JP2013190263A - 熱中性子吸収材料及びそのコーティング方法 - Google Patents

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Yutaka Ishiwatari
裕 石渡
Yoshinori Katayama
義紀 片山
Toshiyuki Fujita
敏之 藤田
Kenichi Yoshioka
研一 吉岡
Yamato Hayashi
大和 林
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Abstract

【課題】熱中性子を十分に吸収し、例えば溶融炉心の解体作業中に再臨界状態の発生を確実に防止することが可能な熱中性子吸収材料を提供する。
【解決手段】実施形態の熱中性子吸収材料は、熱中性子吸収断面積が100バーン以上の粒子状の熱中性子吸収材と、前記熱中性子吸収剤の表面に被覆された金属層と、を具える。
【選択図】なし

Description

本発明の実施形態は、熱中性子吸収材料及びそのコーティング方法に関する。
原子力発電所におけるシビアアクシデントでは冷却材による炉心の冷却が不足し、炉心溶融が生じるような事象が想定される。原子炉が停止した状態であっても炉心溶融により燃料の形状が変化することにより原子炉が再び臨界となる「再臨界」事象は、原子炉圧力容器や格納容器、原子炉建屋の損傷を引き起こし、放射性物質の環境への放出につながる可能性がある。したがって再臨界を防ぐことは放射性物質の閉じ込めの観点から重要である。
一方、シビアアクシデントにより炉心溶融が生じた場合は、冷温停止後に圧力容器、格納容器から溶融炉心を搬出してキャスク等の長期保管容器内に密閉する必要がある。しかしながら、溶融炉心は圧力容器や格納容器と溶融・反応して一体化していることが想定され、大きさ及び重量的に炉内で切断・分割して搬出することになる可能性が高い。このような場合、圧力容器や格納容器の一部は水で満たされていると考えられ、溶融炉心の切断は水に浸された状態で行う可能性が高くなる。
また、冷温停止状態においても極小規模の核分裂は起こっていると考えられ、核分裂で発生する高速中性子は水によって減速され、核分裂を起こし易い熱中性子に変換される。したがって、溶融炉心の切断面が水と接触することによって熱中性子が生成され、核分裂反応が活発化して再臨界になることも想定され、このような事態を防止することが重要である。
再臨界防止方法として、溶融炉心に孔を明けて、熱中性子吸収材を設置する方法が考えられているが、この方法では熱中性子の吸収効果が局所に限定されるため、広範囲に亘り効果的に核分裂反応を抑制することは困難である。また、上述のように、溶融炉心は格納容器及び圧力容器と一体化していることが想定され、溶融炉心の位置、大きさ及び形状の確定が困難であるために、熱中性子吸収材の設置場所を特定できないことも想定される。
このようなことをかんがみて、例えば直径0.2〜2mmの球状の鉛粉の表面にホウ化物をコーティングしてなる放射線遮蔽材が開示されている。この放射線遮蔽材は、織布、不織布もしくは樹脂フィルムからなる袋の中に入れたり、放射線遮蔽材と樹脂とを混合して煉瓦状や板状等の任意の形状に成形したり、放射線遮蔽材と樹脂とを混合した後で射出可能な容器に収容するようにして用いる。しかしながら、上記放射線遮蔽材は鉛を用いているために、中性子を遮蔽・吸収することができず、被覆材であるほう化物では体積的に効果的な中性子吸収効果は期待できない。
また、金属基材の表面に金属アルミニウム粉末と炭化ホウ素(BC)粉末とを溶射によりコーティングする方法が提案されているが、炭化ホウ素は溶融温度に達する前に熱で分解してしまうので、炭化ホウ素による中性子遮蔽・吸収の効果は期待できない。
特開2011−7510号
