JP4357710B2 - Na濃度分析方法及びNa濃度分析装置 - Google Patents

Na濃度分析方法及びNa濃度分析装置 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、水溶液に含まれる元素を非接触で連続測定する濃度分析方法及び濃度分析装置に関し、更に詳しくは、例えば、臨海地区の発電プラントにおける復水器などの海水漏洩監視のために、海水成分であるNa濃度等を連続監視するNa濃度分析方法及びNa濃度分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、発電プラントには、復水器の海水漏洩監視のために、復水の酸電導度から海水漏洩を検知する復水検塩装置が利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この装置は、海水漏洩を酸電導度で間接的に感知するもので、海水成分を直接測定するものではない。
【0004】
また、点検時や休止中には作業時の汚れや大気中の二酸化炭素が復水に溶け込み、塩素イオンと同じ陰イオンが生じ、起動時に海水リークが生じてないにもかかわらず電導度が上昇するため、その都度イオンクロマト装置による手分析により海水リークの有無を確認しているのが現状である。
【0005】
このため、復水に漏洩する極微量の海水成分を直接・連続的に監視する方法が必要であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような強い要望にこたえるためになされたものであり、高出力のレーザを液体に照射すると液体の一部がプラズマとなり含有成分が発光する現象を用い、試料セルを流れる復水に外部からレーザを照射した時のNa発光スペクトルの強度と水の発光強度とから、復水中のNa濃度を測定するものである。
【0007】
請求項1の発明は、試料セル内に水溶液を流し、この試料セル内を流れる水溶液にレーザ光を照射してプラズマを発生させ、該プラズマ光のスペクトル分析を行って前記水溶液中のNa濃度を分析するNa濃度分析方法において、
前記プラズマ光を分光する分光器を、あらかじめ中心波長が前記Na元素のスペクトル波長近傍に設定すると共に、該分光器により、前記試料セル中で発生したプラズマ光を、Na元素の発光スペクトル線とこの発光スペクトル線を含まない波長範囲のスペクトルとに分離し、
前記Na元素の発光スペクトル線の強度と、この発光スペクトル線を含まない波長範囲の強度とを、前記レーザ光の照射時刻から約1.4μ秒の遅延時間をおいて測定し、
前記Na元素の発光スペクトル線の光強度をこの発光スペクトル線を含まない範囲における光強度で除した値から前記水溶液中のNa元素の濃度を求めることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1のNa濃度分析方法において、
前記発光スペクトルの光強度測定に当たり、
まず、レーザ光を遮断した状態で、光強度測定器の波長毎の雑音信号強度をあらかじめ設定しておいた回数だけ加算して測定し、これを前もって設定しておいた回数だけ繰り返して各波長毎の信号強度の平均値を求め、前記平均値を各波長における雑音信号強度とし、
次にレーザ光を照射して、光強度測定器の波長毎の信号強度をあらかじめ設定しておいた回数だけ加算して測定し、これを前もって設定しておいた回数だけ繰り返して各波長毎の信号強度の平均値を測定し、
このときの平均した信号強度から前記雑音信号強度を差し引いた値を各波長における光強度信号値とすることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1、請求項2のいずれかのNa濃度分析方法において、
度測定に用いるナトリウムスペクトル線の光強度はナトリウムスペクトル線である588.995nmにおける信号強度をとり、同時にナトリウムスペクトル線である589.592nmにおける信号強度を測定して、588.995nmにおける信号強度と589.592nmにおける信号強度の関係が2:1に近い場合の測定値だけを有効なデータとすることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、試料セル内に水溶液を流し、この試料セル内を流れる水溶液にレーザ光を照射して前記水溶液中にプラズマを発生させ、このプラズマ光のスペクトル分析を行って前記水溶液中のNa濃度を分析するNa濃度分析装置において、
あらかじめ中心波長が前記Na元素のスペクトル波長近傍に設定され、前記試料セル中で発生したプラズマ光を、Na元素の発光スペクトル線とこの発光スペクトル線を含まない波長範囲のスペクトルとに分離する分光器と、
前記試料セルと前記分光器の前記プラズマ光を入射するスリット間に配置され、前記発光スペクトル波長近傍に重なる高次の分光スペクトル波長を遮断する光学フィルターと、
前記分光器で分離されたプラズマ光の強度を測定する光強度測定器と、
少なくとも前記光強度測定器の受光面の前方に配置され、前記プラズマ光の通過を制御する開閉機構と、
前記レーザ光の照射時刻から約1.4μ秒の遅延時間をおいて、前記Na元素の発光スペクトル線の強度と、この発光スペクトル線を含まない波長範囲の強度とを、測定するように、前記開閉機構を制御する制御手段と
を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4のNa濃度分析装置において、
前記分光器に前記プラズマ光を入射するスリットは、前記試料セルに照射されるレーザ光の焦点の変動を許容するように、前記レーザ光の光軸と光学的に略同一方向に延びていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4、請求項5のいずれかのNa濃度分析装置において、
