JP4344971B2 - 準マイクロ波帯で用いるのに適した電磁波ノイズ吸収シート - Google Patents
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Description
【０００１】
【産業上の利用分野】
この発明は、パソコンや移動体通信機器から放射される電磁波ノイズを吸収するのに用いられる、電磁波ノイズ吸収シートに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
一般に、軟磁性粉末として、原子％で（以下、％は原子％を示す）、Ｆｅ−９％Ａｌ−５％Ｓｉ粉末（センダスト粉末）などの軟磁性粉末、さらにＣｒ：０．５〜２０％，Ｓｉ：０．５〜９％，Ａｌ：０．５〜１５％を含有し、残部：Ｆｅおよび不可避不純物からなる成分組成を有する軟磁性粉末等が知られており、これら組成を有する偏平な形状を有する偏平形状金属磁性粉末を樹脂またはゴム中に配向させて含有させ、これをシート状とし電磁波ノイズ吸収シートとして使用されることは一般に知られている。この電磁波ノイズ吸収シートは、周波数が３ＧＨｚを越えるマイクロ波帯で優れた電磁波ノイズ吸収特性を示し、パソコンや移動体通信機器の電磁波ノイズ対策部材に使われており、これら電磁波ノイズ吸収シートはこれを適宜切り取り、機器のノイズ源近傍に貼り付けて使用する方法が主にとられる。このため、電磁波ノイズ吸収シートは成形しやすく、かつ取り扱いやすい０．５〜３ｍｍの範囲の厚さにしている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の電磁波ノイズ吸収シートに含まれる偏平形状金属磁性粉末は、アトマイズ粉末や合金鋳塊を粉砕して得られた粉砕粉を原料とし、これをアトライターミルなどの摩砕機を用いて粉砕・偏平化して製造されるが、従来の粉末は透磁率が低く、この粉末を用いて製造された電磁波ノイズ吸収シートの透磁率も低い値にとどまっていた。このため、次に述べるように、従来粉末を用いた電磁波ノイズ吸収シートは、使用できる周波数の範囲が上記の通り３ＧＨｚを越えるマイクロ波帯に限定されるという課題があった。
【０００４】
即ち、従来の厚さ：０．５〜３ｍｍを有する電磁波ノイズ吸収シートは、透磁率の低さに起因して、周波数が３ＧＨｚを越えるマイクロ波帯では優れた電磁波ノイズ吸収特性を示すものの、これより周波数の低い３００ＭＮｚ〜３ＧＨｚの準マイクロ波帯では電磁波ノイズ吸収能が低く、使用範囲が限定されるという課題があったのである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、従来の電磁波ノイズ吸収シートのもつこれら課題を解決すべく研究を行った結果、以下の（イ）〜（二）に示される事項が分かったのである。
（イ）従来の電磁波ノイズ吸収シート用偏平形状金属磁性粉末において、さらにＮｉ：０．１〜２０％含有せしめると透磁率が増大し、電磁波ノイズ吸収シート用粉末として優れた性能を示すこと。
（ロ）一般に、従来の電磁波ノイズ吸収シート用偏平形状金属磁性粉末は、透磁率を増大させるために偏平化処理後熱処理が施されるが、従来の電磁波ノイズ吸収シート用偏平形状金属磁性粉末にＮｉ：０．１〜２０％含有せしめて、偏平化処理後に熱処理を施すと、透磁率が一層向上すること。
（ハ）このようにして得られた偏平形状金属磁性粉末を可撓性のある熱可塑性樹脂中に配向させて含有させた電磁波ノイズ吸収シートは、一層大きな透磁率を示し、この透磁率の大きさに起因して、０．５〜３ｍｍの実用的な厚みの電磁波ノイズ吸収シートは３００ＭＮｚ〜３ＧＨｚの準マイクロ波帯で従来の電磁波ノイズ吸収シートよりも高い電磁波ノイズ吸収能を示すこと。
