JP4354721B2 - シリコン焼結体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、十分な厚みを有するシリコン焼結体でも相対密度及び強度が高く、しかも加工性に富むのシリコン焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン半導体製造工程においては、単結晶引上げによって製造されたウエハが専ら使用されているが、このような半導体製造装置の構成部品としてシリコンの矩形又は円盤状の板からなるスパッタリングターゲットの使用が増えてきている。
一般に、スパッタリング法は薄膜を形成手段として使用されているが、これには2極直流スパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法など、いくつかのスパッタリング法があり、それぞれ固有のスパッタリングの性質を利用して、各種電子部品の薄膜が形成されている。
【0003】
このスパッタリング法は、陽極となる基板と陰極となるターゲットとを対向させ、不活性ガス雰囲気下でこれらの基板とターゲットの間に高電圧を印加して電場を発生させるものであり、この時電離した電子と不活性ガスが衝突してプラズマが形成され、このプラズマ中の陽イオンがターゲット表面に衝突してターゲット構成原子を叩きだし、この飛び出した原子が対向する基板表面に付着して膜が形成されるという原理を用いたものである。
【0004】
シリコンの焼結体スパッタリングターゲットは上記のように需要が増えてきつつあるが、成膜効率を高めるために厚さが大きくかつ大型の矩形又は円盤状のターゲットが要求されるようになってきている。
しかし、一般にシリコン焼結ターゲット自体は焼結性が悪く、得られた製品は低密度で、機械的強度が低いという問題があった。
このようなことから、上記のシリコン焼結体ターゲットの特性を改善しようとして、減圧下で1200°C以上珪素の融点未満の温度範囲で加熱して脱酸した珪素粉末を圧縮成形し焼成して形成した珪素焼結体で、焼結体の結晶粒径を100μm以下に設定した珪素焼結体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、このようにして製造されるターゲットは、厚みが薄い場合、例えば5mm以下の場合には、比較的密度がそれなりに高くなり強度的にも向上するが、それを超えるような厚さになった場合には、依然として低密度(99%に満たない)であり、それに伴って機械的強度が劣ることとなる。したがって、大型の矩形又は円盤状のターゲットを製造することができないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特許第3342898号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題または欠点に鑑みてなされたもので、厚みが5mmを超える大型の矩形又は円盤状のターゲットにおいても99%以上の高密度を備え、強度が著しく向上したターゲット等の焼結体の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決する手段】
上記の課題を解決するために、本発明者は、焼結条件を工夫することによって、厚みが5mmを超える大型の矩形又は円盤状のターゲットにおいても99%以上の高密度焼結体を製造できるとの知見を得た。
本発明は、上記知見に基づき、
1.シリコン粉末を冷間で成形加工した後、1200〜1412°Cの範囲、圧力1000気圧以上でHIP処理することを特徴とするシリコン焼結体の製造方法
2.5mmを超える厚さを有し、平均結晶粒径50μm以下、相対密度が99%以上であることを特徴とする上記1記載のシリコン焼結体の製造方法
3.平均結晶粒径20μm以下であることを特徴とする上記2記載のシリコン焼結体の製造方法
4.厚さが10mm以上であることを特徴とするシリコン焼結体上記1〜3のいずれか一項に記載のシリコン焼結体の製造方法
5.厚さが30mm以上であることを特徴とするシリコン焼結体上記1〜3のいずれか一項に記載のシリコン焼結体の製造方法、を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、5mmを超える厚さを有し、平均結晶粒径20μm以下、好ましくは平均結晶粒径50μm以下、相対密度が99%以上であるシリコン焼結体、特に厚さが10mm以上、さらには厚さが30mm以上であるシリコン焼結体の製造方法に関し、シリコン粉末を冷間で成形加工した後、1200〜1412°Cの範囲、圧力1000気圧以上でHIP処理することを特徴とする。
この方法によって得られた高密度シリコン焼結体は、機械的強度が高く、加工性に富み、スパッタリングターゲットに好適である。しかも、例えば半導体製造装置の各種部品として使用することもできる。
【0010】
このような部品の製作に際しては、割れやチッピングを発生することなく、複雑な形状にも容易に加工することができ、歩留まりを大きく向上させ、製造コストを低減できるという大きな特徴を有する。
例えば、上記のように本発明の焼結体は厚いものができるので、具体的にはこの焼結体をスライスし、多数枚のターゲット又はダミーウエハーなどを製造することができる。この場合、焼結体の強度が高いので欠けや割れの発生が少ないことは勿論である。また、一焼結体から多数枚のターゲット又はダミーウエハー等が製造できるので歩留まりを向上させることができ、全体として製造コストを大きく下げることができるというメリットがある。
