JP3397570B2 - 熱電界放射陰極 - Google Patents

熱電界放射陰極

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  • Electron Sources, Ion Sources (AREA)
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  • Cold Cathode And The Manufacture (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子顕微鏡、電子
ビーム露光機、電子ビームテスター、測長機等の電子ビ
ーム源として用いられる熱電界放射陰極に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、より高輝度の電子ビームを得るた
めに、タングステン単結晶の針状電極を利用した熱電界
放射陰極が利用されている。この熱電界放射陰極は、軸
方位が<100>方位からなるタングステン単結晶チッ
プ(以下Wチップという)に、ジルコニウム及び酸素か
らなる被覆層(以下ZrO被覆層という)を設け、該Z
rO被覆層によってタングステン単結晶の(100)面
の仕事関数を約2.8eVに低下させたもので、前記W
チップの先端部に形成された(100)面に相当する微
小な結晶面のみが電子放出領域となるので、従来の熱陰
極よりも高輝度の電子ビームが得られ、しかも長寿命で
ある特徴を有する。また冷電界放射陰極よりも安定で、
低い真空度でも動作し、使いやすいという特徴を有して
いる。
【0003】熱電界放射陰極は、図1に示すように、絶
縁碍子4に固定された金属支柱5に設けられたタングス
テンワイヤー3の所定の位置に電子ビームを放射するW
チップ1が溶接等により固着され、また前記タングステ
ンワイヤー3等からの熱電子の放射を抑制する電界を形
成するためのサプレッサー電極2から構成されている。
【0004】Wチップ1の一部には、図2に示すよう
に、ジルコニウム及び酸素の供給源、即ちリザーバー6
が設けられている。図示していないがWチップ1の表面
はZrO被覆層で覆われている。Wチップ1はタングス
テンワイヤー3により通電加熱され1800K程度の温
度下で使用されるので、前記Wチップ1表面のZrO被
覆層は蒸発により消耗する。しかし、前記リザーバー6
よりジルコニウム及び酸素が拡散し前記Wチップ1の表
面に連続的に供給されるので、結果的にZrO被覆層が
維持される。
【0005】前記ZrO被覆層を形成し、低仕事関数化
を達成する従来方法として、以下の3工程を経る方法が
公知である。即ち、 第1工程:ジルコニウム含有物の前駆体水素化ジルコニ
ウムの粉末体に有機溶剤などを添加してスラリー状にし
て<100>方位のWチップに付着させ水素化ジルコニ
ウムの溜まりを形成する 第2工程:高真空下で、Wチップを加熱し水素化ジルコ
ニウムをジルコニウムと水素に分解し、ジルコニウムを
Wチップ表面に拡散させる 第3工程:10-6Torr程度の酸素雰囲気中でWチッ
プを加熱し、Wチップ表面上にZrO被覆層を形成させ
る である。(米国特許第4,324,999号公報参照)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の熱電界放射陰極
では、実使用条件下での昇降温の反復によりリザーバー
に亀裂が入り甚だしい場合にはリザーバーが脱落し、そ
の結果熱電界放射陰極の寿命が著しく短くなるという問
題を生じていた。このために、熱電界放射陰極の実使用
においては、頻繁に昇降温することを避け、一旦動作温
度を設定した後はなるべく昇降温することなく動作温度
を維持するように、その取り扱いに制限を設けていたの
が実状である。
【0007】しかし、電子ビーム機器を製造、調整する
際に、熱電界放射陰極の複数回の昇降温は避けることが
できないし、実使用時においても機器保守のために複数
回の昇降温は避けられないものであるし、更に予期しな
いトラブルにより瞬時に降温に到る場合もあり、リザー
