本発明に係る鉄筋コンクリート製の原子炉格納容器の建設方法の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る原子炉格納容器を備えたABWR原子力発電所の原子炉建屋1を概略的に示す全体断面図であり、従来の原子炉建屋1と共通する部材には同一符号を付して説明する。
原子炉建屋1は内部に鉄筋コンクリート製の原子炉格納容器(RCCV)2を格納しており、この原子炉格納容器2内に原子炉圧力容器3が収納される。原子炉圧力容器3は原子炉建屋マット4上に立設された原子炉格納容器支持ペデスタル(RPV支持ペデスタル)5上に支持される。原子炉格納容器3はRPV支持ペデスタル5から上方に延びる原子炉遮蔽壁40で囲繞されて、この原子炉遮蔽壁40が原子炉からの放射線を遮蔽するようになっている。
また、原子炉格納容器(RCCV)2は、原子炉建屋マット4上に立設される円筒上あるいはスリーブ状の円筒壁6とこの円筒壁6内を上下2室に区画するダイアフラムフロア8と上記円筒壁6の頂部を覆うトップスラブと呼ばれる上部床7とから構成される鉄筋コンクリート製の容器である。RCCV2内はダイアフラムフロア8により下部の圧力抑制室25と上部のドライウェル28とに区画される。圧力抑制室25には冷却水としてのサプレッションプール水が貯溜されるようになっている。
RCCV2の建設に際し、RCCV鋼製ライナ10は、予め工場あるいは建設現場近傍の地上にてプレハブを実施し、リング状あるいはトーラス状ライナエレメントを積み上げて円筒状あるいはスリーブ状に構成される円筒部ライナである。RCCVライナ10は圧力抑制室ライナあるいはドライウェルライナで構成される。
図2は、工場あるいは建設現場近傍の地上、例えばヤード定盤上でRCCV2の円筒部鋼製ライナ10の外周側にRCCV内側配筋11を独立して配筋し、組立を実施した状態を示す図である。RCCVライナ10のリング状ライナエレメントを円筒状あるいはスリーブ状に完成させた後、RCCVライナ10の外周側に、工場あるいは建設現場近傍の地上の例えばヤード定盤上にてRCCV内側配筋11の組立(地組み)を行なう。符号50は配管、電気ケーブル、計装配管等の貫通ペネトレーションであり、符号51はRCCVライナ10に取り付けられる機器出入れ用の機器ハッチであり、符号52は作業員の出入用ハッチである。
(1)原子炉格納容器(RCCV)の円筒壁構造
RCCVの円筒壁構造を説明するに当り、RCCV内側配筋11の組立(地組み)を図3を参照して説明する。
図3は、図2に示されたRCCVライナ10の外周側に、工場内あるいは建設現場近傍の地上、例えばヤード定盤上で、RCCV内側配筋11の組立(地組み)を実施する際の部分的な縦断面図である。RCCV内側配筋11は、例えば直径50mmφ程度の縦配筋57と横配筋58を縦横に走らせて円筒状あるいはスリーブ状に組み立てた筒状体配筋59(60,61)であり、この筒状体配筋を複数体、例えば3体59,60,61を同心円状に配設して構成される内側配筋モジュールである。
初めに、リング状あるいはスリーブ状にプレハブされたRCCVライナ11の外周部に作業用足場54を円周上に沿って組み立て、この足場54の内側にRCCV内側配筋11を受ける階段状の架構55を組立て設置する。架構55や足場54は工場内あるいは建設現場近傍の地上に組み立てられ、リング状あるいはスリーブ状に設置される。リング状あるいはスリーブ状のRCCVライナ10は予め工場あるいは建設現場近傍の地上、例えばヤード定盤上でプレハブを実施し、ライナ受け台56上に支持させる。RCCVライナ11には外周側にコンクリートへのアンカの役割を果すカットティ材13が周方向に所要の間隔をおいて複数個、例えば20個固定される。カットティ材13はRCCVライナ11の軸方向ほぼ全長に亘って延設され、RCCVライナ11を補強している。
RCCVライナ10の外側でのRCCV内側配筋11の組立て配筋作業は次のようにして行われる。RCCV内側配筋11は、初めに一番内側(1列目・第1段)の縦配筋57が配設され、この縦配筋57に横配筋58を外側から周方向に順次取り付け、縦・横配筋57,58で筒状の枠組構造に組み立てられる。一番内側の縦・横配筋57,58の荷重は、階段状の架構55の第1段で支持される。縦配筋57を外側に横配筋58が内側に来るように配置してもよい。縦・横配筋57,58の荷重は階段状の架構55で受け、RCCVライナ10に加わらないようにセットされる。
一番内側(1段目)の縦・横配筋57,58の組立により、一列目の筒状体配筋59が枠組構造に構成され、この一列目の筒状体配筋59の外側に2列目、3列目の筒状体配筋60,61が順次配列され、組み立てられる。2列目および3列目筒状体配筋60,61も一列目筒状体配筋59と同様、縦配筋57と横配筋58を配列し、組み立てることにより一体化され、各々独立した枠組構造に構成される。
各列の筒状体配筋59,60,61は階段状架構55の各段にそれぞれ支持される。架構55は第1段から半径方向外方のn段、例えば第3段に向って上り階段状に構成される。架構55は、RCCV内側配筋11と建設現場での立上げ配筋であるマット差筋63との取合いを容易にするため、一番内側(1列目)の縦配筋57を受ける部分が最も低くなっている。架構55はライナ受け台56上設置されたRCCVライナ10の外周側を取り囲むようにリング状あるいはトーラス状に構成されても、また、複数の架構55を周方向に適宜間隔をおいて配置し、全体としてリング状あるいはトーラス状配置となるように構成してもよい。
RCCV内側配筋11の配筋作業により各列の筒状体配筋59,60,61は独立した枠組構造に組み立てられ、各列の筒状体配筋59,60,61の荷重がRCCVライナ10に作用しないようにセットされる。RCCV内側配筋11の荷重をRCCVライナ10に作用させないのは、内側配筋荷重が非常に大きいのに対し、RCCVライナ10は例えば6.4mm厚と薄肉構造であり、その剛性強度が小さいためである。内側配筋荷重をRCCVライナ10にモーメントをもった荷重としてかけるとRCCVライナ10およびライナ軸方向の構成材であるカットティ材13が座屈する虞があるが、内側配筋荷重を作用させないことにより、この座屈を防ぐことができる。
RCCVライナ10の外周側にRCCV内側配筋11を設置し、RCCV内側配筋11の取付、組立が完了すると、RCCVライナ10とRCCV内側配筋11の建設現場内への吊り込みを実施する。吊込みは、揚重機65を操作して吊り天秤66を昇降、移動操作させることにより行なわれる。この吊り天秤66を用いてRCCVライナ10とRCCV内側配筋11を同時に独立して吊り上げて移動させ、吊り下ろすことにより、吊込みが実施され、建設現場内に吊り下ろされる。揚重機65は例えば1000トン級の揚重ができる大型揚重機である。
