本発明に係るファイバブラッググレーティング物理量計測装置およびファイバブラッググレーティング物理量計測方法の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るファイバブラッググレーティング物理量計測装置の第1の実施形態を示す構成図である。
ファイバブラッググレーティング(FBG)物理量計測装置20は、光源21に光ファイバ22の一端を接続し、この光ファイバ22に複数のFBG23を設けた構成である。この光ファイバ22は、光幹線22aに複数の光分岐器24を設けて構成され、各光分岐器24からは光分岐路22bが分岐する。そして、FBG23は各光分岐路22bに直列に設けられる。
また、光源21側の光分岐器24aには、反射光用光ファイバ22cが接続され、この反射光用光ファイバ22cの端部には光検出器25が接続される。さらに、この光検出器25と光源21は共通の制御部26と接続され、制御部26は信号処理装置27と接続される。
FBG23は、ファイバコア中にブラッグ回折格子を設けて構成され、温度、歪、振動、圧力、水位計測等の物理量に依存してブラッグ回折格子のピッチが変化するため、物理量に応じた特定波長帯のFBG反射光を反射する性質を有する。このため、FBG反射光の波長から物理量を求めることができる。そして、各FBG23は、互いに反射するFBG反射光の特定波長帯が相互に影響しないように各光分岐器24からの距離に応じて異なる特定波長帯となるように構成される。
光源21は、広帯域光源28、波長可変フィルタ29および光パルス化装置30で構成される。広帯域光源28および波長可変フィルタ29は、温度に敏感な光学機器に対して十分安定な温度範囲を提供する温度調整部31に設けられる。広帯域光源28は、広帯域の連続光(CW:Continuous Wave)を生成する機能を、波長可変フィルタ29は、広帯域光源28から広帯域連続光を受けて所定の波長帯域の光を選択的に透過させる機能を、光パルス化装置30は、波長可変フィルタ29から所定の波長帯域の光を受けてパルス光に変換する機能をそれぞれ有する。そして、光源21は、所定の波長帯域のパルス光を光ファイバ22に設けられた各FBG23に照射することができるように構成される。
光検出器25は、FBG23からのFBG反射光を受光して光−電気変換するとともに増幅整形して必要な信号強度と帯域幅の電気パルス信号として受信データを得る機能と、得られた受信データを制御部26に与える機能とを有する。
制御部26は、トリガ信号印加部32、プリスキャン部33、部分詳細スキャン部34、プリスキャンパラメータ設定部35、パルス積分回路36、ゲート信号発生部37、A/D変換装置38を備え、FBG反射光の波長走査範囲、すなわち波長可変フィルタ29が透過させる光の波長帯域や光パルス化装置30により生成されるパルス光の送信タイミングを光検出器25から受けた受信データに基づいて制御する機能を有する。この際、制御部26は、プリスキャンモードおよび部分詳細スキャンモードの2種類の制御モードにより波長可変フィルタ29および光パルス化装置30を制御するように構成される。
トリガ信号印加部32は、光パルス化装置30にトリガ信号を与えることにより、光源21から出射されるパルス光のタイミングを制御する機能と、トリガ信号のタイミング情報をゲート信号発生部37に与える機能とを有する。
プリスキャン部33は、プリスキャンモードによる波長走査を実行させるように波長可変フィルタ29を制御して各FBG7に所要の波長帯域の光を照射させる機能と、トリガ信号印加部32にプリスキャンモードによる波長走査のタイミング情報を与えることにより光パルス化装置30を制御させる機能とを有する。
また、プリスキャン部33は、プリスキャンモードによる波長走査で得られた受信データを光検出器25からパルス積分回路36、ゲート信号発生部37およびA/D変換装置38を介して受けて、着目するFBG7からのFBG反射光の波長領域中心を求める機能と求めた波長領域中心の両側に予め設定された所要の詳細走査点数を確保できるような区間を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する機能とを有する。
部分詳細スキャン部34は、プリスキャン部33により決定された部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲について部分詳細スキャンモードによる波長走査を実行させるように波長可変フィルタ29を制御して各FBG7に所要の波長帯域の光を照射させる機能と、トリガ信号印加部32に部分詳細スキャンモードによる波長走査のタイミング情報を与えることにより光パルス化装置30を制御させる機能とを有する。また、部分詳細スキャン部34は、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データを信号処理装置27に与える機能を有する。
プリスキャンパラメータ設定部35は、プリスキャンモードによる波長走査の際のスキャン範囲や走査点の間隔(スキャン間隔)等のスキャン条件を設定する機能と、設定したスキャン条件をプリスキャン部33に与える機能とを有する。
この際、プリスキャンモードによる波長走査の際のスキャン範囲は、部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲よりも広く、かつ、プリスキャンモードによる波長走査における走査点の間隔(スキャン間隔)は部分詳細スキャンモードによる波長走査における走査点の間隔(スキャン間隔)よりも広い間隔とされる。
図2は図1に示すプリスキャン部33がプリスキャンモードによる波長走査を実行させる際のスキャン間隔と、部分詳細スキャン部34が部分詳細スキャンモードによる波長走査を実行させる際のスキャン間隔との関係を示す概念図である。
図2において、縦軸は光検出器25において受光されたFBG反射光の光強度Yiを示し、横軸は光検出器25において受光されたFBG反射光の波長Xiを示す。また図2中において、実線は着目するFBG7からのFBG反射光のスペクトルA1を、点線は部分詳細スキャンモードによる波長走査の走査点A2を、一点鎖線はプリスキャンモードによる波長走査の走査点A3を、二点鎖線は着目するFBG7の設計波長範囲A4をそれぞれ示す。
図2に示すように、プリスキャンパラメータ設定部35は、プリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲A5を、例えばFBG7の設計波長範囲A4全体として設定する。さらに、プリスキャンパラメータ設定部35は、プリスキャンモードによる波長走査の走査点の間隔(スキャン間隔)A6を、FBG反射光の波長領域中心A7、すなわちFBG反射光のスペクトルA1の最大値を求めることができる間隔に設定する。このため、プリスキャンパラメータ設定部35が設定するプリスキャンモードによる波長走査の走査点の間隔(スキャン間隔)A6は、FBG反射光のスペクトルA1上に少なくとも2つの走査点A3が存在するような間隔であればよい。換言すれば、プリスキャンモードによる波長走査の走査点の間隔(スキャン間隔)A6は、FBG反射光のスペクトルA1における分布幅A1dの半値以下であればよい。
一方、部分詳細スキャンモードによる波長走査は、プリスキャンモードによる波長走査で求められた波長領域中心A7から両側に物理量計測の要求精度に応じた走査点の数が確保できる区間として決定された波長走査範囲A8について実行される。この際、部分詳細スキャンモードによる波長走査の走査点の間隔(スキャン間隔)A9は、物理量計測の要求精度に応じた間隔とされる。
図2は、FBG反射光のスペクトルA1上にプリスキャンモードによる波長走査の2つの走査点A3がある場合において、2走査点A3上の受信データに基づいて求めたFBG反射光の波長領域中心A7から両側に部分詳細スキャンモードによる波長走査の波長走査範囲A8を決定した場合の例である。
一方、制御部26のパルス積分回路36は、ボックスカー積分器やゲーテッドインテグレータ等の回路で構成され、光検出器25からFBG反射光の電気パルス信号として出力された受信データを受けて受信データのパルス波高に比例したパルス面積を得ることによりノイズ低減処理を実行する機能と、FBG反射光のパルス列で構成されるノイズ低減処理後の受信データをゲート信号発生部37に与える機能とを有する。
ゲート信号発生部37は、時間ゲートを設定することによりパルス積分回路36から受けたFBG反射光のパルス列から着目するFBG7からのFBG反射光の電気パルス信号を抽出する機能と、抽出したFBG反射光の電気パルス信号を受信データとしてA/D変換装置38に与える機能とを有する。すなわち、ゲート信号発生部37は、トリガ信号印加部32から受けたトリガ信号のタイミング情報に基づいて、着目するFBG7からのFBG反射光が光検出器25において受光されるタイミングに対応するように所要の遅延時間を伴う時間ゲート信号を発生させて、時間ゲート信号がアクティブな間における電気パルス信号のみを検出するように構成される。
A/D変換装置38は、ゲート信号発生部37から着目するFBG7からのFBG反射光の受信データを受けてA/D変換してプリスキャン部33または部分詳細スキャン部34に与える機能を有する。
