JP4346189B2 - 焼却灰、およびダイオキシン類を含有する焼却灰の固定化方法 - Google Patents
焼却灰、およびダイオキシン類を含有する焼却灰の固定化方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼却灰の固定化方法に関し、より詳細には、焼却灰、およびダイオキシン類を含有する焼却灰を、重合性樹脂組成物により固定化する方法に関し、さらに詳細には、焼却灰、およびダイオキシン類を含有する焼却灰により汚染された焼却場設備の内面を、重合性樹脂組成物により固定化し、有害な焼却灰の周囲環境への飛散を防止することを可能とする焼却灰、およびダイオキシン類を含有する焼却灰の固定化に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、我が国には、約1,800カ所の焼却施設が存在し、個々から発生する焼却灰およびダイオキシン類はゴミ焼却場の存続を左右するほど深刻な社会間題となっている。緊急に対策を講じなければならない施設は22カ所程度あるものと推定される。しかし、平成14年12月1日から、さらに法規制値が強化されると、その規制値に適合しない既存施設は、約1,600カ所を上るといわれている。これらの規制値に適合しない施設は、全施設を解体する、あるいは焼却場設備のうちの焼却炉のみ等を改良することが必須となるため、焼却施設等の解体や撤去工事の際のダイオキシン類の処理対策を講じる必要がある。このような解体工事や撤去工事等を行うにあたり、焼却プラント等の内部に付着し、汚染を生じさせているダイオキシン類の固定化処理は、ダイオキシン類による汚染の拡大を防止するために必要不可欠な処理となる。図1及び図2には、それぞれゴミ焼却プロセスにおけるダイオキシン類の発生メカニズムと、ゴミ焼却プロセスにおけるダイオキシン類の行方とを示す。
【0003】
図1に示すように、焼却場の焼却炉1中でゴミGが燃焼すると、燃焼による化学反応の結果、飛灰、すなわちフライアッシユFAが形成される。ゴミGに含まれる有機化合物ORGの燃焼反応Rにより生じたフライアッシユFA上の粒子状炭素は、ゴミGの燃焼により発生した塩素CLと反応し、ダイオキシン類を形成するいわゆるde novo合成DNが、300〜400℃の低温域となる冷却塔2や、集塵機3内で発生する。この結果ゴミG中にもともと含まれているダイオキシン類Dの他、燃焼により発生するダイオキシン類が焼却場の各設備の内面に付着することによりダイオキシン類汚染が発生する。
【0004】
本発明にいうダイオキシン類とは、主としてポリ塩素化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs)及びポリ塩素化ジベンゾフラン(PCDFs)のことをいうが、本発明は、コプラナーPCBに対しても同様に適用できるものである。このダイオキシン類を含んだ焼却灰4は、図1に示すように焼却灰4として回収され、一部は集塵機3を通過して煙突の頂部から排気ガスEGとして排出されることになる。
【0005】
図2は、焼却場におけるゴミ焼却プロセス毎に各設備に堆積した焼却灰4の処理について示した図である。図1の燃焼炉1に蓄積した焼却灰4は、灰ピット5へと堆積され、この結果灰ピット5の内面もダイオキシン類により汚染されることになる。灰ピツト5に蓄積された焼却灰4は、集塵機3によりトラップされたフライアツシユFAと共に回収され、最終的には産業廃棄物として埋立て地LFにおいて埋立てが行われる。集塵機3により回収しきれなかった焼却灰4は、煙突6へと流れて行き、煙突6の内部を汚染する。燃焼により生じたガスは、最終的には排気ガスEGとして煙突6の頂部から排出されることになる。
【0006】
これまで、このような焼却場の各設備の内面に付着して汚染を生じさせているダイオキシン類を除去するため、いくつかの方法が知られている。このような除去方法としては、例えばエアーブラストエ法よりある程度ダイオキシン類を除去した後、その除去したダイオキシン類を別の処理施設内で無害化する方法を挙げることができる。この方法によれば、ダイオキシン類を含む燃焼灰4の除去はある程度可能であるものの、付着汚染したダイオキシン類の除去は完全ではなく、次に行う解体や撤去作業において、除去できなかったダイオキシン類の飛散等が人体に悪影響を及ぼしたり周辺環境へのダイオキシン類による汚染の拡大が大きな問題となる。
【0007】
また、ウオータージェット工法により、付着汚染したダイオキシン類を焼却場設備の内面から除去した場合には、除去のために大量の水を使用することや、ダイオキシン類除去後の水の排水処理が非常に困難であること等も大きな問題点となつている。
【0008】
上述したようなウォータージェット工法ではまた、除去されたダイオキシン類を処理するための方法が別途必要とされる。このように汚染された焼却場の各設備から除去したダイオキシン類の処理には、光化学的分解法、超臨界水酸化分解法、触媒酸化法、および溶媒抽出分解法といった技術を適用する試みもなされている。しかしながら、各技術に共通な問題点として、一度に処理できる量が少ない点や、処理に要するコストが非常に高い点、原位置での仮設プラントの設置が困難な点等が挙げられているのが現状である。
【0009】
上述の技術がそれぞれ提案されているものの、焼却場の各設備の解体に際して周囲環境にダイオキシン類といった汚染物質を飛散させず、その後ダイオキシン類により汚染された処理液等を後処理する必要がなく、さらに解体された後の廃棄物からダイオキシン類が周囲環境へと漏れ出すことによる2次汚染を防止することが可能なダイオキシン類を含有する焼却灰の埋封固定化方法が必要とされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した問題点に鑑みなされたものであり、本発明は、周囲環境に焼却灰、ならびにダイオキシン類を含む焼却灰といった汚染物質を飛散させず、焼却灰やダイオキシン類が周囲環境へと漏れ出すことを防止することが可能な焼却灰、ならびにダイオキシン類を含有する焼却灰の固定化方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、焼却場設備の内面に堆積した焼却灰に、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、ラジカル重合開始剤の働きを有する硬化剤および該硬化剤を分解しラジカルを発生させる働きを有する硬化促進剤を含有してなる重合性樹脂組成物を付着させて該内面に固定化する方法であり、前記重合性樹脂組成物は、20℃でのB型粘度計による粘度が15〜500[mPa・s]であることを特徴とする焼却灰の固定化方法であり、前記焼却灰は、ダイオキシン類を含有することを特徴とする焼却灰の固定化方法である。