図4は、RCCVライナ10のライナ一段目である円筒部ライナとしての圧力抑制室ライナ16とRCCV内側配筋11を原子炉建屋マット4上に吊り下ろした状態を示す断面図である。
原子炉建屋マット4には、RCCV内側配筋11に連結される内側マット差筋63が植設されている。RCCV内側配筋11のマット差筋63は、例えば約50mmφ程度の直径を有し、一番内側の1列目の縦配筋67を長く形成し、この縦配筋67は2列目、3列目と外側に向って段々と短い階段形状にセットされる。符号68はマット差筋63の横配筋である。
これに対し、建設現場に吊り下げられるRCCV内側配筋11の各列の縦配筋57,57,57は架構55の階段形状により一番内側の1列目の縦配筋57が長く、2列目、3列目と外側に向って段々と短い形状にセットされている。
しかして、原子炉建屋マット4からのRCCV内側マット差筋63とRCCV内側配筋11の取合いは、図4に示すように取合い配筋70を用いて行なわれる。
図4(A)に示すように、まず、一番内側の1列目(第1段)に取合い配筋70を設ける。1列目の取合い配筋70は縦配筋71と横配筋72とを組立て構成されるが、初めに、原子炉建屋マット4の既設マット差筋63と吊り下ろされたRCCV内側配筋11の間隔分に相当する1列目の縦配筋71を挿入し、配筋継手手段である配筋カプラ73を用いて機械継手あるいはグラウト継手によりRCCV内側マット差筋63とRCCV内側配筋11の縦配筋57,67同士を順次連絡する。RCCV内側マット差筋63とRCCV内側配筋11を取合い配筋70の縦配筋71を用いて配筋カプラ73で順次接続して取合部が連結される。1列目の取合い配筋70の縦配筋71と、配筋カプラ73とを用いてRCCV内側マット差筋63とRCCV内側配筋63の1列目の縦配筋同士を連結した後に、取合い配筋70の縦配筋71に横配筋72を取り付けて一体化し、取合い配筋70が組み立てられる。
1列目の取合い配筋70で1列目のRCCV内側マット差筋63とRCCV内側配筋11とを連結させた後、図4(B)に示すように、2列目および3列目の取合い配筋70,70を1列目と同様の接続手順により取り付け、各列の各取合い配筋70で各列のRCCV内側マット差筋63とRCCV内側配筋11とを順次連結していく。
取合部の取合い配筋70,70,70は1列目から2列目、3列目と外側(半径方向外方)に向って徐々に拡がっているため、各列の取合い配筋70の縦配筋71の挿入、配筋カプラ73による締付け、あるいはグラウトの注入および横配筋72の取付けが、他の列に支障を与えることなく、円滑かつスムーズに施工を実施することができる。
また、原子炉建屋マット4上に揚重機65を用いてRCCVライナ10およびRCCV内側配筋11を吊り込んだ後、RCCV内側配筋11は揚重機65の吊り天秤66により数日間吊設状態に保たれ、この吊設状態の中でRCCV内側マット差筋63とRCCV内側配筋11との取合いが行なわれる。
RCCV内側配筋11を原子炉建屋マット4からのRCCV内側マット差筋63に取合い配筋70を用いて連結し、取合いが完了した後、RCCV内側配筋11の外側にRCCV外側配筋12取付用の作業用足場75を組み立て、RCCV外側配筋作業に着手する。
RCCV外側配筋12は、RCCV内側配筋11の外側に作業用足場75を利用してRCCV内側配筋11と同様に配筋され、建設現場内で縦配筋76と横配筋77とから筒状体配筋79,80,81が組み立てられて同心円状に配設され、RCCV外側配筋12の配筋作業が終了する。なお、RCCV外側配筋にも予め地上にて一体的に組み立て、揚重機65を用いて建設現場に吊り込み、RCCV内側配筋11の外側に吊り下ろして据え付けるようにしてもよい。
RCCV外側配筋作業が終了すると、RCCV外側配筋12の外側に外側型枠82が取り付けられ、この外側型枠82とRCCVライナ10の圧力抑制室ライナ16とで囲まれた空間内にコンクリートを打設する。その際、RCCVライナ10は円筒部ライナである圧力抑制室ライナ16自体が内側型枠を構成している。コンクリートを打設していくと、圧力抑制室ライナ16はカットティ材13の補助を受けてRCCV内側配筋11やRCCV外側配筋12と一体化され、補強される。
また、RCCV外側配筋12の配筋作業やコンクリート打設作業と並行して、原子炉建屋1の原子炉建屋マット4上に原子炉圧力容器支持ペデスタル5が設置される。この支持ペデスタル5は別途工場あるいは建設現場近傍の地上(定盤)上で少なくともペデスタル上段5aおよび下段5bに分けられて地組みされ、原子炉建屋1内に搬入されて据付固定される。
ペデスタル上段5aは図6に後述するようにダイアフラムフロアライナモジュール(以下、DFライナモジュールという。)85と一体的に組み立てられる。DFライナモジュール85はダイアフラムフロア8を構成するディスク状ダイアフラムフロア配筋体86とシールプレート30、内蔵支持構造体87およびダイアフラムライナ17とが一体的に組み立てられ、一体構造物に構成される。このDFライナモジュール85がペデスタル下段5bとRCCVライナ10の圧力抑制室(サプレッションチャンバ)ライナ16上に設置され、据え付けられる。DFライナモジュール85は内周側にペデスタル上段5aが一体に備えられ、このペデスタル上段5aがRPV支持ペデスタル5のペデスタル下段5b上に設置される。内蔵支持構造体87は強度部材である多数の内蔵支持構造材88を多数放射状に配列して構成され、DF配筋体86は放射配筋89aと円周配筋89bを組み合せたものである。
圧力抑制室ライナ16上に設置されるDFライナモジュール85はそのリング状のダイアフラムライナ17が全周溶接にて固着される。このダイアフラムライナ17上にRCCVライナ10のライナ2段目としてのドライウェルライナ27が全周溶接にて固着される。ドライウェルライナ27はDFライナモジュール85のダイアフラムライナ17に全周に亘って内周側および外周側から溶着され、固定される。
RCCVライナ10のライナ2段目としての円筒部ライナであるドライウェルライナ27およびそのライナ外側のRCCV内側上部配筋としてのドライウェル内側配筋90は、図1および図2に示すRCCVライナ10およびRCCV内側配筋11と同じ構造を有し、図1および図2に示すものと同様に工場内あるいは建設現場近傍の地上(ヤード定盤)にて組み立てられる。組み立てられたドライウェルライナ27およびドライウェル内側配筋90を図3に示す揚重機65の吊り天秤66にて吊設し、原子炉建屋1のダイアフラムフロア8上に吊り下ろし、吊り天秤66により吊設状態に保ってドライウェルライナ27をダイアフラムライナ17に全周溶接する。
ドライウェルライナ27のダイアフラムライナ17への全周溶接は、原子力関係の法律の定めにより内周側と外周側の双方から行なわれるが、いずれか一方側からのみでも強度的には充分である。ドライウェルライナ27の溶接作業が完了するまでは、ダイアフラムフロア8の下まで立ち上がっているRCCV配筋の取合い作業を実施できない。ドライウェルライナ27の溶接やドライウェル内側配筋90の取合い作業に数十日間を要するので、数十日間も揚重機65でドライウェル内側配筋90を吊設状態に保つことは、非現実的である。
