JP4371405B2 - 鉄筋継手スリーブ固定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプレキャストコンクリート構造物(以降、PC構造物と略記)を成形用型枠で製造するに際してプレキャストコンクリートの内部に配設された鉄筋継手スリーブを型枠に固定する鉄筋継手スリーブ固定装置する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来の鉄筋継手スリーブ固定装置を使用したPC構造物の製造方法を示していて、盤B上に配置された型枠20に取付けられた鉄筋29と鉄筋継手スリーブ1を型枠20に取付けて、コンクリートを打設する状態を示し、図9は脱型してPC構造物Aになった状態を示している。図9において、右方に突出した鉄筋29の突出部29aは他のPC構造物への挿着用であり、鉄筋継手スリーブ1は他のPC構造物との嵌着用である。
【0003】
図10、11は従来の鉄筋継手スリーブ固定装置の形態の一例であって(例えば、特許文献1参照)、図10では鉄筋継手スリーブ1の型枠20の外方に向けた開口部に円筒状部24が挿入された弾性材による支承部材26が配置され、抜け止め部18を有する棒状材25が支承部材26と型枠20を貫通して取付けられている。棒状材25の型枠20の外方部に、棒状材25を型枠20の外方部に引張るためのカム体30がピン25aによって枢着されている。
【0004】
図11は、カム体30を回転させて鉄筋継手スリーブ1を型枠20の外方部に引張った状態を示しており、棒状材25が図における左方に移動することで支承部材26が圧縮される。特に円筒状部24は圧縮によって半径方向外方に膨脹して、鉄筋継手スリーブ1の内径部にある凹凸部に接して鉄筋継手スリーブ1の位置を固定し、カム30の偏心ストロークだけ型枠20の外方部に移動され所定の位置に固定される。
【0005】
この形態によれば、鉄筋継手スリーブ1の軸線方向位置と半径方向位置の大まかな位置が決定されるが、支承部材26は弾性材のゴムで形成されているためカム30の偏心ストロークと鉄筋継手スリーブ1の軸線方向移動量は一致しないし、半径方向の膨脹量も確定しない。
従って、軸線方向位置と半径方向位置の厳密な決定には適さない欠点がある。また、支承部材26の特に円筒状部24は半径方向への膨脹をさせるための圧縮歪み率が大きいので、繰り返しの使用に耐えない欠点がある。
【0006】
【特許文献1】
実公平7−34109号(図1及びその説明参照)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、鉄筋継手スリーブの軸線方向位置と半径方向位置を確実に設定することができて、さらに繰り返し使用ができる鉄筋継手スリーブ固定装置の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、プレキャストコンクリート構造物を成形用型枠で製造する際にそのプレキャストコンクリート構造物の内部に配設される鉄筋継手スリーブ(1)を成形用型枠(20)に固定する鉄筋継手スリーブ固定装置において、前記鉄筋継手スリーブ(1)の内部には円筒状のリング体(2)が配置され、そのリング体(2)の内部に鉄筋継手スリーブ(1)の軸線方向内方に向かって拡径する円錐状の頭部(8)が収納され、その頭部(8)と同心でロッド部(7)が一体となって軸体(A8)が形成され、そのロッド部(7)は前記型枠(20)に設けられた挿通孔(20a)に挿通されて外方にナット(6)が螺合されており、前記リング体(2)にはその円筒状外壁(2a)に複数のピン孔(2c)が設けられてそれぞれ摺動ピン(3)が半径方向内・外方へ摺動可能に装着され、それらの摺動ピン(3)の内方の端部(3e)には前記軸体の円錐状頭部のテーパ面(8a)に適合するテーパ面(3a)が、そして外方の端部(3t)には溝部(3d)がそれぞれ形成されており、それらの摺動ピンの溝部(3d)には弾性リング(4)が嵌着されてその緊縮力で摺動ピン(3)がリング体(2)内方に抑圧されており、そして前記鉄筋スリーブ(1)には前記摺動ピン(3)が半径方向外方に摺動したときに摺動ピン(3)のかど部(3b)が押さえるR部(1b)を有している。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1〜図7において、本発明の全体及び細部構成を示している。
