JP4369052B2 - 抗血栓症化合物 - Google Patents
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Description
本発明は、新規な抗血栓症物質、それらの調製法、活性成分としてそれらの化合物を含有する薬剤組成物、並びに、薬剤の製造における該化合物の使用に関するものである。
【0002】
セリンプロテアーゼは、血液凝固カスケードにおいて重要な役割を果たす酵素である。このグループのプロテアーゼのメンバーは、例えば、トロンビン、トリプシン、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、第XIIa因子、及びプロテインCである。
【0003】
トロンビンは、凝血カスケードにおける最終のセリンプロテアーゼ系酵素である。トロンビンの最も重要な機能は、フィブリノーゲンを開裂してフィブリンモノマーを発生させることであり、これらのフィブリンモノマーが架橋されて不溶性ゲルを形成する。更に、トロンビンは、凝血カスケードの早い段階で第V因子及び第VIII因子を活性化することにより、トロンビン自体の生成を調節する。また、トロンビンは細胞レベルでの重要な作用も有しており、そこでは、トロンビンが特異的な受容体に作用し、血小板凝集や、内皮細胞の活性化、及び線維芽細胞増殖を引き起こす。従って、トロンビンは、止血及び血栓形成を調節する上で中心的な役割を担っている。トロンビンの阻害薬は広範囲にわたる治療上の用途を持っていると考えられるため、この分野における広範な研究が為されている。
【0004】
別の重要なセリンプロテアーゼである第Xa因子は、プロトロンビンからトロンビンへの転化を触媒する。
【0005】
セリンプロテアーゼの合成阻害薬、より特定的にはトロンビンの合成阻害薬の開発では、ベンズアミジン部分が重要な構造の一つである。それは、それの天然基質である側鎖がプロトン化された塩基性アミノ酸、Arg及びLysをまねたものである。この部分を伴う化合物が広範且つ再三再四研究されている。このタイプのトロンビン阻害薬の非常に有力な代表物は、アミノ酸誘導体、Nα−(2−ナフチルスルホニル)−グリシル−4−アミジノフェニルアラニン−ピペリジド(NAPAP)(Sturzebecher,J.ら、Thromb.Res.29、635−642、1983年)である。しかし、NAPAPのプロフィールは、治療用途としては魅力的でない:例えば、この化合物はトロンビン特異性が低く、溶解性にも乏しい。その後、EP第0,236,163号に開示されているN−アルキル置換誘導体や、EP第0,558,961号、Proc.Am.Pept.Symp.,第13回(60LXAW);94;pp.643−5(Stuber,W.ら、Pept.:Chem.,Struct.Biol.)、Proc.Int.Symp.Controlled Release Bioact.Mater.(PCRMEY、10220178);94;Vol.21号;pp.712−12(Walter,E.ら)、及びEP第0,513,543号に記載されているグリコペプチド誘導体等のNAPAPの誘導体が調製された。しかし、これらの誘導体化は、NAPAPに比べるとその薬理学的プロフィールに改善をもたらしたかもしれないが、そのようなNAPAP誘導化合物はすべて、まだ直接的なトロンビン阻害薬としてしか活性でなく、それらは、血漿中での半減期が制限されており、クリアランスが速い(従って、それらの抗トロンビン活性は短時間しか発揮されない)。
【0006】
今や、式(I):
【0007】
【化3】
[式中、R1は、フェニル、ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、(イソ)キノリニル、テトラヒドロ(イソ)キノリニル、3,4−ジヒドロ−1H−イソキノリニル、クロマニル、またはショウノウ基であり、これらの基は、任意に(1−8C)アルキルまたは(1−8C)アルコキシから選択される1つもしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく;
R2及びR3は、独立に、Hまたは(1−8C)アルキルであり;
R4は、(1−8C)アルキルまたは(3−8C)シクロアルキルであるか;
あるいはR3とR4が、それらが結合される窒素原子と一緒になって、任意に別のヘテロ原子を含有する非芳香族の(4−8)員環を表し、その環は、任意に(1−8C)アルキルまたはSO2−(1−8C)アルキルで置換されていてよく;
Qは、10個から70個の原子からなる鎖長を有するスペーサーであり;そしてZは、2個から6個の単糖単位からなる負電荷のオリゴ糖残基であり、その電荷は、正電荷の対イオンで補償される]の化合物;
あるいは薬剤学的に許容可能なそれらの塩、またはそれらのプロドラッグが、有力で非常に多能性の高い抗血栓症物質であることが見出された。本発明の化合物は抗トロンビン活性を有しているが、それらが、非介在性の直接的な抗トロンビン(第IIa因子)活性と、抗トロンビンIII(AT−III)介在性の抗−Xa活性の両方を備えた調整可能な混合されたプロフィールを持つように、それらの化合物の構造を選択的に修飾してもよい。従って、本発明の化合物は二重阻害物質である。また、本発明の化合物は血漿中の半減期が長く、その結果として、それらの化合物は、NAPAPや以上で報告されたその誘導体よりも長時間持続性の抗トロンビン活性を持っている。更に、本発明の化合物は、血小板因子4(PF4)の中和作用を免れることができる。毒性が低いことも本発明の化合物の一つの利点である。
【0008】
別のタイプの二重阻害物質がEP第0,649,854号に開示されている。本発明の化合物とは反対に、その特許公報で開示されている複合糖化合物は、AT−III介在性の抗−Xa活性に加えて、「間接的」な、AT−III介在性の抗トロンビン活性を発揮する。
【0009】
本発明の化合物は、トロンビン介在性の疾患やトロンビンに関係する疾患を治療及び予防するのに有用である。これは、凝血カスケードが活性化される数多くの血栓性状態及び前血栓性状態を含み、それらは、これらに限定するものではないが、深静脈血栓症、肺動脈塞栓症、血栓性静脈炎、血栓症または塞栓症に由来する動脈閉塞症、血管形成術または血栓溶解術の術中あるいは術後における動脈再閉塞症、動脈損傷または侵襲的な心臓病学的処置後の再狭窄症、術後性の静脈血栓症または塞栓症、急性または慢性のアテローム性動脈硬化症、卒中、心筋梗塞、癌及び転移、並びに神経変性疾患を含む。また、本発明の化合物は、例えば透析や手術で必要になる体外血液循環における抗凝血剤としても使用することができる。更に、本発明の化合物は、インビトロでの抗凝血剤としても使用することができる。
【0010】
