1)第1の参考の形態
以下、本発明による燃料電池システムの第1の参考の形態について説明する。図1はこの燃料電池システムの概要を示す概要図である。この燃料電池システムは燃料電池10とこの燃料電池10に必要な水素ガスを含む改質ガス(燃料ガス)を生成する改質器20を備えている。
燃料電池10は、燃料極11と酸化剤極である空気極12と両極11,12間に介在された電解質13を備えており、燃料極11に供給された改質ガスおよび空気極12に供給された酸化剤ガスである空気(カソードエア)を用いて発電するものである。なお、燃料電池10の空気極12には、空気を供給する供給管61およびカソードオフガスを排出する排出管62が接続されており、これら供給管61および排出管62の途中には、空気を加湿するための加湿器14が設けられている。この加湿器14は水蒸気交換型であり、排出管62中すなわち空気極12から排出される気体中の水蒸気を除湿してその水蒸気を供給管61中すなわち空気極12へ供給される空気中に供給して加湿するものである。なお、空気の代わりに空気の酸素富化したガスを供給するようにしてもよい。
改質器20は、燃料を水蒸気改質し、水素リッチな改質ガスを燃料電池10に供給するものであり、バーナ21、改質部22、一酸化炭素シフト反応部(以下、COシフト部という)23および一酸化炭素選択酸化反応部(以下、CO選択酸化部という)24から構成されている。燃料としては天然ガス、LPG、灯油、ガソリン、メタノールなどがあり、本参考の形態においては天然ガスにて説明する。
バーナ21は、起動時に外部から燃焼用燃料および燃焼用空気が供給され、または一酸化炭素濃度が高く燃料電池10に供給されない改質ガスおよび燃焼用空気が供給され、または定常運転時に燃料電池10の燃料極11からアノードオフガス(燃料電池に供給され使用されずに排出された改質ガス)が供給され、供給された各ガスを燃焼して燃焼ガスを改質部22に導出するものである。この燃焼ガスは改質部22を(同改質部22の触媒の活性温度域となるように)加熱し、その後燃焼ガス用凝縮器34を通ってその燃焼ガスに含まれている水蒸気が凝縮されて外部に排気される。なお、燃焼用燃料および燃焼用空気は、それぞれ燃焼用燃料供給手段および燃焼用空気供給手段である燃焼用燃料ポンプP1および燃焼用空気ポンプP2によってバーナ21に供給されるようになっている。両ポンプP1,P2は制御装置90によって制御されてその流量(送出量)が制御されるようになっている。
改質部22は、外部から供給された燃料に蒸発器25からの水蒸気(改質水)を混合した混合ガスを改質部22に充填された触媒により改質して水素ガスと一酸化炭素ガスを生成している(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気を水素ガスと二酸化炭素とに変成している(いわゆる一酸化炭素シフト反応)。これら生成されたガス(いわゆる改質ガス)はCOシフト部23に導出される。なお、燃料は燃料供給手段である燃料ポンプP3によって改質部22に供給されるようになっている。このポンプP3は制御装置90によって制御されてその流量(送出量)が制御されるようになっている。
COシフト部23は、この改質ガスに含まれる一酸化炭素と水蒸気をその内部に充填された触媒により反応させて水素ガスと二酸化炭素ガスとに変成している。これにより、改質ガスは一酸化炭素濃度が低減されてCO選択酸化部24に導出される。
CO選択酸化部24は、改質ガスに残留している一酸化炭素と外部からさらに供給されたCO酸化用の空気(エア)とをその内部に充填された触媒により反応させて二酸化炭素を生成している。これにより、改質ガスは一酸化炭素濃度がさらに低減されて(10ppm以下)燃料電池10の燃料極11に導出される。なお、CO酸化用の空気(エア)はCO酸化用エア供給手段であるCO酸化用エアポンプP4によってCO選択酸化部24に供給されるようになっている。このポンプP4は制御装置90によって制御されてその流量(送出量)が制御されるようになっている。
蒸発器25は、一端が貯水器50内に配置され他端が改質部22に接続された改質水供給管68の途中に配設されている。改質水供給管68には改質水ポンプ53が設けられている。このポンプ53は制御装置90によって制御されており、貯水器50内の改質水として使用する回収水を蒸発器25に圧送している。蒸発器25は例えばバーナ21から排出される燃焼ガス、改質部22、COシフト部23などの熱によって加熱されており、これにより圧送された改質水を水蒸気化する。
改質器20のCO選択酸化部24と燃料電池10の燃料極11とを連通する配管64の途中には、凝縮器30が設けられている。この凝縮器30は改質ガス用凝縮器31、アノードオフガス用凝縮器32、カソードオフガス用凝縮器33および燃焼ガス用凝縮器34が一体的に接続された一体構造体である。改質ガス用凝縮器31は配管64中を流れる燃料電池10の燃料極11に供給される改質ガス中の水蒸気を凝縮する。アノードオフガス用凝縮器32は、燃料電池10の燃料極11と改質器20のバーナ21とを連通する配管65の途中に設けられており、その配管65中を流れる燃料電池10の燃料極11から排出されるアノードオフガス中の水蒸気を凝縮する。カソードオフガス用凝縮器33は、排出管62の加湿器14の下流に設けられており、その排出管62中を流れる燃料電池10の空気極12から排出されるカソードオフガス中の水蒸気を凝縮する。燃焼ガス用凝縮器34はバーナ21の下流に設けられており、燃焼排ガスの顕熱とともに水蒸気を凝縮させた潜熱を回収する。
また、配管64には、燃料電池10の燃料極11の入口付近に第7温度センサ64aが配設されており、第7温度センサ64aは、改質ガスの燃料電池10の燃料極11の入口温度T7を検出し、その検出結果を制御装置90に出力するものである。