一方、信号処理装置27は、波長中心計算部39と物理量変換部40とを有する。波長中心計算部39は、制御部26の部分詳細スキャン部34から部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データを受けて、着目するFBG7からのFBG反射光の波長領域中心を求める機能を備える。波長中心計算部39がFBG反射光の波長領域中心を求める方法としては、例えばFBG反射光の受信データであるスペクトルの分布を二次式等の高次式にフィッティングしてスペクトルの変曲点や最大値を求める方法が挙げられる。
物理量変換部40はFBG反射光の波長領域中心を物理量に変換する機能を備える。また、FBG物理量計測装置20により経時的に変換する物理量をダイナミック計測する場合には、物理量変換部40には、次の波長走査の開始指令を制御部26に与える機能が備えられる。
次に、FBG物理量計測装置20の作用について説明する。
図3は図1に示すFBG物理量計測装置20により物理量を計測する際の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
まず、ステップS1において、プリスキャンパラメータ設定部35が、プリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲Rを着目するFBG7の設計波長範囲全体に設定する。さらに、プリスキャンパラメータ設定部35により、プリスキャンモードによる波長走査のスキャン間隔が、スキャン範囲Rを設定値Nで割った値に設定される。ここで、設定値Nは、スキャン間隔R/Nの値がFBG反射光のスペクトルの分布幅の半値以下となるように設定される。そして、プリスキャンパラメータ設定部35は設定したプリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲Rおよびスキャン間隔R/Nをプリスキャン部33に与える。
次に、ステップS2において、プリスキャンモードによる波長走査が任意数回実行される。すなわち、プリスキャン部33が、プリスキャンパラメータ設定部35から受けたプリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲Rについて波長走査を実行させるように波長可変フィルタ29を制御する。さらに、プリスキャン部33は、光源21から出射されるパルス光のタイミングを制御するようにトリガ信号印加部32にトリガ信号の印加指令を与える。
一方、広帯域光源28からは連続光が波長可変フィルタ29に与えられる。そして、波長可変フィルタ29は、スキャン範囲Rに相当する波長帯の連続光を選択的に透過させて光パルス化装置30に与える。光パルス化装置30は、トリガ信号印加部32から受けたトリガ信号に対応するタイミングで、スキャン範囲Rの波長帯の連続光をパルス光に変換して光ファイバ22内に送信する。
このため、スキャン範囲Rの波長帯のパルス光は、光幹線22aを伝播して各光分岐器24において分岐し、それぞれ光分岐路22bを伝播して光分岐路22b上に直列に設けられたFBG23に照射される。ここで、パルス光の波長帯は、着目するFBG23の設計波長範囲に設定されているため、着目するFBG23と同一の設計波長範囲の各FBG23から、温度等の物理量に応じた波長帯のFBG反射光が生じる。
FBG23において生じたFBG反射光は、再び光分岐路22b、光分岐器24、光幹線22aを伝播して光源21側の光分岐器24aから反射光用光ファイバ22cに導かれる。そして、反射光用光ファイバ22cに導かれたFBG反射光は、光検出器25において受光され、光−電気変換により電気信号の受信データとなって制御部26のパルス積分回路36に与えられる。
パルス積分回路36は、光検出器25からFBG反射光の電気パルス信号として出力された受信データを受けて受信データのパルス波高に比例したパルス面積を得ることによりノイズ低減処理を実行した後、受信データをゲート信号発生部37に与える。
そして、ゲート信号発生部37は、トリガ信号印加部32から受けたタイミング情報に基づいて、着目するFBG7の位置に応じて一定の遅延時間を伴う時間ゲート信号を設定することによりパルス積分回路36から受けたFBG反射光のパルス列から着目するFBG7からのFBG反射光の電気パルス信号を抽出し、抽出したFBG反射光の電気パルス信号を受信データとしてA/D変換装置38に与える。
さらに、A/D変換装置38は、ゲート信号発生部37から受けた受信データをA/D変換してプリスキャン部33に与える。
尚、計算精度を維持するためにプリスキャンモードによる波長走査が複数回実行される場合には、同様な手順により繰り返しFBG反射光の受信データがプリスキャン部33に与えられる。
次に、ステップS3において、プリスキャン部33は、計算精度を維持するために十分なFBG反射光の受信データが得られると、FBG反射光の波長領域中心を求め、求めた波長領域中心の両側に予め設定された所要の詳細走査点数を確保できるような区間を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する。そして、プリスキャン部33は、決定した部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を部分詳細スキャン部34に与える。
このため、ステップS4において、部分詳細スキャンモードによる波長走査が任意数回実行される。すなわち、部分詳細スキャン部34が、部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲について波長走査を実行させるように波長可変フィルタ29を制御する。さらに、部分詳細スキャン部34は、光源21から出射されるパルス光のタイミングを制御するようにトリガ信号印加部32にトリガ信号の印加指令を与える。
一方、広帯域光源28から連続光が波長可変フィルタ29に与えられる。そして、波長可変フィルタ29は、部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲に相当する波長帯の連続光を選択的に透過させて光パルス化装置30に与え、光パルス化装置30は、部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲の波長帯の連続光をパルス光に変換して光ファイバ22内に送信する。
このためプリスキャンモードによる波長走査の場合と同様に、部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲についてのFBG反射光の受信データが部分詳細スキャン部34に与えられる。さらに、部分詳細スキャン部34は、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データを信号処理装置27の波長中心計算部39に与える。
このため、ステップS5において、波長中心計算部39は、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データに基づいて、着目するFBG7からのFBG反射光の波長領域中心を求めて物理量変換部40に与える。
さらに、ステップS6において、物理量変換部40は、波長中心計算部39から受けたFBG反射光の波長領域中心を物理量に変換する。このため、着目するFBG23近傍における温度等の物理量を求めることができる。そして、物理量変換部40は、次の波長走査の開始指令を制御部26や光源21に与え、再びステップS2からステップS6までの手順により各時刻における物理量が計測される。
以上のようなFBG物理量計測装置20によれば、着目するFBG23の設計波長範囲全体を物理量の要求精度に応じたスキャン間隔で走査することなく要求精度の物理量を取得することができる。このため、FBG物理量計測装置20によれば、物理量の測定精度を確保しつつより短時間で多点における物理量を計測することが可能となり、物理量の測定速度や測定インターバルを高速化させることができる。
図4は本発明に係るFBG物理量計測装置の第2の実施形態を示す構成図である。
図4に示された、FBG物理量計測装置20Aでは、信号処理装置27に波長判定部50を設けた構成が図1に示すFBG物理量計測装置20と相違する。他の構成および作用については図1に示すFBG物理量計測装置20と実質的に異ならないため信号処理装置27と制御部26のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
FBG物理量計測装置20Aの信号処理装置27は、波長中心計算部39、波長判定部50および物理量変換部40を有する。
波長中心計算部39は、制御部26の部分詳細スキャン部34から部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データを受けて、着目するFBG7からのFBG反射光の波長領域中心を求める機能と、求めたFBG反射光の波長領域中心を波長判定部50に与える機能とを有する。
