JP4369102B2 - 含複素環化合物およびこれを含有する潤滑剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な含複素環化合物およびこれを用いた潤滑剤組成物の技術分野に属し、より詳細には、機械的摩擦摺動部に供給される潤滑剤組成物およびそれに用いられる含複素環化合物の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
潤滑剤に求められる性能は、広い温度範囲および広い圧力範囲において、機械的摩擦摺動部の摩擦係数を低下することができ、さらにその効果ができるだけ持続することである。また、潤滑剤には、摩擦摺動部材間の潤滑性を向上させるという効果だけでなく、それによって摩擦摺動部材自体に耐磨耗性が付与できることも望まれる。エンジンオイル等の潤滑油の、摩擦摺動部における摩擦係数の低減効果およびその長寿命化は、機械駆動のための燃費の向上、すなわちエネルギーの節約に直結する。エンジンオイルの長寿命化は、廃オイル量の低減のみならず、CO2排出量の低減をも可能とするので、近年注目されている環境適合性の面でも好ましい。また、産業機械系の摺動部の中でも、特に苛酷な摩擦条件で摺動する軸受やギヤなどでは、従来の潤滑油やグリースなどの潤滑剤を用いた場合、潤滑条件が苛酷になると、潤滑剤が膜切れや焼付けを起こし、摩耗傷のために、所望の低摩擦係数を得られなくなる場合がある。その結果、装置の信頼性を損ねることがあり、特に装置を小型化した場合に、摺動部の摩擦条件が過酷化する傾向になり、装置の小型化の妨げにもなっていた。従って、苛酷な条件においても、摩耗や焼付きを生じず、装置の信頼性を向上させることができ、さらに装置の小型化に寄与することができるような省エネルギーな潤滑剤が望まれている。
【0003】
さらに、近年では、高密度磁気記録媒体の表面、マイクロマシンにおける摺動部および回転部等に供給される潤滑剤については、極少量で前記性能が維持できることが要求される。即ち、潤滑剤には、必要最小限度の量で摩擦面を覆い、摺動面の摩擦係数を低減するとともに、耐磨耗性を向上させ、その効果をできるだけ長く持続できる効果を有するものが望まれている。この要望に応えるには、必然的に、容易に均質かつ平滑な薄膜が形成可能な性質が、潤滑剤に要求される。
【0004】
ところで、従来、潤滑剤としては、一般的には、潤滑基油を主成分とし、これに有機化合物等の潤滑助剤を配合したものが用いられる。潤滑助剤の代表的なものとしては、ジオルガノジチオカルバミン酸が挙げられ、その金属塩が潤滑剤用の抗酸化剤や抗磨耗剤や腐食抑制添加剤等の多数の機能を示すことが知られている。例えば、米国特許第4278587号明細書に開示されている亜鉛塩、米国特許第4290202号明細書に開示されているアンチモン塩、米国特許第460438号明細書に開示されているモリブデン塩、および特表平9−508156号公報に開示されている、ニッケル、銅、コバルト、鉄、カドミウム、マンガンなどの金属塩は、苛酷な条件においても、摺動部の低摩擦性および低磨耗性が維持できるという顕著な効果を有している。特に近年では、有機モリブデン化合物が、潤滑助剤として注目されている。有機モリブデン化合物は、機械装置の摺動部が、高温、高速または低速、高付加、小型軽量化など、苛酷な摩擦条件で運動している場合も、なお耐摩耗性、極圧性(耐荷重性)、低摩擦特性などの性能に優れ、通常圧での流体潤滑条件より高圧下、即ち境界潤滑条件において効果的に潤滑性能を発揮できる素材として注目されている。
【0005】
しかし、この有機モリブデン化合物は単独で使用するより、ジチオリン酸亜鉛との併用での効果が大きいことが知られている。村木正芳らは、トライボロジスト 38巻、10頁(1993年)において、ジチオリン酸亜鉛が摩擦面に薄膜形成されることにより、モリブデンジチオカルバメートまたはモリブデンジチオリン酸がそれに吸着・反応・分解して、硫化モリブデンと酸化モリブデンの混合被膜を形成するという機構を報告している。新井克矢らは、トライボロジスト 44巻、46頁(1999年)において、摩擦摺動面の深さ方向の元素構成をX線光電子分光法(XPS)を用いて行い、表面からモリブデンジチオカルバメートに由来するモリブデン、硫黄、酸素が次第に減少し、逆に鉄元素が増加することを確かめ、摺動面の金属鉄がモリブデンと反応した複合被膜の形成により、低摩擦係数と耐磨耗性が生じていると説明している。また、菊池隆司らは、ジチオリン酸亜鉛以外に、硫化油脂、硫化オレフィンおよび硫化フェネートのような硫黄化合物もモリブデンジチオカルバメートの低摩擦性に相乗効果があると、JSAE Paper 9537538(1995年)で述べている。
【0006】
モリブデンジチオカルバメートは、激しい摩擦条件下でも優れた潤滑効果を奏する、優れた素材ではあるが、潤滑油中にはモリブデンおよび亜鉛といった重金属、容易に酸化されて潤滑油のみならず摺動部材そのもの、さらには環境にも悪影響を及ぼす硫黄酸化物のもととなる硫化物、および河川や海を富栄養化してしまうリン酸がかなり含まれていて、環境適合性の点からは明らかに好ましくない。さらに、摺動面に形成される酸化/硫化モリブデン被膜は、摩擦で徐々に削り取られ、新たな被膜を形成するため、その元となる有機モリブデン化合物や有機亜鉛化合物のいずれかが不足すると急激にその効果を失う。しかし、有機モリブデン化合物および有機亜鉛化合物を増量すると、その皮膜が削られることによって副生される副生物が系内に増え、摺動機械そのものに悪影響を及ぼすため、増量することは有効ではなく、前記有機モリブデン化合物を利用した系では、潤滑剤の長寿命化による燃費改善等の効果はあまり期待できないのが実状である。
