JP4359253B2 - 燃料噴射システム - Google Patents
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したがって、燃料噴射ポンプとタイマユニットとの組立完成品間で組み付け誤差にばらつきが生じていたとしても、どのような組立完成品でも良好な位相制御を実現することが可能となり、制御性能を均一に保つことが可能となる。
先ず、図1を用いて本発明の燃料噴射システム1の概略構成について説明する。尚、ここで説明する燃料噴射システム1は、例えば船舶が具備するエンジンの燃料噴射ポンプの制御システムとして採用する場合について説明するが、本システムを利用することで同様の効果が得られるものであれば如何なるものに採用しても良い。燃料噴射システム1は、図1に示すように、操作部10とエンジン20とに大別される。操作部10は、船舶の運転室に設けられるものであって、例えば表示部11、主スロットル12、副スロットル13等が設けられるものである。表示部11は、本システムを採用する船舶の状態や警告等を表示するものであり、スピーカ等を内臓することによって、音声による警告を発することも可能なものである。主スロットル12は、例えばエンジン20のスロットルバルブ29を操作するものであって船舶が正常運転状態である場合に操作されるものであり、例えばレバー式のものである。副スロットル13は、主スロットル12と同様にスロットルバルブ29を操作するものであるが、船舶が正常運転状態でない場合に操作されるものである点で主スロットル12とは使用態様が異なる。また、この副スロットル13の形状は、例えばつまみ式(ボリューム式)のスイッチである。また、表示部11及び主スロットル12は各々独自の制御部を具備しており、エンジン20側の制御部であるECM21(Engine Control Module)と通信することによって、操作部10とエンジン20との全体制御を行っている。尚、操作部10とエンジン20とで、プロトコル等の通信方式が異なる場合には、図1に示すように通信方式の整合を図るための通信中継器15を設ける。また、副スロットル13は、エンジン20側のECM21に直接接続される構成となっており、通信方式はエンジン20側と同じである。エンジン20は、例えばディーゼルエンジンであり、ECM21、クランク軸回転数センサ22、カム軸回転数センサ23、遅角用電磁弁24、進角用電磁弁25、ラック28等が設けられるものである。ECM21は、エンジン20に関するセンサや上述した操作部10等の操作系の状態に基づいて、エンジン20に関するアクチュエータ等を制御するものである。クランク軸回転数センサ22は、エンジン20のクランク軸の回転数を検出するものであって、その検出結果をクランク軸パルスとしてECM21に出力している。カム軸回転数センサ23は、エンジン20のカム軸の回転数を検出するものであって、その検出結果をカム軸パルスとしてECM21に出力している。また、クランク軸回転数センサ22及びカム軸回転数センサ23は光学センサで構成することが可能であり、例えばクランク軸やカム軸の軸自体又はギヤ等に予め製造時に所定間隔で所定数のマークを記しておくことで、このマークを上記光学センサ検出することによって、ECM21はクランク軸とカム軸41の回転数を算出することができる。遅角用電磁弁24及び進角用電磁弁25は、図2に示すような燃料噴射ポンプ40のカム軸の位相を変化させるための油圧式タイマユニットのタイマピストンを、進角側又は遅角側に摺動させる油圧を制御するための油圧制御弁である。ラック28は、燃料噴射ポンプ40から噴射する燃料の量を調節するものである。
次に、図2を用いて燃料噴射ポンプ40とそれに関連する装置等の概略構成について説明する。尚、この図2における油圧式タイマユニット50に関しては断面を示している。特に、タイマピストン52に関しては便宜的に一点鎖線で上下に2分割した状態で示しており、遅角側位置に移動した状態をタイマピストン52aで示し、他方、進角側位置に移動した状態をタイマピストン52bで示している。勿論、実際のタイマピストン52は、上述のように一点鎖線で2分割されるものではなく一体的に形成されるものであって、図2においては、あくまでもタイマピストン52の移動状態を説明するために一点鎖線で2分割しているのである。燃料噴射ポンプ40は、燃料タンクに貯蔵される燃料をエンジン20のシリンダに設けた噴射ノズルへ圧送するためのものであり、カム軸41により駆動され、該カム軸41の先端部分にはカム軸カップリング51をカム軸41に固定するためのカップリング固定部材42が固設されている。