JP4343397B2 - トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法などにおいて用いられるトナーに関し、形成された顕画像を記録材に加熱定着させる定着方式に供されるトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報及び特公昭43−24748号公報等に記載されているごとく多数の方法が知られているが、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、ついで該潜像をトナーで現像を行って可視像とし、必要に応じて紙などの転写材にトナー画像を転写した後、熱・圧力などにより転写材上にトナー画像を定着して複写物を得るものである。また、転写材上に転写されずに感光体上に残ったトナー粒子はクリーニング工程により感光体上より除去され、上述の工程が繰り返される。
【0003】
近年、電子写真法を用いた機器は、従来の複写機以外にも、コンピューターの出力用のプリンター、ファクシミリなどにも使われ始めた。例えば、プリンター装置はLBPプリンターまたはLEDプリンターが最近の市場の主流になっており、技術の方向として、従来240、300dpiであったものが400、600、800、さらには1200、2400dpiとより高解像度になってきている。従って、現像方式もこれに伴ってより高精細が要求されてきている。コンピューターの高性能化に伴い、出力される画像はますます高精細で高画質なものが要求されており、また、パーソナルコンピューターの普及により、より簡単にメンテナンスを行うことができると同時に、より高い信頼性が厳しく追及されてきており、それにともないプリンターに要求される性能はより高度になり、トナーの性能向上が達成できなければより優れた機械が成り立たなくなってきている。
【0004】
例えば、デジタルプリンター及び高細密画像のコピーにおいてトナーに要求される性能のうち最も重要なものに、定着性能がある。定着工程に関しては、種々の方法や装置が開発されているが、現在最も一般的な方法は熱ローラーによる圧着加熱方式である。この加熱ローラーによる圧着加熱方式は、トナーに対し離型性を有する材料で表面を形成した熱ローラーの表面に被定着シートのトナー像面を加圧下で接触しながら通過せしめることにより定着を行うものである。この方法は熱ローラーの表面と被定着シートのトナー像とが加圧下で接触するため、トナー像を被定着シート上に融着する際の熱効率が極めて良好であり、迅速に定着を行うことができ、高速度電子写真複写機において非常に有効である。
【0005】
従来、定着ローラー表面にトナーを付着させない目的で、例えばローラー表面をトナーに対して離型性の優れた材料、シリコーンゴムやフッ素系樹脂などで形成し、さらにその表面にオフセット防止剤及びローラー表面の疲労を防止するためにシリコーンオイルの如き離型性の良い液体の薄膜でローラー表面を被覆することが行われている。しかしながら、この方法はトナーのオフセットを防止する点では有効であるが、オフセット防止用液体を供給するための装置が必要なため、定着装置が複雑になる等の問題点を有している。
【0006】
そこでシリコーンオイル供給装置などを用いないで、替わりにトナー中から加熱時にオフセット防止用液体を供給しようという考えから、トナー中に低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の離型剤を添加する方法が提案されている。充分な効果を出すために多量にこのような添加剤を加えると、感光体へのフィルミングやキャリアやスリーブなどのトナー担持体表面を汚染し、画像が劣化し実用上問題となる。そこで画像を劣化させない程度に少量の離型剤をトナー中に添加し、若干の離型性オイルの供給もしくはオフセットしたトナーを、巻き取り式の例えばウェッブの如き部材を用いた装置でクリーニングする装置を併用することが行われている。
【0007】
しかし最近の小型化、軽量化、高信頼性の要求を考慮するとこれらの補助的な装置すら除去することが好ましい。
【0008】
トナー中に離型剤としてワックスを含有させることは知られている。例えば、特開昭52−3304号公報、特開昭52−3305号公報、特開昭57−52574号公報等の技術が開示されている。
【0009】
これらのワックス類は、トナーの低温時や高温時の耐オフセット性の向上のために用いられている。しかしながら、これらの性能を向上させる反面、耐ブロッキング性を悪化させたり、現像性が悪化したりしていた。
【0010】
また、低温領域から高温領域にかけて、よりワックス添加の効果を発揮させるために2種類以上のワックスを含有するトナーとして、例えば特公昭52−3305号公報、特開昭58−215659号公報、特開昭62−100775号公報、特開平4−124676号公報、特開平4−299357号公報、特開平4−362953号公報、特開平5−197192号公報等の技術が開示されている。
【0011】
