従って、乾燥時間の短縮に重点をおいた従来の洗濯物乾燥装置は、短時間に大量の高温乾燥空気を造り出す必要があり、大型の排気ファン136によって大量の低温外気を高速で前記蒸気熱交換器126を通過加熱させるため、冷却が激しく、ファンによる換気回数が高くなるほど前記蒸気熱交換器の消費蒸気量が増大し、生成された高温乾燥空気は高速で乾燥装置内を通過することとなり、洗濯物との十分な熱交換が行われる前に排気していた。即ち、従来の洗濯物乾燥装置は、前記蒸気熱交換器126により付与された熱量が多量に残存する中温湿潤空気を全て大気中に排出するため熱効率が悪く、前記蒸気熱交換器126へ蒸気を供給するために使用されるボイラーの燃料消費量が増大し、炭酸ガスを多量に大気中へ放出していた。また、従来の洗濯物乾燥装置に配設された排気ファン136は、前記中温湿潤空気を多量に高速で排出する必要があり、電力消費量が膨大であった。現在、環境問題に関し、炭酸ガス排出量の削減が世界的な最重要課題の1つに挙げられており(「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」等)、炭酸ガスを排出する機器の省エネルギー運転及び省エネルギー化が要求されている。しかし、上述のように、従来の洗濯物乾燥装置は、熱効率の低いワンパス方式であるため、加熱時間や高温乾燥空気流量の調整により、炭酸ガス排出量を削減するには限界があった。
図16及び図17に示すように、全乾燥期間T0における設定温度を一定に固定した場合、洗濯物が多量の水分を含有する乾燥工程前半では、主に洗濯物表面の水分が蒸発するため、付与される熱量に相応する含有水分が蒸発する。しかし、乾燥が進み、洗濯物の含有水分量が減少すると共に洗濯物表面の水分が減少すると、洗濯物内部の水分を蒸発させるため、付与される熱量に対する乾燥効率が低下し、乾燥工程におけるエネルギー効率を著しく低減させていた。特に、パイル糸等を有するダストコントロール製品の乾燥において、全乾燥期間T0における設定温度を一定に固定した場合に上述のような乾燥工程におけるエネルギー効率の低下が顕著に現れる。
図17は、業務用レンタルマット79の縦断面拡大図を示しており、前記マット79は、多数の糸をより合わせてなる太いパイル71を基布80の略全面に植設してあり、基布80の裏面には、例えばゴムコーティング層82等が設けられている。このマット79を乾燥させる場合、乾燥工程前半は、パイル81の表面の水分が蒸発するため、付与される熱量に相応した水分が蒸発するが、前記乾燥工程の後半では、パイル81の基端部に残る水分Wを蒸発させるため、水分蒸発の効率が低下する。即ち、前記基端部に残る水分Wは、毛細管現象により表面に移動してから蒸発するか、もしくはゴム全体が加熱されその熱が水分Wに伝わって蒸発するため、蒸発に要する時間が増大し、前記蒸気熱交換器から付与される熱量を無駄に消費している。従って、乾燥工程後半において、設定温度を一定に保持するために蒸気熱交換器に供給される図16の使用蒸気量S0により付与される熱量は、パイル81の乾燥に対して効率的に使用されず、乾燥工程のエネルギー効率を低下させる要因となっていた。
更に、従来の洗濯物乾燥方法では、含有水分の少ない高温乾燥空気を用いて乾燥が短時間で行われるため、前記繊維製品に要求される良好な肌触りを与える風合(柔軟性、嵩高など)を乾燥工程において洗濯物に付与することは困難であった。即ち、糸の膨らみも少なく生地の嵩高及び製品の柔軟性も不十分なクリーニング(洗濯及び乾燥)が繰り返され、洗濯物は徐々に新品に比べ見栄えや風合が変化し商品性が低下していた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、エネルギー効率が良く、炭酸ガス排出量が低減することができ、乾燥された繊維製品に好適な風合を付与する洗濯物乾燥方法及び洗濯物乾燥装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、本発明の第1の形態は、蒸気熱交換器により加熱生成された高温乾燥空気を回転ドラム内に導入し、この回転ドラム内に収容された洗濯物を前記回転ドラムの回転により連続的に前記ドラム内で強制落下させ、この落下中の前記洗濯物に前記高温乾燥空気を吹き付けて前記洗濯物から水分を強制蒸発させて洗濯物を乾燥させ、前記高温乾燥空気に前記蒸発水分を吸収させて大気中に排気する洗濯物乾燥方法において、前記蒸発水分を吸収して排気される中温湿潤空気の一部を前記蒸気熱交換器に循環させ、この循環した中温湿潤空気と低温外気との混合空気を前記蒸気熱交換器により所要高温度まで加熱して多量の水蒸気を含有し得る前記高温乾燥空気に変換し、この高温乾燥空気を前記洗濯物に吹き付けて前記洗濯物の水分を蒸発吸収しながら前記洗濯物を乾燥させる洗濯物乾燥方法であり、前記高温乾燥空気の前記所要高温度を温度設定手段により時間的に順次低下させ、前記洗濯物との接触により高温乾燥空気は冷却されて中温湿潤空気に変換され、前記洗濯物がこの中温湿潤空気との接触下で繰返し乾燥され、この繰返しにより前記洗濯物を嵩高に風合良く乾燥させる乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第2の形態は、蒸気熱交換器により加熱生成された高温乾燥空気を排風ファンにより流通させて回転ドラム内に導入し、この回転ドラム内に収容された洗濯物を前記回転ドラムの回転により連続的に前記ドラム内で強制落下させ、この落下中の前記洗濯物に前記高温乾燥空気を吹き付けて前記洗濯物から水分を強制蒸発させて洗濯物を乾燥させ、前記高温乾燥空気に前記蒸発水分を吸収させて大気中に排気する洗濯物乾燥方法において、前記排風ファンの回転数に相応した流量の空気を流通させ、前記蒸発水分を吸収して排気される中温湿潤空気の一部を前記蒸気熱交換器に循環させ、この循環した中温湿潤空気と低温外気との混合空気を前記蒸気熱交換器により加熱して多量の水蒸気を含有し得る前記高温乾燥空気に変換し、この高温乾燥空気を前記洗濯物に吹き付けて前記洗濯物の水分を蒸発吸収しながら前記洗濯物を乾燥させる洗濯物乾燥方法であり、前記排風ファンの前記回転数を回転数設定手段により時間的に順次低減して前記流量を順次減少させ、前