本発明が解決しようとする課題は、熱中性子を十分に吸収し、例えば溶融炉心の解体作業中に再臨界状態の発生を防止することが可能な熱中性子吸収材料を提供することである。
実施形態の熱中性子吸収材料は、熱中性子吸収断面積が100バーン以上の粒子状の熱中性子吸収材と、前記熱中性子吸収剤の表面に被覆された金属層と、を具える。
本発明によれば、熱中性子を十分に吸収し、例えば溶融炉心の解体作業中に再臨界状態の発生を防止することができる。
実施形態における熱中性子吸収材料の製造装置の概略構成を示す図である。 実施形態における熱中性子吸収材料のコーティング装置の概略構成を示す図である。 実験例における銅粒子の平均粒子径と、当該銅粒子からなる被覆層の最大膜厚及び最小膜厚との関係を示すグラフである。
(熱中性子吸収材料)
本実施形態の熱中性子吸収材料は、熱中性子吸収断面積が100バーン以上の粒子状の熱中性子吸収材を含むことが必要である。
本発明者らは、様々な金属材料や化合物について熱中性子の吸収特性や物性を調査した結果、熱中性子吸収材として、熱中性子吸収断面積の大きい材料、具体的には、100バーン以上の熱中性子吸収断面積を有する材料が効果的に熱中性子を吸収できることを見出した。
このような材料としては、ホウ素(759)、ロジウム(155)、カドミウム(2450)、インジウム(194)、サマリウム(5800)、ユーロピウム(4300)、ガドリニウム(46000)、ジスプロシウム(940)及びエルビウム(160)(括弧内の数値は熱中性子吸収断面積(バーン)を表わす)。
これらの中でも安全性、入手性及びコスト等の観点から、ガドリニウム及びホウ素を用いることが好ましい。但し、ガドリニウム及びホウ素は化学的に不安定であるので、一般には酸化ガドリニウム(ガドリア:Gd)及び炭化ホウ素(BC)の形態で用いる。
また、本実施形態の熱中性子吸収材料は、上記熱中性子吸収材の表面を金属層で被覆することが必要である。
上述した酸化ガドリニウムは融点が2330℃と高く、所定の部材に対してコーティングするために使用できる方法がスパッタリング法や電子ビーム蒸着法、プラズマ溶射法等に限られてしまう。スパッタリング法や電子ビーム蒸着法等は、圧力容器や格納容器と溶融炉心との一体化物、あるいはこの一体化物を切断及び分割した部材のような大型の部材に対するコーティング法としては不適切である。また、上記手法を用いた装置は大型であるための原子炉内に搬入することも極めて困難である。
したがって、酸化ガドリニウムを部材にコーティングするに際しては、比較的小型の装置を使用するコールドスプレー法やプラズマ溶射法を除く溶射法を用いることが考えられる。しかしながら、酸化ガドリニウムは延性に劣るため、塑性変形を利用してコーティングを行うコールドスプレー法もあまり適した方法ではない。また、酸化ガドリニウムの融点が極めて高いために溶射法も多量のエネルギーを必要とし、コーティングコストが増大するとともに、安定したコーティングを行うことができない。
また、炭化ホウ素の融点も2450℃と高く、酸化ガドリニウムの場合と同様に、使用できるコーティング手法は、スパッタリング法や電子ビーム蒸着法、プラズマ溶射法等に限られてしまうが、酸化ガドリニウムの場合と同様にこれら手法は炭化ホウ素のコーティング手法としては不適当である。
したがって、コールドスプレー法やプラズマ溶射法を除く溶射法を用いることが考えられるが、炭化ホウ素は融点近傍で分解してしまうため、溶射法を用いた場合は、上述した炭化ホウ素の分解によって所定の部材に対して炭化ホウ素のコーティングを行うことができない。また、炭化ホウ素も、酸化ガドリニウムと同様に延性に劣るため、塑性変形を利用してコーティングを行うコールドスプレー法もあまり適した方法ではない。
しかしながら、本実施形態では、熱中性子吸収材の表面を金属層で覆っているので、上述したコールドスプレー法や溶射法を用いて、熱中性子吸収材である酸化ガドリニウム及び炭化ホウ素の、部材に対するコーティングを行うことができる。