しかし、これらのトナーにおいても、すべての性能を満足しうるものはなく、何らかの問題点を生じていた。例えば、耐高温オフセット性や現像性は優れているが低温定着性が今一歩であったり、耐低温オフセット性や低温定着性には優れているが、耐ブロッキング性にやや劣り、現像性が低下するなどの弊害があったり、低温時と高温時の耐オフセット性が両立できなかったり、遊離ワックス成分によるトナーコート不均一の為にブロッチが発生し、画像欠陥を生じたり、画像上にカブリが生じたりしていた。
【0012】
これらのトナーに含有されているワックス類は、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークに関して、単に幅広い又は偏った温度範囲にワックス成分が存在していたため、前記の性能を満足させるには足りないものであったり、あるいは劣化させる成分や効果の少ない成分を多く含んでいた。
【0013】
また、低温定着性と耐高温オフセット性の幅広い領域を得ることを目的として、特開平5−346684号公報、特開平7−175257号公報には、最大吸熱ピークの半値幅が10℃以上であるワックスを用いることが提案されている。
【0014】
しかし、これらにはトナーの他の構成成分との相互作用によるワックス成分の分散に対する効果や結晶状態の変化による効果が述べられておらず、また、複写機、プリンター等の装置中へのトナー汚染・付着について何ら解決手段が示されていない。
【0015】
また、特開平8−278657号公報、特開平8−334919号公報、特開平8−334920号公報などには、低温定着性及び耐オフセット性に優れるトナーを得るために、2種類のワックス成分をトナーに含むことが提案されている。また、特開平7−281478号公報には、定着下限温度を下げ、ホットオフセット温度を高くするために、ポリプロピレン系樹脂と、酸変性したポリエチレン系樹脂をトナー用の離型剤として使用することが提案されている。また、特開平8−166686号公報には、特定のモノマー構成よりなるポリエステル樹脂と酸価をもつ2種の異なる軟化点のオフセット防止剤を含むトナーが提案されている。
【0016】
しかしながら、これらの離型剤を使ったトナーでは確かに低温定着性と耐高温オフセット性の幅は拡大するものの、各々のワックス成分をトナー中に均一に分散させることが困難であり、分散不良に伴うカブリの増大や現像性の悪化を起こす場合があった。
【0017】
また、複写機、プリンター等の装置中の定着器ローラー(加熱ローラー、加圧ローラー等)や紙送りローラー・コロ部材等へのトナー汚染・付着については、何ら解決手段が示されていない。
【0018】
特に、低温環境下での間欠的な複写・プリントアウトにおいては、定着器の加圧ローラーの冷却によって、トナー・紙粉が堆積しやすく、定着器が加熱された時に堆積していたトナー塊がいっきに吐き出されることによって、紙などの転写体上を汚してしまう弊害があった。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、定着性及び非オフセット性のバランスに優れたトナーであり、かつ、いかなる環境下においてもカブリの少ない高品質の画像を長期間に渡って提供することを可能とし、複写機、プリンター等の装置中の各部材へのトナー付着・融着等が発生したり、また、融着したトナー塊が転写材上に吐き出されたりすることのない高度に耐久可能なトナーを提案することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂及びワックスを含有するトナーにおいて、
示差走査型熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて、吸熱ピークの最低オンセット温度が60℃以上であって、80〜150℃の温度領域において最大吸熱ピークの1/10ピーク強度以上になる温度部分の合計が50〜70degであり、
該ワックスの含有量が該結着樹脂100質量部に対し、1乃至15質量部であり、該ワックスは、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステルまたはマレイン酸無水物の少なくとも1種以上から選択される酸モノマーにより変性された酸価が1〜70mgKOH/gであるワックスを含有し、
該結着樹脂は、その酸価が0.5乃至50mgKOH/gであることを特徴とするトナーである。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーは、DSCによって測定される吸熱ピークの最低オンセット温度60℃以上であり、80〜150℃の温度領域において最大吸熱ピークの1/10ピーク強度以上になる温度部分の合計が50〜70degであり、該ワックスが該重合体成分100質量部に対し、0.5質量部以上20質量部以下であることを特徴とする。これらの特徴ある吸熱ピークを持っていることにより、安定した電子写真特性とトナーの低温溶融化に貢献できると共に、高温域での高度な耐オフセット性を達成でき、また、どのような環境下においても、定着器の加熱ローラー・加圧ローラーからの離型性を著しく向上させ、更に、トナーの複写機・プリンター部材への付着・融着を高度に防止することが可能となった。
【0022】
