モップ、マットなどのダストコントロール製品やタオル、シーツ、ハンカチ、下着、クロスやエプロンなどのリネン製品やその他の衣料品等の繊維製品からなる洗濯物を乾燥させる工程では、一般にタンブラー式(「回転ドラム式」とも呼ぶ)の洗濯物乾燥装置が用いられている。特開平4−49934号公報(特許文献1)には、洗濯されたダストコントロール製品の回転ドラム式洗濯物乾燥装置が記載されており、この従来の洗濯物乾燥装置について次に説明する。
図9は、従来の洗濯物乾燥装置102の構成概略図である。外胴131には、回転駆動する回転ドラム114が内装され、この回転ドラム114のほぼ全面にパンチ孔113が設けられている。また、前記回転ドラム114は、ローラー140によって支持され、ブーリ170、172及びベルト173を介して接続されたドラムモータ171によって回転駆動される。洗濯物115は、前記回転ドラム114内に投入する段階において、既に洗濯・すすぎ・脱水工程が完了し、乾燥前の状態にある。また、図9の洗濯物115はダストコントロール製品であり、油剤を噴霧するスプレーノズル167が配設されている。
前記回転ドラム内に洗濯物115を投入後、この回転ドラム115を回転させ、連続的に前記洗濯物115を回転ドラム115内で強制落下させる。排風ファン136による吸収力を利用して、導風部125から外気を引き込み、この導風部125内に設置された蒸気熱交換器126により外気を加熱して高温乾燥空気に変換する。この高温乾燥空気を前記回転ドラム114内に導入し、この回転ドラム114内で落下中の前記洗濯物115に前記高温乾燥空気を吹き付け、前記洗濯物115から水分を強制蒸発させて乾燥させる。前記高温乾燥空気は、前記洗濯物115と接触することにより温度が下がり湿度が上昇した中温湿潤空気になる。この中温湿潤空気は、排風ファン136により、前記パンチ孔113を介して脱落繊維を除去するリント取かご138と排気ダクト134を通過して、排気ダクト116から装置外へ放出される。
図9に示すような従来の洗濯物乾燥装置2の設計思想は、1台の装置で単位時間当たりにいかに多くの洗濯物を処理するかに重点が置かれており、装置外から可能な限り低湿度の空気を導入して加熱された前記高温乾燥空気が乾燥工程に用いられ、温度が下がり湿度が上昇した前記中温湿潤空気を全て排気し、この排気量に応じた空気を順次導入し続けるワンパス方式が採用されていた。更に、前記蒸気熱交換器126の伝熱表面積を2層、3層と拡げて加熱時間を短縮し、前記排風ファン136の高性能化により時間当り熱風換気回数を増加させ、前記中温湿潤空気の排気流量を可能な限り増大させて乾燥時間の短縮が行われていた。
特開平4−49934号公報
従って、乾燥時間の短縮に重点をおいた従来の洗濯物乾燥装置は、短時間に大量の高温乾燥空気を造り出す必要があり、大型の排気ファン136によって大量の低温外気を高速で前記蒸気熱交換器126を通過加熱させるため、冷却が激しく、ファンによる換気回数が高くなるほど前記蒸気熱交換器の消費蒸気量が増大し、生成された高温乾燥空気は高速で乾燥装置内を通過することとなり、洗濯物との十分な熱交換が行われる前に排気していた。即ち、従来の洗濯物乾燥装置は、前記蒸気熱交換器126により付与された熱量が多量に残存する中温湿潤空気を全て大気中に排出するため熱効率が悪く、前記蒸気熱交換器126へ蒸気を供給するために使用されるボイラーの燃料消費量が増大し、炭酸ガスを多量に大気中へ放出していた。また、従来の洗濯物乾燥装置に配設された排気ファン136は、前記中温湿潤空気を多量に高速で排出する必要があり、電力消費量が膨大であった。現在、環境問題に関し、炭酸ガス排出量の削減が世界的な最重要課題の1つに挙げられており(「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」等)、炭酸ガスを排出する機器の省エネルギー運転及び省エネルギー化が要求されている。しかし、上述のように、従来の洗濯物乾燥装置は、熱効率の低いワンパス方式であるため、加熱時間や高温乾燥空気流量の調整により、炭酸ガス排出量を削減するには限界があった。
