以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。本発明による液晶表示装置は、優れた表示特性を有するので、アクティブマトリクス型液晶表示装置に好適に利用される。以下では、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置について、本発明の実施形態を説明する。本発明はこれに限られず、MIMを用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置にも適用することができる。
なお、本願明細書においては、表示の最小単位である「絵素」に対応する液晶表示装置の領域を「絵素領域」と呼ぶ。カラー液晶表示装置においては、R,G,Bの「絵素」を含む複数の「絵素」が1つの「画素」に対応する。アクティブマトリクス型液晶表示装置においては、絵素電極と絵素電極に対向する対向電極とが絵素領域を規定する。また、単純マトリクス型液晶表示装置においては、ストライプ状に設けられる列電極と列電極に直交するように設けられる行電極とが互いに交差するそれぞれの領域が絵素領域を規定する。なお、ブラックマトリクスが設けられる構成においては、厳密には、表示すべき状態に応じて電圧が印加される領域のうち、ブラックマトリクスの開口部に対応する領域が絵素領域に対応することになる。
(実施形態1)
図1(a)および(b)を参照しながら、本実施形態における液晶表示装置100の1つの絵素領域の構造を説明する。以下では、説明の簡単さのためにカラーフィルタやブラックマトリクスを省略する。また、以下の図面においては、液晶表示装置100の構成要素と実質的に同じ機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、その説明を省略する。図1(a)は、絵素領域を基板法線方向から見た上面図であり、図1(b)は図1(a)中の1B−1B’線に沿った断面図に相当する。図1(b)は、液晶層に電圧を印加していない状態を示している。
液晶表示装置100は、アクティブマトリクス基板(以下「TFT基板」と呼ぶ。)100aと、対向基板(「カラーフィルタ基板」とも呼ぶ)100bと、TFT基板100aと対向基板100bとの間に設けられた液晶層30とを有している。液晶層30の液晶分子30aは、負の誘電率異方性を有し、TFT基板100aおよび対向基板100bの液晶層30側の表面に設けられた垂直配向層としての垂直配向膜(不図示)によって、液晶層30に電圧が印加されていないとき、図1(b)に示したように、垂直配向膜の表面に対して垂直に配向する。このとき、液晶層30は垂直配向状態にあるという。但し、垂直配向状態にある液晶層30の液晶分子30aは、垂直配向膜の種類や液晶材料の種類によって、垂直配向膜の表面(基板の表面)の法線から若干傾斜することがある。一般に、垂直配向膜の表面に対して、液晶分子軸(「軸方位」とも言う。)が約85°以上の角度で配向した状態が垂直配向状態と呼ばれる。
液晶表示装置100のTFT基板100aは、透明基板(例えばガラス基板)11とその表面に形成された絵素電極14とを有している。対向基板100bは、透明基板(例えばガラス基板)21とその表面に形成された対向電極22とを有している。液晶層30を介して互いに対向するように配置された絵素電極14と対向電極22とに印加される電圧に応じて、絵素領域ごとの液晶層30の配向状態が変化する。液晶層30の配向状態の変化に伴い、液晶層30を透過する光の偏光状態や量が変化する現象を利用して表示が行われる。
各絵素領域は、TFT基板100a側から入射する光(典型的にはバックライトからの光)を用いて透過モードの表示を行う透過領域Tと、対向基板100b側から入射する光(典型的には外光)を用いて反射モードの表示を行う反射領域Rとを有している。本実施形態では、絵素電極14が、透明導電材料から形成された透明電極と、光反射性を有する導電材料から形成された反射電極とを有しており、透明電極によって透過領域Tが規定され、反射電極によって反射領域Rが規定される。なお、反射電極の表面に微小な凹凸形状を付与すると、反射電極によって光を拡散反射することが可能になるので、ペーパーホワイトに近い白表示を実現することができる。
透過モードの表示では、表示に用いられる光は液晶層30を1回通過するだけであるのに対して、反射モードの表示では、表示に用いられる光は液晶層30を2回通過する。図1(b)に示すように、反射領域R内の液晶層30の厚さdrを、透過領域T内の液晶層30の厚さdtよりも小さくすることによって、反射モードに用いられる光に対して液晶層30が与えるリタデーションを、透過モードに用いられる光に対して液晶層30が与えるリタデーションに近くすることができる。反射領域R内の液晶層30の厚さdrを、透過領域T内の液晶層30の厚さdtの略1/2とすると、両表示モードに用いられる光に対して液晶層30が与えるリタデーションを略等しくすることができる。
対向基板100bは、反射領域R内に位置する上段面100b1と、透過領域T内に位置する下段面100b2と、上段面100b1と下段面100b2とを結ぶ側面100b3とを有する段差を有しており、そのことによって、反射領域R内の液晶層30の厚さdrが透過領域T内の液晶層30の厚さdtよりも小さくなっている。対向基板100bの段差は、具体的には、対向基板100bの反射領域Rに選択的に透明誘電体層29を設けることによって形成されている。段差の側面100b3は、反射領域R内に位置しており、対向電極22によって覆われている。
次に、本発明による液晶表示装置100が有する絵素電極14の構造とその作用とを説明する。
絵素電極14は、図1(a)および(b)に示すように、導電膜(例えばITO膜やアルミニウム膜)から形成された中実部14aと、導電膜が形成されていない非中実部14bとを有している。
中実部14aは、それぞれが非中実部14bによって実質的に包囲された複数の領域(「単位中実部」と称する)14a’を有している。これらの単位中実部14a’は、実質的に同じ形状で同じ大きさを有しており、各単位中実部14a’は、略円形である。単位中実部14a’同士は、典型的には、各絵素領域内で相互に電気的に接続されている。図1(b)に例示する構成では、絵素電極14は、9つの単位中実部14’を有しており、そのうちの3つ(紙面の中央)が透明電極であり、残りの6つ(紙面の上側および下側)が反射電極である。
非中実部14bは、複数の開口部14b1を有している。これらの開口部14b1は、実質的に同じ形状で同じ大きさを有しており、その中心が正方格子を形成するように配置されている。絵素領域の中央の単位中実部14a’は、1つの単位格子を形成する4つの格子点上に中心が位置する4つの開口部14b1によって実質的に囲まれている。各開口部14b1は、4つの4分の1円弧状の辺(エッジ)を有し、且つ、その中心に4回回転軸を有する略星形である。
非中実部14bは、さらに、複数の切欠き部14b2を有している。複数の切欠き部14b2は、絵素領域の端部に配置されている。絵素領域の辺に対応する領域に配置された切欠き部14b2は、開口部14b1の約2分の1に相当する形状を有し、絵素領域の角に対応する領域に配置された切欠き部14b2は、開口部14b1の約4分の1に相当する形状を有している。絵素領域の端部に配置された単位中実部14a’は、切欠き部14b2と開口部14b1とによって実質的に包囲されている。切欠き部14b2は、規則的に配置されており、開口部14b1と切欠き部14b2とが絵素領域の全体にわたって(端部にまで)単位格子を形成している。開口部14b1および切欠き部14b2は、絵素電極14となる導電膜をパターニングすることによって形成される。
上述したような構成を有する絵素電極14と対向電極22との間に電圧を印加すると、中実部14aの周辺(外周近傍)、すなわち、非中実部14bのエッジ部に生成される斜め電界によって、それぞれが放射状傾斜配向を有する複数の液晶ドメインが形成される。液晶ドメインは、開口部14b1に対応する領域と、単位中実部14a’に対応する領域とに、それぞれ1つずつ形成される。
ここでは、正方形の絵素電極14を例示しているが、絵素電極14の形状はこれに限られない。絵素電極14の一般的な形状は、矩形(正方形と長方形を含む)に近似されるので、開口部14b1や切欠き部14b2を正方格子状に規則正しく配列することができる。絵素電極14が矩形以外の形状を有していても、絵素領域内の全ての領域に液晶ドメインが形成されるように、規則正しく(例えば例示したように正方格子状に)開口部14b1や切欠き部14b2を配置すれば、本発明の効果を得ることができる。
上述した斜め電界によって液晶ドメインが形成されるメカニズムを図2(a)および(b)を参照しながら説明する。図2(a)および(b)は、液晶層30に電圧を印加した状態を示しており、図2(a)は、液晶層30に印加された電圧に応じて、液晶分子30aの配向が変化し始めた状態(ON初期状態)を模式的に示しており、図2(b)は、印加された電圧に応じて変化した液晶分子30aの配向が定常状態に達した状態を模式的に示している。図2(a)および(b)中の曲線EQは等電位線EQを示す。なお、図2(a)および(b)は、図1(a)中の2−2’線に沿った断面図に相当するが、説明の簡単さのために、対向基板100bの段差を省略して示している。
絵素電極14と対向電極22とが同電位のとき(液晶層30に電圧が印加されていない状態)には、図1(b)に示したように、絵素領域内の液晶分子30aは、両基板11および21の表面に対して垂直に配向している。
液晶層30に電圧を印加すると、図2(a)に示した等電位線EQ(電気力線と直交する)EQで表される電位勾配が形成される。この等電位線EQは、絵素電極14の中実部14aと対向電極22との間に位置する液晶層30内では、中実部14aおよび対向電極22の表面に対して平行であり、絵素領域の非中実部14bに対応する領域で落ち込み、非中実部14bのエッジ部(非中実部14bと中実部14aとの境界を含む非中実部14bの内側周辺)EG上の液晶層30内には、傾斜した等電位線EQで表される斜め電界が形成される。
負の誘電異方性を有する液晶分子30aには、液晶分子30aの軸方位を等電位線EQに対して平行(電気力線に対して垂直)に配向させようとするトルクが作用する。従って、エッジ部EG上の液晶分子30aは、図2(a)中に矢印で示したように、図中の右側エッジ部EGでは時計回り方向に、図中の左側エッジ部EGでは反時計回り方向に、それぞれ傾斜(回転)し、等電位線EQに平行に配向する。
ここで、図3(a)〜(d)を参照しながら、液晶分子30aの配向の変化を詳細に説明する。
液晶層30に電界が生成されると、負の誘電率異方性を有する液晶分子30aには、その軸方位を等電位線EQに対して平行に配向させようとするトルクが作用する。図3(a)に示したように、液晶分子30aの軸方位に対して垂直な等電位線EQで表される電界が発生すると、液晶分子30aには時計回りまたは反時計回り方向に傾斜させるトルクが等しい確率で作用する。従って、互いに対向する平行平板型配置の電極間にある液晶層30内には、時計回り方向のトルクを受ける液晶分子30aと、反時計回りに方向のトルクを受ける液晶分子30aとが混在する。その結果、液晶層30に印加された電圧に応じた配向状態への変化がスムーズに起こらないことがある。
図2(a)に示したように、本発明による液晶表示装置100の非中実部14bのエッジ部EGにおいて、液晶分子30aの軸方位に対して傾斜した等電位線EQで表される電界(斜め電界)が発生すると、図3(b)に示したように、液晶分子30aは、等電位線EQと平行になるための傾斜量が少ない方向(図示の例では反時計回り)に傾斜する。また、液晶分子30aの軸方位に対して垂直方向の等電位線EQで表される電界が発生する領域に位置する液晶分子30aは、図3(c)に示したように、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aと配向が連続となるように(整合するように)、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aと同じ方向に傾斜する。図3(d)に示したように、等電位線EQが凹凸形状を形成する電界が印加されると、それぞれの傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aによって規制される配向方向と整合するように、平坦な等電位線EQ上に位置する液晶分子30aが配向する。なお、「等電位線EQ上に位置する」とは、「等電位線EQで表される電界内に位置する」ことを意味する。
上述したように、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aから始まる配向の変化が進み、定常状態に達すると、図2(b)に模式的に示した配向状態となる。開口部14b1の中央付近に位置する液晶分子30aは、開口部14b1の互いに対向する両側のエッジ部EGの液晶分子30aの配向の影響をほぼ同等に受けるので、等電位線EQに対して垂直な配向状態を保ち、開口部14b1の中央から離れた領域の液晶分子30aは、それぞれ近い方のエッジ部EGの液晶分子30aの配向の影響を受けて傾斜し、開口部14b1の中心SAに関して対称な傾斜配向を形成する。この配向状態は、液晶表示装置100の表示面に垂直な方向(基板11および21の表面に垂直な方向)からみると、液晶分子30aの軸方位が開口部14b1の中心に関して放射状に配向した状態にある(不図示)。そこで、本願明細書においては、このような配向状態を「放射状傾斜配向」と呼ぶことにする。また、1つの中心に関して放射状傾斜配向をとる液晶層30の領域を液晶ドメインと称する。