すなわち、最低オンセット温度が60℃以上であることにより、使用環境に左右されずにトナーの耐ブロッキング性を確保することができ、また、広範囲な温度領域に吸熱を幅広く持つことで、耐オフセット性と低温定着性を同時に満足し、かつ、広範囲な温度領域で離型性を有することができるために、高温高湿の環境下での連続両面プリント時の如く、機内温度が高温になる状態においても、また、低温低湿環境下でのコールドスタート時のような機内部材が冷却されているような状態でも、定着器ローラーや紙送りローラー等の複写機・プリンター等の装置の各部材へのトナー付着・融着を高度に防止することが可能となった。
【0023】
本発明において測定されるトナーの吸熱ピークに関して説明する。
【0024】
本発明では、トナーのDSCによって測定される吸熱ピークの最低オンセット温度60℃以上であり、80〜150℃の温度領域において最大吸熱ピークの1/10ピーク強度以上になる温度部分の合計が50〜70degであることを特徴とする。
【0025】
さらには、トナーのDSCによって測定される吸熱ピークが、80〜150℃の温度領域において最大吸熱ピークの1/2ピーク強度以上になる温度部分の合計が30〜70degであることを特徴とする。
【0026】
上記のようなトナーの吸熱ピークの特徴により、発現される作用について以下のように考えている。
【0027】
すなわち、複写機やプリンター等のマシンが冷却された状態(例えば、低温環境下で放置した後でのコールドスタート時)では、マシン中の定着器の加圧ローラーや紙送りコロ部材等も低い温度である。また、反対に高温環境下での連続プリントアウト時等の機内が昇温している状態では、各部材も高温になっており、特にマシンが高速化された時や両面印字させた時には激しい。
【0028】
このように広い温度範囲で使用されることとなり、この時に高度にトナー汚れが発生しない状態を保つためには、広い温度範囲で離型性を高度に持つトナー性能が必要である。すなわち、トナーが定着時に溶融状態として存在している可能性がある最低温度である80℃から、定着時に与えられる熱によって昇温する温度である150℃までの範囲内での吸熱特性が重要である。幅広い温度領域に離型剤であるワックス由来の吸熱をある一定以上の状態で持つことによって達成できる。
【0029】
また、この状態は、全体に広く吸熱が存在していることが重要であり、吸熱ピークの1/10以上の吸熱量である時に、トナー全体の離型性を左右できる能力を持つことができ、さらには、1/2以上の吸熱量であれば十分に離型性を発揮できることが可能となるのである。
【0030】
80〜150℃の温度領域におけるトナーの吸熱ピークは、用いられるワックスの種類とトナー中の分散状態により決まる。すなわち、ワックスの種類・組成により、メインピークの温度がきまり、また、トナー中での分散による結晶状態の大きさや樹脂成分などの他のトナー組成成分との相互作用で、図1及び図2に示すようにDSCの吸熱ピークの拡がり具合に特徴を出すこととなるのである。
【0031】
この吸熱ピークは、図1の如く1つのピークにより達成されても良いし、図2の如く複数のピークによるもので達成されても構わない。
【0032】
このような吸熱ピークを達成するための手段としては、広い温度範囲に吸熱を持つようなワックスを用いても良い。この時、ワックスはトナー中に広く、均一に分散していることが必要である。但し、相溶するような状態となることは離型性の観点から好ましくなく、ある程度のドメイン径を持って均一に分散していることが好ましい。
【0033】
分散性の制御という意味で、ワックスを樹脂と相互作用を持つような物質で変性する(例えば、ビニル系化合物、カルボン酸系化合物、水酸基含有化合物等)ことが好ましく用いられる。
【0034】
また、複数のワックスを併用することによって達成しても良いが、その場合には相互の分散性を考慮しなければならない。好ましい組み合わせの例としては、ポリプロピレン、その変性ワックス類(酸変性、アルコール変性、スチレン変性など)、ポリエチレン、その変性ワックス類(酸変性、アルコール変性、スチレン変性など)、エチレン−プロピレン共重合体、その変性ワックス類(酸変性、アルコール変性、スチレン変性など)、パラフィンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、から選ばれる組み合わせが、好ましく用いられる。
【0035】
トナーのDSCによって測定される吸熱ピークの最低オンセット温度は60℃以上である必要がある。60℃未満の場合には、耐ブロッキング性に影響が大きく、保存性という点で好ましくない。
【0036】
トナーの吸熱ピーク温度の測定は、示差熱分析測定装置(DSC測定装置):DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い、下記の条件にて測定した。
試料:5〜20mg、好ましくは10mg
測定法:試料をアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。
温度曲線:昇温I(20℃→180℃、昇温速度10℃/min.)