前記光強度測定器に受光素子をXY座標系上に配置した受光器を用い、X軸方向の受光素子列を前記分光器のスペクトルの波長域を検出するように設定し、Y軸方向の受光素子列を信号の総和を各波長における信号強度を測定するように設定したことを特徴とする。
【0013】
また、上述の発明において濃度分析方法及び装置において、事前に、数種類の既知濃度の試料の発光スペクトル信号強度を測定して、濃度と信号強度の検量線を求め、その後、未知の濃度の水溶液の発光スペクトル信号強度を測定して濃度を算出しても良い。
【0014】
上記請求項1〜請求項5の濃度分析方法において、分析対象元素の発光スペクトル線の強度とこのスペクトル線を含まない波長範囲の強度を光強度測定器で測定して電気信号に変換し、分析対象元素の発光スペクトル線の光強度に対応する信号強度を分析対象元素のスペクトル線を含まない波長範囲における光強度に対応する信号強度で除した値を用いて水溶液中の元素の濃度を1次式あるいは2次式を用いて推定することも可能である。
【0015】
上記の濃度分析方法及び装置において、光強度測定器の前方に配置した開閉機構によって、プラズマからの発光を遮断あるいは通過させ、レーザ照射から数百ナノ秒以上経過してから数マイクロ秒以上の時間幅でプラズマの発光スペクトル強度を測定しても良い。
【0016】
上記の濃度分析方法及び装置において、レーザ照射による発光スペクトル強度の測定は、レーザ発振が安定するに必要な測定した所定時間経過後に、実施しても良い。
【0017】
上述の濃度分析方法及び装置において、前記分光器の中心波長を分析対象元素の発光スペクトル線の波長近くに設定すると共に、前記分光器に入射するプラズマ光の高次の分光スペクトルを遮断する光学フィルターを設置しても良い。
【0018】
上述の濃度分析方法及び装置において、試料セルおよびレンズを遮光部材よりなるケースに収納し、遮光部材の一部にレーザ光を入射する穴とプラズマの発光を取り出す穴を設け、レーザ光の入射穴にはレーザ光を選択的に透過する光学ファイルターを設け、プラズマ光の取り出し口にはレーザ光を遮断する光学フィルターとを配置する構成をとることによって、発光分析系への外乱光の侵入とレーザ光の外部への漏洩が防止でき、有益である。
【0019】
上述の濃度分析方法及び装置において、試料セルのレーザ照射窓とレーザ集光用レンズおよびレーザー光透過フィルタをレーザ光軸に対して数度傾けて配置する構成とすれば、光学部品で反射するレーザ光がレーザ発振器に戻らない。
【0020】
上述の濃度分析方法及び装置において、試料セルの内部は上方に向かって傾斜を持たせ、試料を試料セル下方より注入して試料セル上部より排出する構成とすると、少なくとも試料セル中のレーザ集光点においては水溶液が下方向から上方向に流れて気泡が試料セルに滞留しないので、誤差が少なくなる。
【0021】
上述の濃度分析方法及び装置において、試料セルの試料注入口前方の配管途中に、固形物を捕捉するフィルターを配置したバイパス配管と流路切り替えバルブを設置する構成とすると、試料に懸濁物質が含まれる場合は、フィルターを介して試料セルに試料が注入され、懸濁物質を除去できる。
【0022】
上述の濃度分析方法及び装置において、分析を行う時間間隔、分析の回数、光強度測定器の雑音測定回数、発光スペクトル強度の加算回数、発光スペクトル信号強度の平均回数、分析対象元素と分析に用いる元素の発光スペクトル線の波長、対象元素のスペクトルを含まない波長範囲、信号強度から濃度を求めるための係数を個々に入力しておき、分析対象元素を指定することで装置が最適分析条件に設定することも可能である。
【0023】
上述の濃度分析方法及び装置において、分析日時、測定したスペクトル分布グラフおよび元素の種類と濃度、過去の濃度測定値の経時変化を必要箇所に表示し、分析日時と元素の種類と濃度をプリントアウトするとともに、分析日時と測定したスペクトル分布グラフと元素の種類と濃度と前記最適分析条件および分析対象の発光スペクトル線の信号強度と分析対象のスペクトル線を含まない波長範囲の信号強度を保存すれば、長期間に亘る濃度変化を観察でき、原因推定に有益なデータを得ることが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態にかかる濃度分析装置について図面を用いて説明する。なお、実施例における特性説明にはNaの濃度測定実験結果を中心に説明する。
[(1)装置構成と設定]
図1において、1は試料セル、2は復水試料、3はパルスレーザ光、4はレーザ光3を集光するレンズ、5は水溶液中のプラズマ光を集光するレンズ、6はプラズマ光、7は開閉機構、8は光強度測定器、9はレーザ透過フィルタ、10はレーザ遮断フィルタ、11は紫外線遮断フィルタ、12はケース、13、13’は流露切り換えバルブ、14は懸濁物質を捕捉するフィルター、15は試料注入配管、16は試料排出配管、17は試料を導入する接続配管、18はパルス発生器、19、20は遅延回路、21は制御装置及び解析装置としてのモニターつきパーソナルコンピュータ、22はプリンター、23〜27は通信線である
試料セル1はテトラフルオロエチレンにより形成されており、その内部には図2(a)の水平断面図図2(b)の垂直断面図に示すように内部に試料通路100が形成されている。この試料通路100は試料セル1の下部から上部に貫通しており、下部の開口部に試料注入配管15が接続され、上部の開口部に試料排出配管16が接続される。試料セル1はレーザ光3の発射時の光軸に対して少し傾いて配置されている。
【0025】