このため、図5に示すように、仮設支柱91を用意し、この仮設支柱91にドライウェル内側配筋90の吊設を肩代りさせる。仮設支柱91への肩代りは、ドライウェルライナ27とRCCV内側上部配筋であるドライウェル内側配筋90を吊り下ろした後、直ちにドライウェル内側配筋90を仮設支柱91側へ吊り換えることにより行なわれる。
仮設支柱91は、ダイアフラムフロア8の下まで施工が終っているRCCV内側配筋11と外側配筋12の間のコンクリート面から立設する。仮設支柱91は周方向に適当な間隔をおいて複数本、例えば20本程度立設される。仮設支柱91は頂部の吊設アーム92から吊設されるドライウェルライナ27の溶接作業やドライウェル内側配筋90の取合い作業に支障がない位置に設けられる。
ドライウェルライナ27の溶接作業完了後、RCCV内側上部配筋であるドライウェル内側配筋90とRCCV内側配筋である既設のRCCV内側下部配筋11との取合い作業を実施する。この場合、取合い配筋は図4に示された取合い配筋70と同様に段状に形成しておき、内側マット差筋63と圧力抑制室ライナ16のRCCV内側配筋11の取合い作業と全く同様の手順で作業が実施される。ドライウェル内側配筋90の取合い配筋作業完了後に、RCCV外側上部配筋であるドライウェル外側配筋93間の作業用足場(図示せず)を組み立てる。この作業用足場を組み立ててRCCV外側配筋作業に着手し、ドライウェル内側配筋90の外周側にドライウェル外側配筋93を組み立てる。その際、仮設支柱91は、RCCV外側配筋作業前に撤去するが、この外側配筋作業に支障がなければそのまま存置してコンクリート内に埋設してもよい。
このように、図2ないし図5に示されたものは、予め工場あるいは建設現場近くの地上(ヤード定盤上)にてRCCVライナ10の外側にRCCV内側配筋11を組み立てて一体構造物とし、この組立後に、RCCVライナ10(ドライウェルライナ27を含む。)とその内側配筋11(ドライウェル内側配筋90を含む。)とを同時に吊設して建設現場内に吊り込んで据え付ける。このRCCVライナ10とRCCV内側配筋11との据付方法は、RCCVライナ10を座屈させることなく、RCCV内側配筋11を吊り込むことが可能となる。このため、建設現場内でRCCV内側配筋作業用の足場の組立やRCCV内側配筋作業をなくすことができ、その分だけ、建設工程の大幅な短縮を図ることができる。
また、吊り下ろしたRCCV内側配筋11と建設現場内のRCCV内側配筋11(圧力抑制室ライナ16の場合は差筋63、ドライウェルライナ27の場合はダイアフラムフロア8下まで施工されたRCCV内側配筋11)の取合い形状を各段毎に長さを違えて段々に拡がる形で機械継手もしくはグラウト継手を実施することで容易に取合い配筋作業を実施することが可能となる。
さらに、ドライウェルライナ27とRCCV内側上部配筋であるドライウェル内側配筋90を建設現場内に吊り下ろし、吊り下ろしたRCCV内側上部配筋90をドライウェルライナ27の溶接期間中に、下部のRCCVコンクリート断面より仮設支柱91を設置して支持する工法は、吊り込んだRCCV内側上部配筋90を仮設支柱91に吊り換えた後、直ちに揚重機65を切り離すことができる。また、吊り込んだRCCV内側上部配筋90が支障を受けることなく、ドライウェルライナ27の溶接および配筋の取合い作業が実施可能となる。
(2)RCCVダイアフラム部の支持構造
図6および図7は、RCCVダイアフラム部を構成するダイアフラムフロアライナモジュール(DFライナモジュール)85を示すものである。このDFライナモジュール85は、工場あるいは建設現場近傍の地上、例えばヤード定盤上で組み立てられる。ヤード定盤は例えば、ダイアフラムライナモジュール85用定盤とRCCVライナ10およびRCCV内側配筋11用定盤および原子炉圧力容器支持ペデスタル5用定盤のように複数種類用意される。
DFライナモジュール85は、ダイアフラムライナ17とダイアフラムフロア配筋体86とシールプレート30および内蔵支持構造体87とを一体構造に組み立てて構成される。ダイアフラムフロア配筋体86は図6および図7に示すように、放射配筋89aと円周配筋89bとを組み合せたもので、ダイアフラムフロア配筋体86の内周側に原子炉圧力容器(RPV)支持ペデスタル5のペデスタル上段5aが一体に設けられる。
RPV支持ペデスタル5のペデスタル上段5aは円筒状のペデスタル下段5b上に設置され、ペデスタル下段5bとの間に外周支持段差95が形成される。この支持段差95上に、DFライナモジュール85の内周部が支持される。
RPV支持ペデスタル5の外周支持段差95上に仮設支持手段として撤去可能な仮設支柱96が立設される。この仮設支柱96はRPV支持ペデスタル5上面に設置され、DFライナモジュール85の内蔵支持構造体87の内端部を支持するようになっている。内蔵支持構造体86は多数の内蔵支持構造材88を放射状に配列して構成され、各内蔵支持構造材88の外端部はダイアフラムライナ17のシアープレート内側97に結合されて支持される。ダイアフラムライナ17のシアープレート材98はライナを放射状に貫通して両側に突出し、シアープレート内側96とシアープレート外側99が形成される。ダイアフラムライナ17のシアープレート外側99と圧力抑制室ライナ16のカットティ材13との間に仮設材またはジャッキ等の仮設支持手段100が挿入されてシアープレート材98やダイアフラムライナ17の変形や屈曲が防止される。
一方、DFライナモジュール85の内蔵支持構造材88は、H型鋼あるいはI型鋼等の鋼材で形成され、鋼板製のシールプレート30をダイアフラムフロア配筋体86の下方で懸垂支持し、RCCVダイアフラム部の荷重を全て支持する構造材である。DFライナモジュール85の吊込み時には、揚重機65で内蔵支持構造体87を吊ってRCCVダイアフラム部を建設現場内に吊り込むことになる。
図7(A)および(B)は、RCCVダイアフラム部を建設現場内に吊り下ろした部分的な断面図である。地上にて地組みされて一体化された一体構造物のDFライナモジュール85は、圧力抑制室ライナ16およびRPV支持ペデスタル5が所定位置、例えば、DFライナモジュール85下まで据付けが完了した段階で吊り込まれる。DFライナモジュール85の吊込み時は、DFライナモジュール85の内蔵支持構造体87を吊設してRCCVダイアフラム部を建設現場に吊り込むことになる。
建設現場に吊り込まれたDFライナモジュール85は、RPV支持ペデスタル5側が仮設支柱96により内蔵支持構造材88を支持し、ダイアフラムライナ17側は内蔵支持構造材88をシアープレート内側96に結合させることにより支持される。