本発明の化合物の混合されたプロフィールは、オリゴ糖残基Zの性状及びスペーサーQの長さを変えることにより調整することができ、それにより、一連のプロフィールを得ることができる。
【0011】
2個から6個の糖単位からなる負電荷のあらゆるオリゴ糖残基を本発明の化合物で使用することができる。本発明の適当な化合物は、Zが硫酸化またはリン酸化されたオリゴ糖残基を表す化合物である。好適には、そのオリゴ糖残基Zは、EP第0,454,220号及びEP第0,529,715号に開示されている糖等の、それ自体がAT−III介在性の抗−Xa活性を有するオリゴ糖から誘導される。特に好適なオリゴ糖残基は五糖残基である。最も好適には、Zは、次の式(II):
【0012】
【化4】
[式中、R5は、独立に、OSO3 −または(1−8C)アルコキシである]を有している。
【0013】
本発明の更に好適な化合物は、式中のR1がフェニル、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル、またはナフチルを表す式(I)の化合物である。好適な化合物では、NR3R4がピペリジニル基を表す。好適には、R2はHである。
【0014】
スペーサーの化学構造は、本発明の化合物の抗血栓作用にとって二次的であるか、あるいは重要でないが、スペーサーは完全に剛性でなくてよい。可撓性が非常に高いスペーサーの方が他のものよりも適している。
【0015】
更に、合成上の理由から、ある種のスペーサーの方が他のものよりも適当である。容易に使用することができる適当なスペーサーは、例えば、次の式(III):
−[(CH2)2O]m−[(CH2)n−NR3−C(O)]p−W−(CH2)s−(III)
[式中:
Wは、−[1,4−フェニレン−NR3−C(O)]q−(CH2)r−S−または
−(CH2)t−S−(CH2)u−[O(CH2)2]v−O−(CH2)w−C(O)−NR3−であり;
そして、R3は、独立に、Hまたは(1−8C)アルキルであって;
m=1−12;n=1−8;p=0−4;q=0または1;r=1−8;s=1−8;t=1−8;u=1−8;v=1−12;w=1−8であって;それらの原子の合計数は10−70個であり;そして、−[(CH2)2O]m−部分は、それでQがZに付着される末端基である]を有している。
【0016】
好適なスペーサーは次のもの:
−[(CH2)2O]5−(CH2)2−NH−C(O)−CH2−S−CH2−;
−[(CH2)2O]5−(CH2)2−NH−C(O)−CH2−S−(CH2)2−[O(CH2)2]3−O−CH2−C(O)−NH−(CH2)4−;及び
−[(CH2)2O]3−(CH2)2−NH−C(O)−1,4−フェニレン−NH−C(O)−CH2−S−CH2−;
である。
【0017】
式(I)の化合物の説明では以下の定義が用いられる。(1−8C)アルキルという用語は、1−8個の炭素原子を有する分枝または非分枝のアルキル基を意味しており、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ヘキシル、及びオクチルである。メチル及びエチルが好適なアルキル基である。
【0018】
(1−8C)アルコキシという用語は、1−8個の炭素原子を有するアルコキシ基を意味しており、そのアルキル部分は前に定義された通りの意味を有している。メトキシが好適なアルコキシ基である。
【0019】
(3−8C)シクロアルキルという用語は、3−8個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味しており、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、またはシクロオクチルである。シクロペンチル及びシクロヘキシルが好適なシクロアルキル基である。
【0020】
スペーサーの長さは、Zとその分子のペプチド部分との間の最も短い鎖に沿って数えたスペーサーの原子数であり、スペーサーに結合されているオリゴ糖Zの酸素原子は計数されていない。
【0021】
「プロドラッグ」という用語は、アミジノ部分のアミノ基が例えばヒドロキシ基または(1−6C)アルコキシカルボニル基で保護された、本発明の化合物を意味している。
【0022】
本発明の化合物は、当分野で一般的に知られた方法を用いてシステインまたはリジンでグリシン位置においてNAPAP(またはNAPAP類似体)を誘導体化し、続いてその化合物を(a)オリゴ糖−スペーサー残基にカップリングするか、あるいは(b)スペーサーにカップリングした後、チオール基で誘導体化し、その後、オリゴ糖残基にカップリングすることにより調製される。このために、例えば文献において既知(例えば、これらのソースに限定するものではないが、EP第0,454,220号及びEP第0,529,715号から既知)のオリゴ糖や、製品として入手可能なオリゴ糖等のあらゆる適当なオリゴ糖を使用することができる。それらのオリゴ糖を、例えばBuijsman,R.らが開示した方法(抄録誌、第9回欧州炭水化物シンポジウムユトレヒト大会(1997年)、Abstract A150)により、適当な時機にリン酸化してもよい。オリゴ糖へのスペーサーのカップリングは、例えば、EP第0,649,854号に記載されている方法を用いることにより実施することができる。
【0023】
本発明の化合物を調製するための上述の方法における一つの処理ステップであるペプチドのカップリングは、アジ化物法、混合無水物法、活性化エステル法、好適にはカルボジイミド法、特にはN−ヒドロキシスクシンイミド及びN−ヒドロキシベンゾトリアゾールのような触媒性化合物及びラセミ化抑制化合物の付加を伴うカルボジイミド法による方法等の、ペプチドフラグメントをカップリング−または縮合−するための当分野で既知の方法により実施することができる。この件に関する一つの概説が、E.Gross及びJ.Meienhofer編集の「ペプチド、分析、合成、生物学」第3巻(Academic Press、New York、1981年)に与えられている。
【0024】
本化合物中に存在するアミン官能基は、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、またはフタロイル(Phth)基のようなα−アミノ基を保護するためにペプチド化学で通常使用される基を意味するN−保護基で合成処理中に保護されてもよい。保護基の除去は、それらの保護基の性状に応じて異なる方法で行うことができる。通常、脱保護は、酸性条件下において、スカベンジャーの存在の下に行われる。アミノ保護基及びそれらの除去方法に関する一つの概説が上記の「ペプチド、分析、合成、生物学」第3巻に与えられている。
【0025】
