JP4344079B2 - 鋼板部材の接合構造 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、薄鋼板で成形される形鋼や鋼板などの建築用鋼板部材のファスナーによる接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチールハウスに用いられる形鋼等の鋼板部材は、板厚0.5〜2.3mm程度の薄鋼板をロールフォーミング成形等の手段により形成されると共に、鋼板部材は、軽量かつ運搬の便宜・工期短縮等の事情から一般的に現場で組み立てられ、ボルト、ドリルねじなどのファスナーを用いて接合される場合が多い。
【0003】
従来の建築用鋼板部材のボルト接合構造例としては、特開平9−221828号公報に開示の技術(第1従来例)がある。このボルト接合構造では、トラスの主材および斜材にパイプ材を用い、その接合部を扁平に加工して板状にすると共に、この接合部に接合する所定形状のプレート状の部材、あるいはアングル材等を重ね合わせ、両外側面に補強座金を当てがい、ボルト・ナットにより共締めしている。なお、この接合構造では接合されるプレート状の部材などは平板状のままで使用されている。
【0004】
また、特開平10−266349号公報に開示の技術(第2従来例)では、ホールドダウン金物の垂直支持部である薄鋼板製の溝形鋼に、他の小サイズの溝形鋼を重ね合わせて嵌め込み、外側溝形鋼のウエブ内側面に小サイズ溝形鋼のウエブ外側面を当てがい、ドリリングタッピングねじにより連結固定する構造が示されている。なお、この接合構造でも両ウエブは平面状のままで使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、鋼板部材のボルト接合された相対する部材間に、その接合面と平行に引離す力が作用したとき、当該接合にはボルト軸線と直角方向のせん断力が作用する。この場合、接合部のせん断耐力は、ボルトと鋼板との支圧面積により決定されるが、接合部の接合耐力を上げるためにボルト径を大きくし過ぎると重量が過大となり、コストも大となる。従って、接合耐力向上のためにボルト径を増大させるには限界がある。
【0006】
一方、鋼板の板厚に応じた小径のボルトで多数箇所を締結して支圧面積を増加し、ボルト接合部のせん断耐力を向上させることもできるが、この方法では接合箇所が増加することから、ボルトの使用量が増えるだけでなく、工数が増えて施工費が嵩み、工期も延びるなどの問題がある。
【0007】
本発明は、薄鋼板からなる鋼板部材の接合部を簡略化にして、かつ接合部せん断耐力を向上した接合部構造とし、以て、ファスナーの使用本数の削減とそれに伴う施工数の低減および、工期短縮を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明は次のように構成する。
【0009】
第1の発明は、接合する部材の少なくとも一方が薄鋼板を用いた溝形鋼や鋼板等の鋼板部材であり、他方が受け側部材である接合構造において、前記鋼板部材と受け側部材の接合部の両方に内側が互いに向かい合うように凹部が形成され、両方の前記凹部の内側に跨って嵌合するように、当該凹部と略同形状の金属板からなるシアープレートが配置されており、前記鋼板部材と受け側部材とシアープレートを貫通してボルト・リベット・ドリルねじ等のファスナーを締結することを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、接合する部材の少なくとも一方が薄鋼板を用いた溝形鋼や鋼板等の鋼板部材であり、他方が受け側部材である接合構造において、前記鋼板部材と受け側部材の接合部の両方に互いに背中合わせになるように凹部が形成され、各凹部に嵌合するように、当該凹部と略同形状の金属板からなるシアープレートが配置されており、前記鋼板部材と受け側部材とシアープレートを貫通してボルト・リベット・ドリルねじ等のファスナーを締結することを特徴とする。
【0013】
【作用】
本発明では、鋼板部材のファスナーによる接合部に凹部を形成し、その凹部にシアープレートを配置させ、シアープレートと鋼板部材を挿通するようにファスナーを配設することで、シアープレートと鋼板部材との支圧面積が接合部に作用する剪断力を負担させ、ファスナーの軸径を増大したと同等の接合部せん断耐力を得るものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図1〜図8を参照して説明する。ここで、図1(a)は実施形態の一適用例を示す図であり、図1(b)は図1(a)のA部拡大図であり、図1(c)は同図(b)のB−B断面図である。
【0015】