上述した凝縮器31〜34は配管66を介して純水器40に連通しており、各凝縮器31〜34にて凝縮された凝縮水は、純水器40に導出され回収されるようになっている。純水器40は、凝縮器30から供給された凝縮水すなわち回収水を内蔵のイオン交換樹脂によって純水にするものであり、純水化した回収水を貯水器50に導出するものである。なお、貯水器50は純水器40から導出された回収水を改質水として一時的に溜めておくものである。また、純水器40には水道水供給源(例えば水道管)から供給される補給水(水道水)を導入する配管が接続されており、純水器40内の貯水量が下限水位を下回ると水道水が供給されるようになっている。
燃料電池システムは、燃料電池10で発生する熱により加熱される貯湯水を貯湯する貯湯槽71と、貯湯槽71を含み貯湯水が循環する貯湯水循環回路80と、燃料電池10との間で熱交換をする燃料電池熱媒体であるFC冷却水が循環する燃料電池熱媒体循環回路であるFC冷却水循環回路73と、貯湯水とFC冷却水との間で熱交換が行われる第1熱交換器74とが備えられている。また、本明細書中および添付の図面中の「FC」は「燃料電池」の省略形として記載している。
貯湯槽71は、1つの柱状容器を備えており、その内部に温水が層状に、すなわち上部の温度が最も高温であり下部にいくにしたがって低温となり下部の温度が最も低温であるように貯留されるようになっている。貯湯槽71の柱状容器の下部には水道水などの水(低温の水)が補給され、貯湯槽71に貯留された高温の温水が貯湯槽71の柱状容器の上部から導出されるようになっている。また、貯湯槽71は密閉式であり、水道水の圧力がそのまま内部、ひいては貯湯水循環回路80にかかる形式のものである。
貯湯水循環回路80は、排熱回収手段(凝縮器30)を設けた流路72と、第1熱交換器74を設けた流路であるバイパス路75が並列に設けられている。 流路72の一端および他端は貯湯槽71の下部および上部に接続されている。流路72上には、一端から他端に順番に、第4温度センサ72a、貯湯水循環手段である貯湯水循環第1ポンプP5、ラジエータ76、アノードオフガス用凝縮器32、燃焼ガス用凝縮器34、カソードオフガス用凝縮器33、改質ガス用凝縮器31、第3温度センサ72b、および第1バルブ77が配設されている。
第4および第3温度センサ72a,72bは、それぞれ貯湯水の貯湯槽71の出口温度T4、改質ガス用凝縮器31の出口温度T3を検出し、それら検出結果を制御装置90に出力するものである。貯湯水循環第1ポンプP5は、貯湯槽71の下部の貯湯水を吸い込んで流路72を通水させて貯湯槽71の上部に吐出するものであり、制御装置90によって制御されてその流量(送出量)が制御されるようになっている。
ラジエータ76は、流体(貯湯水)を冷却する冷却手段であり、制御装置90の指令によってオン・オフ制御されており、オン状態のときには流体を冷却し、オフ状態のときには冷却しない。このラジエータ76の冷却能力は、後述する第2マップに示す貯湯水の最高温度Tmaxにおける燃料電池10の発電出力に対する当該燃料電池システムの必要冷却能力の相関関係を示すグラフまたは演算式にて、貯湯槽71の湯満水時の燃料電池10の最低発電出力E1に相当する当該燃料電池システムの必要冷却能力H1である。なお、貯湯水の最高温度Tmaxは、燃料電池10の最大発熱温度(例えば60〜70℃)によって規定されるので、貯湯水温度はそれ以上となることはない。
アノードオフガス用凝縮器32、燃焼ガス用凝縮器34、カソードオフガス用凝縮器33および改質ガス用凝縮器31は、貯湯水が、アノードオフガス、燃焼ガス、カソードオフガスおよび改質ガスの各顕熱とともに水蒸気を凝縮させた各潜熱をそれぞれ回収して昇温するようになっている。すなわち、アノードオフガス用凝縮器32およびカソードオフガス用凝縮器33は、燃料電池10から排出されるオフガスの排熱を貯湯水に回収するものであり、すなわちオフガス排熱回収器である。また、燃焼ガス用凝縮器34および改質ガス用凝縮器31は、改質器20にて発生する排熱を貯湯水に回収するものであり、すなわち改質器排熱回収器である。また、本第1の参考の形態においては、排熱回収手段は、前述したオフガス排熱回収器および改質器排熱回収器から構成されている。なお、排熱回収手段は、オフガス排熱回収器または改質器排熱回収器のいずれか一方から構成するようにしてもよい。
なお、各凝縮器31〜34の配置は上述した順番に限らないし、また、各凝縮器31〜34は一本の配管に直列に配置する場合に限らず、流路72を複数に分岐して各分岐路に並列に配置するようにしてもよい。また、流路72上には少なくとも改質ガス用凝縮器31が配置されるのが好ましい。さらに、オフガス排熱回収器と改質器排熱回収器の少なくとも何れか一方を流路72に設けるのが好ましい。これにより、流路72を循環する貯湯水が燃料電池10から排出されるオフガスの排熱、改質器20にて発生する排熱の少なくとも何れか一方を回収して昇温することができる。
第1バルブ77は、バイパス路75と貯湯槽71の入口の間の流路72に設けられ同流路72を開閉する開閉弁であり、制御装置90の指令によって開閉制御されるものである。この第1バルブ77は、起動運転時で燃料電池10が所定温度となるまでは閉状態とされ、それ以降は基本的には開状態とされる。
また、バイパス路75には、貯湯槽71の出口側に近い分岐点から貯湯槽71の入口側に近い合流点に向けて順番に、貯湯水循環手段である貯湯水循環第2ポンプP6および第1熱交換器74が配設されている。貯湯水循環第2ポンプP6は、貯湯槽71の下部の貯湯水を吸い込んでバイパス路75を通水させて貯湯槽71の上部に吐出するものであり、制御装置90によって制御されてその流量(送出量)が制御されるようになっている。
上述した貯湯水循環第1ポンプP5および貯湯水循環第2ポンプP6の流量制御によって、流路72およびバイパス路75の各流量をそれぞれ調整することができる。すなわち、貯湯水循環第1ポンプP5および貯湯水循環第2ポンプP6は流量調整手段である。
FC冷却水循環回路73上には、FC冷却水循環手段であるFC冷却水循環ポンプP7が配設されており、このFC冷却水循環ポンプP7は、制御装置90によって制御されてその流量(送出量)が制御されるようになっている。また、FC冷却水循環回路73上には、第1および第2温度センサ73a,73bが配設されており、第1および第2温度センサ73a,73bは、それぞれFC冷却水の燃料電池10の入口温度および出口温度を検出し、それら検出結果を制御装置90に出力するものである。さらに、FC冷却水循環回路73上には第1熱交換器74が配設されている。
