JP4350206B2 - X線ct装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、閾値決定方法および造影領域3次元データ作成方法に関し、さらに詳しくは、造影領域を抽出する基となる複数の造影アキシャル画像の体軸方向の長さが大きいときでも適切な閾値を容易に決定できる閾値決定方法および当該閾値を用いて造影領域3次元データを作成する造影領域3次元データ作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のX線CT装置で、被検体内の血管を3次元表示する手順について説明する。
(1)図10に示すように、被検体Hの造影対象の血管αに造影剤Mを注入した後、息止めした被検体Hの体軸方向のスライス位置L1,L2,…,L6に対応したアキシャル画像(造影アキシャル画像)A1,A2,…,A6を連続して撮影する。
(2)造影アキシャル画像A1,A2,…,A6における血管αのCT値(CT1',CT2',CT3u',CT3d',…,CT6u',CT6d')に基づいて、造影領域を抽出するための1つの閾値Thを決定する。
(3)造影アキシャル画像A1,A2,…,A6から、前記閾値Thに基づいて造影領域を抽出し、抽出した造影領域のデータを基に3次元データ(造影領域3次元データ)を作成する。
(4)図11に示すように、作成した3次元データに基づいて、画面上に、血管αに相当する造影領域3次元画像Iを表示する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
旧式のX線CT装置では、スキャン速度が遅いので、1回の息止めで撮影できる体軸方向の長さD’(図10参照)はせいぜい20cm程度であった。この程度の長さD’では、血管αの全域で造影剤Mの濃度をほぼ均一と見なすことができ、1つの閾値Thでも造影領域の抽出を支障なく行えた。
【0004】
これに対し、最近のX線CT装置では、多層型検出器の採用等によりスキャン速度が高速化されているので、1回の息止めで撮影できる体軸方向の長さD’が、例えば40cm以上に増大してきている。ところが、このように長さD’が増大すると、血管αの区間によって造影剤Mの濃度が著しく異なる(例えば最上流側と最下流端とで異なる)ため、1つの閾値Thでは、本来の造影領域を正しく抽出できない問題点がある。すなわち、血管αの最小CT値に合わせて閾値Thを設定すると、閾値Thが過小となって、臓器などの非造影対象が誤って抽出されてしまう。また、血管αの最大CT値に合わせて閾値Thを設定すると、CT値の小さい血管αの区間を正しく抽出できなくなってしまう。
【0005】
なお、上記問題点を解消するため、操作者が、造影アキシャル画像A1,A2,…,A6ごとに血管αのCT値を把握して、造影アキシャル画像ごとに閾値を個別に手動設定することも考えられるが、手間と時間がかかる問題点がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、造影領域を抽出する基となる複数の造影アキシャル画像の体軸方向の長さが大きいときでも適切な閾値を容易に決定できる閾値決定方法および当該閾値を用いて造影領域3次元データを作成する造影領域3次元データ作成方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の観点では、本発明は、造影剤を注入しないで被検体の体軸方向のスカウト画像(プレーンスカウト画像)を撮影するプレーンスカウト画像撮影過程と、造影剤を注入して被検体の体軸方向の複数の異なるスライス位置でアキシャル画像(造影アキシャル画像)を撮影する造影アキシャル画像撮影過程と、前記造影アキシャル画像を基にして演算により前記プレーンスカウト画像に相当する造影スカウト画像を作成する造影スカウト画像作成過程と、前記プレーンスカウト画像と前記造影スカウト画像の差分をとって差分画像を作成する差分画像作成過程と、前記差分画像中の前記スライス位置に対応する位置での造影領域の画素値に基づいて造影領域を抽出するための閾値を決定する閾値決定過程とを有することを特徴とする閾値決定方法を提供する。
上記第1の観点による閾値決定方法では、造影剤を注入しないで被検体の体軸方向のスカウト(scout)画像を撮影することで、プレーンスカウト(plain scout)画像を得る。また、造影剤を注入して各スライス位置のアキシャル(axial)画像を撮影して造影アキシャル画像を得て、それらの造影アキシャル画像を基にしてプレーンスカウト画像に相当する造影スカウト画像を作成する。
プレーンスカウト画像の画素値と,造影スカウト画像の画素値は、造影剤の存在する領域すなわち造影領域のみで実質的に異なり、造影領域以外の領域で同等と見なせる。したがって、差分画像として、スカウト画像内の造影領域のみが描出される。