ここで、プリスキャン部33により決定された部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲が適切である場合には、部分詳細スキャン部34により得られるFBG反射光のスペクトルは正常となり、適切なFBG反射光の波長領域中心が求めることができるが、プリスキャン部33により決定された部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲が何らかの原因で不適切である場合には、部分詳細スキャン部34により得られるFBG反射光のスペクトルが異常となり、FBG反射光の波長領域中心そのものを適切に求めることができない場合がある。
そこで、FBG反射光の波長領域中心を求めることができない場合には、波長中心計算部39がその旨を波長判定部50に通知するようにされる。
波長判定部50は、波長中心計算部39からFBG反射光の波長領域中心を受けて、FBG反射光の波長領域中心が適切な値であるか否かを判定する機能と、FBG反射光の波長領域中心が適切な値であると判定した場合には、FBG反射光の波長領域中心を物理量変換部40に与える一方、FBG反射光の波長領域中心が適切な値でないと判定した場合には、プリスキャンパラメータ設定部35にプリスキャンモードによる波長走査のスキャン条件の再設定指令を与える機能を有する。
ここで、波長判定部50によるFBG反射光の波長領域中心の適否の判定方法としては、FBG反射光の波長領域中心が部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲にあるか否かを判定する方法が挙げられる。すなわち、部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲が何らかの原因で不適切な場合には、波長走査範囲がずれており波長中心計算部39により計算されたFBG反射光の波長領域中心、すなわちFBG反射光のスペクトルの最大値や変曲点は波長走査範囲外となる。そこで、FBG反射光のスペクトルの最大値や変曲点が波長走査範囲外であれば、波長判定部50は、FBG反射光の波長領域中心が不適切と判定することができる。
また、波長判定部50が、波長中心計算部39からFBG反射光の波長領域中心を求めることができない旨の通知を受けた場合にもFBG反射光の波長領域中心が不適切と判定することができる。
物理量変換部40は、波長判定部50から受けたFBG反射光の波長領域中心を物理量に変換する機能と、物理量をダイナミック計測する場合には、次の部分詳細スキャンモードによる波長走査の開始指令を波長走査範囲とともに部分詳細スキャン部34に与える機能とを有する。
このため、部分詳細スキャン部34は、FGB反射光の波長領域中心が波長判定部50により適切な値であると判定された場合には、前回の部分詳細スキャンモードの波長走査範囲で次回の部分詳細スキャンモードによる波長走査を実行させるように波長可変フィルタ29を制御するようにされる。
次に、FBG物理量計測装置20Aの作用について説明する。
図5は図4に示すFBG物理量計測装置20Aにより物理量を計測する際の手順を示すフローチャートである。尚、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示し、図3と同等なステップについては同符合を付して説明を省略する。
まず、ステップS1からステップS5において、図3に示す手順と同様な手順により、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データに基づいて、着目するFBG7からのFBG反射光の波長領域中心が計算される。そして、波長中心計算部39は、FBG反射光の波長領域中心を波長判定部50に与える。
次に、ステップS10において、波長判定部50は、FBG反射光の波長領域中心が部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲内であるか否かを基準として、FBG反射光の波長領域中心が適切な値であるか否かを判定する。
そして、FBG反射光の波長領域中心が適切な値でないと判定された場合には、ステップS11において、波長判定部50は、プリスキャンパラメータ設定部35にプリスキャンモードによる波長走査のスキャン条件の再設定指令を与える。
このため、再びステップS1からステップS5において、新たなスキャン条件でプリスキャンモードによる波長走査が実行された後、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データに基づいて、着目するFBG7からのFBG反射光の波長領域中心が計算される。そして、波長中心計算部39は、FBG反射光の波長領域中心を波長判定部50に与え、波長判定部50はFBG反射光の波長領域中心が適切な値であるか否かを判定する。
尚、スキャン条件の再設定方法としては、次第にスキャン間隔を小さくする方法、走査点の位置をシフトさせる方法、スキャン範囲を次第に広く設定する方法等の方法が挙げられる。
この結果、FBG反射光の波長領域中心が適切な値となるまで繰返しステップS1からステップS5において、新たなスキャン条件でプリスキャンモードによる波長走査が実行された後、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データに基づいて、着目するFBG7からのFBG反射光の波長領域中心が計算される。
一方、FBG反射光の波長領域中心が適切な値であると判定された場合には、波長判定部50が、FBG反射光の波長領域中心を物理量変換部40に与える。
このため、ステップS6において、物理量変換部40は、波長中心計算部39から受けたFBG反射光の波長領域中心を物理量に変換する。このため、着目するFBG23近傍における温度等の物理量を求めることができる。さらに、物理量変換部40は、次の波長走査の開始指令を部分詳細スキャン部34に与える。このため、既にプリスキャン部33により決定された部分詳細スキャンモードの波長走査範囲について部分詳細スキャン部34が部分詳細スキャンモードによる波長走査を繰返し実行させて物理量の経時的な変化が測定される。
以上のようなFBG物理量計測装置20Aによれば、図1に示すFBG物理量計測装置20と同様な効果に加え、プリスキャンモードのスキャン条件とともに部分詳細スキャンモードの波長走査範囲が不適切で、FGB反射光の波長領域中心が不適切な値となっても、自動的にプリスキャンモードのスキャン条件を再設定して適切なFGB反射光の波長領域中心を求める構成であるため、より安定して物理量を計測することができる。
さらに、FBG物理量計測装置20Aによれば、一旦適切なFGB反射光の波長領域中心を求めることができた場合には、再度プリスキャンモードによる波長走査を実行することなく、既に決定した部分詳細スキャンモードの波長走査範囲について波長走査するため、より短時間で物理量を計測することができる。
図6は本発明に係るFBG物理量計測装置の第3の実施形態を示す構成図である。
図6に示された、FBG物理量計測装置20Bでは、信号処理装置27に走査範囲更新部60を設けた構成が図4に示すFBG物理量計測装置20Aと相違する。他の構成および作用については図4に示すFBG物理量計測装置20Aと実質的に異ならないため信号処理装置27と制御部26のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
FBG物理量計測装置20Bの信号処理装置27は、波長中心計算部39、波長判定部50、物理量変換部40およびを有する。
波長中心計算部39および波長判定部50は、図4に示すFBG物理量計測装置20Aの波長中心計算部39および波長判定部50と同様な機能を有する。
物理量変換部40は、波長判定部50から受けたFBG反射光の波長領域中心を物理量に変換する機能と、物理量をダイナミック計測する場合には、次の部分詳細スキャンモードによる波長走査の範囲設定指令を走査範囲更新部60に与える機能とを有する。
走査範囲更新部60は、波長判定部50から受けたFBG反射光の波長領域中心の両側に予め設定された所要の詳細走査点数を確保できるような区間を次回の部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する機能と、決定した部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を部分詳細スキャン部34に与えて部分詳細スキャンモードにおける波長走査を実行させる機能とを有する。
次に、FBG物理量計測装置20Bの作用について説明する。
図7は図6に示すFBG物理量計測装置20Bにより物理量を計測する際の手順を示すフローチャートである。尚、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示し、図5と同等なステップについては同符合を付して説明を省略する。
まず、ステップS1からステップS6、ステップS10およびステップS11において、図5に示す手順と同様な手順により、適切なFBG反射光の波長領域中心が計算されて物理量に変換される。このため、着目するFBG23近傍における温度等の物理量を求めることができる。さらに、物理量変換部40は、次の部分詳細スキャンモードによる波長走査の範囲設定指令を走査範囲更新部60に与える。