（ニ）前記の成分組成を有するアトマイズ粉末や合金鋳塊粉砕粉末は、アトライターミルなどの摩砕機を用いて、平均厚さｄ：０．９〜１．７μｍ、粒度分布計によって求められた粒径の小さい方から重量を累計して５０％になったときの粒径をＤ50とするとＤ50：１４〜２１μｍであり、かつアスペクト比（Ｄ50／ｄ）：１２〜１７を有する偏平形状に調整すること。
【０００６】
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
ＡｌおよびＳｉのうちの１種または２種：１９〜２７％、
Ｎｉ：０．３〜１５％、
Ｃｒ：１〜７％、
を含有し、残りがＦｅと不可避不純物からなる成分組成を有すると共に、
平均厚さ（ｄ）：０．９〜１．７μｍ、
粒度分布計によって求められた粒径の小さい方から重量を累計して５０％になったときの粒径をＤ50とすると、Ｄ50：１４〜２１μｍ、
アスペクト比（Ｄ50／ｄ）：１２〜１７、
に調整され、かつ透磁率を増大させるための熱処理が施された偏平形状金属磁性粉末が、
可撓性のある熱可塑性樹脂中に互いに隔絶され、かつシート面に平行に配列してなる、準マイクロ波帯で用いるのに適した電磁波ノイズ吸収シートに特徴を有するものである。
【０００７】
前記可撓性のある熱可塑性樹は、塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、熱可塑性エラストマーの何れかであることが好ましい。
【０００８】
この発明の透磁率の高い電磁波ノイズ吸収シートに含まれる偏平形状金属磁性粉末の成分組成、平均厚さｄ、Ｄ50、アスペクト比（Ｄ50／ｄ）を上記の如く限定した理由について説明する。
【０００９】
（ａ） ＡｌまたはＳｉ
これら成分は透磁率を増大させる作用を有するが、ＡｌまたはＳｉのうちの１種または２種を合計で１９％未満では所望の十分な透磁率が得られず、一方、２７％を越えて含有すると、粉末に脆化傾向が現れ、粉砕・偏平化処理時に高いアスペクト比が得られない場合が発生し、何れの場合も所望の電磁波ノイズ吸収特性を安定して確保することができないことから、ＡｌおよびＳｉのうちの１種または２種の含有量を合計で１９〜２７％に定めた。
【００１０】
（ｂ） Ｎｉ
Ｎｉには、耐食性を向上させ、もって錆や変色の発生を防止する作用があり、加えてＦｅと同様に強磁性があるためにＦｅと置換しても大きく飽和磁化を低下させず、さらに偏平化処理後の熱処理で透磁率を一段と向上させる作用があるが、その含有量が０．３％未満では所望の高い透磁率を確保することができず、一方、その含有量が１５％を越えると透磁率に低下傾向が現れるようになることから、Ｎｉ含有量を０．３〜１５％に定めた。
【００１１】
（ｃ） Ｃｒ
Ｃｒは、Ｎｉと共存させることにより耐食性を一層向上させ、もって錆や変色の発生を防止する作用があるが、その含有量が１％未満では所望の優れた耐食性を確保することができず、一方、その含有量が７％を越えると、透磁率に低下傾向が現れるようになることから、Ｃｒ含有量を１〜７％に定めた。
【００１２】
（ｄ） 平均厚さｄ
偏平形状金属磁性粉末の平均厚さｄが０．９μｍ未満では、強加工を伴う偏平化で残留歪みが増大し、透磁率に低下傾向が現れるようになるので好ましくなく、一方、平均厚さｄが１．７μｍを越えると、渦電流による損失が大きくなる傾向が現れ、何れの場合も優れた電磁波ノイズ吸収特性が安定して得られなくなることから、偏平形状金属磁性粉末の平均厚さｄを０．９〜１．７μｍに定めた。
【００１３】
（ｅ） Ｄ50
Ｄ50が１４μｍ未満では、強加工を伴う偏平化で残留歪みに増加傾向が現れ、これが透磁率低下の原因となるので好ましくなく、一方、Ｄ50が２１μｍを越えると、電磁波ノイズ吸収シートを製造する際に、樹脂中での均一分散に困難性が生じるようになり、この結果電磁波ノイズ吸収シート全体の電気抵抗が低下し、これが渦電流損失を大きくする原因となることから、Ｄ50：１４〜２１μｍと定めた。