図1(a)は、薄鋼板をロールフォーミングして成形されたリップ付き溝形鋼1(以下、溝形鋼という)を用いて、屋根トラス2を構成した例を示し、前記溝形鋼1は、前記屋根トラス2における上弦材3、下弦材4および各ラチス材5に用いられている。
【0016】
図1(b)、(c)において、下弦材4とラチス材5はC形断面に形成され、かつラチス材5は下弦材4に対し垂直になるように配置される。
【0017】
下弦材4のボルト接合部には、ウエブ4aの接合部の接合面(突合せ面)側に向かって突出するプレート嵌合用の凹部6がプレス加工により形成されている。
【0018】
一方、ラチス材5のボルト接合部には、ウエブ5aの接合面(突合せ面)からみて凹部になるように、凹部6aがプレス加工により形成されている。
【0019】
なお、凹部6および凹部6aは同寸法の截頭円錐台形状に形成されており、凹部6と凹部6aとは接合面が重なり合うようになっている。
【0020】
下弦材4とラチス材5は、互いのウエブ4a、5aの接合面同士が背中合わせで当接するように配置され、下弦材4の凹部6には、当該凹部6と略同形状、同寸法で、かつ凹部の深さと略同じ厚みの金属板からなり、後述のファスナー8に作用するせん断力を受けるシアープレート7が嵌合配置されている。
【0021】
そして、ファスナー8(図では、具体例として、ボルト8a、ナット8bが示されている)が下弦材4、ラチス材5およびシアープレート7を貫通して各部材同士が締結され接合されている。
【0022】
図2は接合状態の変更例を示す概念図であり、図2(a)は、図1の下弦材4およびラチス材5と同じ断面形状の溝形鋼1a、1bを同一方向に配置し、そのウェブ1c、1d同士を背中合わせに配置した接合部の断面図で、図2(b)は、図2(a)のC矢視図である。
【0023】
図2に示すように、溝形鋼1a、1bのウェブ1c、1dに形成された凹部6と凹部6aが嵌り合っており、かつ凹部6にシアープレート7が配置され、シアープレート7と凹部6、6aの中心をボルト8aが貫通しており、ボルト8aにナット8bを締結することで、各部材同士が締結され接合されている。
【0024】
図3は、溝形鋼1a、1bのウェブ1c、1dの各接合部に形成する凹部6の形状および、接合に当たって凹部6の組み合わせ方を変更した事例を示す概念図である。
【0025】
図3(a)では、溝形鋼1a、1bの接合部には、背中合わせに接合する両ウェブ1c、1dに形成するプレート嵌合用の凹部6、6の内側が対向するように凹部6がプレス加工により形成されている。このようにして、凹部6が対向するように溝形鋼1a同士が接合されたとき、両方の凹部6、6に跨って、かつこの両凹部6、6に挟まれるように厚みのあるシアープレート7を配置して、シアープレート7と各凹部6、6の中心を貫通するファスナー(ボルト8a、ナット8b)により溝形鋼1a、1b同士を接合している。
【0026】
図3(b)では、溝形鋼1a、1bの接合部には、背中合わせに接合する両ウェブ1c、1dに形成するプレート嵌合用の両凹部6、6が背中合わせになるようにプレス加工により形成されている。このようにして、凹部6が背中合わせとなって溝形鋼1a、1b同士が接合されたとき、両方の凹部6、6にそれぞれ比較的薄い板厚の2枚のシアープレート7を配置してあり、各シアープレート7と各凹部6、6の中心を貫通するファスナー(ボルト8a、ナット8b)により溝形鋼1a、1b同士を接合している。
【0027】
なお、図2では凹部6、6aの周縁が皿状に傾斜しているのに対し、図3では凹部6の形状は縁が直角状に凹む形状に形成されている。何れにあっても、シアープレート7の周縁が凹部6、6aの内壁と接していることにより、溝形鋼1a、1bに接合面と平行に引離す方向に力が作用したとき、その力が凹部6、6aを介してシアープレート7とボルト8aに伝達される。
【0028】
前述のように、シアープレート7は、ボルト8aが挿通していることにより当該ボルト8aと一体になり、かつ、シアープレート7は凹部6に配置されていることにより、溝形鋼1a、1bの接合面と平行に作用する引離し応力に対して、シアープレート7を介してボルト8aにせん断力が作用することになり、結果、ボルト8aよりも鋼板部材との支圧面積が広いシアープレート7の接合部が剪断力を負担し、ボルト径を増大するのと同等の接合部せん断耐力を得ることができる。
【0029】
つまり、接合部せん断耐力はボルト径d(mm)に対するシアープレート径D(mm)の比で増加する。例えば、D/d=60/12=5の場合には耐力増加率が5であり、ボルト本数を1/5に削減することができる。このように、ボルト本数を削減できることは、材料コストの低減だけでなく、その分工期が短縮され、施工費的にも経済的となる。
【0030】
また、凹部6と凹部6aが重なることで接合する部材間の位置決めが容易となり、作業効率も向上する。