次に、ステップS20において、走査範囲更新部60は、波長判定部50からFBG反射光の波長領域中心を受けて、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の波長領域中心の両側に予め設定された所要の詳細走査点数を確保できるような区間を次の部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する。さらに、走査範囲更新部60は、決定した部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を部分詳細スキャンモードにおける波長走査の開始指令とともに部分詳細スキャン部34に与える。
このため、再びステップS4から部分詳細スキャンモードによる波長走査が実行されて物理量が繰返し経時的に計測され、ステップS20において随時次の部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲が更新される。
以上のようなFBG物理量計測装置20Bによれば、図4に示すFBG物理量計測装置20Aと同様な効果に加え、より適切な部分詳細スキャンモードの波長走査範囲を決定することができる。特に、FGBの波長領域中心が経時的に変化するような場合であっても、FGBの波長領域中心の変化に追従して次の部分詳細スキャンモードの波長走査範囲を決定することができる。このため、FGBの波長領域中心が経時的に変化するような場合であっても、FGBの波長領域中心の値が不適切となる確率を低減させることができる。
図8は本発明に係るFBG物理量計測装置の第4の実施形態を示す構成図である。
図8に示された、FBG物理量計測装置20Cでは、プリスキャン部33をプリスキャン実行部70、データ判定部71、走査範囲決定部72およびプリスキャン条件設定部73で構成した点が図1に示すFBG物理量計測装置20と相違する。他の構成および作用については図1に示すFBG物理量計測装置20と実質的に異ならないためプリスキャン部33およびプリスキャン部33と関連する構成のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
FBG物理量計測装置20Cのプリスキャン部33は、プリスキャン実行部70、データ判定部71、走査範囲決定部72およびプリスキャン条件設定部73を有する。
プリスキャン実行部70は、プリスキャンパラメータ設定部35あるいはプリスキャン条件設定部73から受けたスキャン範囲Rやスキャン間隔等のスキャン条件によりプリスキャンモードによる波長走査を実行させるように波長可変フィルタ29を制御して各FBG7に一定の波長帯域の光を照射させる機能と、トリガ信号印加部32にプリスキャンモードによる波長走査のタイミング情報を与えることにより光パルス化装置30を制御させる機能とを有する。
データ判定部71は、プリスキャンモードによる波長走査で得られた光強度を示す各受信データを光検出器25から受けて、各受信データのうち2番目に大きい光強度と3番目に大きい光強度との差が予め設定された閾値以下であるか否かを判定する機能と、2番目と3番目に大きい光強度の差が予め設定された閾値以下であると判定した場合には、2番目および3番目に大きい光強度に対応する受信データの双方または1番大きい光強度に対応する受信データを走査範囲決定部72に与える一方、2番目と3番目に大きい光強度の差が予め設定された閾値以下でないと判定した場合には、1番目および2番目に大きい光強度に対応する受信データの双方をプリスキャン条件設定部73に与える機能を有する。
走査範囲決定部72は、データ判定部71から受けた受信データに基づいて部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を決定する機能と、決定した波長走査範囲を部分詳細スキャン部34に与える機能とを有する。走査範囲決定部72は、例えば1番大きい光強度に対応する波長を中心として予め設定された所要の詳細走査点数を確保できるような区間を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定したり、2番目と3番目に大きい光強度にそれぞれ対応する2つの波長間に一定の値を加算または乗算した区間を波長走査範囲として決定するように構成される。
プリスキャン条件設定部73は、データ判定部71から受けた受信データに基づいてプリスキャンモードにおけるスキャン範囲Rやスキャン間隔等のスキャン条件を再設定する機能と、再設定したスキャン条件をプリスキャン実行部70に与えることによりプリスキャンモードにおける波長走査を再度実行させる機能とを有する。プリスキャン条件設定部73は、例えば1番目および2番目に大きい光強度にそれぞれ対応する2つの波長間に一定の値を加算または乗算した区間をプリスキャンモードにおけるスキャン範囲Rとして設定するとともに、設定したスキャン範囲Rに少なくとも3つの走査点が存在するようにスキャン間隔を設定するように構成される。
次に、FBG物理量計測装置20Cの作用について説明する。
図9は図8に示すFBG物理量計測装置20Cにより部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を決定する際の手順を示すフローチャートである。尚、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示し、図3と同等なステップについては同符合を付して説明を省略する。
まず、ステップS1において、プリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲Rとスキャン間隔R/Nとがプリスキャンパラメータ設定部35により設定されてプリスキャン実行部70に与えられる。
次に、ステップS2において、プリスキャン実行部70は、プリスキャンパラメータ設定部35から受けたスキャン範囲Rやスキャン間隔等のスキャン条件によりプリスキャンモードによる波長走査を実行させるように波長可変フィルタ29を制御して各FBG7に一定の波長帯域の光を照射させる。この際、プリスキャン実行部70は、トリガ信号印加部32にプリスキャンモードによる波長走査のタイミング情報を与えることにより光パルス化装置30を制御させる。
このため、プリスキャンモードによる波長走査で得られた光強度を示す各受信データが光検出器25からデータ判定部71に与えられる。ここで、受信データは、波長Xiと光強度Yiとの関係を示すスペクトルとしてデータ判定部71に与えられる。
次に、ステップS30において、データ判定部71は、光検出器25から受けた各受信データ(Xi,Yi)のうち2番目に大きい光強度Yd2と3番目に大きい光強度Yd3との差が予め設定された閾値以下であるか否かを判定する。
すなわち、2番目に大きい光強度Yd2と3番目に大きい光強度Yd3との差が閾値以下であり十分に小さければ2番目に大きい光強度Yd2と3番目に大きい光強度Yd3とが等しいとみなすことができる。2番目に大きい光強度Yd2と3番目に大きい光強度Yd3とが等しい場合には、1番に大きい光強度Yd1のときの波長Xd1を中心としてほぼ左右対称にFBG反射光のスペクトルが分布していると推定できる。従って、2番目に大きい光強度Yd2と3番目に大きい光強度Yd3との差が閾値以下であれば、1番大きい光強度Yd1をFBG反射光のスペクトルの最大値とみなすことができる。
そこで、2番目に大きい光強度Yd2と3番目に大きい光強度Yd3との差が閾値以下であると判定した場合には、部分詳細スキャンモードによる波長走査おける適切な走査範囲を決定できるため、2番目と3番目に大きい光強度Yd2、Yd3に対応する波長Xd2、Xd3または1番に大きい光強度Yd1に対応する波長Xd1を走査範囲決定部72に与える。
そして、ステップS3において、走査範囲決定部72は、FBG反射光の波長領域中心の両側に予め設定された所要の詳細走査点数を確保できるような区間を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する。
例えば、走査範囲決定部72は、2番目に大きい光強度Yd2に対応する波長Xd2と3番目に大きい光強度Yd3に対応する波長Xd3との間[Xd2、Xd3]を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する。さらに、波長Xd2と波長Xd3との間[Xd2、Xd3]に詳細走査点数を確保できない場合には、波長Xd2と波長Xd3との間の波長範囲[Xd2、Xd3]に一定の値を加算あるいは乗算することにより拡張した範囲を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する一方、波長Xd2と波長Xd3との間[Xd2、Xd3]に詳細走査点数を十分に確保できる場合には、波長Xd2と波長Xd3との間の波長範囲[Xd2、Xd3]に一定の値を減算あるいは除算することにより縮小した範囲を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する。
また、例えば、走査範囲決定部72は、1番に大きい光強度Yd1に対応する波長Xd1を中心として詳細走査点数を確保できるような区間[Xd1−α、Xd1+α]を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定することもできる。
