JP4356919B2 - 表面ブローチ加工方法及び表面ブローチ加工治具 - Google Patents
表面ブローチ加工方法及び表面ブローチ加工治具 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直動軸受の移動体ブロックのボール溝などの、断面凹状の一定断面を有するワークの内側面溝の表面ブローチ加工方法及び治具に関し、特に、焼き入れ後の表面硬度45〜65HRC(ロックウエル硬さCスケール:以下同じ)等の高硬度材を高精度に加工する高精度仕上げブローチ加工に適した表面ブローチ加工方法及び治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5に示すような、直動軸受50は、直動レール51に移動体ブロック52がボール溝53,53間に組み込まれた図示しないボールを介して直線方向に移動可能にされている。図6に示すように、移動体ブロック52は凹状断面であり、軸方向に延び一定断面にされ、内側面にボール溝54,54が設けられている。この直動軸受50の移動体ブロック52のボール溝54などの内側面溝は、ボールやころなどの転動体が転がり、直動案内面の役割を果たすと共に、前記転動体を介してモーメント荷重を受ける機能を有するため、硬度HRC60程度とされ、高い寸法精度と真直精度が要求される。このため、従来は研削加工で仕上げ加工されるのが普通であった。しかしながら、かかる移動体ブロック52などのワークの断面凹状の内側面溝加工用の研削砥石は、ワークとの干渉を避ける必要から直径を大きくとれず、高速回転が必要な上、砥石の損耗が速いという問題があった。
【0003】
一方、高硬度材料をブローチ加工する技術は、例えば特許文献1に記載されているものがある。これは超硬合金の切れ刃を有し、硬質被膜を施し、すくい角を負角としたブローチで、高速加工することにより、45〜65HRCの高硬度材の加工を可能とするものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−239425号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる高硬度材のブローチ加工においては、切削反力、切削方向と垂直方向の反力が、研削加工や通常の切削加工に比べて大きく、特に凹状のワーク2(52)の開口部20を形成する側面部21の内側面23の加工前溝24の加工では、図7(b)に示すように、ワーク2(52)の入口部26、出口部27において加工後のボール溝底54、54の深さが浅くなり、真直度が悪いという問題があった。また、特に、高硬度材の加工においては、切削量が小さいのでかかる真直度の低下の影響が非常に大きく、表面ブローチ仕上げ加工では、高い精度を得られないという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、かかる問題点に鑑みて、移動体ブロックなどの断面凹状の一定断面を有するワークの高硬度材でのボール溝等の仕上ブローチ加工を高精度に行える表面ブローチ加工方法を提供することである。また、かかる表面ブローチ加工に適した表面ブローチ加工治具を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、研究の結果、特に表面硬度が高く、仕上げ代を少なくされた、移動ブロックの内側面部内壁のボール溝のブローチ加工にあっては、ブローチ加工による切削反力、切削方向と垂直方向の反力により、ワークが変形し、加工時の弾性変形が加工後に戻る、いわゆるスプリングバック量が従来のものより大きくなるため、側面部が変形し、真直度が悪くなる。特に、断面凹状で一定断面で軸方向にボール溝を加工するような場合には、ワークの両端で弾性変形しやすくボール溝深さが入口部、出口部で浅くなることを知得した。
【0008】
かかる知得により、本発明においては、開口部と、開口部を形成する両側面部と、両側面部が固定される底部と、からなる断面凹状の一定断面を有するワークの前記側面部内壁をブローチ加工する表面ブローチ加工において、前記側面部内壁の表面硬度を45〜65HRC(ロックウエル硬さCスケール)とし、予め仕上げ代を残して形成し、前記ワークの側面部外壁を外側から加圧した状態で前記仕上げ代を切削加工する表面ブローチ加工方法を提供することにより上記課題を解決した。即ち、変形し易い側面部を外側から加圧して、切削反力と対抗する力で側面部を押さえ弾性変形を小さくし、切削精度を上げることができる。
【0009】
加圧位置は、側面部の変形で考えれば、側面部外壁端でもよいが、側面部の変形でなく加工部の変形を抑えるのが重要であり、請求項2に記載の発明においては、前記側面部外壁の加圧位置は、前記側面部を挟んで前記側面部内壁の前記仕上げ代が残された切削加工部と対称位置とした。