また、本発明は、上記固定化方法に使用される、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、ラジカル重合開始剤の働きを有する硬化剤および該硬化剤を分解しラジカルを発生させる働きを有する硬化促進剤を含む重合性樹脂組成物を含有してなる固定化剤である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の焼却灰に重合性樹脂組成物を付着させて固定化する方法で用いられる重合性樹脂組成物は、作業環境、煙道内側面への付着性、浸透性、硬化性、ダイオキシン類固定性といった観点から、ラジカル重合性樹脂組成物が好ましく、さらに好ましくはラジカル重合性である単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、溶解性ポリマー、硬化剤および硬化促進剤とから形成されていることが好ましい。
【0014】
上述のラジカル重合性樹脂脂組成物中の単官能(メタ)アクリレートとは、1分子中にメタクリロイル基又はアクリロイル基を1個以上有するものである。この単官能(メタ)アクリレートは焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰をを固定しやすく、また該焼却灰で汚染された煙突や煙道を構成する耐火煉瓦等への含浸性や硬化性に優れ、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰を確実に固定化させるという効果を有する。
【0015】
単官能(メタ)アクリレートの例としては(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、プロピル(メタ)アクリレ−ト、ブチル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト、イソオクチル(メタ)アクリレ−ト、イソデシル(メタ)アクリレ−ト、ラウリル(メタ)アクリレ−ト、ステアリル(メタ)アクリレ−ト、フェニル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ−ト、イソボルニル(メタ)アクリレ−ト、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、ポリプロピレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、アルキルオキシポリエチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、アルキルオキシポリプロピレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、フェノキシポリエチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、フェノキシポリプロピレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、グリシジル(メタ)アクリレ−ト、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレ−ト、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、モルホリン(メタ)アクリレ−ト、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレ−ト、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレ−ト、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレ−ト、トリフロロエチル(メタ)アクリレ−ト、テトラフロロプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、さらにはジシクロペンテニロキシエチルアクリレート及びジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート等の1分子中にエチレン性不飽和二重結合を1個有する単官能(メタ)アクリレート等あげられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0016】
本発明の焼却灰の固定化方法に用いるラジカル重合性樹脂組成物中の多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中にメタクリロイル基又はアクリロイル基を2個以上有するものである。この多官能(メタ)アクリレートはラジカル重合性樹脂組成物の硬化性を向上させる効果を有する。
【0017】
多官能(メタ)アクリレートの例としては、ポリエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ポリグリセロ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ポリプロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ポリブチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,4−ブタンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサ(メタ)アクリレ−ト、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレ−ト、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、エポキシアクリレート「ビスコート#540」(大阪有機化学工業社製)、エポキシアクリレート「エポキシエステル3000M」(共栄社化学社製)及びウレタンアクリレート「アロニックスM−1100」(東亜合成化学社製)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0018】
