JP4351817B2 - 小形遊星歯車減速機 - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、内部に１段以上の遊星歯車機構を備えた小形遊星歯車減速機に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、この種の減速機はモーターと連結することで一体化して使用されるのが一般的であり、この減速機とモーターとを連結する安価な方法としてキー方式が広く採用されてきたが、モーターメーカー各社は安価なモーターを供給するために、モーター軸にキー溝のないストレート軸採用が高まり、このストレート軸に対応してクランプ方式での連結度合いが高まっている。
【０００３】
このクランプ方式は、減速機の入力軸穴にモーター軸を嵌入し、入力軸端に設けたスリ割り部を縮めることによりモーター軸との一体化を図るものであり、精度を維持するために入力軸穴とモーター軸との間に隙間が無く、シリンダとピストンとの関係のように空気が圧縮され嵌入が困難であった。
【０００４】
また、前記の空気が圧縮されるのを防ぐために、入力軸穴内側から外側に空気を逃がすドリル穴を開けることは周知であるが、入力軸外側の部品との設計上の関係で斜めにドリル穴を開けるなど加工工程を増やし、かつ困難な加工をしなければならず、これを解決するには入力軸が長大化することにより、減速機全体が長大化する等の問題点があった。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、小形遊星歯車減速機を長大化させることなく、とりわけ入力軸を長大化させることなく、精度良く安価な方法で入力軸穴へのモーター軸の嵌入を容易にすることを課題とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明の小形遊星歯車減速機は、入力軸に形成された入力軸穴にモーターのモーター軸が嵌入され、ケースの内周面にモーターに取り付けられた該モーターフランジを嵌合して連結固定されたのち、ケースに設けられたクランプ用ボルト挿入窓から入力軸およびモーター軸を固定するためのクランプ用ボルトを挿入し入力軸およびモーター軸が締め付けられ、モーターと連結して一体化され、入力軸穴のモーター軸嵌入部内周に、モーター軸の挿入方向に螺旋状の溝からなる空気抜き溝を形成してなることを特徴とする。
【０００８】
【作用】
本発明に係る小形遊星歯車減速機においては、入力軸穴のモーター軸嵌入部内周に、モーター軸の挿入方向に螺旋状の溝からなる空気抜き溝を形成することにより、モーター軸の嵌入に際して、入力軸穴内部の空気が圧縮されることなく空気抜き溝から抜けつつ容易に嵌入ができ、同軸度も保つことができるとともに、入力軸穴の製作に際し旋盤での荒加工のときに、たとえば、リード約３０ｍｍ／回転、深さ０．２５から０．５ｍｍ程度の溝加工を行うことにより入力軸穴の加工と同時に螺旋状の溝が形成され、さらに仕上げ工程でもカエリの除去を同時に行うことができるので、製作が容易で短時間に行なうことができる。また、その製作コストも安価に行なうことができる。
【００１０】
【実施例】
図１は、本発明の第１実施例を示す小形遊星歯車減速機の断面図である。
【００１１】
図１において、ケース１に２段の遊星歯車機構１１、２１が内装され、第一段の遊星歯車機構１１においてケースに中心軸線上で入力軸４が軸受５を介して支持されると共に入力軸４に連結された太陽歯車軸１２上に太陽歯車１３が設けられ、ケース１内周には内歯歯車１４が入力側ケース２のインロー部２aの内周に沿って挿入されると共にピンまたはキーで固定され、複数の遊星歯車１５が太陽歯車１３と外接噛合すると共に内歯歯車１４と内接噛合するように均等配置され、各遊星歯車１５の遊星ピン１６はキャリア１７に支承され、キャリア１７の出力側フランジ１７ｂには第二段の遊星歯車機構２１の太陽歯車軸２２が中心軸線上で連結される。
【００１２】
次に第二段の遊星歯車機構２１において、第一段の出力側フランジ１７ｂに連結された太陽歯車軸２２上に太陽歯車２３が設けられ、ケース１内周には内歯歯車２４が出力側ケース３のインロー部３a内周に沿って挿入されると共にピンまたはキーで固定され、複数の遊星歯車２５が太陽歯車２３と外接噛合すると共に内歯歯車２４と内接噛合するように均等配置され、各遊星歯車２５の遊星ピン２６はキャリア２７に支承され、キャリア２７の出力側フランジ２７ｂには出力軸６が中心軸線上で連結される。
【００１３】
なお、ケース１への各遊星歯車機構１１、２１の内装に際しては、好ましくは出力側から入力側へと順次行われ、入力軸４の入力軸穴７にモーター軸８を嵌入すると同時にケース１とモーターフランジ９をインローによる連結、固定を行ったのち、ケース１に設けた窓から入力軸４のクランプ用ボルト３３を締め付けることにより、入力軸４に設けられたスリット３４が縮められモーター軸８が入力軸４により中心軸線上でクランプされることで一体化され小形遊星歯車減速機ができあがる。