【0010】
さらに、変形は、ワークの両端、即ち、軸方向端で大きいので、請求項3に記載の発明においては、前記側面部外壁の加圧位置は、前記ワーク軸方向の両端近傍とした。これによれば、全体を押さえることなく、両端を押さえるのみで良好な真直度を得ることができる。
【0011】
かかる表面ブローチ加工にあたっては、ワークを固定する治具は、請求項4に記載の発明においては、開口部と、開口部を形成する両側面部と、両側面部が固定される底部と、からなる断面凹状の一定断面を有するワークの前記側面部内壁をブローチ加工するための前記ワークの固定治具であって、前記ワークの軸方向及び開口部が開放されるように取付可能にされ、前記ワーク側面部の外壁に当接する加圧部材が設けられた表面ブローチ加工治具とした。加圧部材はスプリング(コイル、ばね座金等)と押しボルトとの組合せや、油圧シリンダによる油圧力により構成される。加圧力は、加工材料、形状、寸法、硬さ等により、適宜設定できるのが好ましく、また、加工精度に影響する。そこで、加圧力の変更や設定の制御の簡単な油圧シリンダで一定の圧力で加圧クランプするのが好ましい。
【0012】
また、請求項5に記載の発明においては、前記加圧部材は、前記ワーク軸方向の両端近傍で前記ワーク側面部の外壁に当接するようにすればよい。両端の加圧だけでよいので、構造が簡単で加工も容易となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態を示す表面ブローチ工具の斜視図、図2は表面ブローチ盤の部分斜視図、図3はワークを取り付ける本発明の実施の形態を示す表面ブローチ加工治具の軸直角断面図、図4は図3のA−A線断面図である。本発明の実施の形態においては、前述した図5,6に示す直動軸受50の移動体ブロック52の凹状断面の側面部21の内壁23に形成されたボール溝54,54の仕上げブローチ加工を行うものである。移動体ブロック(以下単に「ワーク」という)2は、ボール溝に仕上げ代を残してブローチやその他の切削工具等で加工され、その後熱処理され、ボール溝表面硬さ60HRC前後に焼き入れされている。取り代は0.02〜0.2mm程度とされる。かかる取り代が残された加工前のボール溝24,24を加工する表面ブローチ工具1は図1に示すように、加工後のボール溝54,54の径及びボール溝間寸法に合わせて形成された超硬合金の多数の切れ刃11,12が両側に配置されたブローチ刃部13がブローチ取付ジグ14にボルト15で固定されている。切れ刃11,12は片側で数枚から十数枚であり、一切刃当たり切り込み量は5〜15μmである。
【0014】
かかる表面ブローチ工具1を図2に示すように、ブローチ盤の機械本体3に取付ける。取り付けられた表面ブローチ工具に対して同軸に軸方向移動可能に、ワーク2が、図示しない移動ラムに設けられた表面ブローチ加工治具(以下単に「治具」という)4に固定される。図示しない駆動装置により、移動ラム及び治具4を表面ブローチ工具1と平行に矢印31方向に移動させて、ワーク2のボール溝24,24を表面ブローチ工具の切れ刃11,12でブローチ加工する。
【0015】
本発明においては、図3,4に示すように、治具4は断面凹状で両端が開口するワーク取付部41が形成されている。ワーク2が開口部20を開放するようにワーク取付部41に配設され、ワークの底部22に設けられたねじ28にボルト44を螺着させワークが治具4に固定されている。治具4のワーク取付部41の両側面には、ワーク2の開口部20を形成する両側面部21の外側壁25に当接するように、クランプ金42が設けられ、油圧シリンダ43により、ワークの両側面部21,21を挟み込むように加圧できるようにされている。図3に示すように、クランプ金42は、中間に逃げ部44、44が設けられ、ワーク2の側面部外壁25の両端部25aを加圧するようにされている。
【0016】
【実施例】
かかる表面ブローチ工具1、表面ブローチ盤3、表面ブローチ加工治具4を用いて、ボール溝24,24の表面硬さが60HRC前後に焼き入れされたワーク2の仕上げブローチ加工を行った。先ず、油圧シリンダ43に圧力を加えずに加工した場合、加工後のボール溝54,54の真直度は、前述した図7(b)のようになった。図に示すように、ワークの両端部26,27付近で両溝間の寸法が狭まっており、これは、加工中に切削反力でボール溝部が押し広げられ、加工後に戻るスプリングバック現象による。このときのスプリングバック量は10〜15μmであった。
【0017】