非中実部14bによって実質的に包囲された単位中実部14a’に対応する領域においても、液晶分子30aが放射状傾斜配向をとる液晶ドメインが形成される。単位中実部14a’に対応する領域の液晶分子30aは、非中実部14bのエッジ部EGの液晶分子30aの配向の影響を受け、単位中実部14a’の中心SA(非中実部14bが形成する単位格子の中心に対応)に関して対称な放射状傾斜配向をとる。
単位中実部14a’上に形成される液晶ドメインにおける放射状傾斜配向と開口部14b1上に形成される液晶ドメインにおける放射状傾斜配向とは互いに連続しており、いずれも非中実部14bのエッジ部EGの液晶分子30aの配向と整合するように配向している。開口部14b1上に形成された液晶ドメイン内の液晶分子30aは、上側(基板100b側)が開いたコーン状に配向し、単位中実部14a’上に形成された液晶ドメイン内の液晶分子30aは下側(基板100a側)が開いたコーン状に配向する。また、単位中実部14a’上に形成される液晶ドメインの配向は、切欠き部14b2上の液晶層の配向とも連続している。このように、中実部14a上に形成される液晶ドメインの配向と、非中実部14b上の液晶層(開口部14b1上に形成される液晶ドメインを含む)の配向とは互いに連続であるので、これらの境界にディスクリネーションライン(配向欠陥)が形成されることがなく、それによって、ディスクリネーションラインの発生による表示品位の低下は起こらない。
液晶表示装置の表示品位の視角依存性を全方位において改善するためには、それぞれの絵素領域内において、全ての方位角方向のそれぞれに沿って配向する液晶分子の存在確率が回転対称性を有することが好ましく、軸対称性を有することがさらに好ましい。すなわち、絵素領域の全体に亘って形成される液晶ドメインが回転対称性、さらには軸対称性を有するように配置されていることが好ましい。但し、絵素領域の全体に亘って回転対称性を有する必要は必ずしも無く、回転対称性(または軸対称性)を有するように配列された液晶ドメイン(例えば、正方格子状に配列された複数の液晶ドメイン)の集合体として絵素領域の液晶層が形成されればよい。従って、絵素領域に形成される複数の開口部14b1の配置も絵素領域の全体に亘って回転対称性を有する必要は必ずしも無く、回転対称性(または軸対称性)を有するように配列された開口部(例えば正方格子状に配列された複数の開口部)の集合体として表せればよい。勿論、開口部14b1や切欠き部14b2に実質的に包囲される単位中実部14a’の配置も同様である。また、それぞれの液晶ドメインの形状も回転対称性さらには軸対称性を有することが好ましいので、それぞれの開口部14b1および単位中実部14a’の形状も回転対称性さらには軸対称性を有することが好ましい。
なお、開口部14b1の中央付近の液晶層30には十分な電圧が印加されず、開口部14b1の中央付近の液晶層30が表示に寄与しない場合がある。すなわち、開口部14b1の中央付近の液晶層30の放射状傾斜配向が多少乱れても(例えば、中心軸が開口部14b1の中心からずれても)、表示品位が低下しないことがある。そのため、少なくとも単位中実部14a’に対応して液晶ドメインが形成されれば、絵素領域内での液晶分子の連続性が得られ、広視角特性および高表示品位を得ることができる。
図2(a)および(b)を参照しながら説明したように、本発明による液晶表示装置100の絵素電極14は、導電膜が形成されていない非中実部14bを有しており、絵素領域内の液晶層30内に、傾斜した領域を有する等電位線EQで表される電界を形成する。電圧無印加時に垂直配向状態にある液晶層30内の負の誘電異方性を有する液晶分子30aは、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aの配向変化をトリガーとして配向方向を変化し、安定な放射状傾斜配向を有する液晶ドメインが開口部14bおよび単位中実部14a’に形成される。液晶層に印加される電圧に応じて、この液晶ドメインの液晶分子の配向が変化することによって、表示が行われる。
ここで、絵素電極14が有する単位中実部14a’の形状(基板法線方向から見た形状)およびその配置と、開口部14b1および切欠き部14b2の形状およびその配置について説明する。
液晶表示装置の表示特性は、液晶分子の配向状態(光学的異方性)に起因して、方位角依存性を示す。表示特性の方位角依存性を低減するためには、液晶分子が全ての方位角に対して同等の確率で配向していることが好ましい。また、それぞれの絵素領域内の液晶分子が全ての方位角に対して同等の確率で配向していることがさらに好ましい。従って、単位中実部14a’は、単位中実部14a’に対応して形成される液晶ドメインの液晶分子30aがすべての方位角に対して同等の確率で配向するように、液晶ドメインを形成するような形状を有していることが好ましい。具体的には、単位中実部14a’の形状は、それぞれの中心(法線方向)を対称軸とする回転対称性(好ましくは2回回転対称性以上の対称性)を有することが好ましい。また、開口部14b1の形状も回転対称性を有することが好ましく、開口部14b1も回転対称性を有するように配置されることが好ましい。
但し、単位中実部14a’や開口部14b1が絵素領域全体に亘って回転対称性を有するように配置される必要は必ずしも無く、図1(a)に示したように、例えば正方格子(4回回転軸を有する対称性)を最小単位とし、それらの組合せによって絵素領域が構成されれば、絵素領域全体に亘って液晶分子をすべての方位角に対して実質的に同等の確率で配向させることができる。
図1(a)に示したように、略円形の単位中実部14a’を囲む略星形の開口部14b1が正方格子状に配列された場合の液晶分子30aの配向状態を図4(a)〜(c)を参照しながら説明する。
図4(a)〜(c)は、それぞれ、基板法線方向から見た液晶分子30aの配向状態を模式的に示している。図4(b)および(c)など、基板法線方向から見た液晶分子30aの配向状態を示す図において、楕円状に描かれた液晶分子30aの先が黒く示されている端は、その端が他端よりも、絵素電極14が設けられている基板側に近いように、液晶分子30aが傾斜していることを示している。以下の図面においても同様である。ここでは、図1(a)に示した絵素領域の内の1つの単位格子(4つの開口部14b1によって形成される)について説明する。図4(a)〜(c)中の対角線に沿った断面は、図2(a)および(b)にそれぞれ対応し、これらの図を合わせて参照しながら説明する。
絵素電極14および対向電極22が同電位のとき、すなわち液晶層30に電圧が印加されていない状態においては、TFT基板100aおよび対向基板100bの液晶層30側表面に設けられた垂直配向層(不図示)によって配向方向が規制されている液晶分子30aは、図4(a)に示したように、垂直配向状態を取る。
液晶層30に電界を印加し、図2(a)に示した等電位線EQで表される電界が発生すると、負の誘電率異方性を有する液晶分子30aには、軸方位が等電位線EQに平行になるようなトルクが発生する。図3(a)および(b)を参照しながら説明したように、液晶分子30aの分子軸に対して垂直な等電位線EQで表される電場下の液晶分子30aは、液晶分子30aが傾斜(回転)する方向が一義的に定まっていないため(図3(a))、配向の変化(傾斜または回転)が容易に起こらないのに対し、液晶分子30aの分子軸に対して傾斜した等電位線EQ下に置かれた液晶分子30aは、傾斜(回転)方向が一義的に決まるので、配向の変化が容易に起こる。従って、図4(b)に示したように、等電位線EQに対して液晶分子30aの分子軸が傾いている開口部14b1のエッジ部から液晶分子30aが傾斜し始める。そして、図3(c)を参照しながら説明したように、開口部14b1のエッジ部の傾斜した液晶分子30aの配向と整合性をとるように周囲の液晶分子30aも傾斜し、図4(c)に示したような状態で液晶分子30aの軸方位は安定する(放射状傾斜配向)。
このように、開口部14b1が回転対称性を有する形状であると、絵素領域内の液晶分子30aは、電圧印加時に、開口部14b1のエッジ部から開口部14b1の中心に向かって液晶分子30aが傾斜するので、エッジ部からの液晶分子30aの配向規制力が釣り合う開口部14b1の中心付近の液晶分子30aは基板面に対して垂直に配向した状態を維持し、その回りの液晶分子30aが開口部14b1の中心付近の液晶分子30aを中心に放射状に連続的に傾斜した状態が得られる。
また、正方格子状に配列された4つの略星形の開口部14b1に包囲された略円形の単位中実部14a’に対応する領域の液晶分子30aも、開口部14b1のエッジ部に生成される斜め電界で傾斜した液晶分子30aの配向と整合するように傾斜する。エッジ部からの液晶分子30aの配向規制力が釣り合う単位中実部14a’の中心付近の液晶分子30aは基板面に対して垂直に配向した状態を維持し、その回りの液晶分子30aが単位中実部14a’の中心付近の液晶分子30aを中心に放射状に連続的に傾斜した状態が得られる。
このように、液晶分子30aが放射状傾斜配向をとる液晶ドメインが正方格子状に配列されると、それぞれの軸方位の液晶分子30aの存在確率が回転対称性を有することになり、あらゆる視角方向に対して、ざらつきのない高品位の表示を実現することができる。放射状傾斜配向を有する液晶ドメインの視角依存性を低減するためには、液晶ドメインが高い回転対称性(2回回転対称性以上が好ましく、4回回転対称性以上がさらに好ましい。)を有することが好ましい。
なお、液晶分子30aの放射状傾斜配向は、図5(a)に示したような単純な放射状傾斜配向よりも、図5(b)および(c)に示したような、左回りまたは右回りの渦巻き状の放射状傾斜配向の方が安定である。この渦巻き状配向は、通常のツイスト配向のように液晶層30の厚さ方向に沿って液晶分子30aの配向方向が螺旋状に変化するのではなく、液晶分子30aの配向方向は微小領域でみると、液晶層30の厚さ方向に沿ってほとんど変化していない。すなわち、液晶層30の厚さ方向のどこの位置の断面(層面に平行な面内での断面)においても、図5(b)または(c)と同じ配向状態にあり、液晶層30の厚さ方向に沿ったツイスト変形をほとんど生じていない。但し、液晶ドメインの全体でみると、ある程度のツイスト変形が発生している。
負の誘電異方性を有するネマチック液晶材料にカイラル剤を添加した材料を用いると、電圧印加時に、液晶分子30aは、開口部14b1または単位中実部14a’を中心に、図5(b)および(c)に示した、左回りまたは右回りの渦巻き状放射状傾斜配向をとる。右回りか左回りかは用いるカイラル剤の種類によって決まる。従って、電圧印加時に開口部14b1および単位中実部14a’上の液晶層30を渦巻き状放射状傾斜配向させることによって、放射状傾斜している液晶分子30aの、基板面に垂直に立っている液晶分子30aの周りを巻いている方向を全ての液晶ドメイン内で一定にすることができるので、ざらつきの無い均一な表示が可能になる。さらに、基板面に垂直に立っている液晶分子30aの周りを巻いている方向が定まっているので、液晶層30に電圧を印加した際の応答速度も向上する。
また、より多くのカイラル剤を添加すると、通常のツイスト配向のように、液晶層30の厚さ方向に沿って液晶分子30aの配向が螺旋状に変化するようになる。液晶層30の厚さ方向に沿って液晶分子30aの配向が螺旋状に変化しない配向状態では、偏光板の偏光軸に対して垂直方向または平行方向に配向している液晶分子30aは、入射光に対して位相差を与えないための、この様な配向状態の領域を通過する入射光は透過率に寄与しない。これに対し、液晶層30の厚さ方向に沿って液晶分子30aの配向が螺旋状に変化する配向状態においては、偏光板の偏光軸に垂直方向または平行方向に配向している液晶分子30aも、入射光に対して位相差を与えるとともに、光の旋光性を利用することもできる。従って、この様な配向状態の領域を通過する入射光も透過率に寄与するので、明るい表示が可能な液晶表示装置を得ることができる。
図1(a)では、単位中実部14a’が略円形であり、略星形の開口部14b1が正方格子状に配列された例を示したが、単位中実部14a’の形状や開口部14b1の形状および配置は、上記の例に限られない。
図6(a)および(b)に、開口部14b1および単位中実部14a’の形状が異なる絵素電極14Aおよび14Bの上面図をそれぞれ示す。
図6(a)および(b)にそれぞれ示した絵素電極14Aおよび14Bの開口部14b1および単位中実部14a’は、図1(a)に示した絵素電極14の開口部14b1および単位中実部14a’が若干ひずんだ形を有している。絵素電極14Aおよび14Bの開口部14b1および単位中実部14a’は、2回回転軸を有し(4回回転軸は有しない)、長方形の単位格子を形成するように規則的に配列されている。開口部14b1は、いずれも歪んだ星形を有し、単位中実部14a’は、いずれも略楕円形(歪んだ円形)を有している。絵素電極14Aおよび14Bを用いても、表示品位が高い、視角特性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
さらに、図7(a)および(b)にそれぞれ示すような絵素電極14Cおよび14Dを用いることもできる。