さらに、燃料電池システムは、インバータ(電力変換器)45を備えている。インバータ45は、燃料電池10の発電出力を交流電力に変換して送電線46を介してユーザ先である電力使用場所47に供給するものである。電力使用場所47には、電灯、アイロン、テレビ、洗濯機、電気コタツ、電気カーペット、エアコン、冷蔵庫などの電気器具である負荷装置(図示省略)が設置されており、インバータ45から供給される交流電力が必要に応じて負荷装置に供給されている。なお、インバータ45と電力使用場所47とを接続する送電線46には電力会社の系統電源48も接続されており(系統連系)、燃料電池10の発電出力より負荷装置の総消費電力が上回った場合、その不足電力を系統電源16から受電して補うようになっている。電力計47aは、ユーザ負荷電力(ユーザ消費電力)を検出するユーザ負荷電力検出手段であり、電力使用場所47で使用される全ての負荷装置の合計消費電力を検出して、制御装置90に送信するようになっている。
また、インバータ45は、発電出力を降圧または昇圧して、その直流電力を燃料電池システムの構成部材である各ポンプP1〜P5,53、各バルブ(図示省略)、バーナ21の着火装置などの電気部品いわゆる補機に供給するようになっている。
また、上述した各温度センサ73a,73b,72a,72b,64a、各ポンプP1〜P7,53、第1バルブ77および電力計47aは制御装置90に接続されている(図2参照)。制御装置90はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、燃料電池システムの運転を全体的に制御しており、特に、図5または図7および図8のフローチャートに対応したプログラムを実行して、各温度センサ73a,73b,72a,72b,64aが検出した何れかの温度、電力計47aが検出したユーザ負荷電力に基づいて燃料電池10の発電出力を制御している。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
さらに、制御装置90には記憶装置91が接続されており、この記憶装置91は、図3に示す第1マップまたは演算式を記憶するものである。この第1マップまたは演算式は、貯湯槽出口温度検出手段である第4温度センサ72aによって検出された貯湯槽出口温度T4と、この貯湯槽出口温度T4と燃料電池10の発電出力制限値ELとの相関関係を示すものである。この第1マップまたは演算式から明らかなように貯湯槽出口温度T4と燃料電池10の発電出力制限値ELとは逆比例の関係にある。
この第1マップまたは演算式は、貯湯水の温度毎の燃料電池10の発電出力に対する当該燃料電池システムの必要冷却能力の相関関係を示す第2マップまたは演算式と、ラジエータ76の冷却能力と、に基づいて、貯湯水の各温度におけるラジエータ76の冷却能力に相当する燃料電池10の発電出力を導出することにより作成することができる。まず、第2マップまたは演算式を次のようにして作成する。図4に示すように、流路72を循環する貯湯水の温度を一定にしてFC発電出力に対する燃料電池システムの必要冷却能力を計算あるいは計測して求める。これを所定の温度レンジにて変化させた場合、例えば貯湯槽71の最高温度であるTmax、Tmaxから所定温度ずつ低い温度Tmax−1〜Tmax−4の各温度にて、FC発電出力に対する燃料電池システムの必要冷却能力のグラフ(関数)を計算あるいは計測してそれぞれ求める。このようにして第2マップまたは演算式を作成することができる。一方、ラジエータ76の冷却能力は、上述したように、貯湯水の最高温度Tmaxにおける燃料電池10の発電出力に対する当該燃料電池システムの必要冷却能力の相関関係を示すグラフまたは演算式にて、貯湯槽71の湯満水時の燃料電池10の最低発電出力E1に相当する当該燃料電池システムの必要冷却能力H1として規定されている。
したがって、先に算出した貯湯水の温度毎の燃料電池10の発電出力に対する当該燃料電池システムの必要冷却能力の相関関係を示すグラフまたは演算式における、ラジエータ76の冷却能力E1に相当する燃料電池10の発電出力がFC発電出力制限値ELとして導出される。具体的には、例えば貯湯水の温度(すなわち貯湯槽の出口温度T4)がTmaxである場合には上述したようにFC発電出力制限値ELはE1であり、Tmax−1である場合にはFC発電出力制限値ELはE2であり、Tmax−2である場合にはFC発電出力制限値ELはE3であり、Tmax−3である場合にはFC発電出力制限値ELはE4であり、Tmax−4である場合にはFC発電出力制限値ELはEmaxである。なお、所定の温度レンジは貯湯槽の最高温度TmaxからFC発電出力制限値ELが燃料電池10の最大発電出力Emaxとなる温度(本参考の形態においてはTmax−4)までの範囲である。
ラジエータ76の能力は外気温度(ラジエータ冷却媒体温度)で変わるため各外気温度により図3、図4のマップを持つ/演算することでさらに効率化を図れる。ラジエータ76の能力の決定の際は夏場の外気温度の一番厳しい条件で行う。
次に、上述した燃料電池システムにおいて熱回収効率の最適化の制御について説明する。まず、貯湯水循環第2ポンプP6は、FC冷却水FC入口温度T1(またはFC冷却水FC出口温度T2)が燃料電池の最適運転温度となるように流量制御されている。さらに、FC冷却水循環ポンプP7は、FC冷却水FC入口温度T1とFC冷却水FC出口温度T2との温度差ΔTが目標温度差ΔT*(例えば3〜5℃)となるように流量制御されている。目標温度差ΔT*は、燃料電池10の改質ガス流路または空気流路内の水蒸気を最適加湿条件に維持することができるように設定されている。そして、貯湯水循環第1ポンプP5は、改質ガスの燃料電池入口温度T7が目標温度T7*(例えば55〜65℃)となるように流量制御されている。目標温度T7*はフラッディングが発生しない最適加湿条件となるように設定されるとともに、回収した貯湯水中で菌の繁殖を抑制できるような温度となるように設定されている。また、貯湯水循環第1ポンプP5は、凝縮冷媒のアノードオフガス(AOG)凝縮器出口温度T3が目標温度T3*(例えば55〜65℃)となるように流量制御されている。目標温度T3*はフラッディングが発生しない最適加湿条件となるように設定されるとともに、回収した貯湯水中で菌の繁殖を抑制できるような温度となるように設定されている。
