JP4353653B2 - 鉛蓄電池の状態監視システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛蓄電池の寿命等の状態を監視する鉛蓄電池の状態監視システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉛蓄電池は、非常用電源として使用される場合がある。この様な用途に使用される鉛蓄電池は据置用鉛蓄電池と呼ばれ、負荷に対し商用電源と並列接続され、通常は商用電源により浮動充電と呼ばれる小さな電流で充電され、その鉛蓄電池の容量を100%の状態に維持され、商用電源に停電等の異常事態が発生した時に該商用電源に代わり鉛蓄電池から負荷へ電力を供給するものである。
【0003】
この様な据置用鉛蓄電池は多数の鉛蓄電池を直列接続して用いられる。そしてこの様な鉛蓄電池は、絶えず浮動充電を行っているとはいえ、あるいは行っているが為に、鉛蓄電池は徐々に劣化し、やがては負荷への充分な電力を供給出来ない状態に至ることは知られている。その為、商用電源の異常時に実際に充分な電力を供給し得るか否か、即ち鉛蓄電池の容量(残存容量)が所定量あるか否かを把握する為に以下の方法が採られている。
(1)鉛蓄電池の電池電圧の変化を監視し、その変化により残存容量を推定する方法。
(2)鉛蓄電池を放電し残存容量を推定する方法。
(3)鉛蓄電池を短時間急放電してその電圧の低下度合いから残存容量を推定する方法。
(4)鉛蓄電池は劣化に伴い、徐々に内部抵抗が上昇するため、その値から残存容量を推定する方法。
これらの方法により、鉛蓄電池の状態を監視し、残存容量が所定の値以下になった時を寿命と判断し鉛蓄電池を交換している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の方法では以下のような問題がある。
(1)鉛蓄電池の電池電圧の変化を監視する方法では、電池固有差による電圧ばらつきがあり、多数の鉛蓄電池を直列接続して用いられる場合にはそのばらつきが合算されるため大きくなり正確さに欠けると共に、実用上は充分な余裕を見た監視にならざるを得ない。
(2)鉛蓄電池を放電により残存容量を推定する方法は正確ではあるが、放電する為の装置を備えなければならないと共に、放電期間中に商用電源に異常が発生した場合への対応が出来なくなる。
(3)鉛蓄電池を急放電する場合も、放電する為の装置を備えなければならない。
(4)鉛蓄電池の内部抵抗による方法は比較的ばらつきも小さく、また、放電する為の装置等も不要で良い方法ではあるが、鉛蓄電池の長期使用が望まれ、より正確な状態監視が望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明ではある短期間の内部抵抗の平均値と、その後に続くある短期間の内部抵抗の平均値を比較し、その平均値間の変化率が所定の値を超えた場合に警報等を発して鉛蓄電池の交換時期を知らせるものである。
また、請求項2に記載の発明では、ある短期間の内部抵抗の平均値とその後に続くある短期間の内部抵抗の平均値を比較し、その平均値の変化率を求めると共に、該変化率が第1の所定の値を超えた場合に、これ以前の短期間の内部抵抗の平均値の推移を時系列的に監視し、この経時変化を基に使用経過年数と内部抵抗の平均値の関係を示す近似式を求め、この近似式により、内部抵抗の平均値の変化率が第2の所定の値を超える時期を予測し、その予測した時期を鉛蓄電池の予想の交換時期として表示するものである。
【0006】
更に請求項3に記載の発明は、多数の鉛蓄電池が直列接続して使用される場合に、個々の鉛蓄電池の内部抵抗を測定することで、鉛蓄電池の状態を監視するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
小さな充電電流で浮動充電中の据置用鉛蓄電池に交流電流を印加し、その印加電流と応答電圧から内部抵抗を求めることが出来る。この内部抵抗は鉛蓄電池の充電状態、即ち残存容量の変化に伴い変化する。即ち、残存容量の低下と共に内部抵抗は増加する。従って、鉛蓄電池の内部抵抗を測定することにより鉛蓄電池の残存容量を監視することが出来る。