すなわち、金属層は、酸化ガドリニウムや炭化ホウ素と比較すると融点が低く、また延性にも富む。したがって、コールドスプレー法を用いた場合は、表面の金属層が塑性変形して膜状となるので、金属被覆層中に粒子状の酸化ガドリニウム及び炭化ホウ素が分散するようになる。したがって、所定の部材に対しては、いわゆる金属被覆層をマトリックス層として粒子状の酸化ガドリニウム及び炭化ホウ素が分散した、いわばグラニュラー膜のような態様で熱中性子吸収材料のコーティングを行うことが可能となる。
また、溶射法を用いた場合は、表面の金属層が溶融して膜状となるので、上記同様に、金属被覆層中に粒子状の酸化ガドリニウム及び炭化ホウ素が分散するようになる。したがって、所定の部材に対しては、いわゆる金属被覆層をマトリックス層として粒子状の酸化ガドリニウム及び炭化ホウ素が分散した、いわばグラニュラー膜のような態様で熱中性子吸収材料のコーティングを行うことが可能となる。
なお、上述したコールドスプレー法や溶射法は、本実施形態の熱中性子吸収材料をコーティングするのに好ましい手法を例示したに過ぎず、本実施形態の熱中性子吸収材料を所定の部材に対してコーティングすることができれば、他のコーティング手法を用いてもよい。
本実施形態におけるコールドスプレー法は、不活性ガスを用いてコーティング粒子を加速し、基材に衝突させ皮膜を形成する方法である。また、溶射法は、装置が大掛かりになるプラズマ溶射法を除くものであり、アーク溶射法、フレーム溶射法等の公知の方法である。
ホウ素は、質量数が10の10Bと質量数が11の11Bがあるが、11Bはほとんど熱中性子を吸収しない。一方、自然界に存在するホウ素は圧倒的に11Bであるので、ホウ素すなわち炭化ホウ素を熱中性子吸収材料として用いる場合は、10Bを濃縮させ、例えば90原子%以上まで濃縮させた後に、炭化ホウ素とすることが好ましい。なお、濃縮方法は、化学交換蒸留法等、汎用の方法を用いて行うことができる。
熱中性子吸収材として酸化ガドリニウムを用いる場合、熱中性子吸収材を被覆する金属層は、ガドリニウムよりも酸化物標準生成自由エネルギーが高い金属から構成することが好ましい。これによって、以下に説明する熱中性子吸収材料の製造方法において、熱中性子吸収材を被覆する金属層の構成金属が、ガドリニウムよりも酸化されにくくなるので、熱中性子吸収材を構成する酸化ガドリニウムを還元してしまうことがない。したがって、酸化ガドリニウムにおいて酸素欠損を生じることがないので、不活性で取扱が容易であり、均一な金属層が形成された熱中性子吸収材料を提供することができる。
同様に、熱中性子吸収材として炭化ホウ素を用いる場合、熱中性子吸収材を被覆する金属層は、ホウ素よりも炭化物標準生成自由エネルギーが高い金属から構成することが好ましい。これによって、以下に説明する熱中性子吸収材料の製造方法において、熱中性子吸収材を被覆する金属層の構成金属が、ホウ素よりも炭化されにくくなるので、熱中性子吸収材を構成する炭化ホウ素を脱炭してしまうことがない。したがって、炭化ホウ素において炭素欠損を生じることがないので、不活性で取扱が容易であり、均一な金属層が形成されたな熱中性子吸収材料を提供することができる。
なお、本実施形態では、熱中性子吸収材を粒子状の酸化ガドリニウム及び炭化ホウ素の混合物とすることもできる。熱中性子吸収材には、熱中性子を吸収するに際し、好ましいエネルギー帯域(エネルギースペクトル範囲)があるとされており、複数の材料を組み合わせることにより、広範囲のエネルギー帯域に分散する熱中性子の吸収が可能となる。
この場合、熱中性子吸収剤を被覆する金属層は、酸化ガドリニウムを還元せず、かつ炭化ホウ素を脱炭しないように、ガドリニウムよりも酸化物標準生成自由エネルギーが高く、ホウ素よりも炭化物標準生成自由エネルギーが高い金属から構成することが好ましい。