そして、走査範囲決定部72は、決定した部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を部分詳細スキャン部34に与える。
このため、ステップS4において、走査範囲決定部72により決定された波長走査範囲について、部分詳細スキャン部34により部分詳細スキャンモードによる波長走査が実行される。
一方、ステップS30において、データ判定部71が、2番目に大きい光強度Yd2と3番目に大きい光強度Yd3との差が予め設定された閾値以下でないと判定した場合には、1番大きい光強度Yd1をFBG反射光のスペクトルの最大値とみなすことができないため、1番目および2番目に大きい光強度Yd1、Yd2に対応する波長Xd1、Xd2をプリスキャン条件設定部73に与える。
すなわち、2番目に大きい光強度Yd2と3番目に大きい光強度Yd3との差が予め設定された閾値以下でない場合には、FBG反射光のスペクトルの最大値が1番目および2番目に大きい光強度Yd1、Yd2に対応する波長Xd1、Xd2の間[Xd1、Xd2]に存在する。そこで、FBG反射光のスペクトルの最大値をプリスキャンモードによる波長走査で検出するために、1番目および2番目に大きい光強度Yd1、Yd2に対応する波長Xd1、Xd2の間[Xd1、Xd2]をプリスキャンモードのスキャン範囲とするようにプリスキャン条件設定部73に与える。
このため、ステップS31において、プリスキャン条件設定部73は、データ判定部71から受けた受信データに基づいてプリスキャンモードにおけるスキャン範囲Rやスキャン間隔等のスキャン条件を設定する。
すなわち、プリスキャン条件設定部73は、1番目および2番目に大きい光強度Yd1、Yd2に対応する波長Xd1、Xd2の間[Xd1、Xd2]をプリスキャンモードにおけるスキャン範囲Rとして設定する。さらに、プリスキャンモードにおけるスキャン間隔R/Nを設定する。この際、Nの値は、スキャン範囲Rに少なくとも3つの走査点が存在し、FBG反射光のスペクトルの最大値を検出できるような値とされる。
そして、プリスキャン条件設定部73は、設定したスキャン範囲Rおよびスキャン間隔R/Nをプリスキャン実行部70に与える。
このため、再びステップS2において、プリスキャン実行部70は、プリスキャン条件設定部73により設定されたスキャン範囲Rやスキャン間隔R/N等のスキャン条件によりプリスキャンモードによる波長走査を実行させる。このため、FBG反射光のスペクトルの最大値が検出されたと判定されるまで繰返し、プリスキャンモードにおけるスキャン条件が再設定されてプリスキャンモードによる波長走査が実行される。
以上のようなFBG物理量計測装置20Cによれば、図1に示すFBG物理量計測装置20と同様な効果に加え、プリスキャンモードにおける波長走査において、より簡易な手法でFBG反射光の波長領域中心を求めて適切な部分詳細スキャンモードの波長走査範囲を決定することができる。
図10は本発明に係るFBG物理量計測装置の第5の実施形態を示す構成図である。
図10に示された、FBG物理量計測装置20Dでは、プリスキャン部33をプリスキャン実行部70、関数適合部80および走査範囲決定部72で構成した点が図8に示すFBG物理量計測装置20Cと相違する。他の構成および作用については図8に示すFBG物理量計測装置20Cと実質的に異ならないためプリスキャン部33およびプリスキャン部33と関連する構成のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
FBG物理量計測装置20Dのプリスキャン部33は、プリスキャン実行部70、関数適合部80および走査範囲決定部72を有する。
プリスキャン実行部70は、図8に示すFBG物理量計測装置20Cのプリスキャン実行部70と同等な機能を有する。
関数適合部80は、プリスキャンモードによる波長走査で得られた光強度を示す少なくとも5つの走査点における各受信データを光検出器25から受けて、予め保存された分布形状の応答関数が各受信データに適合するように応答関数をシフトすることにより応答関数の中心座標を求める機能と、求めた応答関数の中心座標を走査範囲決定部72に与える機能とを有する。
ここで、応答関数は、着目するFBG23について設計情報として与えられたFBG反射光のスペクトル形状または予め波長走査することにより得られたFBG反射光のスペクトル形状と、着目しないFBG23からのノイズ信号により光検出器25において得られるベースラインとを重ね合わせることにより定義することができる。
この際、応答関数の光強度が最大値となるときの波長、すなわち応答関数の中心座標は、パラメータとされる。そして、プリスキャンモードによる波長走査で得られた光強度を示す各受信データと応答関数とを比較することにより、パラメータとされた応答関数の中心座標を求めることができるようにされる。
走査範囲決定部72は、関数適合部80から受けた応答関数の中心座標を中心として予め設定された所要の詳細走査点数を確保できるような区間を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する機能と、決定した部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を部分詳細スキャン部34に与える機能とを有する。
次に、FBG物理量計測装置20Dの作用について説明する。
図11は図10に示すFBG物理量計測装置20Dにより部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を決定する際の手順を示すフローチャートである。尚、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示し、図9と同等なステップについては同符合を付して説明を省略する。
まず、ステップS1からステップS2において、プリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲Rとスキャン間隔R/Nとがプリスキャンパラメータ設定部35により設定され、プリスキャン実行部70により、プリスキャンモードによる波長走査が実行される。このため、プリスキャンモードによる波長走査で得られた光強度を示す各受信データが光検出器25から関数適合部80に与えられる。
次に、ステップS40において、関数適合部80は、プリスキャンモードによる波長走査で得られた光強度を示す各受信データを光検出器25から受けて、予め保存された分布形状の応答関数が各受信データに適合するように応答関数をシフトすることによりパラメータとされた応答関数の中心座標を求める。そして、関数適合部80は、求めた応答関数の中心座標を走査範囲決定部72に与える。
次に、ステップS3において、走査範囲決定部72は、関数適合部80から受けた応答関数の中心座標を中心として予め設定された所要の詳細走査点数を確保できるような区間を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する。すなわち、走査範囲決定部72は、予め設定した値であるrを用いて応答関数の中心座標±rを部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する。この際rの2倍値(2r)は、部分詳細スキャンモードによる波長走査において、所要の詳細走査点数を確保できるような区間とされる。
そして、走査範囲決定部72は、決定した部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を部分詳細スキャン部34に与える。
このため、ステップS4において、走査範囲決定部72により決定された波長走査範囲について、部分詳細スキャン部34により部分詳細スキャンモードによる波長走査が実行される。
以上のようなFBG物理量計測装置20Dによれば、図8に示すFBG物理量計測装置20Cと同様な効果に加え、部分詳細スキャンモードの波長走査範囲を決定するためのプリスキャンモードにおける波長走査回数や走査点の数を低減させることができる。
図12は本発明に係るFBG物理量計測装置の第6の実施形態を示す構成図である。
図12に示された、FBG物理量計測装置20Eでは、プリスキャン部33の関数適合部80を重心演算部90に置換した点が図10に示すFBG物理量計測装置20Dと相違する。他の構成および作用については図10に示すFBG物理量計測装置20Dと実質的に異ならないためプリスキャン部33およびプリスキャン部33と関連する構成のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
FBG物理量計測装置20Eのプリスキャン部33は、プリスキャン実行部70、重心演算部90および走査範囲決定部72を有する。
プリスキャン実行部70は、図10に示すFBG物理量計測装置20Dのプリスキャン実行部70と同等な機能を有する。
重心演算部90は、プリスキャンモードによる波長走査で得られた光強度を示す各受信データを光検出器25から受けて、重心演算法による計算を実行することによりFBG反射光の波長中心値を求める機能と、求めた波長中心値を走査範囲決定部72に与える機能とを有する。
