JP4362428B2 - 汚泥および焼却灰の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、下水の生物学的処理施設から発生する余剰の活性汚泥を焼却処理して発生する焼却灰を、同じく活性汚泥を乾燥させた後の乾燥汚泥と共にガス化溶融処理し、可燃性ガスおよびスラグへと転換する技術に関するものである。
下水を生物学的処理によって浄化する際に発生する余剰の活性汚泥(以下汚泥と略す)は、下水道の普及、また下水処理場における高度処理プロセス(窒素、リンの除去等)の導入等に伴って益々増加する傾向にある。これら汚泥は、現状ではその多くが減容化処理の後、単純に埋め立て処分されている。その際の汚泥の形態として、脱水処理後のいわゆる脱水ケーキ(水分含有量80質量%程度)の状態で埋め立てられているケースも依然として認められるものの、特に汚泥発生量の多い大都市圏では、汚泥を焼却炉において焼却減容化後にいわゆる焼却灰という形態で埋め立てられているケースが最も多い。
現在、汚泥焼却炉はいわゆる流動床式の焼却炉がその大部分を占めている。汚泥は乾燥状態においては6300〜21000kJ/kg−dry程度の発熱量を持つのが一般的であるが、通常の下水処理場における最終形態である脱水ケーキの状態においては依然として80質量%程度の大量の水分を含有しているため、熱損失(炉体からの放散熱、水の蒸発潜熱、燃焼用空気中の同伴窒素および水蒸気による持ち出し顕熱等)を加味すると汚泥自体の持つ発熱量のみで燃焼(すなわち自燃)させることは困難である。従って現状の流動床式汚泥焼却炉においては、何らかの方法(炉内へ直接添加する、空気予熱用燃料として使用する等)で補助燃料を使用することが必要不可欠である。
また、近年では、埋め立て地の逼迫等の理由によって、焼却灰の更なる減容化あるいは有効利用を狙いとして、灰溶融処理が一部で実施されている。すなわち、焼却炉から発生した焼却灰を灰溶融炉へと投入し、焼却灰の溶融点以上の高温とすることによってスラグへと変換する技術である。灰溶融処理は、焼却灰の嵩密度の低減(減容化)、建設資材等としての有効利用の促進、また焼却灰中に含有される重金属の溶出防止等の観点から極めて有効な技術であり、電気式(アーク式)溶融炉または旋回溶融式溶融炉等いくつかの方式が既に実用化されている。
例えば、特許文献1においては、下水汚泥を初めとする廃棄物焼却灰を、燃料の燃焼用気体として純酸素を使用する旋回溶融炉内において溶融し、溶融スラグへと転換する灰の溶融方法が提案されている。
また、特許文献2においては、乾燥した汚泥を気流床の旋回式溶融炉において、酸素または酸素富化空気を用いてガス化することによって、可燃性ガスとスラグへと転換し、その高温の可燃性ガスの顕熱をボイラーにおいてスチームとして回収し、乾燥機の熱源とする汚泥焼却方法が提案されている。
特開平9-38620号公報 特開平11-159722号公報
図1に従来の汚泥焼却および灰溶融組み合わせプロセスの基本フローを示す。従来のプロセスにおいては、汚泥4を空気5によって燃焼させることによって減容化する汚泥焼却炉1の後段へ灰溶融炉2を設置する2段構成のプロセスとなっている。前記した通り、汚泥焼却炉1においては補助燃料6の投入が必要不可欠であるが、更に、汚泥焼却炉1において可燃分をほとんど燃焼させた後の焼却灰7を、次の灰溶融炉2内において溶融点以上の高温とするためには、当然何らかの必要熱源(電力、燃料)9を外部から添加してやる必要があるため、汚泥焼却炉1における消費エネルギーと合わせると、プロセス全体において莫大なエネルギーを消費しているのが現実である。特に、エネルギー源として化石燃料由来のエネルギーを用いた場合、天然資源の枯渇やCO排出に伴う地球温暖化進行の観点から非常に好ましくない。