上述の単官能及び多官能(メタ)アクリレートの使用量は、焼却灰の固定性及び硬化性を考慮に入れると、単官能(メタ)アクリレートは単官能及び多官能(メタ)アクリレートの合計100質量部中、20〜97質量部がより好ましく、多官能(メタ)アクリレートは3〜80質量部が好ましい。
【0019】
本発明の焼却灰や、ダイオキシン類をを含む焼却灰の固定化方法に用いる重合性樹脂組成物は溶解性ポリマーを添加して用いることが出来る。溶解性ポリマーとは、前記単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートの混合物に均一に溶解可能な特性を有する有機ポリマーである。この溶解性ポリマーは重合性樹脂組成物の粘性を調整し、噴霧した場合の垂れを防止し、さらに単官能及び多官能(メタ)アクリレートの揮発を防止しを焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰をより確実に固定する効果を有する。
【0020】
溶解性ポリマーの例としては各種ポリメチル(メタ)アクリレート、メチルメタアクリレートとスチレンのランダム共重合体等があげられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。溶解性ポリマーの使用量はラジカル重合性樹脂組成物の粘度及び含浸性のバランスを考慮すると前記単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートの混合物100質量部に対して1〜30質量部が好ましい。
【0021】
本発明の焼却灰や、ダイオキシン類をを含む焼却灰の固定化に用いる重合性樹脂組成物中の硬化剤とはいわゆるラジカル重合開始剤の働きを有し、例えば次のような有機過酸化物が挙げられる。
【0022】
(1)ケトンパーオキサイド類:メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド及びアセチルアセトンパーオキサイド等。
【0023】
(2)パーオキシケタール類:1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)オクタン、ノルマルブチル−4,4−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)バレレート及び2,2−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ブタン等。
【0024】
(3)ハイドロパーオキサイド類:ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等。
【0025】
(4)ジアルキルパーオキサイド類:ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ−メタ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン−3等。
【0026】
(5)ジアシルパーオキサイド類:アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウリノイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びメタ−トルオイルパーオキサイド等。
【0027】
(6)パーオキシジカーボネート類:ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネイト及びジアリルパーオキシジカーボネート等。
【0028】
(7)パーオキシエステル類:ターシャリーブチルパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシイソブチレート、ターシャリーブチルパーオキシピヴァレート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシラウレート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート、ジターシャリーブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ターシャリーブチルパーオキシマレイックアシッド、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、ターシャリーヘキシルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーヘキシルパーオキシピヴァレート、ターシャリーブチルパーオキシネオヘキサノエート、ターシャリーヘキシルパーオキシネオヘキサノエート及びクミルパーオキシネオヘキサノエート等。
【0029】
(8)その他の有機過酸化物:アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド及びターシャリブチルパーオキシアリルカーボネート等。
【0030】
これらの硬化剤は1種又は2種以上を使用することができる。硬化剤の中では硬化性の点でベンゾイルパーオキサイドが好ましい。
【0031】
硬化剤の使用量は、ラジカル重合性樹脂組成物の可使時間及び硬化性のバランスを考慮すると前記単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート及び溶解性ポリマーの混合物100質量部に対して、0.2〜10質量部が好ましい。0.2質量部未満では硬化が遅くなり、10質量部を越えても硬化速度等は向上せず、むしろ接着性の低下等が生ずるおそれがある。
【0032】
本発明の焼却灰や、ダイオキシン類をを含む焼却灰の固定化に用いる重合性樹脂組成物中の硬化促進剤とは硬化剤を分解しラジカルを発生させる働きを有し、たとえば以下に示すようなものがあげられる。
【0033】
(1)チオ尿素誘導体:ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、メルカプトベンゾイミダゾール及びベンゾイルチオ尿素等。
【0034】