すなわち、重心演算部90は、まず光検出器25から受けた各受信データから光強度が1番大きい値となるときの受信データと、光強度が2番目に大き値となるときの受信データを検出する。ここで、FBG反射光の波長中心は、光強度が1番大きい値となるときの波長と光強度が2番目に大き値となるときの波長との間に存在することとなる。そこで、光強度が1番大きい値となるときの波長と光強度が2番目に大き値となるときの波長とから両側の受信データの波長点を複数点とって、重心演算法による計算を実行することによりFBG反射光の波長中心値を求めるようにされる。
走査範囲決定部72は、重心演算部90から受けたFBG反射光の波長中心値を中心として予め設定された所要の詳細走査点数を確保できるような区間を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する機能と、決定した部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を部分詳細スキャン部34に与える機能とを有する。
次に、FBG物理量計測装置20Eの作用について説明する。
図13は図12に示すFBG物理量計測装置20Eにより部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を決定する際の手順を示すフローチャートである。尚、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示し、図11と同等なステップについては同符合を付して説明を省略する。
まず、ステップS1からステップS2において、プリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲Rとスキャン間隔R/Nとがプリスキャンパラメータ設定部35により設定され、プリスキャン実行部70により、プリスキャンモードによる波長走査が実行される。このため、プリスキャンモードによる波長走査で得られた光強度を示す各受信データが光検出器25から重心演算部90に与えられる。
次に、ステップS50において、重心演算部90は、プリスキャンモードによる波長走査で得られた光強度を示す各受信データを光検出器25から受けて、重心演算法による計算を実行することによりFBG反射光の波長中心値を求める。すなわち、重心演算部90は、光強度が1番大きい値Yd1となるときの波長Xd1と光強度が2番目に大き値Yd2となるときの波長Xd2とから両側の受信データの波長点(Xi,Yi)を複数点とって、重心演算法による計算を実行することによりFBG反射光の波長中心値Xpを求める。
そして、重心演算部90は、求めたFBG反射光の波長中心値Xpを走査範囲決定部72に与える。
次に、ステップS3において、走査範囲決定部72は、重心演算部90から受けたFBG反射光の波長中心値Xpを中心として予め設定された所要の詳細走査点数を確保できるような区間を部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する。すなわち、走査範囲決定部72は、予め設定した値であるrを用いてFBG反射光の波長中心値Xp±rを部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲として決定する。この際rの2倍値(2r)は、部分詳細スキャンモードによる波長走査において、所要の詳細走査点数を確保できるような区間とされる。
そして、走査範囲決定部72は、決定した部分詳細スキャンモードにおける波長走査範囲を部分詳細スキャン部34に与える。
このため、ステップS4において、走査範囲決定部72により決定された波長走査範囲について、部分詳細スキャン部34により部分詳細スキャンモードによる波長走査が実行される。
以上のようなFBG物理量計測装置20Eによれば、図10に示すFBG物理量計測装置20Dと同様な効果に加え、プリスキャンモードにおける波長走査で得られたFBG反射光のスペクトルからより精度よく波長中心を求めて部分詳細スキャンモードの波長走査範囲を決定することができる。
図14は本発明に係るFBG物理量計測装置の第7の実施形態を示す構成図である。
図14に示された、FBG物理量計測装置20Fでは、信号処理装置27に傾向判定部100を設けた点が図4に示すFBG物理量計測装置20Aと相違する。他の構成および作用については図4に示すFBG物理量計測装置20Aと実質的に異ならないため信号処理装置27および制御部26のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
FBG物理量計測装置20Fの信号処理装置27は、波長中心計算部39、波長判定部50、物理量変換部40および傾向判定部100を有する。
波長中心計算部39および物理量変換部40は、図4に示すFBG物理量計測装置20Aの波長中心計算部39および物理量変換部40と同等な機能をそれぞれ有する。
波長判定部50は、波長中心計算部39からFBG反射光の波長領域中心を受けて、FBG反射光の波長領域中心が適切な値であるか否かを判定する機能と、FBG反射光の波長領域中心が適切な値であると判定した場合には、FBG反射光の波長領域中心を物理量変換部40に与える一方、FBG反射光の波長領域中心が適切な値でないと判定した場合には、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光のスペクトルを波長中心計算部39から受けて傾向判定部100に与える機能とを有する。
傾向判定部100は、波長判定部50から受けたFBG反射光のスペクトルの傾向を判定する機能と、FBG反射光のスペクトルの傾向に基づいてプリスキャンパラメータ設定部35にプリスキャンモードによる波長走査のスキャン条件の再設定指令とともに再設定方法を与える機能とを有する。
すなわち、FBG反射光の波長領域中心が適切な値でないと判定された場合には、FBG反射光のスペクトルが上に凸の分布形状とならずに光強度が波長の増加とともに単調増加あるいは単調減少する分布形状であると推定される。このため、FBG反射光のスペクトルの傾向に応じて次のプリスキャンモードによる波長走査のスキャン条件の適切な再設定方法が決定される。つまり、次のプリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲をFBG反射光の波長領域中心であるスペクトルの最大値や変曲点が存在する側に再設定する必要がある。
そこで、傾向判定部100には、波長判定部50から受けたFBG反射光のスペクトルにおいてFBG反射光の光強度が波長の増加とともに単調増加するのかあるいは単調減少するのかを判定する機能が備えられる。
そして、判定傾向判定部100は、FBG反射光の光強度が波長の増加とともに単調増加すると判定した場合には、例えば部分詳細スキャンモードによる波長走査の波長走査範囲の開始点が次のプリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲の開始点となるようにスキャン範囲を設定するようにプリスキャンパラメータ設定部35に指令する一方、FBG反射光の光強度が波長の増加とともに単調減少すると判定した場合には、例えば部分詳細スキャンモードによる波長走査の波長走査範囲の終了点が次のプリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲の終了点となるようにスキャン範囲を設定するようにプリスキャンパラメータ設定部35に指令するようにされる。
次に、FBG物理量計測装置20Fの作用について説明する。
図15は図14に示すFBG物理量計測装置20Fにより物理量を計測する際の手順を示すフローチャートである。尚、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示し、図5と同等なステップについては同符合を付して説明を省略する。
まず、ステップS1からステップS5において、図5に示す手順と同様な手順により、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データに基づいて、着目するFBG7からのFBG反射光の波長領域中心が計算される。そして、波長中心計算部39は、FBG反射光の波長領域中心を波長判定部50に与える。
次に、ステップS10において、波長判定部50は、FBG反射光の波長領域中心が適切な値であるか否かを判定し、FBG反射光の波長領域中心が適切な値であると判定した場合には、FBG反射光の波長領域中心を物理量変換部40に与える一方、FBG反射光の波長領域中心が適切な値でないと判定した場合には、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光のスペクトルを波長中心計算部39から受けて傾向判定部100に与える。
そして、波長判定部50により、FBG反射光の波長領域中心が適切な値でないと判定された場合には、ステップS60において、傾向判定部100が、波長判定部50から受けたFBG反射光のスペクトルの傾向を判定し、FBG反射光のスペクトルの傾向に基づいてプリスキャンパラメータ設定部35にプリスキャンモードによる波長走査のスキャン条件の再設定指令とともに再設定方法を与える。