これにより、システムの定常運転中においては、バイパス路75を適切な流量で流通する貯湯水が燃料電池の発電で発生する排熱を最も効率よく回収する。一方、バイパス路75を適切な流量で流通する貯湯水とは別に、かつその流量に制約されることのない、流路72を適切な流量で循環する貯湯水が、燃料電池から排出されるオフガスの排熱、改質器にて発生する排熱を最も効率よく回収する。その後、両貯湯水が合流して貯湯槽71に流入する。
1a)第1制御例
以下、上述した燃料電池システムの第1制御例について図5および図6を参照して説明する。制御装置90は、図示しない起動スイッチがオンされて燃料電池システムを起動して起動運転が完了し発電可能な定常運転となると、図5に示すプログラムを所定の短時間毎に実行する。制御装置90は、ステップ102において、第4温度センサ72aによって貯湯水貯湯槽出口温度(貯湯槽出口温度)T4を検出する。そして、ステップ104において、ステップ102にて検出された貯湯槽出口温度T4と、この貯湯槽出口温度T4と燃料電池10の発電出力制限値ELとの相関関係を示す第1マップまたは演算式とに基づいて発電出力制限値ELを導出する(第1発電出力制限値導出手段)。
制御装置90は、ステップ106〜114において、第1発電出力制限値導出手段によって導出された発電出力制限値ELに基づいて燃料電池10の発電出力を制御する(第1発電制御手段)。具体的には、ステップ106において、電力計47aによってユーザ負荷電力を検出する(ユーザ負荷電力検出手段)。ステップ108において、ステップ106にて検出されたユーザ負荷電力に応じた燃料電池の発電出力EUを、ユーザ負荷電力と発電出力の相関を示すマップまたは演算式に基づいて導出する(発電出力導出手段)。ステップ110において、ステップ104にて導出された発電出力制限値ELがステップ108にて導出された発電出力EU以上であるか否かを判定する(判定手段)。ステップ112において、発電出力制限値ELが発電出力EU以上であると判定された場合には、燃料電池10の発電出力をユーザ負荷電力に追従するように制御する(追従制御手段)。また、ステップ114において、発電出力制限値ELが発電出力EU未満であると判定された場合には、燃料電池10の発電出力を発電出力制限値ELに制限するように制御する(制限制御手段)。なお、前述した追従制御および制限制御のいずれの制御においても、燃焼効率等が考慮されて燃料電池10の発電出力となるように燃料供給量、改質水供給量、燃焼用燃料供給量、燃焼用空気供給量およびCO酸化用空気供給量が導出され、これら導出された供給量となるように燃料ポンプP3、改質水ポンプ53、燃焼用燃料ポンプP1、燃焼用空気ポンプP2およびCO酸化用ポンプP4の流量が制御装置90によって制御されている。
このような制御によれば、貯湯槽出口温度T4が図6の上段に示すように変化した場合、発電出力制限値ELは上述したステップ104の処理によって図6の中段に示すように貯湯槽出口温度T4と逆に変化する。一方、ユーザ負荷に基づく発電出力EUが図6の中段に示すように変化した場合、時刻t11〜t12および時刻t13〜t14においては発電出力制限値ELが発電出力EU未満であるので、発電出力が発電出力制限値ELに制限され、それ以外の時間帯においては発電出力制限値ELが発電出力EU以上であるので、発電出力が制限されることなくユーザ負荷電力に追従する追従制御が行われる(図6の下段)。
したがって、本第1制御例によれば、第1発電出力制限値導出手段が、第4温度センサ72aによって検出された貯湯槽出口温度T4と、この貯湯槽出口温度T4と燃料電池10の発電出力制限値ELとの相関関係を示す第1マップまたは演算式とに基づいて発電出力制限値ELを導出し、第1発電制御手段が、第1発電出力制限値導出手段によって導出された発電出力制限値ELに基づいて燃料電池10の発電出力を制御する。これにより、燃料電池10の発電中においては、その発電に伴って発生する燃料電池10および改質器20の排熱を回収して貯湯水が加熱されるが、貯湯槽71が温度的に満水となった場合、貯湯槽出口温度T4に応じて燃料電池10の発電出力が制限されるので、燃料電池10からの発熱をできるだけ抑制して、発電出力、排熱利用のバランスを保ち、熱余り状態をできるだけ回避して燃料電池システムの運転を効率よく実施することができる。
また、第1発電制御手段において、ステップ108において、ステップ106にて検出されたユーザ負荷電力に応じた燃料電池の発電出力EUを導出し、ステップ110において、ステップ104にて導出された発電出力制限値ELがステップ108にて導出された発電出力EU以上であるか否かを判定し、ステップ112において、ステップ110にて発電出力制限値ELが発電出力EU以上であると判定された場合には、燃料電池10の発電出力をユーザ負荷電力に追従するように制御し、ステップ114において、ステップ110にて発電出力制限値ELが発電出力EU未満であると判定された場合には、燃料電池10の発電出力を発電出力制限値に制限するように制御する。これにより、ユーザ負荷電力検出手段によって検出されたユーザ負荷電力に応じた燃料電池の発電出力EUと発電出力制限値ELとに基づいて簡単かつ確実に燃料電池システムを安定運転することができる。
また、第1マップまたは演算式は、貯湯水の温度毎の燃料電池の発電出力に対する当該燃料電池システムの必要冷却能力の相関関係を示す第2マップまたは演算式と、改質器20の排熱を回収した第2熱媒体が循環する第2熱媒体循環回路75に設けられて第2熱媒体を冷却するラジエータ76の冷却能力と、に基づいて、貯湯水の各温度におけるラジエータ76の冷却能力に相当する燃料電池の発電出力を導出することにより作成されている。したがって、発電出力制限値ELは貯湯槽出口温度T4およびラジエータ76の冷却能力に基づいて導出されるため、燃料電池の発電出力はラジエータ76の冷却能力も考慮されて決定されるので、発電出力、排熱利用のバランスをよりよく保ち、熱余り状態をできるだけ回避して燃料電池システムの運転を効率よく実施することができる。