試料セル1の試料通路100の一側面部にはレーザー装置30から照射されるレーザ光3を導入する導入穴101が開口されており、この導入穴101にレンズ4の一部であるレンズ113が取り付けられている。レンズ4はレンズ113と近傍のレンズ114により構成されている。試料セル1の挿入穴101と90度にある側面部にはレーザ光3により試料中に発生したプラズマ光を通過させる穴102が開口されている。穴102には石英ガラスからなるガラス窓112が固定されている。
【0026】
ケース12は、遮光板により箱状に形成されており、レーザ光3を導入する穴121とプラズマ光6を取り出す穴122とが開口され、試料注入配管15と試料排出配管16とが取り付けられている。穴121の外側にはレーザ装置30が取り付けられ、穴121の内側にはレーザ透過フィルタ9が取り付けられている。レーザ透過フィルタ9と試料セル1の間には、前述のレンズ114が配置されている。ケース12内に試料セル1及びレンズ4、5を格納し、レーザ光3の入射部分にレーザ光透過フィルタ9を設け、プラズマ発光の取り出し部分にレーザ光遮断フィルタ10を設けるので、発光分析系である光強度測定器8に外乱光の侵入とレーザ光の外部への漏洩が防止されている。
【0027】
レーザ透過フィルタ9は、レーザ装置30から照射されるレーザ光3の光軸に対して直角ではなく、レンズ114、レンズ113の光軸もそれぞれレーザ装置30から照射されるレーザ光3の光軸に対して傾いている。これにより、レーザ透過フィルタ9、レンズ114、113からなる光学部品がレーザ光3に対して傾いた状態とされ、反射レーザ光がレーザ装置30のレーザ発信器に戻らないようになっている。
【0028】
分光器40のプラズマ光導入部にはプラズマ光を導入するためのスリット41が開口されている。このスリット41は、プラズマ光6に対して直角でレーザ光3の光軸にほぼ沿うように延び、試料2のプラズマの発生位置がレーザ光3の光軸上を前後に移動する場合に、そのプラズマの発生位置を捕らえることができるようになっている。
【0029】
図1に示すように、試料セル1の中を流れる復水試料2に、Qスイッチ動作のYAGレーザ装置30(発振波長:1064nm、パルス幅:約7nsec、発振の繰り返し周波数:10Hz)から発せられるパルスレーザ光3をレーザ集光レンズ(後述する合わせレンズ系の焦点距離:約30mm)4で集光して照射する。
【0030】
この時、集光レンズ4の焦点位置近傍ではレーザ光3の密度が高くなり、復水試料2の一部が瞬間的に高温となって気化されプラズマ状態となる。このプラズマ内部では試料に含まれた元素が励起され、元素固有の波長の光を放射する。
【0031】
このプラズマからの発光6をレンズ5(焦点距離:30mm)によって集め、分光器40(焦点距離:50cm、回折定数:1800本/mm)に導入してスペクトル波長に分解し、光強度測定器(素子数:1024×256のCCD)8で各波長における光強度を測定し、16bitのA/D変換器(図示省略)を用いて計数した。このA/D変換器は、光強度測定器8と制御解析装置21のシリアルポート間にインターフェースボードとして配置される。
【0032】
制御解析装置21はモニターつきのパーソナルコンピュータにより構成され、濃度分析用プログラムを起動できるようになっている。
【0033】
この濃度分析用プログラムは、制御解析装置21に分析対象元素名としてNaに指定することで、制御解析装置21から通信線24を経由して分光器40を動作させることができるようになっている。分光器40は、その中心波長をNaスペクトル線近傍の波長589nmに設定することができる。分光器40のスリット41の前には高次の分光スペクトルを遮断する紫外線カットフィルター11が設置されている。この実施の形態では、分光器40のスリット41の幅を150μmに設定して実験したが、測定濃度範囲によってスリット41の幅は変更できる。このスリット41の幅の変更はスリットを設けた遮光板を交換する方法でも良いし、一対の遮光板により隙間を形成し、その一対の遮光板を移動させるアクチュエータを濃度分析用プログラムにより駆動して、一対の遮光板の隙間間隔を変更できるようにしても良い。
<▲1▼外乱光の遮断>
試料セル1、レーザ集光レンズ4、レンズ5は遮光部材からなる不透明ケース12の中に設置され、ケース12は周辺の外乱光の侵入や異物の侵入を防止している。
【0034】
レーザ装置からはレーザ光以外に、励起光や周辺からの漏れ光が含まれるため、ケース12のレーザ装置からのレーザ光入射部分にはレーザ光だけを選択的に透過する光学フィルター9を配置している。
<▲2▼レーザ光の漏洩防止>
ケース12は、レーザ光の外部への漏洩を防止する。
【0035】
ケース12の分光器側には、レーザ光を遮断する赤外線カットフィルター10を配置し、プラズマからの発光に含まれる紫外線を遮断する紫外線カットフィルター11を介して、ナトリウムのスペクトル波長近傍の光だけが分光器に導入される。
【0036】
分光器40とレーザ装置30をケース12に密着して、あるいは不透明のビームガイドを介して配置することで、完全に外乱光の遮断とレーザ光の漏洩が防止できる。この構成によって、装置動作時はレーザ光3に対する安全が確保できる。
<▲3▼レーザ発振の安定化>
レーザ光3の反射光がレーザ装置30にフィードバックされるとレーザ発振が不安定となる。そこで、レーザ3の光軸上の光学部品(光学フィルター9、レーザ集光レンズ4、後述する試料セル1のレーザ光3の入射窓)は、反射光がレーザ装置に帰らないように、光軸に対して数度傾けて取り付けてある。
【0037】
レーザ発振は分析時だけ必要であり、本実施例に用いたレーザ装置はレーザ発振が安定するために10秒以上の時間が必要であったことから、レーザ発振開始後20秒経過してからスペクトル測定を行うように設定した。
<▲4▼試料供給>
