JP4349808B2 - 作業機械に搭載のバッテリ予熱方法およびその装置 - Google Patents

作業機械に搭載のバッテリ予熱方法およびその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として極低温地域で使用されるブルドーザ,油圧ショベルなどの作業機械に搭載されるバッテリの始動機能を、円滑に発揮できるようにするバッテリの予熱方法に関し、詳しくはエンジンのクーラントヒータを利用して、合理的にバッテリの予熱を行えるようにする作業機械に搭載のバッテリ予熱方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
寒冷地、特に極低温になる地域で使用されるブルドーザ,油圧ショベルなどの建設機械にあっては、その始業時にエンジンの起動を行うとき、通常気候の地域とは異なり、−30℃以下の状態になり、この状態ではバッテリの機能が停止してスタータを起動することができない。そのために、バッテリが機能し得る状態にする必要がある。言換えると、建設機械に低温始動が可能な手段を具備させておくことが必須要件となる。
【0003】
従来、低温始動可能にする手段としては、エンジン搭載部に外部から温風を吹き込んでエンジン搭載部の周りの温度を高めるような方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。または、予め作業機械のエンジン周りにダクトを配管して、始動時のみ配置するロケットヒータと称されるガス燃焼機による燃焼ガスを前記ダクトによってオイルパンやバッテリの搭載部に高温ガスを導いて、その高温ガスを吹き付けることにより加温する方式が採用されている。このほかに、エンジン周りの要所にバンドヒータを固縛して外部から電流を流して加熱するような方式がある(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
実公昭53−14832号公報
【特許文献2】
米国特許第6232577号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1による方式では、エンジン周りを囲って温風機による温風で加温するものであるから、低温でも比較的温度の高い地域では可能であっても極低温(−30℃以下)ともなると、その加温時間が非常に長くなって実用的でないという問題点がある。
【0006】
また、前述のエンジン周りに予めダクトを配管しておいて、始動時にロケットヒータを設置し、ダクトに接続して燃焼ガスをエンジン周りの要所に供給して加熱する方式では、前記特許文献1によって知られる方式に較べて効果的ではあるが、次のような課題がある。すなわち、予め配管されるダクトは、エンジン部に繋がる各種の装置機器やそれらを支持する構造物を交わして配置する必要があるので構造が複雑になるという問題がある。また、燃焼ガスをダクト内に流して加熱することになるので、固体と流体との接触による加熱であるから熱伝導効率が非常に悪い。しかも、燃焼ガス中に有害成分(亜硫酸ガスなど)が混在するので、ダクトの腐食が激しく長期使用に耐えない。さらに、高温ガスであることから火災の恐れがある、など多くの問題点がある。
【0007】
一方、特許文献2による方式では、電気ヒータを使用するので、前述のような高温ガスを熱媒体とするものに較べて有利であるが、発熱させるための電源を別途用意しなければならず、電力供給源が近くにないと全く使用できないという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、極低温地域で使用される作業機械に搭載されるクーラントヒータを利用して始動時にバッテリの機能を無理なく発揮できるようにする作業機械に搭載のバッテリ予熱方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前述された目的を達成するために、第1発明による作業機械に搭載のバッテリ予熱方法は、