遊離塩基の形態で生じ得る本発明の化合物は、反応混合物から薬剤学的に許容可能な塩の形態で単離することができる。また、薬剤学的に許容可能な塩は、式(I)の遊離塩基を、HCl、HBr、HI、H2SO4、H3PO4、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、アスコルビン酸等の有機酸または無機酸で処理することによっても得ることができる。
【0026】
本発明の化合物はキラル炭素原子を有しており、従って、純粋な鏡像異性体として、または鏡像異性体の混合物として、もしくはジアステレオマーを含有する混合物として得ることができる。純粋な鏡像異性体を得る方法は、例えば塩が光学的に活性な酸とラセミ混合物から得られる塩の結晶化やキラルカラムを用いるクロマトグラフィー等、当分野で周知である。ジアステレオマーに対しては、順相または逆相カラムを用いることができる。
【0027】
本発明の化合物は経腸的に、もしくは非経口的に投与することができる。これらの化合物並びにその組成物の正確な適用量及び治療方式は、勿論、その薬剤が投与される個々の患者のニーズ、病状または必要度、及び診療医の判断に依存するであろう。一般的に、非経口的な投与は、吸収への依存度がもっと高い他の投与方法よりも用量が少なくてすむ。しかし、ヒトに対する一日量は、好適には0.001−100mg/体重(kg)であり、より好適には0.01−10mg/体重(kg)である。
【0028】
本発明の化合物を伴って製造される薬剤は、急性抗凝血療法における佐剤として使用してもよい。そのようなケースでは、その薬剤は、そのような病状を治療するのに有用な他の化合物と共に投与される。
【0029】
例えば標準的な参考文献であるGennaroらの「レミントン薬科学」(第18版、Mack Publishing Company、1990年、特に第8部:「薬剤の調製とそれらの製造」を参照)に記載されているもの等の薬剤学的に適当な助剤と混合して用いる場合には、それらの化合物は、丸剤、錠剤等の固形の投与単位に圧縮してもよいし、あるいは、処理してカプセル剤や座剤の形態にしてもよい。また、例えば、注射剤として使用するため、あるいは、鼻腔用スプレー剤等のスプレー剤として使用するため、薬剤学的に適当な液体により、それらの化合物を溶液、懸濁液、または乳濁液の形態で適用することもできる。
【0030】
例えば錠剤等の投与単位を作る場合には、賦形剤、着色剤、高分子結合剤等の通常の添加剤の使用が考えられる。一般的には、活性な化合物の機能を妨害しないものであれば、あらゆる薬剤学的に許容可能な添加剤を使用することができる。それらの化合物と共に投与することができる適当な担体は、適当な量で使用されるラクトース、デンプン、セルロース誘導体等、あるいはそれらの混合物を含む。
【0031】
次に、以下の実施例により、本発明を更に例証する。
【0032】
実施例
実施例で使用される略号:
DMAP=N,N−ジメチルアミノピリジン
TEA=トリエチルアミン
Z=ベンジルオキシカルボニル
Ac=アセチル
MMTr=モノメトキシトリチル
Bn=ベンジル
DCHA=ジシクロヘキシルアンモニウム
EDCl=塩酸1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド
HOBt=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
DiPEA=ジイソプロピルエチルアミン
Pyr=ピリジニル
TEG=テトラエチレングリコール
HEG=ヘキサエチレングリコール
APA=アミジノフェニルアラニン
Cys=システイン
化合物の番号は式記載用紙に載っている化合物を指している。
【0033】
4−O−(4−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシル)−2,3,6−トリ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシル)−2,3,6−トリ−O−アセチル−α/β−D−グルコピラノシルトリクロロアセトイミダート(4)
ピリジン(100mL)中におけるマルトトリオース(1)(2.0g、4.0mmol)の攪拌溶液に無水酢酸(6.2mL、65mmol)と触媒量のDMAP(0.79g、6.5mmol)を加えた。5時間後、その反応混合液を炭酸水素ナトリウム水溶液(1M、250mL)中に注ぎ、酢酸エチル(200mL)で3回抽出した。それらを合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。その生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、1/1から0/1まで、v/v)で精製することにより、白色の泡として「2」を得た(収率91%、3.5g)。「2」(3.0g、3.1mmol)をジメチルホルムアミド(34mL、3.4mmol)中における0.1M酢酸ヒドラジン溶液で1時間処理することにより、アノマー脱アセチル化を果たした。真空下で濃縮した後、その反応混合液を酢酸エチル(50mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウム(1M、3×25mL)で洗浄した後、乾燥(硫酸マグネシウム)させ、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、3/2から1/0まで、v/v)で精製することにより、「3」を得た(収率92%、2.7g)。化合物「3」(2.7g、3.1mmol)をジクロロメタン(15mL)中に溶解し、トリクロロアセトニトリル(1.7mL)を触媒量の炭酸セシウム(0.2g、0.62mmol)と共に加えた。1時間後、その反応混合液を濾過し、得られた濾液を減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル/TEA、50/49/1から0/99/1まで、v/v/v)でその粗生成物「4」を精製することにより、白色の泡として純粋な「4」を得た(1.9g、71%)。
【0034】
N−ベンジルオキシカルボニル−1−アミノヘキサエチレングリコール4−O−(4−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシル)−2,3,6−トリ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシル)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(6)