上述したガドリニウムよりも酸化物標準生成自由エネルギーが高く、ホウ素よりも炭化物標準生成自由エネルギーが高い金属としては、入手が容易であって安価であるとの観点から、銅、アルミニウム及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なお、これらは単独で用いることもできるし、適宜合金化して用いることもできる。
なお、上述した要件を満足すれば、熱中性子吸収材料の金属層を構成する金属は、上述したものに限定されない。
(熱中性子吸収材料の製造方法)
次に、本実施形態の熱中性子吸収材料の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態の熱中性子吸収材料の製造方法の説明図である。熱中性子吸収材料を製造するに際しては、ステンレス製の密閉容器(ドラム)11と、容器11内に投入されたステンレス鋼製のボール12と、容器11を揺動及び回転させるローラ13とを有する製造装置10を用い、容器11内に上述した要件を満足する熱中性子吸収材16及び金属層の原料となる金属粒子17とを入れる。なお、金属粒子17の酸化防止のために、容器11内にはアルゴン等の不活性ガスを充填させておくことが好ましい。
上述した状態で、ローラ13を図示しないモータ等で回転させ、容器11を揺動及び/又は回転させる。すると、熱中性子吸収材16及びボール12に挟まれた金属粒子17が薄片状に変形し、熱中性子吸収材16の表面に凝着し、層状となる。なお、容器11の大きさ(体積)、ボール12の大きさ(体積)及びローラ13による揺動、回転等の諸条件は、適宜に設定する。
なお、本実施形態における製造方法においては、熱中性子吸収材16の粒子径をDとし、金属粒子17の粒子径をdとした場合に、d/Dが1/50以上1/5以下、好ましくは1/20以上1/10以下とする。この場合、特に理由は明確でないが、熱中性子吸収材16の表面に形成された金属層の厚さが均一となる
なお、上述した下限値は、主として金属粒子17の製造コスト、所定の厚さの金属層を得るのに必要な処理時間及び取扱の容易性から決定づけられるものである。すなわち、微粉の銅粒子は製造が容易でないので、製造コストが高くなるとともに、所定の厚さを得るためには多くの銅粒子を付着させる必要があり処理時間が長くなる。また、ハンドリングの際に飛散してしまう可能性が大きくなるので、取扱が煩雑となる。
本実施形態における製造方法はあくまでも一例であり、上述した構成の熱中性子吸収材料が形成される限りにおいて、製造方法は特に限定されない。
(熱中性子吸収材料のコーティング方法)
次に、本実施形態の熱中性子吸収材料のコーティング方法について説明する。
図2は、本実施形態の熱中性子吸収材料のコーティング方法の説明図である。なお、本実施形態では、水中で溶融炉心に熱中性子吸収材料をコーティングする場合について説明する。上述したように、溶融炉心は、格納容器等と一体化していると考えられるが、本実施形態では、簡略化のため、このような一体化物も溶融炉心として扱うこととする。
本実施形態では、図2に示すように、コーティングチャンバー21と、コーティングチャンバー21の上面に配設されたガス導入配管22と、コーティングチャンバー21の上面中央部に配設されたコーティングガン23とを有するコーティング装置20を用いる。なお、ガス導入配管22の後方には、高圧ガスを供給するための図示しないボンベ及びレギュレータ等が配設されており、これらはガス導入配管22とともに高圧ガス供給手段を構成する。また、コーティングガン23の後方には熱中性子吸収材料Mをコーティングガン23に供給するための供給ケーブル24が配設されている。
熱中性子吸収材料Mの溶融炉心Oへのコーティングは、図2に示すコーティング装置20を溶融炉心Oが浸漬して存在している水中W内に投入し、ガス導入配管22から例えば高圧の大気またはAr、He、N等の不活性ガスGをコーティングチャンバー21内に導入し、コーティングチャンバー21と溶融炉心Oとの間に存在する水Wを排除する。