このRCCVダイアフラム部の支持構造により、一体構造物のDFライナモジュール85の荷重を圧力抑制室ライナ16に鉛直に伝えることができる。例えば、圧力抑制室ライナ16に内側ブラケットを取り付けて仮設支柱を立て、この仮設支柱にRCCVダイアフラム部を支持させると、RCCVダイアフラム部のモーメント荷重が大きい。これに対してRCVライナ10自体が薄肉で剛性強度が小さいため、RCCVダイアフラム部の大きなモーメント荷重を受けてRCCVライナ10およびその軸方向構造材としてのカットティ材13が座屈してしまう虞がある。しかし、図7(A)および(B)に示すRCCVダイアフラム部の荷重支持構造では、ダイアフラム部荷重を圧力抑制室ライナ16に鉛直に伝えるため、RCCVライナ10やカットティ材13の座屈や変形が生じるのを有効的に防止できる。
RCCVダイアフラム部がRPV支持ペデスタル5とRCCVライナ10の圧力抑制室ライナ16に支持された後、圧力抑制室ライナ16とダイアフラムライナ17の溶接を実施する。ダイアフラムライナ17の溶接は最初に内側から実施し、内側溶接が完了してRCCVダイアフラム部の荷重がダイアフラムライナ17を通して鉛直に圧力抑制室ライナ16に伝達できるようになった後、圧力抑制室ライナ16のカットティ材13とダイアフラムライナ17のシアープレート材98との間に挿入された仮設材またはジャッキ等を取り外し、外側溶接を全周に亘って実施する。
図6および図7に示されたRCCVダイアフラム部の支持構造においては、予め地上にてダイアフラムライナ17とダイアフラムフロア配筋体86とシールプレート30および内側支持構造体87を一体構造物のモジュール構造に組み立ててDFライナモジュール85を地組みする。地組みされたDFライナモジュール85ははぼ1000トン程度あり、大型の揚重機65を用いて一体構造物のまま吊設し建設現場に吊り込まれる。
DFライナモジュール85はその吊込み荷重を圧力抑制室ライナ16のカットティ材13およびシアープレート材98にて支持させる。この支持構造により、DFライナモジュール85の荷重を圧力抑制室16に鉛直方向に作用させることができ、圧力抑制室ライナ16を座屈させることなく、一体構造のまま吊り込むことが可能となる。作業環境の悪い建設現場でのRCCVダイアフラム部の組立作業をなくすことができ、建設工程の大幅短縮を図ることが可能となる。なお、符号101はダイアフラムフロア配筋体86の放射配筋89Aをダイアフラムライナ17に固定される配筋取付手段としての配筋カプラである。
DFライナモジュール85を吊り込んで据え付けをした後、コンクリート打設工事を実施し、ダイアフラムフロア8を完成させる。打設されたコンクリートが強度発現した後、上部のドライウェル28内へ内部構造物の搬入を開始するとともに、DF仮設支柱96の撤去を実施する。
ドライウェル28の内部構造物の取込みが完了し、またRCCV2の円筒部6のコンクリート打設が頂部近くまで達した段階で、図9および図10に示すように、RCCVトップスラブ7の施工を開始する。トップスラブ7は鋼板のトップスラブライナ37、RCCV内部フランジ38、トップスラブ配筋体102、および内蔵支持構造体103を一体に組み立てたトップスラブモジュール104を備える。トップスラブ7は、RCCV円筒部6から片持ち支持される構造となっている。
トップスラブ7の施工の前に、上部のドライウェル28内に原子炉遮蔽壁30を据え付ける。
(3)RCCVダイアフラム部の支持構造の変形例
図8(A)および(B)はRCCVダイアフラム部の支持構造の変形例を示すものである。このRCCVダイアフラム部の支持構造は、RCCVダイアフラム部の内部支持構造材の代りに外部支持構造体105を採用したものである。
RCCVダイアフラム部はダイアフラムフロアライナモジュール(DFライナモジュール)85Aが予め工場あるいは建設現場近くの地上、例えばヤード定盤上で組み立てられる。DFライナモジュール85Aはダイアフラムライナ17とダイアフラムフロア配筋体86とシールプレート30および外部支持構造体105とを一体構造物のモジュール構造に地上にて組み立てたものである。ダイアフラムフロア配筋体86は放射配筋89aと円周配筋89bとをディスク状に組み立てたもので、多層構造に構成される。
ダイアフラムフロア配筋体86の放射配筋89aの外端部はリング状あるいはスリーブ状のダイアフラムライナ17に配筋取付手段としての配筋カプラ101により連結され一体化される。ダイアフラムフロア配筋体86のうち最上層と最下層に位置する放射配筋89aは内端部側が相互に連結されてコ字状に形成され、補強される。
ディスク上ダイアフラムフロア配筋体86の下方に鋼板製のシールプレート30が介装され、このシールプレート30は外部支持構造体105の上面に支持される。外部支持構造体105は放射状に配列された多数の外部支持構造材106を有し、この構造材106はH型鋼やI型鋼等の型鋼材で形成される。外部支持構造材105の外端部はガセットプレート107等の連結手段でダイアフラムライナ17に結合され、その内端部は原子炉圧力容器支持ペデスタル5の上部外周部に突設された取付ブラケット108上に支持可能に構成される。
また、DFライナモジュール85Aの内周側には原子炉圧力容器支持ペデスタル5のペデスタル上段5aが一体に備えられ、このペデスタル上段5aはペデスタル下段5b上に設置されて原子炉圧力容器支持ペデスタル5が構成される。
DFライナモジュール85Aは作業環境の良い工場あるいは建設現場近くの地上にてディスク状の一体構造物に地組みされ、この地組みされたDFライナモジュール85Aは例えば1000トン程度の重量があり、大型揚重機65の吊り天秤66に吊設されて建設現場内に搬入される。図8(A)および(B)はDFライナモジュール85Aを建設現場内に吊り下ろした断面図であり、DFライナモジュール85Aは外部支持構造材106が吊設されて建設現場内に吊り込まれる。外部支持構造材106はその上面にシールプレート30を支持してRCCVダイアフラム部の全荷重を支持するようになっている。
外部支持構造材106が吊設されて建設現場内に吊り込まれたDFライナモジュール85Aは、RPV支持ペデスタル5側がペデスタル外周に突出する取付ブラケット108に支持され、ダイアフラムライナ17側はカットティ材13で補強された圧力抑制室ライナ16上にダイアフラムライナ17を介して支持される。
ダイアフラムライナ17側は図8(B)に拡大図で示すように、リングあるいはスリーブ状のダイアフラムライナ17にシアープレート材98が設けられて補強される。ダイアフラムライナ17のシアープレート外側99と圧力抑制室ライナ16のカットティ材13との間に仮設材あるいはジャッキ等の仮設支持手段100が挿入される。ダイアフラムライナ17はシアープレート材98を介してカットティ材13上に仮支持される。