(2)アミン類:N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジイソプロパノール−p−トルイジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エチルジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルアニリン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン及びアルデヒド−アミン縮合反応物等。
【0035】
(3)有機酸金属塩:ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸銅及びオクチル酸亜鉛等。
【0036】
(4)有機金属キレート:銅アセチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート、クロムアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、バナジニルアセチルアセトネート及びコバルトアセチルアセトネート等。これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0037】
これらの中では硬化性向上の点から、アミン類、有機酸金属塩及び有機金属キレート化合物が好ましい。
【0038】
硬化促進剤の使用量は、重合性樹脂組成物の可使時間及び硬化性のバランスを考慮すると前記単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート及び溶解性ポリマーの混合物100質量部に対して、0.2〜10質量部が好ましい。0.2質量部未満では硬化が遅くなり、10質量部を越えても硬化速度等は向上せず、むしろ接着性の低下等が生ずるおそれがある。
【0039】
本発明の焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化に用いる重合性樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で公知の各種カップリング剤、有機・無機充填剤、チクソトロピック性付与剤、空乾性付与剤、染料・顔料、難燃化剤等を添加することができる。
【0040】
また本発明の焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化に用いる重合性樹脂組成物は、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰を含有する設備を構成する耐火煉瓦等への含浸性を考慮すると、20℃でのB型粘度計による粘度が15〜500[mPa・s]であることが好ましい。
【0041】
さらに本発明の焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化では作業者の安全の面で硬化性樹脂組成物は噴霧、特に遠隔からの噴霧によることが好ましい。
【0042】
本発明の焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化は、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰により汚染されたいかなる構造物に対しても適用することができるが、以下、本発明を焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰により汚染された焼却場施設のうち、煙突及び焼却炉に対して、本発明の焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化方法を適用することを例にとり、より詳細に説明する。
【0043】
図3は、本発明の焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化方法を適用する煙突、および煙道解体の詳細を示したフローチャートを示した図である。煙突および煙道の解体は、ステップ100から開始し、ステップ101において焼却場の各設備を周囲環境から遮断する。ステップ102においては、焼却灰、およびダイオキシン類を含有する焼却灰を固定化する重合性樹脂組成物を、焼却場の汚染された各設備の内面に噴霧することにより焼却場の各設備の内面に付着させてダイオキシン類を含む焼却灰を固定化することを特徴とし、更に、ステップ103において、煙突といった焼却場設備の地上構造部分の静的解体を行うことを特徴としている。
【0044】
本発明の焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化方法を適用した煙突および煙道解体においては、まず、ステップ101において、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰が解体の間に飛散することにより周辺を汚染しないように、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰を固定化する重合性樹脂組成物を噴霧するための噴霧手段を煙突又は灰ピットへと挿入した後、煙突又は灰ピットといった焼却場設備を、周囲環境から遮断する。
【0045】
図4には、本発明において焼却場設備の煙突6を周囲環境から遮断する方法が示されている。図4においては、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰により汚染された煙突6の内面に対して、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰を固定する重合性樹脂組成物を噴霧させるための噴霧装置7を挿入した後、煙突頂部を、噴霧装置7を駆動するためのワイヤ等が通される開口を残して密閉カバー8により閉鎖し、さらに煙道ロ9には、図示しない焼却灰が飛散しないようにフィルターを取り付けた図示しない集塵機を連結することにより、煙突内部を周囲環境から遮断しているのが示されている。煙突6は、通常では径方向外側からRC(鉄筋コンクリート)製の外筒と、耐火煉瓦により構築された耐火壁とを備えて構成されていて、煙突内部の熱が直接RC製の外筒へと伝達されて、RCを劣化させないように構成されている。焼却灰は、通常では煙突6の耐火煉瓦の内面に堆積されていて、解体作業などの工事に際してダイオキシン類が飛散するおそれがある。このため解体に先立ってダイオキシン類を固定化することが必要とされる。
【0046】
