JP4348039B2 - 放射性物質の核反応で発生する中性子を吸収するための被覆を製造する方法および吸収体 - Google Patents

放射性物質の核反応で発生する中性子を吸収するための被覆を製造する方法および吸収体 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は放射性物質の核反応時に発生する中性子を吸収するための被覆を製造する方法に関する。加えて、本発明はこの方法により製造された吸収体にも関する。
【0002】
特に核反応技術の分野に由来する放射性物質を処理するために、放射性物質は設定される課題、材料及び状態に応じて、たとえば交換及び/又は検査ならびに輸送及び/又は貯蔵のために、不可避的に放射される中性子によるそれ以上の核反応を回避する目的で互いに遮蔽される。所望の中性子吸収を達成するために、通常は種々のシャフト、キャニスタ、パイプ、及び類似の構造物として形成された吸収体を作製して、中性子を放出する目的物を取り囲んでこれを遮蔽する。このような吸収体を使用すると、たとえば中性子を放出する部材、特に原子力発電所から発生する燃料をコンパクトに貯蔵することが可能となる。
【0003】
欧州特許出願公開第0385187号により公知の燃料貯蔵ラックでは、吸収板が燃料をそれらの全長にわたって取り囲む幾つかのシャフトを形成する。これらの吸収体は、中性子を吸収する材料、たとえばホウ素やホウ素を1ないし2%を含んだ特殊鋼からなるシャフトもしくはパイプである。これらの吸収体は、必要な製造コストを度外視しても非常にコストがかかり、ホウ素の割合が制限されているので効率が限られている。ホウ素の割合を高める実験で、ホウ素ニッケル合金の析出を試験した。確かにホウ素の割合は最大8%まで高めることができるが、コストも約10ポイント増加するので、このようなパイプを経済的に使用することは考えられない。
【0004】
放射性物質の輸送及び/又は貯蔵など別の課題に対しては、容器の金属表面にニッケル皮膜を析出させる方法を用いる。
米国特許第4218622号に記載されている複合された吸収体は、薄い支持フォイル又は薄い支持プレートを有しており、その上にポリマーマトリックスが塗布されていて、その中に炭化ホウ素粒子が埋設されている。支持フォイル又は支持プレートの材料として、ガラス繊維強化ポリマーが使用される。炭化ホウ素粒子はポリマーマトリックスの表面に均等に分布し、ホウ素濃度は最大0.1g/cm2である。燃料貯蔵ラックに複合吸収部材を使用する場合、吸収体の厚さは最大7mmであり、フォイル又はプレートとして形成され、内壁と外壁との間に懸垂されている。ポリマーマトリックスの表面に配置された炭化ホウ素粒子の一様な分布が、特に表面の可能な摩耗に関して長期間にわたって保証されているか否かは、米国特許第4218622号から読み取ることができない。
【0005】
欧州特許出願公開第0016252号には、中性子を吸収する吸収体を製造する方法が記載されている。この方法では、プラズマジェットにより炭化ホウ素を金属物質と一緒に基体上に塗布する。さらにこの方法は、ホウ素の酸化を防ぐために実施される。このようにして製造された吸収体は、たとえば燃料貯蔵槽に存在する液相媒体に対して安定であるとされる。プラズマジェットによって塗布された金属と炭化ホウ素とからなる皮膜の厚さは、少なくとも500μmである。炭化ホウ素の割合は約50容積%である。金属物体として、アルミニウム、銅及びステンレス鋼が考えられるが、基体は吹き付けられた皮膜と同じ金属物質を含んでいる。効果的な中性子吸収を達成するために、炭化ホウ素上に比較的厚い皮膜が必要であり、皮膜の厚さは特に3ないし6mmである。
【0006】
ドイツ特許出願公開第1037302号及びドイツ特許第2361363号により、パイプ、特に缶詰の外面に、放射線から防護するために電気分解によって吸収材を設けることが知られている。しかし、物理化学的な状態変化及び吸収材を塗布するための物質変換を技術的に実施するためのプロセス工学的過程及び装置に関する情報は、ドイツ特許出願公開第1037302号及びドイツ特許第2361363号から読み取れない。
【0007】