バーが脱落することのない熱電界放射陰極が望まれてい
た。
【0008】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
ので、繰り返しの昇降温に耐えてリザーバーが脱落し難
く、その結果長寿命で、信頼性が高く、しかも操作性に
優れる熱電界放射陰極を提供することを目的としてい
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、軸方位が<1
00>方位からなるタングステン単結晶にジルコニウム
と酸素からなる被覆層を設けた針状電極を有する熱電界
放射陰極において、前記ジルコニウムと酸素の供給源が
立方晶及び/又は正方晶の酸化ジルコニウムであること
を特徴とする熱電界放射陰極であり、特に、前記酸化ジ
ルコニウムが立方晶であることを特徴とする前記熱電界
放射陰極に関する。又、本発明は、前記酸化ジルコニウ
ムが2A族と3A族から選ばれる元素を少なくとも1種
以上含有することを特徴とする前記の熱電界放射陰極に
関する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明らは、従来の熱電界放射陰
極では、酸化ジルコニウムが温度の昇降に伴う単斜晶と
正方晶との相転移によって生じる酸化ジルコニウムの体
積変化に原因して前記リザーバーの脱落が生じるとの知
見を得て、本発明に至ったものである。
【0011】酸化ジルコニウムは通常は単斜晶に属する
が、室温から温度を上げてゆくと1300K付近で正方
晶に相転移をする。この時に約4.6%もの体積変化を
伴う。このため、酸化ジルコニウムからなるリザーバに
昇降温操作を繰り返すと、リザーバはそれ自身が破壊し
たり、針状電極との境から剥がれたりしていわゆる脱落
現象を生じることがある。
【0012】本発明では、2a族或いは3a族から選ば
れた少なくとも1種以上の元素を酸化ジルコニウムに添
加し固溶させることで、昇降温の繰り返しに対して安定
相の立方晶酸化ジルコニウム及び/又は準安定相の正方
晶酸化ジルコニウムを形成させ、前記リザーバの脱落を
防止するものである。
【0013】本発明での酸化ジルコニウムは、熱電界放
射陰極の使用温度領域(1400〜1800K)で、熱
安定相の立方晶酸化ジルコニウムであることが望ましい
が、準安定相の正方晶酸化ジルコニウムでも用いること
ができるし、両者が共存していても差し支えない。
【0014】前記立方晶酸化ジルコニウム或いは正方晶
酸化ジルコニウムは、2a族或いは3a族から選ばれた
少なくとも1種以上の元素を添加することで、容易に得
ることができる。例えば、2a族或いは3a族から選ば
れた少なくとも1種以上の元素を水素化ジルコニウムの
ようなジルコニウム源とともに有機溶剤に分散してスラ
リー状となし、これを針状電極に塗布し、しかる後酸素
雰囲気下で加熱する方法や、予め2a族或いは3a族か
ら選ばれた少なくとも1種以上の元素を酸化ジルコニウ
ムに混合し加熱して立方晶及び/又は正方晶酸化ジルコ
ニウムを得て、これを粉末状として、針状電極に塗布す
る方法等である。
【0015】2a族或いは3a族から選ばれた少なくと
も1種以上の元素の例としては、マグネシウム、イット
リウム、カルシウム、セリウム等が上げられ、これらの
うち、カルシウム、イットリウムは酸化ジルコニウムに
多量に固溶して、立方晶の酸化ジルコニウムを得易いの
で好ましい。また、前記元素を2種以上併せ用いること
もできる。
【0016】本発明において、前記2a族或いは3a族
から選ばれた少なくとも1種以上の元素の添加量につい
ては、状態図を参照して選べばよいが、上述のカルシウ
ムの場合には、酸化カルシウム換算で8〜20mol%
が良好であり、特に15〜20mol%の場合には低い
温度で立方晶酸化ジルコニウムが得られるので好適であ
る。
【0017】以下、実施例並びに比較例を用いて、本発
明を更に詳細に説明する。
【0018】
【実施例】
〔実施例〕絶縁碍子4にロウ付けされた金属支柱5にタ
ングステンワイヤー3をスポット溶接により固定した