灰溶融炉2には電気を使用して灰を溶融する方法(例えばアーク式溶融炉)、燃料(例えば、重油、灯油、軽油、LPG、LNG、都市ガス、消化ガス等)を空気バーナーによって燃焼することによって灰を溶融する方法(例えば旋回溶融炉、表面溶融炉)が存在する。電気を使用する方式の灰溶融炉2は炉から排出される排ガス量を削減できるというメリットはあるものの、電気をエネルギー源とすることからコストの面で不利となる。また、電力製造に関わる効率(発電効率)も加味すると、エネルギー消費量が極めて多くなってしまうという問題もある。一方、燃料を使用する方式の灰溶融炉2は、エネルギー消費量およびエネルギーコスト自体は電気を使用する方式よりも削減できるものの、燃料を空気燃焼する関係上、炉から発生する排ガス8量が極めて多くなり、後段で必須となる排ガス処理設備3(脱塵、脱硫等)の規模が増大してしまうという問題がある。
特許文献1においては、溶融炉内における燃料の燃焼に伴う窒素酸化物の発生量削減を目的として、純酸素を燃焼用気体として利用しているが、炉内が過大に昇温するのを防止するために、排ガス循環を行う必要があるため、結局、溶融炉から排ガス量は燃焼用気体として空気を用いた場合と同様に多くなってしまうという問題があった。また、溶融炉内における反応は部分酸化反応ではなく燃焼反応であるため、可燃性ガスを回収することも不可能である。
特許文献2においては、乾燥した汚泥を酸素または酸素富化空気でガス化して、可燃性ガスとスラグを回収することが可能である。しかし、乾燥汚泥のガス化のみを行う場合の炉内条件(温度、酸素量)では、汚泥を焼却した後の焼却灰を同一炉内で同時に溶融することはできない。すなわち、焼却灰を溶融温度(灰の溶流点以上)にまで昇温させるためには、単なる乾燥汚泥のガス化を行うために適切な酸素量以上の酸素を過剰に炉内へ投入する必要がある。特に、汚泥焼却炉において石灰のような脱硫剤を添加する場合には、焼却灰の溶融温度が極めて高温となるため、炉内条件を適切に管理することが重要になる。
本発明の目的は、汚泥自体の持つエネルギーを最大限有効利用することにより、高効率かつ低コストに焼却灰および下水汚泥を溶融処理することが可能な汚泥および焼却灰の処理方法を提供することである。
上記目的を達成するための本発明の要旨は次の通りである。
(1)汚泥焼却炉、汚泥乾燥設備、及び、気流床型のガス化溶融炉を用いた汚泥および焼却灰の処理方法であって、下水の生物学的処理により発生し有機物を含有する、乾燥汚泥、および汚泥を焼却して発生した焼却灰を、完全燃焼に必要な理論酸素量の0.2〜0.9倍の酸素または酸素富化空気と共に、前記気流床型のガス化溶融炉へ気流搬送で吹き込んで1100〜1700℃で部分燃焼し、乾燥汚泥および焼却灰中の灰分をスラグへと転換すると共に、乾燥汚泥および焼却灰中の有機物を可燃性ガスへ転換し、
当該可燃性ガスを前記汚泥焼却炉の補助燃料として、前記汚泥焼却炉にて下水の生物学的処理により発生し有機物を含有する汚泥の脱水ケーキを燃焼して、排ガスおよび焼却灰を発生させ、当該発生した排ガスの顕熱を廃熱回収器で回収して熱風又はスチームを生成すると共に、当該発生した焼却灰を前記気流床型のガス化溶融炉へ吹き込む焼却灰とし、
前記生成した熱風又はスチームを前記汚泥乾燥設備の熱源として使用して、前記汚泥乾燥設備にて下水の生物学的処理により発生し有機物を含有する汚泥の脱水ケーキを乾燥し、当該乾燥した汚泥を前記気流床型のガス化溶融炉へ吹き込む乾燥汚泥とすることを特徴とする汚泥および焼却灰の処理方法。
(2)前記汚泥乾燥設備にて前記汚泥の脱水ケーキを乾燥する際に発生する臭気ガスを、前記汚泥焼却炉に投入することを特徴とする請求項1に記載の汚泥および焼却灰の処理方法。
)前記焼却灰の粒径を0.1μm〜2mm、前記乾燥汚泥の粒径を0.1μm〜3mm、及び前記乾燥汚泥の水分含有量を20質量%以下とすることを特徴とする(1)又は(2)に記載の汚泥および焼却灰の処理方法。