欧州特許出願公開第0055679号により知られている遮蔽体を製造する方法では、プラズマ被覆法により炭化ホウ素を遮蔽体の表面に塗布するか、又は遮蔽体に電気分解又は化学的手段により一次ニッケルめっきを施した後で、粉末の炭化ホウ素を表面に吹き付け塗装し、次いで電気分解又は化学的手段で二次ニッケルめっきを施す。この方法では、ニッケルを基準にして20重量%のオーダーのわずかな炭化ホウ素量しか表面に塗布できない。従って非常に厚い皮膜が必要となり、そのためこの公知の方法は経済的ではない。またこの方法はプロセス工学的に具体的に実現できないので、実用的に使用されなかった。スパッタリング法で表面に粉末を塗布することは、確実な工業生産を保証する方策ではない。
【0008】
公知のすべての方法及びそれによって製造された遮蔽体は、製造コスト及び材料コストが大きいので非経済的と見なすことができる。さらに遮蔽体の形状の多様性及び用途の拡張は限られている。
【0009】
さらにホウ素鋼の製造は複雑である。鋼を溶融し、複雑な方法でホウ素を最大10価まで濃縮し、溶融した鋼と混合する。その結果、ホウ素1.1ないし1.4重量%のホウ素鋼が生じる。この鋼は非常に加工しにくい上に脆く、溶接もしにくい。この鋼から作製した遮蔽体は、平均的な吸収特性において重量が極めて大きい。たとえば燃料を中間貯蔵のためにホウ素鋼から作製した重量約10tの内部貯蔵容器、いわゆるケージが知られている。
【0010】
WO98/59344により知られている中性子を吸収するための被覆の製造法では、遮蔽体の相応の表面にホウ素/ニッケル皮膜を設け、分散浴中にはホウ素が単体として、又は炭化ホウ素の形で存在している。これによりホウ素の高い取り込み率が達成されるが、ホウ素を単体として使用する場合は取り込み率が限られていて、被覆は硬さが大きく、ひいては脆性が大きい。炭化ホウ素は導電性が低く、せいぜい半導体の性質しか有しておらず、従って電気分解が制御しにくいか、もしくは全く制御できない。その結果として、皮膜形成は緩慢であり、皮膜構造は不良である。相対運動を作り出すことによって皮膜構造中にある程度の偶然性が生じる。そのため使用する材料、方法操作などの点で非常に高い要求が課せられるので、この方法全体は非常に高価である。
【0011】
本発明の課題は、従来の公知技術から出発して、放射性物質の核反応時に発生する中性子を吸収するための被覆もしくは遮蔽体を製造する方法をさらに改良して、経済的かつ簡単に使用でき、吸収効果を高め、遮蔽体の基礎材料及び形態に関してより大きい多様性を許容し、プロセス工学的に良好に制御でき、特に少なくとも等しい吸収性質においてより軽量の吸収体を製造できるようにすることである。
【0012】
この課題を技術的に解決するために、放射性物質の核反応時に発生する中性子を吸収するための被覆もしくは遮蔽体を製造する方法において、基礎材料からなる遮蔽体の少なくとも一部の予め設定した表面に、分散浴中で中性子捕獲断面積の大きい元素と電気分解もしくは自触媒により析出可能な金属元素とから形成された皮膜を設け、この被覆過程中にその都度被覆しようとする表面と分散浴との間で少なくとも時々相対運動を作り出し、中性子捕獲断面積の大きい元素が導電性化合物の形で分散浴中に存在していることを提案する。
【0013】
被覆しようとする表面と分散浴との間で少なくとも時々相対運動を行わせると、たとえば分散浴中のホウ素ニッケル皮膜の形成は、非常に良好な結果をもたらすことが示された。中性子捕獲断面積の大きい元素の導電性化合物を使用することにより、電気分解が良好に制御できるようになり、しかも驚くべきことに取り込み率を著しく高め得ることが分かった。その結果として、はるかに小さい膜厚を形成することが可能である。
【0014】
中性子捕獲断面積が大きい元素として、単体あるいは炭化ホウ素としてのホウ素、ガドリニウム、カドミウム、サマリウム、ユーロピウム又はジスプロシウムの群に含まれる元素が考慮される。大きい中性子捕獲断面積は、それぞれの元素が中性子を取り込む断面積の大きさを表す。導電性化合物としては、特に金属化合物が特別良好に使用できることが分かった。ここではホウ化鉄、ホウ化ニッケルなどのホウ化金属が挙げられる。この枚挙は一例に過ぎず、前記の元素についても拡張できる。導電性は電気分解の制御性が良好であることを表すので、要求があまり高くない基本条件のもとで高い信頼度と再現性をもって操作できる。