【００１４】
（ｆ） アスペクト比（Ｄ50／ｄ）
前記（ｄ）記載の平均厚さｄの範囲および前記（ｅ）記載の範囲の組合せによりアスペクト比は１２〜１７となる。
【００１５】
【発明の実施の形態】
合金原料を高周波溶解して表１に示される成分組成の溶湯を作製し、これら溶湯を水アトマイズしてアトマイズ粉末を作製し、そのアトマイズ粉末を分級処理して粒径：４０μｍ以下のアトマイズ原料粉末を作製した。このアトマイズ原料粉末をさらにアトライターにて粉砕・偏平化し、次いでこれを熱処理炉に入れ、Ａｒガス雰囲気中、温度：４００℃で２時間保持の条件で透磁率を増大させるための熱処理を行なった。これら熱処理した粉末を風力分級機により分級し、表１に示されるＤ50、ｄおよびアスペクト比（Ｄ50／ｄ）を有する偏平形状金属磁性粉末を作製した。
【００１６】
これら偏平形状金属磁性粉末：５０体積％と塩素化ポリエチレン樹脂：５０体積％を混合し混練したのち、カレンダーロール成形し、偏平形状金属磁性粉末がシート面に平行に配列した厚み：２ｍｍを有する本発明電磁波ノイズ吸収シート１〜６、ＮｉまたはＣｒの含有量がこの発明の範囲から高い方に外れた比較電磁波ノイズ吸収シート１，２、および合金成分としてＮｉを含有しない従来電磁波ノイズ吸収シートを作製した。
【００１７】
これら本発明電磁波ノイズ吸収シート１〜６、比較電磁波ノイズ吸収シート１，２、および従来電磁波ノイズ吸収シートについて、これより切り出して試料を作製し、この試料を同軸ホルダーにセットし、ネットワークアナライザーを用いて、３００ＭＨｚ〜３ＧＨｚの範囲内の周波数で、虚数部と実数部からなる複素透磁率、および電磁波減衰量をそれぞれ求め、複素透磁率の周波数依存性および電磁波減衰量の周波数依存性を調べた。
【００１８】
この結果得られた本発明電磁波ノイズ吸収シート１〜６、比較電磁波ノイズ吸収シート１，２、および従来電磁波ノイズ吸収シートそれぞれの３００ＭＨｚ〜３ＧＨｚの範囲内の所定周波数で求められたすべての複素透磁率および電磁波減衰量について、複素透磁率については、電磁波減衰量と密接な関係がある虚数部の透磁率（表１では複素透磁率虚数部で示す）における最大値と最小値、同様に電磁波減衰量においても最大値と最小値を表１に示し、複素透磁率虚数部および電磁波減衰量の周波数依存性を評価した。
【００１９】
【表１】
【００２０】
表１に示す結果から、本発明電磁波ノイズ吸収シート１〜６は、比較電磁波ノイズ吸収シート１，２、および従来電磁波ノイズ吸収シートに比べて、いずれも複素透磁率虚数部が高く、さらに本発明電磁波ノイズ吸収シート１〜６は３００ＭＮｚ〜３ＧＨｚの準マイクロ波帯において、従来電磁波ノイズ吸収シートよりも大きな電磁波減衰量を示すことが分かる。
【００２１】
【発明の効果】
この発明は、３００ＭＨｚ〜３ＧＨｚの準マイクロ波帯で電磁波ノイズ吸収特性が優れた透磁率の高い電磁波ノイズ吸収シートを提供することができ、電気および電子産業において優れた効果をもたらすものである。
【産業上の利用分野】
この発明は、パソコンや移動体通信機器から放射される電磁波ノイズを吸収するのに用いられる、電磁波ノイズ吸収シートに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