一方、このような状態において、熱中性子吸収材料Mを供給ケーブル24からコーティングガン23に供給し、コーティングガン23から熱中性子吸収材料Mを溶融炉心Oに向けて噴出させ、溶融炉心Oの表面に熱中性子吸収材料Mからなる層Sを形成する。これによって、層Sにより溶融炉心Oから放出される熱中性子を吸収することができる。
コーティング装置20は、例えば図示しない多軸のロボットアームに固定されており、コーティングチャンバー21と溶融炉心Oとの距離を一定に保つようにセンサで感知しながら水平方向、鉛直方向、必要に応じてチルトさせながら高範囲に亘って層Sを形成できるようになっている。
なお、コーティングガン23は、コールドスプレー法や溶射法を適用できるように構成することができる。
本実施形態におけるコーティング方法はあくまでも一例であり、上述した構成の熱中性子吸収材料Mの層Sが形成される限りにおいて、コーティング方法は特に限定されない。
(実験例1)
本実験例では平均粒子径が22〜44μmの酸化ガドリニウム粒子、炭化ホウ素粒子、及び濃縮炭化ホウ素粒子(濃縮度90%)の表面に、図1に示すような装置を用いて銅を厚さ5〜7μmに被覆した粒子状の熱中性子吸収材料を製造し(平均粒子径約40μm)、それぞれプラズマ溶射、高速フレーム溶射、コールドスプレーの3種類のプロセスについて炭素鋼基材へのコーティング試験を行った。なお、コールドスプレーの場合はメッシュにより分級し平均粒子径が約20μmのものを用いた。比較例として、銅被覆を行わなかった上記酸化ガドリニウム粒子及び炭化ホウ素粒子についても同様な試験を行った。結果を表1に示す。
なお、プラズマ溶射は、電流:700A、電圧:40V、出力:35kW、プラズマ形成ガス:Ar+He、溶射距離100mmなる条件で行い、高速フレーム溶射は、燃料:灯油、酸素流量:500L/分、溶射距離320mmなる条件で行い、コールドスプレーは、ガス:He、ガス温度:200〜300℃、ガス圧力:3MPa、距離5mmなる条件で行った。
Figure 2013190263
表1から明らかなように、銅を被覆した酸化ガドリニウム粒子はいずれのコーティングプロセスでも良好な皮膜が形成されたが、炭化ホウ素粒子及び濃縮炭化ホウ素粒子については、エネルギーの高いプラズマ溶射、高速フレーム溶射では良好な皮膜が形成されたが、コールドスプレーでは多孔質の皮膜になった。この原因は炭化ホウ素粒子の形状が酸化ガドリニウム粒子に比べて角張っていたため、その隙間を金属被覆層で埋め切れなかったためと考えられる。しかしながら、銅被覆をした場合は、いずれの方法においても連続した皮膜として形成できるので、溶融炉心に対して形成した場合において、当該溶融炉心から放出される熱中性子を吸収できることが分かる。
一方、銅被覆を行わなかった酸化ガドリニウム粒子については、最もエネルギーが高いプラズマ溶射でのみ多孔質な皮膜が形成できたが、高速フレーム溶射やコールドスプレーでは全く皮膜が形成されなかった。炭化ホウ素粒子については本実験の範囲内ではいずれのコーティング方法でもコーティングができず皮膜を形成することができなかった。
以上より、高融点、硬質の熱中性子吸収材の表面を銅等の金属で被覆することにより、汎用の溶射、コールドスプレーでコーティングが可能になることが判明した。
(実験例2)
本実験例では平均粒子径が22〜44μmの酸化ガドリニウム粒子を用い、この酸化ガドリニウム粒子に対して、アルミニウム、ニッケル、及びイットリウムを厚さ4〜8μmに形成して、粒子状の熱中性子吸収材料(平均粒子径(約40μm))を製造した。なお、実験例1と同じくコールドスプレーの場合はメッシュにより分級し平均粒子径が約20μmのものを用いた。その後、実験例1と同様に、プラズマ溶射、高速フレーム溶射、コールドスプレーの3種類について、炭素鋼基材へのコーティング試験を行った。形成された皮膜の外観検査は目視で行い、生成物の同定はX線回折を用いて行った。結果を表2に示す。なお、各コーティング手法の条件は実験例1と同様とした。
