JP4357024B2 - フッ素樹脂線状体の表面処理方法 - Google Patents

フッ素樹脂線状体の表面処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素樹脂線状体の表面に接着性、濡れ性などを付与するための表面処理方法に関し、特に同軸ケーブルのフッ素樹脂表面に金属メッキ層を形成する際に、フッ素樹脂表面への金属メッキ層の接着性を向上させるための表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フッ素樹脂は、撥水撥油性、防汚性、耐熱性、耐薬品性、電気的特性などに優れているため、近年種々の用途に用いられているが、表面が不活性であるため、接着性、濡れ性が悪く、印刷や塗装が困難であり、他の材料との複合化が難しいという問題がある。
このような問題を解決するために、金属ナトリウム−ナフタレン錯体溶液処理、金属ナトリウム−アンモニア溶液処理、プラズマ処理、火炎処理、スパッタエッチング処理、エキシマレーザ処理などの種々の表面処理方法が提案されている。 なかでも、紫外域の高強度パルス光を発振するエキシマレーザを用いた表面処理は、精密な表面処理法として広く検討が行なわれている。
例えば、特公平7−5776号公報には、ヒドラジン類の存在下に、フッ素系高分子成形品にエキシマレーザ光を照射してその表面を親水化し、金属膜との密着性を向上させることが記載されている。また、特開平7−207049号公報には、フッ素樹脂成形体表面に紫外線吸収性化合物とフッ素系界面活性剤の存在下で、エキシマレーザ光を照射して該成形体表面の接着性、濡れ性を改善する方法が提案されている。
これらの方法では、ヒドラジンを含む反応容器内でレーザ光を照射したり、紫外線吸収性化合物とフッ素樹脂系界面活性剤を含む水溶液等をフッ素樹脂成形体表面に付着させ、乾燥させた後レーザ光を照射するものであるから、連続処理が困難であり、生産性が劣ったものとなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、従来技術と同等の表面改質効果を示しながら連続処理が可能で、生産性を大幅に向上させることができるフッ素樹脂線状体の表面処理方法を提供することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、毛管現象により石英細管内に紫外線吸収性化合物水溶液を満たした状態で、その中にフッ素樹脂線状体を走行させながらレーザ光を照射すればよいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明によれば、紫外線吸収性化合物の存在下に、エキシマレーザ光を照射してフッ素樹脂線状体の表面を処理する方法において、紫外線吸収性化合物水性液に石英細管をその一端が該水性液に浸漬した状態で直立せしめ、毛管現象により該石英細管内を該水性液で満たし、その中に、該細管の内径よりも小さい直径のフッ素樹脂線状体を走行させながら該石英細管内を走行中のフッ素樹脂線状体にエキシマレーザ光を照射することを特徴とするフッ素樹脂線状体の表面処理方法が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、表面処理されるフッ素樹脂線状体は、表面がフッ素樹脂で構成されている線状体であり、フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、トリフルオロクロロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)が挙げられ、これらは、2種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、テトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が好ましく用いられる。
フッ素樹脂線状体は、全体が上記フッ素樹脂で構成されていてもよいし、導体上に上記フッ素樹脂を押出被覆するなどして、表面を上記フッ素樹脂で構成した線状体であってもよい。
【0007】
このフッ素樹脂線状体の直径は、線状体の片側からエキシマレーザを照射して線状体の全周面にわたって処理が行なえるようにし、しかも毛管現象により紫外線吸収性化合物水性液が上昇しうる内径を有する石英細管内を走行できるということから0.4mm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.3mm以下、特に好ましくは0.2mm以下である。
また、本発明で使用する紫外線吸収性化合物には特に制限がなく、紫外線吸収性の化合物であれば任意の化合物を用いることができるが、特に芳香族炭化水素、芳香族カルボン酸及びその塩、芳香族アルデヒド、芳香族アルコール、芳香族アミン及びその塩、芳香族スルホン酸及びその塩、フェノール類などの芳香族紫外線吸収性化合物が有効である。具体的には、安息香酸ナトリウム、フェノール、ベンゼンスルホン酸、カリボール、ビスフェノールA及びアニリン塩酸塩を例示することができる。特に安息香酸ナトリウムは安価で、しかも安全性の点で優れているので好ましく用いられる。
