JP4368501B2 - 電子放射陰極の使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子顕微鏡、電子ビーム露光機、電子ビームテスター、測長機等の電子ビーム源として用いられる電子放射陰極に関わり、ことにその長寿命を達成するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、より高輝度の電子ビームを得るために、タングステン単結晶からなる針状電極を用いた電子放射陰極が利用されている。この電子放射陰極は、軸方位が<100>方位からなるタングステン単結晶チップ(以下、単にWチップという)に、ジルコニウム及び酸素からなる被覆層(以下、ZrO被覆層という)を設け、該ZrO被覆層の存在によってタングステン単結晶の(100)面の仕事関数を約2.8eVに低下させたもので、前記Wチップの先端部に形成された(100)面に相当する微小な結晶面のみが電子放出領域となるので、従来の熱陰極よりも高輝度の電子ビームが得られ、しかも長寿命である特徴を有する。また冷電界放射陰極よりも安定で、低い真空度でも動作し、使い易いという特徴を有している。
【0003】
電子放射陰極は、絶縁碍子に固定された金属支柱に設けられたタングステンワイヤーの所定の位置に電子ビームを放射するWチップが溶接等により固着され、また前記タングステンワイヤー等からの熱電子の放射を抑制する電界を形成するためのサプレッサー電極等から構成されている。
【0004】
そして、電子放射陰極においては、Wチップの一部に、ジルコニウム酸化物からなるジルコニウムと酸素の供給源、即ち、リザーバーが設けられている。Wチップの表面はZrO被覆層で覆われており、Wチップはタングステンワイヤーにより通電加熱されて、一般に1800K程度の温度下で使用され、Wチップ表面のZrO吸着層は蒸発により消耗する。しかし、リザーバーよりジルコニウム及び酸素が拡散することにより、Wチップの表面に連続的に供給されるので、結果的にZrO吸着層が維持される。
【0005】
前述の電子放射陰極の構造と動作説明は、ジルコニウムと酸素からなるZrO被覆層を設けた電子放射陰極(ZrO/Wエミッターという)に関するものであるが、前記ZrO/Wエミッター以外にも、ハフニウム酸化物をハフニウムと酸素の供給源としてHfO被覆層を設けた電子放射陰極(HfO/Wエミッターという)が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
半導体検査装置などでは高輝度で長寿命を有するZrO/Wエミッターが広く使用されており、前記用途分野に適用した場合には、市販のZrO/Wエミッターにおいても1800Kの動作温度で約1年の寿命が得られている。しかしながら、前記と同じ電子放射陰極を分析用途のSEMやTEMに適用した場合には、その寿命が2000−5000時間程度と短く、しかもばらつきが大きく、満足できる結果が得られない。
【0007】
本発明者は、前記の分析用途分野における、寿命が短く、ばらつくという問題についていろいろ検討した結果、被覆層の供給源の変態点が動作温度よりも低いために、電子放射陰極の動作温度を設定する際に、被覆層を構成する物質の温度が変態点を通過し、その時生じる体積変化により、供給源にクラックが入り、次第に脱落することに原因していること、そして、被覆層を構成する物質を供給する供給源が常にその物質の変態点未満の温度に維持するように電子放射陰極を動作させるときに前記問題を解決できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
即ち、本発明は、SEMやTEMなどの分析用途の如くに、ON−OFF動作の激しい電子線利用機器に適用しても、繰り返しの昇降温操作に耐えてリザーバーが脱落し難く、その結果、長寿命で、信頼性高く電子放射陰極を使用することができるという電子放射陰極の使用方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属基体と、前記金属基体の表面を被覆し、金属基体の仕事関数を低下させるための被覆層と、前記被覆層を構成する物質を供給するための供給源とを有する電子放射陰極の使用方法であって、前記供給源を構成する物質の変態点よりも、低い温度で動作させることを特徴とする電子放射陰極の使用方法であり、好ましくは、金属基体がタングステン、モリブデン、タンタルまたはレニウムから選ばれた一つであることを特徴とする前記の電子放射陰極の使用方法であり、更に好ましくは、供給源が、酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウムであることを特徴とする前記の電子放射陰極の使用方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、供給源(リザーバー)を構成する物質の変態点よりも、低い温度で動作することにより、昇降温の際に変態温度を通過することがないので、反復昇降温を行ってもリザーバーにクラックが入ることなく、脱落を防ぐことが出来る。