作業機械の走行体の一方の上部を覆うフェンダー上に設置される冷媒加熱機からエンジン周りへの加熱媒体の一部を分岐して、脱着可能に接続される可撓性の分岐配管で前記走行体の他方の上部を覆うフェンダー上に設置される加熱盤に循環可能に接続し、前記加熱盤上にバッテリを配置して、前記加熱媒体を前記加熱盤に循環供給してバッテリを加熱することを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、作業機械に搭載されているエンジン周りの冷媒を加熱する冷媒加熱機を利用し、そのエンジン周りへの加熱された媒体(加熱媒体)の一部を分岐して、脱着可能に接続される可撓性の分岐配管で前記走行体の他方の上部を覆うフェンダー上に配置された加熱盤に循環可能に接続して、冷媒加熱機で熱せられた加熱媒体を加熱盤に循環供給し、バッテリを底部から加熱するようにされるので、液体−固体の熱交換となり、熱伝達効率が従来のように気体−固体の熱交換に較べて各段に高められ、比較的短時間でバッテリが機能する状態まで予熱することができるのである。また、加熱媒体が管内を循環して熱伝達が行えるので、周辺機器を損傷させることもない。そして、エンジン周りのメンテナンスなどで配管が邪魔になるときには、接続部で取外しても復元時には接続部の継ぎ手を接続すればよく、その取扱いが容易である。なお、前記冷媒加熱機の起動時にはバッテリの僅かな起電力で加熱機を起動させることが可能であるので、支障はない。
【0011】
また、本発明によれば、作業機械の走行体上部での両サイドを利用して設置される冷媒加熱機とバッテリとを可撓性の分岐配管でもって接続して、加熱された熱媒体をバッテリの加熱盤に供給するので固定的な配管を必要とせず、車体上に配列される動力伝達機構やその他の機器上を交わして合理的に配管することができる。しかも、可撓性の配管を後付できるので、組立作業やメンテナンスに際しても無理なく処置することができ、必要不可欠な構成を簡単にできるという効果が得られる。
【0012】
次に、第発明による作業機械に搭載のバッテリの予熱装置は、
作業機械の走行体上部に設置される冷媒加熱機からエンジン周りへの冷媒加熱配管を分岐して、脱着可能に接続される可撓性の分岐配管を車体上の適所に設置されるバッテリの加熱盤と循環可能に接続前記加熱盤は上面を平坦にして内部に熱媒体が循環移動する加熱媒体流通路を有し前記加熱盤上面に載置されるバッテリを底面から加熱する構成であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、冷媒加熱機からエンジン周りへの冷媒加熱配管を分岐してバッテリ搭載部に設置する加熱盤に可撓性の配管を接続し、その加熱盤の内部で熱媒体を循環移動させて平坦な上面に搭載されるバッテリを底面から加熱するようにされているので、バッテリを安定状態に支持できて、予熱時には熱交換条件を有効にして予熱時間を短縮できるという効果が得られる。また、冷媒加熱機から可撓性の配管で接続されるので、従来のガス加熱による配管(ダクト)と比較して取扱いが容易になるという利点を有する。
【0014】
前記バッテリの加熱盤は、底面が断熱材で被われるとともに、車体への取付部を有し、この取付部と加熱媒体流通路とが分離された構造であるのがよい(第発明)。こうすると、加熱操作時に設置部での車体側(フェンダー側)への熱伝達を遮断して、加熱媒体流通路を流れる熱媒による搭載バッテリへの伝熱効果を高め、予熱時間の短縮を図ることができる。また、断熱材を付された取付部によって車体側へ装着されるので、その断熱材がクッションの役目も兼ねてバッテリを保護する効果も得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による作業機械に搭載のバッテリ予熱方法の具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
この実施形態は、ブルドーザに適用された場合について説明する。
【0017】
図1には本発明に係る作業機械に搭載のバッテリ予熱方法が適用されるブルドーザの平面図が示されている。図2には低温始動時の予熱手段の概要図が、図3には実施形態の冷媒加熱機とバッテリとの位置関係を表わす平面図が、図4にはバッテリの加熱盤の実施形態を表わす平面図(a)とバッテリ搭載状態を併記した(a)におけるA−A視拡大断面図(b)が、それぞれ示されている。
【0018】