ジクロロメタン(1.5mL)中におけるドナー「4」(0.69g、0.76mmol)とアクセプター「5」(0.31g、0.76mmol)の溶液を、活性化された分子ふるい4Å(250mg)の存在下においてアルゴンを流しながら1時間攪拌した。その溶液を−20℃に冷却し、その反応混合液に、ジクロロメタン(0.6mL)中におけるトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(15μL)の溶液を滴下しながら加えた。10分後、TLC分析(ジクロロメタン中における5%のメタノール)はある生成物の存在を示した。その反応混合液に固体の炭酸水素ナトリウム(0.3g)を加え、10分間攪拌した後、濾過した。その濾液をジクロロメタン(50mL)で希釈し、続いて、炭酸水素ナトリウム水溶液(1M、2×25mL)で洗浄した後、乾燥(硫酸マグネシウム)させ、真空下で濃縮した。その残分をシリカゲル(酢酸エチル中における0−4%のメタノール)を用いたクロマトグラフィーにかけることにより、純粋な「6」を得た(0.57g、収率56%)。
【0035】
N−ベンジルオキシカルボニル−1−アミノヘキサエチレングリコール4−O−(4−O−(α−D−グルコピラノシル)−α−D−グルコピラノシル)−β−D−グルコピラノシド(7)
化合物「6」(0.57g、0.43mmol)を、メタノール(15mL)中におけるカリウムtert−酪酸エステル(43mg、Ac1mmol当たり10mg)の溶液で処理した。1時間後、TLC分析(酢酸エチル/ピリジン/酢酸/水、5/7/4/1.6、v/v/v/v)は、「6」が「7」に完全に転化されたことを示した。その反応をDowex 50 WX4−H+樹脂で中和した。その樹脂を濾過して取り除き、得られた濾液を減圧下で濃縮することにより、「7」が得られ(0.37g、収率95%)、その化合物をそれ以上精製することなく使用した。
【0036】
N−ベンジルオキシカルボニル−1−アミノヘキサエチレングリコール4−O−(4−O−(α−D−グルコピラノシル−2,3,4,6−テトラキス−(ジベンジルホスファート))−α−D−グルコピラノシル−2,3,6−トリス(ジベンジルホスファート))−β−D−グルコピラノシド2,3,6−トリス(ジベンジルホスファート)(9)
アセトニトリル/ジオキサン(2/1、v/v、2mL)中における「7」(86mg、95μmol)と「8」(450mg、1.4mmol)の混合物に、アセトニトリル(1mL)中における1H−テトラゾール(54mg、0.77mmol)の溶液を加えた。20℃で1時間攪拌した後、その反応混合液を氷浴で冷却し、tert−ブチルヒドロペルオキシド(0.75mL)を加えた。45分間攪拌し続けた後のTLC分析は、ある主要な生成物の存在を示した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(100/0から95/5まで、ジクロロメタン/メタノール、v/v)で精製することにより、純粋な「9」を得た(311mg、収率92%)。
【0037】
1−アミノヘキサエチレングリコール4−O−(4−O−(α−D−グルコピラノシル2,3,4,6−テトラキスホスファート)−α−D−グルコピラノシル2,3,6−トリホスファート)−β−D−グルコピラノシド2,3,6−トリホスファート(10)
化合物「9」(311mg、87μmol)を、数滴の酢酸を含有するtert−ブタノール/水(6/1、v/v、20mL)に溶解した。その溶液を、10%Pd/C(100mg)の存在下において、水素を連続的に流しながら攪拌した。3時間後、濾過してそのPd/C触媒を取り除き、得られた濾液を真空下で濃縮した。次いで、Dowex 50 WX4−Na+でイオン交換することにより「10」を得た(179mg、収率98%)。
【0038】
N−2−ナフタレンスルホニル−S−4−モノメトキシトリチル−(L)−システイン(12)
製品として入手可能なS−4−モノメトキシトリチル−(L)−システイン(11)(0.34g、1mmol)と、ジオキサン(5mL)、及び10%炭酸ナトリウム水溶液(5mL)の攪拌混合液に2−ナフタレンスルホニルクロリド(0.25g、1.1mmol)を加えた。1時間攪拌した後、5%クエン酸水溶液(50mL)を加えることによりその反応混合液を酸性化し、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。それらを合わせた有機層を乾燥(硫酸マグネシウム)させ、減圧下で濃縮した。その粗生成物を、シリカゲル(メタノール/ジクロロメタン/トリエチルアミン、0/99/1から4/95/1まで、v/v/v)を用いてクロマトグラフィーにかけることにより「12」を得た(収率76%、0.44g)。
【0039】
N−2−ナフタレンスルホニル−S−2−ピリジンスルフェニル−(L)−システイン(14)
化合物「12」(0.44g、0.76mmol)に、トリフルオロ酢酸とトリイソプロピルシランのジクロロメタン溶液(1/1/18、v/v/v)を加えた。20分間攪拌した後、その混合液を水に注ぎ、ジクロロメタン(2×50mL)で抽出した。それらを合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。その粗混合物中における痕跡量のトリフルオロ酢酸をトルエンで共蒸発させることにより取り除いた。結果として得られた遊離チオール「13」をイソプロパノール(2.5mL)中に再溶解し、イソプロパノール/2N酢酸水溶液(1/1、v/v、20mL)中におけるAldrithiolTM(1.7g、7.6mmol)の溶液に滴下させながら加えた。1時間後、TLC分析はその反応が完了していることを示し、その混合液を減圧下で濃縮した。得られた残分中の痕跡量の酢酸をトルエンで共蒸発させることにより取り除いた。その粗生成物をアセトン(10mL)中に溶解し、この溶液にジシクロヘキシルアミン(0.3mL)を加え、その後、化合物「14」を、それのDCHA塩としてその反応混合液から沈殿させた。その沈殿物を単離し、酢酸エチル(50mL)中に溶解した後、5%クエン酸水溶液(2×30mL)で洗浄した。その有機層を乾燥(硫酸マグネシウム)させ、減圧下で濃縮することにより、純粋な「14」を得た(収率55%、0.25g)。
【0040】
N(N(Nα−2−ナフタレンスルホニル−S−2−ピリジンスルフェニル−(L)−システイニル)−(D,L)−4−アミジノフェニルアラニル)ピペリジン(16)
ジメチルホルムアミド(2mL)中におけるN−((D,L)−4−アミジノフェニルアラニル)ピペリジンジヒドロクロリド(15)(0.13g、0.39mmol)とシステイン誘導体「14」(0.16g、0.39mmol)の溶液に、HOBt(58mg、0.42mmol)と、EDCl(82mg、0.42mmol)、及びN−エチルモルホリン(110μL、0.78mmol)を加えた。16時間攪拌した後、その混合物をジクロロメタン(20mL)で希釈し、水(2×10mL)で洗った。その有機層を乾燥(硫酸マグネシウム)させ、真空下で濃縮した。その残分をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(初めに、ジクロロメタン中における10%−20%のメタノールで不純物を取り除き、その後、酢酸エチル/ピリジン/酢酸/水(16/7/1.6/4、v/v/v/v)で生成物を溶出する)で精製し、続いて、Sephadex LH−20(溶離液:メタノール/ジクロロメタン、4/1、v/v)を用いてゲル濾過することにより、均質な「16」を得た(70%、0.19g)。