【0011】
ZrO/Wエミッターにおいてはリザーバーを構成する物質の変態点は1200−1500Kであり、HfO/Wエミッターにおいてはリザーバーを構成する物質の変態点は1900−2100Kである。従って、本発明の実施態様として、ZrO/Wエミッターにおいては1200K未満、HfO/Wエミッターにおいては1900K未満の動作温度に設定することにより、反復昇降温を行っても、リザーバーが脱落することを防止でき、高い信頼性を得ることが出来る。また、Zr、Hfの酸化物は相互に全率で固溶するので、混合して用いることもできるが、電子放射特性の均一性の上から、なるべく単独で用いることが望ましい。
【0012】
本発明に用いる金属基体については、一般的にタングステンが選択されるが、タングステン以外にモリブデン、タンタル、レニウムも用いることができる。また、前記金属基体の被覆層を設ける部分は、タングステン、モリブデンの場合その(100)面が一般的である。
【0013】
【実施例】
〔実施例1、2、比較例1、2〕
絶縁碍子にロウ付けされた金属支柱にタングステンワイヤーをスポット溶接により固定した後、<100>方位の単結晶タングステン細線を寸断したWチップを前記タングステンワイヤーにスポット溶接して取り付け、更に、Wチップの先端を電解研磨して鋭利な先端とすることで、電子放射陰極中間体を得た。
【0014】
市販水素化ジルコニウム粉末を、酢酸イソアミルを分散媒として、乳鉢上で粉砕、混合してスラリーを得た。前記スラリーを前記電子放射陰極中間体のWチップ(Wチップのタングステンワイヤーへの固定位置とWチップ先端との中央の位置)に塗布して、リザーバを予備形成した。スラリー中の酢酸イソアミルが蒸発した後、1×10-9Torr(1.3×10-7Pa)の超高真空中でタングステンワイヤーに通電してWチップを1800Kに加熱し、水素化ジルコニウムをジルコニウムと水素に熱分解してリザーバを焼成、固化した。更に、酸素雰囲気下3×10-6Torr(4.0×10-4Pa)で20時間加熱し、リザーバ中のジルコニウムを酸化、焼成並びに拡散をさせて、Wチップの表面にZrO被覆層を形成してZrO/Wエミッターを作製した。
【0015】
上記手順で得られた5個の電子放射陰極のそれぞれについて、1×10-9Torr(1.3×10-7Pa)の超高真空下で、通電加熱により1800Kまで昇温と冷却(通電の停止)とを200回繰り返した後、リザーバの状態を観察した(比較例1)。また、 上記と同じ操作で得た5個の電子放射陰極について1×10-9Torr(1.3×10-7Pa)の超高真空下で、通電加熱により1150Kまで昇温と冷却(通電の停止)とを200回繰り返した後、リザーバの状態を観察した(実施例1)。
【0016】
また、水素化ジルコニウムを水素化ハフニウムに代えることでHfO/Wエミッターを作製して、同様の実験を行った。ただし、被覆層形成と加熱冷却する際の昇温時の温度をそれぞれ、2150K(比較例2)及び1800K(実施例2)とした。
【0017】
表1に実施例1、2、比較例1、2の結果を示す。昇温温度がリザーバーの変態点より高い比較例1、比較例2では70回以下の昇降温回数でリザーバーが脱落したが、昇温温度がリザーバーの変態点より低い実施例1、実施例2では200回の昇降温でも脱落は認められなかった。
【0018】
【表1】
【0019】
〔実施例3、4、比較例3、4〕
更に、上記評価に用いたものとは別に、電子放射陰極を上記手順で作製し、実際に走査型電子顕微鏡に搭載し、実使用状況下での加熱冷却の反復回数と寿命を調べた。なお、ZrO/Wについては動作温度を1800K(比較例3)、1150K(実施例3)とし、HfO/Wについては動作温度を2150K(比較例4)、1800K(実施例4)とした。
【0020】
この結果を表2に示した。動作温度がリザーバーの変態点より高い比較例3、比較例4では6000時間未満の寿命であったが、動作温度がリザーバーの変態点より低い実施例3、実施例4では8000時間以上の長寿命が得られた。
【0021】
【表2】
【0022】
【発明の効果】
本発明の電子放射陰極の使用方法は、被覆層を構成する物質を供給する供給源が常にその物質の変態点未満の温度に維持するように電子放射陰極を動作させるので、従来の使用方法に比べ、加熱冷却の繰り返しを受けてもリザーバの脱落が無く、安定して長寿命が達成され、SEMやTEMなど分析用途の如く、ON−OFF動作の激しい電子線利用機器に好適な方法である。
Claims (2)
- 金属基体と、前記金属基体表面を被覆し、金属基体の仕事関数を低下させるための被覆層と、前記被覆層を構成する物質を供給するための供給源とを有する電子放射陰極の使用方法であって、前記供給源が、酸化ハフニウムであり、1900K未満で動作させることを特徴とする電子放射陰極の使用方法。
- 金属基体がタングステン、モリブデン、タンタルまたはレニウムから選ばれた一つであることを特徴とする請求項1記載の電子放射陰極の使用方法。
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