Figure 2013190263
表2から明らかなように、酸化ガドリニウム粒子にアルミニウムの層を形成した場合は、いずれのコーティング手法でも良好な皮膜が得られたが、ニッケルの層を形成した場合は、銅やアルミニウムに比べて融点が高く軟化し難いので、コールドスプレーでは多少多孔質な皮膜が形成された。一方、イットリウムで被覆した粒子を用いた皮膜は多孔質に加えて多数の微細な割れが観察された。
皮膜のX線回折結果から、イットリウムで被覆した粒子を用いた場合は、酸化ガドリニウムの回折ピークに加えて、酸化イットリウム、ガドリニウムとイットリウムとの金属間化合物の回折ピークも同定されたことから、ガドリニウムに比べて酸化物標準生成エネルギーが低いイットリウム被覆層が酸化ガドリニウムの一部を還元するとともに、還元されたガドリニウムとイッリウムが脆い金属間化合物相を形成していることが判明した。
すなわち、ガドリニウムに比べて酸化物標準生成エネルギーが低いイットリウムで酸化ガドリニウム粒子を被覆した場合、高エネルギーのプラズマ溶射及び高速フレーム溶射では、イットリウムの還元作用が促進されて、皮膜の形成はできず、低エネルギーのコールドスプレーの場合はイットリウムの還元作用が低減されるので、多孔質ではあるが皮膜の形成が可能であることが判明した。
以上の結果から、熱中性子吸収材であるガドリニウム、ホウ素に比べて酸化物、炭化物の標準生成エネルギーが低い金属材料で被覆した場合には、酸化ガドリニウム、炭化ホウ素を還元・分解する可能性があり、熱中性子吸収材料による皮膜の形成にはあまり適してしないことが明らかとなった。
(実験例3)
本実験例では平均粒子径が22〜44μmの酸化ガドリニウム粒子を用い、この酸化ガドリニウム粒子に対して、平均粒子径約16μm、約8μm、約4μm及び約2μm(それぞれ、酸化ガドリニウム粒子の平均粒子径の約1/2、1/5、1/10及び1/20)の銅粒子を選択し、実験例1と同様にして粒子状の熱中性子吸収材料を製造した。
次いで、粒子状の熱中性子吸収材料を樹脂にモールドし、熱中性子吸収材料が露出するまで樹脂を研磨し、露出した材料の断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより、前記材料の表面に形成された銅被覆層の厚さを測定した。被覆層の厚さは上記試験条件毎にランダムに30点測定し、その平均を基準(100%)として、測定された最大膜厚と最小膜厚の比を求めた。
図3は、銅粒子の平均粒子径と、最大膜厚及び最小膜厚との関係を示すグラフである。図3から明らかなように、銅粒子の平均粒子径が酸化ガドリニウム粒子の平均粒子径の1/5以下となることにより、最大膜厚及び最小膜厚の差が減少し始め、銅粒子の平均粒子径が酸化ガドリニウム粒子の平均粒子径の1/10以下となることにより、最大膜厚及び最小膜厚の差がほぼ均一となることが分かる。したがって、酸化ガドリニウム粒子に対して被覆層を構成する金属粒子の平均粒子径を1/5以下、好ましくは1/10以下とすることにより、被覆層の厚さが極めて均一となることが分かる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、上述した具体例では、熱中性子吸収材料を溶融炉心に対してコーティングすることについて述べてきたが、燃料解体用機器の保護や、燃料保管用の容器等の金属部材に対してコーティングし、このような金属部材が熱中性子によって汚染されるのを防止することもできる。
10 製造装置
11 密閉容器
12 ボール
13 ローラ
20 コーティング装置
21 コーティングチャンバー
22 ガス導入配管
23 コーティングガン
24 熱中性子吸収材料の供給ケーブル

Claims (10)

  1. 熱中性子吸収断面積が100バーン以上の粒子状の熱中性子吸収材と、