【0015】
電気分解もしくは自触媒により析出可能な金属元素として、特にニッケル、カドミウム又は銅が考慮される。中性子捕獲断面積の大きい元素又はその化合物は、この金属マトリックスに相応の作用で組み込まれている。
【0016】
それぞれの元素の、より大きい中性子捕獲断面積を有する同位体を使用することが特別有利なこととして提案される。たとえば、11Bの使用は0.005barnの中性子捕獲断面積を意味するのに対し、同位体10Bの使用は3837barnを意味する。これにより膜厚を小さくすることが可能となる。
【0017】
高い取り込み率に基づき、はるかに大きい効率が生じる。吸収皮膜の厚さは最大800μmのオーダーである。さらに、この方法が基礎材料に制約されないことが特別有利である。無機基礎材料を、たとえば鋼、特殊鋼、ホウ素鋼、チタン、アルミニウム、銅、ニッケルなど、及びそれらの合金を有利に使用できる。基礎材料として、有機的性格にかかわらず炭素繊維材料を考慮できる。炭素繊維材料は、電気めっき技術により吸収体を製造できるという利点を有している。
【0018】
本発明により吸収体を完成した状態又は個別部材として作製することも可能である。基礎材料に制約されないので、非常に簡単に加工可能な材料を使用できる。他方、吸収体、容器、ケージなどの非常に複雑な形状も作り上げることができ、次いで本発明により被覆できる。
【0019】
取り込み率が高いので遮蔽は極めて効果的なので、皮膜は極めて薄くできる。慣用的な方法で製造可能な遮蔽体を基準にして最大50%まで重量を削減できる。従来燃料貯蔵のための容器計画に使用されている約10tの内部貯蔵容器(ケージ)は、本発明の方法によれば4ないし6tのオーダーで製造できる。
【0020】
基礎材料は、完成品又は個別部材として作製できるので、個別部材から完成した吸収体を形成することが可能である。吸収体又は吸収体の部材を組み合わせて完成した貯蔵所又はかご形コンテナにすることは、摩擦接続及び/又は形状接続を用いた結合により可能である。本発明は、完全な貯蔵所及びかご形コンテナの被覆も可能である。分散浴中の被覆は、化学的手段又は電気分解によって行われる。
【0021】
被覆しようとする表面と分散浴との間の相対運動は、たとえば被覆しようとする部材を分散浴中で動かすことによって行うことができる。公知のようにホウ素などの元素の性状に基づき、分散を循環させたりポンピングしたりすることは実用において経済的に可能ではない。どのような循環装置やポンプユニットも極めて短時間で詰まってしまうであろう。それにもかかわらず相対運動によって、一方では分散の引き続き良好な混ぜ合わせ又は反復混ぜ合わせが達成され、他方では被覆しようとする表面に分散を的確に誘導できる。部材自体を動かすことの他に、相対運動を形成する目的で被覆設備全体を動かすこともできる。たとえば一種のドラム内で被覆を実施することも考えられる。相対運動は、浴を機械的に動かし、気体、特に空気を送入し、超音波を援用し、あるいは以上を併用することによって行うこともできる。
【0022】
本発明により特に有利には、被覆しようとする表面を分散浴中で上に向けて配置することが提案される。これは、分散中に存在する粒子が重力に基づいて表面上に沈降するように、被覆しようとする表面を分散浴中に配置することを意味する。本発明によるこのような配置方式は、特に表面と分散浴との間で時々相対運動を形成することと組み合わせて、卓越した被覆結果を助成する。
【0023】
本発明により特に有利には、この被覆法をセラミック槽又はガラス槽で実施することが提案される。これにより分散浴の特別の純度が保証される。
本発明により、簡単に実施可能で、経済的で、非常に効果的な、中性子吸収のための吸収体を製造する方法が提供され、特に基礎材料に制約されずに、比較可能な吸収作用で公知の遮蔽体よりも著しく軽量の吸収体を製造できる。
【0024】