このとき、外部支持構造材106の外端部はダイアフラムライナ17にガセットプレート107を介して結合され、一体化されている。したがって、吊り込まれたDFライナモジュール85Aの外周側は揚重機65にて吊設された状態で、ダイアフラムライナ17、シアープレート材98、仮設材あるいはジャッキ等の仮設支持手段100により圧力抑制室ライナ16上に仮支持される。
DFライナモジュール85Aを圧力抑制室ライナ16に仮支持した状態でダイアフラムライナ17を圧力抑制室ライナ16に全周溶接にて固着する。初めにダイアフラムライナ17を圧力抑制室ライナ16に内側から溶接し、この内側溶接完了後、RCCVダイアフラム部の荷重がダイアフラムライナ17を通して圧力抑制室ライナ16に鉛直に伝達される。RCCVダイアフラム部の荷重を鉛直方向に伝達できるようになった後、圧力抑制室ライナ16のカットティ材13上に仮設された仮設材あるいはジャッキ等の仮設支持手段100を取り外し、撤去する。この撤去後にダイアフラムライナ17と圧力抑制室ライナ16を外側から全周に亘って溶接し、DFライナモジュール85Aを原子炉圧力容器支持ペデスタル5と圧力抑制室ライナ16上に支持させ、据え付ける。
DFライナモジュール85Aを所要位置に据え付けた後、DFライナモジュール85A上にコンクリートを打設してRCCVダイアフラム部を構成する。
この変形例に示されたRCCVダイアフラム部の支持構造は、図6および図7に示されたRCCVダイアフラム部の支持構造と作用効果を同じくし、DFライナモジュール85Aを圧力抑制室ライナ16に鉛直方向に支持させることができ、圧力抑制室ライナ16を座屈させたり、変形させることなく吊り込むことができる。作業環境の悪い建設現場でのRCCVダイアフラム部の組立作業をなくすことができ、建設方法の大幅短縮を図ることができる。
(4)原子炉格納容器のトップスラブ部
原子炉格納容器(RCCV)2の円筒壁6の頂部に設置されるトップスラブモジュール104は図9に示すように構成され、工場あるいは建設現場近くの地上、例えばヤード定盤上で予め一体的に組み立てられる。トップスラブモジュール104は、図9に示すように、リング状あるいはスリーブ状のRCCV下部フランジ38と、ディスク状の鋼板製トップスラブライナ37と、同じくディスク状のトップスラブ配筋体102と、トップスラブ上面躯体差筋110と、内蔵支持構造体103とをディスク状あるいは円盤状に一体的に組み立てた一体構造物である。
内蔵支持構造体103は、図9、図10および図11に示すように、H型鋼材あるいはI型鋼材等の構造用型鋼材である内蔵支持構造材111を多数本放射状に配列して構成したものであり、各内蔵用支持構造材111の内側端をRCCV下部フランジ38と結合し、一体化させる。
RCCV下部フランジ38は図11に示すように、原子炉遮蔽壁40の頂部に設置された撤去可能な仮設支持手段としての仮設支持材112上に設けられ、このRCCV下部フランジ38の下端外周フランジ部38aは鋼板製のトップスラブライナ37の内周側に溶着にて固定され、一体化される。トップスラブライナ37の内周端部あるいはRCCV下部フランジ38の下端外周フランジ部38a上に支柱113が周方向に沿って多数本立設され、この支柱113で内蔵支持構造材111の内側端部を支持している。
内蔵支持構造材111は、外側端をRCCV円筒部(円筒壁)6まで放射状に延設される一方、トップスラブライナ37を懸垂支持している。内蔵支持構造材111はトップスラブ部の全荷重を支持する構造材である。放射状に配列された内蔵支持構造材111を図9に示すように同心円状の円周配筋114で相互に連結し、物理的・機械的強度を向上させてもよい。円周配筋114は円周方向に延設され、各内蔵支持構造材111をクモの巣状に組み立てている。
また、トップスラブ配筋体102は例えば38mmφのトップスラブ直交配筋で構成され、縦および横配筋を直交交差させて組み立てられる。トップスラブ配筋体102は縦および横配筋に代えて放射配筋と円周配筋とを交差させることにより構成してもよい。トップスラブ配筋体102は多層構造、例えば3層構造のトップスラブ直交配筋が内蔵支持構造材111の上下両側に設けられる。
トップスラブ配筋体102の最上層および最下層のトップスラブ直交配筋の内周側は、図10(B)および図11に示すように、コ字状の連結配筋であるループ状最外筋115により配筋継手手段としての配筋カプラ116により連結され、一体化される。その際、直交配筋の最外筋115が内蔵支持構造体103と干渉しないように屈曲され、内蔵支持構造材111を迂回するように設けられている。
すなわち、トップスラブ部の原子炉遮蔽壁40側支持端部の配筋形状は、図10(B)および図11に示すように、内蔵支持構造材111の内側端部とトップスラブ直交配筋102のループ状最外筋115が干渉しないように形成される。このため、内蔵支持構造材111の内側端付近に配筋継手である配筋カプラ116を設け、この配筋カプラ116を用いてトップスラブ直交配筋102と最外筋115とが内蔵支持構造材111に干渉せず、迂回するように容易に加工して取り付けられる。これにより、内蔵支持構造材111を原子炉遮蔽壁40まで内側に延設し、原子炉遮蔽壁40上に支持させることができる。原子炉遮蔽壁40の上面に設置される仮設支柱はトップスラブ部のコンクリート打設後、コンクリートの強度発現となって撤去される。
一方、地上にて地組みされ一体化されたトップスラブモジュール104は約1000トン近くに達し、大型揚重機65を用いて吊設され、建設現場内に吊り込まれる。この吊込み時には、トップスラブ取合い部まで原子炉遮蔽壁40およびRCCV円筒部6の配筋を実施し、コンクリート打設がトップスラブ部直下まで完了した段階で吊り込まれる。
図10および図11はトップスラブモジュール104を建設現場内に吊り下ろした状態を示す平面図および断面図である。このトップスラブモジュール104の吊込み前に、トップスラブモジュール104支持用として、原子炉遮蔽壁40の上面に仮設支持材112を、RCCV円筒部6のコンクリート完了面に仮設支柱117をそれぞれ取り付ける。建設現場に吊り込まれるトップスラブモジュール104は、内蔵支持構造材111の内端部および外端部を仮設支持材112および仮設支柱117で外周側と内周側が支持される。
吊り下ろされたトップスラブモジュール104のトップスラブ配筋は、RCCV円筒部(円筒壁)6の縦配筋57と干渉しないように設けられる。このため、トップスラブモジュール104のトップスラブ直交配筋102とRCCV円筒部6の縦配筋57との取合い部の形状は、図10(C)および図11に示すように構成される。