【0041】
マルトトリオース−デカホスファート「18」とペプチド「16」との縮合結合
0.1MのNa2HPO4緩衝液(1.0mL、pH7.5)中におけるマルトトリオース−デカホスファート「18」(21mg、9.8μmol)の溶液に、メタノール(1mL)中におけるN−ヒドロキシスクシンイミジル−2−ブロモアセテートの溶液を加えた。2時間攪拌した後、その反応混合液をSephadex G25カラムに通し、水中における10%アセトニトリルで溶出した。それらの適切なフラクションをプールし、低温(25℃)で減圧下において濃縮することにより、化合物「19」を得た。NAPAP類似体「16」(10mg、15μmol)を、ヘリウムに通し且つ音波処理することにより脱ガスされたメタノール(1mL)と0.1MのNa2HPO4緩衝液(0.75mL、pH7.0)の混合液に溶解した。この溶液にトリブチルホスフィン(4.1μL、16μmol)を加え、その反応混合液をアルゴン雰囲気下で攪拌した。1時間後、HPLC分析(Lichrospher(登録商標)PR18−カラム)は、2−ピリジンスルフェニル基が完全に開裂していることを示し、その反応混合液に、ジメチルホルムアミド(0.25mL)と0.1MのNa2HPO4緩衝液(0.50mL、pH7.0)中における化合物「19」の溶液を加えた。その混合液を3時間攪拌した後、その粗混合液をゲル濾過(Fractogel HW−40、溶離液:0.15MのTEAB)により精製した。それらの適切なフラクションの濃縮と、それに続く、Dowex 50 WX−Na+イオン交換により、凍結乾燥後、均質な共役体「I」を得た(10.1mg、収率47%)。それらの2つのジアステレオ異性体を半−分取HPLCカラムクロマトグラフィー(LiChrospher(登録商標)RP−18カラム、勾配:0.05MのTEAA水溶液中における17.5%−22.5%のCH3CN)で分離することにより、ジアステレオ異性体「I−a」(保持時間:28.6分)とジアステレオ異性体「I−b」(保持時間:33.0分)を得た。それらの2つの異性体をゲル濾過(Sephadex G−25 DNA−グレード Superfine)により脱塩し、Dowex 50 WX−Na+イオン交換樹脂を用いてNa+−型に変換した。
【0042】
ジアステレオ異性体「I−a」:1H NMR(D2O、600MHz、HH−COSY):マルトトリオース:(還元末端)4.65(bs、1H、H1)、3.85(m、1H、H2)、4.35(m、1H、H3)、3.76(m、1H、H4);5.50(bs、1H、H1’)、4.18(m、1H、H2’)、4.10(m、1H、H4’);(非還元末端)5.71(bs、1H、H1”)、4.09(m、1H、H2”)、4.45(m、1H、H3”)、4.15(m、1H、H4”);3.95−3.84(H5、マルトトリオース);スペーサー:3.65−3.51(m、22H、OCH2 HEG)、3.35(m、2H、CH2NH2)、3.15(s、2H、SCH2(O));ペプチド:8.31(s、1H,Harom NAS)、8.06−7.67(m、6H、Harom NAS)、7.70、7.17(2×d、4H、Harom APA、J=7.8Hz)、4.28(m、1H、αCH APA)、3.91(m、1H、αCH Cys)、3.30−3.04(m、4H、CH2N ピペリジン)、2.82−2.62(m、3H、βCH2 Cys、βCH APA)、2.57(m、1H、βCH’ APA)、1.45−1.25(m、6H、CH2 ピペリジン);
ES−MS:[M−3H]3−724.1、[M−2H]2−1086.7。
【0043】
ジアステレオ異性体「I−b」:1H NMR(D2O、600MHz、HH−COSY):マルトトリオース:(還元末端)3.80(m、1H、H2)、4.32(m、1H、H3)、3.89(m、1H、H4);5.49(bs、1H、H1’)、4.22(m、1H、H2’)、4.11(m、1H、H4’);(非還元末端)5.70(bs、1H、H1”)、4.22(m、1H、H2”)、4.52(m、1H、H3”)、4.24(m、1H、H4”);3.91−3.84(H5、マルトトリオース);スペーサー:3.63−3.52(m、22H、OCH2 HEG)、3.35(t、2H、CH2NH2)、3.17(AB、2H、SCH2(O));ペプチド:8.35(s、1H,Harom NAS)、8.07−7.65(m、6H、Harom NAS)、7.77、7.22(2×d、4H、Harom APA、J=7.8Hz)、4.62(t、1H、αCH APA、JαCH、βCH=7.3Hz)、4.05(m、1H、αCH Cys)、3.05−3.00(m、4H、CH2N ピペリジン)、2.85−2.67(m、4H、βCH2 Cys、βCH2 APA)、1.88−1.24(m、6H、CH2 ピペリジン);
ES−MS:[M−3H]3−724.0、[M−2H]2−1086.2。
【0044】
N−ヒドロキシスクシンイミジル−14−S−2−ピリジンスルフェニル−14−メルカプト−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカノアート(22)
スペーサー「20」(0.75g、2.4mmol)(P.Westerduinら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1996年、35、3、p331−333)とAldrithiolTM(2.6g、12.1mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解し、n−ブチルアミン(4mL)で処理した。2時間攪拌した後、その反応混合液を真空下で濃縮し、ジクロロメタン(50mL)に再溶解した後、5%クエン酸水溶液(2×50mL)で洗浄した。その有機層を乾燥させ、減圧下で濃縮した。その残分をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/酢酸/ジクロロメタン、0/1/99から6/1/93まで、v/v/v)にかけることにより、純粋な「21」を得た(0.80g、収率88%)。化合物「21」(0.80g、2.1mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、この溶液に、N−ヒドロキシスクシンイミド(0.26g、2.3mmol)とEDCl(0.45mg、2.3mmol)を加えた。1時間後、その反応混合液をジクロロメタン(50mL)で希釈し、氷水(20mL)で3回洗った後、乾燥(硫酸マグネシウム)させ、濃縮することにより「22」(0.98mg、収率98%)を得、この化合物をそれ以上精製することなく使用した。