絵素電極14Cおよび14Dにおいては、単位中実部14a’が略正方形となるように、略十字の開口部14b1が正方格子状に配置されている。勿論、これらを歪ませて、長方形の単位格子を形成するように配置してもよい。このように、略矩形(矩形は正方形と長方形を含むとする。)の単位中実部14a’を規則正しく配列しても、表示品位が高い、視角特性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
但し、開口部14b1および/または単位中実部14a’の形状は、矩形よりも円形または楕円形の方が放射状傾斜配向を安定化できるので好ましい。これは、開口部14b1や単位中実部14a’の辺が連続的に(滑らかに)変化するので、液晶分子30aの配向方向も連続的に(滑らかに)変化するためと考えられる。
上述した液晶分子30aの配向方向の連続性の観点から、図8(a)および(b)に示す絵素電極14Eおよび14Fも考えられる。図8(a)に示した絵素電極14Eは、図1(a)に示した絵素電極14の変形例で、4つの円弧だけからなる開口部14b1を有している。また、図8(b)に示した絵素電極14Fは、図7(b)に示した絵素電極14Dの変形例で、開口部14b1の単位中実部14a’側が円弧で形成されている。絵素電極14Eおよび14Fが有する開口部14b1ならびに単位中実部14a’は、いずれも4回回転軸を有しており、且つ、正方格子状(4回回転軸を有する)に配列されているが、図6(a)および(b)に示したように、開口部14aの単位中実部14b’の形状を歪ませて2回回転軸を有する形状とし、長方形の格子(2回回転軸を有する)を形成するように配置してもよい。
また、応答速度の観点から、図9(a)および(b)にそれぞれ示すような絵素電極14Gおよび14Hを用いてもよい。図9(a)に示した絵素電極14Gは、図7(a)に示した略正方形状の単位中実部14a’を有する絵素電極14Cの変形例であり、絵素電極14Gの単位中実部14a’の形状は、角部が鋭角化された歪んだ正方形状である。また、図9(b)に示した絵素電極14Hの単位中実部14a’の形状は、8つの辺(エッジ)を有し、且つ、その中心に4回回転軸を有する略星形であり、4つの角部のそれぞれが鋭角化されている。なお、角部を鋭角化するとは、90°未満の角または曲線で角部を構成することをいう。
図9(a)および(b)に示したように、単位中実部14a’が、角部が鋭角化された形状を有していると、斜め電界を生成するエッジ部がより多く形成されるので、より多くの液晶分子30aに斜め電界を作用させることができる。従って、電界に応答して最初に傾斜し始める液晶分子30aの数がより多くなり、絵素領域全域にわたって放射状傾斜配向が形成されるのに要する時間が短くなるので、液晶層30に電圧を印加した際の応答速度が向上する。
また、単位中実部14a’の形状を角部が鋭角化された形状とすると、単位中実部14a’の形状が略円形や略矩形である場合に比べて、特定の方位角方向に沿って配向する液晶分子30aの存在確率を高く(あるいは低く)することができる。すなわち、全ての方位角方向のそれぞれに沿って配向する液晶分子30aの存在確率により高い指向性をもたせることができる。そのため、偏光板を備え、直線偏光を液晶層30に入射させるモードの液晶表示装置において、単位中実部14a’の角部を鋭角化すると、偏光板の偏光軸に対して垂直方向または平行方向に配向している液晶分子30a、すなわち、入射光に対して位相差を与えない液晶分子30aの存在確率をより低くすることができる。従って、光の透過率を向上させ、より明るい表示を実現することができる。
図6、図7、図8および図9においては、1つの絵素領域に複数の開口部14b1を有する構成を例示したが、図1を参照しながら説明したように、1つの開口部14b1を設けるだけで、1つの絵素領域に複数の液晶ドメインを形成することもできるし、さらに、開口部14b1を設けず、切欠き部14b2のみを設けても1つの絵素領域に複数の液晶ドメインを形成することができる。また、絵素電極14の開口部14b1に対応する領域に液晶ドメインを形成する必要は必ずしもなく、中実部14a(単位中実部14a’)に対応して放射状傾斜配向をとる液晶ドメインが形成されれば、開口部14b1に対応して形成される液晶ドメインが放射状傾斜配向をとらなくとも、絵素領域内の液晶分子の配向の連続性は得られるので、中実部14aに対応して形成される液晶ドメインの放射状傾斜配向は安定する。特に、図7(a)および(b)に示したように、開口部14b1の面積が小さい場合には、表示に対する寄与も少ないので、開口部14b1に対応する領域に放射状傾斜配向をとる液晶ドメインが形成されなくても、表示品位の低下は問題にならない。
上述の例では、略星形や略十字形の開口部14b1を形成し、単位中実部14a’の形状を略円形、略楕円形、略正方形(矩形)および角の取れた略矩形とした構成を説明した。これに対して、開口部14b1と単位中実部14a’との関係をネガ−ポジ反転させてもよい。例えば、図1(a)に示した絵素電極14の開口部14b1と単位中実部14a’とをネガ−ポジ反転したパターンを有する絵素電極14Iを図10に示す。このように、ネガ−ポジ反転したパターンを有する絵素電極14Iも図1に示した絵素電極14と実質的に同様の機能を有する。なお、図11(a)および(b)にそれぞれ示す絵素電極14Jおよび14Kのように、開口部14b1および単位中実部14a’がともに略正方形の場合には、ネガ−ポジ反転しても、もとのパターンと同じパターンとなるものもある。
図10に示したパターンのように、図1(a)に示したパターンをネガ−ポジ反転させた場合にも、絵素電極14のエッジ部に、回転対称性を有する単位中実部14a’が形成されるように、切欠き部14b2(開口部14b1の約2分の1または約4分の1に相当する形状)を形成することが好ましい。このようなパターンとすることによって、絵素領域のエッジ部においても、絵素領域の中央部と同様に、斜め電界による効果が得られ、絵素領域の全体に亘って安定した放射状傾斜配向を実現することができる。
ネガーポジいずれのパターンを採用しても、非中実部14bと中実部14aとの境界の長さはいずれも同じである。従って、斜め電界を生成するという機能においては、これらのパターンによる差はない。しかしながら、単位中実部14a’の面積比率は、両者の間で異なり得る。すなわち、液晶層30の液晶分子に作用する電界を生成する中実部14a(実際に導電膜が存在する部分)の面積が異なり得る。
開口部14b1に形成される液晶ドメインに印加される電圧は、単位中実部14a’に形成される液晶ドメインに印加される電圧よりも低くなるので、例えば、ノーマリブラックモードの表示を行うと、開口部14b1に形成された液晶ドメインは暗くなる。そのため、絵素領域内で、非中実部14bの面積比率を低くして、単位中実部14a’の面積比率を高くすることが好ましい。
ここで、単位中実部14a’の形状と、放射状傾斜配向の安定性および透過率の値との関係について説明する。
本願発明者が検討したところ、単位中実部14a’の配列ピッチを一定とした場合には、単位中実部14a’の形状が円形や楕円に近いほど、配向安定性が高いことがわかった。これは、単位中実部14a’の形状が円形や楕円に近いほど、放射状傾斜配向状態における液晶分子30aの配向方向の連続性が高いためである。
また、単位中実部14a’の形状が正方形や長方形などの矩形に近いほど、透過率が高いことがわかった。これは、単位中実部14a’の形状が矩形に近いほど、単位中実部14a’の面積比率が高いので、電極によって生成される電界の影響を直接的に受ける液晶層の面積(基板法線方向から見たときの平面内に規定される)が大きくなり、実効開口率が高くなるためである。
従って、所望する配向安定性と、透過率とを考慮して、単位中実部14a’の形状を決定すればよい。
図8(b)に示したように、単位中実部14a’が、角部が略円弧状の略正方形であると、配向安定性および透過率の両方を比較的高くすることができる。勿論、単位中実部14a’が、角部が略円弧状の略矩形であっても同様の効果が得られる。なお、導電膜から形成される単位中実部14a’の角部は、製造工程上の制約から、厳密には、円弧状ではなく、鈍角化された多角形状(90°を超える複数の角で構成された形状)となることもあり、4分の1円弧状や規則的な多角形状(例えば正多角形の一部)だけでなく、若干ひずんだ円弧状(楕円の一部など)やいびつな多角形状となることもある。また、曲線と鈍角との組み合わせによって構成された形状となることもある。本願明細書においては、上述した形状も含めて略円弧状と称する。なお、同様の製造工程上の理由から、図1(a)に示したような略円形の単位中実部14a’の場合にも、厳密な円ではなく、多角形状や若干ひずんだ形状となることがある。
なお、ペーパーホワイトに近い白表示を行うために反射電極の表面に微小な凹凸形状を付与してもよいことを既に述べたが、反射電極の表面にそのような微小な凹凸形状を付与しても、電圧印加時にはその表面に平行な(凹凸形状に沿った)等電位線が形成されるので、微小な凹凸形状が付与された反射電極の表面は、電圧印加時に液晶分子の配向方向を制御する配向規制力を発現せず、放射状傾斜配向の形成に悪影響を与えることはない。
ここまでは、主にTFT基板100aの電極構造とその作用について説明したが、以下、図1(b)と図12とを参照しながら対向基板100bの構造とその作用について説明する。図12は、比較例の液晶表示装置1100の断面構造を模式的に示す図である。比較例の液晶表示装置1100は、TFT基板1100aの絵素電極14が複数の単位中実部14a’を有しており、電圧印加時に放射状傾斜配向をとる液晶ドメインを形成する点においては液晶表示装置100と共通するが、対向基板1100bには段差を設けず、TFT基板1100aの反射電極の下に絶縁膜19を設けることによってTFT基板1100aに段差を設けている点が異なっている。
本発明による液晶表示装置100では、図1(b)に示すように、対向基板100bは、反射領域R内に位置する上段面100b1と、透過領域T内に位置する下段面100b2と、上段面100b1と下段面100b2とを結ぶ側面100b3とを有する段差を有しており、そのことによって、反射領域R内の液晶層30の厚さdrが透過領域T内の液晶層30の厚さdtよりも小さくなっている。つまり、TFT基板100a側ではなく、対向基板100b側に段差を設けることによって、透過モードおよび反射モードの両方の表示に好適なマルチギャップ構造を実現している。従って、図12に示す比較例の液晶表示装置1100のように、反射電極の下に絶縁膜19などを用いて段差を設ける必要がなく、TFT基板100aの製造を簡略化することができる。
マルチギャップ構造を採用した場合、段差の側面は基板面に対して傾斜しているので、その側面に対して垂直に配向する液晶分子が黒表示時の光漏れの原因となり、コントラスト比を低下させるが、液晶表示装置100では、図1(b)に示すように、段差の側面100b3が反射領域R内に位置しているので、透過領域T内ではコントラスト比の低下が発生せず、表示品位の低下を抑制できる。反射領域Rは、透過領域Tに比べてもともとコントラスト比が低い領域であり、要求される表示特性も低いので、反射領域Rにおいて多少の光漏れが発生しても表示への悪影響は少ない。これに対して、図12に示す比較例の液晶表示装置1100では、段差の側面1100a3が反射領域R内に位置していないので、透過光(透過モードの表示に用いる光)の光漏れが発生し、表示品位の低下が顕著となる。
また、図12に示す比較例の液晶表示装置1100では、段差の側面1100a3は電極に覆われていない領域であり、図13(a)に示すように、この側面1100a3に発生する斜め電界を用いて配向規制を行うが、側面1100a3が基板面に対して傾斜しているので、印加電圧の大きさや側面1100a3の傾斜角度などによっては、配向制御が困難になってしまう。例えば、図13(b)に示すように、側面1100a3の傾斜角度が大きいと、等電位線EQと液晶分子30aとのなす角が90°に近くなり、配向規制力が著しく弱くなってしまう。
これに対して、液晶表示装置100では、対向基板100bに段差を設けるので、段差の側面100b3を電極22で覆うことができる。電極22で覆われた側面100b3では、図14に示すように、等電位線EQは、側面100b3に平行で液晶分子30aと直交し、配向規制力を発現しない。
上述したように、本発明による液晶表示装置100では、放射状傾斜配向を形成するための斜め電界を生成する電極が設けられる基板とは異なる基板に段差を設けることによってマルチギャップ構造が実現されているとともに、段差の側面100b3が反射領域R内に位置し、且つ、電極22によって覆われているので、製造プロセス上の利点が得られるとともに、段差の側面100b3の傾斜に起因した表示品位の低下を抑制できる。
本実施形態における液晶表示装置100の構成は、絵素電極14が中実部14aと非中実部14bとを有するように所定の形状にパターニングされていることと、対向基板100bに段差が設けられていること以外は、公知の垂直配向型液晶表示装置と同じ構成を採用することができ、公知の製造方法で製造することができる。