)前記焼却灰を、前記乾燥汚泥と同一または上方の高さから前記ガス化溶融炉内へ吹き込むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の汚泥および焼却灰のガス化溶融方法。
)前記ガス化溶融炉炉内において周方向に旋回円を描くように焼却灰および乾燥汚泥を吹き込むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の汚泥および焼却灰のガス化溶融方法。
(6)前記気流床型ガス化溶融炉には気流搬送による原料供給ノズルを有し、当該原料供給ノズルが、ガス化溶融炉の炉内直径に対して1/2〜1/5の直径からなる炉と同軸の旋回円の接線方向に向けて、複数本設置されて、前記ガス化溶融炉炉内において周方向に旋回円を描くように焼却灰および乾燥汚泥を吹き込むことを特徴とする汚泥および焼却灰の処理方法
なお、本発明におけるスラグとは、乾燥汚泥または焼却灰中の灰分を融点以上にまで昇温することによって溶融させた状態のもの、あるいはその溶融状態の灰を冷却することによって再度固化させた状態のものを指す。
本発明により、下水の生物学的処理施設から発生する余剰の活性汚泥を焼却処理して発生する焼却灰および下水汚泥を、高効率かつ低コストに溶融処理することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。図2に本発明に関するフローシートの一例を示す。
下水の生物学的処理により、下水場の処理施設から排出された脱水ケーキ4は、流動床式等の汚泥焼却炉1において800〜900℃程度の温度で空気5によって燃焼される。脱水ケーキの組成は、下水処理場における処理方式の違い、また季節によっても異なるが、一般的には、水分70〜90質量%(脱水ケーキ全重量ベース)、灰分5〜40質量%(乾燥汚泥重量ベース)、有機物60〜95質量%(乾燥汚泥重量ベース)程度である。汚泥焼却炉1から放出された排ガス(燃焼排ガス)および焼却灰は廃熱回収器11によってガス顕熱を回収された後、サイクロン12において焼却灰7の大半を、排煙脱硫設備13によって排ガス中の汚染物資を除去され、更に、電気集塵機14において残存する微細な焼却灰7を除去された後に煙突から放散される。なお、サイクロン12や電気集塵機14の代わりに他の集塵設備(例えば金属フィルター、セラミックスフィルター、バグフィルター)を用いても構わない。
一方、同じく下水処理場から排出された脱水ケーキ4の一部は、気流乾燥機等の汚泥乾燥設備16へ導入され、乾燥処理が行われる。
汚泥乾燥設備16から排出された乾燥汚泥17は、先の汚泥焼却炉1において発生した焼却灰7と共に、窒素または空気の気流搬送によって気流床型のガス化溶融炉20へ投入される。ガス化溶融炉20内において、乾燥汚泥17中の有機物(乾燥汚泥重量ベースで60〜95質量%程度含有)、および焼却灰7中に僅かに混入する有機物(未燃物であって、焼却灰重量ベースで0.1〜20質量%程度含有)は、酸素19あるいは酸素富化空気をガス化剤とした部分酸化反応(不完全燃焼)によって、1100〜1700℃の高温でガス化され、高温の可燃性ガス(主成分はH、CO、CH、CO、HO)へ転換する。また同時に、乾燥汚泥17中の灰分および焼却灰7中の灰分(焼却灰は灰分が90質量%程度と大部分を占める)は溶融しスラグへと転換する。スラグの大半はガス化溶融炉の底部より抜き出されるが、その一部はガス化溶融炉20から排出された高温の可燃性ガス中に飛散同伴するため、ガス化溶融炉20上部のガス冷却器21においてスプレー水あるいはクエンチガス22を吹き込んで1000℃以下にまで冷却し、飛散した溶融スラグを固化することによって灰付着トラブル(スラッギング)を防止する。