また、燃料噴射ポンプ40には、エンジン20のシリンダへ燃料を供給するための供給口43が気筒分設けられており、図2に示す例においては6気筒ある場合を示している。更に、燃料噴射ポンプ40には、ガバナ30及び油圧式タイマユニット50が一体的に設けられている。ガバナ30は、上記ラック28を具備し、該ラック28はECM21によって駆動制御される比例ソレノイドによって駆動される構造となっている。油圧式タイマユニット50は、カム軸カップリング51の外周面にストレートでスプライン嵌合するタイマピストン52が設けられており、更に該タイマピストン52の外周面にヘリカルでスプライン嵌合するポンプ駆動歯車53が設けられている。このポンプ駆動歯車53は、エンジン20のクランク軸からの回転力を受ける受歯車55とボルト56によって固設されている。このように構成されているので、クランク軸の回転によってカム軸41を回転させることが可能となると共に、タイマピストン52をカム軸カップリング51のスプライン方向(図2に向って左右方向)に摺動させることによって、カム軸カップリング51とポンプ駆動歯車53との位相差を変化させることが可能となる。尚、ここでは既に上述したとおり、タイマピストン52を52a側へ摺動させることでカム軸は遅角し、52b側へ摺動させることで進角するようにスプライン嵌合のヘリカル形状を構成している。また、ポンプ駆動歯車53と嵌合するタイマピストン52の外周側にできる空間を遅角室57a、他方、カム軸カップリング51と嵌合するタイマピストン52の内周側の空間を進角室57bと各々称する。この場合に、遅角室57aに圧油を圧送することでタイマピストン52を遅角側(52a側)へ摺動させることができ、他方、進角室57bに圧油を圧送することでタイマピストン52を進角側(52b側)へ摺動させることができる。また、遅角室57aへ通じる遅角用圧油経路58aと、進角室57bへ通じる進角用圧油経路58bにはそれぞれ上述した遅角用電磁弁24及び進角用電磁弁25が配設されて、該遅角用電磁弁24と進角用電磁弁25をECM21で制御して作動し、圧油を送油してタイマピストン52を摺動させるのである。このように構成されているので、ECM21は、エンジン20の状況に応じてタイマピストン52を油圧で制御する制御手段として機能し、エンジン20のクランク軸とカム軸41との位相差を自在に遅角又は進角させることが可能となる。
既に上述したように、クランク軸及びカム軸41の軸自体又はギヤ等には、予めマークが記されており、このマークをクランク軸回転数センサ22及びカム軸回転数センサ23で検出し、その検出結果であるクランク軸パルス及びカム軸パルスに基づいてECM21はクランク軸及びカム軸41の回転数を算出している。したがって、ECM21は、クランク軸パルス及びカム軸パルスの検出時間の差に基づいて、クランク軸とカム軸との位相差を算出することもできる。そこで、図3を用いて、クランク軸パルス、カム軸パルス、及び実際の燃料噴射時期の関係について図3を用いて説明する。この図3は、クランク軸パルスJ1・J2・J3と、ある一つの供給口43から噴射される実際の燃料噴射時期(以下、「FIC」と表記する)と、そのFICに対応するカム軸パルスT2との関係を示したものである。尚、図3(a)はカム軸41がクランク軸に対して進角している状態におけるパルスの検出時間の関係(位相差)を示しており、図3(b)はカム軸41がクランク軸に対して遅角している状態におけるパルスの検出時間の関係(位相差)を示している。図3に示すように、例えばクランク軸パルスJ1・J2・J3は、角度にして30[deg]毎に検出されるようにクランク軸に予め記されるマークに対応している。また、カム軸パルスT2の位相に関しては、該カム軸パルスT2に対応するクランク軸パルスJ2からの位相差である角度Bを算出することで求まるものである。ところで、カム軸パルスT2の位相で燃料噴射が実際に行われれば、この角度Bが燃料噴射時期とクランク軸との位相差となるが、図3に示す例は、油圧式タイマユニット50や燃料噴射ポンプ40等の設計上の都合で、カム軸パルスT2とFICとは一致せず、FICはカム軸パルスT2よりも角度にして10[deg]ずれている。つまり、実際の燃料噴射時期の位相は、カム軸パルスT2の検出時期よりも角度にして10[deg]相当分早い時期に行われることになる。そこで、ECM21は、上記10[deg]分のずれも考慮して、FICとクランク軸パルスJ2との位相差を「実位相差C」として最終的に算出している。即ち、この実位相差Cが、カム軸41によって定まる燃料噴射時期とクランク軸との位相差である。