更に、従来の洗濯物乾燥装置は、含有水分の少ない高温乾燥空気を用いて乾燥が短時間で行われるため、前記繊維製品に要求される良好な肌触りを与える風合(柔軟性、嵩高など)を乾燥工程において洗濯物に付与することは困難であった。即ち、糸の膨らみも少なく生地の嵩高及び製品の柔軟性も不十分なクリーニング(洗濯及び乾燥)が繰り返され、洗濯物は徐々に新品に比べ見栄えや風合が変化し商品性が低下していた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、エネルギー効率が良く、炭酸ガス排出量が低減することができ、乾燥された繊維製品に好適な風合を付与する洗濯物乾燥方法及び洗濯物乾燥装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、本発明の第1の形態は、蒸気熱交換器により加熱生成された高温乾燥空気を回転ドラム内に導入し、この回転ドラム内に収容された洗濯物を前記回転ドラムの回転により連続的に前記ドラム内で強制落下させ、この落下中の前記洗濯物に前記高温乾燥空気を吹き付けて前記洗濯物から水分を強制蒸発させて洗濯物を乾燥させ、前記高温乾燥空気に前記蒸発水分を吸収させて大気中に排気する洗濯物乾燥方法において、前記蒸発水分を吸収して排気される中温湿潤空気の一部を前記蒸気熱交換器に循環させ、この循環した中温湿潤空気と低温外気との混合空気を前記蒸気熱交換器により加熱して多量の水蒸気を含有し得る前記高温乾燥空気に変換し、この高温乾燥空気を前記洗濯物に吹き付けて前記洗濯物の水分を蒸発吸収しながら前記洗濯物を乾燥し、この蒸発作用で前記高温乾燥空気は冷却されて中温湿潤空気に変換され、前記洗濯物がこの中温湿潤空気との接触下で繰返し乾燥され、この繰返しにより洗濯物を嵩高に風合良く乾燥させる洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第2の形態は、前記第1の形態において、前記蒸気熱交換器により加熱生成される高温乾燥空気の温度は110℃〜180℃であり、前記中温湿潤空気の温度は50℃〜90℃である洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第3の形態は、前記第1又は第2の形態において、前記中温湿潤空気の循環量は前記回転ドラムから排出される排気量の40%〜99%である洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第4の形態は、空気を導入する導風部と、この導風部に連接され前記空気を高温乾燥空気にまで加熱する蒸気熱交換器と、収容された洗濯物が連続的に落下する過程で前記高温乾燥空気を吹き付けることにより前記洗濯物が乾燥される回転ドラムと、この高温乾燥空気の吹付により洗濯物の水分を蒸発吸収して生成される空気を前記回転ドラムから排気する排風部から構成される洗濯物乾燥装置において、前記高温乾燥空気は前記洗濯物から強制蒸発した水分を吸収すると同時に温度低下して中温湿潤空気に変換され、この中温湿潤空気の一部を前記導風部に循環させる循環路と、前記循環させる空気量を調整する循環量調整手段が設けられ、この循環した中温湿潤空気と低温外気との混合空気を前記蒸気熱交換器により加熱して多量の水蒸気を含有し得る高温乾燥空気に変換し、この高温乾燥空気が前記洗濯物に吹き付けられて前記中温湿潤空気に変換され、前記洗濯物がこの中温湿潤空気との接触下で繰返し乾燥され、この繰返しにより洗濯物を嵩高に風合良く乾燥させる洗濯物風合乾燥装置である。
本発明の第5の形態は、前記第4の形態において、前記循環路には低温の外気を導入する開閉自在な外気導入口が設けられる洗濯物風合乾燥装置である。
本発明の第6の形態は、前記第4又は第5の形態において、前記循環路が前記排風部に接続される循環導入部と前記導風部に接続される循環導出部から構成され、前記循環導入部が前記排風部に接続された状態で前記循環導出部を開閉する導出部開閉手段を具備する洗濯物風合乾燥装置である。