【００１４】
ところで、前記入力軸穴７とモーター軸８の嵌入部分は、同軸度等の精度確保のため入力軸穴７の内径とモーター軸８の外径に隙間の生じない寸法設定をしているため、嵌入時モーター軸８が入力軸穴７の入り口を塞いだ後は入力軸穴７内の空気は行き場が無く、よってモーター軸８の嵌入が困難なため、入力軸穴７の内周に溝３１を形成することで空気が抜け、嵌入が滑らかに行え、入力軸４とモーター軸８が中心軸線上で一体化することが容易になった。
【００１５】
図３、図４は、従来例に係る遊星歯車減速機における入力軸部の断面図である。
【００１６】
図３において、入力軸穴にモーター軸（図示しない）を嵌入するに際して、これを容易にするため従来は入力軸穴の内側から外側に空気が抜けるように抜き穴４２を開けるようにしていた。
【００１７】
この抜き穴４２はドリル等で開けられるが入力軸を製作する際、旋盤等による加工とは別の工程で加工せざるを得ず、また入力軸を斜めに保持しての加工であるため加工に時間がかかり安価に製作することができなかった。
【００１８】
また図４の抜き穴４３は、加工を比較的容易にするために入力軸の中心線に対して垂直になるようにしたものである。
【００１９】
ところが入力軸が長くなり、よって遊星減速機全体が長大化してしまうものである。
【００２０】
図２は本発明の第２実施例を示す入力軸の断面図である。
【００２１】
図２において入力軸穴に形成した溝は、図１の直線的な溝３１に対して、螺旋状の溝４１を形成したものである。
【００２２】
これは入力軸の製作に際し旋盤での荒加工のときに、リード約３０ｍｍ／回転、深さ０．２５から０．５ｍｍ程度の溝加工を行うことにより必然的に螺旋状の溝が形成され、次いで仕上げ工程ではカエリの除去をも同時に行えるようになり、同一工程のため極めて短時間での製作が可能となるものである。
【００２３】
【発明の効果】
本発明に係る小形遊星歯車減速機は、以上のように入力軸を長大化させることなく、同時に装置全体を長大化させることなく、供給の高まりつつある安価なモーターを容易に、精度良く組み付けられるようになった。
【００２４】
また、前記小形遊星歯車減速機はモーターを取り付けて供給するばかりでなく、使用者で用意したモーターを取付け可能な形態での供給をすることで、このようなときも使用者側で熟練を要することなく位置精度の高い組み付けができるようになった。
【００２５】
更に、キー溝のついたモーター軸でもキーを使わずにストレート軸と同様に取り付けることが可能であり、より広範な小形遊星歯車減速機の供給ができるようになった。
【００２６】
本発明に係る小形遊星歯車減速機は前記効果を併せもつ上、特に螺旋状の溝であれば、入力軸の製作が容易に行えるため安価で精度の良いものとすることができる。
【００２７】
なお、本発明は小形遊星歯車減速機にとどまらず、各種の歯車減速機や歯車を使用しない摩擦式減速機、増速機などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の第１実施例を示す小形遊星歯車減速機の断面図である。
【図２】 本発明の第２実施例を示す小形遊星歯車減速機における入力軸の断面図である。
【図３】 従来例に係る遊星歯車減速機における入力軸部の断面図である。
【図４】 従来例に係る遊星歯車減速機における別の入力軸部の断面図である。
【符号の説明】
１ ケース
２ 入力側ケース
２ａ インロー部
３ 出力側ケース
３ａ インロー部
４ 入力軸
５ 軸受
６ 出力軸
７ 入力軸穴
８ モーター軸
９ モーターフランジ
１１ 遊星歯車機構
１３ 太陽歯車
１４ 内歯歯車
１５ 遊星歯車
１６ 遊星ピン
１７ キャリア
２１ 遊星歯車機構
２３ 太陽歯車
２４ 内歯歯車
２５ 遊星歯車
２６ 遊星ピン
２７ キャリア
３１ 溝
４１ 溝
４２、４３ 抜き穴

Claims (1)

1. ケースに中心軸線上で回転駆動される太陽歯車と外接噛合すると共にケースに固定された内歯歯車と内接噛合する複数の遊星歯車の公転運動が各遊星ピンを介してキャリアに伝達されるようにした１段以上の遊星歯車機構を中心軸線上の入力軸と出力軸との間において内装してなる遊星歯車減速機において、
   前記入力軸に形成された入力軸穴にモーターのモーター軸が嵌入され、前記ケースの内周面にモーターに取り付けられた該モーターフランジが嵌合して連結固定されたのち、前記ケースに設けられたクランプ用ボルト挿入窓から前記入力軸およびモーター軸を固定するためのクランプ用ボルトを挿入し前記入力軸およびモーター軸が締め付けられ、モーターと連結して一体化され、
   前記入力軸穴のモーター軸嵌入部内周に、モーター軸の挿入方向に螺旋状の溝からなる空気抜き溝を形成してなることを特徴とする小形遊星歯車減速機。

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