この結果、差分画像中の前記スライス位置に対応する位置での造影領域の画素値に基づいて造影領域を抽出するための閾値を決定することで、造影領域の区間によって造影剤の濃度が著しく異なる場合でも、適切な閾値をきめ細かく決定することが出来る。
【0008】
第2の観点では、本発明は、造影剤を注入しないで被検体の体軸方向の複数の異なるスライス位置でアキシャル画像(プレーンアキシャル画像)を撮影するプレーンアキシャル画像撮影過程と、造影剤を注入して前記被検体の体軸方向の複数の異なるスライス位置でアキシャル画像(造影アキシャル画像)を撮影する造影アキシャル画像撮影過程と、前記プレーンアキシャル画像を基にして演算により被検体の体軸方向のスカウト画像(プレーンスカウト画像)を作成するプレーンスカウト画像作成過程と、前記造影アキシャル画像を基にして演算により前記プレーンスカウト画像に相当する造影スカウト画像を作成する造影スカウト画像作成過程と、前記プレーンスカウト画像と前記造影スカウト画像の差分をとって差分画像を作成する差分画像作成過程と、前記差分画像中の前記造影アキシャル画像のスライス位置に対応する位置での造影領域の画素値に基づいて造影領域を抽出するための閾値を決定する閾値決定過程とを有することを特徴とする閾値決定方法を提供する。
上記第2の観点による閾値決定方法では、造影剤を注入しないで被検体の体軸方向の各スライス位置でアキシャル画像を撮影することでプレーンスアキシャル画像を得て、それらのプレーンスアキシャル画像を基にしてプレーンスカウト画像を得る。また、造影剤を注入して各スライス位置のアキシャル画像を撮影して造影アキシャル画像を得て、それらの造影アキシャル画像を基にしてプレーンスカウト画像に相当する造影スカウト画像を作成する。
プレーンスカウト画像の画素値と,造影スカウト画像の画素値は、造影剤の存在する領域すなわち造影領域のみで実質的に異なり、造影領域以外の領域で同等と見なせる。したがって、差分画像として、スカウト画像内の造影領域のみが描出される。なお、プレーンスカウト画像と,造影スカウト画像のいずれもが、画質の高いアキシャル画像を基にして作成されているので、造影領域を正確に抽出することが出来る。
この結果、差分画像中の前記スライス位置に対応する位置での造影領域の画素値に基づいて造影領域を抽出するための閾値を決定することで、造影領域の区間によって造影剤の濃度が著しく異なる場合でも、適切な閾値をきめ細かく決定することが出来る。
【0009】
第3の観点では、本発明は、上記構成の閾値決定方法により決定した閾値を用いて前記造影アキシャル画像のそれぞれから造影領域を抽出する造影領域抽出過程と、前記抽出した造影領域のデータを基に3次元データ(造影領域3次元データ)を作成する3次元データ作成過程とを有することを特徴とする造影領域3次元データ作成方法を提供する。
上記第3の観点による造影領域3次元データ作成方法では、上記閾値決定方法により決定した閾値を用いて、造影アキシャル画像のそれぞれから造影領域を過不足なく抽出することが可能となり、精度の高い造影領域3次元データを作成することが出来る。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
−第1の実施形態−
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる造影領域3次元データ作成方法を実施する高速スキャン型のX線CT装置100を示すブロック図である。
このX線CT装置100は、操作コンソール1と、撮影テーブル10と、走査ガントリ20とを具備している。
前記操作コンソール1は、操作者の指示や情報などを受け付ける入力装置2と、スキャン処理や補間処理や画像再構成処理やレイサム(ray-summation)演算処理などを実行する中央処理装置3と、制御信号などを撮影テーブル10や走査ガントリ20へ出力する制御インタフェース4と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ5と、画像などを表示するCRT6と、各種のデータやプログラムを記憶する記憶装置7とを具備している。
前記撮影テーブル10は、被検体を乗せて体軸方向に移動させる。
前記走査ガントリ20は、ファンビーム方式のX線管21,コリメータ22および検出器23と、被検体の体軸の回りにX線管21や検出器23などを回転させる回転コントローラ24と、X線照射のタイミングや強度を調整するX線コントローラ25と、データ収集部26とを具備している。
【0011】
図2は、このX線CT装置100による造影領域3次元データ作成処理を示すフロー図である。