本発明の第7の形態は、前記第4〜6のいずれかの形態において、前記排風部に排気ダクトが連接され、前記循環量調整手段が前記排気ダクト及び/又は循環路内に配設された開口面積可変用のダンパーから構成される洗濯物風合乾燥装置である。
本発明の第8の形態は、前記第4〜7のいずれかの形態において、前記導風部が複数設けられ、前記排風部から各導風部に前記中温湿潤空気を循環させる複数の循環路を有する洗濯物風合乾燥装置である。
本発明の第9の形態は、前記第4〜8のいずれかの形態において、前記導風部及び/又は前記排風部に除塵糸用のフィルターを配置する洗濯物風合乾燥装置である。
本発明の第10の形態は、空気を導入する導風部と、この導風部に連接され前記空気を高温乾燥空気にまで加熱する蒸気熱交換器と、収容された洗濯物が連続的に落下する過程で前記高温乾燥空気を吹き付けることにより前記洗濯物が乾燥される回転ドラムと、この高温乾燥空気の吹付により洗濯物の水分を蒸発吸収して生成される中温湿潤空気を前記回転ドラムから排気する排風部から構成される洗濯物乾燥装置に付設され、前記高温乾燥空気は前記洗濯物から強制蒸発した水分を吸収すると同時に温度低下して中温湿潤空気に変換され、前記排風部から排気される前記中温湿潤空気の一部を前記導風部に流通させる循環路を設け、この循環路は前記排風部に接続される循環導入部と、前記導風部に接続される循環導出部から構成され、前記中温湿潤空気を循環させる排気循環装置である。
本発明の第11の形態は、前記第10の形態において、前記循環導出部が複数設けられ、前記排風部から各循環導出部に前記中温湿潤空気を循環させる複数の循環路を有する排気循環装置である。
本発明の第1の形態によれば、排気される前記中温湿潤空気の一部を乾燥装置のヒータ(蒸気熱交換器)に循環させ、この循環した前記中温湿潤空気と低温外気との混合空気を前記蒸気熱交換器により加熱して多量の水蒸気を含有し得る前記高温乾燥空気に変換し、この高温乾燥空気を前記洗濯物に吹き付けて前記洗濯物を乾燥させるから、前記蒸気熱交換器から与えられる熱量を高効率に利用することができ、前記蒸気熱交換器の稼動により排出される炭酸ガスを大幅に削減することができる。前記洗濯物の乾燥初期(スタート時)において、前記蒸気熱交換器を通過した外気が加熱され、高温乾燥空気となって前記洗濯物に吹付けられ、強制的に水分が蒸発させられるが、前記洗濯物が加熱され、含有されていた水分が蒸発を始めると、速やかに前記蒸気熱交換器へ循環される中温湿潤空気に変換される。前記中温湿潤蒸気は、前記蒸気熱交換器を通過するため、循環乾燥開始数分後には前記中温湿潤空気が過熱水蒸気を含有する高温乾燥空気に変換されるから、伝熱効率が著しく高く、充分多量の水蒸気を含有し得る高温過熱水蒸気を洗濯物風合乾燥装置内へ連続的に循環供給することができる。即ち、循環される前記中温湿潤空気は、外気に比べて水分の含有量が多く、前記中温湿潤空気と低温外気との混合空気を沸点(100℃)以上に加熱することにより、前記混合空気に含まれる水分が過熱水蒸気となる。沸点(100℃)以上に加熱された水蒸気は、一般に「過熱水蒸気」と呼ばれており、この過熱水蒸気は、前記洗濯物に接触すると一部が気体のままで洗濯物と熱交換して離脱するが、残りは洗濯物表面で微細な液滴となり、この液滴による凝縮伝熱効果により洗濯物全体が急速に加熱され、高効率に洗濯物を乾燥させることができる。更に、前記過熱水蒸気が液化しても、高温であるため速やかに蒸発することから、前記過熱水蒸気は、同温の乾燥空気(熱風)に比べ、短時間に洗濯物を加熱乾燥させることができる。また、前記過熱水蒸気は、高効率な乾燥条件を付与すると共に、前記過熱水蒸気が洗濯物によって冷却されて中温湿潤空気に変換される。この中温湿潤空気の状態は、乾燥工程において、前記洗濯物による持込水分量が蒸発排気により大幅に減少するまでの比較的長時間に亘り維持されるから、中温湿潤空気雰囲気中における前記洗濯物の回転落下運動が繰り返され、前記洗濯物に良好な風合(柔軟性、嵩高など)を付与することができる。