このバッテリ予熱方法が適用されるブルドーザ1は、車体2の両側に履帯3,3がそれぞれ配置されて、車体2の前部に搭載されるエンジン4から動力伝達機構5(トルクコンバータ,トランスミッション,ステアリング機構)を経由して駆動される履帯式走行装置を備え、車体2の後方上部に運転室6が設けられている。車体2の前方位置には左右両側に配される一対のフレーム7,7によってブレード8が配置され、チルトシリンダ9,9と起伏シリンダ10,10によってそのブレード8を操作できるようにされている。なお、後部にはリッパ装置11が付設されており、リッパ作業を行なえるようにされている。
【0019】
このような構成のブルドーザ1で寒冷地仕様の機種においては、始動時にエンジン4を予熱してから起動するための予熱手段を必要としている。そのために、車体2の両側に配設される履帯3,3の上側位置で一方のフェンダー12上部にクーラントヒータ15(本発明の冷媒加熱機に相当する)が搭載されている。このクーラントヒータ15は、周知構造のもので、全体を構成するシェルの内部に図示されない燃焼器と熱交換コイルが組み込まれ、その燃焼器のバーナーでオイルを燃焼させて熱交換コイルで温水を生成させ、これを付属するポンプ16で配管17,17'、17"を通じてエンジン4部の冷却水(温水)を循環させ、低温時におけるエンジン周りの機器を運転可能な温度に上昇させるようにする構成のものである。
【0020】
また、前記エンジン4の始動時に駆動やその他の電源用のバッテリ18についても始動時予熱する必要がある(極寒冷地では気温が−30℃以下になってエンジンを停止するとバッテリが機能しない)。そのために、図2および図3で示されるように、前記クーラントヒータ15の搭載位置と反対側のフェンダー12'上部に搭載されるバッテリ18に対する予熱手段が設けられる。この実施形態では、バッテリ18に対する予熱手段として、前記クーラントヒータ15から送り出される加熱された媒体(温水)をエンジン周りに供給される配管から分岐(後述)してその一部を配管によって、バッテリ18の搭載部に設置される加熱盤20に接続されている。
【0021】
前記バッテリの加熱盤20は、図4で示されるように、上面にバッテリ18を載置できる面積の受け板21の下面にジャケット22(本発明の加熱媒体流通路に相当)を一体に付設された構造で、ジャケット22の温水出入口24,25にクーラントヒータ15と繋がる配管(ホース28,28')が接続されるように構成されている。前記ジャケット22部分は内部に仕切23が設けられ、搭載されるバッテリ18に対して伝熱効果が高められるように所要の断面の通路が形成されている。また、加熱盤20の受け板21上面は平坦にされ、前記ジャケット22の周囲に沿って下面に複数の取付座26(本発明の取付部に相当)が配置され、それら取付座26の中央に車体への取付孔26aが設けられている。加熱盤20は、車体2のフェンダー12'上に断熱材27、もしくは弾性材からなるスペーサ30(いわゆるマウントゴム)を介して取付孔26a部でボルト31にて締結されている。加熱盤20およびその上面に載置されるバッテリ18は、内側に断熱材27を貼着されたカバー29で覆われ、そのカバー29はフェンダー12'上に載置されている。
【0022】
前記バッテリの加熱盤20とクーラントヒータ15とは、ヒータの温水出口15aに接続される配管の分岐継ぎ手19を介して供給側および戻り側ともに、ホース28,28'によって着脱可能に接続される。なお、図中符号13は、ヒータの下部に位置する排気口15dからエンジン4のオイルパン4aを加熱するように接続されている排気ダクトである。14はクーラントヒータ用オイルタンク、14'はフィルター、14aは燃料油配管である。
【0023】
このように構成される本実施形態では、極寒冷地でブルドーザを始動させる準備手段として、まずクーラントヒータ15を起動する。このクーラントヒータ15の起動時には、燃焼器(図示せず)へヒータ用オイルタンク14から燃料油を供給して燃焼作動させる。同時に付属のポンプ16を作動させて冷媒(正常運転時のエンジン周りの冷却水)を熱交換コイル部に送り込む。このクーラントヒータ15において加熱された冷媒(以下、温水という)は、ヒータの温水出口15a(冷媒出口)から分岐継ぎ手19を経てエンジン周りの加熱個所(エンジンのジャケット,ヒューエルストレーナ4bなど)へ供給されると同時に、分岐されてホース28を経てバッテリの加熱盤20のジャケット22に供給される。それぞれの機器を加熱した温水の戻りは各配管17'、17"、ホース28'を経てヒータ15へ戻され、再び加熱されて各部に供給され、このようにして温水を循環して運転可能な温度に達するまで加熱を続ける。