また、図4には、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰を固定する重合性樹脂組成物が、プラント11により調合された後、コンプレッサ100へと送られて、供給配管12により煙突6の内部へと送られているのが示されている。噴霧装置7は、クレーンにより煙突頂部から煙突6内部へと吊り下げられていて、噴霧の進行に応じて煙突6内部を下降して行くようにされている。
【0047】
図5には、本発明において焼却場設備のうち、焼却炉1を周囲環境から遮断する方法が示されている。図5においては、焼却炉1の複数の開口が密閉部材13により密閉され、噴霧装置7を噴霧装置挿入のため別途設けられた開口部14から挿入することにより、焼却炉1を周囲環境から遮断しているのが示されている。焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰を固定化する重合性樹脂組成物は、プラント11において調合された後、コンプレッサ10により、供給配管12を通して噴霧装置7へと供給されている。また、密閉部材13のいずれか1つには、フイルタを備えた図示しない集塵機が連結されていて、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰4が周囲環境へと飛散しないようにされている。焼却炉は、通常では、コンクリートの壁により外部から遮断されており、コンクリート製の壁の内面には、焼却灰、さらにはダイオキシン類を含有する焼却灰4が堆積している。この焼却灰4についても焼却炉の解体工事に先立って固定化することが好ましい。噴霧装置7は、図中矢線A,B,Cで示された方向へと運動可能とされていて、焼却炉1の内面にわたってくまなく焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰4を固定化する重合性樹脂組成物を付着させるように構成されている。
【0048】
いずれの場合にでも、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰を固定化する重合性樹脂組成物を噴霧させる際には、周囲環境へと焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰4が飛散することが防止されている。本発明の焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化方法を適用した焼却場設備の解体においては、図4及び図5に示されるようにして焼却場設備を周囲環境から遮断した後、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰を固定化する重合性樹脂組成物を、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰により汚染された構造体の内面へと噴霧させる工程を行う。
【0049】
上述した噴霧工程の後、本発明の固定化剤は硬化されることになる。固定化剤の硬化は、本発明においては、使用する固定化剤に応じて常温硬化とすることができるし、必要に応じて噴霧工程の後に別途加熱工程を設けて硬化を行うことも可能である。
【発明の効果】
本発明の焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化方法により、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰により汚染された焼却場設備を周囲環境から遮断し、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰で汚染された焼却灰を、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰を固定化する重合性樹脂組成物により固定化し、焼却灰や、ダイオキシン類を含む焼却灰の周囲環境への飛散を防止すると共に作業環境を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ゴミ焼却プロセスにおける焼却灰、ダイオキシン類を含む焼却灰発生メカニズムを示した図。
【図2】ゴミ焼却プロセスにおける焼却灰、ダイオキシン類を含む焼却灰の処理を示した図。
【図3】本発明の焼却灰、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化方法を適用した焼却場の各設備の解体工程を示したフローチヤート。
【図4】本発明の焼却灰、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化方法を適用した解体における煙突内部の遮断方法を示した図。
【図5】本発明の焼却灰、ダイオキシン類を含む焼却灰の固定化方法を適用した解体における焼却炉内部の遮断方法を示した図。
【符号の説明】
1−焼却炉
2−冷却塔
3−集塵機
4−焼却灰
5−灰ピット
6−煙突
7−噴霧装置
8−密閉カバー
9−煙道口
10−コンプレッサ
11−ダイオキシン類埋封剤プラント
12−供給配管
13−密閉部材
14−開口部
A,B,C−噴霧装置運動方向
G−ゴミ
FA−フライアツシユ
EG−排気カス
D−ゴミ中のダイオキシン類
ORG−有機化合物
CL−塩素
R−化学反応
DN−デノボ合成
Claims (4)
- 焼却場設備の内面に堆積した焼却灰に、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、ラジカル重合開始剤の働きを有する硬化剤および該硬化剤を分解しラジカルを発生させる働きを有する硬化促進剤を含有してなる重合性樹脂組成物を付着させて該内面に固定化する方法。
- 前記重合性樹脂組成物は、20℃でのB型粘度計による粘度が15〜500[mPa・s]であることを特徴とする請求項1に記載の焼却灰の固定化方法。
- 前記焼却灰は、ダイオキシン類を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の焼却灰の固定化方法。
- 請求項1〜3のうちの1項に記載の固定化方法に使用される、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、ラジカル重合開始剤の働きを有する硬化剤および該硬化剤を分解しラジカルを発生させる働きを有する硬化促進剤を含む重合性樹脂組成物を含有してなる固定化剤。
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