一般に、軟磁性粉末として、原子％で（以下、％は原子％を示す）、Ｆｅ−９％Ａｌ−５％Ｓｉ粉末（センダスト粉末）などの軟磁性粉末、さらにＣｒ：０．５〜２０％，Ｓｉ：０．５〜９％，Ａｌ：０．５〜１５％を含有し、残部：Ｆｅおよび不可避不純物からなる成分組成を有する軟磁性粉末等が知られており、これら組成を有する偏平な形状を有する偏平形状金属磁性粉末を樹脂またはゴム中に配向させて含有させ、これをシート状とし電磁波ノイズ吸収シートとして使用されることは一般に知られている。この電磁波ノイズ吸収シートは、周波数が３ＧＨｚを越えるマイクロ波帯で優れた電磁波ノイズ吸収特性を示し、パソコンや移動体通信機器の電磁波ノイズ対策部材に使われており、これら電磁波ノイズ吸収シートはこれを適宜切り取り、機器のノイズ源近傍に貼り付けて使用する方法が主にとられる。このため、電磁波ノイズ吸収シートは成形しやすく、かつ取り扱いやすい０．５〜３ｍｍの範囲の厚さにしている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の電磁波ノイズ吸収シートに含まれる偏平形状金属磁性粉末は、アトマイズ粉末や合金鋳塊を粉砕して得られた粉砕粉を原料とし、これをアトライターミルなどの摩砕機を用いて粉砕・偏平化して製造されるが、従来の粉末は透磁率が低く、この粉末を用いて製造された電磁波ノイズ吸収シートの透磁率も低い値にとどまっていた。このため、次に述べるように、従来粉末を用いた電磁波ノイズ吸収シートは、使用できる周波数の範囲が上記の通り３ＧＨｚを越えるマイクロ波帯に限定されるという課題があった。
【０００４】
即ち、従来の厚さ：０．５〜３ｍｍを有する電磁波ノイズ吸収シートは、透磁率の低さに起因して、周波数が３ＧＨｚを越えるマイクロ波帯では優れた電磁波ノイズ吸収特性を示すものの、これより周波数の低い３００ＭＮｚ〜３ＧＨｚの準マイクロ波帯では電磁波ノイズ吸収能が低く、使用範囲が限定されるという課題があったのである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、従来の電磁波ノイズ吸収シートのもつこれら課題を解決すべく研究を行った結果、以下の（イ）〜（二）に示される事項が分かったのである。
（イ）従来の電磁波ノイズ吸収シート用偏平形状金属磁性粉末において、さらにＮｉ：０．１〜２０％含有せしめると透磁率が増大し、電磁波ノイズ吸収シート用粉末として優れた性能を示すこと。
（ロ）一般に、従来の電磁波ノイズ吸収シート用偏平形状金属磁性粉末は、透磁率を増大させるために偏平化処理後熱処理が施されるが、従来の電磁波ノイズ吸収シート用偏平形状金属磁性粉末にＮｉ：０．１〜２０％含有せしめて、偏平化処理後に熱処理を施すと、透磁率が一層向上すること。
（ハ）このようにして得られた偏平形状金属磁性粉末を可撓性のある熱可塑性樹脂中に配向させて含有させた電磁波ノイズ吸収シートは、一層大きな透磁率を示し、この透磁率の大きさに起因して、０．５〜３ｍｍの実用的な厚みの電磁波ノイズ吸収シートは３００ＭＮｚ〜３ＧＨｚの準マイクロ波帯で従来の電磁波ノイズ吸収シートよりも高い電磁波ノイズ吸収能を示すこと。
（ニ）前記の成分組成を有するアトマイズ粉末や合金鋳塊粉砕粉末は、アトライターミルなどの摩砕機を用いて、平均厚さｄ：０．９〜１．７μｍ、粒度分布計によって求められた粒径の小さい方から重量を累計して５０％になったときの粒径をＤ50とするとＤ50：１４〜２１μｍであり、かつアスペクト比（Ｄ50／ｄ）：１２〜１７を有する偏平形状に調整すること。
【０００６】
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
ＡｌおよびＳｉのうちの１種または２種：１９〜２７％、
Ｎｉ：０．３〜１５％、
Ｃｒ：１〜７％、
を含有し、残りがＦｅと不可避不純物からなる成分組成を有すると共に、
平均厚さ（ｄ）：０．９〜１．７μｍ、
粒度分布計によって求められた粒径の小さい方から重量を累計して５０％になったときの粒径をＤ50とすると、Ｄ50：１４〜２１μｍ、
アスペクト比（Ｄ50／ｄ）：１２〜１７、