【0024】
前記加熱盤20に供給される温水は、分岐継ぎ手19部からホース28によって動力伝達機構の上部を越えて加熱盤20の温水入口24に供給され、ジャケット22内を巡って温水出口25から戻りのホース28'によってヒータ15に戻され再加熱される。加熱盤20ではジャケット22内の流通路を温水が流動することによって受け板21が加熱され、その上面に搭載されるバッテリ18を底部から加熱することになる。前記ジャケット22は外周面(受け板21より下側の表面)を断熱材27によって覆われているので、受け板21側に積極的に熱伝達されて上側に位置するバッテリ18を暖めることになる。この加熱盤20における受け板21は、バッテリ18の底面のほぼ全体と接触して熱伝達が行われるので、有効に予熱操作が行われる。
【0025】
所要時間前記予熱操作が継続され、エンジン周りが始動可能な温度に達すると、バッテリ18も同様にして機能を発揮できる状態に達する。こうなると、クーラントヒータ15による加熱操作を停止してエンジン4を始動させ、準備運転を行って各部機器の温度を運転可能な状態に維持させて通常運転に移行させる。
【0026】
この実施形態では、クーラントヒータ15によって加熱される温水は、約80℃に加熱されて循環供給されるので、ヒータ15側からバッテリ18の加熱盤20までを繋ぐ配管にホース28,28'を使用するが、温度的に大きな影響を受けないので、長期間の使用に耐えることができる。また、ホースを使用することで、動力伝達部のメンテナンス時やこの予熱手段のメンテナンスに際しては、接続部で連結を解くことにより簡単に取外して所要の作業を行うことができる。したがって、従来のダクトを設置して燃焼ガスを用いて予熱する方式と比較して各段に取扱操作が簡素化されるという効果がある。
【0027】
以上の説明では、ブルドーザに適用されたものについて記載したが、極寒冷地仕様の油圧ショベルにおいても、そのバッテリの予熱に採用することが可能であり、本発明の技術的範囲に属するものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る作業機械に搭載のバッテリ予熱方法が適用されるブルドーザの平面図である。
【図2】図2は、低温始動時の予熱手段の概要図である。
【図3】図3は、実施形態の冷媒加熱機とバッテリとの位置関係を表わす平面図である。
【図4】図4は、バッテリの加熱盤の実施形態を表わす平面図(a)とバッテリ搭載状態を併記した(a)におけるA−A視拡大断面図(b)である。
【符号の説明】
1 ブルドーザ
2 車体
4 エンジン
12,12' フェンダー
14 ヒータ用オイルタンク
15 クーラントヒータ
16 ポンプ
17,17'、17" 配管
18 バッテリ
19 分岐継ぎ手
20 加熱盤
21 加熱盤の受け板
22 ジャケット
23 仕切
24 ジャケットの温水入口
25 ジャケットの温水出口
26 取付座
26a 取付孔
27 断熱材
28,28' ホース
29 カバー
30 スペーサ

Claims (3)

  1. 作業機械の走行体の一方の上部を覆うフェンダー上に設置される冷媒加熱機からエンジン周りへの加熱媒体の一部を分岐して、脱着可能に接続される可撓性の分岐配管で前記走行体の他方の上部を覆うフェンダー上に設置される加熱盤に循環可能に接続し、前記加熱盤上にバッテリを配置して、前記加熱媒体を前記加熱盤に循環供給してバッテリを加熱することを特徴とする作業機械に搭載のバッテリ予熱方法。
  2. 作業機械の走行体上部に設置される冷媒加熱機からエンジン周りへの冷媒加熱配管を分岐して、脱着可能に接続される可撓性の分岐配管を車体上の適所に設置されるバッテリの加熱盤と循環可能に接続前記加熱盤は上面を平坦にして内部に熱媒体が循環移動する加熱媒体流通路を有し前記加熱盤上面に載置されるバッテリを底面から加熱する構成であることを特徴とする作業機械に搭載のバッテリ予熱装置。
  3. 前記バッテリの加熱盤は、底面が断熱材で被われるとともに、車体への取付部を有し、この取付部と加熱媒体流通路とが分離された構造である請求項に記載の作業機械に搭載のバッテリ予熱装置。
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