降温I(180℃→10℃、降温速度10℃/min.)
昇温II(10℃→180℃、昇温速度10℃/min.)
昇温IIで測定される吸熱ピークを用いる。
【0037】
次に、本発明に好適に用いられるワックス成分について説明する。
【0038】
本発明に用いられるワックスは、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒等で重合した低分子量のアルキレンポリマー・高分子量のアルキレンポリマーを熱減成して得られるアルキレンポリマー、一酸化炭素・水素からなる合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留成分から、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素などのワックスが用いられ酸化防止剤が添加されていても良い。さらに、プレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが好ましく用いられる。母体としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは2種以上の多元系)を使用した、一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの、例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)、あるいはワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(固定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素や、エチレンなどのアルキレンをチーグラー触媒・メタロセン触媒により重合した炭化水素が分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であるので好ましい。
【0039】
また、本発明に用いられるワックスは、酸価が1〜70mgKOH/gの範囲であることが好ましい。酸価が1mgKOH/g未満ならば、酸基による効果が得られず、樹脂中への分散が不十分となり、カブリが生じやすくなる。また、酸価が70mgKOH/gを超えるならば、環境湿度の影響を受けやすく、安定した帯電性能を得ることが難しくなり、好ましくない。更には、樹脂中への分散径がより細かくなるために、好ましい離型性・耐オフセット性が得られ難くなる。
【0040】
本発明におけるワックスの酸価は以下の測定方法により測定された。
【0041】
<ワックスの分取>
トナーサンプル0.5〜1.0gを秤量し、円筒濾紙(例えば東洋濾紙製No.86R)に入れて、溶媒としてトルエン200mlを用いて20時間ソックスレー抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥する。得られた抽出物にクロロホルム20mlを加え、1時間静置した後、ポアサイズ0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、乾燥させてワックス成分を得る。
【0042】
<酸価の測定>
・装置及び器具
直示天秤
三角フラスコ(200ml)
メスシリンダー(100ml)
ミクロビュレット(10ml)
電熱器
・試薬
キシレン
ジオキサン
1mol/l水酸化カリウム標準メタノール溶液
1%フェノールフタレイン溶液(指示薬)
・測定法
三角フラスコにワックス1〜1.5gを精秤し、これにキシレン20mlを加えた後、加熱・溶解する。溶解後ジオキサン20mlを加え、液が濁り又はかすみを生じない間に1mol/l水酸化カリウム標準メタノール溶液で1%フェノールフタレイン溶液を指示薬としてできるだけ早く滴定する。同時に空試験を行う。
・計算式
酸価=[5.61×(A−B)×f]/S
但し、A:本試験に要した1mol/l水酸化カリウム標準メタノール溶液のml数
B:空試験に要した1mol/l水酸化カリウム標準メタノール溶液のml数
f:1mol/l水酸化カリウム標準メタノール溶液のファクター
S:試料(g)
【0043】
酸価を持つワックスを得る方法としては、ワックス成分に酸成分を付加する方法、グラフト反応させる方法が好ましく用いられる。変性に使用する酸モノマーとしては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩基のうち少なくとも1種以上を含有するものが最も好ましい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体または無水マレイン酸等があり、このようなモノマーを単独、或いは混合して、変性反応させることにより所望の酸価を有するワックスを得る。
【0044】
付加もしくはグラフト反応させるカルボン酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、及びそれらの混合物などがあげられ、酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水ナジック酸及びそれらの混合物などがあげられる。
【0045】
付加またはグラフト反応に用いられる過酸化物触媒としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、及び、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンがあげられる。
【0046】
更に好ましくは、後述する樹脂重合体成分中に好ましく含まれるところの構成モノマーとの関係から、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステルまたはマレイン酸無水物の少なくとも1種以上から選択される酸モノマーにより変性されたものであることである。
【0047】
また、本発明に好ましく用いられるワックスとしては、160℃における溶融粘度が50乃至2000mPa・sの範囲であることが良い。
【0048】