復水試料2は、配管17から供給され、バルブ13’とバルブ13を経由して、試料セル1の下部に接続された試料注入配管15より試料セル1に注入され、試料セル1の上部に接続された試料排出配管16から外部に排出される。バルブ13と13’にはバイパス配管が設けられ、固形物を捕捉するフィルター14が設置されている。懸濁物質を含む試料を分析する場合は、配管17からバルブ13’、フィルター14、バルブ13、配管15の流路を経由して、試料セル1に試料を注入する。配管およびバルブとフィルターには、Naが溶出しないテフロンあるいはステンレス鋼が使用されている。
<▲5▼試料セルの構造>
図2(a)(b)はテフロン(テトラフルオロエチレンの商品名)からなる試料セル1の内部構造を示す。試料セル1の筐体111の内部には、図2(b)の垂直断面図に示すように、復水試料2が下から注入され、上方向に通過して排出されるように、下から上に通ずる穴が形成されている。試料セル1の内壁上部114には傾斜しており、レーザ光の照射時に復水試料中に発生する気泡が滞留することなく試料排出部16から速やかに排出される構造となっている。
【0038】
試料セル1のレーザ光3の照射窓101には、レーザ集光用の石英レンズ113(焦点距離:50mm)が図面に表記していないリング状の治具によって固定されている。石英レンズ113は、図1に示すレーザ集光レンズ114(焦点距離:60mm)とで焦点距離の短い合わせレンズ系4(焦点距離:約30mm)を構成し、レーザ光3の集光性を高くしている。
【0039】
プラズマからの発光6の取り出し窓102には図面に表記していないリング状の治具により石英板112が固定されている。
【0040】
レンズ113と石英板112に使用する石英ガラスはNaを含まない合成石英材料を使用しており、いずれも耐薬品性のある図面には表記していないバイトン製Oリングを介して筐体111に固定している。
<▲6▼分光器スリットの配置と光強度測定器>
試料セル1に供給される試料2は、含有物の種類や濃度によって屈折率が変化する。この屈折率の変化はレーザ光3の集光位置の変化となり、結果としてプラズマの発光位置の変動を引き起こし、分光器40のスリット41上でレンズ5による結像位置の変化となって現れる。
【0041】
この発光位置の移動は、レーザ3の光軸に沿って起こる。このため、分光器40のスリット41の長手方向(分光器の波長軸に対して垂直方向)は、レンズ5の結像位置の移動方向に合わせる配置としており、レンズ5の光軸上のプラズマ発生位置の前後にかかわらず、分光器40内にプラズマ光が通過し得るように、スリットはレーザ光3の光軸にほぼ並行に延びている。
【0042】
実施の形態では、光強度測定器8にCCD素子(波長方向:1024素子、波長に垂直方向256素子)を用いており、波長と垂直方向に光軸が動いた場合にもプラズマからの光を受光でき、発光位置の変動による影響を緩和している。
【0043】
また、分光器40の配置に制約がある場合は、2個の鏡あるいはプリズムを用いて結像の移動方向を分光器40のスリット41の長手方向に沿わせることができる。図3はこれを示す。
【0044】
図3に示すように、レンズ5の結像位置203が仮想的な光軸205上で移動する。この光軸205はレーザ光3と平行である。鏡201と鏡202を図のように配置し、プラズマからの光6を矢印206から矢印207さらに矢印208に反射することで分光器のスリット204に平行に入射することができる。この光学系をレンズ5と分光器の間に挿入する。
【0045】
この発光位置の変動を緩和する方法としては他にも、レンズ5による結像位置の移動方向に、複数の光ファイバーの入射面を一軸上に配置してプラズマからの光を入射し、光ファイバーの反対面を分光器スリット開口に沿って配列する構造を取ることもできる。
【0046】
また、分析対象となる試料に含まれる種類や濃度が限定されて屈折率の変化が無視できる場合は、上述した考慮は不要となり、分光器40のスリット41の配置は自由となる。また、光強度測定器8に1次元のリニアセンサーを利用することができる。
【0047】
実施例では、光強度測定器8のCCDの長手方向を波長方向に配置して、波長測定エリアを0〜1024チャンネルとし、波長方向と直交する256素子に受光した光量を足し合わせて、各チャンネルの信号強度としている。
<▲7▼レーザ照射とプラズマ発光観測のタイミング>
実施例では、光強度測定器8の受光面前方にイメージインテンシファイヤ7を配置しており、イメージインテンシファイヤ7に印加する電圧を遅延回路19で制御し、レーザ照射から数百ナノ秒経過してから数マイクロ秒以上の時間幅で、プラズマからの発光6を光強度測定器8に入射する。
【0048】
レーザ照射と光強度測定器8によるスペクトル測定のタイミングを正確にコントロールするために、基準信号をパルス発振器18で作りだし、遅延回路19を介して受光系に、遅延回路20を介してレーザ装置の発振信号入力系にそれぞれ信号を供給する。
【0049】
基準信号の発生タイミングは信号伝送系24で、光強度測定器8の信号取込は信号伝送系23を介して行い、これらをパーソナルコンピュータ等の制御解析装置21でコントロールする。
<タイミング制御の必要性>
図4に、Naを含む水溶液にパルスレーザを照射して水溶液中にプラズマを発生させた時の、Naのスペクトル線(測定波長:588.995nm)強度と水の発光(広い波長に渡って発光するため、波長:586nmで測定した)強度の時間変化を示す。
【0050】
レーザ照射直後は水の発光とNaの発光強度はほぼ同じであり、Naのスペクトル線の強度を特定できない。しかし、時間が経過するに連れて、水の発光は急激に弱くなる一方、Naの発光の減少は緩やかである。そして、その比((Naの発光強度)/(水の発光強度))は時間の経過とともに増加して、2μsecで最大となり、その後減少する。
【0051】
この実施の形態では、レーザ照射から数百ナノ秒以上遅らせて発光スペクトルを観測するので、水の発光と混在するNaの発光スペクトルを大きな信号として測定することができる。