すなわち、傾向判定部100は、波長判定部50から受けたFBG反射光のスペクトルにおいてFBG反射光の光強度が波長の増加とともに単調増加するのかあるいは単調減少するのかを判定する。そして、傾向判定部100は、FBG反射光の光強度が波長の増加とともに単調増加すると判定した場合には、例えば部分詳細スキャンモードによる波長走査の波長走査範囲の開始点が次のプリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲の開始点となるようにスキャン範囲を設定するようにプリスキャンパラメータ設定部35に指令する。また、傾向判定部100は、FBG反射光の光強度が波長の増加とともに単調減少すると判定した場合には、例えば部分詳細スキャンモードによる波長走査の波長走査範囲の終了点が次のプリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲の終了点となるようにスキャン範囲を設定するようにプリスキャンパラメータ設定部35に指令する。
このため、再びステップS1において、プリスキャンパラメータ設定部35はFBG反射光の波長領域中心が存在すると考えられる波長区間側を新たなプリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲として設定する。また、プリスキャンパラメータ設定部35はFBG反射光のスペクトルの分布曲線上に少なくとも3つの走査点を存在させるために、プリスキャンモードによる波長走査のスキャン間隔を、FBG反射光のスペクトルの分布幅の半値以下となるように設定する。
この結果、プリスキャンモードによる波長走査のスキャン範囲は、FBG反射光のスペクトルにおいて、光強度が増加する側にシフトされ、光強度が最低となるときの波長がスキャン範囲の端部となる。
そして、ステップS2からステップS5において、新たなスキャン条件でプリスキャンモードによる波長走査が実行された後、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データに基づいて、着目するFBG7からのFBG反射光の波長領域中心が計算される。そして、波長中心計算部39は、FBG反射光の波長領域中心を波長判定部50に与え、波長判定部50はFBG反射光の波長領域中心が適切な値であるか否かを判定する。
この結果、FBG反射光の波長領域中心が適切な値となるまで繰返しステップS1からステップS5において、スキャン条件が更新されてプリスキャンモードによる波長走査が実行された後、部分詳細スキャンモードによる波長走査で得られたFBG反射光の受信データに基づいて、着目するFBG7からのFBG反射光の波長領域中心が計算される。
一方、FBG反射光の波長領域中心が適切な値であると判定された場合には、波長判定部50が、FBG反射光の波長領域中心を物理量変換部40に与える。
このため、ステップS6において、物理量変換部40は、波長中心計算部39から受けたFBG反射光の波長領域中心を物理量に変換する。さらに、物理量変換部40は、次の波長走査の開始指令を部分詳細スキャン部34に与え、既にプリスキャン部33により決定された部分詳細スキャンモードの波長走査範囲について部分詳細スキャン部34が部分詳細スキャンモードによる波長走査を繰返し実行させて物理量の経時的な変化が測定される。
以上のようなFBG物理量計測装置20Fによれば、図4に示すFBG物理量計測装置20Aと同様な効果に加え、部分詳細スキャンモードの波長走査範囲が不適切で、FGB反射光の波長領域中心が不適切な値となった場合において、より適切なプリスキャンモードのスキャン条件を再設定することができる。
図16は本発明に係るFBG物理量計測装置の第8の実施形態を示す構成図である。
図16に示された、FBG物理量計測装置20Gでは、制御部26および信号処理装置27の構成が図1に示すFBG物理量計測装置20と相違する。他の構成および作用については図1に示すFBG物理量計測装置20と実質的に異ならないため制御部26および信号処理装置27並びにこれらと関連する構成要素のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
FBG物理量計測装置20Gの制御部26は、トリガ信号印加部32、スキャン実行部110、有限区間設定部111およびA/D変換装置38を備える一方、信号処理装置27は、積分処理部112、波長中心計算部39および物理量変換部40を備える。
制御部26のトリガ信号印加部32は、光パルス化装置30にトリガ信号を与えることにより、光源21から出射されるパルス光のタイミングを制御する機能と、トリガ信号のタイミング情報を有限区間設定部111に与える機能とを有する。
スキャン実行部110は、各FBG7に対応する波長走査範囲について波長走査を実行させるように波長可変フィルタ29を制御して各FBG7に一定の波長帯域の光を照射させる機能と、トリガ信号印加部32に波長走査のタイミング情報を与えることにより光パルス化装置30を制御させる機能とを有する。また、スキャン実行部110は、波長走査で得られたFBG反射光の受信データをA/D変換装置38から受けて信号処理装置27に与える機能を有する。
有限区間設定部111は、トリガ信号印加部32から受けたトリガ信号のタイミング情報に基づいて有限の時間的な区間である有限区間を設定する機能と、設定した有限区間に含まれるFBG反射光の受信データを光検出器25から受けてA/D変換装置38に与える機能とを有する。
A/D変換装置38は、有限区間設定部111からFBG反射光の受信データを受けてデジタイズすることによりA/D変換してスキャン実行部110に与える機能を有する。
また、信号処理装置27の積分処理部112は、スキャン実行部110から有限区間に含まれる各FBG反射光の受信データを受けて、積分処理を実行することによりノイズを低減させる機能と、積分処理後の各FBG反射光の受信データを波長中心計算部39に与える機能とを有する。
波長中心計算部39は、積分処理部112から有限区間に含まれる各FBG反射光の積分処理後における受信データを受けて、有限区間におけるFBG反射光の波長領域中心をそれぞれ求める機能を備える。
物理量変換部40は、波長中心計算部39から受けた各FBG反射光の波長領域中心をそれぞれ物理量に変換する機能を有する。
次に、FBG物理量計測装置20Gの作用について説明する。
図17は、図16に示すFBG物理量計測装置20Gにより波長走査を実行する際の手順を示すフローチャートである。尚、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
まず、ステップS70において、スキャン実行部110は、FBG反射光の波長が波長走査範囲の走査点における波長となるように波長可変フィルタ29を制御する。このため広帯域光源28から波長可変フィルタ29に与えられた連続光から特定の波長帯の連続光が選択透過して光パルス化装置30に与えられる。さらに、スキャン実行部110は、光源21から出射されるパルス光のタイミングを制御するようにトリガ信号印加部32にトリガ信号の印加指令を与える。
次に、ステップS71において、トリガ信号印加部32は、光パルス化装置30にトリガ信号を与える。このため、光パルス化装置30は、トリガ信号印加部32から受けたトリガ信号に対応するタイミングで、波長可変フィルタ29を透過した連続光をパルス光に変換して光ファイバ22内に送信する。この際、トリガ信号印加部32は、トリガ信号を光パルス化装置30に与えた時刻をタイミング情報として有限区間設定部111に与える。
このため、ステップS72において、パルス光が光ファイバ22に設けられた各FBG23に照射され、パルス光の波長帯に対応する各FBG23からFBG反射光が反射される。各FBG23からのFBG反射光は、それぞれ光検出器25において受光され光−電気変換により電気信号の受信データに変換される。
ここで、各FBG23からのFBG反射光は、光源21からのそれぞれの距離に応じた時刻に光検出器25において受光されるため、受信データは、各FBG23からのFBG反射光を示す複数のパルス列となる。
さらに同様な、波長走査が経時的に繰返し実行され、各FBG23からのFBG反射光が順次光検出器25において受光される。そして、光検出器25から複数のパルス列で構成される各受信データが順次有限区間設定部111に与えられる。
一方、ステップS73において、有限区間設定部111は、トリガ信号印加部32から受けたトリガ信号のタイミング情報に基づいて、例えば、光源21からパルス光が出射されるタイミング、すなわちトリガ信号印加部32から光パルス化装置30にトリガ信号が印加された時刻を時間起点として、各FBG7のうち光源21から光学的に最も離れた位置にあるFBG7からのFBG反射光が光検出器25において受光されるまでに要する時間に所要の余裕時間を付加した時間区間を有限区間として設定する。
さらに、有限区間設定部111は、有限区間に含まれるFBG反射光の受信データを光検出器25から受けてA/D変換装置38に与える。ここで、有限区間は、光パルス化装置30にトリガ信号が印加されて光源21からパルス光が出射された時刻から光源21から光学的に最も離れた位置にあるFBG7からのFBG反射光が光検出器25において受光されるまでに要する時間に所要の余裕時間を付加した時間区間としたため、単一のトリガ信号により各FBG7から得られた各FBG反射光が全て有限区間に含まれてA/D変換装置38に与えられる。