【0045】
Nε−tert−ブチルオキシカルボニル−Nα−ベンゼンスルホニル−(L)−リジン(24)
開始材料として「23」とベンゼンスルホニルクロリドを用いて、「12」に対して説明したのと同様に調製した(0.86g、収率75%)。
【0046】
Nε−(14−S−2−ピリジンスルフェニル−14−メルカプト−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカノイル)−Nα−ベンゼンスルホニル−(L)−リジン(26)
化合物「24」(0.86g、2.2mmol)を、酢酸エチル中における3N塩化水素で処理した。15分後、その反応混合液を真空下で濃縮した。その残分中に存在する痕跡量の酸を、トルエンで共蒸発させることにより取り除いた。その粗生成物「25」をジオキサン/水混合液(4/1、v/v、2.5mL)中に溶解し、この溶液に、化合物「22」(0.98g、2.1mmol)とDiPEA(1.1mL、6.6mmol)を加えた。1時間後、その反応混合液をジクロロメタン(100mL)で希釈し、5%クエン酸水溶液(2×50mL)で洗浄した。その有機層を乾燥(硫酸マグネシウム)させ、真空下で濃縮した。その残油をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0−10%のメタノール/酢酸エチル)で精製することにより、均質な「26」を得た(0.95g、収率67%)。
【0047】
N(N(Nε−(14−S−2−ピリンスルフェニル−14−メルカプト−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカノイル)−Nα−ベンゼンスルホニル−(L)−リジニル−(D,L)−4−アミジノフェニルアラニル)ピペリジン(27)
開始材料として「26」と「15」を用いて、「16」に対して説明したのと同様に調製した(87mg、収率70%)。
【0048】
マルトトリオース−デカホスファート「18」とペプチド「27」との縮合結合(II)
開始材料として「18」と「27」を用いて、「I」に対して説明したのと同様に調製した。粗生成物「II」の精製は、半−分取HPLC(LiChrospher(登録商標)RP−18カラム)により果たした。続いて、ゲル濾過(Sephadex G−25 DNA−グレード Superfine)により脱塩し、Dowex 50 WX4−Na+イオン交換樹脂を用いてNa+−型に変換した後、凍結乾燥することにより、白色の綿毛状の固体として純粋な「II」を得た(8.5mg、「18」からの収率23%)。
【0049】
1H NMR(D2O、600MHz、HH−COSY):マルトトリオース:(還元末端)4.67(m、1H、H1)、4.07(m、1H、H2)、4.40(m、1H、H3)、4.06(m、1H、H4);5.49(bs、1H、H1’)、4.24(m、1H、H2’)、4.66(m、1H、H3’)、4.10(m、1H、H4’);(非還元末端)5.73(bs、1H、H1”)、4.17(m、1H、H2”)、4.38(m、1H、H3”)、4.22(m、1H、H4”);3.95−3.82(H5、マルトトリオース);スペーサー:4.03、4.02(2×s、2H、OCH2C(O))、3.73−3.59(m、36H、OCH2 TEG、HEG)、3.38(t、2H、CH2NH2)、3.27、3.26(2×s、2H、SCH2(O))、2.75(2×t、2H、CH2S);ペプチド:7.81−7.52(m、5H、Harom BS)、7.79、7.76、7.42、7.41(4×d、4H、Harom APA)、4.87、4.66(2×t、1H、αCH APA、JαCH、βCH=7.4Hz)、4.07(m、1H、αCH Lys)、3.37−3.73(m、8H、εCH2 Lys、βCH2 APA、CH2N ピペリジン)、1.96−1.46(m、12H、CH2 ピペリジン、β/γ、δCH2 Lys);
ES−MS:[M+3H]3+801.2、[M+2H]2+1200.8。
【0050】
部分的に保護された五糖「30」
既知の五糖「29」(53mg、49μmol)(R.C.Buijsmanら、Chem.Eur.J.、1996年、2、12、p1572−1577)をジメチルホルムアミド(0.25mL)と水(1mL)に溶解し、N−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)−スクシンイミド(18mg、72μmol)とN−エチルモルホリン(18.6mL)で処理した。15分間攪拌した後、TLC分析(酢酸エチル/ピリジン/酢酸/水、5/7/1.6/4、v/v/v/v)は反応が完了していることを示し、その反応混合液をRP−18カラムに直接適用して、水/メタノール(90/10から60/40まで)で溶出した。それらの適切なフラクションをプールし、少量になるまで濃縮した後、Dowex 50 WX4−H+イオン交換カラムに通し、水で溶出した。その溶出液を真空下で濃縮することにより、純粋な「30」を得た(54mg、収率91%)。
【0051】
硫酸化された五糖「32」
化合物「30」(54mg、45μmol)をジメチルホルムアミド(1mL)に溶解した。トリエチルアミン三酸化硫黄複合体(0.51g、各ヒドロキシル基に対して5当量)を加え、その混合物を、55℃で16時間、窒素雰囲気下において攪拌した。続いて、その混合液を0℃に冷却し、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた(トリエチルアミン三酸化硫黄複合体の各式に対して5当量)。その混合液を1時間攪拌し、少量になるまで濃縮した後、Sephadex G−25カラムに通し、水中における10%アセトニトリルで溶出した。それらの適切なフラクションをプールし、少量になるまで濃縮した後、それをDowex 50 WX4(Na+型)のカラムに通し、水で溶出した。その溶出液を濃縮し、0.2Nの塩化水素(1mL)に再溶解した後、4℃で16時間放置した。その反応混合液を0.1Nの水酸化ナトリウムで中和した後、Sephadex G−25カラムで脱塩し、水中における10%アセトニトリルで溶出することにより、均質な「31」を得た。化合物「31」を、数滴の酢酸を含有するtert−ブタノール/水(6/1、v/v、20mL)に溶解した。その溶液を、10%Pd/C(100mg)の存在下において、水素を連続的に流しながら攪拌した。3時間後、Pd/C触媒を濾過により取り除き、その濾液を真空下で濃縮することにより、純粋な「32」を得た(60mg、収率60%)。