に調整され、かつ透磁率を増大させるための熱処理が施された偏平形状金属磁性粉末が、
可撓性のある熱可塑性樹脂中に互いに隔絶され、かつシート面に平行に配列してなる、準マイクロ波帯で用いるのに適した電磁波ノイズ吸収シートに特徴を有するものである。
【０００７】
前記可撓性のある熱可塑性樹は、塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、熱可塑性エラストマーの何れかであることが好ましい。
【０００８】
この発明の透磁率の高い電磁波ノイズ吸収シートに含まれる偏平形状金属磁性粉末の成分組成、平均厚さｄ、Ｄ50、アスペクト比（Ｄ50／ｄ）を上記の如く限定した理由について説明する。
【０００９】
（ａ） ＡｌまたはＳｉ
これら成分は透磁率を増大させる作用を有するが、ＡｌまたはＳｉのうちの１種または２種を合計で１９％未満では所望の十分な透磁率が得られず、一方、２７％を越えて含有すると、粉末に脆化傾向が現れ、粉砕・偏平化処理時に高いアスペクト比が得られない場合が発生し、何れの場合も所望の電磁波ノイズ吸収特性を安定して確保することができないことから、ＡｌおよびＳｉのうちの１種または２種の含有量を合計で１９〜２７％に定めた。
【００１０】
（ｂ） Ｎｉ
Ｎｉには、耐食性を向上させ、もって錆や変色の発生を防止する作用があり、加えてＦｅと同様に強磁性があるためにＦｅと置換しても大きく飽和磁化を低下させず、さらに偏平化処理後の熱処理で透磁率を一段と向上させる作用があるが、その含有量が０．３％未満では所望の高い透磁率を確保することができず、一方、その含有量が１５％を越えると透磁率に低下傾向が現れるようになることから、Ｎｉ含有量を０．３〜１５％に定めた。
【００１１】
（ｃ） Ｃｒ
Ｃｒは、Ｎｉと共存させることにより耐食性を一層向上させ、もって錆や変色の発生を防止する作用があるが、その含有量が１％未満では所望の優れた耐食性を確保することができず、一方、その含有量が７％を越えると、透磁率に低下傾向が現れるようになることから、Ｃｒ含有量を１〜７％に定めた。
【００１２】
（ｄ） 平均厚さｄ
偏平形状金属磁性粉末の平均厚さｄが０．９μｍ未満では、強加工を伴う偏平化で残留歪みが増大し、透磁率に低下傾向が現れるようになるので好ましくなく、一方、平均厚さｄが１．７μｍを越えると、渦電流による損失が大きくなる傾向が現れ、何れの場合も優れた電磁波ノイズ吸収特性が安定して得られなくなることから、偏平形状金属磁性粉末の平均厚さｄを０．９〜１．７μｍに定めた。
【００１３】
（ｅ） Ｄ50
Ｄ50が１４μｍ未満では、強加工を伴う偏平化で残留歪みに増加傾向が現れ、これが透磁率低下の原因となるので好ましくなく、一方、Ｄ50が２１μｍを越えると、電磁波ノイズ吸収シートを製造する際に、樹脂中での均一分散に困難性が生じるようになり、この結果電磁波ノイズ吸収シート全体の電気抵抗が低下し、これが渦電流損失を大きくする原因となることから、Ｄ50：１４〜２１μｍと定めた。
【００１４】
（ｆ） アスペクト比（Ｄ50／ｄ）
前記（ｄ）記載の平均厚さｄの範囲および前記（ｅ）記載の範囲の組合せによりアスペクト比は１２〜１７となる。
【００１５】
【発明の実施の形態】
合金原料を高周波溶解して表１に示される成分組成の溶湯を作製し、これら溶湯を水アトマイズしてアトマイズ粉末を作製し、そのアトマイズ粉末を分級処理して粒径：４０μｍ以下のアトマイズ原料粉末を作製した。このアトマイズ原料粉末をさらにアトライターにて粉砕・偏平化し、次いでこれを熱処理炉に入れ、Ａｒガス雰囲気中、温度：４００℃で２時間保持の条件で透磁率を増大させるための熱処理を行なった。これら熱処理した粉末を風力分級機により分級し、表１に示されるＤ50、ｄおよびアスペクト比（Ｄ50／ｄ）を有する偏平形状金属磁性粉末を作製した。