なお、本実施形態では、対向基板100bに段差を設けるために、反射領域R内に選択的に透明誘電体層(例えば透明樹脂層)29を形成する例を示したが、カラーフィルタ層を反射領域Rと透過領域Tとで異なる材料から形成し、反射領域R内のカラーフィルタ層を透過領域T内のカラーフィルタ層よりも厚くすることによって段差を形成してもよい。透過モードの表示に用いる光がカラーフィルタ層を1回通過するのに対して、反射モードの表示に用いる光はカラーフィルタ層を2回通過するので、透過領域T内のカラーフィルタ層と反射領域R内のカラーフィルタ層の光学濃度が同じであると、反射領域Rの色純度および/または輝度が低下するが、上述したように、カラーフィルタ層を反射領域Rと透過領域Tとで異なる材料から形成する場合には、反射領域R内のカラーフィルタ層の光学濃度を透過領域T内のカラーフィルタ層の光学濃度よりも薄くすることによって、反射領域Rの色純度および/または輝度を向上することができる。
典型的には、負の誘電異方性を有する液晶分子を垂直配向させるために、絵素電極14および対向電極22の液晶層30側表面には、垂直配向層としての垂直配向膜(不図示)が形成されている。
液晶材料としては、負の誘電異方性を有するネマチック液晶材料が用いられる。また、負の誘電異方性を有するネマチック液晶材料に2色性色素添加することによって、ゲスト−ホストモードの液晶表示装置を得ることもできる。ゲスト−ホストモードの液晶表示装置は、偏光板を必要としない。
負の誘電率異方性を有する液晶分子が電圧無印加時に垂直配向する液晶層を備える、いわゆる垂直配向型液晶表示装置は、種々の表示モードで表示を行うことができる。例えば、液晶層の複屈折率を電界によって制御することによって表示する複屈折モードの他に、旋光モードや旋光モードと複屈折モードとを組み合わせて表示モードに適用される。上述した全ての液晶表示装置の一対の基板(例えば、TFT基板と対向基板)の外側(液晶層30と反対側)に一対の偏光板を設けることによって、複屈折モードの液晶表示装置を得ることができる。また、必要に応じて、位相差補償素子(典型的には位相差板)を設けてもよい。更に、略円偏光を用いても明るい液晶表示装置を得ることができる。
(実施形態2)
本実施形態における液晶表示装置は、対向基板が配向規制構造を有している点において、実施形態1において説明した液晶表示装置100と異なっている。
図15(a)〜(e)に、配向規制構造28を有する対向基板200bを模式的に示す。液晶表示装置100と実質的に同じ構成要素には共通の参照符号を付して、その説明をここでは省略する。
図15(a)〜(e)に示した配向規制構造28は、液晶層30の液晶分子30aを放射状傾斜配向させるように作用する。但し、図15(a)〜(d)に示した配向規制構造28と図15(e)に示した配向規制構造28とでは、液晶分子30aを傾斜させる方向が異なっている。
図15(a)〜(d)に示した配向規制構造28による液晶分子の傾斜方向は、絵素電極14の単位中実部14a’(例えば図1参照)に対応する領域に形成される液晶ドメインの放射状傾斜配向の配向方向と整合する。これに対し、図15(e)に示した配向規制構造28による液晶分子の傾斜方向は、開口部14b1(例えば図1参照)に対応する領域に形成される液晶ドメインの放射状傾斜配向の配向方向と整合する。
図15(a)に示した配向規制構造28は、対向電極22の開口部22aによって構成されている。なお、対向基板200bの液晶層30側の表面には垂直配向膜(不図示)が設けられている。
この配向規制構造28は、電圧印加時にのみ配向規制力を発現する。配向規制構造28は、TFT基板100aの電極構造によって形成される放射状傾斜配向をとる液晶ドメイン内の液晶分子に対して配向規制力を作用すればよいので、開口部22aの大きさは、TFT基板100aに設けられる開口部14b1よりも小さく、また、単位中実部14a’(例えば図1(a)参照)よりも小さい。例えば、開口部14b1や単位中実部14a’の面積の半分以下で十分な効果を得ることができる。対向電極22の開口部22aを絵素電極14の単位中実部14a’の中央部に対向する位置に設けることによって、液晶分子の配向の連続性が高くなり、且つ、放射状傾斜配向の中心軸の位置を固定することができる。
このように、配向規制構造として、電圧印加時にのみ配向規制力を発現する構造を採用すると、電圧無印加状態において液晶層30のほとんど全ての液晶分子30aが垂直配向状態をとるので、ノーマリブラックモードを採用した場合に、黒表示状態において光漏れがほとんど発生せず、良好なコントラスト比の表示を実現できる。
但し、電圧無印加状態に配向規制力が発生しないので放射状傾斜配向が形成されず、また、印加電圧が低いときには配向規制力が小さいので、あまり大きな応力が液晶パネルに印加されると、残像が視認されることがある。
図15(b)〜(d)に示した配向規制構造28は、電圧の印加無印加に関わらず、配向規制力を発現するので、全ての表示階調において安定した放射状傾斜配向が得られ、応力に対する耐性にも優れている。
図15(b)に示した配向規制構造28は、対向電極22上に設けられ液晶層30側に突き出た凸部(リブ)22bである。凸部22bを形成する材料に特に制限はないが、樹脂などの誘電体材料を用いて容易に形成することができる。なお、対向基板200bの液晶層30側の表面には垂直配向膜(不図示)が設けられている。凸部22bは、その表面(垂直配向性を有する)の形状効果によって、液晶分子30aを放射状に傾斜配向させる。また、熱によって変形する樹脂材料を用いると、パターニングの後の熱処理によって、図15(b)に示したような、なだらかな丘上の断面形状を有する凸部22bを容易に形成できるので好ましい。図示したように、頂点を有するなだらかな断面形状(例えば球の一部)を有する凸部22bや円錐状の形状を有する凸部は、放射状傾斜配向の中心位置を固定する効果に優れている。
図15(c)に示した配向規制構造28は、対向電極22の下(基板21側)に形成された誘電体層23に設けられた開口部(凹部でもよい)23a内の液晶層30側の水平配向性表面によって構成されている。ここでは、対向基板200bの液晶層30側に形成される垂直配向膜24を、開口部23a内にだけ形成しないことで、開口部23a内の表面を水平配向性表面としている。これに代えて、図15(d)に示したように、開口部23a内にだけ、水平配向膜25を形成してもよい。
図15(d)に示した水平配向膜は、例えば、一旦対向基板200bの全面に垂直配向膜24を形成し、開口部23a内に存在する垂直配向膜24に選択的に紫外線を照射するなどして、垂直配向性を低下させることよって形成してもよい。配向規制構造28を構成するために必要な水平配向性は、TN型液晶表示装置に用いられている配向膜のようにプレチルト角が小さい必要はなく、例えば、プレチルト角が45°以下であればよい。
図15(c)および(d)に示したように、開口部23a内の水平配向性表面上では、液晶分子30aが基板面に対して水平に配向しようとするので、周囲の垂直配向膜24上の垂直配向している液晶分子30aの配向と連続性を保つような配向が形成され、図示したような放射状傾斜配向が得られる。
対向電極22の表面に凹部(誘電体層23の開口部によって形成される)を設けずに、対向電極22の平坦な表面上に、水平配向性表面(電極の表面または水平配向膜など)を選択的に設けるだけでも放射状傾斜配向が得られるが、凹部の形状効果によって、放射状傾斜配向をさらに安定化することができる。
対向基板200bの液晶層30側の表面に凹部を形成するために、例えば、誘電体層23として、カラーフィルタ層やカラーフィルタ層のオーバーコート層を用いると、プロセスが増加することが無いので好ましい。また、図15(c)および(d)に示した構造は、図15(b)に示した構造のように、凸部22bを介して液晶層30に電圧が印加される領域が存在しないので、光の利用効率の低下が少ない。
図15(e)に示した配向規制構造28は、図15(d)に示した配向規制構造28と同様に、誘電体層23の開口部23aを用いて、対向基板200bの液晶層30側に凹部を形成し、その凹部の底部にのみ、水平配向膜26を形成している。水平配向膜26を形成する代わりに、図15(c)に示したように、対向電極22の表面を露出させてもよい。
上述した配向規制構造を備える液晶表示装置200を図16(a)および(b)に示す。図16(a)は上面図であり、図16(b)は、図16(a)中の16B−16B’線に沿った断面図に相当する。
液晶表示装置200は、中実部14aと非中実部14bとを有する絵素電極14を備えたTFT基板100aと、配向規制構造28を有する対向基板200bとを有している。なお、TFT基板100aの構成は、ここで例示する構成に限られず、前述した種々の構成を適宜用いることができる。また、配向規制構造28として、電圧無印加時にも配向規制力を発現するもの(図15(b)〜(d)および図15(e))を例示するが、図15(b)〜(d)に示した配向規制構造28に代えて、図15(a)に示したものを用いることもできる。
液晶表示装置200の対向基板200bに設けられている配向規制構造28のうち、絵素電極14の単位中実部14a’に対向する領域の中央付近に設けられている配向規制構造28は、図15(b)〜(d)に示したもののいずれかであり、絵素電極14の開口部14b1に対向する領域の中央付近に設けられている配向規制構造28は、図15(e)に示したものである。
このように配置することによって、液晶層30に電圧を印加した状態、すなわち、絵素電極14と対向電極22との間に電圧を印加した状態において、絵素電極14の単位中実部14a’によって形成される放射状傾斜配向の方向と、配向規制構造28によって形成される放射状傾斜配向の方向が整合し、放射状傾斜配向が安定化する。この様子を図17(a)〜(c)に模式的に示している。図17(a)は電圧無印加時を示し、図17(b)は電圧印加後に配向が変化し始めた状態(ON初期状態)を示し、図17(c)は電圧印加中の定常状態を模式的に示している。
配向規制構造(図15(b)〜(e))28による配向規制力は、図17(a)に示したように、電圧無印加状態においても、近傍の液晶分子30aに作用し、放射状傾斜配向を形成する。
電圧を印加し始めると、図17(b)に示したような等電位線EQで示される電界が発生し(TFT基板100aの電極構造による)、開口部14b1および単位中実部14a’に対応する領域に液晶分子30aが放射状傾斜配向した液晶ドメインが形成され、図17(c)に示したような定常状態に達する。このとき、それぞれの液晶ドメイン内の液晶分子30aの傾斜方向は、対応する領域に設けられた配向規制構造28の配向規制力による液晶分子30aの傾斜方向と一致する。
定常状態にある液晶表示装置200に応力が印加されると、液晶層30の放射状傾斜配向は一旦崩れるが、応力が取り除かれると、単位中実部14a’および配向規制構造28による配向規制力が液晶分子30aに作用しているので、放射状傾斜配向状態に復帰する。従って、応力による残像の発生が抑制される。配向規制構造28による配向規制力が強すぎると、電圧無印加時にも放射状傾斜配向によるリタデーションが発生し、表示のコントラスト比が低下するおそれがあるが、配向規制構造28による配向規制力は、斜め電界によって形成される放射状傾斜配向の安定化および中心軸位置を固定する効果を有せばいいので、強い配向規制力は必要なく、表示品位を低下させるほどのリタデーションを発生させない程度の配向規制力で十分である。
例えば、図15(b)に示した凸部(リブ)22bを採用する場合、直径が約30μm〜約35μmの単位中実部14a’に対して、それぞれ直径が約15μmで高さ(厚さ)が約1μmの凸部22bを形成すれば、十分な配向規制力が得られ、且つ、リタデーションによるコントラスト比の低下も実用上問題の無いレベルに抑えられる。
図18(a)および(b)に、配向規制構造を備える他の液晶表示装置200’を示す。
液晶表示装置200’は、絵素電極14の開口部14b1に対向する領域には配向規制構造を有していない。開口部14b1に対向する領域に形成されるべき図15(e)に示した配向規制構造28を形成することはプロセス上の困難さを伴うので、生産性の観点からは、図15(a)〜(d)に示した配向規制構造28のいずれかだけを用いることが好ましい。特に、図15(b)に示した配向規制構造28は簡便なプロセスで製造できるので好ましい。
液晶表示装置200’のように、開口部14b1に対応する領域に配向規制構造を設けなくとも、図19(a)〜(c)に模式的に示したように、液晶表示装置200と同様の放射状傾斜配向が得られ、その耐応力性も実用上問題が無い。
なお、配向規制構造28として、図15(b)に示したような凸部22bを採用する場合には、図20(a)に示すように、凸部22bによって液晶層30の厚さが規定される構成、すなわち、凸部22bがセルギャップ(液晶層30の厚さ)を制御するスペーサとしても機能する構成としてもよい。このような構成を採用すると、液晶層30の厚さを規定するスペーサを別途に設ける必要がなく、製造プロセスを簡略化することができる利点がある。
ここでは、凸部22bは、円錐台状であり、基板21の基板面に対して90°未満のテーパ角θで傾斜した側面22b1を有している。このように、側面22b1が基板面に対して90°未満の角度で傾斜していると、凸部22bの側面22b1は、液晶層30の液晶分子30aに対して、斜め電界による配向規制方向と同じ方向の配向規制力を有することになり、放射状傾斜配向を安定させるように作用する。
スペーサとしても機能する凸部22bを用いても、図20(a)〜(c)に模式的に示すように、液晶表示装置200’と同様の放射状傾斜配向が得られる。