【0052】
実施例によれば、図5に示すように、同一濃度のNa水溶液の発光スペクトルの強度は、レーザ照射から発光スペクトル観測までの経過時間とともに小さくなるが、Naのスペクトル線(589nmと589.6nmの2本)が明瞭になってくる。
【0053】
この経時変化を信号比((Naの発光強度)/(水の発光強度))について見ると、図6に示すように、レーザ照射からの遅延時間とともに信号比は大きくなっている。しかしながら、10回の測定における変動係数(標準偏差/平均値)も同時に上昇して分析精度が低下することになる。
【0054】
このことは、レーザ照射と発光スペクトルの観測時間のタイミングを制御することで、分析精度と信号比の調整が可能であることを意味する。すなわち、遅延時間を長くすることによって、分析精度は犠牲にしても極低濃度領域では大きな信号比が得られる。また、十分な信号比が得られる場合は遅延時間を短くして分析精度を上げることができる。
【0055】
本実施例では、海水漏洩監視に必要な分析精度を変動係数で10%以下とし、レーザ照射から発光スペクトル観測までの遅延時間を1.4μsに設定した。
<(2)測定手順>
次に測定手順において、制御解析装置21に分析対象元素名としてNaに指定することにより、制御解析装置21から通信線24を経由して分光器40を動作させ、分光器40の中心波長をNaスペクトル線近傍の波長589nmに設定する。分光器40のスリット41の前には紫外線カットフィルター11(図1参照)を設置する。
【0056】
分析は、既知濃度のNa水溶液を用いて検量線を求め、その後、未知濃度の試料を測定する。
【0057】
図7(a)にレーザ照射からスペクトル測定までタイムチャートを示す。
【0058】
先ず、図7(b)の測定のためのパラメータの設定を行った後に、制御解析装置21からの同期信号で一連の測定が開始される。
【0059】
まず、制御解析装置21からパルス発振器18に測定開始信号Aを送る。次に、このパルス信号を基準として設定した遅延時間と測定ゲート幅の信号を、遅延回路19からイメージインテンシファイヤー7に印加し、光強度測定器8の雑音信号Bをチャンネル毎に測定する。雑音の強度測定は、事前に設定したn回の加算測定をm回行い、その平均値の信号強度を検出器の雑音レベル値とする。
【0060】
次に、発光スペクトルの測定に入る。この発光スペクトルの測定では、レーザ装置30に遅延回路20から信号を出力して、図7(a)の波形Cに示すようにレーザを発振させ、試料セル1の試料2へのレーザ照射を開始する。
【0061】
レーザ発振が開始してから発振強度が安定する時間が経過すると、制御解析装置21から光強度測定器8へ同期信号が入力され(図7(a)波形D参照)、スペクトル強度が測定され、A/D変換されて制御解析装置21にデータとして取り込まれる。スペクトル強度の測定は、事前に設定したn回の加算測定をk回行い、その平均値を信号強度とする。
【0062】
発光スペクトル強度を制御解析装置21に取込んだ後には、制御解析装置21からパルス発振器18にパルス発生の停止信号を送信し(波形Cの立ち下がり)、レーザ発振とデータ取込(波形Dの立ち下がり)が終了する。
【0063】
発光スペクトルの測定後、解析と結果の出力を行う。解析において制御解析装置21では、各チャンネル毎のスペクトル強度から光強度測定器の雑音成分を減算して、レーザ照射による発光スペクトル強度を算出し、検量線の信号強度と比較してNa濃度を求める。その結果と分析条件およびスペクトル強度のデータは、フロッピーディスクやハードディスクなどの記録装置に保存され、試料中のNa濃度が画面に表示される。また事前に設定した濃度以上の値を検出した場合は、警報を表示部28に出力する。
【0064】
この一連の測定は設定した分析時間間隔で設定回数だけ実施される。また、分析待機状態で中断コマンドによって終了できる。
【0065】
本実施例では、雑音測定時はn=100、m=2に設定し、スペクトル測定時はn=100、k=5に設定した。この設定において、Na濃度0.1ppb〜600ppbが変動係数10%以下で測定できることを実験的に確認した。また、高濃度の場合は、nを小さくして分析時間を短縮できることを実験的に確認した。
<(2)解析方法>
▲1▼信号比
図8に、レーザ(エネルギー:80mJ)を水溶液(Na濃度:3ppb)に照射して、レーザ照射から1.4μsec後に得られた発光スペクトル(波長:585〜593nm)強度の観測例を示す。発光スペクトル強度は、各チャンネル毎のスペクトル強度から光強度測定器の雑音成分を減算して得られた発光強度である。
【0066】
図8において、発光スペクトルの2つのピーク31(波長:588.995nm)と32(波長:589.592nm)がNaの発光スペクトル線であり、これらのピークから離れた短波長側33と長波長側34のスペクトルは水の発光である。
【0067】
実施例では、Naの発光スペクトル強度Sとしてピーク31の信号強度S1を用いている。また、バックグランド強度BGとして水の発光強度を用いている。
【0068】
しかしながら、図8のごとく、水の発光強度は波長によって変動しているため、Naスペクトル線の短波長側の585nmから587nmの信号強度の平均値と長波長側の591nmから593nmの信号強度の平均値を求め、さらにこれら2つの値の平均値をバックグランド強度BGとして取り扱っている。(これらの波長範囲は事前に制御解析装置21に入力して設定する)
以下に、信号比を扱うことの利点を説明する。
【0069】
強度Iのレーザを試料に照射した時、対象元素の発光波長λ0 のスペクトル強度がi0で、その周辺の波長λ1のスペクトル強度がi1である発光を観測したとする。λ1として対象元素スペクトル線の影響が無い波長を選ぶことで、溶媒(プランク試料)の発光強度と見積もることができ、この強度をバックグランド強度BGとする。