トップスラブモジュール104のトップスラブ直交配筋102にはRCCV円筒部6の縦配筋57の取合い部近傍に配筋継手手段である配筋カプラ119を設け、外周側の最外配筋119をくの字状に折曲させて放射状に延設し、RCCV円筒部6の縦配筋57と干渉しないように設置する。最外配筋119をトップスラブ直交配筋102からくの字状に折曲させて放射状に延設することにより、トップスラブモジュール104の吊下ろし時にRCCV円筒部6の縦配筋57との干渉を避けることができ、スムーズに吊り下ろしてRCCV円筒部6上に設置できる。
図9ないし図11に示された原子炉格納容器2のトップスラブ7においては、トップスラブモジュール104を工場あるいは建設現場近くの地上にて組み立てられる。予め地上にて組み立てられたトップスラブモジュール104は大型揚重機にて内蔵支持構造材111を建設現場に搬送され、建設現場内に吊り込まれる。トップスラブモジュール104を建設現場に吊り込ませる際に、トップスラブモジュール104のトップスラブ直交配筋102がRCCV円筒部6の縦配筋57と干渉しないように、トップスラブ直交配筋102の最外配筋119が屈曲形成されて、予め放射状にセットされる。トップスラブ直交配筋102には、RCCV円筒部6の縦配筋57との取合い部近傍に配筋継手手段である配筋カプラ118を設け、この配筋カプラ118を介してトップスラブ直交配筋102に最外配筋119を結合させる。
最外配筋119は予めくの字状に折曲されており、トップスラブ直交配筋102の最外配筋119が、図10(C)に示すように、RCCV円筒部5の縦配筋57と干渉しないように、縦配筋57間に吊り込まれてセットされる。
トップスラブ直交配筋102の最外配筋119を放射状に折曲させることにより、RCCV円筒部6の縦配筋57,57をトップスラブ取合い部まで先行して立ち上げておいても、トップスラブモジュール104をRCCV円筒部6の縦配筋57への干渉を確実に防止してスムーズに吊り下ろすことができる。
トップスラブモジュール104の吊下ろしにより、RCCV円筒部6上での取合い配筋作業をなくすことができる。従来はRCCV円筒部6の縦配筋57をトップスラブ7下で止めておき、トップスラブ部の吊込み完了後にRCCV円筒部6の縦配筋57とトップスラブ部の定着部の取合い配筋作業が発生している。この取合い配筋作業をなくすことで、トップスラブ部の施工工程を大幅に短縮することができる。
また、トップスラブモジュール104は半径方向内方側の最外配筋115を内蔵支持構造材111の内側端部と干渉しないように、トップスラブ直交配筋102の最外配筋115を予め屈曲させる。この場合、トップスラブ配筋体102の組立配筋作業が容易に行なわれ得るように、内蔵支持構造材111の内側端部付近に配筋継手手段である配筋カプラ116を設ける。この配筋カプラ116により、内蔵支持構造材111に干渉しないように加工した最外配筋115を着脱自在に予め地上にて円滑かつスムーズに取り付けることができ、原子炉遮蔽壁40の上部外側面に取着ブラケットを取り付ける必要がない。
従来は、原子炉遮蔽壁40の外側面に取着ブラケットを取り付け、この取着ブラケット上に内蔵支持構造材の内側端部を支持させ、内蔵支持構造材を最外配筋の手前で終端させ、内蔵支持構造材と最外配筋との干渉を防止している。しかしながら、従来のトップスラブ部の支持構造では、内蔵支持構造材を支持する取着ブラケットが必要となる。その上、取着ブラケットはトップスラブ部の施工が完了し、コンクリートの強度発現後には取り外されるが、この大形状の取着ブラケットの原子炉遮蔽壁40への取付けや取外しが面倒で長時間を要する一方、取り外された取着ブラケットの撤去作業が困難であった。
これに対し、図9ないし図11に示すように、建設現場に吊り込まれたトップスラブモジュール104は内蔵支持構造材111の内側端部を原子炉遮蔽壁40上に仮設支持材112を介して支持し、内蔵支持構造材111の外側端部はRCCV円筒部6に立設された仮設支柱117に支持され、内蔵支持構造材111は外周側と内周側とが安定的に支持される。トップスラブ部を構成するトップスラブモジュール104の全荷重を支持する各内蔵支持構造材111が、トップスラブモジュール104の吊込みにより、原子炉遮蔽壁40およびRCCV円筒部6上に仮設支持材112および仮設支柱117を介して安定的に支持される。
トップスラブモジュール104の内蔵支持構造材111が原子炉遮蔽壁40とRCCV円筒部6に支持された状態でトップスラブライナ37を円筒部ライナ10の頂部に内側から全周溶接して固着する。この固着後にコンクリートが打設され、RCCVトップスラブ7が形成される。
RCCVトップスラブ7は打設されたコンクリートによる強度発現後に、原子炉遮蔽壁40上の仮設支持材112が取り外され、撤去される。RCCV円筒部6上の仮設支柱117はコンクリート打設時にRCCV円筒部6の上部内に埋設され、そのまま残される。その際、仮設支持材112は原子炉遮蔽壁40上に設置されているだけであるので、仮設支持材112の撤去作業は容易になる。
(5)原子炉格納容器のトップスラブ部の変形例
図12は原子炉格納容器2のトップスラブ部の変形例を示す拡大平面図である。
この変形例に示された原子炉格納容器(RCCV)2のトップスラブ部は、トップスラブモジュール104Aの原子炉遮蔽壁40側を改良したものである。トップスラブモジュール104Aは工場あるいは建設現場近くの地上にて予め地組みされることは、図9ないし図11に示されるトップスラブモジュール104と同様であり、異ならない。
図12に示されたトップスラブモジュール104Aは、トップスラブ最外配筋のループ状配筋と内蔵支持構造材111の内側端部が干渉しないように、内蔵支持構造材111の内側端部を曲げ加工し、曲げ加工された内蔵支持構造材111の内側端部を、トップスラブ最外配筋を迂回させてRCCV下部フランジ38に結合させ、固着したものである。
他の構成および作用は図9ないし図11に示されたRCCVトップスラブ部と異ならないので説明を省略する。
(6)貫通ペネトレーションおよびハッチの取付構造
図13および図14は、RCCVライナ10に取り付けられる貫通ペネトレーション50およびハッチ51,52の取付構造を示す図である。RCCVライナ10には図2に示すように、機器搬出入用ハッチ51、人員アクセス用の出入口用ハッチ52および配管、電気ケーブル、計装配管等を通す貫通ペネトレーション50が取り付けられている。
RCCVライナ10は工場あるいは建設現場近くの地上にて溶接にて一体的に組み立てられ、円筒状あるいはスリーブ状に構成される。このRCCVライナ10に取り付けられる貫通ペネトレーション50やハッチ51,52は、建設現場内に吊り込まれるまでは、仮設斜材等の補助材でRCCVライナ10に仮支持される。建設現場へのRCCVライナ10の吊込みが完了した後には、RCCV外部の原子炉建屋1から延びる先行鉄骨1aにより、鋼材120、ワイヤ121等を用いて貫通ペネトレーション50およびハッチ51,52を仮支持し、仮設斜材等を撤去する。