160℃における溶融粘度が50mPa・s未満では、粘度が低すぎるためにトナー中の分散を悪化させ、また、耐オフセット性や離型性にも悪影響を与え好ましくない。2000mPa・sを超える場合には、定着性に悪影響を与えるため好ましくない。
【0049】
本発明における粘度の測定は、以下の方法により行った。
【0050】
測定装置はブルックフィールド型回転粘度計を用いて、試料を入れたビーカーを160℃に保持した恒温槽に浸積し、粘度の測定を行った。
【0051】
本発明においては、該ワックス成分は、結着樹脂100質量部に対し、0.5乃至20質量部で用いられる。好ましくは1乃至15質量部、更に好ましくは2乃至10質量部である。
【0052】
0.5質量部未満ではワックスを添加した効果が得られ難く、また、20質量部を超えると遊離ワックス成分が増えることにより、カブリが増加し、さらに帯電のコントロールが難しくなるために適当な画像濃度を得ることが困難となる。
【0053】
本発明に使用される結着樹脂の種類としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレンスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が使用できる。また、架橋されたスチレン系樹脂も好ましい結着樹脂である。
【0054】
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のような二重結合を有するモノカルボン酸もしくはその置換体;例えば、マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチル等のような二重結合を有するジカルボン酸及びその置換体;例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のようなビニルエステル類、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のようなエチレン系オレフィン類;例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のようなビニルケトン類;例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のようなビニルエーテル類;等のビニル単量体が単独もしくは組み合わせて用いられる。
【0055】
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合物として使用できる。
【0056】
本発明に使用される重合体成分は、実質的にTHF不溶分を含まず、THF可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラム)において、少なくとも分子量3×103〜3×104の領域にメインピークを有し、且つ分子量1×105〜3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することが好ましい。
【0057】
「THF不溶分を実質的に含まない」とは、具体的には、樹脂組成物基準で5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。
【0058】
本発明での「THF不溶分」とは、トナー中の樹脂組成物中のTHF溶媒に対して不溶性となったポリマー成分(実質的に架橋ポリマー)の質量割合を示し、架橋成分を含む樹脂組成物の架橋の程度を示すパラメーターとして使うことができる。THF不溶分は、以下のように測定された値を持って定義する。
【0059】
トナーサンプル0.5〜1.0gを秤量し(W1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて6時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2g)。トナー中の磁性体あるいは顔料の如き樹脂成分以外の組成物の質量を(W3g)とする。THF不溶分は、下記式から求められる。
【0060】
THF不溶分(%)=〔((W1−(W2+W3))/(W1−W3)〕×100
【0061】
THF不溶分を5質量%を超えて含有すると、定着性を悪化させるだけでなく、本発明で用いられるワックス成分のトナー中への分散が不良となり、カブリ抑制を悪化させ、さらには各種トナー接触部材を傷つけたり、トナー固着・融着を引き起こしやすくなる等の弊害を発生する恐れがある。
【0062】
本発明のトナー組成物中の重合体成分のTHF可溶分により測定されるGPCのクロマトグラムが、少なくとも分子量3×103〜3×104の領域にメインピークを有し、且つ分子量1×105〜3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することが好ましい。
【0063】
該重合体成分のGPCのメインピークが分子量3×103未満ならば、樹脂の溶融粘度が低すぎて本発明のワックス成分を有効に分散することができず好ましい離型性を得ることが困難となり、また、分子量3×104超である時には、定着性に悪影響を与えるばかりか、トナー製造時の混練における負荷が増し、生産性が下がると同時に、トナー原料各成分の分散も不均一となって安定した帯電性能が得られ難くなる。
【0064】
また、分子量1×105〜3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することにより、適度な耐高温オフセット性の調整が可能となり、さらにはトナー全体の溶融粘度・粘弾性の調整も可能となることによって、他の原材料のトナー中の分散を適度に調整することが可能となるのである。
【0065】
本発明において、トナー組成物の分子量分布(GPC)は、次の条件によって測定される。
装置:GPC−150C(ウォーターズ社製)
カラム:KF801〜7(ショウデックス社製)の7連
温度:40℃
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
流速:1.0ml/min.