また、ラジエータ76の冷却能力は、貯湯水の最高温度Tmaxにおける燃料電池の発電出力に対する当該燃料電池システムの必要冷却能力の相関関係を示す第2マップまたは演算式にて、貯湯槽71の湯満水時の燃料電池の最低発電出力に相当する当該燃料電池システムの必要冷却能力であるため、冷却能力を低く抑えたラジエータ76を使用することができるので、ラジエータ76のコンパクト化、ひいては燃料電池システム全体のコンパクト化を達成することができる。
1b)第2制御例
以下、上述した燃料電池システムの第2制御例について図7〜図9を参照して説明する。制御装置90は、図示しない起動スイッチがオンされて燃料電池システムを起動して起動運転が完了し発電可能な定常運転となり、燃料ガスFC入口温度T7が所定温度Taを超えると、図7に示すプログラムを所定時間TMa毎に実行する。制御装置90は、ステップ202において、第7温度センサ64aによって燃料電池10の燃料極入口に流入する燃料ガスの温度(燃料ガスFC入口温度)T7を検出する。なお、燃料ガスFC入口温度T7の代わりにこの燃料ガスの温度T7に相関するものの温度例えば貯湯水の改質ガス用凝縮器31の出口温度(貯湯水改質ガス用凝縮器出口温度)T3を第3温度センサ72bによって検出するようにしてもよい。そして、その検出値を使用して以降の処理を実行するようにしてもよい。
そして、ステップ204において、ステップ202にて検出された燃料ガスFC入口温度T7と、所定温度Taとを比較し、その比較結果に基づいて燃料電池10の発電出力制限値ELを導出する(第2発電出力制限値導出手段)。具体的には、制御装置90は、図8に示すサブルーチンを実行する。すなわち制御装置90は、ステップ202にて検出された温度T7が所定温度Taより大きい場合には、前回の発電出力制限値ELから所定量ΔEだけ減算して今回の発電出力制限値EL−Δを算出し(ステップ302,304)、所定温度Taと同じである場合には、前回の発電出力制限値ELを今回の発電出力制限値ELとして算出し(ステップ302,306)、所定温度Taより小さい場合には、前回の発電出力制限値ELに所定量ΔEだけ加算して今回の発電出力制限値EL+Δを算出する(ステップ302,308)。そして、プログラムをステップ310に進めてサブルーチンの処理を終了し、ステップ206以降に進める。なお、ステップ302において、ステップ202にて検出された燃料ガスFC入口温度T7と所定温度Taを比較しているが、燃料ガスFC入口温度T7と所定の温度範囲(不感帯)を比較するようにしてもよい。
所定温度Taは、燃料電池10の燃料極11がフラッディングとならない温度に規定されているので、フラッディングによって燃料電池の発電低下、停止を確実に防止して燃料電池システムを安定運転することができる。
制御装置90は、ステップ206〜214において、第2発電出力制限値導出手段によって導出された発電出力制限値ELに基づいて燃料電池10の発電出力を制御する(第2発電制御手段)。具体的には、ステップ206において、電力計47aによってユーザ負荷電力を検出する(ユーザ負荷電力検出手段)。ステップ208において、ステップ206にて検出されたユーザ負荷電力に応じた燃料電池の発電出力EUを、ユーザ負荷電力と発電出力の相関を示すマップまたは演算式に基づいて導出する(発電出力導出手段)。ステップ210において、ステップ204にて導出された発電出力制限値ELがステップ208にて導出された発電出力EU以上であるか否かを判定する(判定手段)。ステップ212において、発電出力制限値ELが発電出力EU以上であると判定された場合には、燃料電池10の発電出力をユーザ負荷電力に追従するように制御する(追従制御手段)。また、ステップ214において、発電出力制限値ELが発電出力EU未満であると判定された場合には、燃料電池10の発電出力を発電出力制限値ELに制限するように制御する(制限制御手段)。
そして、制御装置90は、追従制御または制限制御を行いながらステップ216にて所定時間TMaが経過するのを待ってプログラムをステップ218に進めて一旦終了する。これにより、ステップ212または214にて決定した制御を所定時間TMaだけ実行した後、再びステップ202以降の処理を実行することになる。
このような制御によれば、貯湯槽出口温度T4がユーザ要求による燃料電池10の発電に伴う熱エネルギーよって図9の上段に示すように上昇した場合、第2熱交換器76において凝縮冷媒が冷却できなくなり凝縮冷媒温度が上昇する。これに伴って改質ガスFC入口温度T7も上昇を開始する(時刻t21)。なお、時刻t21までの改質ガスFC入口温度T7は所定温度Taに維持されているものとする。また、時刻t21までは燃料電池10の発電出力は制限されておらず最大発電出力まで発電可能であるとする。
時刻t21にて改質ガスFC入口温度T7が所定温度Taより大となると、図9の中段に示すように、再び改質ガスFC入口温度T7が所定温度Ta以下となるまで(時刻t25)、発電出力制限値ELは徐々に小さくなる(ステップ202、204、302、304、310、206〜218)。これと同時に、発電出力制限値ELとユーザ負荷電力に応じた燃料電池の発電出力EUとを比較して追従制御とするか制限制御とするかが決定されその制御が実行される。発電出力制限値ELが徐々に小さくなる範囲内で追従制御も実行されるので、いずれにしても燃料電池10の発電出力(発電出力最大値)は抑制され、燃料電池10からの発熱が抑制され、ラジエータ76の負荷が小さくなり冷却能力に余裕ができれば凝縮冷媒を冷却でき、ひいては改質ガスFC入口温度T7を小さくすることができる。
これにより、改質ガスFC入口温度T7はt25にて所定温度Taに到達する。時刻t21〜t25において、ユーザ負荷に基づく発電出力EUが図9の中段に示すように変化した場合、時刻t21〜t22および時刻t23〜t24においては発電出力制限値ELが発電出力EU未満であるので、発電出力が発電出力制限値ELに制限され、それ以外の時間帯においては発電出力制限値ELが発電出力EU以上であるので、発電出力が制限されることなくユーザ負荷電力に追従する追従制御が行われる(図9の下段)。