この結果、各時刻のトリガ信号により得られた各FBG反射光の受信データは、それぞれ個別の有限区間に区分されて順次A/D変換装置38に与えられる。
次に、ステップS74において、A/D変換装置38は、有限区間設定部111から各有限区間におけるFBG反射光の受信データを順次受けてデジタイズすることによりA/D変換してスキャン実行部110に与え、スキャン実行部110は、各有限区間おけるFBG反射光の受信データを順次積分処理部112に与える。
次に、ステップS75において、積分処理部112は、スキャン実行部110から有限区間に含まれる各FBG反射光の受信データを受けて、積分処理を実行することによりノイズを低減させた後、積分処理後の各FBG反射光の受信データを波長中心計算部39に与える。
この際、積分処理部112は受信データの取得間隔、すなわちある時刻におけるトリガ信号から次のトリガ信号までの間に定常状態とみなせない程、物理量とともにFBG反射光の波長領域中心が変化するような動的なFBG7からのFBG反射光の受信データについては、有限区間ごとに個別に積分処理を実行する一方、受信データの取得間隔におけるFBG反射光の波長領域中心の変化量が定常状態とみなせる程度である静的なFBG7からのFBG反射光の受信データについては、各有限区間におけるFBG反射光の受信データの積算値あるいは積算平均から積分処理を実行する。
図18は、図16に示すFBG物理量計測装置20Gにより設定された有限区間において取得されたA/D変換後における受信データのパルス列の一例をプロットした図である。
図18において縦軸は、A/D変換後における受信データの電圧を示し、横軸は時間を示す。また図18中の2点鎖線は、受信データのパルス列A10を示す。
図18に示すように、光検出器25が信号増幅処理機能を備える場合には、パルス列A10は、光検出器25における信号増幅処理の関係から交流結合状態となり必然的にベースラインA11がゼロレベルではなくなる。図18は、ベースラインA11がマイナス側であり、4つのパルスA12を含む場合のパルス列A10の例である。
光パルス化装置30および光検出器25から各FBG23までの光路の距離は変換しないため、光源21からFBG23に照射されるパルス光のパルス幅やパルス間隔等の時間条件が同じであれば、各パルスA12のトリガ信号が印加された時刻からの遅延時間は一定である。このため、パルス列A10上の各パルスA12は一定のパルス波形かつ一定の周期で規則的に現れる。すなわち、有限区間ごとに各パルスA12のパルス上の位置は同等な時間間隔で現れ、各有限区間におけるパルス列A10の各パルスA12の立上りから立下りまでの区間は一定とみなすことができるため、パルスA12の積算有効区間を十分に一定として積分処理を実行することができる。
このため、例えば図18において斜線で示した3番目のパルスA12aの面積を積分処理により求める場合には、3番目のパルスA12aの立上りから立下りまでの区間を予め積算有効区間A13として設定し、設定した積算有効区間A13のディジタルデータを積算することによりパルスA12aの有効積分値を求めることができる。
ここで、パルスA12の有効積分値をSeとするとパルスの有効積分値Seは式(1)により得られる。
[数1]
Se=S−d・B …(1)
ただし、
S:積算有効区間A13におけるディジタルデータの積算値
d:積算有効区間A13におけるディジタルデータの点数(個)
B:ベースラインA11における電圧
である。
すなわち、式(1)に示すようにパルスA12の有効積分値Seは、積算有効区間A13におけるディジタルデータの積算値Sから積算有効区間A13におけるディジタルデータの点数dとベースラインA11における電圧Bとの積を減算することにより求められる。
このため、パルスA12の有効積分値Sを求めるためには、ベースラインA11における電圧Bを求めることが必要である。そこで、積分処理部112は、例えば有限区間において最後尾のパルスA12bの立下り以降の所要区間領域A14の平均レベルをベースラインA11におけるレベルである電圧Bとして求めることができる。最後尾のパルスA12bの立下り以降の所要区間領域A14の平均レベルをベースラインA11におけるレベルとすれば、各パルスA12による影響をより抑制してベースラインA11における電圧を求めることができる。
また、積分処理部112は、例えば有限区間において隣接するパルスA12間における所要区間領域A15の平均レベルをベースラインA11におけるレベルである電圧Bとして求めることもできる。特に着目するパルスA12の両側の所要区間領域A15における平均レベルをベースラインA11におけるレベルである電圧Bとすれば、他のパルスA12近傍の領域のレベルに依存することなく特定のパルスA12の有効積分値Sを求めることができる。
このような積分処理部112の積分処理により、ベースラインA11におけるレベルに依存しないより正確なパルスA12の面積、すなわち光強度を求めることができる。例えば、A/D変換装置38の入力レンジを有効に使うために、光検出器25の出力に故意にオフセット電圧を与えているような場合であっても、オフセット電圧の影響を受けることなく正確な光強度の値を求めることができる。
尚、パルスA12の有効積算区間A13を固定値あるいは設定値として積分処理を実行したが、パルス光の時間条件が一定でない場合のように、必要に応じて平滑化微分の変化から求めてもよい。
次に、ステップS76において、波長中心計算部39は、積分処理後の各有限区間におけるFBG反射光の受信データからそれぞれのFBG反射光の波長領域中心を順次求めて物理量変換部40に与える。
さらに、ステップS77において、物理量変換部40は、波長中心計算部39から受けた各FBG反射光の波長領域中心を物理量に変換する。このため、各FBG23近傍における温度等の物理量を求めることができる。
以上のようなFBG物理量計測装置20Gによれば、複数の各FBG23からのFGB反射光の受信データにおいて常に全てのパルス列を用いて各FBG反射光の波長領域中心を求める構成であるため、より効率的に受信データの取得および処理を行うことが可能となり、物理量の測定時間や測定インターバルを短縮化させることができる。
すなわち、従来のFBG物理量計測装置1では、時間ゲート信号を用いて受信データのパルス列から着目するパルスを抽出することにより、物理量を求める構成であったが、パルスの抽出と同時に着目しないパルスに関する情報を捨てることとなるため、受信データに含まれる情報の効率的な利用や処理が図られていなかった。
一方、FBG物理量計測装置20Gでは、FBG23が着目するものであるか否かの区別がないため、受信データに含まれる情報を捨てることなく全て利用することができる。
また、FBG物理量計測装置20Gでは、各FBG反射光の波長領域中心を求める際に受信データのベースラインのレベルを取得して簡易なディジタル演算のみで正味のパルス面を求めて積分処理を実行する構成であるため、物理量の精度を確保することができる。
以上の各実施形態におけるFBG物理量計測装置20、20A、20B、20C、20D、20E、20F、20Gにおいて、各構成要素は回路のみならずコンピュータにプログラムを読み込ませて構成してもよい。
また、各FBG物理量計測装置20、20A、20B、20C、20D、20E、20F、20Gの一部の機能を省略して構成してもよい。例えばFBG物理量計測装置20Gにおいて、時間多重方式のみによる計測を実行する場合には、波長可変フィルタ29を設けずに、広帯域光源28を単色光による光源として波長制御機能を省略してもよい。
また、各FBG物理量計測装置20、20A、20B、20C、20D、20E、20F、20Gを組合せて構成してもよい。例えば、FBG物理量計測装置20とFBG物理量計測装置20Gとを組合せて、プリスキャン部33においてFBG反射光の波長領域中心を求める際、有限区間に含まれ、複数のパルスを含むパルス列で構成される受信データをデジタイズした後に積分処理を行って複数のFBG反射光の波長領域中心を時間多重方式で求めてもよい。
20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G…ファイバブラッググレーティング(FBG)物理量計測装置、21…光源、22…光ファイバ、22a…光幹線、22b…光分岐路、22c…反射光用光ファイバ、23…FBG、24,24a…光分岐器、25…光検出器、26…制御部、27…信号処理装置、28…広帯域光源、29…波長可変フィルタ、30…光パルス化装置、31…温度調整部、32…トリガ信号印加部、33…プリスキャン部、34…部分詳細スキャン部、35…プリスキャンパラメータ設定部、36…パルス積分回路、37…ゲート信号発生部、38…A/D変換装置、39…波長中心計算部、40…物理量変換部、50…波長判定部、60…走査範囲更新部、70…プリスキャン実行部、71…データ判定部、72…走査範囲決定部、73…プリスキャン条件設定部、80…関数適合部、90…重心演算部、100…傾向判定部、110…スキャン実行部、111…有限区間設定部、112…積分処理部。