記洗濯物との接触により高温乾燥空気は冷却されて中温湿潤空気に変換され、前記洗濯物がこの中温湿潤空気との接触下で繰返し乾燥され、この繰返しにより前記洗濯物を嵩高に風合良く乾燥させる乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第3の形態は、蒸気熱交換器により加熱生成された高温乾燥空気を排風ファンにより流通させて回転ドラム内に導入し、この回転ドラム内に収容された洗濯物を前記回転ドラムの回転により連続的に前記ドラム内で強制落下させ、この落下中の前記洗濯物に前記高温乾燥空気を吹き付けて前記洗濯物から水分を強制蒸発させて洗濯物を乾燥させ、前記高温乾燥空気に前記蒸発水分を吸収させて大気中に排気する洗濯物乾燥方法において、前記排風ファンの回転数に相応した流量の空気を流通させ、前記蒸発水分を吸収して排気される中温湿潤空気の一部を前記蒸気熱交換器に循環させ、この循環した中温湿潤空気と低温外気との混合空気を前記蒸気熱交換器により所要高温度まで加熱して多量の水蒸気を含有し得る前記高温乾燥空気に変換し、この高温乾燥空気を前記洗濯物に吹き付けて前記洗濯物の水分を蒸発吸収しながら前記洗濯物を乾燥させる洗濯物乾燥方法であり、前記高温乾燥空気の前記所要高温度を温度設定手段により時間的に順次低減させ、同時に前記排風ファンの前記回転数を回転数設定手段により時間的に順次低減して前記流量を順次減少させ、前記洗濯物との接触により前記高温乾燥空気は冷却されて中温湿潤空気に変換され、前記洗濯物がこの中温湿潤空気との接触下で繰返し乾燥され、この繰返しにより前記洗濯物を嵩高に風合良く乾燥させる乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第4の形態は、第1、第2又は第3の形態において、前記蒸気熱交換器により加熱生成される高温乾燥空気の温度が110℃〜180℃であり、前記中温湿潤空気の温度が50℃〜90℃である乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第5の形態は、第1〜第4の形態において、前記中温湿潤空気の循環量は前記回転ドラムから排出される排気量の40%〜99%である乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第6の形態は、第1〜第3のいずれかの形態において、大気中から空気を導入する外気導入口及び/又は前記大気中に前記中温湿潤空気を排出する排気ダクトの開口面積を可変して前記循環量を制御する乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第7の形態は、第1〜第6のいずれかの形態において、前記除塵糸用フィルターを通過させて前記回転ドラムから排出される前記中温湿潤空気に含まれる塵糸を除去する乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第8の形態は、第1又は第3の形態において、前記回転ドラムから排出される中温湿潤空気の排風温度を測定し、この排風温度に基づいて前記蒸気熱交換器の蒸気量及び/又は蒸気温度を制御する請求項1又は3に記載の乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第9の形態は、第1、第3又は第8の形態において、前記所要高温度が複数の所定温度からなり、段階的に前記所要高温度を低下させる乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第10の形態は、第9の形態において、前記洗濯物の乾燥後に前記蒸気熱交換器による加熱を停止して前記洗濯物を冷却する冷却過程を有し、前記複数の所定温度の内、最後の所定温度が前記冷却過程で要求される冷却到達温度と略同じ温度である乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第11の形態は、第9の形態において、前記高温乾燥空気の所要高温度が第1次所定温度と第2次所定温度からなり、前記第1次所定温度は前記排風温度が60℃〜100℃の範囲に設定された場合の所要高温度であり、前記第2次所定温度は前記排風温度が40℃〜70℃の範囲に設定された場合の所要高温度である乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第12の形態は、第11の形態において、前記第1次所定温度が乾燥過程の全期間の内、30%〜80%の時間範囲で保持される乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第13の形態は、第2又は第3の形態において、前記設定回転数が複数の所定回転数からなり、段階的に前記設定回転数を低下させる乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第14の形態は、第13の形態において、前記設定回転数が第1次回転数と第2次回転数からなり、第1次回転数が2680rpm〜1340rpmの範囲に設定され、前記第2次回転数が1340rpm〜446rpmの範囲に設定される乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第15の形態は、第2、第3、第13又は第14の形態において、前記設定回転数が排風ファンに印加する電圧の大きさ又は排風ファンに供給する電流の周波数により制御される乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法である。
本発明の第16の形態は、蒸気熱交換器により加熱生成された高温乾燥空気を排風ファンにより流通させて回転ドラム内に導入し、この回転ドラム内に収容された洗濯物を前記回転ドラムの回転により連続的に前記ドラム内で強制落下させ、この落下中の前記洗濯物に前記高温乾燥空気を吹き付けて前記洗濯物から水分を強制蒸発させて洗濯物を乾燥させ、前記高温乾燥空気に前記蒸発水分を吸収させて大気中に排気する洗濯物乾燥方法において、前記排風ファンの回転数に相応した流量の空気を流通させ、前記排風ファンの前記回転数を回転数設定手段により時間的に順次低減し、前記流量を順次減少させながら前記洗濯物を乾燥させる流量可変式洗濯物乾燥方法である。