この様に、従来の潤滑剤は、重金属元素、リン酸化合物および硫化物等の環境有害物質または環境汚染物質を含むことなく、潤滑剤としての優れた性能を示すとともに、その性能を長期的に維持できる材料は、未だに提供されていない。
一方、複素環残基を含む化合物を含有する潤滑剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−69472号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、新規な含複素環化合物、特に、従来の潤滑剤基油と混合した形態のみならず、潤滑剤基油を混合しない形態でも、優れた潤滑剤性能を示す新規な含複素環化合物を提供することを課題とする。また、本発明は、優れた潤滑剤性能を示す新規な潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、摺動面において低摩擦性および耐磨耗性を長期的に維持できる、特に極圧下においても、低摩擦性および耐磨耗性を長期的に維持できる潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、均質な薄膜を容易に形成可能であり、磁気記録媒体の表面およびマイクロマシン等にも適用可能な潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、環境適合性に乏しい重金属元素、燐酸基および硫化物を排除することにより、長寿命化および環境適合性を両立し得る潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究した結果、特定の官能基部分構造を有する化合物が、優れた潤滑性能を示すとの知見を得、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は下記一般式(1)で表される含複素環化合物を提供するものである。
【0011】
一般式(1)
【化9】
【0012】
式中、Dは(m+n)個の置換基によって置換された5〜7員環構造の複素環残基を表し、Xは単結合、NR3基(R3は、水素原子または炭素数が1〜30のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはこれらの組み合わせからなる二価の連結基を表し、R1は置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R2はハロゲン原子、ヒドロキシ基、無置換のアミノ基、メルカプト基、シアノ基、スルフィド基、カルボキシ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、ヒドロキシアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表す。mは1または2を表し、nは1以上の整数を表す。mおよびnがそれぞれ2以上の場合、2以上のX、R1およびR2は各々同一でも異なっていてもよい。
【0013】
本発明の好ましい態様として、下記一般式(2)〜(8)のいずれかで表される含複素環化合物が提供される。
【0014】
一般式(2)
【化10】
式中、X1およびX2は各々独立に、単結合、NR3基(R3は、水素原子または炭素数が1〜30のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはこれらの組み合わせからなる二価の連結基を表す(好ましくは硫黄原子またはイミノ基(−NH−)を表す)。R11およびR12は各々独立に、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し(好ましくは、R11およびR12のうち少なくとも1つが−(C=O)O−基を含む)、R21はハロゲン原子、ヒドロキシ基、無置換のアミノ基、メルカプト基、シアノ基、スルフィド基、カルボキシ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、ヒドロキシアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表す(好ましくはハロゲン原子を表す)。
【0015】
一般式(3)
【化11】
【0016】
一般式(4)
【化12】
【0017】
一般式(5)
【化13】
【0018】
一般式(6)
【化14】
【0019】
一般式(7)
【化15】
【0020】
一般式(8)
【化16】
【0021】
前記式(3)〜(8)中、Rは炭素数8以上のアルキル基、炭素数4以上のオリゴアルキレンオキシ基または炭素数2以上のパーフルオロアルキル基を表し(少なくとも1つのRは−(C=O)O−基を含む)、R21はハロゲン原子、ヒドロキシ基、無置換のアミノ基、メルカプト基、シアノ基、スルフィド基、カルボキシ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、ヒドロキシアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し(好ましくはハロゲン原子を表し)、p1およびp2は各々独立して1または2を表す。
【0022】
また、本発明の他の態様は、前記一般式(1)で表される含複素環化合物(好ましくは前記一般式(2)〜(8)のいずれかで表される含複素環化合物)を含有する潤滑剤組成物である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、下記一般式(1)で表される含複素環化合物について説明する。
【0024】
一般式(1)