ガス化溶融炉20から排出された高温の可燃性ガス23は汚泥焼却炉1へと投入され、補助燃料として利用される。この際、ガス冷却器21から排出された可燃性ガス23を直ちに汚泥焼却炉1へ投入することによって、可燃性ガス23の顕熱も汚泥焼却炉1内の温度維持のために効率良く(ダイレクトに)利用可能となる。なお、ガス化溶融炉20において生成する可燃性ガス23の性状(発熱量、発生量)は、様々なガス化条件(温度、汚泥性状、放熱量等)によって変化する。また、汚泥焼却炉1において、補助燃料で補う必要のある熱量も様々な焼却条件(温度、汚泥性状、放熱量等)によって変化する。従って、生成した可燃性ガス23のみでは汚泥焼却炉1で必要とする熱量を全て賄うことのできない場合には、別途補助燃料6を汚泥焼却炉1へ添加しても良く、また逆に可燃性ガスが余剰となる場合には、余った可燃性ガス24を他の用途に利用しても良い。
無論、汚泥焼却炉1がガス化溶融炉20に近接していない等の理由によって、ガス化溶融炉20で生成した可燃性ガス23を汚泥焼却炉1の補助燃料として使用しない場合には、それらの可燃性ガス23をガス処理(廃熱回収、脱塵、脱硫等)後、各種有効利用用途(汚泥乾燥機燃料、発電燃料、メタノール等化学品合成原料、水素製造原料等)に使用しても構わない。
汚泥焼却炉1の方式としては、現在の下水汚泥焼却炉の大半を占める流動床式焼却炉(循環流動床式焼却炉を含む)、多段式焼却炉のいずれの方式であっても構わない。汚泥焼却炉1へ投入する燃焼用空気5は、あらかじめ廃熱回収器11を通すことによって、あるいは別の熱源を利用することによって、予熱を行っても構わない。
汚泥乾燥設備16の熱源には廃熱回収器11において回収された熱を利用する。この際の汚泥乾燥設備16の方式として、高温の熱風と汚泥を直接接触させる直接加熱式の汚泥乾燥機(具体的には気流乾燥機、熱風粉砕乾燥機、流動層式乾燥機、攪拌機付回転ドラム式乾燥機等)を用いる場合には、廃熱回収器11としてはガス・ガス熱交換器タイプのものを採用する。また、蒸気等の熱媒体を熱源とし、加熱壁を介した伝導伝熱によって汚泥を乾燥する、いわゆる間接加熱式の汚泥乾燥機を用いる場合には、廃熱回収器11としてはボイラータイプのものを採用する。廃熱回収器11から供給される熱源だけでは汚泥乾燥設備16における必要熱量を賄うことのできない場合には、他の何らかの熱源と併用しても良い。
なお、汚泥乾燥機からは汚泥特有の臭気ガス26が発生するが、汚泥焼却炉1へこの臭気ガス26を投入し、脱臭処理することが望ましい。無論、別の脱臭装置(活性炭脱臭、生物脱臭等)を設置しても構わない。
このようにして汚泥乾燥設備16から排出された乾燥汚泥17は、発熱量が6300〜21000kJ/kg−dry程度である。この乾燥汚泥17をガス化溶融炉20へ吹き込む際は、粒径は0.1μm〜3mm程度とすることが好ましい。粒径が3mmよりも大きい場合でもガス化を行うことは可能であるが、粒子の比表面積が減少(酸素との接触面積の低下)あるいは昇温速度の低下に起因するガス化速度の低下に伴い、未燃物が多くなり、汚泥のガスへの転換率が低下する。一方、乾燥汚泥17の粒径を0.1μmより小さくするためには、多くの動力を消費する粉砕機が別途必要となり、また、0.1μmより小さな粒径は気流搬送する際の配管閉塞等の原因となるので、粒径は上記の範囲とすることが好ましい。
汚泥は主に微細な微生物あるいは細菌類の集合体であるため、熱風乾燥機等によって乾燥を行うだけで、あるいは乾燥後簡易な解砕機によって破砕するだけで、容易に0.1μm〜3mm程度の粒径となる。
なお、ガス化溶融炉20の蒸発潜熱による効率低下を防止するため、また、汚泥の粒径を3mm以下とするためには、汚泥中の水分含有量は極力20質量%以下とすることが望ましい。