図1および図2において、図の中心線上部に鉄筋継手スリーブの締付け固定前の状態を、中心線下部に鉄筋継手スリーブの締付け固定後の状態を示している。PC板等のPC構造物を製造する成形用の型枠20の近傍に配置された公知の鉄筋継手スリーブ1の内側に円筒状のリング体2がパッキン5を挟んで配置されている。
【0013】
そのリング体2の内穴2b内に軸線方向内方(図においては右方向)に向って拡径する円錐状の頭部8が収納されている。
【0014】
円錐状の頭部8の端部に、同心でねじ部を有するロッド部7が一体となって軸体A8が形成されている。
【0015】
ロッド部7は、型枠20に鉄筋継手スリーブ1に同心に設けられた挿通孔20aを挿通していて、型枠20の外方向に固定部材である蝶ナット6が螺合されている。固定部材は蝶ナット6でない通常のナットでもよい。ロッド部7の端部に回り止め用の角部9が形成されている。
【0016】
頭部8のテーパ面8aのテーパ角θは、15°〜45°がよく、さらに好ましくは35°〜40°がよい。テーパ面8aは、円錐を形成する面であってもよく、円錐面に形成した平面であってもよい。
【0017】
テーパ面8aに、端部が適合する複数の摺動ピン3がリング体2の円筒状の側面に半径方向内、外方に移動可能に装着されている。また、摺動ピン3の型枠20側(図面で左方)には係止ピンPが設けられ、テーパ面8aを係止して後述の軸体A8が抜けないようにしてある。しかしながらこのピンPは必ずしも設けなくてもよい。
【0018】
図3、4は、摺動ピン3を示していて、内方の端部3eに軸体A8の頭部8のテーパ面8aに適合するテーパ面3aが形成され、外方の端部3tに溝部3dが形成されている。
溝部3dの底部3fは後記する弾性リング4の密接面である。外方の端部3tのかど3bのRサイズは鉄筋継手スリーブ1の内側に形成された凹部1bのRサイズと同サイズが好ましい。
【0019】
軸体A8の頭部8のテーパ面8aに適合する摺動ピン3の摺動部分であるテーパ面3aは、図3、4に点線で示した球面3Fであってもよく、テーパ面に適合して摺動可能なその他の面であってもよい。
【0020】
図5〜7はリング体2の詳細図である。
リング体2は、軸体A8の円錐状の頭部8の通り抜けを防ぐための小孔2fを備えた側壁面2eと、外壁2aとによって内径2bを有する円筒状に形成され、外壁2aに図においては3つのピン孔2cが等角に設けられている。ピン孔2cは、摺動ピン3が摺動自由な径に形成されている。しかしながら小孔2fは設けずに底があってもよい。
【0021】
リング体2に、ピン孔2cの中心を通る溝2dが全周に形成されていて、溝2dの幅は摺動ピン3の溝3dの幅と同寸に形成されている。
【0022】
摺動ピン3の溝部3dに、ゴム材による弾性リング4が嵌着されて、その緊縮力で摺動ピン3がリング体2内に抑圧されるように構成されている。
【0023】
上記構成の鉄筋継手スリーブ固定装置の作用を説明する。
図1、2を参照して、鉄筋継手スリーブ1内のリング体2の内穴2b内に軸体A8の頭部8を挿入し、摺動ピン3をリング体2の半径方向外方から内穴2b内に挿入させる。このとき、摺動ピン3の摺動部分であるテーパ面3aを確認し、軸体A8の頭部8のテーパ面8aに適合させる。
【0024】
ついで、弾性リング4を摺動ピン3の溝部3dに嵌めると共に、リング体2の溝部2dに嵌め込んで、摺動ピン3をリング体2内に抑圧させる。
【0025】
このようにして、リング体2と軸体A8と摺動ピン3が一体に構成された段階で、パッキン5を介してロッド部7を型枠20の挿通孔20aに挿通させ、蝶ナット6を螺着させる。ここまでが、組付け段階であり、図1、2の中心線より上部の状態である。
【0026】
次ぎに鉄筋継手スリーブ1の固定作業を行う。
蝶ナット6を回して、軸体A8を鉄筋継手スリーブ1と逆方向に、図においては左方に引張って移動させる。なお、このとき、軸体A8が蝶ナット6と共回りしないように回り止め用6角部を緊締させる。
【0027】
軸体A8の移動にともなって頭部8、テーパ面8aが移動して、摺動ピン3が半径方向外方に摺動する。この摺動ピン3の半径方向外方への移動量は、蝶ナット6の回転数量によって、即ち軸体A8の移動量によって決定される。