    前記熱中性子吸収剤の表面に被覆された金属層と、
    を具えることを特徴とする、熱中性子吸収材料。
  2. 前記熱中性子吸収材は酸化ガドリニウムを含み、前記金属層はガドリニウムよりも酸化物標準生成自由エネルギーが高い金属を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱中性子吸収材料。
  3. 前記熱中性子吸収材は炭化ホウ素を含み、前記金属層はホウ素よりも炭化物標準生成自由エネルギーが高い金属を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱中性子吸収材料。
  4. 前記熱中性子吸収材は酸化ガドリニウム及び炭化ホウ素を含み、前記金属層はガドリニウムよりも酸化物標準生成自由エネルギーが高く、ホウ素よりも炭化物標準生成自由エネルギーが高い金属を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱中性子吸収材料。
  5. 前記金属層は、銅、アルミニウム、及びニッケルからなる群よりより選ばれる少なくとも一種の金属を含むことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一に記載の熱中性子吸収材料。
  6. 前記金属層は金属粒子を含み、当該金属粒子の平均粒子径が前記熱中性子吸収材の平均粒子径の1/50以上1/5以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の熱中性子吸収材料。
  7. 請求項1〜6のいずれか一に記載の熱中性子吸収材料のコーティング方法であって、
    前記熱中性子吸収材料をコールドスプレー法又は溶射法によって所定の部材の表面にコーティングすることを特徴とする、熱中性子吸収材料のコーティング方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか一に記載の熱中性子吸収材料のコーティング方法であって、
    コーティングチャンバー、当該コーティングチャンバーの上面に配設された高圧ガス供給手段及び前記上面に配設されたコーティングガンを具えたコーティング装置を用い、前記高圧ガス供給手段から高圧ガスを供給し、前記コーティングガンと所定の部材との間に介在する水を排除しながら、前記コーティングガンより前記熱中性子吸収材料を前記部材の表面に供給し、コーティングすることを特徴とする、熱中性子吸収材料のコーティング方法。
  9. 請求項1〜6のいずれか一に記載の熱中性子吸収材料でコーティングされたことを特徴とする、金属部材。
  10. 請求項1〜6のいずれか一に記載の熱中性子吸収材料のコーティング装置であって、
    コーティングチャンバー、当該コーティングチャンバーの上面に配設された高圧ガス供給手段及び前記上面に配設されたコーティングガンを具えたことを特徴とするコーティング装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013205359A (ja) * 2012-03-29 2013-10-07 Toshiba Corp ゲル状中性子吸収材及び炉心溶融物回収方法
JP2020056800A (ja) * 2020-01-08 2020-04-09 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 溶融核燃料収納容器用の粒状体の製造方法、及び溶融核燃料収納容器
CN113481503A (zh) * 2020-11-06 2021-10-08 江苏清联光电技术研究院有限公司 一种硼颗粒增强金属基复合材料的制备方法、复合材料及其应用

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