【化17】
【0025】
前記一般式(1)中、Dは(m+n)個の置換基によって置換された5〜7員環構造の複素環残基を表す。5員環または6員環がより好ましく、6員環が最も好ましい。これらの骨格の具体的な例は、岩波理化学辞典 第三版増補版 (岩波書店発行)の付録11章 有機化学命名法 表4.主要複素単環式化合物の名称 1606頁 および表5.主要縮合複素環式化合物の名称 1607頁 に記載される複素環が挙げられる。Dは、芳香性を有する複素環残基であるのが好ましく、窒素原子を含む芳香性を有する複素環残基であるのがより好ましい。なお、Dで表される複素環残基は(m+n)個の置換基を有するが、Dを構成しているヘテロ原子が置換されていても、またDが炭素原子を含む複素環残基を表す場合は炭素原子が置換されていてもよい。
【0026】
前記一般式(1)中、Xは単結合、NR3基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはこれらの組み合わせからなる二価の連結基を表し、R3は水素原子または炭素数が1〜30のアルキル基(直鎖状および分岐鎖状のアルキル基の双方を含む)を表す。組み合わせからなる二価の連結基としては、オキシカルボニル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、オキシスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。Xが単結合の場合、Dで表される複素環残基は、直接R1によって置換される。Xが単結合でR1が複素環基の場合、ピペリジンのような複素環基が遊離原子価をもった窒素原子で直接結合していてもよく、さらに遊離原子価がなくてもヘテロ原子で結合し、オキソニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩のようにオニウム塩を形成していてもよい。Xは硫黄原子またはNR3基であるのが好ましく、R3は炭素数が3以下のアルキル基または水素原子であるのが好ましい。
【0027】
前記一般式(1)中、R1は置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。R1で表されるアルキル基は炭素数が1〜30であるのが好ましく、2〜30であるのがより好ましく、4〜30であるのがさらに好ましく、6〜30であるのが最も好ましい。前記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシ基等)、スルフィド基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等)、アルキルアミノ基(メチルアミノ基、プロピルアミノ基等)、アシル基(アセチル基、プロパノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基等)及びアシルオキシ基(アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)や、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基及びウレイド基等が挙げられる。
【0028】
R1で表されるアルケニル基およびアルキニル基の炭素数の好ましい範囲については前記アルキル基と同様であり、また、アルケニル基およびアルキニル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。さらに、R1で表されるアルケニル基およびアルキニル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては上記アルキル基の置換基で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0029】
R1で表されるアリール基は、フェニル基、インデニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アントラセニル基およびピレニル基等が挙げられるが、フェニル基およびナフチル基が好ましい。また、前記アリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、上記アルキル基の置換基として例示したものの他、アルキル基が挙げられる。前記置換基としては、炭素数8以上の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基およびアルキル残基を含む置換基が好ましく、具体的には、アルキル基(オクチル基、デシル基、ヘキサデシル基、2−エチルヘキシル基等)、アルコキシ基(ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基等)、スルフィド基(ヘキサデシルチオ基等)、置換アミノ基(ヘプタデシルアミノ基等)、オクチルカルバモイル基、オクタノイル基およびデシルスルファモイル基等の置換基が好ましい。また、これらの置換基は2つ以上置換しているのが好ましく、さらに上記の置換基の他にも、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基等で置換されていてもよい。
【0030】