なお、図20(a)〜(c)には、基板面に対して90°未満の角度で傾斜した側面22b1を有する凸部22bを示したが、基板面に対して90°以上の角度で傾斜した側面22b1を有する凸部22bであってもよい。放射状傾斜配向を安定化させる観点からは、側面22b1の傾斜角度が90°を大きく超えないことが好ましく、90°未満であることがさらに好ましい。傾斜角度が90°を超える場合であっても、90°に近ければ(90°を大きく超えなければ)、凸部22bの傾斜側面22b1近傍の液晶分子30aは、基板面に対してほぼ水平な方向に傾斜しているので、若干の捩れを発生させるだけで、エッジ部の液晶分子30aの傾斜方向と整合をとりながら放射状傾斜配向する。ただし、図21に示すように、凸部22bの側面22b1が90°を大きく超えて傾斜していると、凸部22bの側面22b1は、液晶層30の液晶分子30aに対して、斜め電界による配向規制方向と逆方向の配向規制力を有することになるので、放射状傾斜配向が不安定となることがある。
また、スペーサとしても機能する凸部22bとしては、図20(a)〜(c)に示した円錐台状のものに限定されない。例えば、図22に示すように、基板面に垂直な面内方向の断面形状が楕円の一部であるような(すなわち楕球の一部のような形状を有する)凸部22bを用いてもよい。図22に示した凸部22bにおいては、側面22b1の基板面に対する傾斜角(テーパ角)が液晶層30の厚さ方向に沿って変化するが、液晶層30の厚さ方向のどこの位置においても側面22b1の傾斜角は90°未満であるため、このような凸部22bも放射状傾斜配向を安定させる凸部として好適に用いることができる。
なお、上述したように上下の基板(TFT基板および対向基板)に接し、液晶層30の厚さを規定するスペーサとしても機能する凸部22bは、液晶表示装置の製造プロセスにおいて、上下のいずれの基板に形成されてもよい。いずれの基板に形成されていても、上下の基板が貼り合わされると、凸部22bは両方の基板に接し、スペーサとして機能するとともに、配向規制構造としても機能する。
また、単位中実部14a’に対向する領域に設けられる凸部22bのすべてがスペーサとして機能する必要はない。一部の凸部22bを、スペーサとして機能する凸部22bよりも低く形成することによって、光漏れの発生を抑制できる。
続いて、本実施形態における液晶表示装置の種々の改変例を説明する。
図23(a)、(b)および図24に、本実施形態における他の液晶表示装置200Aおよび200Bを示す。図23(a)および(b)は、液晶表示装置200Aおよび200Bの8つの絵素領域の構造を模式的に示す上面図であり、図24は、図23(a)および(b)中の24−24’線に沿った断面図に相当する。
液晶表示装置200Aおよび200Bが有する絵素電極14は、絵素領域内で一列に配置された3つの単位中実部14a’を有しており、開口部14b1を有していない。つまり、絵素電極14の非中実部は切欠き部14b2のみを有している。絵素領域内に配置された3つの単位中実部14a’のうち、2つの単位中実部14a’が透明電極であり、残りの1つの単位中実部14a’が反射電極である。各単位中実部14a’の形状は、正方形である。また、液晶表示装置200Aおよび200Bの対向基板200bは、単位中実部14a’に対向する領域に、配向規制構造として凸部(リブ)22bを備えている。
液晶表示装置200Aおよび200Bの絵素電極14は、開口部14b1を有していないが、この場合でも各単位中実部14a’上に放射状傾斜配向状態をとる液晶ドメインを形成できることは既に述べた通りである。少なくとも1つの切欠き部14b2を設けることによって、絵素電極14に複数の単位中実部14a’を形成し、それぞれが放射状傾斜配向をとる複数の液晶ドメインを形成することができる。各単位中実部14a’上に形成される液晶ドメインは、各単位中実部14a’に対応して設けられた凸部22bによって安定化される。
また、図23(a)に示す液晶表示装置200Aと、図23(b)に示す液晶表示装置200Bとでは、対向基板200bが備える透明誘電体層29の構造が異なっている。具体的には、液晶表示装置200Aでは、図23(a)に示すように、透明誘電体層29が各絵素領域に個別に(独立に)形成されているのに対して、液晶表示装置200Bでは、図23(b)に示すように、透明誘電体層29は絵素領域の2つの周期方向(絵素領域が周期的に配列されている方向)のうちの一方に沿って隣接した絵素領域の透明誘電体層29と連続するように形成されている。図23(b)に示すように、透明誘電体層29を隣接した絵素領域の透明誘電体層29と連続するように形成すると、連続する方向において透明誘電体層29についてのアライメントマージンを考慮する必要がなくなるので、その方向について画素間隔を短くして開口率を向上することができるとともに、生産性が向上する。
図23(a)および(b)に示した液晶表示装置200Aおよび200Bでは、各絵素領域の反射領域Rは、絵素領域の周期方向の一方に沿って隣接した絵素領域の反射領域Rと隣接するように配置されている。これに対し、図25(a)、(b)、図26(a)および(b)に示す液晶表示装置200C、200D、200Eおよび200Fでは、各絵素領域の反射領域Rは、絵素領域の2つの周期方向のうちの一方に沿って隣接した絵素領域の反射領域Rと隣接するだけでなく、他方に沿って隣接した絵素領域の反射領域Rとも隣接するように配置されている。
図25(a)に示す液晶表示装置200Cでは、透明誘電体層29が各絵素領域の反射領域Rに個別に形成されているのに対して、図25(b)、図26(a)および(b)に示す液晶表示装置200D、200Eおよび200Fでは、透明誘電体層29は隣接した絵素領域の透明誘電体層29と連続するように形成されているので、開口率および生産性を向上することができる。特に、図26(b)に示す液晶表示装置200Fでは、透明誘電体層29は、絵素領域の周期方向の両方について、隣接した絵素領域の透明誘電体層29と連続するように形成されているので、周期方向の両方において透明誘電体層29についてのアライメントマージンを考慮しなくてもよく、開口率および生産性を向上する効果が高い。
図23〜図26には、各絵素領域が等分割された構成、すなわち、単位中実部14a’によって規定される領域(「サブ絵素領域」と呼ぶ)が同じサイズ・形状を有している構成を示したが、絵素領域を必ずしも等分割する必要はない。1つの絵素領域内の一部のサブ絵素領域のサイズ・形状を他のサブ絵素領域と異ならせてもよいし、透過領域Tと反射領域Rとでサブ絵素領域のサイズ・形状を異ならせてもよい。また、図23〜図26には、サブ絵素領域が正方形であり、サブ絵素領域の縦横比が1:1の構成を示したが、サブ絵素領域の縦横比は必ずしも1:1である必要はない。
図27(a)に示す液晶表示装置200Gは、反射領域R内に配置された単位中実部14a’が長方形であり、反射領域R内のサブ絵素領域が長方形である点において図23(a)に示した液晶表示装置200Aと異なっている。絵素領域の縦横比によっては、絵素領域内のすべてのサブ絵素領域の縦横比を1:1とすることが難しいことがあるが、図27(a)に示すように、一部のサブ絵素領域の形状を他のサブ絵素領域と異ならせる(例えば長方形とする)ことによって、複数の単位中実部14a’を絵素領域内に最密に配置することができ、絵素領域内での単位中実部14a’の面積比率を高くして開口率を高くすることができる。なお、絵素領域の縦横比に応じて一部のサブ絵素領域のサイズ・形状を異ならせる場合、反射領域Rのサブ絵素領域のサイズ・形状を異ならせると、表示への影響が小さい。反射領域Rは、セルギャップ(液晶層30の厚さ)が小さいのでもともと応答特性に優れ、また、要求される表示品位も透過領域Tに比べて低いからである。
図27(b)に示す液晶表示装置200Hは、図23(a)に示す液晶表示装置200Aの透過領域T内に配置された2つの正方形のサブ絵素領域(正方形の単位中実部14a’)を、縦横比の大きい(約1:2)長方形のサブ絵素領域(長方形の単位中実部14a’)に置換したものに相当する。このように、縦横比の大きなサブ絵素領域(単位中実部14a’)を用いることによって絵素領域内のサブ絵素領域(単位中実部14a’)の数を減らすと、配向の安定性や応答速度は低下するものの、絵素領域内での非中実部の面積比率を低くすることができるので、開口率のさらなる向上を図ることができる。本願発明者の検討によると、縦横比が1:2程度の単位中実部14a’を用いても実用上十分に安定な放射状傾斜配向が形成されることがわかった。
また、絵素領域の形状によっては、図28(a)および(b)に示す液晶表示装置200Iおよび200Jのように、絵素領域内のすべてのサブ絵素領域(単位中実部14a’)を長方形とし、そのことによって開口率の向上を図ってもよい。図28(a)に示す液晶表示装置200Iでは、透過領域T内に配置された2つのサブ絵素領域(単位中実部14a’)と反射領域R内に配置された1つのサブ絵素領域(単位中実部14a’)のすべてが長方形である。また、図28(b)に示す液晶表示装置200Jでは、透過領域T内に配置された1つのサブ絵素領域(単位中実部14a’)と反射領域R内に配置された1つのサブ絵素領域(単位中実部14a’)のいずれもが長方形である。
なお、図23〜図28には、透過領域Tと反射領域Rの面積比が約2:1である、透過モードの表示を優先した構成を示したが、反射モードの表示を優先する場合には、図29(a)および(b)に示す液晶表示装置200Kおよび200Lのように、反射領域Rの面積比率を透過領域Tの面積比率よりも高くしてもよいことは言うまでもない。
図29(a)に示す液晶表示装置200Kでは、各絵素領域内に配置された3つの正方形の単位中実部14a’のうちの2つが反射電極で、残りの1つが透明電極であり、透過領域Tと反射領域Rの面積比は約1:2である。
一方、図29(b)に示す液晶表示装置200Lは、各絵素領域内に、透明電極である正方形の単位中実部14a’と、反射電極である長方形(縦横比が約1:2)の単位中実部14a’とを1つずつ有しており、透過領域Tと反射領域Rの面積比は同じく約1:2である。
また、透過領域Tの液晶層30の応答特性を向上するために、図30(a)に示す液晶表示装置200Mのように、透過領域T内の単位中実部14a’を角部が鋭角化された形状としてもよいし、透過領域Tについて配向安定性と透過率の両方を高くするために、図30(b)に示す液晶表示装置200Nのように、透過領域T内の単位中実部14a’を樽型(角部が略円弧状の略正方形)としてもよい。
ここまで、絵素領域内で単位中実部14a’が一列に配置されている構成を図23〜図30に示しながら種々の改変例について説明したが、絵素領域内で単位中実部14a’が複数列配置されている場合についても同様のことが言える。
図31(a)に示す液晶表示装置200Oの絵素電極14は、5行2列に配置された10個の単位中実部14a’を有している。各単位中実部14a’は、正方形であり、3行目に配置された2つの単位中実部14a’が反射電極であり、残りの単位中実部14a’が透明電極である。この液晶表示装置200Oについて、既に述べたような種々の改変を行ってもよい。例えば、図31(b)に示す液晶表示装置200Pのように、液晶表示装置200Oの2つの反射電極(単位中実部14a’)を、長方形の1つの反射電極に置換してもよい。
図32(a)に示す液晶表示装置200Qの絵素電極14は、8行3列に配置された24個の単位中実部14a’を有している。各単位中実部14a’は、正方形であり、5行目に配置された3つの単位中実部14a’が反射電極であり、残りの単位中実部14a’が透明電極である。この液晶表示装置200Qについても、既に述べたような種々の改変を行ってもよく、例えば、図32(b)に示す液晶表示装置200Rのように、液晶表示装置200Qの3つの反射電極(単位中実部14a’)を、長方形の1つの反射電極に置換してもよい。
なお、本実施形態では、対向基板200b上に配向規制構造を備えた液晶表示装置を説明したが、本願発明者が種々の構成を検討したところ、TFT基板100aの単位中実部14a’の中央部上に凸部(リブ)を設けることによっても、安定な放射状傾斜配向を形成できることがわかった。図33(a)に示すように、対向基板200b上の、単位中実部14a’に対向する領域に配向規制構造としての凸部22bを設けた場合、凸部22bの配向規制力は、非中実部14bのエッジ部に生成される斜め電界の配向規制力と整合している。これに対し、図33(b)に示すように、TFT基板100aの単位中実部14a’の中央部上に凸部(リブ)18を設けると、その配向規制力は、非中実部14bのエッジ部に生成される斜め電界の配向規制力とは一見整合しない。しかしながら、凸部18はその形状効果によって強い配向規制力を発現するので、電圧印加時に、単位中実部14a’上の液晶分子30aは、非中実部14bのエッジ部周辺の液晶分子30aと配向が整合するようにねじれた準安定な状態をつくり出し、安定な放射状傾斜配向を形成し得る。
対向基板200b上に凸部22bを設けた場合の配向の様子を図34に示し、TFT基板100a上に凸部18を設けた場合の配向の様子を図35に示す。図34および図35は、電圧印加状態の絵素領域の顕微鏡写真である。また、図34および図35は、一対の偏光板がクロス二コル状態に配置されている場合を示しており、図34(a)および図35(a)は、偏光板の偏光軸が紙面の上下方向(あるいは左右方向)に平行かまたは直交するように配置されている場合を示し、図34(b)および図35(b)は、偏光板の偏光軸が紙面の上下方向(あるいは左右方向)から略45°傾斜した方向に平行かまたは直交するように配置されている場合を示している。