焼結体のサイズ(大きさ)は特に制限がなく、HIP装置の能力の制限を受けるだけである。このHIP装置を使用して、直径1000mm(1m)程度の焼結体を製造することが可能であった。
【0011】
通常考えられるシリコン焼結体の製造方法としては、予め減圧下で加熱処理して酸素を除去し、これを焼結してシリコン焼結体を得ることが考えられるが、この手段ではせいぜい5mm厚程度の焼結体において、相対密度99%程度が達成されるのみで、厚みが増加するにつれて、密度は急速に低下する。
しかし、本発明は、例えばシリコンの粗粒(ナゲット)をジェットミルで粉砕したシリコン粉末を冷間で成形加工した後、1200〜1412°Cの範囲、圧力1000気圧以上でHIP処理することによって、焼結体50mm厚でも相対密度99.5〜100%の高密度シリコン焼結体を製造することができる。
【0012】
HIPの際に、1200°C未満では相対密度が十分に上がらない。また1412°Cを超える温度ではシリコンの融点以上になるので、上限を1412°Cとした。また、圧力1000気圧未満では密度を十分に上げることができないので、下限を1000気圧とした。結晶粒径が細かいほど密度が向上するので、平均結晶粒径50μm以下、好ましくは平均結晶粒径20μm以下とする。
【0013】
【実施例及び比較例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。なお、以下の実施例は発明を容易に理解できるようにするためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく他の例又は変形は、当然本発明に含まれるものである。
【0014】
(実施例1−4)
シリコンの粗粒をジェットミルで粉砕して製造したシリコン粉末を200kg/cmの条件下で冷間成形加工(コールドプレス)した後、1500気圧でCIP(冷間等方プレス)処理し、シリコン成形体を作成した。
次に、このシリコン成形体を軟鋼製のカプセルに入れ、カプセルと成形体の隙間に、軟鋼及びシリコンと反応し難いマグネシア等の酸化物の粉末を詰め、カプセル中の空気を600〜800°C程度に加熱しながら脱気し、カプセル内を真空雰囲気にして封缶する。
このようにしたカプセルを1200°C〜1300°C、1000気圧以上の圧力の条件下でHIP(熱間等方プレス)処理して、厚さ50mmの焼結体を得た。この結果、焼結体の相対密度は99.2〜100.2%となった。
以上の結果を、表1に示す。なお、本実施例では厚さ50mmの焼結体としたが、100mm、150mm、さらにはこれ以上の厚さでも同様の結果が得られた。
【0015】
【表1】
Figure 0004354721
【0016】
(比較例1−2)
実施例1と同様のシリコン粉末を200kg/cmの条件下で冷間成形加工(コールドプレス)した後、1500気圧でCIP(冷間等方プレス)処理し、シリコン成形体を作成した。
次に、このシリコン成形体を軟鋼製のカプセルに入れ、カプセルと成形体の隙間に、軟鋼及びシリコンと反応し難いマグネシア等の酸化物の粉末を詰め、カプセル中の空気を600〜800°C程度に加熱しながら脱気し、カプセル内を真空雰囲気にして封缶する。
このようにしたカプセルを1100°C、1000及び1500気圧の圧力の条件下でHIP(熱間等方プレス)処理して、厚さ50mmの焼結体を得た。この結果、焼結体の相対密度は91.9%と〜93.4%となり、十分な密度向上とはならなかった。
以上の結果を、実施例と同様に表1に示す。
【0017】
【発明の効果】
本発明は、シリコン粉末を冷間で成形加工した後、1200〜1412°Cの範囲、圧力1000気圧以上でHIP処理することによって、焼結体50mm以上の厚さでも相対密度99.5〜100%の高密度シリコン焼結体を製造することができるという優れた効果を有する。
このような高密度シリコン焼結体は機械的強度が高く、加工性に富み、スパッタリングターゲットの製造に好適である。しかも、例えば半導体製造装置の各種部品として使用することもできる。
このような部品の製作に際しては、割れやチッピングを発生することなく、複雑な形状にも容易に加工することができ、歩留まりを大きく向上させ、製造コストを低減できるという大きな特徴を有する。

Claims (5)

  1. シリコン粉末を冷間で成形加工した後、1200〜1412°Cの範囲、圧力1000気圧以上でHIP処理することを特徴とするシリコン焼結体の製造方法。
  2. 5mmを超える厚さを有し、平均結晶粒径50μm以下、相対密度が99%以上であることを特徴とする請求項1記載のシリコン焼結体の製造方法。
  3. 平均結晶粒径20μm以下であることを特徴とする請求項2記載のシリコン焼結体の製造方法。
  4. 厚さが10mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリコン焼結体の製造方法
  5. 厚さが30mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリコン焼結体の製造方法
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