R1で表される複素環基は、Dで表される複素環基と同様、5〜7員環構造の複素環残基が好ましく、5または6員環構造の複素環残基がより好ましい。これらの骨格の具体的な例については、岩波理化学辞典 第三版増補版 (岩波書店発行)の付録11章 有機化学命名法 表4.主要複素単環式化合物の名称 1606頁 および表5.主要縮合複素環式化合物の名称 1607頁 に記載される複素環が挙げられる。また、これらはアリール基と同様、置換基を有していてもよく、該置換基としては、炭素数8以上の直鎖状または分岐鎖状のアルキル残基を含む置換基が好ましい。また、これらの置換基によって2以上置換されているのが好ましく、例えば、上記置換基の他、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基等によって置換されているのが好ましい。
【0031】
前記一般式(1)中、R2はハロゲン原子、ヒドロキシ基、無置換のアミノ基、メルカプト基、シアノ基、スルフィド基、カルボキシ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、ヒドロキシアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表す。中でも、R2はハロゲン原子、ヒドロキシ基、無置換のアミノ基またはメルカプト基であるのが好ましく、ハロゲン原子であるのがより好ましい。
【0032】
前記一般式(1)中、mは1または2を表し、nは1以上の整数を表す。mおよびnがそれぞれ2以上の場合、2以上のX、R1およびR2は各々同一でも異なっていてもよい。mは2であるのが好ましい。
【0033】
前記一般式(1)で表される含複素環化合物の中でも、下記一般式(2)で表される含複素環化合物が好ましい。
【0034】
一般式(2)
【化18】
【0035】
前記一般式(2)中、X1およびX2は各々独立に、単結合、NR3基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはこれらの組み合わせからなる二価の連結基を表し、R3は水素原子または炭素数が1〜30のアルキル基(直鎖状および分岐鎖状のアルキル基の双方を含む)を表す。組み合わせからなる二価の連結基としては、オキシカルボニル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、オキシスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。X1およびX2がそれぞれ単結合の場合、トリアジン環はR11およびR12のそれぞれによって直接置換される。X1およびX2がそれぞれ単結合でR11およびR12がそれぞれ複素環基の場合、ピペリジンのような複素環基が遊離原子価をもった窒素原子で直接結合していてもよく、さらに遊離原子価がなくてもヘテロ原子で結合し、オキソニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩のようにオニウム塩を形成していてもよい。X1およびX2はそれぞれ硫黄原子またはNR3基であるのが好ましく、R3は炭素数が3以下のアルキル基または水素原子であるのが好ましい。
【0036】
前記一般式(2)中、R11およびR12は各々独立に、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。
R11およびR12でそれぞれ表されるアルキル基は、炭素数が1〜30であるのが好ましく、2〜30であるのがより好ましく、4〜30であるのがさらに好ましく、6〜30であるのが最も好ましい。前記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシ基等)、スルフィド基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等)、アルキルアミノ基(メチルアミノ基、プロピルアミノ基等)、アシル基(アセチル基、プロパノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基等)及びアシルオキシ基(アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)や、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基及びウレイド基等が挙げられる。
【0037】
R11およびR12でそれぞれ表されるアルケニル基ならびにアルキニル基の炭素数の好ましい範囲については前記アルキル基と同様であり、また、アルケニル基およびアルキニル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。さらに、R11およびR12でそれぞれ表されるアルケニル基およびアルキニル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては上記アルキル基の置換基で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0038】
R11およびR12でそれぞれ表されるアリール基は、フェニル基、インデニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アントラセニル基およびピレニル基等が挙げられるが、フェニル基およびナフチル基が好ましい。さらに、置換基を有していてもよく、該置換基としては、上記アルキル基の置換基として例示したものの他、アルキル基が挙げられる。前記置換基としては、炭素数8以上の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基およびアルキル残基を含む置換基が好ましく、具体的には、アルキル基(オクチル基、デシル基、ヘキサデシル基、2−エチルヘキシル基等)、アルコキシ基(ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基等)、スルフィド基(ヘキサデシルチオ基等)、置換アミノ基(ヘプタデシルアミノ基等)、オクチルカルバモイル基、オクタノイル基およびデシルスルファモイル基等の置換基が好ましい。また、これらの置換基は2つ以上置換しているのが好ましく、さらに上記の置換基の他にも、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基等で置換されていてもよい。