ステップST1では、造影剤を注入しないで被検体の体軸方向のスカウト画像(プレーンスカウト画像)を撮影する。一般に、前記スカウト画像は、コロナル(coronal)画像またはサジタル(sagital)画像である。すなわち、図3に示すように、X線管21および検出器23を回転させずに被検体Hの体軸方向に長さDだけ直線的に相対移動させ、被検体Hを透過したファンビームBのX線強度を検出器23の各チャネルで検出し、当該検出強度に対応した画素値をスカウト画像平面F上に投影した如きスカウト画像を作成する。前記長さDは、造影領域の区間に相当する長さであり、例えば40cm程度である。図4に、プレーンスカウト画像PSを例示する。造影剤を注入しない状態では、プレーンスカウト画像PS内に血管αは現れない。
【0012】
ステップST2では、図5に示すように、被検体Hの血管αに造影剤Mを注入した後、息止めした被検体Hの体軸方向のスライス位置L1,L2,…,L6に対応したアキシャル画像(造影アキシャル画像)A1,A2,…,A6を連続して撮影する。図示の都合上、スライス数を“6”としたが、スライス数は任意である。
ステップST3では、造影アキシャル画像A1,A2,…,A6を基にして、演算により前記プレーンスカウト画像PSに相当する造影スカウト画像を作成する。すなわち、図6に示すように、造影アキシャル画像A1,A2,…,A6の各スライス面内で、ファンビームBに相当する投影線B’を前記スカウト画像平面F上に投影したときの各投影線上にある画素に対応するCT値を積算するレイサム演算処理を行い、その結果を新たな画素値とした如きレイサム画像を造影スカウト画像RSとする。図7に、前記造影スカウト画像RSを例示する。血管αに相当する造影領域α’の画素値は、造影剤Mの濃度を反映して変化する。
【0013】
ステップST4では、プレーンスカウト画像PSと造影スカウト画像RSの差分をとって、差分画像を作成する。図8に、差分画像DSを例示する。プレーンスカウト画像PSの画素値と,造影スカウト画像RSの画素値は、造影領域α’のみで実質的に異なり、造影領域α’以外の領域で同等と見なせる。したがって、臓器や骨格などの領域の画素値が相殺され、造影領域α’のみが描出される。ステップST5では、差分画像DS中のスライス位置L1,L2,…,L6に対応する位置での造影領域α’のCT値に基づいて造影領域を抽出するための閾値を決定する。すなわち、図8に示すように、スライス位置L1に対応する位置でのCT値CT1に基づいて閾値Th1を決定し、スライス位置L2に対応するCT値CT2に基づいて閾値Th2を決定し、スライス位置L3に対応するCT値CT3u,CT3dに基づいて閾値Th3を決定し、スライス位置L4に対応するCT値CT4u,CT4dに基づいて閾値Th4を決定し、スライス位置L5に対応するCT値CT5u,CT5dに基づいて閾値Th5を決定し、スライス位置L6に対応するCT値CT6u,CT6dに基づいて閾値Th6を決定する。
【0014】
ステップST6では、上記ステップST5で決定した閾値Th1,Th2,…,Th6を用いて造影アキシャル画像A1,A2,…,A6のそれぞれから造影領域を抽出し、抽出した造影領域のデータを基に3次元データ(造影領域3次元データ)を作成する。その後、作成した造影領域3次元データに基づいて、画面上に、血管αに相当する造影領域3次元画像(図11のIに相当)を表示する。
【0015】
以上のX線CT装置100によれば、造影領域α’内で造影剤Mが不均一に分布した場合でも、スライス位置ごとに適切な閾値Th1,Th2,…,Th6を自動決定することが出来る。
【0016】
−第2の実施形態−
図9は、本発明の第2の実施形態にかかる造影領域3次元データ作成処理を示すフロー図である。
ステップU1では、造影剤を注入しないで被検体の体軸方向の複数の異なるスライス位置でアキシャル画像(プレーンアキシャル画像)を撮影する。
ステップST2では、造影剤を注入して被検体の体軸方向の複数の異なるスライス位置でアキシャル画像(造影アキシャル画像)を撮影する。
ステップU2では、前記プレーンアキシャル画像を基にして演算により被検体の体軸方向のスカウト画像(プレーンスカウト画像)を作成する。この作成は、先に図6を参照して説明したように、レイサム演算処理により行う(プレーンアキシャル画像を基にする点は、上記第1の実施形態と異なる)。
ステップST3では、造影アキシャル画像を基にして演算により前記プレーンスカウト画像に相当する造影スカウト画像を作成する。
ステップST4では、プレーンスカウト画像と造影スカウト画像の差分をとって、差分画像を作成する。
ステップST5では、差分画像中の前記造影アキシャル画像のスライス位置に対応する位置での造影領域の画素値に基づいて造影領域を抽出するための閾値を決定する。
ステップST6では、造影アキシャル画像のそれぞれから造影領域を抽出し、抽出した造影領域のデータを基に3次元データ(造影領域3次元データ)を作成する。