試料:濃度0.05〜0.6質量%の試料を0.1ml注入
【0066】
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料(東ソー製A−500,A−1000,A−2500,A−5000,F−1,F−2,F−4,F−10,F−20,F−40,F−80,F−128,F−288,F−450,F−850など、10点以上を併用する)により作成した分子量校正曲線を使用する。
【0067】
本発明に使用される結着樹脂は、0.5乃至50mgKOH/gの酸価を有することが好ましい。これは、本発明に用いられるワックス成分を有効に分散させ、帯電性能を安定化させ、トナーの離型性を向上させ、付着・融着することを防止することができるためである。
【0068】
0.5mgKOH/g未満の酸価では、この効果を得にくくなり、50mgKOH/gを超えると、環境湿度による影響を受けやすくなり好ましくない。
【0069】
上記の酸価を得るために用いられる結着樹脂としては、カルボキシル基、カルボン酸無水基、カルボン酸塩基のうち少なくとも1種以上を含有する重合体が最も好ましい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体または無水マレイン酸等があり、このようなモノマーを単独、或いは混合して、他のモノマーと共重合させることにより所望の重合体を得る。
【0070】
この中でも特に好ましいモノマー成分として、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステルまたはマレイン酸無水物が挙げられる。これは、マレイン酸がカルボキシル基が隣接して存在するために、より効率よく酸基の効果を導き出し、紙などの転写材との親和性を増したり、酸変性されたワックスとの相溶性に優れるものであるからである。
【0071】
結着樹脂の酸価の測定は次の通りである。
【0072】
酸価の測定
1)試料の粉砕品0.1〜0.2gを精秤し、その重さをW(g)とする。
2)20cc三角フラスコに試料を入れ、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液10ccを加え溶解する。
3)指示薬としてフェノールフタレインのアルコール溶液数滴を加える。
4)1mol/lのKOHのアルコール溶液を用いてフラスコ内の溶液をビュレットを用いて滴定する。この時のKOH溶液の量をS(ml)とする。同時にブランクテストをし、この時のKOH溶液の量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。
【0073】
酸価=(S−B)×f×5.61/W(f:KOHのファクター)
【0074】
本発明のトナーは、荷電制御剤として、有機金属化合物を用いることが好ましく、特に気化性や昇華性に富む有機化合物を配位子や対イオンとして含有するものが有用である。このような金属錯体としては、帯電性の観点から、金属錯体型モノアゾ化合物が好ましく用いられる。金属錯体型モノアゾ化合物としては、特公昭41−20153号、同42−27596号、同44−6397号、同45−26478号などに記載されているモノアゾ染料の金属錯体などがある。特に分散性・帯電性の面などから、下記一般式(I)で表わされる金属錯体型モノアゾ化合物であることが好ましく、中でも、中心金属が鉄である金属錯体型モノアゾ鉄化合物を用いることが好ましい。さらに好ましくは、下記一般式(II)で表わされるモノアゾ鉄錯体を用いることである。
【0075】
【化1】
【0076】
【化2】
【0077】
上記金属錯体型モノアゾ化合物の含有量は、トナー結着樹脂100質量部に対し、0.5〜5質量部が好ましく、特に0.2〜3質量部が好ましい。該金属錯体型モノアゾ化合物の含有量が多過ぎると、トナーの流動性が悪化し、カブリが生じやすく、一方、少な過ぎると充分な帯電量が得られにくい。
【0078】
本発明のトナーは、磁性材料を含有した磁性トナーとして用いられることが好ましい。使用できる磁性材料としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素などの元素を含む金属酸化物などがある。これら磁性粒子は、窒素吸着法によるBET比表面積が好ましくは1〜20m2/g、特に2.5〜12m2/g、更にモース硬度が5〜7の磁性粉が好ましい。磁性体の形状としては、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが好ましい。等方性の形状を有するものは、本発明の如き、結着樹脂・ワックスに対しても、良好な分散を達成することができるからである。磁性体の平均粒径としては0.05〜1.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.6μm、さらには、0.1〜0.4μmが好ましい。
【0079】
上記磁性材料は、トナー結着樹脂100質量部に対し60〜200質量部添加するのが好ましく、特に好ましくは70〜150質量部である。60質量部未満では、トナーの搬送性が不十分でトナー担持体上のトナー層にムラが生じ、画像ムラとなる傾向であり、さらにトナーの帯電の過剰な上昇に起因する画像濃度の低下が生じ易い傾向であった。また、200質量部を超える場合には、トナーの帯電が充分には得られなくなるために、画像濃度低下が生じやすくなる。
【0080】
また、本発明のトナーには、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上のため、無機微粉体または疎水性無機微粉体が混合されていることが好ましい。例えば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
【0081】