【0008】
しかしながら実際に所定の公称容量の鉛蓄電池の内部抵抗と残存容量の関係を調べ、所定の残存容量、例えば公称容量の80%迄低下した時点を最早負荷の電力を賄うことが出来ない所謂寿命として、その時の内部抵抗値を用いて複数の鉛蓄電池が直列接続された鉛蓄電池の状態を監視し、所定の内部抵抗値になった時のこれら複数の鉛蓄電池の残存容量を実際放電して調べて見ると、未だ80%に達してないものや、80%を大きく下回っているもの等があることが分かった。その差を期間に換算すると極端な場合は1年にも及ぶ事が分かった。
【0009】
そこで本発明者らは、内部抵抗の変化率、即ち、直前の内部抵抗値との比較において、どれだけ内部抵抗値が変化したかを見ることで、上記寿命期間のばらつきを小さく出来ることを見出したものである。
【0010】
しかし、実際に内部抵抗の測定値は浮動充電の電源からのノイズや浮動充電の変化により変化する為、その都度変化率を求めるとそのばらつきによって、想像も出来ない位早期に所定の変化率を呈する場合がある。そこで、週単位或いは月単位の内部抵抗の平均値を求め、これにより変化率を見る必要があることが分かった。
【0011】
表1に、寿命末期に近い複数の密閉形鉛蓄電池を用い、測定した半年間の内部抵抗の平均値の初期設計の内部抵抗値に対する相対値(初期相対値)と、その半年の平均値の初期相対値間の内部抵抗の変化率および、使用経過年数での残存容量を調査した結果を示す。
【0012】
【表1】
【0013】
なお、表1中に示される内部抵抗平均の初期相対値は、経験上知られている密閉形鉛蓄電池の初期設計時の内部抵抗値を100としたときの相対値である。鉛蓄電池1では使用経過年数が8.5〜9年、鉛蓄電池2では使用経過年数が7.5〜8年、鉛蓄電池3では使用経過年数が8〜8.5年にかけて、いずれも半年間の変化率が110%を越えたときに残存容量が80%以下となることを確認した。尚、残存容量が100%を超えるのは、公称容量との比率で記載したことによる。即ち、実測容量が大きいのは、一般的に電池は公称容量より大きく設計され、この設計値に基づき製造される為である。
【0014】
又、これら据置用鉛蓄電池は、商用電源の異常時に負荷へ電力を供給するものであるので、負荷への充分な電力量を供給し得る残存容量が要求され、それを下回った場合は、これを寿命として交換する必要がある。この場合、上記の如く内部抵抗の平均値の変化率による鉛蓄電池の状態監視のみでは、寿命に至った時期は確認し得るも、寿命に何時なるのかと言った予想はつかない。そこで、本発明者らは、上記内部抵抗の平均値の変化率が第1の所定の値を超えた場合に、これ以前のある期間の内部抵抗の平均値を時系列的に記憶し、この経時変化から使用経過年数と内部抵抗の平均値の関係を示す近似式を求め、この近似式から内部抵抗の平均値の変化率が第2の所定の値を超える時期を予測し、その予測した時期を鉛蓄電池の予想の交換時期として表示する様にしたものである。
【0015】
具体的に説明すれば、図1は密閉形鉛蓄電池の6年目以後8年目迄の内部抵抗の半年毎の平均値の初期相対値の経時変化である。縦軸は半年間の内部抵抗の平均値の初期相対値を、横軸は鉛蓄電池の使用経過年数を表す。尚、内部抵抗の平均値の初期相対値は、鉛蓄電池の初期設計時点での内部抵抗値を100として、その相対値で表した。この各プロットされた点に最も近似される式として式1の3次関数の式が得られた。
【0016】
【式1】
【0017】
xは鉛蓄電池の使用経過年数、yは内部抵抗の平均値の初期相対値を表す。実験の結果、この近似式は2次乃至4次関数の式が良いことが確認された。
【0018】