更に詳細には、上述の乾燥過程において、前記洗濯物風合乾燥装置内では、前記洗濯物に含有されていた水分が蒸発により徐々に減少し、乾燥工程中に大部分の水分が装置外へ排気されるまで、過熱水蒸気と飽和水蒸気の混合気体で充満される。従って、前記洗濯物は、充分な水蒸気により蒸し上げられる状態となるから、乾燥と同時に、乾燥に使用された熱エネルギーと洗濯物が含有していた水分によりバルキー加工(風合出し加工)を前記洗濯物に施すことができる。換言すれば、単一の設備において、最も効率的に乾燥と風合加工が同時に行われるから、従来の洗濯物乾燥装置より使用される熱エネルギーを大幅に削減することができる。
本発明の第2の形態によれば、前記中温湿潤空気の温度が50℃〜90℃であるから、洗濯物の水分を吸収した中温湿潤空気を110℃〜180℃に加熱することにより、前記中温湿潤空気を多量の水蒸気を含有し得る高温乾燥空気に変換することができる。前記中温湿潤空気の温度が50℃〜90℃である場合、その飽和水蒸気量は160g/m3〜850g/m3であり、110℃〜180℃に加熱された高温乾燥空気は約1630g/m3〜6000g/m3以上の飽和水蒸気量を含有し得ることとなる。従って、前記高温乾燥空気により洗濯物を好適に乾燥することができる。更に、110℃〜180℃に加熱された高温乾燥空気に含有される水蒸気は、過熱水蒸気となり、前記凝縮伝熱効果により洗濯物の水分を高効率に蒸発させることができ、前記洗濯物に良好な風合を付与することができる。
本発明の第3の形態によれば、前記中温湿潤空気の循環量が前記回転ドラムから排出される排気量の40%〜99%であるから、外気に比べて多量に水分を含んだ前記中温湿潤空気から前記高温乾燥空気を加熱生成することができる。従って、従来の洗濯物乾燥装置に比べ、前記高温乾燥空気の水蒸気含有量を増加させることができ、好適な過熱水蒸気を生成することができる。この過熱水蒸気を含んだ前記高温乾燥空気により前記洗濯物を乾燥させることにより、乾燥過程で生じる飽和水蒸気によって前記洗濯物に良好な風合を付与することができる。
本発明の第4の形態によれば、前記中温湿潤空気の一部を前記導風部に循環させる循環路と、前記循環させる空気量を調整する循環量調整手段が設けられ、この循環した中温湿潤空気と低温外気との混合空気を前記蒸気熱交換器により加熱して多量の水蒸気を含有し得る高温乾燥空気に変換するから、前記蒸気熱交換器から与えられる熱量を高効率に利用することができる。従って、前記蒸気熱交換器の稼動によりボイラーから排出される炭酸ガスを大幅に削減することができ、環境汚染を防止し、ランニングコストが低減された洗濯物風合乾燥装置を提供することができる。更に、循環される前記中温湿潤空気は、外気に比べて水分の含有量が多く、前記中温湿潤空気と低温外気との混合空気を沸点(100℃)以上に加熱することにより、前記混合空気に含まれる水分が過熱水蒸気となる。この過熱水蒸気は、前記洗濯物に接触すると液化し、この液化による凝縮伝熱効果により洗濯物が急速に加熱され、高効率に洗濯物を乾燥させることができる。従って、前記第5の形態によれば、中温湿潤空気を循環させ、過熱水蒸気からなる高温乾燥空気を加熱生成し、この高温乾燥空気により洗濯物を高効率に乾燥させることができ、洗濯物を過剰に過熱することなく、洗濯物に良好な風合(柔軟性、嵩高など)を付与する洗濯物風合乾燥装置を提供することができる。
本発明の第5の形態によれば、前記循環路には低温の外気を導入する開閉自在な外気導入口が設けられるから、所望量の外気を循環する中温湿潤空気に混合することができる。従って、前記蒸気熱交換器における中温湿潤空気の過熱時間や洗濯物の乾燥時間又は洗濯物による持込水分量に応じて、高温乾燥空気の水分含有量を調整することができる。
本発明の第6の形態によれば、前記循環導入部が前記排風部に接続された状態で前記循環導出部を開閉する導出部開閉手段を具備するから、前記循環導出部を開放することにより、前記導風部に配設されたフィルターを容易に清掃、補修又は交換することができると共に、前記蒸気熱交換器の清掃、点検、補修等を簡易に行なうことができる。
本発明の第7の形態によれば、前記排風部に排気ダクトが連接され、前記循環量調整手段が前記排気ダクト及び/又は循環路内に配設された開口面積可変用のダンパーから構成されるから、前記ダンパーにより簡易に中温湿潤空気の循環率を調整することができる。