【0008】
上記紫外線吸収性化合物は、水性液の形で使用される。
ここで、水性液とは、水溶液、水性分散液、水性混濁液、水性乳化液を含むものであり、通常、1〜10重量%の濃度で使用される。紫外線吸収性化合物の溶解性、分散性、乳化性を高める上で、水溶性有機溶剤、分散剤、乳化剤等を必要に応じて配合してもよい。
更に本発明においては、図1に示すように、浴槽1内に入れた紫外線吸収性化合物水性液2に石英細管3をその一端3aが該水性液2に浸漬した状態で直立せしめ、毛管現象により該石英細管3内を該水性液2で満たし、その中にフッ素樹脂線状体Fを走行させながら該石英細管3内を走行中のフッ素樹脂線状体Fにエキシマレーザ光Lを照射する。
なお、4はフッ素樹脂線状体の供給ボビン、5は表面処理後のフッ素樹脂線状体Fを巻取る巻取りボビン、6a・6b・6cはガイド部材である。
【0009】
石英細管3は、その中をフッ素樹脂線状体Fが通過しうると共に、毛管現象によって水性液2が石英細管3内を満たすことが必要であるため、その内径は、フッ素樹脂線状体+0.005mm〜フッ素樹脂線状体+0.05mmであることが好ましく、更に好ましくは、フッ素樹脂線状体+0.005mm〜フッ素樹脂線状体+0.03mmである。
石英細管3の長さは、レーザビームの大きさに応じて決めればよい。
なお、石英細管3の下端3aは、図1に示すように下方に拡開した形状にしておくと、フッ素樹脂線状体Fの導入が容易になるので好ましい。
【0010】
紫外線吸収性化合物水性液2で満たされた石英細管3内を走行するフッ素樹脂線状体Fに照射するレーザ光としては、高出力が長時間にわたって安定に得られるエキシマレーザ光が用いられる。
かかるエキシマレーザ光としては、ArFレーザ光(193nm)、KrFレーザ光(248nm)、XeFレーザ光(308nm)が好ましく用いられる。
これらのエキシマレーザ光は、通常、室温、大気中で照射される。
エキシマレーザ光の照射条件は、フッ素樹脂の種類、紫外線吸収性化合物の種類、その水性液濃度、フッ素樹脂表面の改質の程度などによって異なるが、通常、パルスエネルギーが50〜600mJ/cm2 pls、繰返周波数が1〜50ppsである。
また、フッ素樹脂線状体Fの走行速度は、フッ素樹脂の種類、線状体の太さ、紫外線吸収性化合物の種類、その水性液濃度、エキシマレーザ光照射条件、フッ素樹脂表面の改質の程度などによって異なるが、例えば、直径0.15mmのフッ素樹脂線状体を安息香酸ナトリウムの 5%水溶液を用いて、KrFエキシマーザ(パルスエネルギー:200mJ/cm2 pls、繰返周波数:30pps)で処理する場合は、1.5〜2.5m/分が適当である。
【0011】
本発明のフッ素樹脂線状体の表面処理方法は、全体がフッ素樹脂で構成されている線状体の表面を処理して、その接着性、濡れ性を改善するのにも有効であるが、特に高周波特性が要求される同軸ケーブルにおいて、導体上に押出被覆されたフッ素樹脂の表面を処理して、その上に形成する金属メッキ層との接着性を向上させるのに好適である。
【0012】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下の実施例、比較例では、同軸ケーブルにおいて導体2に押出被覆されたフッ素樹脂の表面を処理して、その上に形成する金属メッキ層との接着性を改善する例について説明するが、その際の表面処理の効果は、同軸ケーブルのシールド効果によって評価した。
シールド効果は公知の方法であるアンテナによる漏れノイズの測定値から算出しデジベル(dB)表示した。この値が大きいほどシ−ルド性に優れていることを示す。
【0013】
実施例1
直径0.05mmの導体2にFEPを0.05mmの厚さに押出被覆して得たフッ素樹脂線状体を、図1に示す装置でレーザ光を照射して表面処理を施した。 この場合、紫外線吸収性化合物水性液としては、安息香酸ナトリウム5%の水溶液を用い、石英細管としては、内径0.18mm、長さ50mmのものを用いた。レーザ光としては、KrFエキシマレーザ光(248nm)をパルスエネルギー200mJ/cm2 pls、繰返周波数30ppsの条件下で、毛管現象により安息香酸ナトリウム水溶液で満たされている石英細管内を走行中のフッ素樹脂樹脂線状体に照射した。このときのフッ素樹脂線状体の走行速度は2m/分であった。
このようにして表面処理したフッ素樹脂線状体の表面に、常法により厚さ0.03mmの銅メッキ層を形成し、更にその上に厚さ0.035mmのポリエチレン保護被覆層を設けて同軸ケーブルを作成した。
この同軸ケーブルは、シールド効果が70dB以上と高く、フッ素樹脂表面と銅メキ層との接着性が良好であり、しかも連続的に表面処理を施すことができるため、生産性が大幅に向上した。
【0014】
比較例1