また、貯湯水が使用されるなどして時刻t29にて改質ガスFC入口温度T7が所定温度Taより小さくなると、図9の中段に示すように、再び改質ガスFC入口温度T7が所定温度Ta以上となるまで(時刻t31)、発電出力制限値ELは徐々に大きくなる(ステップ202、204、302、308、310、206〜218)。これと同時に、発電出力制限値ELとユーザ負荷電力に応じた燃料電池の発電出力EUとを比較して追従制御とするか制限制御とするかが決定されその制御が実行される。発電出力制限値ELが徐々に大きくなる範囲内で追従制御も実行されるので、いずれにしても燃料電池10の発電出力(発電出力最大値)は増加され、燃料電池10からの発熱が増大し、凝縮冷媒を昇温し、ひいては改質ガスFC入口温度T7を昇温することができる。
これにより、改質ガスFC入口温度T7はt31にて所定温度Taに到達する。時刻t29〜t31において、ユーザ負荷に基づく発電出力EUが図9の中段に示すように変化した場合、時刻t29〜t30においては発電出力制限値ELが発電出力EU未満であるので、発電出力が発電出力制限値ELに制限され、それ以外の時間帯においては発電出力制限値ELが発電出力EU以上であるので、発電出力が制限されることなくユーザ負荷電力に追従する追従制御が行われる(図9の下段)。
したがって、本第2制御例によれば、第2発電出力制限値導出手段が、第7温度センサ64aによって検出された燃料ガス燃料電池入口温度T7またはこの燃料ガスの温度に相関するものの温度と所定温度Taとを比較し、その比較結果に基づいて燃料電池の発電出力制限値を導出し、第2発電制御手段が、第2発電出力制限値導出手段によって導出された発電出力制限値ELに基づいて燃料電池10の発電出力を制御する。これにより、燃料電池10の発電中においては、その発電に伴って発生する燃料電池10および改質器20の排熱を回収して貯湯水が加熱されるが、貯湯槽71が温度的に満水となった場合、燃料ガス燃料電池入口温度T7またはこの燃料ガスの温度に相関するものの温度T3に応じて燃料電池10の発電出力が制限されるので、燃料電池10からの発熱をできるだけ抑制して、発電出力、排熱利用のバランスを保ち、熱余り状態をできるだけ回避して燃料電池システムの運転を効率よく実施することができる。
また、第2発電出力制限値導出手段は、第7温度センサ64aによって検出された燃料ガス燃料電池入口温度T7が所定温度Taより大きい場合には、前回の発電出力制限値ELから所定量ΔEだけ減算して今回の発電出力制限値EL−ΔEを算出し、所定温度Taより小さい場合には、前回の発電出力制限値ELから所定量ΔEだけ加算して今回の発電出力制限値EL+ΔEを算出する。これにより、燃料ガス燃料電池入口温度T7またはこの燃料ガスの温度に相関するものの温度に基づいて容易かつ的確に発電出力制限値ELを算出することができる。
また、第2発電制御手段において、ステップ208において、ステップ206にて検出されたユーザ負荷電力に応じた燃料電池の発電出力を導出し、ステップ210において、ステップ204にて導出された発電出力制限値ELが、ステップ208にて導出された発電出力EU以上であるか否かを判定し、ステップ212において、ステップ210にて発電出力制限値ELが発電出力EU以上であると判定された場合には、燃料電池10の発電出力をユーザ負荷電力に追従するように制御し、ステップ214において、ステップ210にて発電出力制限値ELが発電出力EU未満であると判定された場合には、燃料電池10の発電出力を発電出力制限値ELに制限するように制御する。これにより、ユーザ負荷電力検出手段によって検出されたユーザ負荷電力に応じた燃料電池の発電出力EUと発電出力制限値ELとに基づいて簡単かつ確実に燃料電池システムを安定運転することができる。
また、燃料ガス燃料電池入口温度検出手段、第2発電出力制限値導出手段、および第2発電制御手段による各処理は、燃料ガスの応答性を考慮して設定された所定時間TMa毎に繰り返し実行されるので、的確な時間に制御処理を実行することができる。また、より緻密に制御処理を実行することができる。
上述の説明から明らかなように、この参考の形態においては、貯湯水循環回路80は、排熱回収手段(凝縮器30)を設けた流路72と、第1熱交換器74を設けた流路であるバイパス路75が並列に設けられていることにより、システムの定常運転中においては、燃料電池10の発電で発生する排熱は、FC冷却水に回収され、バイパス路75を流通する貯湯水に第1熱交換器74を介して回収されて、この結果貯湯水を加熱(昇温)する。燃料電池10から排出されるオフガスの排熱および改質器20にて発生する排熱は、凝縮器32,33および凝縮器31,34を介して直接貯湯水に回収されて、この結果貯湯水を加熱(昇温)する。これにより、燃料電池10の発電で発生する排熱と、燃料電池10から排出されるオフガスの排熱、改質器20にて発生する排熱の少なくとも何れか一方とを直列に回収するのではなく、並列に独立して回収することができるので、それぞれ最も効率のよい貯湯水流量で熱を回収することが可能となる。したがって、燃料電池からの回収熱量の、アノードオフガス、カソードオフガス、燃焼排ガスからの回収熱量に対する比率が低い場合、例えば、低負荷での発電の場合や冬場などの放熱の影響が大きい場合などでも、それら各ガスから十分に熱を回収することができるので、システムの発電開始から停止までを通して熱回収効率を高く維持して運転を行うことができる燃料電池システムを提供することができる。
また、燃料電池10から排出されるオフガスの排熱を貯湯水に回収するオフガス排熱回収器(凝縮器32,33)、改質器20にて発生する排熱を貯湯水に回収する改質器排熱回収器(凝縮器31,34)の少なくとも何れか一方を流路72に設けたので、流路72を循環する貯湯水が燃料電池10から排出されるオフガスの排熱、改質器20にて発生する排熱の少なくとも何れか一方を確実に回収することができる。