本発明の第8の形態によれば、大型の洗濯物風合乾燥装置においては、前記導風部が複数設けられ、前記排風部から各導風部に前記中温湿潤空気を循環させる複数の循環路を有するから、循環される前記中温湿潤空気の供給量を増大させることができる。更に、前記回転ドラムに複数の導風部から高温乾燥空気が導入されるから、前記回転ドラムに収容される洗濯物を均一に乾燥させることができる。
本発明の第9の形態によれば、前記導風部及び/又は前記排風部に除塵糸用のフィルターが配置されるから、導風部に導入された前記混合空気に含まれ、排風循環時のトラブルの要因ととなり易い塵、脱離繊維(リントなど)、異物等を除去することができる。更に、洗濯物に塵や脱離繊維が付着することを防止することができる。前記フィルターには、従来のリントフィルターよりも目の細かいメッシュネットを用いることができ、捕集効率を向上させることが望ましい。
本発明の第10の形態によれば、従来の洗濯物乾燥装置に本発明に係る排気循環装置を付設することにより、排気される中温湿潤空気の一部を前記蒸気熱交換器に循環させ、この中温湿潤空気と低温外気との混合空気を加熱して多量の水蒸気を含有し得る前記高温乾燥空気に変換して前記洗濯物に吹き付け、前記洗濯物を乾燥させる同時に温度低下した中温湿潤空気との接触下で前記洗濯物が繰返し乾燥され、この繰返しにより洗濯物を嵩高に風合良く乾燥させる洗濯物風合乾燥装置を提供することができる。本発明に係る排気循環装置を従来の洗濯物乾燥装置に付設して前記中温湿潤空気を蒸気熱交換器に循環させることにより、前記洗濯物を風合良く乾燥させる過熱水蒸気を含有し、高効率に前記洗濯物を乾燥させる高温乾燥空気を回転ドラムへ連続的に供給できるから、簡易に前記洗濯物風合乾燥装置を導入することができる。即ち、従来の設備を利用して前記洗濯物風合乾燥装置を設置することができるから、大幅にコストを低減するすることができる。
本発明の第11の形態によれば、導風部が複数設けられた大型の洗濯物乾燥装置に、前記循環導出部が複数設けられ、前記排風部から各循環導出部に前記中温湿潤空気を循環させる複数の循環路を有する排気循環装置を付設することができ、循環される前記中温湿潤空気の供給量を増大させることができる。更に、前記回転ドラムに複数の導風部から高温乾燥空気が導入されるから、前記回転ドラムに収容される洗濯物を均一に乾燥させ、各洗濯物に良好な風合を付与する洗濯物風合乾燥装置を提供することができる。
以下、本発明に係る洗濯物風合乾燥方法及び洗濯物風合乾燥装置の実施の形態を、図1〜図8に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る洗濯物風合乾燥装置2の斜視概略図である。前記洗濯物風合乾燥装置2は、循環路4、乾燥部10及び加熱部12から構成され、前記加熱部12において加熱生成された高温乾燥空気が前記乾燥部10に導入されて乾燥工程に用いられ、前記高温乾燥空気が水分を含み冷却されて排気される中温湿潤空気を前記循環路4を介して循環させるように構成されている。前記乾燥部10には、前記洗濯物を収容する回転ドラム14が内装されている。前記乾燥部10の外壁には、洗濯物を投入する投入口18が設けられ、この投入口18は開閉部材18bにより保持された開閉蓋18aをスライドさせて開閉される。
前記循環路4は、排気ダクト16に接続される循環導入部6と左右対称に設置された2つの循環導入部8、8から構成され、前記循環導入部6と循環導入部8、8の連結には、蝶番23、23、・・が用いられており、後述のように、循環導出部を開閉することができる。前記循環路4は、前記循環導入部6に取り付け可能な排気循環装置、又は前記循環導入部6から着脱自在に構成された排気循環装置を用いても良く、前記循環導入部6に一体形成されていても良い。この実施形態では、後述するように、前記高温乾燥空気が2箇所から導入されるため、前記循環導出部8が2つ設けられている。前記排気ダクト16から前記循環導入部6へ循環される中温湿潤空気の導入量は、前記排気ダクト16に設けられた循環流量調整手段16aによって調整することができ、この循環流量調整手段16aには、前記排気ダクト16の開口面積を可変するダンパー20が配設されている。