JP4362047B2 - 食肉加工品処理用組成物及びそれを用いる食肉加工品の製造法 - Google Patents
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Description
上記いずれの場合においても、肉の結着力、保水力増強のための添加物として、リン酸塩が用いられることが知られている。例えば、ポリリン酸ナトリウム等の重合リン酸塩を使用すると、該リン酸塩が金属封鎖作用によって肉蛋白質中で結びついているカルシウムイオンを除去し肉蛋白質に構造的変化を与えて食感の軟化をもたらし、また肉蛋白質のpHを上昇させ、保水力を増強させて歩留まりを向上させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、リン酸塩の使用は安全性が懸念され、また、リン酸塩を使用すると、舌と歯の表面にリン酸塩特有のざらつきが生じ、食感を損なうことも指摘されている。このため、大豆蛋白や小麦蛋白等の植物性蛋白質あるいは卵白粉や脱脂粉乳等の動物性蛋白質が、乳化性、ゲル化性、保水性等の様々な機能特性を備えていることから、これらの異種蛋白が食肉加工品の製造に使用されるようになった。例えば、かかる異質蛋白の一種として、粉末状大豆蛋白の5重量%水溶液のpHが8.0〜10.0である粉末状大豆蛋白の使用が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
すなわち、異種蛋白を添加するとピックル液が高粘度になるため、インジェクターでの注入作業性を大きく悪化させたり、ピックル液が肉内へ充分に浸透せずにピックル溜りとなり、不均一なスライス面となってしまうといった問題、あるいは食肉加工品(製品)の食感にぼそつきが生じたり、身割れし易くなってスライス適性が低下するといった問題等である。このため、例えば、大豆蛋白の粘度を低下させる目的で、これまでに蛋白を酵素的に加水分解する方法が多く開発されてきた。
さらに、最近の健康指向と添加物のラベル表示を極力少なくしたいという市場の要求の高まりにより、リン酸塩及び異種蛋白を使用する必要のない食肉加工品の処理方法が望まれている。
(1)クレアチンキナーゼ(CK)及びグリセルアルデヒド−3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の少なくとも一方を有効成分とし、
低イオン濃度の塩溶液中において挽肉状食肉から抽出された抽出液を硫酸アンモニウム濃度35重量%以上の水溶液中に30分以上静置して沈殿物を除去したものである食肉加工品処理用組成物、
(2)食肉の抽出液から、分子量10000以下の成分を除去したものである上記(1)に記載の食品加工処理用組成物、
(3)食肉の抽出液を脱水/乾燥して粉末状とした上記(1)または(2)に記載の食肉加工品処理用組成物、
に係るものである。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の食肉加工品処理用組成物を、原料肉に注入/混合する食肉加工品の製造方法、
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の食肉加工品処理用組成物を、原料肉100グラム当り1〜10グラム注入/混合することを特徴とする食肉加工品の製造方法、
に係るものである。
そして、かかる本発明の組成物を使用してハム、ソーセージ等の食肉加工品を製造すると、物性、食味、食感ともに良好な製品が得られる。
本発明において原料として用いる食肉は、通常の場合、牛肉、豚肉、鶏肉等である。魚肉を用いても差し支えないが、魚肉は特有の臭気があるため、できれば前述した畜肉及び家禽肉を用いた方がよい。また、本発明者の研究により、赤身肉よりも白身肉を用いた方が効果の高いことが判明したので、白身肉の方が好適である。
本発明にしたがって食肉加工品処理用組成物を食肉より抽出する際、使用する溶液は、水でも差し支えないが、該溶液として食肉中の塩可溶性蛋白質が溶解しない程度の低イオン濃度の食塩水を用いると、抽出性がよくなる。食塩水中のNaCl濃度は0.1〜1.5重量%が適当である。また、処理溶液の温度は4〜10℃が適当である。
好適には、挽肉にした食肉を水又は低イオン強度の塩溶液中で均一化し、溶解、抽出された液に硫酸アンモニウムを加え硫酸アンモニウム濃度35重量%以上の飽和状態とし、30分以上静置した後、沈殿を除去し、上澄みから透析又は限外濾過等により分子量10000未満の成分を除去した水溶液で使用するか、又は、さらにこれを凍結乾燥機等で乾燥し、粉末状にした食肉加工品処理用組成物を、原料肉に注入/混合させてなる食肉加工品を製造する。
なお、鶏肉や魚肉由来の組成物には、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)よりもクレアチンキナーゼ(CK)を多く含むことが判った。そして、この組成物は、脂肪を含まない非エマルション系でも、ゲル強度の促進効果が強く認められた。