本発明の第1の形態によれば、排気される前記中温湿潤空気の一部を乾燥装置のヒータ(蒸気熱交換器)に循環させ、この循環した前記中温湿潤空気と低温外気との混合空気を前記蒸気熱交換器により加熱して多量の水蒸気を含有し得る前記高温乾燥空気に変換し、この高温乾燥空気を前記洗濯物に吹き付けて前記洗濯物を乾燥させるから、前記蒸気熱交換器から与えられる熱量を高効率に利用することができ、前記蒸気熱交換器の稼動により排出される炭酸ガスを大幅に削減することができる。前記洗濯物の乾燥初期(スタート時)において、前記蒸気熱交換器を通過した外気が加熱され、高温乾燥空気となって前記洗濯物に吹付けられ、強制的に水分が蒸発させられるが、前記洗濯物が加熱され、含有されていた水分が蒸発を始めると、速やかに前記蒸気熱交換器へ循環される中温湿潤空気に変換される。この中温湿潤空気の状態は、乾燥工程において、前記洗濯物による持込水分量が蒸発排気により大幅に減少するまでの比較的長時間に亘り維持されるから、中温湿潤空気雰囲気中における前記洗濯物の回転落下運動が繰り返され、前記洗濯物に良好な風合(柔軟性、嵩高など)を付与することができる。更に、前記回転ドラムに導入される前記高温乾燥空気の前記所要高温度を温度設定手段により時間的に順次低下させるから、洗濯物に含有される水分の減少に伴って前記高温乾燥空気の所要高温度を好適な温度に設定することができ、乾燥工程後半において、前記蒸気熱交換器により好適な熱量を前記洗濯物に付与して高効率な洗濯物の乾燥を行うことができる。従って、前述の中温湿潤空気の循環による省エネルギー化と、水分含有量の減少に相応した前記所要高温度の制御との相乗効果により、乾燥工程におけるエネルギー効率を格段に向上させることができる。
また、上述の乾燥工程において過熱水蒸気が供給される場合、前記洗濯物風合乾燥装置内では、前記洗濯物に含有されていた水分が蒸発により徐々に減少し、乾燥工程中に大部分の水分が装置外へ排気されるまで、過熱水蒸気と飽和水蒸気の混合気体で充満される。従って、前記洗濯物は、充分な水蒸気により蒸し上げられる状態となるから、乾燥と同時に、乾燥に使用された熱エネルギーと洗濯物が含有していた水分によりバルキー加工(風合出し加工)を前記洗濯物に施すことができる。換言すれば、単一の設備において、最も効率的に乾燥と風合加工が同時に行われるから、従来の洗濯物乾燥装置より使用される熱エネルギーを大幅に削減することができる。
本発明の第2の形態によれば、排気される前記中温湿潤空気の一部を乾燥装置の蒸気熱交換器に循環させ、この循環した前記中温湿潤空気と低温外気との混合空気を前記蒸気熱交換器により加熱して多量の水蒸気を含有し得る前記高温乾燥空気に変換し、この高温乾燥空気を前記洗濯物に吹き付けて前記洗濯物を乾燥させるから、前記蒸気熱交換器から与えられる熱量を高効率に利用することができ、前記蒸気熱交換器の稼動により排出される炭酸ガスを大幅に削減することができる。前記洗濯物の乾燥初期において、前記蒸気熱交換器を通過した外気が加熱され、高温乾燥空気となって前記洗濯物に吹付けられ、強制的に水分が蒸発させられるが、前記洗濯物が加熱され、含有されていた水分が蒸発を始めると、速やかに前記蒸気熱交換器へ循環される中温湿潤空気に変換される。この中温湿潤空気の状態は、乾燥工程において、前記洗濯物による持込水分量が蒸発排気により大幅に減少するまでの比較的長時間に亘り維持されるから、中温湿潤空気雰囲気中における前記洗濯物の回転落下運動が繰り返され、前記洗濯物に良好な風合(柔軟性、嵩高など)を付与することができる。
更に、前記回転ドラムに前記高温乾燥空気を導入する排風ファンの回転数を回転数設定手段により時間的に順次低減して前記高温乾燥空気の流量を順次減少させるから、前記洗濯物の乾燥されるに従って、前記蒸気熱交換器に供給する蒸気量を減少させることができ、乾燥工程におけるエネルギー効率を向上させることができる。即ち、洗濯物に含有される水分の減少に伴って前記高温乾燥空気の流量を減少させることにより、より少ない蒸気量で前記中温湿潤空気を所要高温度まで加熱することができ、乾燥工程における蒸気使用量を低減させて記高温乾燥空気を加熱生成するためのエネルギーを減少させることができる。
また、上述の乾燥工程において過熱水蒸気が供給される場合、前記洗濯物風合乾燥装置内では、前記洗濯物に含有されていた水分が蒸発により徐々に減少し、乾燥工程中に大部分の水分が装置外へ排気されるまで、過熱水蒸気と飽和水蒸気の混合気体で充満される。従って、前記洗濯物は、充分な水蒸気により蒸し上げられる状態となるから、乾燥と同時に、乾燥に使用された熱エネルギーと洗濯物が含有していた水分によりバルキー加工(風合出し加工)を前記洗濯物に施すことができる。換言すれば、単一の設備において、最も効率的に乾燥と風合加工が同時に行われるから、従来の洗濯物乾燥装置より使用される熱エネルギーを大幅に削減することができる。
本発明の第3の形態によれば、排気される前記中温湿潤空気の一部を乾燥装置の蒸気熱交換器に循環させ、この循環した前記中温湿潤空気と低温外気との混合空気を前記蒸気熱交換器により加熱して多量の水蒸気を含有し得る前記高温乾燥空気に変換し、この高温乾燥空気を前記洗濯物に吹き付けて前記洗濯物を乾燥させるから、前記蒸気熱交換器から与えられる熱量を高効率に利用することができ、前記蒸気熱交換器の稼動により排出される炭酸ガスを大幅に削減することができる。前記洗濯物の乾燥初期において、前記蒸気熱交換器を通過した外気が加熱され、高温乾燥空気となって前記洗濯物に吹付けられ、強制的に水分が蒸発させられるが、前記洗濯物が加熱され、含有されていた水分が蒸発を始めると、速やかに前記蒸気熱交換器へ循環される中温湿潤空気に変換される。この中温湿潤空気の状態は、乾燥工程において、前記洗濯物による持込水分量が蒸発排気により大幅に減少するまでの比較的長時間に亘り維持されるから、中温湿潤空気雰囲気中における前記洗濯物の回転落下運動が繰り返され、前記洗濯物に良好な風合(柔軟性、嵩高など)を付与することができる。