従って、前記ダンパー20により、前記循環導入部6へ循環される中温湿潤空気の循環量を自在に調整することができ、前記ダンパー20により排気ダクトの開口面積を減少させた場合、外気導入口22から前記循環路4に低温で含有水分の少ない外気が導入される。更に、前記循環導入部6には、前記循環導出部8、8への流量を調整する循環量調整手段を設置することができ、これらの循環量調整手段を操作する操作部材24を前記循環導入部6の上部に設け、前記中温湿潤空気の循環量を適宜に調整することもできる。従って、上述のように、前記中温湿潤空気の循環量を制限することにより、制限された分の外気が外気導入口22から前記循環路4に導入される。
図2は、本発明に係る循環路4を取り外した場合の洗濯物風合乾燥装置2の斜視概略図である。以下、既に説明した同一部材については、図中の符号及び/又はその説明を一部省略している。前記加熱部12には、2つの導風部25、25が設けられ、各導風部25は蒸気熱交換器26とフィルター28から構成され、各導風部25に導入された空気は、除塵糸用のフィルター28を通過することにより、空気中に含まれる塵や脱離繊維を除去することができ、洗濯物に塵や脱離繊維が付着することを防止することができる。前記空気は、前記中温湿潤空気と外気との混合空気からなり、前記混合空気には、装置外からの塵が含まれている。また、前記排気ダクト16の循環口16bから排気される中温湿潤空気は、除塵糸用のフィルターを通過しているが、微細な脱離繊維を含有している可能性がある。
前記除塵糸用のフィルター28を通過した前記混合空気は、前記蒸気熱交換器26に導入されて、110℃〜180℃に加熱される。前記中温湿潤空気は、前記洗濯物から蒸発した水分を吸収し、ほぼ飽和状態にある。しかし、後述するように、前記混合空気を110℃〜180℃に加熱することにより、含有水分が過熱水蒸気となるから、循環・加熱された混合空気を好適な高温乾燥空気として利用することができる。従って、前記加熱部12において変換された高温乾燥空気は、前記乾燥部10に内装された回転ドラム14に導入され、この回転ドラム14内に収容された洗濯物に吹き付けられる。
図3は、本発明に係る洗濯物風合乾燥装置2の縦断面概略図である。排風ファン36の吸引力により前記導風部25から導入された前記混合空気は、上述のように、前記除塵糸用フィルター28を通過し、前記蒸気熱交換器26において110℃〜180℃に加熱されて高温乾燥空気に変換される。この高温乾燥空気は、前記乾燥部10へと導入され、導入路30により前記回転ドラム14に誘導される。前記回転ドラム14は、ローラー40、40に支持されて外胴31内に配設される。更に、前記乾燥部10には、前記回転ドラム14を回転させる駆動手段(図示せず)が設置されている。また、前記回転ドラム14には、高温乾燥空気を導入して中温湿潤空気を排気し、洗濯物15の水分を回転ドラム14外へ排水するために、メッシュ状構造又は多数のパンチ孔が設けられた構造を有している。
前記回転ドラム14内に収容された洗濯物15は、投入段階において、既に洗濯・すすぎ・脱水工程が完了して乾燥前の状態にある。前記回転ドラム14の回転駆動は、前記洗濯物15を回転ドラム14の上部まで強制的に引上げ、上部に到達すると前記洗濯物15が落下するように設定されており、前記洗濯物15は、前記回転ドラム14の内面に設けられた掻上部材14aにより好適に上部へ引上げられる。前記回転ドラム14内に導入された高温乾燥空気は、前記回転ドラム14内で掻き上げられて落下する洗濯物15に吹き付けられ、この洗濯物15の水分を強制蒸発させてこれを乾燥させる。更に、前記高温乾燥空気は、外気に比べて多量の水分を含んだ中温湿潤空気からなる混合空気を加熱したものであるから、前記洗濯物15に良好な風合(柔軟性や嵩高など)を与える後述の過熱水蒸気を含有するために十分な水蒸気を含んでいる。