次に、加工前のワーク両側面部外壁両端部25aに、油圧シリンダ43により、実験的に求めた加工反力と同等の圧力を加えてブローチ加工を行ったところ、加工後のボール溝54,54の真直度は、図7(a)に示すように、ほぼ直線となり、スプリングバック量は5μ未満となり、良好な結果となった。
【0018】
【発明の効果】
本発明においては、断面凹状の一定断面を有するワークの高硬度の側面部内壁に予め形成された仕上げ代を、側面部外壁を外側から加圧した状態で切削加工するようにし、弾性変形を小さくし、切削精度を上げたので、ブローチ加工によるワーク変形が抑制され、良好な真直度が得られた(請求項1)。また、加圧位置は切削加工部の外側位置としたので、変形量の制御がやりやすい(請求項2)。さらに、加圧位置を軸方向の両端近傍とし、両端を押さえるのみで良好な真直度を得られるものとなり(請求項3)、高硬度材の表面ブローチ加工を精度よく実現できるものとなった。
【0019】
また、ワークの固定治具に、ワーク側面部の外壁に当接する加圧部材を設けるようにすることにより、ワーク側面部を加圧しながら表面ブローチ加工ができる(請求項4)。さらに、加圧部材を、ワーク軸方向の両端近傍に設け、構造が簡単、加工も容易としたので、加工治具へのワークの取付が容易であり、操作、調整が容易なものとなった(請求項5)。かかる治具により、高硬度材の表面ブローチ加工に適した表面ブローチ加工治具を提供するものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す表面ブローチ工具の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す表面ブローチ盤の部分斜視図である。
【図3】ワークを取り付ける本発明の実施の形態を示す表面ブローチ加工治具の軸直角断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明の実施の形態で加工するワーク(移動体ブロック)が使用される直動軸受の斜視図である。
【図6】図5の移動体ブロック(ワーク)を180°反転させた状態を示す斜視図である。
【図7】表面硬さが60HRC前後に焼き入れされたワークのボール溝の(a)は本発明の場合の油圧シリンダに圧力を加えてブローチ加工した後、(b)は従来の場合の油圧シリンダに圧力を加えずにブローチ加工した後の真直度を示す断面図である。
【符号の説明】
1 表面ブローチ工具
2、52 ワーク(移動体ブロック)
3 表面ブローチ盤の機械本体
4 表面ブローチ加工治具
20 開口部
21 側面部
22 底部
23 側面部内壁
24 切削加工部(仕上げ代)
25 側面部外壁、25a 両端部の側面部外壁
42 加圧部材
Claims (5)
- 開口部と、開口部を形成する両側面部と、両側面部が固定される底部と、からなる断面凹状の一定断面を有するワークの前記側面部内壁をブローチ加工する表面ブローチ加工において、前記側面部内壁の表面硬度を45〜65HRC(ロックウエル硬さCスケール)とし、予め仕上げ代を残して形成し、前記ワークの側面部外壁を外側から加圧した状態で前記仕上げ代を切削加工することを特徴とする表面ブローチ加工方法。
- 前記側面部外壁の加圧位置は、前記側面部を挟んで前記側面部内壁の前記仕上げ代が残された切削加工部と対称位置とになるようにされていることを特徴とする請求項1記載の表面ブローチ加工方法。
- 前記側面部外壁の加圧位置は、前記ワーク軸方向の両端近傍であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面ブローチ加工方法。
- 開口部と、開口部を形成する両側面部と、両側面部が固定される底部と、からなる断面凹状の一定断面を有するワークの前記側面部内壁をブローチ加工するための前記ワークの固定治具であって、前記ワークの軸方向及び開口部が開放されるように取付可能にされ、前記ワーク側面部の外壁に当接する加圧部材が設けられていることを特徴とする表面ブローチ加工治具。
- 前記加圧部材は、前記ワーク軸方向の両端近傍で前記ワーク側面部の外壁に当接されていることを特徴とする請求項4記載の表面ブローチ加工治具。
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JP2003175746A JP4356919B2 (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | 表面ブローチ加工方法及び表面ブローチ加工治具 |
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2003
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