実施例1において、石英細管を使用せず、安息香酸ナトリウム水溶液から引き上げた走行中のフッ素樹脂線状体にエキシマレーザ光を照射した以外は、実施例1と同様にして同軸ケーブルを作成した。
この同軸ケーブルは、シールド効果が15dBと低く、フッ素樹脂表面と銅メキ層との接着性が不良であった。
【0015】
実施例2
実施例1において、導体上に押出被覆するフッ素樹脂としてFEPの代わりにPFAを使用した以外は、実施例1と同様にして同軸ケーブルを作成した。
得られた同軸ケーブルは、シールド効果が70dB以上と高く、フッ素樹脂表面とメッキ層との接着性が良好であり、しかも連続的に表面処理を施すことができるため、生産性が大幅に向上した。
【0016】
実施例3
実施例1において、安息香酸ナトリウムの代わりにベンゼンスルホン酸を使用した以外は、実施例1と同様にして同軸ケーブルを作成した。
この同軸ケーブルは、シールド効果が70dB以上と高く、フッ素樹脂表面と銅メキ層との接着性が良好であり、しかも連続的に表面処理を施すことができるため、生産性が大幅に向上した。
【0017】
実施例4
直径0.05mmの導体2にPTFEを0.05mmの厚さに押出被覆して得たフッ素樹脂線状体を、図1に示す装置でレーザ光を照射して表面処理を施した。この場合、紫外線吸収性化合物水性液としてはビスフェノールAの 8%水分散液を用い、石英細管としては、内径0.18m、長さ50mmのものを用いたレーザ光としては、ArFエキシマレーザ光(193nm)をパルスエネルギー200mJ/cm2 pls、繰返周波数30ppsの条件下で、毛管現象によりビスフェノールA水分散液で満たされている石英細管内を走行中のフッ素樹脂線状体に照射した。このとき、フッ素樹脂線状体の走行速度は2m/分であった。
このようにして表面処理したフッ素樹脂線状体の表面に、常法により厚さ0.03mmの銅メッキ層を形成し、更にその上に厚さ0.035mmのPVC保護被覆層を設けて同軸ケーブルを作成した。
この同軸ケーブルは、シールド効果が70dB以上と高く、フッ素樹脂表面と銅メキ層との接着性が良好であり、しかも連続的に表面処理を施すことができるため、生産性が大幅に向上した。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、従来技術と同等の良好なフッ素樹脂表面改質効果を示しながら連続表面処理が可能となり、生産性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施する装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
2 紫外線吸収性化合物水性液
3 石英細管
F フッ素樹脂線状体
L エキシマレーザ光

Claims (8)

  1. 紫外線吸収性化合物の存在下に、エキシマレーザ光を照射してフッ素樹脂線状体の表面を処理する方法において、紫外線吸収性化合物水性液に石英細管をその一端が該水性液に浸漬した状態で直立せしめ、毛管現象により該石英細管内を該水性液で満たし、その中に、該細管の内径よりも小さい直径のフッ素樹脂線状体を走行させながら該石英細管内を走行中のフッ素樹脂線状体にエキシマレーザ光を照射することを特徴とするフッ素樹脂線状体の表面処理方法。
  2. フッ素樹脂線状体がポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる線状体であることを特徴とする請求項1記載のフッ素樹脂線状体の表面処理方法。
  3. フッ素樹脂線状体の直径が0.4mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のフッ素樹脂線状体の表面処理方法。
  4. 紫外線吸収性化合物水性液の濃度が1〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂線状体の表面処理方法。
  5. 紫外線吸収性化合物が芳香族紫外線吸収性化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂線状体の表面処理方法。
  6. 芳香族紫外線吸収性化合物が安息香酸ナトリウム、フェノール、ベンゼンスルホン酸、カリボール、ビスフェノールA又はアニリン塩酸塩であることを特徴とする請求項5記載のフッ素樹脂線状体の表面処理方法。
  7. 石英細管の内径がフッ素樹脂線状体の直径+0.005mm〜フッ素樹脂線状体の直径+0.05mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフッ素樹脂線状体の表面処理方法。
  8. エキシマレーザ光がArFレーザ光、KrFレーザ光又はXeFレーザ光であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフッ素樹脂線状体の表面処理方法。
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