一方、汚泥焼却炉1から発生した焼却灰7については、粒径が0.1μm〜2mmのものをガス化溶融炉20に吹き込むことが好ましい。すなわち、乾燥汚泥17と共にガス化溶融炉20へ投入する焼却灰7中に、灰粒子の焼結あるいは凝集等の理由によって見かけ上の粒径が2mm以上となった大粒子(いわゆるクリンカ灰)が含まれる場合には、ボールミルあるいはロールミルのような粉砕機を事前に利用することによって粒径を2mm以下とすることが望ましい。焼却灰7は乾燥汚泥17よりも粒子密度が大きいため、粒径が2mmより大きい場合にはガス化溶融炉20内投入後に炉内の気流に乗ることができずダイレクトに炉底へ落下してしまい、焼却灰7が充分に溶融するための炉内滞留時間を得ることができない。また、粒径の下限は特に規定しないが、0.1μmよりも小さな粒径は搬送系のホッパー内における棚つりの原因となるため好ましくない。特に、サイクロン5で捕集することができずに、更に後段の電気集塵機14で回収された微細の焼却灰(いわゆる飛灰)は、有害な重金属成分を高濃度で含有する場合もあるため、本プロセスの系外において別途処理しても良い。
ガス化溶融炉20内の温度は、焼却灰7および乾燥汚泥17中に含まれる灰分の融点に応じた温度に設定され、灰分の融点よりも高い温度とするので1000℃以上とするが、必要以上の高温とすることは、ガス化溶融炉20内の炉壁の寿命を極度に短縮し、かつ放熱による熱損失も増加するために好ましくないので1700℃以下とする。
ガス化の際にガス化剤として添加する酸素19は同伴窒素による持ち出し顕熱を削減する観点から、可能な限り高濃度酸素を用いることが好ましい。しかし、必要以上に高濃度の酸素19を製造することは酸素製造設備18における投入エネルギーの増大等デメリットが増すばかりであり、ガス化そのものに与える影響は少ないため、ここで用いる酸素19は一般的な酸素製造法(圧力スイング吸着法〈PSA〉、深冷分離法)によって製造可能な濃度(80%以上)で良い。
ここで添加する酸素量は、乾燥汚泥17および焼却灰7中の有機物を完全燃焼させるために必要な酸素量(いわゆる理論酸素量)よりも少ない酸素量とする。その割合は汚泥発熱量およびガス化溶融炉20内温度を何度に設定するかによって異なるが、理論酸素量を1とした場合の割合で0.2〜0.9の範囲内で調整することが好適である。0.2未満の酸素比では、ガス化せずに未燃物へと転換する有機物が極めて多くなるため、また、0.9を超過する酸素比では、可燃性ガス(CO、H、CH等)へ転換する割合がほとんどなくなり、大部分が燃焼ガス(CO、HO)まで転換してしまうため、本発明の目的からして好ましくない。
また、ガス化溶融炉20内の温度制御の目的も兼ねて、ガス化剤としてスチームを酸素19と併用しても良い。
なお、ガス化溶融炉20内の圧力は特に規定しないが、大気圧よりも低い圧力とした場合には、外部からの空気の漏れ込みによる爆発の危険性があるため好ましくない。また、大気圧よりも高い加圧条件とする場合には、ガス化溶融炉20をコンパクトにすることのできるメリット、また生成した可燃性ガス23を、常圧程度の圧力で運転される汚泥焼却炉1へブロアーなしで投入できるメリットもある。
ガス化溶融炉20内の温度は、乾燥汚泥17の部分酸化反応に伴う反応熱(発熱反応)によって実質的に維持され、焼却灰7の炉内への投入は灰の昇温、溶解に伴う吸熱(すなわち温度低下)しか伴わない。ガス化溶融炉20内の垂直方向の温度分布は、乾燥汚泥17の吹き込み位置高さの温度を最高とする分布が生じるが、炉の底部においては、発生したスラグを排出口(スラグタップ)を介し安定して炉外へ抜き出すために特に高温で維持する必要がある。従って、焼却灰7と乾燥汚泥17をそれぞれ専用の搬送設備を使用して別々にガス化溶融炉20内へ吹き込む場合、焼却灰7の吹き込み位置を乾燥汚泥17の吹き込み位置よりも下部とすることは、炉の底部の温度低下すなわちスラグタップの閉塞の原因となるため好ましくない。
