説明
1…安全キャビネット、 1a…本体ケース、 2…作業台
3…作業空間、 4…排気用HEPAフィルタ
5…給気用HEPAフィルタ、 6…送風機、 7…循環流路
8…作業空間側壁面、 9…前面シャッタ、 10…前面開口部
11…エアカーテン、 12…吹き出し気流、 13…流入気流
14…負圧汚染プレナム、 15…細菌・ウイルス、16…前面吸込みスリット
17…背面空気吸込み口、 18…圧力チャンバ、 19…連結部渡り空間
20…吹き出し口整流板、 21…連結部扉、 22…渡り空間内壁
22a…渡り空間内開口部、23…中間枠、24…作業空間外壁延長板

Claims (2)

  1. 送風手段により第一の空気清浄手段を通して作業空間に清浄空気を供給する給気系と、
    前記作業空間に連結する循環流路から排気手段により第二の空気清浄手段を介して装置外へ空気を排出する排気系と、
    前記送風手段と、
    前記第一の空気清浄手段に連接する圧力チャンバと、
    前記作業空間前面に形成する前面シャッタと、
    前記前面シャッタ下部の作業空間に連接する前面開口部と、
    前記開口部下側の前記作業空間底面の前面に形成した第一の空気吸い込み口と、
    前記第一の空気吸い込み口と相反する作業空間壁面に形成した第二の空気吸い込み口と、を有し、
    前記循環流路が、前記作業空間下部、前記前面シャッタに相反する側及び前記作業空間の両側面に形成された安全キャビネットにおいて、
    同一に構成した他の安全キャビネットと循環流路空間を共用し、共用した循環流路内には、前記複数台の安全キャビネットの作業空間を連結する空間を有することを特徴とする安全キャビネット。
  2. 請求項1記載の安全キャビネットにおいて、作業空間を連結する空間の作業空間側に開閉可能な扉を有することを特徴とする安全キャビネット。
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