図34と図35とを比較すればわかるように、TFT基板100a上に凸部18を配置しても、対向基板200b上に凸部22bを配置したときとは若干異なる配向状態をとるものの、各単位中実部14a’に対応して放射状傾斜配向状態をとる液晶ドメインが形成される。
(実施形態3)
図36を参照しながら、本実施形態における液晶表示装置300を説明する。液晶表示装置300は、図36に示すように、透過領域T内に配置された単位中実部14a’のエッジ部上の液晶層30の厚さdeが、その単位中実部14a’の中央部上の液晶層30の厚さdcよりも小さい点において、図1(a)および(b)に示した液晶表示装置100と異なっている。
一般に、液晶分子30aの応答速度は、液晶層30の厚さ(セルギャップ)が小さいほど、電界の効果が強くなるために速くなり、液晶層30の厚さの二乗にほぼ比例する。そのため、本実施形態のように、単位中実部14a’のエッジ部(外縁部)上の液晶層30の厚さdeが、単位中実部14a’の中央部上の液晶層30の厚さdcよりも小さいと、単位中実部14a’のエッジ部上の液晶分子30aの応答速度は、中央部上の液晶分子30aの応答速度よりも速くなる。エッジ部上の液晶分子30aは、放射状傾斜配向を形成するためのトリガーとなる液晶分子であるので、エッジ部上の液晶分子30aの応答速度が速くなると、液晶ドメインが速く形成され、結果として、液晶層30の、液晶ドメインを形成する領域全体の応答速度が速くなる。従って、本実施形態における液晶表示装置300は、優れた応答特性を有している。
なお、セルギャップを絵素領域全体にわたって小さくすれば、勿論応答速度を速くすることができるが、その場合、液晶層30を通過する光に対して所定のリタデーションを与えるために液晶材料の屈折率異方性(Δn)を大きくする必要がある。ところが、一般的な液晶材料では、屈折率異方性を大きくすると、粘性が高くなるので、セルギャップを小さくすることによる応答速度向上の効果が相殺されてしまう。従って、単純に絵素領域全体にわたって液晶層30の厚さを小さくしても、応答速度を向上する効果は十分には得られない。
これに対し、本実施形態における液晶表示装置300では、絵素領域の一部(単位中実部14a’のエッジ部に対応した領域)のセルギャップのみを小さくするので、液晶材料の屈折率異方性(Δn)を大きくする必要はなく、応答速度を十分に向上することができる。
応答速度を十分に向上するためには、単位中実部14a’のエッジ部上の液晶層30の厚さdeと中央部上の液晶層30の厚さdcとの差が0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態では、透過領域Tについて、単位中実部14a’のエッジ部上のセルギャップを中央部上のセルギャップよりも小さくしたが、反射領域Rについて、単位中実部14a’のエッジ部上のセルギャップを中央部上のセルギャップよりも小さくしてもよいし、透過領域Tと反射領域Rの両方について、エッジ部上のセルギャップを中央部上のセルギャップよりも小さくしてもよい。ただし、反射領域Rはもともとセルギャップが小さい領域であるので、少なくとも透過領域Tについてエッジ部上のセルギャップを小さくすると、応答速度を向上する効果が高い。
本実施形態では、図36に示すように、単位中実部14a’のエッジ部の表面の高さを、中央部の表面の高さよりも高くすることによって、エッジ部上の液晶層30の厚さdeを中央部上の液晶層30の厚さdcよりも小さくしている。より具体的には、絵素電極14と透明基板11との間に層間絶縁膜19を設け、この層間絶縁膜19の表面の高さを局所的に異ならせることによって、その上に形成される単位中実部14a’のエッジ部の表面の高さを中央部の表面の高さよりも高くしている。
本実施形態における層間絶縁膜19は、液晶層30側の表面の高さが連続的に変化する第1の領域19aと、液晶層30側の表面の高さが実質的に一定な第2の領域19bを有しており、透過領域T内の単位中実部14a’のエッジ部が第1の領域19a上、中央部が第2の領域19b上に位置している。
層間絶縁膜19の第1の領域19aの傾斜角(基板11の表面に対する傾斜角)は、表示品位の観点からは小さいことが好ましい。第1の領域19a上に形成された垂直配向膜は、その表面に対して液晶分子30aが垂直に配向するような配向規制力を有するので、第1の領域19a上の液晶分子30aは基板11の表面に対して傾斜した方向に配向する。このとき、液晶分子30aの傾斜の程度は、第1の領域19aの傾斜角が大きいほど大きくなる。垂直配向膜による配向規制力は電圧の有無に拘らず作用するので、黒表示状態においては、第1の領域19a上の傾斜した液晶分子30aに起因した光漏れが発生する。従って、層間絶縁膜19の第1の領域19aの傾斜角が大きすぎるとコントラスト比が低下してしまう。そのため、層間絶縁膜19の第1の領域19aの傾斜角は小さいことが好ましく、層間絶縁膜19はなだらかな傾斜を有する形状であることが好ましい。具体的には、層間絶縁膜19の第1の領域19aの基板11表面に対する傾斜角は、30°以下であることが好ましく、20°以下であることがさらに好ましい。
なお、単位中実部14a’の表面の高さが単位中実部14a’の全体にわたって連続的に変化していると、液晶層30のリタデーションが単位中実部14a’上で一定でなくなるので、表示品位の低下を伴うことがある。また、その場合、位相差補償素子などを用いた位相差補償を好適に行うことも難しい。本実施形態のように、層間絶縁膜19が、液晶層30側の表面の高さが実質的に一定な第2の領域19bを有していると、そのような問題の発生を抑制できる。
上述したようななだらかな傾斜を有する層間絶縁膜19は、例えば、感光性樹脂膜をフォトマスクを用いて露光して現像した後、熱処理により熱だれさせることによって形成することができる。具体的には、図36に例示した層間絶縁膜19の場合、まず、透明基板11の表面に感光性樹脂膜を形成し、次に、反射領域Rに相当する部分が未露光、透過領域Tに相当する部分が所定の露光量となるようにフォトマスクを用いて露光し、その後、現像して所定の温度で熱処理を行うことによって、図示したようななだらかな傾斜を有する形状が得られる。なお、上記の露光は、感光性樹脂膜の透過領域Tに相当する部分が現像時に完全に除去されないで残存するような露光量で行われる。このような露光は「ハーフ露光」とも呼ばれる。
本実施形態のように、単位中実部14a’のエッジ部上のセルギャップが局所的に小さい構成を採用する場合には、円偏光を用いた表示モード、すなわち、液晶層30に入射する光が円偏光であり、液晶層30が円偏光を変調することによって表示を行う表示モードを用いることが好ましい。以下、図37を参照しながらその理由を説明する。図37は、電圧印加時の単位中実部14a’のエッジ部近傍を拡大して示す断面図である。
図37に示すように、単位中実部14a’のエッジ部が傾斜した表面上に形成されていると、電圧印加時に、単位中実部14a’上のエッジ部上の液晶分子30aと、非中実部14b上の液晶分子30aとの配向の連続性が悪くなることがある。そのため、エッジ部上の液晶分子30aは、電界効果によって一旦倒れ込んだ後、配向の連続性を保つために、図37中に矢印で示すように、配向の方位角をゆっくりと変化させる。従って、エッジ部近傍の液晶分子30aは、電圧印加時に2段階の応答挙動を示す。配向の方位角をゆっくりと変化させる2段階目の応答は、直線偏光を用いる表示モードでは、透過率(輝度)の変化をもたらしてしまうので、単位中実部14a’のエッジ部上のセルギャップを局所的に小さくすることによる応答速度向上の効果が十分に得られないことがある。これに対し、円偏光を用いる表示モードでは、液晶分子30aの方位角方向の変化が透過率にほとんど影響を与えないので、応答速度を向上する効果が高い。
円偏光を用いた表示モードを採用するには、例えば、液晶層30の両側に円偏光板(例えば直線偏光板とλ/4板との組み合わせ)を設ければよい。
(実施形態4)
図38(a)および(b)を参照しながら、本実施形態における液晶表示装置400を説明する。図38(a)は、液晶表示装置400の3つの絵素領域P1、P2、P3を基板法線方向から見た上面図であり、図38(b)は図38(a)中の38B−38B’線に沿った断面図に相当する。
液晶表示装置400が有する複数の絵素領域は、行および列を有するマトリクス状に配列されている。図38(a)には、行方向および列方向をそれぞれD1およびD2として矢印で示しており、図38(a)に示す3つの絵素領域P1、P2、P3は行方向D1に沿って隣接している。行方向D1および列方向D2を絵素(絵素領域)の「周期方向」とも呼び、典型的には、行方向D1と列方向D2とは互いに直交する。本実施形態では、それぞれの絵素領域(絵素)は、行方向D1に沿った短辺と列方向D2に沿った長辺とを有する略長方形の形状を有しているので、行方向D1と列方向D2とでそれぞれの周期(「絵素ピッチ」という)が異なる。なお、本願明細書では、絵素の2つの周期方向のうちの任意の一方を「行方向」、他方を「列方向」と便宜的に呼んでいる。つまり、行方向は表示面の上下方向および左右方向のいずれに沿って規定されてもよく、列方向についても同様である。
本実施形態における液晶表示装置400では、図39に示すように、すべての絵素に書き込みが行われる期間(1フレーム)内で、行方向D1に沿って隣接した絵素が反転駆動される。図39中の+が付された絵素領域P1およびP3の液晶層30には、−が付された絵素領域P2の液晶層に印加される電圧とは異なる(逆の)極性の電圧が印加される。
液晶表示装置400の液晶層30に電圧を印加した状態を図40(a)および(b)に示す。図40(a)は、液晶層30に印加された電圧に応じて、液晶分子30aの配向が変化し始めた状態(ON初期状態)を模式的に示しており、図40(b)は、印加された電圧に応じて変化した液晶分子30aの配向が定常状態に達した状態を模式的に示している。なお、図40(a)および(b)は、図38(a)中の40−40’線に沿った断面図に相当するが、説明の簡単さのために、対向基板100bの段差を省略して示している。
液晶層30に電圧を印加すると、図40(a)に示すように非中実部14bのエッジ部に斜め電界が形成され、この斜め電界によって、図40(b)に示すように、液晶層30の液晶分子30aが放射状傾斜配向する。本実施形態では、行方向D1に沿って隣接した2つの絵素が反転駆動されるので、行方向D1に沿って隣接した絵素領域間に強い斜め電界を発生させることができる。以下、この理由を図41および図42を参照しながら説明する。なお、図41および図42には基板11上に設けられたバスライン(例えば信号配線)42を省略せずに示している。
隣接した2つの絵素領域の液晶層に同じ極性の電圧を印加すると、図41に示すように、等電位線EQは、非中実部14bで落ち込むものの、隣接した絵素領域間で連続している。これに対して、図42に示すように、隣接した2つの絵素領域のそれぞれの液晶層に異なる極性の電圧を印加すると、2つの絵素領域のそれぞれに発生した電界を表す等電位線EQが連続することはなく、これらは非中実部14b上で急激に落ち込む。従って、非中実部14bのエッジ部、すなわち、単位中実部14a’の周辺には、急峻な電位勾配が形成され、図41に示した場合よりも強い斜め電界が発生する。
安定な放射状傾斜配向を得るのに十分な強さの斜め電界を生成するためには、隣接する絵素領域間で、絵素電極14同士の間隔(絵素電極14の中実部14a同士の間隔)がある程度広い必要があるが、本実施形態では、行方向D1に沿って隣接した絵素が反転駆動されるので、行方向D1に沿って隣接した絵素が反転駆動されない場合に比べて、行方向D1について間隔を短くしても十分な配向規制力が得られる。そのため、行方向D1に沿って隣接した絵素電極14間の距離を短くし、開口率が高くなるような構成を採用することができる。
なお、本実施形態では、絵素領域の短辺方向に沿って隣接した絵素を反転駆動させたが、絵素領域の長辺方向に沿って隣接した絵素を反転駆動させてもよい。ただし、絵素領域の短辺方向に沿って隣接した絵素を反転駆動させると、絵素領域の長辺近傍に強い斜め電界を形成することができるので、絵素領域全体の配向を安定化する効果が高い。そのため、少なくとも絵素領域の短辺方向に沿って隣接した絵素を反転駆動させることが好ましい。
行方向D1(周期方向の一方)に沿って隣接した絵素を反転駆動すれば、図43(a)に示すように、列方向D2(周期方向の他方)に沿っては絵素を反転駆動しない(いわゆるソースライン反転駆動またはゲートライン反転駆動)場合でも、開口率を十分に向上することができるが、フリッカの抑制等の観点からは、行方向D1に沿って隣接した絵素を反転駆動するとともに、列方向D2に沿って絵素をn(nは1以上の整数)行ごとに反転駆動することが好ましい。つまり、1フレーム内で、同じ列に属する絵素領域の液晶層に印加される電圧の極性をn行ごとに反転することが好ましい。
例えば、図43(b)に示すように、列方向D2に沿って絵素を2行ごとに反転駆動(いわゆる2Hドット反転駆動)してもよいし、図43(c)に示すように、列方向D2に沿って絵素を1行ごとに反転駆動(いわゆるドット反転駆動)してもよい。図43(c)に示したように、行方向D1に沿って隣接した絵素を反転駆動するとともに列方向D2に沿って絵素を1行ごとに反転駆動すると、列方向D2に沿って隣接した絵素が反転駆動されるので、列方向D2に沿って隣接した絵素電極14の間隔を短くすることができ、さらなる開口率の向上を図ることが可能になる。