また、乾燥汚泥17の吹き込み量に対し、多量の焼却灰7を吹き込み過ぎた場合、乾燥汚泥17の部分酸化反応に伴う反応熱のみでは、焼却灰7を溶融温度以上に昇温させることがもはや不可能となるため、本発明の目的からして好ましくない。乾燥汚泥17の吹き込み量に対して吹き込むことが可能な焼却灰7量は、種々の条件(溶融炉内温度、乾燥汚泥発熱量、焼却灰熱容量、炉体放熱量等)によって異なるため一概には規定できないが、乾燥汚泥17重量(乾燥ベース)に対して3倍以下、特に安定したガス化溶融炉20内状態(部分酸化反応、灰の溶融)を維持し、質の良い可燃性ガス23およびスラグ10を得るためには等倍以下とすることが望ましい。
乾燥汚泥17および焼却灰7は、ガス化溶融炉20内へ炉内の周方向に旋回を描くように吹き込むことにより炉内滞留時間を充分に確保することが望ましい。
図3に、ガス化溶融炉20における焼却灰7および乾燥汚泥17の吹き込み部の一例を示す。
吹き込み部には、気流搬送による原料供給ノズル27を有し、当該原料供給ノズル27が、ガス化溶融炉の炉内直径28に対して1/2〜1/5の直径からなる炉と同軸の旋回円29の接線方向に向けて、複数本設置されている。
焼却灰7および乾燥汚泥17の吹き込み方向は、ガス化溶融炉20内における粒子滞留時間をできる限り長くし、有機物の部分酸化反応および灰の溶融(スラグ化)が充分に起きるように、旋回流とすることが好適である。そのためには、焼却灰7および乾燥汚泥17を各々の原料供給ノズル27(バーナー)から、旋回円29の接線方向に向けて吹き込むことが必要である。
その際の旋回円29径が、ガス化溶融炉20の炉内直径28に対して1/2よりも大きいと、ガス化溶融炉20壁面への粒子による浸食が生じる場合があるので望ましくない。また、逆に、旋回円29径が、ガス化溶融炉20の炉内直径28に対して1/5よりも小さい場合には、充分な粒子滞留時間を確保するための旋回流が生じない。従って、旋回円29径は、ガス化溶融炉20の炉内直径28に対して1/2〜1/5の範囲であることが好適である。
なお、乾燥汚泥17と焼却灰7は、2系列の搬送設備(ホッパー、フィーダー、搬送配管)を用意し、専用の原料供給ノズル27から別々にガス化溶融炉20内へ吹き込む方式でも、また、両者を事前に混合後、同一の原料供給ノズル27からガス化溶融炉20内へ吹き込む方式のどちらでも構わない。両者を事前に混合して供給する方が、乾燥汚泥17の部分酸化反応(発熱反応)に付随して、焼却灰7の昇温速度を急速にすることができるという観点からは望ましい。しかし、乾燥汚泥17と焼却灰7の両者の間で粒径密度に大きな差がある場合には、一連の搬送供給系設備において閉塞等のトラブルが生じる可能性もあるため、ケースに応じて使い分けることが好ましい。
ガス化溶融炉20内において必要なガス滞留時間は、乾燥汚泥17の性状(発熱量、粒径、水分含有量等)や温度によっても異なるが、0.2〜10secとすることが好適である。ガス滞留時間が0.2secよりも短い場合、乾燥汚泥17は充分にガス化することができず、また逆に10secより長い場合には、不必要にガス化溶融炉20の容積が大きくなり、設備コストの増大へつながるため好ましくない。このガス滞留時間は、以下の式の様に定義する。
(ガス滞留時間[sec])=(ガス化溶融炉20内容積[m])
/(ガス化溶融炉20出口ガス流量[m/sec])
本発明で使用する汚泥4として、下水汚泥以外に、産業排水の生物学的処理施設から発生する余剰の活性汚泥(例えば、コークス炉排水(安水)処理設備、ステンレス酸洗排水の処理設備、各種食品工場の排水処理設備から排出される余剰汚泥等)を用いても良い。
また、ガス化溶融炉20へ投入される焼却灰7としては、下水汚泥由来の焼却灰7のみに限定されるものではなく、各家庭から排出される一般廃棄物(生ゴミ等)由来の焼却灰7、建築廃材、シュレッダーダスト等産業廃棄物由来の焼却灰7、あるいは石炭燃焼ボイラーから発生する石炭由来の焼却灰7等どのような焼却灰7を用いても構わない。しかし、溶融温度が1600℃を超えるような焼却灰7を用いる場合、ガス化溶融炉20内の温度を更なる高温とする必要があり、炉の熱効率低下の原因となるため好ましくない。この場合には、何らかの融点降下剤(例えば、石灰、硫酸鉄あるいは塩化鉄のような鉄系凝集剤等)を事前に焼却灰7に添加することが望ましい。無論、焼却灰7の融点が1600℃以下である場合であっても、融点降下剤を添加することによって、ガス化溶融炉20内温度の低下すなわち熱効率の向上を図ってやっても良い。