この近似式を基に、内部抵抗の平均値の初期相対値の変化率が6ヶ月で110%を越える時期、即ち予想の交換時期をa年とし、その6ヶ月前の時期をb年として、それぞれ使用経過年数であるxに代入して、予想の交換時期の内部抵抗平均値の初期相対値y a と、その6ヶ月前の内部抵抗平均値の初期相対値y b を求めると、次の式2と式3のようになる。なお、式3において、bはaの6ヶ月前の年数であるから、このbの代わりに(a−0.5)を代入してある。
【0019】
【式2】
【0020】
【式3】
【0021】
そして、この内部抵抗の平均値の初期相対値の変化率が110%、すなわち、y a /y b ×100=110%となるaを求めると、a=8.17となる。従って、鉛蓄電池の使用を開始してから8.17年後に、この鉛蓄電池を交換する必要があることを予測し得る。事実、この鉛蓄電池は8年目には85%の残存容量を維持していたが、8.5年後には残存容量が76%に低下しており、上記予測の正確さが確認出来た。
【0022】
【実施例1】
本発明の実施例を図2に示す。商用電源1は整流・制御部2を介して負荷3に接続されると共に、鉛蓄電池4が負荷3と並列に接続されている。鉛蓄電池4は、満充電された密閉形鉛蓄電池を12個直列に接続してなり、直列接続された鉛蓄電池4に1Aの浮動充電電流を流し続けた。各鉛蓄電池4の正負極端子には交流電流印加線5を接続し、そして、タイマーにより1日1回、内部抵抗測定装置6から交流電流印加線5より各鉛蓄電池4に20Hzの交流電流を印加し、応答電圧及び位相差の情報を演算部7へ入力して内部抵抗を演算した。また、各鉛蓄電池4の電槽側面に固定したサーミスタ(図示せず)により各鉛蓄電池4の温度を計測し、この温度を元に演算部7で、予め記憶部RAM8に記憶された温度と内部抵抗の相関関係を示す検量線を作成した。これにより前記測定した内部抵抗値を温度補正して、記憶部RAM8に時系列的に記憶した。そして、プログラムが記録された記録部ROM9により半年毎に記憶された過去半年分の内部抵抗値を演算部7で平均して平均値を求め、これを内部抵抗平均値として記憶部RAM8に時系列的に記憶した。そして、直前の半年分の内部抵抗平均値と比較し、その変化率を求めた。この変化率が110%を超えた場合に、表示部10に「寿命」と表示する様にした。
【0023】
演算部7では、記録部ROM9に記録されたプログラムにより、図3に示すフローチャートに従って演算する。まず、タイマーをスタートさせ、鉛蓄電池4が浮動充電されているか否かを見る。鉛蓄電池4は、先に説明した通り、商用電源1が停電等の異常事態になった時に放電し、負荷8へ電力を供給するものである。そして、商用電源1が復旧した後は、該商用電源1により充電され、満充電になった時再び浮動充電されるが、鉛蓄電池4の放電時や充電時は交流電流を印加せず、内部抵抗は測定しない。このようにする為に、鉛蓄電池4が浮動充電の時のみ定期的に交流電流を印加する。この浮動充電の状態は鉛蓄電池4の電圧を監視することで判断した。そして、印加した交流電流とその時の応答電圧により内部抵抗を測定しこれを記憶部RAM8へ記憶し、次に半年が経過したかをタイマーにより判断し、経過していなければ次回の内部抵抗の測定に備える。半年が経過していれば、それまで記憶していた半年分の内部抵抗値を演算して平均値を求め、これを記憶部RAM8へ記憶する。次いで、今回求めた内部抵抗の平均値と前回求めた平均値を比較して変化率を演算し、その結果110%以下ならタイマーをリセットし、次の半年の記録を取る為、再びタイマーをスタートさせる。この場合、それ以前のデータを消去し新たなデータへ書き換えるのではなく、以前のデータを残し、次の半年分として新たにデータを記憶した。その時、半年目、1年目の経時データと共に記憶するようにした。内部抵抗の平均値の変化率が110%を超える場合は、表示部10に寿命表示し、プログラムを終了させる。尚、表示は継続して行うものである。
【0024】
実際にこの装置を用い、密閉形鉛蓄電池4を温度65℃の雰囲気に置き、満充電後1Aの小さな電流で浮動充電し続けて加速寿命試験を実施した。1日1回の割合で20Hzの一定周波数の交流電流を内部抵抗測定装置6により印加し、その時の応答電圧により内部抵抗を演算し、半月毎に半年間の内部抵抗の平均値の初期相対値を求めて状態を監視した結果、約6ヶ月後に寿命の表示が出た。この鉛蓄電池4を実際に放電して、その残存容量を調べたところ、初期容量の80%以下となっていた。