さらに、上記の方法によって製造された吸収体に関する。これらの吸収体は、中性子捕獲断面積の大きい元素とニッケルとから形成された被覆を有しており、中性子捕獲断面積の大きい元素又はその化合物の割合が、最大60容積%もしくは40容積%であることを特徴とする。膜厚は350ないし500μm、最大800μmであり、鋼、チタン、銅などの無機基礎材料上に皮膜が形成されている。最大2000μmの膜厚が実現可能である。この形成は化学的手段もしくは電気分解によって行われる。遮蔽体は完成した形態で被覆するか、被覆された個別部材を組み立てることができる。電解質として、たとえば外部電流を用いない場合はニッケル・リン、電気分解の場合にはニッケルが考えられる。
【0025】
実験において、慣用的な鋼板をニッケル/炭化ホウ素分散浴を電気分解によって被覆した。この際に、板を浴中で半時間毎に反転させ、かつ時々上下に動かして、一方では表面と分散浴との間に相対運動を形成し、他方ではその都度被覆すべき表面を上に向けて浴中に配置した。その後で行った分析の結果、40容積%の範囲の炭化ホウ素をニッケルマトリックスに組み込むことができた。

Claims (12)

  1. 放射性物質の核反応時に発生する中性子を吸収するための被覆を製造する方法であって、基礎材料からなる遮蔽体の少なくとも一部の予め設定した表面に、分散浴中で中性子捕獲断面積の大きい元素と電気分解もしくは自触媒により析出可能な金属元素とから形成された皮膜を設け、この被覆過程中にその都度被覆しようとする表面と分散浴との間で少なくとも時々相対運動を作り出し、中性子捕獲断面積の大きい元素が導電性化合物の形で分散浴中に存在しており、
    中性子捕獲断面積が大きい元素として、ホウ素、ガドリニウム、カドミウム、サマリウム、ユーロピウム又はジスプロシウムの群から少なくとも1つの元素を使用し、
    電気分解もしくは自触媒により析出可能な金属元素として、ニッケル、カドミウム又は銅の群から少なくとも1つの元素を使用し、
    中性子捕獲断面積の大きい元素の導電性化合物として金属化合物を使用することを特徴とする方法。
  2. 中性子捕獲断面積の大きい元素の導電性化合物としてホウ化金属を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 中性子捕獲断面積の大きい元素を、中性子捕獲断面積を大きくした同位体の形で使用することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 被覆しようとする部材を動かすことによって相対運動を作り出すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 気体の送入及び/又は超音波供給によって相対運動を作り出すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
  6. 皮膜形成が化学的に行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 皮膜形成が電気分解によって行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
  8. 厚さが最大800μmの皮膜を形成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 中性子捕獲断面積の大きい元素又は化合物を最大60容積%まで金属マトリックスに組み込むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 被覆過程の間に分散浴を少なくとも時々混ぜ合わせることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
  11. セラミック槽又はガラス槽で実施することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法にて製造された吸収体において、同吸収体が無機基礎材料からなり、その上に中性子捕獲断面積の大きい元素と電気分解もしくは自触媒により析出可能な金属元素とから形成された皮膜を付けており、被覆中に中性子捕獲断面積の大きい元素が最大60容積%含有されていることを特徴とする吸収体。
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