【0039】
R11およびR12でそれぞれ表される複素環基は、Dで表される複素環基と同様、5〜7員環構造の複素環残基が好ましく、5または6員環構造の複素環残基がより好ましい。これらの骨格の具体的な例については、岩波理化学辞典 第三版増補版 (岩波書店発行)の付録11章 有機化学命名法 表4.主要複素単環式化合物の名称 1606頁 および表5.主要縮合複素環式化合物の名称 1607頁 に記載される複素環が挙げられる。また、これらはアリール基と同様、置換基を有していてもよく、該置換基としては、炭素数8以上の直鎖状または分岐鎖状のアルキル残基を含む置換基が好ましい。また、これらの置換基によって2以上置換されているのが好ましく、さらに、上記置換基の他、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基等によって置換されていてもよい。
【0040】
R11およびR12には、総炭素数8以上の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル鎖、総炭素数4以上の直鎖状もしくは分岐鎖状のオリゴアルキレンオキシ鎖、総炭素数2以上の直鎖状もしくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル鎖、総炭素数2以上の直鎖状もしくは分岐鎖状のパーフルオロアルキルエーテル鎖、または直鎖状もしくは分岐鎖状の有機ポリシリル鎖を含む置換基を含んでいるのがより好ましい。R11およびR12としては、炭素数8以上の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル残基を含む置換基で置換されたフェニル基が特に好ましい。
また、R11およびR12の少なくとも1つが−(C=O)O−基を含むのが好ましい。
【0041】
前記一般式(2)中、R21はハロゲン原子、ヒドロキシ基、無置換のアミノ基、メルカプト基、シアノ基、スルフィド基、カルボキシ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、ヒドロキシアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表す。中でも、R21はハロゲン原子、ヒドロキシ基、無置換のアミノ基またはメルカプト基であるのが好ましく、ハロゲン原子であるのがより好ましい。
【0042】
前記一般式(2)で表される含複素環化合物の好ましい態様としては、X1およびX2が硫黄原子またはイミノ基(−NH−)である(より好ましくはイミノ基である)含複素環化合物;R21がハロゲン原子であることを特徴とする含複素環化合物;および/またはR11およびR12の少なくとも1つが−(C=O)O−基を含む含複素環化合物;である。
【0043】
さらに、前記一般式(2)で表される含複素環化合物のより好ましい態様として、下記一般式(3)〜(8)で表される含複素化合物が挙げられる。
【0044】
一般式(3)
【化19】
【0045】
一般式(4)
【化20】
【0046】
一般式(5)
【化21】
【0047】
一般式(6)
【化22】
【0048】
一般式(7)
【化23】
【0049】
一般式(8)
【化24】
【0050】
前記一般式(3)〜(8)中、Rは炭素数8以上のアルキル基、炭素数4以上のオリゴアルキレンオキシ基または炭素数2以上のパーフルオロアルキル基を表し、好ましい範囲も同様である。少なくとも1つのRは、−(C=O)O−基を含むのが好ましい。
前記一般式(3)〜(8)中、R21は前記一般式(2)中のR21と同義であり、好ましい範囲も同様である。即ち、R21はハロゲン原子、ヒドロキシ基、無置換のアミノ基またはメルカプト基であるのが好ましく、ハロゲン原子であるのがより好ましい。
前記一般式(3)および(6)中、p1およびp2は各々独立して1または2を表す。
【0051】
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例によって限定されるものではない。
【0052】
【化25】
【0053】
【化26】
【0054】
【化27】
【0055】
【化28】
【0056】
【化29】
【0057】
【化30】
【0058】
【化31】
【0059】
【化32】
【0060】
【化33】
【0061】
【化34】
【0062】
【化35】
【0063】
【化36】
【0064】
【化37】
【0065】
【化38】
【0066】
【化39】
【0067】
【化40】
【0068】
【化41】
【0069】
【化42】
【0070】
【化43】
【0071】
【化44】
【0072】
本発明の含複素環化合物は、例えば、下記合成例1および2により製造することができる。式中のX1、R11、R21およびp1の意味は、前記一般式(1)〜(8)中のそれぞれと同義である。また、式中のR’は、例えば、前記一般式(3)中の−ORに代表されるような置換基を表す。
【0073】
【化45】
【0074】