本発明は、既に稼働している汚泥焼却炉1に対して新たに灰溶融機能を付加させる必要が生じた際に適用することが好適である。すなわち、新たに汚泥乾燥設備16およびガス化溶融炉20等を設置すれば、従来の汚泥焼却プロセスに単なる灰溶融機能を追加するのは無論のこと、汚泥焼却炉1において必要な熱源供給機能も同時に追加することになり、補助燃料6使用量を削減することができる。言い換えれば、バイオマスである汚泥自体の持つエネルギー(発熱量)を有効に活用することによって、外部からの化石燃料由来の投入エネルギーを削減し、限りある貴重なエネルギー源である化石資源の余命延長に貢献することになる。
図4に示したフローに従って、本発明例を実施した。
使用した下水汚泥の分析値を表1に、また汚泥4中に含有される灰分の分析値を表2に示す。この汚泥4は下水処理場の脱水機から排出されたもの(脱水ケーキ)である。また、汚泥焼却炉1において焼却後の焼却灰7中には未燃の炭素分が3質量%−dry含有されていたが、灰分の組成については元の下水汚泥中灰分の組成(表2)と殆ど同様であった。
Figure 0004362428
Figure 0004362428
下水汚泥(脱水ケーキ)100t/dayを汚泥乾燥設備8において乾燥後、生成した乾燥汚泥17(21t/day)(水分含有量5質量%、粒径7μm〜1.2mm(平均粒径220μm))を流動床式汚泥焼却炉1から発生した焼却灰7(4t/day)(粒径0.5μm〜350μm(平均粒径30μm))と共に、窒素による気流搬送によってガス化溶融炉20内へ投入した(焼却灰/乾燥汚泥=1.9)。乾燥汚泥17および焼却灰7は対向位置に設置されたそれぞれ2本ずつの原料供給ノズル27からガス化溶融炉20の直径に対して1/3の旋回円径を描くように投入された。全ての原料供給ノズル27(計4本)はガス化溶融炉200の同一高さレベルに設置され、乾燥汚泥17を吹き込むための2本の原料供給ノズル27はバーナー構造とし、その原料供給ノズル27を介し、乾燥汚泥17と共に酸素19を炉内へ投入するようにした。
なお、汚泥乾燥設備16における必要熱源には汚泥焼却炉1後段の廃熱ボイラー31で回収されたスチーム32を使用した。また、灰分の融点調整(融点降下)のため、灰組成の塩基度(CaO/SiO)が1.0となるように石灰30を乾燥汚泥および焼却灰に事前に添加した。
ガス化溶融炉20内において、乾燥汚泥17および焼却灰7は酸素製造設備18において製造された酸素19(酸素濃度93%)と共に、温度1300℃でガス化溶融され、高温の可燃性ガスおよびスラグへと転換した。生成した高温の可燃性ガスはガス化溶融炉20の上部のガス冷却器21において水スプレー22によって900℃まで冷却された後、汚泥焼却炉1へ導入され、汚泥(脱水ケーキ)4を焼却するための熱源として利用された。汚泥焼却炉1から排出された燃焼後の排ガスはガス処理後(廃熱回収、脱塵、脱硫)後に、煙突から大気放散した。また、汚泥乾燥設備16から発生する排ガス(臭気ガス)は汚泥焼却炉1へ投入することによって、脱臭処理を行った。
本実施例に関して、スタートアップ時を除いては、外部から補助燃料を一切添加する必要がなかった。
表3に本発明例(実施例)および従来の汚泥焼却灰溶融プロセス((1)流動床式汚泥焼却炉+旋回溶融式灰溶融炉、(2)流動床式汚泥焼却炉+電気式灰溶融炉)における補助燃料使用量の比較を示す。本発明例においては、従来法よりも補助燃料使用量を大幅に削減でき、ランニングコストを従来法の7割とすることができた。また、従来法よりも設備構成が極めてシンプルかつコンパクトであるため、設備コストおよび設備設置スペースも大幅に削減可能であった。