【0070】
対象元素の濃度を求めるために、発光強度の差(S-BG)と発光強度の比(S/BG)について考察する。
【0071】
レーザ照射による対象元素と溶媒の発光効率をそれぞれαとβとして、
i0 =αI、 i1 =βI
と表す。
【0072】
対象元素の発光スペクトル強度から溶媒の発光スペクトル強度を差し引くことは、
i0 −i1=αI−βI=(α−β)I
を求めることである。レーザ発振器の出力変動やレーザ照射窓の汚れ等によってレーザ照射強度がΔI変化したとすると、発光スペクトル強度の差は、
Figure 0004357710
となり、レーザ照射強度変化の影響を直接受ける。
【0073】
また、観測窓と試料の透過率をγとすると、検出できる信号強度は、
S=γi0 、 BG=γi1 、
となる。信号強度の差は、
S-BG =γ(i0-i1)
で与えられ。観測窓の汚れや試料の濁りによる透過率の変化をΔγとすると、
S-BG=(γ+Δγ)(i0 -i1 )
となり、ここでも、信号強度が観測窓の汚れや試料の濁りの影響を直接受けることになる。
【0074】
これに対し、対象元素の発光スペクトル強度と周辺の発光スペクトル強度の比に着目すると、その強度比は、
i0/i1=αI/βI=α/β(一定)
となり、レーザの照射強度が変化したとしても、
Figure 0004357710
となり、レーザ強度の影響を受けない。
【0075】
また、観測窓等の透過率変化があったとしても、対象元素の発光強度Sと溶媒の発光強度BGの信号比は、
Figure 0004357710
となり、透過率やレーザ強度の変化を受けることはない。
上述した、Naの発光強度Sと、バックグランド強度BGを用いて測定した信号比(S/BG)と、Na濃度の関係を実験的に求めた。結果を図9に示す。Na濃度に対する信号比の関係は直線であり、測定した信号比から1次式を用いてNa濃度を求めることができる。また、試料セルに懸濁物質(酸化鉄)を含む試料を流して、レーザ照射窓101の石英レンズ113とプラズマ発光の取り出し窓102の石英版112に強制的に汚れを生じさせても、Na濃度と信号比の関係は保持されることが実験的に確認された。
【0076】
実施例では、Na濃度Cは、信号比をRとして、C=1.24R-1.27[ppb]で求められ、図10に示すように、Na濃度600ppbまで直線性が確認されており、復水器検塩装置には十分な測定範囲である。
▲2▼直線性
図10によれば、Na濃度が600ppb以上になると信号比に飽和傾向が現れる。これは、光強度測定器8に過大な光量が入射したため、光強度と出力信号強度の線形性が失われたことに起因する。そこで、分光器40のスリット41の前に光減衰器を配置して光量を減少させると、更に高濃度まで直線性が確保できることが実験的に確認された。図11に光減衰器の使用事例を示す。
▲3▼Naスペクトル強度
上述したように、光強度測定器8に強い光が入射して信号が飽和した場合について考えると、Naの発光が強くなると、本実施例の場合、CCDのダイナミックレンジ(16bit:65536カウント)をオーバーしてしまう。すなわち、発光の強い588.955nmの信号S1が飽和したとしても、BGの信号(S3やS4など)は飽和せずに計数される。その結果、信号比(S/BG)は本来よりも小さく観測されることになり、間違ったNa濃度を算出することになる。
【0077】
ここで、Na原子の発光スペクトル線である588.995nmと589.592nmの2つの波長の光についてみると、2つのスペクトル線の下準位は基底状態であり、588.995nmの上準位はエネルギー16973cm-1の励起状態、また589.592nmの上準位は16959cm-1の励起状態である。励起状態から基底状態への遷移確率はそれぞれ1.8×108/secと0.9×108/secであり、588.995nmと589.592nmの発光強度比は理論的に2:1となる。
【0078】
この事実に着目すると、発光の強い588.955nmの信号S1が飽和したとしても、589.592nmの信号S2は飽和するまで計数される。その結果、図11の(a)に示すように、588.955nmの信号強度S1に対して589.592nmの信号強度S2が理論値の1/2よりも強く観測される。そこで、この2つのNaの発光スペクトル線の強度比を監視することで、光強度測定器8の飽和現象を知ることができる。
【0079】
瞬間的に高い濃度のNaが試料セルを通過した場合など、S2/S1が1/2よりもある程度大きく観測された場合(図11の(a))には、この測定データを無効にし、再測定をすることで誤測定を回避することができる。また、継続してS2/S1が1/2よりもある程度大きく観測される場合は、分光器スリット前に光減衰器を自動挿入して光量を減少させる(図11の(b))。
(3)分析性能
本実施例を発電所において試験した結果、復水に含まれるpH調整剤(アンモニア、ヒドラジン、エタノールアミン)や陰イオン(硫酸イオン、塩素イオン、炭酸イオン、燐酸イオン)の影響を受けることなく0.1ppbから600ppb程度のNa濃度を測定できることが検証された。また、懸濁物質が多量に存在する試料については、Na濃度測定に懸濁物質が影響することが判明し、本実施例におけるフィルター14に孔径7μm以下のフィルターを用いることで懸濁物質の影響を回避することができることが確認された。
【0080】
上述の実施例の濃度分析方法を復水器海水漏洩監視に適用して評価した結果、以下のことを実験的に確認した。
【0081】
▲1▼0.1〜600ppbのNa濃度を、前処理不要で非接触で連続・自動分析できる。
【0082】