前記一般式(1)で表される含複素環化合物は、単独で潤滑剤として用いることができる。また、前記一般式(1)で表される化合物は、潤滑助剤として、潤滑剤基油と混合した態様で用いることもできる。前記潤滑剤基油としては、特に限定されるものではなく、一般に潤滑剤基油として用いられているものならばいずれも使用することができ、鉱油、合成油あるいはそれらの混合油が挙げられる。例えば、パラフィン系、中間基系またはナフテン系原油の常圧または減圧蒸留により誘導される潤滑油原料をフェノール、フルフラール、N−メチルピロリドンの如き芳香族抽出溶剤で処理して得られる溶剤精製ラフィネート;潤滑油原料をシリカ−アルミナを担体とするコバルト、モリブデン等の水素化処理用触媒の存在下において、水素化処理条件下で水素と接触させて得られる水素化処理油;潤滑油原料を水素化分解触媒の存在下において、苛酷な分解反応条件下において異性化条件下で水素と接触させて得られる異性化油;潤滑油原料を溶剤精製工程および水素化処理工程、または水素化分解工程および異性化工程等を組み合わせて得られる潤滑油留分;等を挙げることができる。特に、水素化分解工程および異性化工程によって得られる高粘度指数鉱油が好適なものとして挙げられる。いずれの製造方法においても、脱蝋工程、水素化仕上げ工程、白土処理工程等の工程を任意に付加することができる。前記鉱油は、軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油およびブライトストック等に分類することもでき、要求性能に応じて適宜混合することもできる。
【0075】
前記合成油としては、ポリα−オレフィン、α−オレフィンオリゴマー、ポリブテン、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、シリコーン油等を挙げることができる。これらの鉱油および合成油は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、鉱油と合成油を組み合わせて使用してもよい。このような潤滑剤基油は、通常、温度100℃において、2〜20mm2/sの動粘度を有し、好ましくは3〜15mm2/sの動粘度を有する。本発明の潤滑剤組成物が用いられる機械的摩擦摺動部の潤滑条件に適するように、適宜、最適な動粘度を有した混合基油を選択することができる。
【0076】
前記一般式(1)で表される化合物を前記潤滑剤基油と混合して、潤滑剤として用いる場合、好ましい配合量は、潤滑剤基油全質量を基準として、前記化合物が0.01質量%以上であり、より好ましくは0.01〜10質量%であり、最も好ましくは0.05〜2質量%である。また、潤滑剤基油の含有量は50質量%以上であるのが好ましい。潤滑剤基油を含まない態様では、前記化合部物を50質量%以上含有するのが好ましい。
【0077】
前記一般式(1)で表される化合物を含有する潤滑剤は種々の用途に供することができる。種々の用途に適応した実用性能を確保するため、さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、従来の潤滑剤、例えば軸受油、ギヤ油、動力伝達油などに用いられている各種添加剤、具体的には、摩耗防止剤、極圧剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、腐食防止剤、防錆剤、消泡剤等を添加することもできる。
【0078】
前記潤滑剤組成物は、接触して相対運動する摺動面に供給することによって、摺動面の摩擦係数を低下させるとともに、摺動面の耐磨耗性を向上させる効果を有する。さらに、この効果を長期的に維持するという優れた効果をも有する。従来の潤滑油やグリースなどの潤滑剤を用いた場合に、油膜切れを生じるような苛酷な摩擦条件で運動する摺動面に供給した場合も、焼付きを軽減し、耐摩耗性を向上させ、低摩擦係数に維持することができる。例えば、苛酷な摩擦条件で運動する軸受やギヤなどにおいて、省エネルギーな潤滑剤として好適に使用することができる。さらに、摺動部装置の信頼性を向上させ、摺動部装置の小型化に寄与することができる。また、前記潤滑剤組成物は、苛酷な潤滑条件において、摩擦係数が低いこと、耐摩擦性と極圧性に優れていることなどの特徴を有している。これらについては、特開平6−16968号、同8−319494号、同9−328694号、同10−183154号、同10−298581号、同10−147790号、同10−330778号、特開2000−154391号、WO98/22472号、特開2000−355695号等の各公報に記載の内容を参照することができる。
【0079】
前記一般式(1)で表される化合物は、単独でも優れた潤滑効果を奏するので、大量に潤滑剤を供給できない、例えば、マイクロマシンにも好ましく用いることができる。また、前記一般式(1)で表される化合物は、金属および金属酸化物等の表面に容易に皮膜を形成し、潤滑機能を発現するという性質を有するので、磁気記録媒体の表面と、磁気記録ヘッドとの摩擦を軽減するための潤滑剤として用いるのも好ましい。
【0080】
本発明の含複素環化合物は、潤滑剤または潤滑助剤としての用途以外にも、金属製基材の表面処理用の剤、例えば、金属製基材の表面を処理することで、金属表面を低表面エネルギー化し、粘着性調整、塗れ性、撥水製性、防汚性、防錆性または離型性等を改良する金属表面処理剤として用いることができる。また、液晶の配向を調整する液晶配向制御剤、自動車の窓ガラスの着氷を防止する着氷防止剤として用いることができる。
【0081】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
[N−8の合成例]
以下の合成スキームに従って、N−8を合成した。
【0082】
【化46】
【0083】
(化合物(N−8−A)の合成)