Figure 0004362428
従来技術に関するフローシートである。 本発明に関するフローシートである。 本発明の乾燥汚泥および焼却灰のガス化溶融炉内への吹き込み方法を表す図である。 本発明の実施例におけるプロセスのマスバランス(試験結果)である。
符号の説明
1 汚泥焼却炉 2 灰溶融炉
3 排ガス処理設備 4 汚泥(脱水ケーキ)
5 空気 6 補助燃料
7 焼却灰 8 排ガス
9 必要熱源(電力、燃料) 10 スラグ
11 廃熱回収器 12 サイクロン
13 排煙脱硫設備 14 電気集塵機
15 排ガス(煙突へ) 16 汚泥乾燥設備
17 乾燥汚泥 18 酸素製造設備
19 酸素 20 ガス化溶融炉
21 ガス冷却器 22 スプレー水またはクエンチガス
23 可燃性ガス 24 可燃性ガス(余剰分)
25 熱風またはスチーム 26 臭気ガス
27 原料供給ノズル 28 炉内直径
29 旋回円 30 石灰
31 廃熱ボイラー 32 スチーム

Claims (6)

  1. 汚泥焼却炉、汚泥乾燥設備、及び、気流床型のガス化溶融炉を用いた汚泥および焼却灰の処理方法であって、
    下水の生物学的処理により発生し有機物を含有する、乾燥汚泥、および汚泥を焼却して発生した焼却灰を、完全燃焼に必要な理論酸素量の0.2〜0.9倍の酸素または酸素富化空気と共に、前記気流床型のガス化溶融炉へ気流搬送で吹き込んで1100〜1700℃で部分燃焼し、乾燥汚泥および焼却灰中の灰分をスラグへと転換すると共に、乾燥汚泥および焼却灰中の有機物を可燃性ガスへ転換し、
    当該可燃性ガスを前記汚泥焼却炉の補助燃料として、前記汚泥焼却炉にて下水の生物学的処理により発生し有機物を含有する汚泥の脱水ケーキを燃焼して、排ガスおよび焼却灰を発生させ、当該発生した排ガスの顕熱を廃熱回収器で回収して熱風又はスチームを生成すると共に、当該発生した焼却灰を前記気流床型のガス化溶融炉へ吹き込む焼却灰とし、
    前記生成した熱風又はスチームを前記汚泥乾燥設備の熱源として使用して、前記汚泥乾燥設備にて下水の生物学的処理により発生し有機物を含有する汚泥の脱水ケーキを乾燥し、当該乾燥した汚泥を前記気流床型のガス化溶融炉へ吹き込む乾燥汚泥とすることを特徴とする汚泥および焼却灰の処理方法。
  2. 前記汚泥乾燥設備にて前記汚泥の脱水ケーキを乾燥する際に発生する臭気ガスを、前記汚泥焼却炉に投入することを特徴とする請求項1に記載の汚泥および焼却灰の処理方法。
  3. 前記焼却灰の粒径を0.1μm〜2mm、前記乾燥汚泥の粒径を0.1μm〜3mm、及び前記乾燥汚泥の水分含有量を20質量%以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚泥および焼却灰の処理方法。
  4. 前記焼却灰を、前記乾燥汚泥と同一または上方の高さから前記ガス化溶融炉内へ吹き込むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚泥および焼却灰の処理方法。
  5. 前記ガス化溶融炉炉内において周方向に旋回円を描くように焼却灰および乾燥汚泥を吹き込むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の汚泥および焼却灰の処理方法。
  6. 前記気流床型ガス化溶融炉には気流搬送による原料供給ノズルを有し、当該原料供給ノズルが、ガス化溶融炉の炉内直径に対して1/2〜1/5の直径からなる炉と同軸の旋回円の接線方向に向けて、複数本設置されて、前記ガス化溶融炉炉内において周方向に旋回円を描くように焼却灰および乾燥汚泥を吹き込むことを特徴とする請求項5に記載の汚泥および焼却灰の処理方法
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