更に、前記回転ドラムに導入される前記高温乾燥空気の前記所要高温度を温度設定手段により時間的に順次低下させるから、乾燥工程後半において、前記蒸気熱交換器により好適な熱量を前記洗濯物に付与して高効率な洗濯物の乾燥を行うことができる。従って、乾燥工程後半では、前記蒸気熱交換器により付与される熱量を高効率に前記洗濯物の乾燥に用いることができる。また、前記回転ドラムに前記高温乾燥空気を導入する排風ファンの回転数を回転数設定手段により時間的に順次低減して、前記洗濯物の乾燥に伴う水分蒸発量の減少に相応するように前記高温乾燥空気の流量を順次減少させるから、前記蒸気熱交換器に供給する蒸気量を減少させることができ、乾燥工程におけるエネルギー効率を向上させることができる。即ち、前記高温乾燥空気の流量を減少させることにより、より少ない蒸気量で前記中温湿潤空気を所要高温度まで加熱され、洗濯物に含有される水分の減少に伴って前記高温乾燥空気を加熱生成するためのエネルギーを減少させることができる。
更に詳細には、上述の乾燥過程において、前記洗濯物風合乾燥装置内では、前記洗濯物に含有されていた水分が蒸発により徐々に減少し、乾燥工程中に大部分の水分が装置外へ排気されるまで、過熱水蒸気と飽和水蒸気の混合気体で充満される。従って、前記洗濯物は、充分な水蒸気により蒸し上げられる状態となるから、乾燥と同時に、乾燥に使用された熱エネルギーと洗濯物が含有していた水分によりバルキー加工(風合出し加工)を前記洗濯物に施すことができる。換言すれば、単一の設備において、最も効率的に乾燥と風合加工が同時に行われるから、従来の洗濯物乾燥装置より使用される熱エネルギーを大幅に削減することができる。
本発明の第4の形態によれば、前記洗濯物の水分を吸収した50℃〜90℃の中温湿潤空気が循環されて110℃〜180℃に加熱され、過熱水蒸気を含有する高温乾燥空気に変換されるから、伝熱効率が著しく高く、充分多量の水蒸気を含有し得る高温過熱水蒸気を洗濯物風合乾燥装置内へ連続的に循環供給することができる。循環される前記中温湿潤空気は、外気に比べて水分の含有量が多く、前記中温湿潤空気と低温外気との混合空気を沸点(100℃)以上に加熱することにより、前記混合空気に含まれる水分が過熱水蒸気となる。沸点(100℃)以上に加熱された水蒸気は、一般に「過熱水蒸気」と呼ばれており、この過熱水蒸気は、前記洗濯物に接触すると一部が気体のままで洗濯物と熱交換して離脱するが、残りは洗濯物表面で微細な液滴となり、この液滴による凝縮伝熱効果により洗濯物全体が急速に加熱され、高効率に洗濯物を乾燥させることができる。更に、前記過熱水蒸気が液化しても、高温であるため速やかに蒸発することから、前記過熱水蒸気は、同温の乾燥空気(熱風)に比べ、短時間に洗濯物を加熱乾燥させることができる。また、前記過熱水蒸気は、高効率な乾燥条件を付与すると共に、前記過熱水蒸気が洗濯物によって冷却されて中温湿潤空気に変換される。また、前記高温乾燥空気が50℃〜100℃の中温湿潤空気に冷却されるように設定することにより、前記中温湿潤空気は洗濯物から蒸発した水分を水蒸気として含有し、この水蒸気を繰返し加熱して過熱水蒸気を生成することができると共に、前記水蒸気の一部を装置外へ排気することができる。前記中温湿潤空気の温度が50℃〜100℃である場合、その飽和水蒸気量は160g/m3〜1200g/m3であり、例えば、前記中温湿潤空気の温度が50℃で排気流量が毎分10m3程度であっても、60分間で最大96kg程度(=160g/m3×10m3/分×60分)の水分を排出することができる。
本発明の第5の形態によれば、前記中温湿潤空気の循環量が前記回転ドラムから排出される排気量の40%〜99%であるから、外気に比べて多量に水分を含んだ前記中温湿潤空気から前記高温乾燥空気を加熱生成することができる。従って、従来の洗濯物乾燥装置に比べ、前記高温乾燥空気の水蒸気含有量を増加させることができ、好適な過熱水蒸気を生成することができる。この過熱水蒸気を含んだ前記高温乾燥空気により前記洗濯物を乾燥させることにより、乾燥過程で生じる飽和水蒸気によって前記洗濯物に良好な風合を付与することができる。
本発明の第6の形態によれば、大気中から空気を導入する外気導入口及び/又は前記大気中に前記中温湿潤空気を排出する排気ダクトの開口面積を可変して前記循環量を制御するから、前記蒸気熱交換器における中温湿潤空気の加熱時間や洗濯物の乾燥時間又は洗濯物による持込水分量に応じて、簡易に高温乾燥空気の水分含有量を調整することができる。
本発明の第7の形態によれば、前記除塵糸用フィルターを通過させて前記回転ドラムから排出される前記中温湿潤空気に含まれる塵糸を除去するから、導風部に導入された前記混合空気に含まれ、排風循環時のトラブルの要因ととなり易い塵、脱離繊維(リントなど)、異物等を確実に除去することができる。更に、洗濯物に塵や脱離繊維が付着することを防止することができる。前記フィルターには、従来のリントフィルターよりも目の細かいメッシュネットを用いることができ、捕集効率を向上させることが望ましい。
本発明の第8の形態によれば、前記回転ドラムから排出される中温湿潤空気の排風温度を測定し、この排風温度に基づいて前記蒸気熱交換器の蒸気量及び/又は蒸気温度を制御するから、前記高温乾燥空気を好適な所要高温度に調整することができる。前記高温乾燥空気の温度調整手段は、加熱蒸気を前記蒸気熱交換器に供給する導管に設けられた電動バルブの開度とこれを制御する制御部及び/又は前記加熱蒸気の圧力調整を行って所望温度の加熱蒸気を生成して前記蒸気熱交換器に供給する前記加熱蒸気の加圧・供給部等から構成される。前記洗濯物に接触して冷却された中温湿潤空気の排風温度は、前記洗濯物の乾燥度を反映するから、前記排風温度に基づいて前記高温乾燥空気の所要高温度を前記温度調整手段により調整して好適な所要高温度に設定された高温乾燥空気により洗濯物を乾燥させることができる。従って、乾燥工程におけるエネルギー効率を向上させることができる。
本発明の第9の形態によれば、前記所要高温度が複数の所定温度からなり、段階的に前記所要高温度を低下させるから、乾燥運転前に前記複数の所定温度を設定することにより、簡易に前記高温乾燥空気の温度制御を行うことができる。前記洗濯物の乾燥状態に応じて前記高温乾燥空気の所要高温度を決定して、その所要高温度に制御するためには、複雑な制御回路が必要とされる。前記複数の所定温度を設定して段階的に高温乾燥空気の温度を低減させることにより、簡易な制御手段により確実に洗濯物を乾燥させることができるから、低コストで設定変更等が容易な洗濯物風合乾燥方法を提供することができる。