▲2▼pH調整剤や陰イオンの存在があっても正確な濃度が得られる。
【0083】
▲3▼分光器のスリット前に光減衰器を配置することで高濃度の測定が可能となる。
【0084】
▲4▼1ppb程度の分析に要する時間は3分以内であり、従来の分析方法に比較して大幅な時間短縮ができる。
【0085】
復水器の海水リーク監視のためのNa分析要求濃度下限は数ppbから数百ppbオーダーで良いことから、本発明はこの要求に十分に対応できるものであることが実験的に確認されたといえる。
【0086】
上述の濃度分析方法は、復水のみならずあらゆる水溶液試料のNa分析に適用できる。また、上述の濃度分析方法によりKとCaの濃度を測定した事例を図12と図13に示す。Kの測定には、766.5nmのKスペクトル強度とBGとして667.5〜568.5nmの強度を用いている。Caの測定には、422.7nmのCaスペクトル強度とBGとして421〜422nmの強度を用いている。これにより、水溶液試料のK及びCaの分析にも適用できることが判明した。
【0087】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の請求項1の濃度分析方法及び請求項4の濃度分析装置によれば、水のプラズマ発光と分析対象元素のプラズマ発光とを、時間をおいて観察し、水のプラズマ発光が短時間で終了した後に、分析対象物質のスペクトル強度を測定できるので、分析対象物質の濃度を正確に測定できる。すなわち、レーザ照射から数百ナノ秒以上経過してから数マイクロ秒以上の時間幅でプラズマの発光スペクトル強度を測定し、分析対象元素の発光スペクトル線の光強度をこのスペクトル線を含まない範囲における光強度で除した値から前記水溶液中の分析対象元素の濃度を求めるので、プラズマ発生時の水の発光成分と、監視対象の含有物質のスペクトルを分離でき、含有成分のスペクトルが明確となり、正確な分析ができる。
【0088】
本発明の請求項2の濃度分析方法によれば、スペクトルの光強度測定に当たり、まず、レーザ光を遮光して光強度測定器の波長毎の雑音信号強度の平均値を各波長における雑音信号強度とし、次にレーザ光を照射して光強度測定器の波長毎の信号強度の平均値を測定し、信号強度の平均値から雑音信号強度の平均値を差し引いた値を各波長における光強度信号値とするので、広い濃度範囲で波長毎のスペクトル光強度を正確に測定でき、誤差の低減が可能となるために、試料中における分析対象元素の濃度をより正確に測定できる。
【0089】
本発明の請求項3の濃度分析方法によれば、2つのNaの発光スペクトル線の強度比を監視することで、光強度測定器の飽和現象を知ることができる。瞬間的に高い濃度のNaが試料セルを通過した場合など、S2/S1が1/2よりもある程度大きく観測された場合には、この測定データを無効にし、再測定をすることで誤測定を回避することができる。また、継続してS2/S1が1/2よりもある程度大きく観測される場合は、分光器スリット前に光減衰器を自動挿入して光量を減少させることが可能となる。
【0090】
本発明の請求項5の濃度分析装置によれば、分光器の入射スリットの長手方向が、レンズで集光したプラズマの発光結像の移動方向に一致するので、プラズマ発生位置が変動しても観察ができる。
【0091】
本発明の請求項6の濃度分析装置によれば、光強度測定器にXY座標系上に受光素子が配置された受光器を用い、X軸方向の受光素子列を分光スペクトルの波長方向に配置し、Y軸方向に配置した受光素子列の信号の総和を各波長における信号強度として二次元的に捕らえるので、スペクトルに含まれる各波長及びその強度を電気信号に変換して、監視対象の成分及び濃度を短時間で測定できる。
【0092】
以上の他に、本発明の請求項1乃至請求項6の濃度分析方法及び濃度分析装置では、Na、K、Ca等の水溶液において対象成分を直接測定することができ、復水に漏洩する極微量の海水成分を直接・連続的に監視することができ、また、分析時間と工程の大幅な時間短縮ができ、広範囲の濃度分析が可能となる。
【0093】
また、点検時や休止中或いは作業時の汚れや大気中の二酸化炭素が復水に溶け込んで塩素イオンと同じ陰イオンが生じることにより、電導度が上昇した場合でも、その都度イオンクロマト装置による手分析により海水リークの有無を確認する必要がなく、試料中の対象成分の正確な濃度が得られる。
【0094】
更に、例えば発電所の復水器の海水リーク監視のために用いる場合には、Na分析要求濃度下限は数ppbから数百ppbオーダーで良いことから、請求項1の発明はこの要求に十分に対応できる。
【0095】
また、本発明の濃度分析方法は、発電所の復水のみならず、水に含まれる物質の濃度測定等、広範囲の水溶液試料の成分分析に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施の形態の濃度分析装置の構成を示す模式図
【図2】図2(a)は図1の試料セルの水平断面図、図2(b)は試料セルの垂直断面図
【図3】図3は図1のケース内において光軸を変更する方法の説明図
【図4】図4は図1の濃度分析装置における発光強度の経時変化の測定図
【図5】図5は図1の実施例にかかる観測スペクトルの経時変化の測定図
【図6】図6はレーザ照射からの遅延時間と信号比及び変動係数の関係説明図
【図7】図7(a)は光強度測定器のノイズ測定部分と発光スペクトル測定部分のタイミンクチャート、図7(b)は光強度測定器のノイズ測定から発光スペクトル測定におけるフローチャート
【図8】図8は実施例にかかる観測スペクトルの説明図
【図9】図9は本発明の実施例の検量線測定実験結果
【図10】図10は本実施例の直線性測定実験結果
【図11】図11は本実施例の信号飽和対策事例
【図12】図12は本発明の応用事例であり、図12(a)はそのスペクトル分布、図12(b)は検量線測定結果。