撹拌器を装着した500mLの三ツ口フラスコに、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルの95.1g(0.5mol)、テトラヒドロフランの150mLおよびトリエチルアミンの76.7mL(0.55mol)を加え、撹拌して溶液を得た。溶液を−5℃に冷却し、メタンスルホニルクロリドの38.7mL(0.5mol)を、溶液を撹拌しながら滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。酢酸エチルで抽出、水で洗浄した後、有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、133.8g(99.7%)の化合物(N−8−A)を得た。
【0084】
(化合物(N−8−B)の合成)
撹拌器を装着した2Lの三ツ口フラスコに、4−ニトロカテコールの25g(0.161mol)、得られた(N−8−A)95.1g(0.354mol)およびN,N−ジメチルホルムアミドの600mLを加え、撹拌して溶液を得た。炭酸カリウムの89.0g(0.644mol)を加え、130℃に加熱して3時間撹拌した。室温に冷却後、酢酸エチルで抽出、水で洗浄した後、有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、71.95g(89%)の化合物(N−8−B)を得た。
【0085】
(化合物(N−8−C)の合成)
撹拌器と還流冷却器を装着した1Lの三ツ口フラスコに、還元鉄の35.0g(0.625mol)、イソプロピルアルコールの500mL、水100mLおよび塩化アンモニウムの3.4g(0.063mol)を加え、90℃に加熱撹拌し、還流させた。この中に、得られた化合物(N−8−B)を徐々に添加し、そのまま2時間加熱撹拌を続けた。加熱状態のままセライトろ過し、酢酸エチルで洗浄した。ろ液を酢酸エチルで抽出、水で洗浄した後、有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、55.35g(91%)の化合物(N−8−C)を得た。
【0086】
(化合物N−8の合成)
撹拌器を装着した500mLの三ツ口フラスコに、得られた化合物(N−8−C)5.64g(12mmol)、メチルエチルケトンの200mL、シアヌルクロリドの1.11g(6mmol)および炭酸カリウムの3.32g(24mmol)を加え、窒素気流下室温で6時間撹拌した。セライトろ過した後、溶媒を減圧留去し、5.6g(90%)のN−8を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ7.4−6.8(m,6H)、4.10(m,8H)、3.85(m,8H)、3.70(m,8H)、3.60(m,8H)、3.45(m,8H)、1.55(m,8H)、1.30(m,12H)、0.85(t,12H)
【0087】
上記化合物(N−8)の合成例において、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、直鎖もしくは分岐鎖のアルキルアルコール、そのハロゲン体またはその酸クロリドを用いることにより、末端側鎖に直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を有する化合物を製造することができる。また、フッ素原子を含有するアルコール、そのハロゲン体またはその酸クロリドを用いることにより、末端側鎖がフッ素原子を含有するアルキル基である化合物を製造することができる。
また、トリアジンに代えて、ハロゲンを含有する他の複素環化合物を用いることにより、その他の複素環基を含む化合物を製造することができる。
【0088】
[S−8の合成例]
以下の合成スキームに従って、化合物S−8を合成した。
【0089】
【化47】
【0090】
(化合物(S−8−A)の合成)
撹拌器を装着した500mLの三ツ口フラスコに、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルの95.1g(0.5mol)、テトラヒドロフランの150mLおよびトリエチルアミンの76.7mL(0.55mol)を加え、撹拌して溶液を得た。溶液を−5℃に冷却し、メタンスルホニルクロリドの38.7mL(0.5mol)を、溶液を撹拌しながら滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。酢酸エチルで抽出、水で洗浄した後、有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、133.8g(99.7%)の化合物(S−8−A)を得た。
【0091】
(化合物(S−8−B)の合成)
撹拌器を装着した500mLの三ツ口フラスコに、カテコールの5.2g(47.2mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミドの150mLを加え、撹拌して溶液を得た。水素化ナトリウム(60%in oil)4.0g(10.1mmol)を、溶液を撹拌しながら加えた。この溶液に得られた化合物(S−8−A)30.0g(112mmol)を、溶液を撹拌しながら滴下した。滴下終了後、110℃に加熱して1時間撹拌した。室温に冷却後、酢酸エチルで抽出、水で洗浄した後、有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、21.0g(99%)の化合物(S−8−B)を得た。
【0092】
(化合物(S−8−C)の合成)