【0031】
図4〜図6では、それぞれ薄鋼板製の溝形鋼からなる鋼製枠部材9のボルト接合例を示す。
【0032】
図4、図6(a)は斜交する鋼製枠部材9のウエブ9aの接合面同士を当接させてボルト8a、ナット8bおよびシアープレート7により接合する構成を示したものである。接合部の構造は、図1〜図3に示したいずれの接合構造を用いてもよい。
【0033】
図5、図6(b)は直線状に配置された鋼製枠部材9のウエブ9aの接合面同士を当接させてボルト8a、ナット8bおよびシアープレート7により接合する構成を示したものである。接合部の構造は、図1〜図3に示したいずれの接合構造を用いてもよい。
【0034】
図7、図8では、薄鋼板製の溝形鋼からなる水平枠部材10と垂直枠部材12のL字状金物11を用いた接合例を示す。この例では、成型接着・溶接・はめ込み等の手段で水平枠部材10に固着されたL字状金物11の立ち上り部と垂直枠部材12のウェブの接合部にそれぞれ凹部が形成されており、両部材の接合面同士を当接させてボルト8a、ナット8bおよびシアープレート7により接合したものである。接合部の構造は、図1〜図3に示したいずれの接合構造を用いてもよい(図では、L字状金物11の凹部6のみが示される)。
【0035】
本発明の実施形態では、溝形鋼部材同士の接合構造を主として説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、薄鋼板同士の接合部にボルト・ナット以外のドリルねじ、リベット等を用いる場合にもシアープレートの適用が可能である。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼板部材のファスナーによる接合部に凹部を形成し、その凹部にシアープレートを配置させ、シアープレートと鋼板部材を挿通するようにファスナーを配設したことにより、シアープレートと鋼板部材との支圧面積が接合部に作用する剪断力を負担し、ファスナーの軸径を増大したと同等の接合部せん断耐力を得ることができる。
【0037】
そのため、ファスナーを用いた鋼板接合部の耐力・剛性が向上し、使用するファスナーの本数を削減できるので、作業能率が上がって工期の短縮が可能となる。
【0038】
また、組立鋼板部材の凹部と受け側部材の凹部が重なるようにした場合には、接合する部材間の位置決めが容易となり、更に作業効率が向上する効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施形態の一適用例を示す図であり、(b)は同図(a)のA部拡大図であり、(c)は同図(b)のB−B断面図である。
【図2】(a)は接合状態の変更例を示す概念図であり、(b)は、同図(a)のC矢視図である。
【図3】本発明の実施形態の変更例を示す概念図である。
【図4】斜交する鋼製枠部材の接合構造例を示した分離斜視図である。
【図5】直線状に配置された鋼製枠部材の接合構造例を示した分離斜視図である。
【図6】(a)、(b)それぞれ図4、図5の各部材の結合時の斜視図である。
【図7】L字状の板材を用いた水平枠部材と垂直枠部材の接合例を示した分離斜視図である。
【図8】図7の各部材の結合時の斜視図である。
【符号の説明】
1 溝形鋼
1a 溝形鋼
1b 溝形鋼
2 屋根トラス
3 上弦材
4 下弦材
4a 下弦材ウェブ部
5 ラチス材
5a ラチス材ウェブ部
6 凹部
6a 凹部
7 シアープレート
8 ファスナー
8a ボルト
8b ナット
9 鋼製枠部材
9a 鋼製枠部材のウエブ
10 水平枠部材
11 L字状金物
12 垂直枠部材
Claims (2)
- 接合する部材の少なくとも一方が薄鋼板を用いた形鋼や鋼板等の鋼板部材であり、他方が受け側部材である接合構造において、前記鋼板部材と受け側部材の接合部の両方に内側が互いに向かい合うように凹部が形成され、両方の前記凹部の内側に跨って嵌合するように、当該凹部と略同形状の金属板からなるシアープレートが配置されており、前記鋼板部材と受け側部材とシアープレートを貫通してボルト・リベット・ドリルねじ等のファスナーを締結することを特徴とする鋼板部材の接合構造。
- 接合する部材の少なくとも一方が薄鋼板を用いた形鋼や鋼板等の鋼板部材であり、他方が受け側部材である接合構造において、前記鋼板部材と受け側部材の接合部の両方に互いに背中合わせになるように凹部が形成され、各凹部に嵌合するように、当該凹部と略同形状の金属板からなるシアープレートが配置されており、前記鋼板部材と受け側部材とシアープレートを貫通してボルト・リベット・ドリルねじ等のファスナーを締結することを特徴とする鋼板部材の接合構造。
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