上記組成物の添加量については、上記の如き特定の蛋白質の合計量が乾物重量換算で食肉加工品原料全体の0.5重量%より少ないと添加の効果がなく、15重量%より多いと味や風味に与える影響が大きくなる。したがって、望ましくは食肉加工品原料全体の0.5〜10重量%であり、より望ましくは、1.0〜5.0重量%である。上記組成物の添加は、通常、ハム、ソーセージ類の場合は、原料肉の肉ひき或いはミキシングの工程等において実施される。
豚胸最長筋の赤身部分を試料肉としてミンチにてホモジネートした後、これを25mM塩化カリウム−50mMイミダゾール緩衝液(pH6.5)中で4℃にて30分処理後、得られた上澄みをW−SP画分として透析後、凍結乾燥した。さらに、上記の澄みに硫酸アンモニウムの粉末を加えて、硫酸アンモニウム濃度37.5%にし、その上澄みを採取し、流水透析した後、凍結乾燥したものをSPsとして得た。また、上澄みをとった残渣は水洗処理肉(WWM)として、モデルソーセージの調製に供試した。
モデルソーセージは上記の水洗処理肉(WWM)とW−SP又はSPsの混合試料(蛋白質濃度7%,pH6.5)に、図1に示す量の食塩(NaCl)とコーン油とを加えてホモジネートし、成型後、70℃で30分間加熱処理することで調製した。かくして得られた各モデルソーセージについてゲル強度を測定した。
その結果、図1に示すとおり、W−SPを、上記WWMの重量を基準に2.5%の割合でモデルソーセージに配合することで、モデルソーセージのゲル強度が不添加のもの(図1中の白抜きの棒グラフ)に比べて約2倍に増大した。特に、0.9%の低濃度の食塩存在下で、かつ脂肪含量が高い場合に、W−SPの添加効果が強く認められた。なお、本実験におけるWWMの蛋白質濃度は4.5%、W−SPのWWMへの添加量は2.5%とした。
また、W−SPの硫酸アンモニウム処理により得られた親水性の高いSP−1画分を添加したところ、図2に示すとおり、無添加のものに比べて約10倍強いゲル強度増強効果を示すことが確認された。なお、本実験において、WWMの蛋白質濃度4.5%、W−SP又はSPsのWWMへの添加量2.5%、コーン油添加量10%、食塩添加量1.2%とした。
このように、W−SP、特に硫酸アンモニウム処理を行ったSPsは、得られたソーセージに対して、ゲル強度の促進を示したことから、エマルジョンタイプの肉製品の物性改善に関与することが判明した。
鶏ブロイラーのモモの赤身肉部分を試料肉としてミンチにてホモジネートした後、これを0.15%食塩溶液中で4℃にて1時間処理後、上澄みを得た。この上澄みに硫酸アンモニウムの粉末を加えて、硫酸アンモニウム濃度40%にし、その上澄みを採取し、流水透析した後、凍結乾燥したものをSPcとして得た。また、実施例1と同様に、W−SP並びにSPsを調製した。
ミートバターではWWMに対してW−SP、SPs又はSPcを混合し、この混合試料(蛋白濃度7%,pH6.5)にはコーン油を添加せず、そのまま成型後、70℃で30分間加熱処理することで調製した。
SPsを、上記WWMの重量を基準に2.5%の割合でモデルソーセージに配合することで、図3に示すとおり、ミートバターのゲル強度が無添加のものに比べて約8倍に増大した。特に、SPcを添加した場合には、無添加のものに比べて、約26倍に増加し、SPcでは油脂を添加しない非エマルションタイプの肉製品においても、優れた添加効果が確認された。なお、本実験でのWWMの蛋白質濃度は4.5%、W−SP、SPs又はSPcのWWMへの添加量は2.5%、コーン油添加量は0%、食塩濃度は1.2%であった。
泳動条件:30mA定電流、泳動時間:3時間、M:分子量マーカー)。その結果、図4に示すとおり、SPsには分子量35kDaのグリセルアルデヒド−3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のバンドが強く認められた。一方、SPcではSPsに認められたグリセルアルデヒド−3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のバンド以外に分子量約42kDaに濃くバンドが現れた。この分子量42kDaの食肉由来の蛋白質はプロテインシークエンサーによる構造解析の結果、クレアチンキナーゼ(CK)であることが確認された。
Claims (5)
- クレアチンキナーゼ(CK)及びグリセルアルデヒド−3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の少なくとも一方を有効成分とし、
低イオン濃度の塩溶液中において挽肉状食肉から抽出された抽出液を硫酸アンモニウム濃度35重量%以上の水溶液中に30分以上静置して沈殿物を除去したものである食肉加工品処理用組成物。 - 前記抽出液から、分子量10000以下の成分を除去したものである請求項1に記載の食肉加工品処理用組成物。
- 前記抽出液を脱水/乾燥して粉末状とした請求項1または請求項2に記載の食肉加工品処理用組成物。
- 請求項1ないし請求項3に記載の食肉加工品処理用組成物を、原料肉に注入/混合する食肉加工品の製造方法。
- 請求項1ないし請求項3に記載の食肉加工品処理用組成物を原料肉100グラム当たり1〜10グラム注入/混合する食肉加工品の製造方法。
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