次に、クランク軸パルスJ2に対する実位相差Cの算出方法について説明する。先ず、ECM21は、クランク軸パルスJ2の一つ前のクランク軸パルスJ1を検出した時点からカム軸パルスT2を検出するまでの時間を計測し、その計測時間に相当する位相差を角度Aとして算出する。そして、ECM21は、予め定められるクランク軸パルスJ1とクランク軸パルスJ2との位相差である角度30[deg]から上記角度Aの差を角度Bとして算出する。即ち、(30−A)=Bの演算を行う。この角度Bは、クランク軸パルスJ2に対するカム軸パルスT2の位相差であるから、ECM21は、この角度Bに予め定められるカム軸パルスT2とFICとの位相差(上述した10[deg])を足すことで、実位相差Cを算出する。
即ち、B+10の演算を行う。
このようにパルスの検出及び演算処理を行うことで、実位相差Cを算出することができる。尚、ECM21は、クランク軸パルスJ2と他のクランク軸パルスJ1との識別は以下のようにして可能となる。例えば、クランク軸パルスJ2のみに近接し、30[deg]以下の間隔でリセットパルスJXを検出できるように予めマークを記しておく。このようにリセットパルスJXに対応するマークを記しておくことで、ECM21はクランク軸パルスの間隔である30[deg]よりも短い間隔で2つのパルスを検出したときに、1つめのパルスをクランク軸パルスJ2と認識することが可能となる。以上のようにして算出される実位相差Cを、ECM21が、エンジン20の状態に応じて変化させることで、エンジン20の状態に適した燃料噴射時期を決定することが可能となる。
ところで、燃料噴射ポンプや油圧式タイマユニットの各部の製造時や組立時に誤差が生じるため、上述において算出された実位相差Cは、ECM21の制御目標値である目標位相差と一致せず異なる場合が多いことが知られている。そこで、実位相差Cと目標位相差とを一致させるための校正処理について図4に示すフローチャートを用いて説明する。また、この校正処理におけるエンジン20のクランク軸の回転数及び実位相差Cの変化例について図5を用いて併せて説明する。尚、図5(a)はエンジン20のクランク軸の回転数を示し、図5(b)は実位相差Cの時間的変化を実位相曲線Lとして示している。先ず、ECM21は、校正処理要求を受信する(S10)。このステップS10における校正処理要求の受信は、専用のメンテナンスチェッカー等の装置によってECM21に対して校正処理要求の入力が実行されることにより行われる。そして、ECM21は、クラッチが入状態であるか否かをクラッチ検知センサ等で検出することによって判断する(S12)。上記ステップS12の判断で、クラッチが入状態であると判断された場合は通常制御を行う通常モードとなるため処理がステップS30へ移行し、他方、クラッチが入状態でないと判断された場合は校正処理を行う校正モードとなるため処理がステップS14へ移行する。処理がステップS14へ移行した場合に、ECM21は、エンジン20の回転数を予め定められた校正用回転数に設定する(S14)。このステップS14における設定例としては例えば図5に示すように、ステップS14の処理が行われた時刻が時刻U1である場合に、ECM21は、時刻U1以前では回転数R1で回転しているクランク軸を、校正処理に適した校正用回転数R2に変更する。そして、ECM21は、進角用電磁弁25を開いてタイマピストン52を最進角側へ摺動させる(S16)。このときの実位相差Cは、図5(b)の実位相曲線Lに示すように、時刻U1を基点に変化し、実位相差Cの値は次第に大きくなる。そして、時刻U2のときに、タイマピストン52は最進角位置に達し、ECM21は実位相差C1と算出する。この実位相差C1とECM21の指令値である目標最進角位相差Zとは、既に上述した理由により、異なる値となることが一般的に知られている。そこで、ECM21は、実位相差C1と目標最進角位相差Zとの差を調整値D1として算出する(S18)。つまり、ECM21が、実位相差と目標位相差との差である調整値を算出する調整値算出手段の一例である。上記ステップS18で調整値D1を算出した後に、ECM21は、遅角用電磁弁24を開いてタイマピストン52を一旦最遅角側へ摺動させた後に、再び最進角側へ摺動させる(S20)。このときの実位相差Cは、図5(b)の実位相曲線Lに示すように、時刻U2を基点に変化し、実位相差Cの値は次第に小さくなり、時刻U3のときに、タイマピストン52は最遅角位置に達し、時刻U4で再び最進角位置に達することになる。