図13および図14はRCCVライナ10に取り付けられる貫通ペネトレーション50およびハッチ51,52を、原子炉建屋1の先行鉄骨1aから支持させた支持状態を示す図である。建設現場である原子炉建屋1内に吊り込まれたRCCVライナ10は貫通ペネトレーション50やハッチ51,52を原子炉建屋1の先行鉄骨1aに仮支持させる。原子炉建屋1の先行鉄骨1aに仮支持させることにより、鋼材120やワイヤ121がRCCV配筋作業とは干渉が生じるのを防止でき、工事の錯綜を削減することができる。
従来は、RCCVライナ10に取り付けられる貫通ペネトレーションやハッチに仮設部材20を取り付ける。この仮設部材20はRCCV配筋作業を開始した段階で、RCCV配筋作業と干渉する仮設部材を、干渉させないように逐一付け換えていた。
これに対し、図13および図14に示すように、RCCVライナ10に取り付けられた貫通ペネトレーション50やハッチ51,52の仮支持を、RCVライナ10を原子炉建屋1内に吊り込み、この吊込み完了後に仮設部材20を撤去し、貫通ペネトレーション50やハッチ51,52を原子炉建屋1の先行鉄骨1aから垂下される鋼材120やワイヤ121等で仮支持することで、RCCV配筋作業との干渉を有効的に、かつ未然に防止でき、工事の錯綜を削減することができる。
(7)原子炉格納容器の建設工法
原子炉建屋1に格納される鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)2は、図15(A)〜(H)に示す手順で建設される。
初めに、原子炉建屋1の建設現場に図15(A)に示すように、原子炉建屋マット4を敷設し、この原子炉建屋マット4からマット差筋63を円周方向に突出させる。マット差筋63は図15(A)および(B)に示すように、内側マット差筋63aと外側マット差筋63bとから構成される。内側マット差筋63aおよび外側マット差筋63bは、内側と外側の相互間で、例えば600mm〜700mmの間隔を有してそれぞれ複数列ずつ、例えば3列ずつ同心円状に配列され、半径方向外方に向って下り階段となるように階段状に突出している。
マット差筋63を植設した原子炉建屋1の原子炉建屋マット4上に、図15(B)に示すように、RCCVライナ(ライナ1段目の圧力抑制室ライナ16)10とRCCV内側配筋11が吊り込まれ。吊り込まれたRCCVライナ10は原子炉建屋マット4上に設置される一方、RCCV内側配筋11は図4(A)および(B)に示すように、取合い配筋70および配筋継手手段としての配筋カプラ73を介して内側マット差筋63aに接続される。内側マット差筋63aには、初めにRCCVライナ10の第1段である1列目が全周に亘って接合され、取り合される。1列目の取合いが終了すると、RCCV内側配筋11の2列目、続いて3列目が同様にして取合い配筋70を用いて接合される。
RCCV内側配筋11を内側マット差筋63aに接合させる際、内側第1段である1列目の接合が終了すると、2列目、3列目が順次接合される。しかも、2列目や3列目はRCCV内側配筋11と内側マット差筋63aとの距離が1列目より階段状に大きく開口する構成となっているので、RCCV内側配筋11と内側マット差筋63aとの取合い配筋作業を円滑かつスムーズに行なうことができる。
この場合、RCCV内側配筋11およびRCCVライナ(ライナ1段目の圧力抑制室ライナ16)10は作業環境の良い工場あるいは現場近くの地上、例えばヤード定盤上で組み立てられるので、建設現場で作業用足場を組み、RCCV内側配筋11を組み立てることが不要となる。RCCV内側配筋11を組み立てるための配筋作業を建設現場で行なう必要がないので、原子炉建屋1でRCCV内側配筋用の作業用足場を組んだり、組み立てられた作業用足場を解体する作業が不要となる。したがって、RCCV内側配筋11の配筋作業やRCCVライナ10の組立作業を原子炉建屋マット4のマット敷設作業を並行させて効率よく進めることができる。
原子炉建屋マット4上にRCCV10およびRCCV内側配筋11を据え付けた後、図15(C)に示すように、RCCV内側配筋11の外周側に作業用足場75を組み、この作業用足場75を利用してRCCV外側配筋12の配筋作業を行なう。RCCV外側配筋12は原子炉建屋マット4の外側マット差筋63bに接合させることにより行なわれるが、この場合にも、RCCV外側配筋12の配筋作業は1列目の縦・横配筋の配筋作業を行なった後、続けて2列目および3列目の配筋作業を順次行ない、最外周側の配筋作業終了後にRCCV外側配筋12の外側に型枠22を当てがい、図15(D)に示すように、コンクリートを打設する。RCCV外側配筋12もRCCV内側配筋11と同様に予め地上にて組み立てた後、建設現場内に吊り込み、据え付けるようにしてもよい。この場合、建設現場での配筋作業が簡素化される。
このように、RCCV外側配筋12の配筋作業を進めながらコンクリートを打設していき、原子炉格納容器2を順次立ち上げ、積み上げていく。この原子炉格納容器2の立上げと並行して、原子炉圧力容器(RPV)支持ペデスタル5のペデスタル下段5bを大型揚重機65にて吊り込み、原子炉建屋マット4上に据え付ける。このRPV支持ペデスタル5も工場内あるいは建設現場近くの地上にて予め地組みされ、一体に組み立てられる。
原子炉建屋マット4上にRPV支持ペデスタル5のペデスタル下段5bを吊り込み、据え付けた後、図15(E)に示すようにダイアフラムフロア(DF)ライナモジュール85(85A)を大形揚重機65にて吊設し、PRV支持ペデスタル5およびRCCVライナ10の圧力抑制室ライナ16上に吊り下ろし、RPV支持ペデスタル5およびRCCVライナ10上にセットする。
この場合、DFライナモジュール85は作業環境の良い工場内あるいは建設現場の近傍の地上にて一体構造物に組み立てられる。DFライナモジュール85は、図6ないし図7(A)および(B)に示すように、ダイアフラムフロア配筋体86、内蔵支持構造体87およびダイアフラムライナ17を一体化する一方、RPV支持ペデスタル5のペデスタル上段5aをDFライナモジュール85の内周側に組み込んで構成される。DFライナモジュール85は図8に示す構成としてもよい。
DFライナモジュール85は大型の揚重機65に吊設されて建設現場に搬送され、建設現場内に吊り下ろされる。DFライナモジュール85は、図7(A)および(B)に示すように、内蔵支持構造材88の内側端部がRPV支持ペデスタル5の頂部に仮設支柱96を介して支持される。一方、内側支持構造材88の外側端部はシアープレート材98を介してダイアフラムライナ17に結合され、このダイアフラムライナ17をRCCVライナ16に内周側および外周側から全周溶接することにより、RCCVライナ16上に垂直に支持される。この全周溶接時にはDFライナモジュール85は揚重機65によりモジュール荷重が作用しないように、吊設状態に保持され、DFライナモジュール85は揚重機65で支持した状態で行なわれる。全周溶接完了後にDFライナモジュール85は揚重機65から解放され、RPV支持ペデスタル5と圧力抑制室ライナ16により支持される。