前記高温乾燥空気は、前記洗濯物15から強制蒸発された水分を吸収し、前記洗濯物15との接触により冷却されて約50℃〜90℃の中温湿潤空気となり、排風ファン36の吸引により、除塵糸用フィルター38を介して前記回転ドラムの下方にある排風部34へ導入される。前記中温湿潤空気に伴って下方へ落下する前記洗濯物15から発生した塵や脱離した繊維糸が前記除塵糸用フィルター38により除去されて、前記中温湿潤空気は前記排風ファンにより排気ダクト16へ排気される。更に、前記中温湿潤空気は、排気ダクト16を上昇して、前記循環口16b(図2参照)から循環導入部6へ流入し、循環通過口8bを介して再び前記導風部25に循環される。
図4は、図1に示した洗濯物風合乾燥装置2を構成する循環路4と加熱部12の断面概略図である。前記循環路4を構成する循環導入部6には、前記循環流量調整手段として開口面積を可変するダンパー42、42が循環通過口6b、6bに配設されており、各々のダンパー42、42の操作部材24、24を操作して前記中温湿潤空気の循環量を調整することができる。従って、前記循環量は、排風ファン36(図3参照)の回転数、前記排気ダクト16のダンパー20(図3参照)及び/又は循環路4内のダンパー42、42の開口面積と前記外気導入口22、22の開口面積によって制御される。
図5は、図1に示した洗濯物風合乾燥装置2を構成する循環路4と加熱部12の断面概略図である。前記循環導出部8、8は、循環導入部6に前記蝶番23、23により開閉自在に連結されているから、図に示すように、前記循環導出部8、8を開閉することができる。前記循環導出部8、8を開放することにより、除塵糸用のフィルター28を容易に清掃、取外し又は交換することができ、更に、前記フィルター28を取り外すことにより、前記蒸気熱交換器の清掃、点検、補修等を簡易に行なうことができる。
図6は、空気中の飽和水蒸気量の温度依存性を示したグラフ図である。図には、各温度に対する飽和状態における水蒸気重量がプロットされている。図に示すように、沸点(100℃)以上においても、空気中には水蒸気が存在しており、このような100℃以上の水蒸気は、一般に「過熱水蒸気」と呼ばれている。前記中温湿潤空気には、外気に比べ多量の水蒸気が含まれており、この水蒸気が100℃以上に加熱されると過熱水蒸気となり、洗濯物と接触した場合、前記過熱水蒸気が洗濯物表面で液化して急速に洗濯物と熱交換するから(「凝縮伝熱効果」と呼ばれる)、高効率に前記洗濯物を加熱することができる。更に、前述のように、前記洗濯物に吹き付けられ、水分を含み、冷却された中温湿潤空気の温度は50℃〜90℃程度であり、仮に前記中温湿潤空気が飽和状態にあったとしても、その1m3当りに含有される水蒸気重量は、前記温度依存性から160g/m3〜850g/m3程度である。前記蒸気熱交換器において、前記飽和状態の中温湿潤空気が110℃〜180℃の高速乾燥空気に加熱された場合、110℃〜180℃の高速乾燥空気は、約1630g/m3〜6000g/m3以上の水蒸気を含有する能力が付与される。従って、加熱前の中温湿潤空気が160g/m3〜850g/m3程度の水蒸気を含んでいても、加熱された110℃〜180℃の高速乾燥空気は約1630g/m3〜6000g/m3以上の水蒸気を含有し得るから、十分に洗濯物を乾燥することができる。
次に、排気される前記中温湿潤空気の一部を排気することにより、前記洗濯物の水分を装置外へ好適に排出することができることを、下記の例を用いて説明する。例えば、前記洗濯物から蒸発する水分が約80kg程度であり、従来のワンパス方式(100%排気)の洗濯物乾燥装置から装置外へ排気される70℃の排気空気の排出量が約340m3/分である場合、30分間に排気される排出量は、340m3/分×30分間=10200m3となるから、従来の排気空気の水分含有量は、80kg/10200m3=7.8g/m3となる。図6に示されるように、70℃における飽和水蒸気量は400g/m3であるから、従来の排気空気の湿度は、7.8g/m3/400g/m3×100=1.95%と見積もることができ、従来の排気空気が非常に乾燥していることがわかる。(外気湿度を考慮しない場合)