【0025】
【実施例2】
更に、本発明は、内部抵抗の平均値の使用途中の変化率の推移により寿命時期を予測するものである。装置は図2に記載されるものと同じである。相違する点は演算装置のプログラムである。図4に、この場合に記録部ROM9に記録されたプログラムの演算のフローチャートを示す。使用開始から半年間の内部抵抗の平均値を求め記憶する、次いで、今回求めた内部抵抗の平均値と前回求めた平均値を比較して変化率を演算する所までは上記の場合と同じであるが、その後変化率が108%以下か否かを判断し、以下なら再び内部抵抗の計測に備えるも、変化率が108%を超えた場合は過去2年間のデータ、即ち、内部抵抗の平均値の経時変化から使用経過年数と内部抵抗の平均値の関係を演算して、3次関数の近似式を立てた。これを基に内部抵抗の平均値の変化率が110%を超える時期を演算により予測し、それを寿命、即ち鉛蓄電池4の交換時期として表示部10に表示するようにしたものである。実際に上記実施例1の場合と同様に、加速寿命試験を実施した結果は、ほぼ満足のいくものであった。
【0026】
尚、上記実施例においては、主に内部抵抗測定の点について説明したが、このシステムに更に電池電圧の計測システムを付加し、その他の鉛蓄電池のシステムを付加させ、同時に鉛蓄電池の状態を監視し得ることができることは勿論である。
【0027】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、鉛蓄電池の状態監視システムとして鉛蓄電池の内部抵抗の平均値の変化率により寿命を判断するようにしたので、極めて正確に鉛蓄電池の状態を監視し得ると共に、使用中の所定期間の内部抵抗の平均値の推移により鉛蓄電池の交換時期を予想し表示する様にしたので、鉛蓄電池の管理運用も極めて容易になる等の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】密閉型鉛蓄電池の内部抵抗の平均値の初期相対値の経時変化を示す図
【図2】本発明の一実施例の説明図
【図3】本発明の一実施例のチャート図
【図4】本発明の他の実施例のチャート図
【符号の説明】
1…商用電源
2…整流・制御部
3…負荷
4…鉛蓄電池
5…交流電流印加線
6…内部抵抗測定装置
7…演算部
8…記憶部RAM
9…記録部ROM
10…表示部
Claims (3)
- 鉛蓄電池の内部抵抗を測定する装置と、該測定した内部抵抗を記憶し、該記憶した内部抵抗の一定期間毎の平均値を求め、この内部抵抗の一定期間毎の平均値をその直前の一定期間の平均値と比較して、その平均値間の変化率を演算する装置と、該変化率が所定の値を超えた場合に、鉛蓄電池の交換時期として警報または表示する装置とを備える鉛蓄電池の状態監視システム。
- 鉛蓄電池の内部抵抗を測定する装置と、該測定した内部抵抗を記憶し、該記憶した内部抵抗の一定期間毎の平均値を求め、この内部抵抗の一定期間毎の平均値を記憶し、その直前の一定期間の平均値と比較して、その平均値間の変化率を演算すると共に、該変化率が第1の所定の値を超えた場合に、これ以前の一定期間毎の内部抵抗の平均値の経時変化状態に基づき使用経過年数と内部抵抗の平均値の関係を示す近似式を求め、この近似式から一定期間毎の内部抵抗の平均値の変化率が第2の所定の値を超える時期を予測する演算装置と、該予測した時期を鉛蓄電池の予想の交換時期として表示する装置とを備える鉛蓄電池の状態監視システム。
- 多数の鉛蓄電池を直列接続し、前記鉛蓄電池の状態監視を個々の鉛蓄電池に対して行うことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の鉛蓄電池の状態監視システム。
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