後、<100>方位の単結晶タングステン細線を寸断し
たWチップ1を前記タングステンワイヤー3にスポット
溶接により取り付け、更に、Wチップ1の先端を電解研
磨し鋭利な先端とし、熱電界放射陰極中間体を得た。
【0019】一方、酸化カルシウムを20重量%添加し
た酸化ジルコニウムを1800Kで3時間加熱して得た
立方晶酸化ジルコニウム粉末と市販水素化ジルコニウム
粉末とを酢酸イソアミルを分散媒に乳鉢上で粉砕、混合
してスラリーを得た。
【0020】前記スラリーを前記熱電界放射陰極中間体
のタングステンワイヤー3の略中央位置に塗布し、リザ
ーバ6を予備形成し、酢酸イソアミルが蒸発した後、1
×10-9Torrの超高真空中でタングステンワイヤー
3に通電してWチップ1を1800Kに加熱し水素化ジ
ルコニウムをジルコニウムと水素に熱分解してリザーバ
6を焼成、固化する。更に、酸素雰囲気下3×10-6
orrで20時間加熱し、リザーバ6中のジルコニウム
の酸化、焼成並びに拡散をさせて、Wチップ1の表面に
ZrO被覆層を形成した。
【0021】上記手順で得られた熱電界放射陰極につい
て、1×10-9Torrの超高真空下で通電加熱と冷却
(通電の停止)とを繰り返し、リザーバ6の状態を観察
した。上記実験を5回繰り返したが、いずれの場合も表
1に示したように、200回の加熱冷却反復後で問題を
生じていなかった。
【0022】更に、上記評価に用いたものとは別に、5
個の熱電界放射陰極を上記手順で作製し、実際に走査型
電子顕微鏡に搭載し、実使用状況下での加熱冷却の反復
回数と寿命を調べた。この結果を表2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】〔比較例〕一方、比較例として、水素化ジ
ルコニウムのみからなるスラリーを用いたこと以外は、
前記実施例と同一の手順で作製した熱電界放射陰極につ
いて、実施例と同一の評価を行ったところ、加熱冷却反
復回数が12〜56回で、リザーバが脱落する現象が認
められた。この結果を、表1に示した。また、実施例と
同様に、実際の走査型電子顕微鏡に搭載しての加熱冷却
回数と寿命についても評価し、その結果を表2に示し
た。
【0026】
【発明の効果】実施例から、本発明の熱電界放射陰極
は、従来品に比べ、加熱冷却反復を受けてもリザーバの
脱落が無く、そして安定して長寿命が達成されているこ
とが明かである。
【0027】本発明により、加熱冷却の反復等によるリ
ザーバの脱落を防止し、長期間わたり安定に動作し、長
寿命でしかもそのばらつきが少ない、信頼性の高い熱電
界放射陰極が容易に提供されるので、各種の電子ビーム
機器の電子源として有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱電界放射陰極の断面図。
【図2】第1図のWチップとタングステンワイヤーの部
分の拡大図。
【符号の説明】
1 :Wチップ 2 :サプレッサー電極 3 :タングステンワイヤー 4 :絶縁碍子 5 :金属支柱 6 :リザーバ 7 :固定用ネジ

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸方位が<100>方位からなるタング
    ステン単結晶にジルコニウムと酸素からなる被覆層を設
    けた針状電極を有する熱電界放射陰極において、前記ジ
    ルコニウムと酸素の供給源が立方晶及び/又は正方晶の
    酸化ジルコニウムであることを特徴とする熱電界放射陰
    極。
  2. 【請求項2】 酸化ジルコニウムが立方晶であることを
    特徴とする請求項1記載の熱電界放射陰極。
  3. 【請求項3】 酸化ジルコニウムが2A族と3A族から
    選ばれた元素を少なくとも1種以上含有することを特徴
    とする請求項1又は請求項2記載の熱電界放射陰極。
JP08005096A 1996-04-02 1996-04-02 熱電界放射陰極 Ceased JP3397570B2 (ja)

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