一方、本発明に係る洗濯物風合乾燥装置を用いて70℃の中温湿潤空気を95%循環させた場合、排気量はワンパス式の1/20であるから、排気時間がワンパス式より1.5倍になると仮定すると、45分間の排気量は340m3/分×1/20×45分間=765m3となり、排気される中温湿潤空気の水分含有量は、80kg/765m3=105g/m3となる。従って、70℃における飽和水蒸気量は400g/m3であるから、排気される中温湿潤空気の湿度は、105g/m3÷400g/m3×100=26.3%と見積もることができる。このように、95%循環においても中温湿潤空気の水分含有量は飽和水蒸気量以下であり、1.5倍程度の排気時間があれば、洗濯物に含まれる水分を装置外に排出できることがわかる。また、この中温湿潤空気を加熱して150℃の高温乾燥空気を生成すれば、図6に示されるように、150℃における飽和水蒸気量は5100g/m3であるから、前記高温乾燥空気の湿度は105g/m3÷5100g/m3×100=2.06%と見積もられ、前記洗濯物の乾燥を好適に行えることがわかる。
図7は、本発明に係る洗濯物風合乾燥装置における循環量と乾燥された洗濯物の風合との関係を示す関係図である。本発明に係る洗濯物風合乾燥装置を用いて、前記中温湿潤空気の循環量を変化させて、乾燥された洗濯物(繊維製品)の風合(柔軟性や嵩高など)を評価した。更に、このとき前記蒸気熱交換器において前記中温湿潤空気を加熱するために使用された蒸気量(「使用蒸気量」)を示す。また、比較例として中温湿潤空気を全て排気する従来の洗濯物乾燥機(「ワンパス方式」)を用いた場合の使用蒸気量の測定及び風合の評価を行っており、前記使用蒸気量は、ワンパス方式の場合を100%ととし、風合の評価もワンパス方式の場合を基準としている。ここで、△はワンパス方式とほぼ同等の風合、○は明らかな風合の向上が認められる場合、◎は著しい風合の向上が認められる場合を示している。
実施例1では、前記乾燥部から排気される中温湿潤空気が30%循環され、低温外気と混合されて混合空気となり、前記蒸気熱交換器により高温乾燥空気に加熱され、洗濯物の乾燥工程に用いられている。この乾燥工程で前記蒸気熱交換器において使用された蒸気量は、前記ワンパス方式の約91%であった。このように明らかな熱効率の向上が見られたが、洗濯物の風合の向上は、僅かであり、明確な向上は認められなかった。実施例2では、40%の中温湿潤空気が循環されており、前記蒸気使用量が86%に削減されると共に、明らかな風合の向上が認められ、前記循環量を増加するに伴って、使用蒸気量の削減率と風合が向上することが分かる。実施例5では、循環率が75%になり、使用蒸気量が65%に削減されると共に、風合に顕著な向上が見られる。更に、実施例7に示すように、循環率が95%になると、使用蒸気量は48%まで削減され、前記ワンパス方式の2倍以上のエネルギー効率を有することが分かる。また、実施例8の循環率99%においても洗濯物が十分に乾燥され、顕著な風合の向上が認められると共に、エネルギー効率がさらに向上している。
従って、本発明に係る洗濯物風合乾燥装置は、前記循環率が50%〜99%の場合に良好な風合を乾燥後の洗濯物に付与することができ、前記循環率が75%〜99%の場合、より良好な風合を乾燥後の洗濯物に付与することができる。更に、前記循環率が85%〜99%では、エネルギー効率がワンパス方式の約2倍となると共に、最適な風合が得られている。即ち、前述のように、前記中温湿潤空気の循環率の増加に伴って、前記過熱水蒸気を多量に含有する高温乾燥空気を生成することができ、好適な風合を前記洗濯物に付与することができる。
図8は、本発明に係る洗濯物風合乾燥装置2の他の実施形態を示す断面概略図である。この実施形態では、導風部25が1箇所にのみ設けられており、排気ダクト16から排気された中温湿潤空気を排風部34へ循環させる循環路4には、導風部25の位置に対応して循環導出部8が設けられている。このように、本発明に係る循環路4は、導風部25や排気ダクト16の位置や構造に応じて前記循環導出部8や循環導入部6の配置や構成を容易に変更することができる。
従って、本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。