なお、本実施形態では、1つの絵素領域内で単位中実部14a’が一列に配置されている場合を例示したが、1つの絵素領域内で単位中実部14a’が複数列に配置されている場合でも、絵素の周期方向の一方に沿って隣接した絵素を反転駆動することで同様の効果を得ることができる。ただし、単位中実部14a’を一列に配列すると、2列以上に配列する場合に比べて、絵素領域内での中実部14a’の面積比率を高くし、絵素領域内での表示に寄与する領域の割合(実効開口率)を高くすることができる。この理由を図44および図45を参照しながら説明する。
図44および図45に示すように、TFT基板100aは、実際には、行方向D1に沿って平行に延びるゲートバスライン(走査配線)41と、列方向D2に沿って平行に延びるソースバスライン(信号配線)42とを有している。ゲートバスライン(走査配線)41は、絵素領域ごとに設けられたTFT(不図示)のゲート電極に電気的に接続されており、ソースバスライン(信号配線)42はTFTのソース電極に電気的に接続されている。また、TFTのドレイン電極と、絵素電極14とが電気的に接続されている。TFT基板100aは、さらに、補助容量配線43を有している。
図44に示す構成では、複数の単位中実部14a’が絵素領域内で1列に配列されているので、非中実部14b(切欠き部14b2)の一部はゲートバスライン41やソースバスライン42に重なり、絵素領域外に位置している。
一方、図45に示すように、複数の単位中実部14a’が2列以上に配列されていると、絵素領域内に、単位中実部14a’に包囲された開口部14b1が存在し、この開口部14b1は、その全部が絵素領域内に位置することになる。従って、絵素領域内での非中実部14bの面積比率が高くなり、中実部14aの面積比率が低くなってしまう。
これに対し図44に示したように、複数の単位中実部14a’が絵素領域内で1列に配列されていると、切欠き部14bのそれぞれは、いずれも少なくとも一部が絵素領域外に位置しているので、絵素領域内での非中実部14bの面積比率を低くして、中実部14aの面積比率を大きくすることができ、その結果、開口率を向上することができる。
ここで、ある仕様の液晶表示装置を例に開口率の向上をより具体的に説明する。表示領域が対角15インチサイズ、単位中実部14a’が角部が略円弧状の略正方形状(図44に示した形状)、ゲートバスラインの幅およびソースバスライン上の遮光層の幅が12μm、単位中実部14a’の間隔が8.5μmの液晶表示装置において、単位中実部14a’を一列に配列したときと、単位中実部14a’を2列に配列したときとで、透過率を比較した。単位中実部14a’を一列に配列すると、単位中実部14a’を2列に配列したときに比べて、SXGA(1280×1024画素)においては6%、UXGA(1600×1200画素)においては9%、QXGA(2048×1536画素)においては11%透過率を向上することができた。このように、絵素領域内で単位中実部14a’を一列に配列することによって得られる、開口率を向上する効果は、高精細型の液晶表示装置において特に高い。
なお、図44や図45に示したように、絵素電極14がゲートバスライン41やソースバスライン42に一部重畳する構成においては、これらのバスラインからの影響を少なくするために、バスライン上に絶縁膜(例えば有機絶縁膜)をなるべく厚く形成し、その上に絵素電極14を形成することが好ましい。
また、上述の仕様の液晶表示装置(表示領域が対角15インチサイズ、単位中実部14a’が角部が略円弧状の略正方形状、ゲートバスラインの幅およびソースバスライン上の遮光層の幅が12μm、単位中実部14a’の間隔が8.5μmの液晶表示装置)において、行方向D1に沿って隣接した絵素を反転駆動する場合と、反転駆動しない場合について配向の安定性を検討したところ、行方向D1に沿って隣接した絵素を反転駆動しない場合には、安定な放射状傾斜配向状態を実現するのに必要な絵素電極14間距離(より厳密には絵素電極14の中実部14a同士の距離)は、絵素領域内での単位中実部14a’間距離と同じ8.5μmであった。これに対して、行方向D1に沿って隣接した絵素を反転駆動する場合には、行方向D1に沿って隣接する絵素電極14間距離を3μmまで短くしても、安定な放射状傾斜配向状態が得られた。
(実施形態5)
図46(a)および(b)を参照しながら、本実施形態における液晶表示装置500の構造を説明する。図46(a)は基板法線方向から見た上面図であり、図46(b)は図46(a)中の46B−46B’線に沿った断面図に相当する。図46(b)は、液晶層に電圧を印加していない状態を示している。
図46(a)および(b)に示したように、液晶表示装置500は、TFT基板500aが、絵素電極14の非中実部14b上に凸部40を有する点において、図1(a)および(b)に示した液晶表示装置100と異なっている。凸部40の表面には、垂直配向膜(不図示)が設けられている。
凸部40の基板11の面内方向の断面形状は、図46(a)に示したように、中実部14aと非中実部14bとの境界の形状に整合している。例えば、開口部14b1内に位置する凸部40の断面形状は、開口部14b1の形状と同じであり、ここでは略星形である。また、切欠き部14b2内に位置する凸部40の断面形状は、切欠き部14b2の形状と同じであり、開口部14b1内の凸部40の約2分の1または約4分の1に相当する形状である。但し、隣接する凸部40は互いに繋がっており、単位中実部14a’を略円形に完全に包囲するように形成されている。この凸部40の基板11に垂直な面内方向の断面形状は、図46(b)に示したように台形である。すなわち、基板面に平行な頂面40tと基板面に対してテーパ角θ(<90°)で傾斜した側面40sとを有している。凸部40を覆うように垂直配向膜(不図示)が形成されているので、凸部40の側面40sは、液晶層30の液晶分子30aに対して、斜め電界による配向規制方向と同じ方向の配向規制力を有することになり、放射状傾斜配向を安定化させるように作用する。
この凸部40の作用を図47(a)〜(d)と図48(a)および(b)を参照しながら説明する。
まず、図47(a)〜(d)を参照しながら、液晶分子30aの配向と垂直配向性を有する表面の形状との関係を説明する。
図47(a)に示したように、水平な表面上の液晶分子30aは、垂直配向性を有する表面(典型的には、垂直配向膜の表面)の配向規制力によって、表面に対して垂直に配向する。このように垂直配向状態にある液晶分子30aに液晶分子30aの軸方位に対して垂直な等電位線EQで表される電界が印加されると、液晶分子30aには時計回りまたは反時計回り方向に傾斜させるトルクが等しい確率で作用する。従って、互いに対向する平行平板型配置の電極間にある液晶層30内には、時計回り方向のトルクを受ける液晶分子30aと、反時計回りに方向のトルクを受ける液晶分子30aとが混在する。その結果、液晶層30に印加された電圧に応じた配向状態への変化がスムーズに起こらないことがある。
図47(b)に示したように、傾斜した表面に対して垂直に配向している液晶分子30aに対して、水平な等電位線EQで表される電界が印加されると、液晶分子30aは、等電位線EQと平行になるための傾斜量が少ない方向(図示の例では時計回り)に傾斜する。また、水平な表面に対して垂直に配向している液晶分子30aは、図47(c)に示したように、傾斜した表面に対して垂直に配向している液晶分子30aと配向が連続となるように(整合するように)、傾斜した表面上に位置する液晶分子30aと同じ方向(時計回り)に傾斜する。
図47(d)に示したように、断面が台形の連続した凹凸状の表面に対しては、それぞれの傾斜した表面上の液晶分子30aによって規制される配向方向と整合するように、頂面および底面上の液晶分子30aが配向する。
本実施形態の液晶表示装置は、このような表面の形状(凸部)による配向規制力の方向と、斜め電界による配向規制方向とを一致させることによって、放射状傾斜配向を安定化させる。
図48(a)および(b)は、それぞれ図46(b)に示した液晶層30に電圧を印加した状態を示しており、図48(a)は、液晶層30に印加された電圧に応じて、液晶分子30aの配向が変化し始めた状態(ON初期状態)を模式的に示しており、図48(b)は、印加された電圧に応じて変化した液晶分子30aの配向が定常状態に達した状態を模式的に示している。図48(a)および(b)中の曲線EQは等電位線EQを示す。なお、図48は図46(a)中の48−48’線に沿った断面図に相当するが、説明の簡単さのために、対向基板100bの段差を省略して示している。
絵素電極14と対向電極22とが同電位のとき(液晶層30に電圧が印加されていない状態)には、図46(b)に示したように、絵素領域内の液晶分子30aは、両基板11および21の表面に対して垂直に配向している。このとき、凸部40の側面40sの垂直配向膜(不図示)に接する液晶分子30aは、側面40sに対して垂直に配向し、側面40sの近傍の液晶分子30aは、周辺の液晶分子30aとの相互作用(弾性体としての性質)によって、図示したように、傾斜した配向をとる。
液晶層30に電圧を印加すると、図48(a)に示した等電位線EQで表される電位勾配が形成される。この等電位線EQは、絵素電極14の中実部14aと対向電極22との間に位置する液晶層30内では、中実部14aおよび対向電極22の表面に対して平行であり、絵素電極14の非中実部14bに対応する領域で落ち込み、非中実部14bのエッジ部(非中実部14bと中実部14aとの境界を含む非中実部14bの内側周辺)EG上の液晶層30内には、傾斜した等電位線EQで表される斜め電界が形成される。
この斜め電界によって、上述したように、エッジ部EG上の液晶分子30aは、図48(a)中に矢印で示したように、図中の右側エッジ部EGでは時計回り方向に、図中の左側エッジ部EGでは反時計回り方向に、それぞれ傾斜(回転)し、等電位線EQに平行に配向する。この斜め電界による配向規制方向は、それぞれのエッジ部EGに位置する側面40sによる配向規制方向と同じである。
上述したように、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aから始まる配向の変化が進み、定常状態に達すると、図48(b)に模式的に示した配向状態となる。開口部14b1の中央付近、すなわち、凸部40の頂面40tの中央付近に位置する液晶分子30aは、開口部14b1の互いに対向する両側のエッジ部EGの液晶分子30aの配向の影響をほぼ同等に受けるので、等電位線EQに対して垂直な配向状態を保ち、開口部14b1(凸部40の頂面40t)の中央から離れた領域の液晶分子30aは、それぞれ近い方のエッジ部EGの液晶分子30aの配向の影響を受けて傾斜し、開口部14a(凸部40の頂面40t)の中心SAに関して対称な傾斜配向を形成する。また、開口部14b1および凸部40によって実質的に包囲された単位中実部14a’に対応する領域においても、単位中実部14a’の中心SAに関して対称な傾斜配向を形成する。
このように、本実施形態における液晶表示装置500においても、実施形態1における液晶表示装置100と同様に、放射状傾斜配向を有する液晶ドメインが開口部14b1および単位中実部14a’に対応して形成される。凸部40は単位中実部14a’を略円形に完全に包囲するように形成されているので、液晶ドメインは凸部40で包囲された略円形の領域に対応して形成される。さらに、開口部14b1の内側に設けられた凸部40の側面は、開口部14b1のエッジ部EG付近の液晶分子30aを、斜め電界による配向方向と同じ方向に傾斜させるように作用するので、放射状傾斜配向を安定化させる。
斜め電界による配向規制力は、当然のことながら、電圧印加時にしか作用せず、その強さは電界の強さ(印加電圧の大きさ)に依存する。したがって、電界強度が弱い(すなわち、印加電圧が低い)と、斜め電界による配向規制力は弱く、液晶パネルに外力が加わると、液晶材料の流動によって放射状傾斜配向が崩れることがある。一旦、放射状傾斜配向が崩れると、十分に強い配向規制力を発揮する斜め電界を生成するだけの電圧が印加されないと、放射状傾斜配向は復元されない。これに対し、凸部40の側面40sによる配向規制力は、印加電圧に関係なく作用し、配向膜のアンカリング効果として知られているように、非常に強い。従って、液晶材料の流動が生じて、一旦放射状傾斜配向が崩れても、凸部40の側面40sの近傍の液晶分子30aは放射状傾斜配向のときと同じ配向方向を維持している。従って、液晶材料の流動が止まりさえすれば、放射状傾斜配向が容易に復元される。
この様に、本実施形態における液晶表示装置500は、実施形態1における液晶表示装置100が有する特徴に加え、外力に対して強いという特徴を有している。従って、液晶表示装置500は、外力が印加されやすい、携帯して使用される機会の多いPCやPDAに好適に用いられる。