以上の造影領域3次元データ作成処理によれば、画質の高いプレーンアキシャル画像を基にしてプレーンスカウト画像を作成するので、差分画像内に造影領域(図8のα’に相当)をいっそう正確に描出でき、造影領域3次元データの精度をいっそう高めることが出来る。
【0017】
【発明の効果】
本発明の閾値決定方法によれば、造影剤を被検体に注入しない状態で得られたプレーンスカウト画像(またはプレーンアキシャル画像を基にして作成されたプレーンスカウト画像)と、造影剤を被検体に注入した状態で得られた造影アキシャル画像を基にして作成された造影スカウト画像との差分画像を作成し、当該差分画像中の前記造影アキシャル画像のスライス位置に対応する位置での造影領域の画素値に基づいて造影領域を抽出するための閾値を決定するので、造影領域内で造影剤が不均一に分布した場合でも、スライス位置ごとに適切な閾値を自動決定することが出来る。
また、本発明の造影領域3次元データ作成方法によれば、上記閾値決定方法により決定した閾値を用いて、各造影アキシャル画像から本来の造影領域を好適に抽出でき、高画質の3次元画像を表示し得る造影領域3次元データを作成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置を示すブロック図である。
【図2】図1のX線CT装置による造影領域3次元データ作成処理を示すフロー図である。
【図3】プレーンスカウト画像を撮影する状態を示す説明図である。
【図4】プレーンスカウト画像の例示図である。
【図5】造影アキシャル画像を撮影する状態を示す説明図である。
【図6】造影アキシャル画像を基にしてレイサム演算処理により造影スカウト画像を作成する状態を示す説明図である。
【図7】造影スカウト画像の例示図である。
【図8】差分画像の例示図である。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる造影領域3次元データ作成処理を示すフロー図である。
【図10】従来のX線CT装置で造影アキシャル画像を撮影する状態を示す説明図である。
【図11】造影領域3次元画像の例示図である。
【符号の説明】
100 X線CT装置
1 操作コンソール
2 入力装置
3 中央処理装置
4 制御インタフェース
10 テーブル装置
20 走査ガントリ
21 X線管
23 検出器
A1,A2,…,A6 造影アキシャル画像
DS 差分画像
H 被検体
L1,L2,…、L6 スライス位置
M 造影剤
RS 造影スカウト画像
Th1,Th2,…,Th6 閾値
α 血管
α’ 造影領域
Claims (3)
- 造影剤を注入しないで被検体の体軸方向のスカウト画像(プレーンスカウト画像)を撮影するプレーンスカウト画像撮影手段と、
造影剤を注入して被検体の体軸方向の複数の異なるスライス位置でアキシャル画像(造影アキシャル画像)を撮影する造影アキシャル画像撮影手段と、
前記造影アキシャル画像を基にして演算により前記プレーンスカウト画像に相当する造影スカウト画像を作成する造影スカウト画像作成手段と、
前記プレーンスカウト画像と前記造影スカウト画像の差分をとって差分画像を作成する差分画像作成手段と、
前記差分画像中の前記スライス位置に対応する位置での造影領域の画素値に基づいて造影領域を抽出するための閾値を決定する閾値決定手段と
を有することを特徴とするX線CT装置。 - 造影剤を注入しないで被検体の体軸方向の複数の異なるスライス位置でアキシャル画像(プレーンアキシャル画像)を撮影するプレーンアキシャル画像撮影手段と、
造影剤を注入して前記被検体の体軸方向の複数の異なるスライス位置でアキシャル画像(造影アキシャル画像)を撮影する造影アキシャル画像撮影手段と、
前記プレーンアキシャル画像を基にして演算により被検体の体軸方向のスカウト画像(プレーンスカウト画像)を作成するプレーンスカウト画像作成手段と、
前記造影アキシャル画像を基にして演算により前記プレーンスカウト画像に相当する造影スカウト画像を作成する造影スカウト画像作成手段と、
前記プレーンスカウト画像と前記造影スカウト画像の差分をとって差分画像を作成する差分画像作成手段と、
前記差分画像中の前記造影アキシャル画像のスライス位置に対応する位置での造影領域の画素値に基づいて造影領域を抽出するための閾値を決定する閾値決定手段と
を有することを特徴とするX線CT装置。 - 前記閾値決定手段により決定した閾値を用いて前記造影アキシャル画像のそれぞれから造影領域を抽出する造影領域抽出手段と、
前記抽出した造影領域のデータを基に3次元データ(造影領域3次元データ)を作成する3次元データ作成手段と
を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
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