撹拌器を装着した500mLの三ツ口フラスコに、得られた化合物(S−8−B)21.0g(47.0mmol)および塩化メチレン50mLを加え、撹拌して溶液を得た。溶液を−10℃に冷却し、クロロスルホン酸の6.27mL(94mmol)を塩化メチレンの10mLに溶解した溶液を、撹拌しながら滴下した。滴下終了後、室温で1時間撹拌した。溶液を−10℃に冷却し、アセトニトリルの45mLおよびN,N−ジメチルアセトアミドの15mLを加え、撹拌して溶液を得た。オキシ塩化リンの11.0mL(118mmol)を、溶液を撹拌しながら滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。酢酸エチルで抽出、水で洗浄した後、有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、21g(80.7%)の化合物(S−8−C)を得た。
【0093】
(化合物(S−8−D)の合成)
撹拌器を装着した300mLの三ツ口フラスコに、濃硫酸7.5mLおよび水47mLを加え溶液を−10℃に冷却し、得られた化合物(S−8−C)10.0g(18.1mmol)を加えた。この溶液に亜鉛7.45g(113.9mmol)をゆっくり加えた。90℃に加熱撹拌し還流させ、そのまま2時間加熱撹拌を続けた。加熱状態のままセライトろ過し、酢酸エチルで洗浄した。ろ液を酢酸エチルで抽出、水で洗浄した後、有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、8.3g(94%)の化合物(S−8−D)を得た。
【0094】
(化合物(S−8)の合成)
撹拌器と還流冷却器を装着した100mLの三ツ口フラスコに、得られた化合物(S−8−D)4.0g(8.2mmol)およびメチルエチルケトンを加え、撹拌して溶液を得た。この溶液に、シアヌルクロリドの0.63g(3.4mmol)および炭酸カリウムの1.13g(8.2mmol)を加え、窒素気流下70℃で1時間加熱撹拌した。室温に冷却後、セライトろ過し、酢酸エチルで洗浄した。溶媒を減圧留去し、2.95g(80%)の化合物(S−8)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ7.0−6.8(m,6H)、4.2−4.0(m,8H)、3.85(m,8H)、3.70(m,8H)、3.60(m,8H)、3.45(m,8H)、1.55(m,8H)、1.25(m,12H)、0.85(t,12H)
【0095】
上記化合物(S−8)の合成例において、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて、直鎖もしくは分岐鎖のアルキルアルコール、そのハロゲン体またはその酸クロリドを用いることにより、末端側鎖に直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を有する化合物を製造することができる。また、フッ素原子を含有するアルコール、そのハロゲン体またはその酸クロリドを用いることにより、末端側鎖がフッ素原子を含有するアルキル基である化合物を製造することができる。
また、トリアジンに代えて、ハロゲンを含有する他の複素環化合物を用いることにより、その他の複素環基を含む化合物を製造することができる。
【0096】
[化合物(N−7)の合成例]
上記化合物(N−8)の合成例において、化合物(N−8−A)の代わりにイソヘキシルデカンブロマイドを用いた以外は、同様にして化合物(N−7)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ7.4−6.8(m,6H)、4.00(m,8H)、1.80(m,4H)、1.60−1.10(m,96H)、0.90(m,24H)
【0097】
[化合物(S−7)の合成例]
上記化合物(S−8)の合成例において、化合物(S−8−A)の代わりにイソヘキシルデカンブロマイドを用いた以外は、同様にして化合物(S−7)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ7.0−6.8(m,6H)、4.00(m,8H)、1.80(m,4H)、1.60−1.10(m,96H)、0.90(m,24H)
【0098】
本発明の化合物としてN−7、N−8、S−7、S−8、N−34、S−34および潤滑剤基油を用いて、実施例1〜12および比較例1〜4の潤滑剤を調製した。さらに得られた潤滑剤について、以下の条件で往復動型(SRV)摩擦摩耗試験を行い、摩擦係数および低摩耗性を各々評価した。
[往復動型(SRV)摩擦摩耗試験の試験条件および測定法]
試験条件
試験片(摩擦材): SUJ−2
プレート : 24mm径×7.9mm
シリンダー : 11mm径×15mm
温度 : 70℃
荷重 : 50N、400N
振幅 : 1.0mm
振動数 : 50Hz
試験時間 : 試験開始5分間
上記試験条件で、荷重50Nおよび400Nにおいて、摩擦係数を測定した。また、耐摩耗性については、表面粗さ計にて、摩耗痕の摩耗深さを測定し、評価した。実施例1〜12の結果を表1に比較例1〜4の結果を表2に各々示した。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、新規で且つ有用な含複素環化合物、特に、従来の潤滑剤基油と混合した形態のみならず、潤滑剤基油を混合しない形態でも、優れた潤滑剤性能を示す新規な含複素環化合物、および該含複素環化合物を含有する潤滑剤組成物を提供することができる。
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