なお、凸部40を透明性の高い誘電体を用いて形成すると、開口部14b1に対応して形成される液晶ドメインの表示への寄与率が向上するという利点が得られる。一方、凸部40を不透明な誘電体を用いて形成すると、凸部40の側面40sによって傾斜配向している液晶分子30aのリタデーションに起因する光漏れを防止できるという利点が得られる。いずれを採用するかは、液晶表示装置の用途などの応じて決めればよい。いずれの場合にも、感光性樹脂を用いると、開口部14b1に対応してパターニングする工程を簡略化できる利点がある。十分な配向規制力を得るためには、凸部40の高さは、液晶層30の厚さが約3μmの場合、約0.5μm〜約2μmの範囲にあることが好ましい。一般に、凸部40の高さは、液晶層30の厚さの約1/6〜約2/3の範囲内にあることが好ましい。
上述したように、液晶表示装置500は、絵素電極14の非中実部14bの内側に凸部40を有し、凸部40の側面40sは、液晶層30の液晶分子30aに対して、斜め電界による配向規制方向と同じ方向の配向規制力を有する。側面40sが斜め電界による配向規制方向と同じ方向の配向規制力を有するための好ましい条件を図49(a)〜(c)を参照しながら説明する。
図49(a)〜(c)は、それぞれ液晶表示装置500A、500Bおよび500Cの断面図を模式的に示し、図48(a)に対応する。液晶表示装置500A、500Bおよび500Cは、いずれも非中実部14b上に凸部を有するが、1つの構造体としての凸部40全体と非中実部14bとの配置関係が液晶表示装置500と異なっている。
上述した液晶表示装置500においては、図48(a)に示したように、構造体としての凸部40の全体が開口部14b1の内側に形成されており、且つ、凸部40の底面は開口部14b1よりも小さい。図49(a)に示した液晶表示装置500Aにおいては、凸部40Aの底面は開口部14b1と一致しており、図49(b)に示した液晶表示装置500Bにおいては、凸部40Bは開口部14b1よりも大きい底面を有し、絵素電極14の中実部14のエッジ部(外縁部)を覆っている。これらの凸部40、40Aおよび40Bのいずれの側面40s上にも中実部14aが形成されていない。その結果、それぞれの図に示したように、等電位線EQは、中実部14a上ではほぼ平坦で、そのまま開口部14b1で落ち込む。従って、液晶表示装置500Aおよび500Bの凸部40Aおよび40Bの側面40sは、上述した液晶表示装置500の凸部40と同様に、斜め電界による配向規制力と同じ方向の配向規制力を発揮し、放射状傾斜配向を安定化する。
これに対し、図49(c)に示した液晶表示装置500Cの凸部40Cの底面は開口部14b1よりも大きく、開口部14b1の周辺の中実部14aは凸部40Cの側面40s上に形成されている。この側面40s上に形成された中実部14aの影響で、等電位線EQに山が形成される。等電位線EQの山は、開口部14b1で落ち込む等電位線EQと反対の傾きを有しており、これは、液晶分子30aを放射状傾斜配向させる斜め電界とは逆向きの斜め電界を生成していることを示している。従って、側面40sが斜め電界による配向規制方向と同じ方向の配向規制力を有するためには、側面40s上に中実部(導電膜)14aが形成されていないことが好ましい。なお、ここでは、図49(a)〜(c)に示すような開口部14b1上に設けられた凸部を例として説明したが、切欠き部14b2上に設けられた凸部についても同様のことがいえる。
非中実部14b上に凸部40を形成することによって、放射状傾斜配向を安定化させる効果は、例示したパターンの非中実部14bに限られず、これまでに説明した全てのパターンの非中実部14bに対して同様に適用でき、同様の効果を得ることができる。なお、凸部40による外力に対する配向安定化効果を十分に発揮させるためには、凸部40のパターン(基板法線方向から見たときにパターン)は、できるだけ広い領域の液晶層30を包囲する形状であることが好ましい。従って、例えば、円形の開口部14b1を有するネガ型パターンよりも、円形の単位中実部14a’を有するポジ型パターンの方が、凸部40による配向安定化効果が大きい。
また、本願発明者が、凸部の配置と放射状傾斜配向の安定性との関係について詳細な検討を行ったところ、図49(b)に示したように、凸部40Bが中実部14aのエッジ部を覆っている構成を採用すると、駆動電圧条件によらず安定な放射状傾斜配向が得られることがわかった。以下、この理由を図50(a)および(b)を参照しながら説明する。図50(a)および(b)は、図48(a)に示した凸部40の近傍および図49(b)に示した凸部40Bの近傍をそれぞれ拡大して示す図であり、液晶層に電圧を印加した直後の状態を示している。
図50(a)に示すように、凸部40の全体が開口部14b1の内側に形成されており、凸部40の底面が開口部14b1よりも小さいと、凸部40の側面40sは開口部14b1のエッジ部上に位置しているので、凸部40の側面40s近傍に位置する液晶分子30aは、電圧印加時には、傾斜した等電位線EQ上に位置する。図示した例では、側面40sに対して垂直に配向している液晶分子30aの軸方位と、傾斜した等電位線EQとがほぼ平行であるので、この液晶分子30aに対しては配向方向を変化させるトルクはほとんど作用しない。ところが、図示した例よりも高い電圧を印加した場合には、開口部14b1上での等電位線EQの落ち込みがより大きくなる(すなわち等電位線EQの傾斜がより急峻となる)ので、側面40sに対して垂直に配向している液晶分子30aには、液晶分子30aを時計回りに(図中の方向Aに)傾斜させるトルクが作用する。また、図示した例よりも低い電圧を印加した場合には、開口部14b1上での等電位線EQの落ち込みがより小さくなる(すなわち等電位線EQの傾斜がよりなだらかとなる)ので、側面40sに対して垂直に配向している液晶分子30aには、液晶分子30aを反時計回りに(図中の方向Bに)傾斜させるトルクが作用する。
このように、凸部40の全体が開口部14b1の内側に配置されていると、印加する電圧の高低によって、凸部40の側面40s上に垂直配向している液晶分子30aに作用するトルクの方向が異なるので、駆動電圧条件によっては配向が乱れてしまうことがある。
これに対し、図50(b)に示すように、凸部40Bが絵素電極14の中実部14(単位中実部14a’)のエッジ部(外縁部)を覆っていると、凸部40Bの側面40sを、開口部14b1のエッジ部上ではなく、中実部14a(単位中実部14a’)上に位置させることができるので、凸部40Bの側面40s近傍に位置する液晶分子30aを、電圧印加時に平行な等電位線EQ上に位置させることができる。この場合、側面40s上に垂直配向している液晶分子30aに対して電圧印加時に作用するトルクの方向は、印加電圧の高低によらず一義的に定まる(図示した例では反時計回り)ので、駆動電圧条件によらず、安定な放射状傾斜配向が得られる。なお、ここでは開口部14b1上に設けられた凸部を例として説明したが、切欠き部14b2上に設けられた凸部についても同様である。
凸部40Bと中実部14aとが重なる部分の幅について特に制限はないが、凸部40Bや中実部14aの製造時のずれを考慮し、ずれが発生しても凸部40Bが中実部14aのエッジ部を覆うことができるように(例えば2μm程度に)設定することが好ましい。
(実施形態6)
図51を参照しながら、本実施形態における液晶表示装置600の構造を説明する。
液晶表示装置600の対向基板600bは、図51に示すように、絵素電極14の単位中実部14a’に対向する領域に設けられた凸部(リブ)22bを有している。凸部22は、透過領域T内と反射領域R内とに1つずつ設けられており、配向規制構造として機能する。凸部22bは、例えば、感光性樹脂から形成されている。
凸部22bのうちの反射領域R内に位置する凸部22bは、その頂部がTFT基板100aに接しており、この凸部22bによって液晶層30の厚さが規定される。つまり、反射領域R内に位置する凸部22bは、スペーサとしても機能する。
本実施形態のように、配向規制構造としての凸部22bの一部(反射領域R内に位置する凸部22)がスペーサとしても機能すると、配向規制構造とスペーサとを別途に形成する必要がないので、製造プロセスを簡略化し、製造コストの低減を図ることができる。
ペーパーホワイトに近い白表示を実現するために反射電極の表面に微小な凹凸形状を付与する場合には、反射電極の表面のうち凸部22bに接する部分には凹凸形状を付与しないことが好ましい。凸部22bに接する部分には凹凸形状を付与しないことにより、セルギャップ(液晶層30の厚さ)をより均一に制御することができる。
なお、凸部22b近傍の液晶分子は、電圧無印加状態においても基板表面に対して傾斜しているので、ノーマリブラックモードでの黒表示時における光漏れの原因となる。そのため、凸部22bのサイズが大きすぎると、コントラスト比の低下が問題となる。特に、透過領域T内においてコントラスト比の低下が発生すると、表示品位への影響が大きい。
そのため、凸部22bの大きさによっては、図52(a)および(b)に示す液晶表示装置600Aおよび600Bのように、透過領域T内の凸部22bを遮光する遮光層50を設けてもよい。
図52(a)に示す液晶表示装置600AのTFT基板100aには、透過領域T内の凸部22bに重なるように遮光層50が設けられている。また、図52(b)に示す液晶表示装置600Bの対向基板600bには、透過領域T内の凸部22bに重なるように遮光層50が設けられている。このように、透過領域T内に位置する凸部22bを遮光する遮光層50を設けると、透過領域T内における光漏れを抑制し、コントラスト比の低下を抑制することができる。
より確実に光漏れを防止する観点からは、遮光層50の面積は大きいことが好ましいが、基板面法線方向から見たときに凸部22bとほぼ重なるように遮光層50を形成すれば、十分に光漏れを抑制することができる。
遮光層50を形成する材料は、遮光性を有する材料であれば特に制限はない。TFT基板100aや対向基板600bに設けられる他の構成要素のうち、遮光性を有する材料から形成されるものと同じ工程で遮光層50を形成すれば、遮光層50を形成するための新たな工程を設ける必要がない。例えば、図52(a)に示すようにTFT基板100aに遮光層50を設ける場合にはゲートバスラインと同じ材料を用いて同じ工程で遮光層50を形成することで、簡便に遮光層50を形成することができる。また、図52(b)に示すように、対向基板600bに遮光層50を設けると、TFT基板100aと対向基板600bとを貼り合せる際の位置ずれ(貼り合わせずれ)によって遮光が不十分となることを防止できる。
また、透過領域T内の凸部22bを反射領域R内の凸部22bよりも小さめに形成することによっても、透過領域T内での光漏れを抑制することができる。例えば、図53(a)に示す液晶表示装置600Cのように、透過領域T内の凸部22bを反射領域R内の凸部22bよりも低く形成してもよいし、図53(b)に示す液晶表示装置600Dのように、透過領域T内の凸部22bを反射領域R内の凸部22bよりも細く形成してもよい。透過領域T内の凸部22bを反射領域R内の凸部22bよりも低く形成するには、例えば、感光性樹脂を露光する際の露光量を透過領域T内の凸部22bと反射領域R内の凸部22bとで異ならせればよい。また、透過領域T内の凸部22bを反射領域R内の凸部22bよりも細く形成するには、例えば、感光性樹脂を露光する際に用いられるフォトマスクの遮光部(あるいは開口部)の直径を透過領域T内の凸部22bと反射領域R内の凸部22bとについて異ならせればよい。
上述したように、透過領域T内に設けられる凸部22bは、コントラスト比を低下させる原因となるので、コントラスト比を向上する観点からは、透過領域T内に設ける凸部22bの個数は、少ないことが好ましく、対向基板600bは、各絵素領域において、透過領域T内に位置する凸部22bを1つだけ有していることが好ましい。
図54(a)に示す液晶表示装置600Eは、透過領域T内に単位中実部14a’を2つ、反射領域R内に単位中実部14a’を1つ有し、それぞれの単位中実部14a’に対応する凸部22bを有している。そのため、透過領域T内には2つの凸部22bを有している。
図54(b)に示す液晶表示装置600Fは、図54(a)に示した液晶表示装置600Eの透過領域T内の2つの単位中実部14a’をより大きな1つの単位中実部14a’で置換したものに相当する。この場合、透過領域T内に設ける凸部22bは1つでよいので、コントラスト比や光透過率を向上することが可能になる。例えば、透過領域T内に正方形の単位中実部14a’が2つ配置されている場合には、それらを長方形の1つの単位中実部14a’に置換すればよい。
図52(a)、(b)、図53(a)、(b)および図54(b)に例示したような、透過領域Tにおける光漏れを抑制するのに好適な構成は、セルギャップの小さな液晶表示装置に採用するとその効果が高い。セルギャップを小さくした場合、所定のリタデーションを確保するためには、液晶材料の屈折率異方性Δnを大きくする必要があるので、凸部22bによる黒表示時の光漏れが発生しやすいからである。
セルギャップの小さな液晶表示装置としては、例えば、携帯用電話機やPDAなどの携帯用電子機器の液晶表示装置が挙げられる。携帯用電子機器の液晶表示装置では、駆動電圧を低くして消費電力を小さくするために、セルギャップが小さく設定されることが多い。また、今後は、地上波デジタル放送の本格化に伴って、高品位の動画表示を携帯用電子機器で表示する機会が増加するので、動画表示を好適に行う観点からも、セルギャップを小さく設定することが多くなると考えられる。一般に、セルギャップが小さいほど、電界の効果が強くなるので、応答特性は向上する。そのため、セルギャップが小さな液晶表示装置は動画表示に適している。