本発明の第10の形態によれば、前記洗濯物の乾燥後に前記蒸気熱交換器による加熱を停止して前記洗濯物を冷却する冷却過程を有し、前記複数の所定温度の内、最後の所定温度が前記冷却過程で要求される冷却到達温度と略同じ温度に調整されるから、冷却時間を殆ど設ける必要がなく、速やかに乾燥した洗濯物を取り出すことができる。
本発明の第11の形態によれば、前記高温乾燥空気の所要高温度が第1次所定温度と第2次所定温度からなり、前記排風温度が60℃〜100℃の範囲に設定された場合の所要高温度を前記第1次所定温度とするから、前記高温乾燥空気を好適な温度に調整することができる。前記第2次所定温度は前記排風温度が40℃〜70℃の範囲に設定された場合の所要高温度であるから、水分含有量が少ない洗濯物を高効率に乾燥させることができる。
本発明の第12の形態によれば、前記第1次所定温度が乾燥工程の全期間のうち、30%〜80%の時間範囲で保持されるから、前記洗濯物を確実に乾燥させることができ、更に過熱水蒸気を所望時間に亘って前記洗濯物に吹付けることができる。従って、乾燥工程におけるエネルギー効率を向上させると同時に種々の繊維製品に好適な風合を付与することができる。
本発明の第13の形態によれば、前記設定回転数が複数の所定回転数からなり、段階的に前記設定回転数を低下させるから、前記回転ドラムに導入される高温乾燥空気の流量を時間的に順次減少させることができ、乾燥工程におけるエネルギー効率を向上させることができる。更に、簡易に前記高温乾燥空気の温度制御を行うことができる。前記洗濯物の乾燥状態に応じて前記高温乾燥空気の流量を制御する複雑な制御回路が必要とせず、簡易な流量制御手段により洗濯物を乾燥させることができるから、低コストで設定変更等が容易な洗濯物風合乾燥方法を提供することができる。
本発明の第14の形態によれば、前記設定回転数が第1次回転数と第2次回転数からなり、第1次回転数が2680rpm〜1340rpmの範囲に設定され、前記第2次回転数が1340rpm〜446rpmの範囲に設定されるから、第1次乾燥期間及び第2次乾燥期間において好適な高温乾燥空気を供給することができる。
本発明の第15の形態によれば、駆動部が直流モータ又は交流モータからなる排風ファンの回転数を自在に設定することができる。前記直流モータを具備する排風ファンでは、印加電圧の大きさを設定することにより所望の回転数で前記直流モータを駆動することができ、前記高温乾燥空気の流量を自在に制御することができる。また、前記交流モータを具備する排風ファンでは、前記設定回転数が排風ファンに供給される電流の周波数により制御されるから、容易に排風ファンの回転数を調整することができる。具体的には、電源部から供給される電流をインバータにより周波数を可変して駆動部を制御し、排風ファンの回転数を制御することができる。
本発明の第15の形態によれば、前記回転ドラムに前記高温乾燥空気を導入する排風ファンの回転数を回転数設定手段により時間的に順次低減し、前記高温乾燥空気の流量を順次減少させながら前記洗濯物を乾燥させるから、前記洗濯物の乾燥が進むに従って、前記蒸気熱交換器に供給する蒸気量を減少させることができ、乾燥工程におけるエネルギー効率を向上させることができる。即ち、前記洗濯物に含有される水分の減少に伴って前記高温乾燥空気の流量を減少させることにより、より少ない蒸気量で前記中温湿潤空気を所要高温度まで加熱することができ、乾燥工程における蒸気使用量を低減させて前記高温乾燥空気を加熱生成するためのエネルギーを減少させることができる。
以下、本発明に係る乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法の実施の形態を、図1〜図14に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る洗濯物風合乾燥装置2の斜視概略図である。前記洗濯物風合乾燥装置2は、循環路4、乾燥部10及び排風ダクト16から構成され、加熱生成された高温乾燥空気が前記乾燥部10に導入されて乾燥工程に用いられ、前記高温乾燥空気が水分を含み冷却されて排気される中温湿潤空気を前記循環路4を介して循環させるように構成されている。前記乾燥部10には、前記洗濯物を収容する回転ドラム14が内装されている。前記乾燥部10の外壁には、洗濯物を投入する投入口18が設けられ、この投入口18は開閉部材18bにより保持された開閉蓋18aをスライドさせて開閉される。
前記循環路4は、排気ダクト16に接続される循環導入部6と左右対称に設置された2つの循環導出部8、8から構成され、前記循環導入部6と循環導出部8、8の連結には、蝶番23、23、・・が用いられており、後述のように、循環導出部を開閉することができる。前記循環路4は、前記循環導入部6に取り付け可能な排気循環装置、又は前記循環導入部6から着脱自在に構成された排気循環装置を用いても良く、前記循環導入部6に一体形成されていても良い。この実施形態では、後述するように、前記高温乾燥空気が2箇所から導入されるため、前記循環導出部8が2つ設けられている。前記排気ダクト16から前記循環導入部6へ循環される中温湿潤空気の導入量は、前記排気ダクト16に設けられた循環流量調整手段16aによって調整することができ、この循環流量調整手段16aには、前記排気ダクト16の開口面積を可変するダンパー20が配設されている。従って、前記ダンパー20により、前記循環導入部6へ循環される中温湿潤空気の循環量を自在に調整することができ、前記ダンパー20により排気ダクトの開口面積を減少させた場合、外気導入口22から前記循環路4に低温で含有水分の少ない外気が導入される。更に、前記循環導入部6には、前記循環導出部8、8への流量を調整する循環量調整手段を設置することができ、これらの循環量調整手段を操作する操作部材24を前記循環導入部6の上部に設け、前記中温湿潤空気の循環量を適宜に調整することもできる。従って、上述のように、前記中温湿潤空気の循環量を制限することにより、制限された分の外気が外気導入口22から前記循環路4に導入される。