【0052】
五糖「32」とペプチド「16」の縮合結合
五糖「32」(15mg、6.5μmol)を0.1MのNaH2PO4緩衝液(2mL、pH7.5)中に溶解し、この溶液にsulfo−SIABTM(16mg、33μmol)を加えた。暗所における3時間の攪拌後、HPLC分析(monoQ陰イオン交換)は反応が完了していることを示し、その粗生成物「34」をSuperdex 30カラム(水中における10%のアセトニトリル)で精製した。それらの適切なフラクションをプールし、低温(25℃)で真空下において濃縮した。使用前にヘリウムに通し且つ音波処理することにより脱ガスされたメタノール(1mL)と0.1MのNa2HPO4緩衝液(0.75mL、pH7.0)の混合液中におけるNAPAP類似体「16」(9mg、14μmol)の溶液に、トリブチルホスフィン(3.9μL、15μmol)を加えた。アルゴン雰囲気下における1時間の攪拌後、HPLC分析(Lichrospher(登録商標)RP−18カラム)は、2−ピリジンスルフェニル基が完全に開裂されていることを示した。ジメチルホルムアミド(0.25mL)と0.1MのNa2HPO4緩衝液(0.50mL、pH7.0)中における誘導体化された五糖「34」の溶液を加え、その混合液を3時間攪拌した。その粗生成物をSephadex G−50カラムに通し、水中における10%アセトニトリルで溶出した。それらの適切なフラクションをプールし、少量になるまで濃縮した後、Superdex 30カラムで脱塩し、水中における10%メタノールで溶出した。その溶出液を濃縮し、凍結乾燥することにより、白色の固体として共役体「III」を得た(9mg、収率52%)。
【0053】
1H NMR(D2O、600MHz、HH−COSY):δ 3.60、3.53、3.43(3×s、9H、CH3OE、G、H);環D:5.53(m、1H、H1)、4.15(m、1H、H2)、4.58(m、1H、H3)、3.56(m、1H、H4)、3.92(m、1H、H5)、4.26、4.13(2×m、2H、H6、H6’);環E:4.70(d、1H、H1、J1、2=8.1Hz)、4.21(m、1H、H2)、3.62(m、1H、H3)、3.92(m、1H、H4)、3.74(m、1H、H5);環F:5.39(d、1H、H1、J1、2=3.8Hz)、4.22(m、1H、H2)、4.56(m、1H、H3)、3.83(t、1H、H4、J3、4=J4、5=9.8Hz)、4.12(m、1H、H5);環G:5.15(bs、1H、H1)、4.35(m、1H、H2)、3.76(m、1H、H3)、4.21(m、1H、H4)、4.80(m、1H、H5);環H:5.10(d、1H、H1、J1、2=3.6Hz)、4.31(m、1H、H2)、4.54(m、1H、H3)、4.21(m、1H、H4);スペーサー:7.51、7.53、7.13、7.12(4×d、4H、Harom SIAB)、3.73(m、2H、CH2CH2NH2)、3.66(m、12H、OCH2 TEG)、3.31(m、2H、CH2NH2);ペプチド:8.27、8.22(2×s、1H、Harom NAS)、7.98−7.60(m、6H、Harom NAS)、7.71、7.64、7.46、7.44(4×d、4H、Harom APA)、4.60、4.45(2×t、1H、αCH APA、JαCH、βCH=6.6Hz)、4.00、3.97(2×m、1H、αCH Cys)、3.10−2.85(m、4H、CH2N ピペリジン)、2.82−2.70(m、3H、βCH2 Cys、βCH APA)、2.61(m、1H、βCH’ APA)、1.55−1.15(m、6H、CH2 ピペリジン);
ES−MS:[M−H]−2680.6。
【0054】
同様な方法を用いて、以下の化合物が調製される:
【0055】
【化5】
【0056】
【化6】
【0057】
本発明の化合物の生物学的な活性度を以下の試験法により決定した。
【0058】
I.抗トロンビンアッセイ
トロンビン(第IIa因子)は、凝血カスケードにおける一つの因子である。
トロンビンによりもたらされる色原体基質s−2238の加水分解速度を吸光分光分析法で測定することにより、本発明の化合物の抗トロンビン活性を評価した。緩衝液系における抗トロンビン活性に対してこのアッセイを用い、試験化合物のIC50値を評価した。
【0059】
試験媒質:トロメタミン−NaCl−ポリエチレングリコール6000(TNP)緩衝液
参照化合物:I2581(Kabi)
賦形剤:TNP緩衝液。
【0060】
ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、アセトニトリル、またはtert−ブチルアルコールで可溶化を補助することができ、これらの物質は、最終反応混合液中における濃度が2.5%になるまで有害な影響を及ぼすことがない。
【0061】
試験技法 試薬*
1.トロメタミン−NaCl(TN)緩衝液
緩衝液の組成:
トロメタミン(Tris):6.057g(50mmol)
NaCl:5.844g(100mmol)
水(水を加えて1lにする)
HCl(10mmol・l−1)を用いて、溶液のpHを37℃で7.4に調整する。
【0062】
2.TNP緩衝液
ポリエチレングリコール6000をTN緩衝液に溶解して3g・l−1の濃度にする。
【0063】
3.S−2238溶液
一瓶のS−2238(25mg;Kabi Diagnostica、Sweden)を20mlのTN緩衝液に溶解して1.25mg・ml−1(2mmol・l−1)の濃度にする。
【0064】
4.トロンビン溶液
ヒトトロンビン(16000nKat/バイアル;Centraal Laboratorium voor Bloedtransfusie、Amsterdam、The Netherlands)をTNP緩衝液に溶解して835nKat・ml−1の原液を得る。使用する直前にこの溶液をTNP緩衝液で希釈し、3.34nKat・ml−1の濃度にする。
【0065】
*・使用するすべての成分が分析グレードのものである。
【0066】
・水溶液の調製には、超純水(Milli−Q品質)を使用する。
【0067】
試験化合物溶液及び参照化合物溶液の調製
試験化合物及び参照化合物をMilli−Q水に溶解して10−2mol・l−1の原液を得る。各原液を賦形剤で段階希釈して10−3、10−4、及び10−5mol・l−1の濃度にする。原液を含めたこれらの希釈液をアッセイに使用する(反応混合液中における最終濃度:それぞれ、3・10−3;10−3;3・10−4;10−4;3・10−5;10−5;3・10−6及び10−6mol・l−1)。