また、バイパス路75および流路72の各流量をそれぞれ調整する流量調整手段(貯湯水循環第1ポンプP5および貯湯水循環第2ポンプP6)をさらに備えたので、バイパス路75および流路72を流れる貯湯水の流量を確実に調整することができ、最適な熱回収効率および回収湯温を実現することができる。
2)第2の参考の形態
次に、本発明による燃料電池システムの第2の参考の形態について説明する。図10は第2の参考の形態にかかる燃料電池システムのうち貯湯水循環回路80、FC冷却水循環回路73および凝縮冷媒循環回路75の周辺の概要を示す概要図である。上述した第1の参考の形態においては、流路72上に各凝縮器31〜34を設け、燃料電池10から排出されるオフガスの排熱および改質器20にて発生する排熱は、凝縮器32,33および凝縮器31,34を介して直接貯湯水に回収するようにしたが、図10に示すように、間接的に貯湯水に回収するようにしてもよい。なお、第1の参考の形態と同一の構成部材については同一符号を付してその説明を省略する。
本第2の参考の形態においては、排熱回収手段は、燃料電池10から排出されるオフガスの排熱、改質器20にて発生する排熱の少なくとも何れかを回収した排熱回収熱媒体である凝縮冷媒(凝縮器熱媒体)が循環する排熱回収熱媒体循環回路である凝縮冷媒循環回路78と、貯湯水と凝縮冷媒との間で熱交換が行われる第2熱交換器79とから構成されている。これにより、燃料電池10から排出されるオフガスの排熱および改質器20にて発生する排熱の少なくとも何れかは、凝縮器30を介して凝縮冷媒に回収され、第2熱交換器79を介して貯湯水に回収されて、この結果貯湯水を加熱(昇温)する。
凝縮冷媒循環回路78上には、第2熱交換器79が配設されている。また、凝縮冷媒循環回路78上には、第2熱交換器79の出口から順番に、凝縮冷媒循環ポンプP8、ラジエータ76、アノードオフガス用凝縮器32、燃焼ガス用凝縮器34、カソードオフガス用凝縮器33、改質ガス用凝縮器31、および第5温度センサ78aが配設されている。凝縮冷媒循環ポンプP8は、凝縮冷媒循環手段であり、制御装置90によって制御されてその流量(送出量)が制御されるようになっている。第5温度センサ78aは、凝縮冷媒の改質ガス用凝縮器31の出口温度T5を検出し、その検出結果を制御装置90に出力するものである。なお、流路72からは、アノードオフガス用凝縮器32、燃焼ガス用凝縮器34、カソードオフガス用凝縮器33、改質ガス用凝縮器31、およびラジエータ76が削除されて、凝縮冷媒循環回路78に移設されている。
次に、上述した燃料電池システムにおいて熱回収効率の最適化の制御について説明する。まず、貯湯水循環第2ポンプP6は、FC冷却水FC入口温度T1(またはFC冷却水FC出口温度T2)が燃料電池の最適運転温度となるように流量制御されている。さらに、FC冷却水循環ポンプP7は、FC冷却水FC入口温度T1とFC冷却水FC出口温度T2との温度差ΔTが目標温度差ΔT*(例えば3〜5℃)となるように流量制御されている。目標温度差ΔT*は、燃料電池10の改質ガス流路または空気流路内の水蒸気を最適加湿条件に維持することができるように設定されている。そして、凝縮冷媒循環ポンプP8は、凝縮冷媒のアノードオフガス(AOG)凝縮器出口温度T5が目標温度T5*(例えば55〜60℃)となるように流量制御されている。凝縮冷媒の改質ガス用凝縮器出口温度T5が高いほど第2熱交換79における貯湯水の凝縮回収熱量の回収効率がよいので、目標温度T5*は高く設定するのが望ましい。一方、凝縮冷媒の改質ガス用凝縮器出口温度T5が高くなると、改質ガス用凝縮器31にて凝縮冷媒と熱交換する改質ガスの温度すなわち改質ガスFC入口温度T7の温度が高くなり、燃料電池10の燃料極11がフラッディングを発生する。したがって、目標温度T5*はフラッディングが発生しない範囲内で、凝縮回収熱量の回収効率ができるだけよい温度に設定されている。
これにより、システムの定常運転中においては、バイパス路75を適切な流量で流通する貯湯水が燃料電池の発電で発生する排熱を最も効率よく回収する。一方、第2熱交換器79において、バイパス路75を適切な流量で流通する貯湯水とは別に、かつその流量に制約されることのない、流路72を適切な流量で循環する貯湯水が、燃料電池10から排出されるオフガスの排熱、改質器20にて発生する排熱を最も効率よく回収する。その後、両貯湯水が合流して貯湯槽71に流入する。
なお、この第2の参考の形態においても、上述した第1および第2制御例の制御が実施されている。第2制御例では、燃料ガスFC入口温度T7の代わりにこの燃料ガスの温度T7に相関するものの温度例えば凝縮冷媒の改質ガス用凝縮器31の出口温度(凝縮冷媒改質ガス用凝縮器出口温度)T5を第5温度センサ78aによって検出するようにすればよい。
本第2の参考の形態によれば、第1の参考の形態の作用・効果に加えて、さらに次のように作用・効果を得ることができる。凝縮冷媒循環回路78は、燃料電池10から排出されるオフガスの排熱、改質器20にて発生する排熱の少なくとも何れかを回収した凝縮冷媒が循環するものであり、貯湯水循環回路80とは独立して設けられるとともに、第2熱交換器79を介して貯湯水と凝縮熱媒との間で熱交換が行われる。すなわち、貯湯水は、アノードオフガス、カソードオフガス、燃焼排ガス、燃料ガス(改質ガス)と直接熱交換をしておらず、第2熱交換器79を介して間接的に熱交換をすることになる。したがって、貯湯槽71が水道水が直接補給される密閉式である場合、貯湯槽71、貯湯水循環回路80には高圧の水道水圧がかかるが、凝縮冷媒循環回路78は貯湯水循環回路80から独立しているため、凝縮冷媒循環回路78上に配設されるアノードオフガス、カソードオフガス、燃焼排ガス、燃料ガス(改質ガス)との熱交換するための熱交換器(凝縮器30)には直接水道水圧がかからないので、その熱交換器を過剰な耐圧構造としなくてもすむので、コスト高、大型化を招くことなく、高圧水源から貯湯水を補給可能である燃料電池システムを提供することができる。