図2は、本発明に係る循環路4を取り外した場合の洗濯物風合乾燥装置2の斜視概略図である。以下、既に説明した同一部材については、図中の符号及び/又はその説明を一部省略している。この実施例では、2つの導風部25、25が設けられ、各導風部25は蒸気熱交換器26とフィルター28から構成され、各導風部25に導入された空気は、除塵糸用のフィルター28を通過することにより、空気中に含まれる塵や脱離繊維を除去することができ、洗濯物に塵や脱離繊維が付着することを防止することができる。前記空気は、前記中温湿潤空気と外気との混合空気からなり、前記混合空気には、装置外からの塵が含まれている。また、前記排気ダクト16の循環口16bから排気される中温湿潤空気は、除塵糸用のフィルターを通過しているが、微細な脱離繊維を含有している可能性がある。
前記除塵糸用のフィルター28を通過した前記混合空気は、前記蒸気熱交換器26に導入されて、110℃〜180℃に加熱される。前記中温湿潤空気は、前記洗濯物から蒸発した水分を吸収し、ほぼ飽和状態にある。しかし、後述するように、前記混合空気を110℃〜180℃に加熱することにより、含有水分が過熱水蒸気となるから、循環・加熱された混合空気を好適な高温乾燥空気として利用することができる。従って、前記蒸気熱交換器26において変換された高温乾燥空気は、前記乾燥部10に内装された回転ドラム14に導入され、この回転ドラム14内に収容された洗濯物に吹き付けられる。
図3は、本発明に係る洗濯物風合乾燥装置2の縦断面概略図である。排風ファン36の吸引力により前記導風部25から導入された前記混合空気は、上述のように、前記除塵糸用フィルター28を通過し、前記蒸気熱交換器26において110℃〜180℃に加熱されて高温乾燥空気に変換される。この高温乾燥空気は、前記乾燥部10へと導入され、導入路30により前記回転ドラム14に誘導される。前記回転ドラム14は、ローラー40、40に支持されて外胴31内に配設される。更に、前記乾燥部10には、前記回転ドラム14を回転させる駆動手段(図示せず)が設置されている。また、前記回転ドラム14には、高温乾燥空気を導入して中温湿潤空気を排気し、洗濯物15の水分を回転ドラム14外へ排水するために、メッシュ状構造又は多数のパンチ孔が設けられた構造を有している。
前記回転ドラム14内に収容された洗濯物15は、投入段階において、既に洗濯・すすぎ・脱水工程が完了して乾燥前の状態にある。前記回転ドラム14の回転駆動は、前記洗濯物15を回転ドラム14の上部まで強制的に引上げ、上部に到達すると前記洗濯物15が落下するように設定されており、前記洗濯物15は、前記回転ドラム14の内面に設けられた掻上部材14aにより好適に上部へ引上げられる。前記回転ドラム14内に導入された高温乾燥空気は、前記回転ドラム14内で掻き上げられて落下する洗濯物15に吹き付けられ、この洗濯物15の水分を強制蒸発させてこれを乾燥させる。更に、前記高温乾燥空気は、外気に比べて多量の水分を含んだ中温湿潤空気からなる混合空気を加熱したものであるから、前記洗濯物15に良好な風合(柔軟性や嵩高など)を与える後述の過熱水蒸気を含有するために十分な水蒸気を含んでいる。
前記高温乾燥空気は、前記洗濯物15から強制蒸発された水分を吸収し、前記洗濯物15との接触により冷却されて約50℃〜90℃の中温湿潤空気となり、排風ファン36の吸引により、除塵糸用フィルター38を介して前記回転ドラムの下方にある排風部34へ導入される。前記排風部34には、排風温度を測定する排風温度センサー52が配設されている。前記中温湿潤空気に伴って下方へ落下する前記洗濯物15から発生した塵や脱離した繊維糸が前記除塵糸用フィルター38により除去されて、前記中温湿潤空気は前記排風ファンにより排気ダクト16へ排気される。更に、前記中温湿潤空気は、排気ダクト16を上昇して、前記循環口16b(図2参照)から循環導入部6へ流入し、循環通過口8bを介して再び前記導風部25に循環される。前記蒸気熱交換器26は、蒸気発生部56で発生させた蒸気を蒸気熱交換器26内に供給する導管53が接続され、前記導風部25から導入される低温外気を加熱するように構成されている。また、前記蒸気発生部56は、給水ポンプを介して給水タンク37が接続され、前記給水ポンプにより適宜に加熱蒸気用水が給水タンク37から前記蒸気発生部56に供給される。更に、給水タンク37には、外部から供給水を補充する補給管39が接続され、また蒸気熱交換器にて発生するドレイン温水も回収され、前記給水タンク37へ接続されて回収されている。前記導管53の途中には電動バルブ57が設けられ、この電動バルブ57により蒸気供給の開始・停止を制御すると共に蒸気流量の調整を行うこと可能であり、前記蒸気熱交換器26のオン・オフと共に加熱温度の制御を行うことが可能である。前記電動バルブ57及び排風ファン36のモータは、制御部50からの信号により弁の開閉や開口面積と回転数を制御される。前記排風温度センサー52は制御部50の入力部に接続し、測定された排風温度を制御部50に入力するように構成されている。
図4は、制御部62による電動バルブ66及び排風ファンのモータ70の制御方法を示すブロック図である。前記制御部62には、CPU、RAM及びROM等が内臓されると共にタイマー62aが内蔵され、乾燥工程において駆動回路64、68を介して、前記電動バルブ66及び排風ファンのモータ70を制御する。前記モータ70にはインバータ等を付設して外部電源から供給される電流の周波数を自在に設定することができる。また、前記制御部62は、排風温度センサー60の測定値、乾燥運転前に周波数設定部61に入力された設定回転数に基づいて前記電動バルブ66及び/又は排風ファンのモータ70を制御する。
図5は、図1に示した洗濯物風合乾燥装置2を構成する循環路4と導風部25の断面概略図である。前記循環路4を構成する循環導入部6には、前記循環流量調整手段として開口面積を可変するダンパー42、42が循環通過口6b、6bに配設されており、各々のダンパー42、42の操作部材24、24を操作して前記中温湿潤空気の循環量を調整することができる。従って、前記循環量は、排風ファン36(図3参照)の回転数、前記排気ダクト16のダンパー20(図3参照)及び/又は循環路4内のダンパー42、42の開口面積と前記外気導入口22、22の開口面積によって制御される。