このとき、ECM21は、上記ステップS18と同様の処理を行って調整値D2を算出し、この調整値D2が上記ステップS18で算出した調整値D1と同一か否かを判断する(S22)。このステップS22にて調整値D2を再度算出しているのは、上記ステップS18で算出した調整値D1の妥当性を検証するためである。つまり、ステップS18にて調整値D1を算出した後に、一旦タイマピストン52を動かして(ステップS20)、再度算出した調整値D2との同一性を比較することによって、調整値D1が機械的誤差等を含まない適切な値か否かを判断しているのである。つまり、調整値D1と調整値D2とが同一であれば調整値D1が妥当であると判断する。他方、調整値D1と調整値D2とが同一でなければ2つの値のうちいずれか1つが妥当でないか、或いは2つの値とも妥当でないと判断できる。このステップS22の処理で同一と判断された場合は処理がステップS24へ移行し、他方、同一でないと判断された場合は処理がステップS26へ移行する。処理がステップS24へ移行した場合に、ECM21は、記憶手段の一例として調整値D1を記憶する(S24)。上述のようにして算出され、記憶した調整値D1は、ECM21が算出する実位相差CとECM21の指令値である目標位相差との差である。そこで、実位相差Cに調整値D1を足した値を新たに校正後実位相差Gと定義すると、この校正後実位相差GはECM21の指令値である目標位相差と一致することになる。このように調整値D1を記憶することで、従来の実位相差Cに替えて校正後実位相差Gを算出することが可能となって、ECM21の指令値である目標位相差と整合のとれた良好な位相制御を行うことが可能となる。したがって、燃料噴射ポンプ40と油圧式タイマユニット50との組立完成品間で組み付け誤差にばらつきが生じていたとしても、上述の処理によって調整値を記憶することで、どのような組立完成品でも良好な位相制御を実現することが可能となり、組み付け誤差のばらつきがなくなって、制御性能を均一に保つことが可能となる。また、処理がステップS26へ移行した場合に、ECM21は、操作部10の表示部11等に校正でエラーが発生した旨を表示して警告を発する(S26)。そして、ECM21は、上述した一連の校正処理を終了して、通常時の運転制御を行う通常モードに移行する(S30)。
ところで、上記ステップS12の判断でクラッチが入状態であると判断されると、処理がステップS30に移行するのは、校正処理を実行することができないので、校正処理を受け付けないようにするためである。つまり、クラッチが嵌入された状態であるときは、動力伝達中であるため、クラッチが入状態の場合には上述のステップS14からステップS24までの一連の校正処理を行わないようにする。これにより、校正処理を適切に実行できる場合にのみに校正処理を行うことが可能となり、無駄な校正処理が行われることを未然に防止することが可能となる。
10 操作部
15 通信中継器
20 エンジン
21 ECM
22 クランク軸回転数センサ
23 カム軸回転数センサ
24 遅角用電磁弁
25 進角用電磁弁
28 ラック
29 スロットルバルブ
30 ガバナ
40 燃料噴射ポンプ
50 油圧式タイマユニット
Claims (2)
- クランク軸と燃料噴射ポンプにおける燃料噴射の駆動源であるカム軸との位相をタイマピストンで変化させることによって、燃料噴射時期を変化させる燃料噴射システムであって、前記位相差の校正処理要求によって、前記タイマピストンを最進角側へ移動させた場合の、前記位相差と前記タイマピストンを制御する制御手段が検知する最進角値との差である調整値を算出する調整値算出手段と、前記調整値を記憶する記憶手段と、を具備し、前記校正処理要求を受けて、前記調整値を算出後、前記タイマピストンを一旦、最遅角側へ移動させてから、最進角側へ移動させて、前記調整値を再度算出し、初回算出の調整値と再度算出した調整値が同一と判断した場合に、初回算出の調整値を記憶することを特徴とする燃料噴射システム。
- 前記校正処理を実行することができない場合に、前記校正要求を受け付けない請求項1記載の燃料噴射システム。
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Applications Claiming Priority (1)
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