【図13】図13は本発明の応用事例2であり、図13(a)はそのスペクトル分布、図13(b)は検量線測定結果。
【符号の説明】
1 試料セル、
2 試料、
3 レーザ光、
4 レーザ集光レンズ、
5 レンズ、
6 プラズマからの光、
7 開閉機構、
8 光強度測定器、
9 赤外線透過フィルター、
10 赤外線カットフィルター、
11 紫外線カットフィルター、
12 ケース、
13、13' 流路切り替えバルブ、
14 フィルター、
15 試料セルへの試料注入配管、
16 試料セルからの試料排出配管、
17 配管、
18 パルス発振器、
19、20 遅延回路、
21 制御・解析装置、
22 プリンター、
23〜27 通信線、
28 表示部
30 レーザー装置
31 Naスペクトル線(波長:588.995nm)、
32 Naスペクトル線(波長:589.592nm)、
33 Naスペクトル線の短波長側の波長、
34 Naスペクトル線の長波長側の波長、
40 分光器
41 スリット
111 試料セル筐体、
112 発光の観測窓の石英板、
113 レーザ照射窓兼レーザ集光石英レンズ、
114 試料セル上部の気泡排出用の傾斜部、
201、202 反射鏡、
203 結像位置、
204 分光器のスリット開口、
205 仮想光軸、
206〜208 プラズマ発光の進行方向、
S1 Naスペクトル線(波長:588.995nm)の強度、
S2 Naスペクトル線(波長:589.592nm)の強度、
S3 Naスペクトル線の短波長側の強度
S4 Naスペクトル線の長波長側の強度。

Claims (6)

  1. 試料セル内に水溶液を流し、この試料セル内を流れる水溶液にレーザ光を照射してプラズマを発生させ、該プラズマ光のスペクトル分析を行って前記水溶液中のNa濃度を分析するNa濃度分析方法において、
    前記プラズマ光を分光する分光器を、あらかじめ中心波長が前記Na元素のスペクトル波長近傍に設定すると共に、該分光器により、前記試料セル中で発生したプラズマ光を、Na元素の発光スペクトル線とこの発光スペクトル線を含まない波長範囲のスペクトルとに分離し、
    前記Na元素の発光スペクトル線の強度と、この発光スペクトル線を含まない波長範囲の強度とを、前記レーザ光の照射時刻から約1.4μ秒の遅延時間をおいて測定し、
    前記Na元素の発光スペクトル線の光強度をこの発光スペクトル線を含まない範囲における光強度で除した値から前記水溶液中のNa元素の濃度を求めることを特徴とするNa濃度分析方法。
  2. 請求項1のNa濃度分析方法において、
    前記発光スペクトルの光強度測定に当たり、
    まず、レーザ光を遮断した状態で、光強度測定器の波長毎の雑音信号強度をあらかじめ設定しておいた回数だけ加算して測定し、これを前もって設定しておいた回数だけ繰り返して各波長毎の信号強度の平均値を求め、前記平均値を各波長における雑音信号強度とし、
    次にレーザ光を照射して、光強度測定器の波長毎の信号強度をあらかじめ設定しておいた回数だけ加算して測定し、これを前もって設定しておいた回数だけ繰り返して各波長毎の信号強度の平均値を測定し、
    このときの平均した信号強度から前記雑音信号強度を差し引いた値を各波長における光強度信号値とすることを特徴とするNa濃度分析方法。
  3. 請求項1、請求項2のいずれかのNa濃度分析方法において、
    度測定に用いるナトリウムスペクトル線の光強度はナトリウムスペクトル線である588.995nmにおける信号強度をとり、同時にナトリウムスペクトル線である589.592nmにおける信号強度を測定して、588.995nmにおける信号強度と589.592nmにおける信号強度の関係が2:1に近い場合の測定値だけを有効なデータとすることを特徴とするNa濃度分析方法。
  4. 試料セル内に水溶液を流し、この試料セル内を流れる水溶液にレーザ光を照射して前記水溶液中にプラズマを発生させ、このプラズマ光のスペクトル分析を行って前記水溶液中のNa濃度を分析するNa濃度分析装置において、
    あらかじめ中心波長が前記Na元素のスペクトル波長近傍に設定され、前記試料セル中で発生したプラズマ光を、Na元素の発光スペクトル線とこの発光スペクトル線を含まない波長範囲のスペクトルとに分離する分光器と、
    前記試料セルと前記分光器の前記プラズマ光を入射するスリット間に配置され、前記発光スペクトル波長近傍に重なる高次の分光スペクトル波長を遮断する光学フィルターと、
    前記分光器で分離されたプラズマ光の強度を測定する光強度測定器と、
    少なくとも前記光強度測定器の受光面の前方に配置され、前記プラズマ光の通過を制御する開閉機構と、
    前記レーザ光の照射時刻から約1.4μ秒の遅延時間をおいて、前記Na元素の発光スペクトル線の強度と、この発光スペクトル線を含まない波長範囲の強度とを、測定するように、前記開閉機構を制御する制御手段と
    を有することを特徴とするNa濃度分析装置。
  5. 請求項4のNa濃度分析装置において、
    前記分光器に前記プラズマ光を入射するスリットは、前記試料セルに照射されるレーザ光の焦点の変動を許容するように、前記レーザ光の光軸と光学的に略同一方向に延びていることを特徴とするNa濃度分析装置。
  6. 請求項4、請求項5のいずれかのNa濃度分析装置において、
    前記光強度測定器に受光素子をXY座標系上に配置した受光器を用い、X軸方向の受光素子列を前記分光器のスペクトルの波長域を検出するように設定し、Y軸方向の受光素子列を信号の総和を各波長における信号強度を測定するように設定したことを特徴とするNa濃度分析装置。
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