沸点(100℃)以上においても、空気中には水蒸気が存在しており、このような100℃以上の水蒸気は、一般に「過熱水蒸気」と呼ばれている。前記中温湿潤空気には、外気に比べ多量の水蒸気が含まれており、この水蒸気が100℃以上に加熱されると過熱水蒸気となり、洗濯物と接触した場合、前記過熱水蒸気が洗濯物表面で液化して急速に洗濯物と熱交換するから(「凝縮伝熱効果」と呼ばれる)、高効率に前記洗濯物を加熱することができる。更に、前述のように、前記洗濯物に吹き付けられ、水分を含み、冷却された中温湿潤空気の温度は50℃〜90℃程度であり、仮に前記中温湿潤空気が飽和状態にあったとしても、その1m3当りに含有される水蒸気重量は、前記温度依存性から160g/m3〜850g/m3程度である。前記蒸気熱交換器において、前記飽和状態の中温湿潤空気が110℃〜180℃の高速乾燥空気に加熱された場合、110℃〜180℃の高速乾燥空気は、約1630g/m3〜6000g/m3以上の水蒸気を含有する能力が付与される。従って、加熱前の中温湿潤空気が160g/m3〜850g/m3程度の水蒸気を含んでいても、加熱された110℃〜180℃の高速乾燥空気は約1630g/m3〜6000g/m3以上の水蒸気を含有し得るから、十分に洗濯物を乾燥することができる。
次に、排気される前記中温湿潤空気の一部を排気することにより、前記洗濯物の水分を装置外へ好適に排出することができることを、下記の例を用いて説明する。例えば、前記洗濯物から蒸発する水分が約80kg程度であり、従来のワンパス方式(100%排気)の洗濯物乾燥装置から装置外へ排気される70℃の排気空気の排出量が約340m3/分である場合、30分間に排気される排出量は、340m3/分×30分間=10200m3となるから、従来の排気空気の水分含有量は、80kg/10200m3=7.8g/m3となる。70℃における飽和水蒸気量は400g/m3であり、従来の排気空気の湿度は、7.8g/m3/400g/m3×100=1.95%と見積もることができ、従来の排気空気が非常に乾燥していることがわかる。(外気湿度を考慮しない場合)
一方、本発明に係る洗濯物風合乾燥装置を用いて70℃の中温湿潤空気を95%循環させた場合、排気量はワンパス式の1/20であるから、排気時間がワンパス式より1.5倍になると仮定すると、45分間の排気量は340m3/分×1/20×45分間=765m3となり、排気される中温湿潤空気の水分含有量は、80kg/765m3=105g/m3となる。従って、70℃における飽和水蒸気量は400g/m3であるから、排気される中温湿潤空気の湿度は、105g/m3÷400g/m3×100=26.3%と見積もることができる。このように、95%循環においても中温湿潤空気の水分含有量は飽和水蒸気量以下であり、1.5倍程度の排気時間があれば、洗濯物に含まれる水分を装置外に排出できることがわかる。また、この中温湿潤空気を加熱して150℃の高温乾燥空気を生成すれば、150℃における飽和水蒸気量は5100g/m3であり、前記高温乾燥空気の湿度は105g/m3÷5100g/m3×100=2.06%と見積もられ、前記洗濯物の乾燥を好適に行えることがわかる。
図6は、本発明に係る洗濯物風合乾燥装置2の他の実施形態を示す断面概略図である。この実施形態では、導風部25が1箇所にのみ設けられており、排気ダクト16から排気された中温湿潤空気を排風部34へ循環させる循環路4には、導風部25の位置に対応して循環導出部8が設けられている。このように、本発明に係る循環路4は、導風部25や排気ダクト16の位置や構造に応じて前記循環導出部8や循環導入部6の配置や構成を容易に変更することができる。
図7は、本発明に係る乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法のフロー図である。ステップS1において、洗濯物を投入し、ステップS2において第1次所定温度での乾燥が開始すると同時に、タイマーは第1次タイマーのカウントを開始する。ステップS3では、第1次所定温度での乾燥期間T1において、前記蒸気熱交換器26の蒸気流量の制御により、前記排風温度は、この実施例の所要高温度に対応する排風温度80℃に維持され、ステップS5における第2次所定温度の乾燥期間T2に移行し、第2次タイマーのカウントが開始する。ステップS6では、前記蒸気熱交換器の蒸気流量の制御により、排風温度が50℃となるように高温乾燥空気の温度を調整する。第2次カウンターのカウントが終了すると、ステップS8の冷却工程に移行する。前記蒸気熱交換器が停止した状態で冷却工程が開始すると同時に、タイマーは冷却工程タイマーのカウントを開始する。ステップS9において、排風温度センサー52で検出する冷却到達温度50℃より下がるか、またはタイマーによる冷却設定時間が経過するかのいずれか早い時間に冷却工程が終了する。乾燥期間T2では、略50℃となるように乾燥されるので、冷却工程においては極めて短時間に50℃以下までクールダウンすることができる。
図8は、本発明を適用した場合の排風温度の変化と蒸気熱交換器に供給される蒸気量の変化を示すグラフ図である。上段に示す曲線X1は、本発明を適用した場合における排風温度の変化の一例を示しており、乾燥期間T1の初期は、排風温度はおよそ40℃程度から急上昇し、点P1において排風温度が80℃以上になると蒸気熱交換器への蒸気供給量(蒸気流量)を低減して、温度上昇を抑制する。次に、点P2のように排風温度が80℃より低下すると、再び蒸気熱交換器による加熱が開始され、高温乾燥空気の温度を上昇させる。点P4において第1次タイマーのカウントが終了することにより、乾燥期間T1が終了するが、この乾燥期間T1の終端(P4)では、排風温度は略80℃に保持されている。図8の下段は蒸気熱交換器に供給される蒸気量を示しており、乾燥期間T1の開始時点から点P1までは、前記蒸気熱交換器に蒸気が供給され加熱状態にあるため、加熱時の蒸気量が供給され、また点P2から点P3の間も加熱状態にあるため、加熱時の蒸気量が供給されている。また、乾燥期間T1に亘る使用蒸気量S1が供給される。