【0068】
試験手順
室温で、0.075ml及び0.025mlの試験化合物溶液または参照化合物溶液、あるいは賦形剤をマイクロタイタープレートのウェルに交互にピペッティングし、これらの溶液を、それぞれ、0.115ml及び0.0165mlのTNP緩衝液で希釈する。S−2238溶液の0.030mlアリコートを各ウェルに加え、そのプレートを予熱し、インキュベーター(Amersham)内で振盪しながら37℃で10分間、前温置する。前温置後、各ウェルに0.030mlのトロンビン溶液を加えてS−2238の加水分解を開始させる。そのプレートを37℃で(30秒間振盪しながら)温置する。反応速度マイクロタイタープレートリーダー(Twinreader plus、Flow Laboratories)を用いて、温置の1分後から開始し、405nmにおける各サンプルの吸光度を2分毎に90分間測定する。
【0069】
すべてのデータを、LOTUS−MEASUREを用いてIBMパーソナルコンピュータに収集する。各化合物の(反応混合液中におけるmol・l−1単位で表した)濃度での吸光度、及びブランクでの吸光度を、分単位の反応時間に対してプロットする。
【0070】
応答の評価:各最終濃度に対して、アッセイプロットから最大級光度を算出した。Hafnerら(Arzneim.−Forsch./Drug Res.1977年;27(II):1871−3)によるロジット変換分析法を用いて、IC50値(ブランクの最大吸光度の50%阻害をもたらす、μmol・l−1単位で表した最終濃度)を算出した。
【0071】
【表1】
【0072】
II.抗第Xa因子アッセイ
活性第X因子(第Xa因子)は、凝血カスケードにおける一つの因子である。第Xa因子によりもたらされる色原体基質s−2222の加水分解速度を吸光分光分析法で測定することにより、本発明の化合物の抗第Xa因子活性を評価した。緩衝液系における抗第Xa因子活性に対してこのアッセイを用い、試験化合物のIC50値を評価した。
【0073】
一般的に、本試験で用いた手順及び試験条件は、上述の抗トロンビンアッセイの場合と同様であった。相異点を以下に示す。
【0074】
参照化合物:ベンズアミジン
賦形剤:TNP緩衝液。
【0075】
ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、アセトニトリル、またはtert−ブチルアルコールで可溶化を補助することができ、これらの物質は、最終反応混合液中における濃度が1%(DMSOの場合)及び2.5%(その他の溶媒の場合)になるまで有害な影響を及ぼすことがない。
【0076】
試験技法 試薬*
3.S−2222溶液
一瓶のS−2222(15mg;Kabi Diagnostica、Sweden)を10mlの水に溶解して1.5mg・ml−1(2mmol・l−1)の濃度にする。
【0077】
4.第Xa因子溶液
ウシ第Xa因子ヒト(71nKat/バイアル;Kabi Diagnostica)を10mlのTNP緩衝液に溶解し、次いで、30mlのTNP緩衝液で更に希釈することにより、1.77nKat・ml−1の濃度にする。希釈液は、その都度新たに調製しなければならない。
【0078】
試験手順
このアッセイでは、(抗トロンビンアッセイにおける)S−2238溶液の代わりに、上述のS−2222溶液を各ウェルに加える。
【0079】
【表2】
【0080】
【化7】
【0081】
【化8】
【0082】
【化9】
【0083】
【化10】
【0084】
【化11】
Claims (7)
- 式(I):
R2及びR3は、独立にHまたは(1−8C)アルキルであり;
R4は、(1−8C)アルキルまたは(3−8C)シクロアルキルであるか;
或いはR3とR4が、それらが結合される窒素原子と一緒になって、任意に別のヘテロ原子を含有する非芳香族の(4−8)員環を表し、その環は、任意に(1−8C)アルキルまたはSO2−(1−8C)アルキルで置換されていても良く;
Zは、式(II):
Qは、式(III):
−[(CH 2 ) 2 O] m −[(CH 2 ) n −NR 3 −C(O)] p −W−(CH 2 ) s −
(III)
{式中:Wは、
−[1,4−フェニレン−NR 3 −C(O)] q −(CH 2 ) r −S−、または
−(CH 2 ) t −S−(CH 2 ) u −[O(CH 2 ) 2 ] v −O−(CH 2 ) w −C(O)−NR 3 −であり};
およびR 3 は独立に、Hまたは(1−8C)アルキルであり;
m=1〜12;n=1〜8;p=0〜4;q=0または1;r=1〜8;s=1〜8;t=1〜8;u=1〜8;v=1〜12;w=1〜8であって;それらの原子の合計数は10〜70個であり;および、−[(CH 2 ) 2 O] m −部分は、それでQがZに付着される末端基である}を有するスペーサーである]の化合物;
あるいは薬剤学的に許容可能なその塩、またはその誘導体[該誘導体中、アミジノ部分のアミノ基は、ヒドロキシ基または(1−6C)アルコキシカルボニル基で保護されている]。 - 該Zが、それ自体AT−III介在性の抗第Xa因子活性を有するオリゴ糖から誘導されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
- 該R1がフェニル、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル、またはナフチルであり;R2がHであり;およびNR3R4がピペリジニル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
- 該Qが:
−[(CH2)2O]5−(CH2)2−NH−C(O)−CH2−S−CH2−;
−[(CH2)2O]5−(CH2)2−NH−C(O)−CH2−S−(CH2)2−[O(CH2)2]3−O−CH2−C(O)−NH−(CH2)4−;および
−[(CH2)2O]3−(CH2)2−NH−C(O)−1,4−フェニレン−NH−C(O)−CH2−S−CH2−から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。 - 請求項1に記載の化合物と薬剤学的に適当な補助剤からなる薬剤組成物。
- 治療に用いるための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
- 血栓症または他のトロンビン関連疾患を治療もしくは予防するための薬剤を製造するための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物の使用。
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