そして、図3における摺動ピン3の上端部のかど3bが、鉄筋継手スリーブ1の内側に形成されたR部1bに接する。
【0028】
さらに摺動ピン3の半径方向外方への移動量が増えて、上端部3tが鉄筋継手スリーブ1の内側に形成された凹部1aに接する。3つの摺動ピン3のそれぞれの半径方向への移動量は等しいので軸体A8と鉄筋継手スリーブ1との軸心は確実に一致する。この段階では、蝶ナット6の回転抵抗から凹部1aへの摺動ピン3の当接が明瞭に判断できる。
【0029】
ここから、さらに蝶ナット6を回転させると、摺動ピン3のかど部3bが鉄筋継手スリーブ1のR部1bを左方に押して例えば、型枠に密接させる所定の停止位置まで引張って移動させる。
【0030】
このようにして、鉄筋継手スリーブ1の軸心精度と、移動位置を厳密に決定することができる。ここまでが、固定段階であり、図1、2の中心線より下部の状態である。
【0031】
つぎに、脱型の場合には、蝶ナット6を逆回転させて軸体A8を鉄筋継手スリーブ1の方向に移動させる。軸体A8の右方向への移動にともなって頭部8、テーパ面8aが移動する。摺動ピン3は弾性リング4の緊縮力によってテーパ面8aにならって半径方向内方に摺動する。
このようにして、組付け段階の状態に戻って軸体A8を中心とする装置をはずして、再使用することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の作用効果を以下に列挙する。
(a) 本発明によれば鉄筋継手スリーブ固定装置はリング体、軸体及び摺動ピンがすべて弾性のない固体なので、鉄筋継手スリーブの軸心位置、軸方向位置が厳密に保証できる。
(b) また、すべての部材が固体なので例えば摺動ピンが鉄筋継手スリーブに当接する節度感が明瞭で作業が容易である。
(c) 従来装置のような弾性材を使用していないので、破損部材がなく再使用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉄筋継手スリーブ固定装置の側断面図で、上半分は固定前の状態を下部分に固定後の状態を示す図。
【図2】図1の局部を示す図で図1と同様に上半分は固定前、下半分は固定後の状態を示す図。
【図3】摺動ピンの側面図。
【図4】図3のY−Y断面図。
【図5】リング体の側面図。
【図6】図5のX−X断面図。
【図7】図5の背面図。
【図8】従来の鉄筋継手スリーブ固定装置を使用したPC構造物の製造方法を示す図。
【図9】脱型したPC構造物の図。
【図10】従来の鉄筋継手スリーブ固定装置による固定前の図。
【図11】図10の固定後の図。
【符号の説明】
1・・・鉄筋継手スリーブ
2・・・リング体
2a・・外壁
3・・・摺動ピン
3a・・摺動部分
4・・・弾性リング
5・・・パッキン
6・・・固定部材(蝶ナット)
7・・・ロッド部
8・・・頭部
8A・・軸体
20・・型枠
20a・・挿通孔
Claims (1)
- プレキャストコンクリート構造物を成形用型枠で製造する際にそのプレキャストコンクリート構造物の内部に配設される鉄筋継手スリーブ(1)を成形用型枠(20)に固定する鉄筋継手スリーブ固定装置において、前記鉄筋継手スリーブ(1)の内部には円筒状のリング体(2)が配置され、そのリング体(2)の内部に鉄筋継手スリーブ(1)の軸線方向内方に向かって拡径する円錐状の頭部(8)が収納され、その頭部(8)と同心でロッド部(7)が一体となって軸体(A8)が形成され、そのロッド部(7)は前記型枠(20)に設けられた挿通孔(20a)に挿通されて外方にナット(6)が螺合されており、前記リング体(2)にはその円筒状外壁(2a)に複数のピン孔(2c)が設けられてそれぞれ摺動ピン(3)が半径方向内・外方へ摺動可能に装着され、それらの摺動ピン(3)の内方の端部(3e)には前記軸体の円錐状頭部のテーパ面(8a)に適合するテーパ面(3a)が、そして外方の端部(3t)には溝部(3d)がそれぞれ形成されており、それらの摺動ピンの溝部(3d)には弾性リング(4)が嵌着されてその緊縮力で摺動ピン(3)がリング体(2)内方に抑圧されており、そして前記鉄筋スリーブ(1)には前記摺動ピン(3)が半径方向外方に摺動したときに摺動ピン(3)のかど部(3b)が押さえるR部(1b)を有していることを特徴とする鉄筋継手スリーブ固定装置。
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