更に、乾燥期間T2に移行した直後、排風温度は80℃以上あるため、前記蒸気熱交換器への蒸気供給量は抑制された状態にあり、排風温度は点P4から急速に低下し、点P6のように排風温度が50℃より低下すると加熱状態となり、高温乾燥空気の温度を上昇させる。点P6のように排風温度が50℃以上になると再び前記蒸気熱交換器への蒸気供給量を低減させる。点P7と点P8の間でも、前記P5と点P6の間の制御と同様に加熱状態となる。タイマーのカウントが終了することにより、乾燥期間T2は終了するが、この乾燥期間T2の終端P9では排風温度が50℃になっている。この乾燥期間T2では、図に示すように、乾燥期間T1の余熱乾燥状態となっており、加熱状態の期間が短く、使用蒸気量S2が抑制されている。更に、このT2の状態で温度が定時間維持されることによって洗濯物内部に残留する水分が表面まで移動して蒸発していることにより、乾燥工程におけるエネルギー効率を向上させる。
図9は、本発明に係る乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法において回転数を変化させる場合のフロー図である。本発明に係る乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥方法では、排風ファンの回転数を2段階で減少させて、前記洗濯物の乾燥に伴い高温乾燥空気の流量を低減させる。また、前記乾燥期間T1からT2に移行する場合に、前記排風ファンの回転数を減少させることにより、前記高温乾燥空気の流量を減少させると共に、前記高温乾燥空気の所要高温度を2段階で低下させても良く、前記回転数のみを減少させても良い。ステップS11において、洗濯物を投入し、ステップS12において第1次回転数での乾燥が開始すると同時に、タイマーは第1次タイマーのカウントを開始する。ステップ13において第1次タイマーのカウントが終了すると、ステップS14における第2次回転数の乾燥期間T2に移行し、第2次タイマーのカウントが開始する。第2次カウンターのカウントが終了すると、ステップS8の冷却工程に移行する。この冷却工程は図7と同一であるため説明を省略する。
図10〜図14は、本発明に係る乾燥条件と乾燥工程における蒸気使用量との関係を示す関係図である。本発明に係る乾燥条件可変式洗濯物風合乾燥装置を用いて、排風ファンに供給される電流の周波数(Hz)及び排風温度と、そのとき中温湿潤空気を加熱するために使用された蒸気量(「使用蒸気量」)を示す。また、比較例として中温湿潤空気を全て排気する従来の洗濯物乾燥機(「ワンパス方式」)において、前記周波数(60Hz)と排風温度(90℃)を略一定に保持した場合の蒸気使用量を示す。前記蒸気使用量は、ワンパス方式の場合を100%ととしてワンパス方式の場合を基準としている。
図10に示すように、実施例1〜4では、前記乾燥部から排気される中温湿潤空気が70%循環され、低温外気と混合されて混合空気となり、前記蒸気熱交換器により高温乾燥空気に加熱され、洗濯物の乾燥工程に用いられている。実施例1では、前記周波数(60Hz)と排風温度(90℃)が略一定に保持されている。実施例1の乾燥工程で前記蒸気熱交換器で使用された蒸気量は、前記ワンパス方式の約77%であり、熱効率の向上が見られる。
実施例2では、乾燥工程が乾燥期間T1、T2からなり、それぞれ、前記排風温度が80℃(乾燥期間T1)から60℃(乾燥期間T2)に低減されている。その結果、前記蒸気使用量が69%まで抑制されており、前記回転ドラムに供給される高温乾燥空気の温度を乾燥工程において低下させることにより、乾燥工程におけるエネルギー効率が向上している。また、実施例3では、乾燥期間T1から乾燥期間T2に移行するとき、排風温度を一定に保持し、排風ファンに供給される電流の周波数を40Hz(乾燥期間T1)から20Hz(乾燥期間T2)に低減している。実施例3では、蒸気使用量が64%まで低下し、排風温度を順次低下させる場合よりも蒸気使用量が抑制されている。更に、実施例4では、乾燥期間T1、T2において、前記周波数及び所要高温度を低減させており、夫々の相乗効果により、蒸気使用量は53%まで低減しており、エネルギー効率が著しく向上することが明らかとなっている。
図10に示す実施例5〜8では、循環率を更に増大し、前記乾燥部から排気される中温湿潤空気を95%循環させている。実施例5では、前記周波数(50Hz)と排風温度(90℃)が略一定に保持されているが、循環率の増大により蒸気使用量は、前記ワンパス方式の約69%に低減し、乾燥工程における明らかなエネルギー効率の向上が見られる。
実施例6では、乾燥工程が乾燥期間T1、T2からなり、それぞれ、前記排風温度が80℃(乾燥期間T1)から60℃(乾燥期間T2)に低減されている。その結果、前記蒸気使用量が62%まで低減している。次に、実施例7では、乾燥期間T1から乾燥期間T2に移行するとき、排風温度を一定に保持し、排風ファンに供給される電流の周波数を30Hz(乾燥期間T1)から20Hz(乾燥期間T2)に低減することにより、蒸気使用量が57%まで低下し、排風温度を順次低下させる場合よりも蒸気使用量が抑制されている。更に、実施例8では、乾燥期間T1、T2において、前記周波数及び所要高温度を低減させており、夫々の相乗効果により、蒸気使用量は45%まで低減している。図10と図11を比較した場合、図11では循環率の増加及び周波数の減少により、図10に比べ蒸気使用量の減少量が大きくなっている。
図12に示す実施例9〜12と図13に示す実施例13〜16とを比較すると、図13に示す実施例の周波数を低く設定されており、実施例9〜13に比べて明らかに実施例13〜16の蒸気使用量が低減していることがわかる。即ち、排風ファンの回転数を抑制することにより乾燥工程におけるエネルギー効率が向上することが分かる。更に、図12と図14に示す実施例14〜20を比較すると、排風温度の低い図12の実施例における蒸気使用量の方がより低減されている。
従って、本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。