また、凝縮冷媒循環回路78上には改質器および燃料電池を流通する高温かつ蒸気を含んだ気体から熱量を回収して同気体を凝縮する凝縮器30が備えられ、凝縮熱媒は凝縮器30を流通する凝縮冷媒であるので、従来の構成を有効利用することにより大型化することなく簡単な構成で確実に凝縮熱媒を昇温することができる。
なお、上述した第2の参考の形態においては、ラジエータ76は、貯湯水循環回路80またはFC冷却水循環回路73に配置してもよく、少なくとも凝縮冷媒循環回路78、貯湯水循環回路80およびFC冷却水循環回路73の何れか一つに配置するようにすればよい。これによれば、貯湯水の温度が燃料電池で必要な温度に到達した場合、もしくは改質器20の排熱を回収した凝縮冷媒で必要な温度に到達した場合、貯湯水が排熱を回収してそれ以上昇温しないようにするため、貯湯水または/およびFC冷却水および凝縮熱媒の温度を冷却手段であるラジエータ76によって効率よく冷却することができる。
3)実施の形態
また、上述した各参考の形態においては、流量調整手段は2つの貯湯水循環手段である貯湯水循環第1ポンプP5および貯湯水循環第2ポンプP6によって構成するようにしたが、図11に示すように、1つの貯湯水循環手段と1セット(1つ)の流量比調整手段によって構成するようにしてもよい。具体的には、貯湯水循環第3ポンプP9、第2および第3バルブ81,82から構成すればよい。貯湯水循環第3ポンプP9は、バイパス路75と貯湯槽71の出口の間の流路72に設けられており、制御装置90によって制御されてその流量(送出量)が制御されるようになっている。第2バルブ81は、バイパス路75との分岐点より凝縮器30(第2熱交換器79)側の流路72に設けられ同流路72を開閉するとともに開度調整可能な開閉弁であり、制御装置90の指令によって開閉制御されるとともに開度調整されるものである。第3バルブ82は、バイパス路75に設けられ同バイパス路75を開閉するとともに開度調整可能な開閉弁であり、制御装置90の指令によって開閉制御されるとともに開度調整されるものである。これによれば、貯湯水循環第3ポンプP9によって貯湯水の全体流量を制御し、第2および第3バルブ81,82の各開度によって流路72およびバイパス路75の流量比を制御することにより、流路72およびバイパス路75の各流量をそれぞれ調整することができる。なお、第2および第3バルブ81,82に代えて、他の形式の流量比調整手段例えば分岐点に流量比調整器を設けるようにしてもよい。
また、上述した各参考の形態においては、流量調整手段はバイパス路75の流体が両方向流通可能な構成とし、かつバイパス路75と貯湯槽71の入口の間の流路72に開閉弁(第1バルブ77)を設けるようにするのが望ましい。具体的には、図11に示すように、前述した1つの貯湯水循環手段と1セット(1つ)の流量比調整手段によって構成した流量調整手段に、さらに、貯湯水循環第1ポンプP5を追加すればよい。
すなわち、燃料電池システムの実施の形態においては、貯湯水循環回路は、第1熱交換器74を設けた流路75と、燃料電池10から排出されるオフガスの排熱、改質器20にて発生する排熱の少なくとも何れか一方を回収して貯湯水を昇温する排熱回収手段30を設けた流路72と、が並列に設けられている。流量調整手段は、第1熱交換器74を設けた流路75および排熱回収手段30を設けた流路72の各流量をそれぞれ調整し、かつ、第1熱交換器74を設けた流路75の流体が両方向流通可能である。また、開閉弁77は、第1熱交換器74を設けた流路75と排熱回収手段30を設けた流路72との分岐点と貯湯槽71の入口との間に設けられている。
このように構成した燃料電池システムの実施の形態によれば、バイパス路75および流路72の各流量をそれぞれ調整する流量調整手段(貯湯水循環第3ポンプP9、第2および第3バルブ81,82)を備えたので、バイパス路75および流路72を流れる貯湯水の流量を確実に調整することができ、最適な熱回収効率および回収湯温を実現することができる。
さらに、起動運転時において、貯湯水が低温である場合、制御装置90は、第1〜第3バルブ77,81,82をそれぞれ閉、開、開状態とし、貯湯水循環第1ポンプP5を駆動し、貯湯水循環第3ポンプP9を駆動しないので、貯湯水は貯湯槽71に戻らないで流路72およびバイパス路75を循環し、バイパス路75に設けた第1熱交換器74を流通する。すなわち、流路72にて燃料電池10から排出されるオフガスの排熱、改質器20にて発生する排熱の少なくとも何れか一方を回収して昇温した貯湯水が第1熱交換器74にて燃料電池熱媒体と熱交換するので、燃料電池熱媒体ひいては燃料電池10が昇温する。そして、燃料電池10(燃料電池熱媒体)の温度が所定温度以上になると、制御装置90は、第1〜第3バルブ77,81,82を全て開状態とし、貯湯水循環第1ポンプP5を駆動し、貯湯水循環第3ポンプP9を駆動する。したがって、起動運転時には改質器暖機中の排熱により燃料電池を暖機することが可能であり、起動エネルギーの低減ひいては総合的な効率の向上を図ることができる。また、貯湯水は貯湯槽に戻らないので、貯湯槽の湯層が崩れるのを確実に防止することができる。
なお、上述した各参考および実施の形態において、ポンプのうち気体を送出するポンプはブロワに置き換え可能である。
10…燃料電池、11…燃料極、12…空気極、20…改質器、21…バーナ、22…改質部、23…一酸化炭素シフト反応部(COシフト部)、24…一酸化炭素選択酸化反応部(CO選択酸化部)、25…蒸発器、30…凝縮器、31…改質ガス用凝縮器、32…アノードオフガス用凝縮器、33…カソードオフガス用凝縮器、34…燃焼ガス用凝縮器、40…純水器、45…インバータ、46…送電線、47…電力使用場所、47a…電力計、48…系統電源、47…電源ライン、50…貯水器、53…改質水ポンプ、61〜66…配管、68…改質水供給管、71…貯湯槽、72…流路、73…FC冷却水循環回路、74…第1熱交換器、75…バイパス路、76…ラジエータ、77…第1バルブ、78…凝縮冷媒循環回路、79…第2熱交換器、80…貯湯水循環回路、81,82…第2および第3バルブ、P1〜P9,53…ポンプ、73a,73b,72b,72a,78a,64a…第1〜第5,第7温度センサ、90…制御装置。