このようにして、吊り込まれたDFライナモジュール85がRPV支持ペデスタル5およびRCCVライナ10上に支持された状態でDFライナモジュール85上へコンクリート打設が行なわれる。打設されたコンクリートがコンクリート強度を発現した後、図7(A)および(B)に示される仮設材あるいはジャッキ等の仮設支持手段100が取り外され、撤去される。このようにして、原子炉格納容器2内を上部のドライウェル28と下部の圧力抑制室25に区画するダイアフラムフロア8が形成される。
原子炉格納容器2内にダイアフラムフロア8を形成している間に原子炉格納容器2の円筒部6はコンクリートが打設されてダイアフラムフロア8の下方まで立ち上げられ、図15(F)に示すように、RCCVライナ10の外側に打設されるコンクリート上に仮設支柱91が立設される。仮設支柱91はRCCVライナ10の外周側に周方向に沿って複数本、例えば20本立設され、据え付けられる。
一方、原子炉建屋1内にDFライナモジュール85を吊り込み、このDFライナモジュール85を据え付けてダイアフラムフロア8を形成した後、RCCVライナ(ライナ2段目のドライウェルライナ77)10およびRCCV内側配筋であるドライウェル内側配筋90が大型揚重機65にて吊設されてダイアフラムフロア8上に吊り下ろされる。
吊り下ろされたRCCVライナ10(ドライウェルライナ27)は吊設状態に保たれている間にダイアフラムライナ17と内周側および外周側から全周溶接さ、ドライウェルライナ27はダイアフラムライナ17上に据え付けられ、固着される。一方、ドライウェルライナ27とともに吊り下ろされたドライウェル内側配筋90は、ドライウェルライナ28が外周溶接に移行される前に、揚重機65による支持から仮設支柱91による支持に切り換えられ、複数本の仮設支柱91により支持された状態となる。
ドライウェル内側配筋90を仮設支柱91で支持した状態で既設されたRCCV内側配筋11と図4(A),(B)に示されたものと同様な取合い配筋および配筋継手を利用して相互に連結され、一体化される。ドライウェルライナ27およびドライウェル内側配筋90は、RCCVライナ上段およびRCCV内側上部配筋を構成するものであり、図3に示すように作業環境の良い工場内あるいは建設現場近くの地上(ヤード定盤)上で予め地組みされる。地組みされたドライウェルライナ27およびドライウェル内側配筋90は大型の揚重機65に吊設されて、建設現場に搬送され、建設現場内の所定位置に同時に吊り下ろされる。
原子炉格納容器2の円筒部6上に吊り下ろされ、ドライウェル内側配筋90は図15(G)に示すように、既設のRCCV内側(下部)配筋11と図示しない取合い配筋および配筋継手により接合され、一体化される。RCCV内側上部配筋であるドライウェル内側配筋90を既設のRCCV内側(下部)配筋11に接合した後、ドライウェル内側配筋27の外周側に作業用足場を必要に応じて組み立てて、ドライウェル外側配筋93の配筋作業を行なう。
ドライウェル外側配筋93はRCCV外側上部配筋を構成しており、このドライウェル外側配筋93も縦配筋と横配筋を組み合せて円筒状あるいはスリーブ状に組み立てられる。ドライウェル外側配筋93の配筋作業の進行に伴い、あるいは配筋作業の完了後にドライウェル外側配筋93の外周側に型枠22を当てがい、この型枠22とドライウェルライナ27との間にコンクリートを打設し、原子炉格納容器2の円筒部6を積み上げていく。このとき、ドライウェルライナ27は内周側の型枠22を構成している。
原子炉格納容器2の円筒部6を構築中に、RPV支持ペデスタル5に対応するダイアフラムフロア8上に原子炉遮蔽壁40を立設し、据え付ける。原子炉遮蔽壁40をダイアフラムフロア8上に据え付けて固定した状態で、大型揚重機65を利用して図15(H)に示すように、トップスラブモジュール104を吊り込み、このトップスラブモジュール104を原子炉遮蔽壁40およびRCCV2の仮設支柱117上に支持させる。
トップスラブモジュール104は、図9ないし図11に示すように構成され、トップスラブモジュール104の全荷重を支持する内蔵支持構造材111の内側端部が原子炉遮蔽壁40上に仮設支持材112を介して支持され、その外側端部はRCCV2の円筒部6から立ち上がる仮設支柱117により支持され、内周側と外周側で支持される。トップスラブモジュール104を原子炉遮蔽壁40上およびRCCV2の円筒部6上に支持された状態でコンクリートを打設する。
このコンクリート打設後、コンクリートの強度発現をまって仮設部材117を原子炉遮蔽壁40上から取り除き、撤去する。一方、RCCV2の円筒部6に立設された仮設支柱117はコンクリートの打設により埋設され、円筒部6内に強度部材として残される。
この原子炉格納容器2の建設方法によれば、圧力抑制室ライナ16およびドライウェルライナ27を有するRCCVライナ10、RCCV内側(下部)配筋11および内側上部配筋91を主としたRCCV内側配筋11、ダイアフラムフロアライナモジュール85(85A)、原子炉圧力容器支持ペデスタル5や原子炉遮蔽壁40、トップスラブモジュール104を、いずれも作業環境の良い工場内あるいは原子炉建屋1の建設現場近くの地上にて組み立てることができ、RCCV建設工事において、作業環境の悪い建設現場での作業を大幅に削減し、RCV建築工事の作業の効率化、安全性を確保することができる。また、作業環境の悪い建設現場での作業を大幅に減らすことができ、しかも作業環境の良い工場あるいは建設現場近くの地上での作業は、複数のヤード定盤を用いて原子炉建屋1の建設と並行して同時進展をさせることができる。したがって、RCCV建設工事の大幅な工程短縮を図ることができ、建設期間を例えば140万KW(1400MW)級の原子炉でも1年数ヶ月、例えば1年8ヶ月程度とすることができ、従来より大幅に数ヶ月も短縮させることができる。
また、原子炉格納容器を貫通する貫通ペネトレーションやハッチの支持に関して、本発明に係る原子炉格納容器の建設方法では、鉄筋コンクリート製の原子炉格納容器を構成する円筒部ライナが建設現場にて吊り込まれる際、円筒部ライナに取り付けられた貫通ペネトレーションおよびハッチの支持を原子炉建屋の先行鉄骨からの支持に切り換え、据え付けられた円筒部ライナの貫通ペネトレーションおよびハッチを原子炉建屋の先行鉄骨から支持させる建設方法を採用してもよい。
この原子炉格納容器の建設方法によれば、建設現場の所定位置にRCCVライナの吊り込み後、RCCVライナに取り付けられている貫通ペネトレーションおよびハッチを原子炉建屋の先行鉄骨から支持させることにより、建設現場におけるRCCV配筋作業との干渉を確実かつ有効的に防止し、建設作業の錯綜を削減し、建設作業の効率化、能率化を図ることができる。