【００１６】
これら偏平形状金属磁性粉末：５０体積％と塩素化ポリエチレン樹脂：５０体積％を混合し混練したのち、カレンダーロール成形し、偏平形状金属磁性粉末がシート面に平行に配列した厚み：２ｍｍを有する本発明電磁波ノイズ吸収シート１〜６、ＮｉまたはＣｒの含有量がこの発明の範囲から高い方に外れた比較電磁波ノイズ吸収シート１，２、および合金成分としてＮｉを含有しない従来電磁波ノイズ吸収シートを作製した。
【００１７】
これら本発明電磁波ノイズ吸収シート１〜６、比較電磁波ノイズ吸収シート１，２、および従来電磁波ノイズ吸収シートについて、これより切り出して試料を作製し、この試料を同軸ホルダーにセットし、ネットワークアナライザーを用いて、３００ＭＨｚ〜３ＧＨｚの範囲内の周波数で、虚数部と実数部からなる複素透磁率、および電磁波減衰量をそれぞれ求め、複素透磁率の周波数依存性および電磁波減衰量の周波数依存性を調べた。
【００１８】
この結果得られた本発明電磁波ノイズ吸収シート１〜６、比較電磁波ノイズ吸収シート１，２、および従来電磁波ノイズ吸収シートそれぞれの３００ＭＨｚ〜３ＧＨｚの範囲内の所定周波数で求められたすべての複素透磁率および電磁波減衰量について、複素透磁率については、電磁波減衰量と密接な関係がある虚数部の透磁率（表１では複素透磁率虚数部で示す）における最大値と最小値、同様に電磁波減衰量においても最大値と最小値を表１に示し、複素透磁率虚数部および電磁波減衰量の周波数依存性を評価した。
【００１９】
【表１】
表１に示す結果から、本発明電磁波ノイズ吸収シート１〜６は、比較電磁波ノイズ吸収シート１，２、および従来電磁波ノイズ吸収シートに比べて、いずれも複素透磁率虚数部が高く、さらに本発明電磁波ノイズ吸収シート１〜６は３００ＭＮｚ〜３ＧＨｚの準マイクロ波帯において、従来電磁波ノイズ吸収シートよりも大きな電磁波減衰量を示すことが分かる。
【００２１】
【発明の効果】
この発明は、３００ＭＨｚ〜３ＧＨｚの準マイクロ波帯で電磁波ノイズ吸収特性が優れた透磁率の高い電磁波ノイズ吸収シートを提供することができ、電気および電子産業において優れた効果をもたらすものである。
Claims (1)
- 原子％で、
ＡｌおよびＳｉのうちの１種または２種：１９〜２７％、
Ｎｉ：０．３〜１５％、
Ｃｒ：１〜７％、
を含有し、残りがＦｅと不可避不純物からなる成分組成を有すると共に、
平均厚さ（ｄ）：０．９〜１．７μｍ、
粒度分布計によって求められた粒径の小さい方から重量を累計して５０％になったときの粒径をＤ50とすると、Ｄ50：１４〜２１μｍ、
アスペクト比（Ｄ50／ｄ）：１２〜１７、
に調整され、かつ透磁率を増大させるための熱処理が施された偏平形状金属磁性粉末が、
可撓性のある熱可塑性樹脂中に互いに隔絶され、かつシート面に平行に配列してなる、ことを特徴とする準マイクロ波帯で用いるのに適した電磁波ノイズ吸収シート。
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| JP2000171493A Expired - Fee Related JP4344971B2 (ja) | 2000-06-08 | 2000-06-08 | 準マイクロ波帯で用いるのに適した電磁波ノイズ吸収シート |
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| JP6815214B2 (ja) * | 2017-02-03 | 2021-01-20 | 山陽特殊製鋼株式会社 | 高周波で用いる扁平粉末およびこれを含有する磁性シート |
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