シリカ微粉体は、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O,SO3 2-等の製造残渣の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等、他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
【0082】
さらにシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルのごとき有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0083】
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、例えばヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び、1分子当たり2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個までのケイ素原子に結合した水酸基を含有したジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0084】
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30〜1000mm2/sのものが用いられ、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
【0085】
シリコーンオイル処理の方法としては、例えばシラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、べースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法でもよい。
【0086】
本発明のトナーには、必要に応じてシリカ微粉体又は酸化チタン微粉体以外の外部添加剤を添加してもよい。
【0087】
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子などである。
【0088】
例えばテフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンのごとき滑剤、中でもポリフッ化ビニリデンが好ましい。あるいは酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。あるいは例えば酸化チタン、酸化アルミニウム等の流動性付与剤、中でも特に疎水性のものが好ましい。ケーキング防止剤、あるいは例えばカーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ等の導電性付与剤、また、逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0089】
トナーと混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体などは、トナー100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは0.1〜3質量部)使用するのがよい。
【0090】
本発明のトナーは、トナー構成材料をボールミルのごとき混合機により充分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのごとき熱混練機を用いて溶融、捏和及び練肉し、冷却固化後粉砕及び厳密な分級を行うことにより生成することができる。
【0091】
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーター(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日新エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社),バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0092】
【実施例】
以下、具体的実施例によって本発明を説明するが、本発明はなんらこれに限定されるものではない。
【0093】
[実施例1]
4ツ口フラスコ内にキシレン300質量部を投入し、撹拌しながら容器内を充分に窒素で置換した後、昇温して還流させる。
【0094】
この還流下で、スチレン68質量部、アクリル酸−n−ブチル23質量部、マレイン酸モノブチル9質量部、及び、ジ−tert−ブチルパーオキサイド1.5質量部の混合液を4時間かけて滴下後、2時間保持し重合を完了し、低分子量重合体(L−1)溶液を得た。この重合体溶液の一部をサンプリングし、減圧下で乾燥させ、得られた低分子量重合体(L−1)の分析を行なったところ、Mw=14000、PMw=15000、Mw/Mn=2.7、Tg=61℃であった。
【0095】
4ツ口フラスコに脱気水180質量部とポリビニルアルコールの2質量%水溶液20質量部を投入した後、スチレン70質量部、アクリル酸−n−ブチル25質量部、マレイン酸モノブチル5質量部、ジビニルベンゼン0.003質量部、及び、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(半減期10時間温度92℃)0.1質量部の溶液の混合液を加え、撹拌し懸濁液とした。
【0096】
フラスコ内を充分に窒素で置換した後、85℃まで昇温して重合を開始した。同温度に24時間保持した後、ベンゾイルパーオキサイド(半減期10時間温度92℃)0.1質量部を添加した。さらに、12時間保持して重合を完了した。これを濾別し、水洗・乾燥し、高分子量重合体(H−1)を得た。これを分析したところ、Mw=90万、PMw=83万、Mw/Mn=2.3、Tg=61℃であった。
【0097】
低分子量重合体(L−1)70質量部と高分子量重合体(H−1)30質量部を、還流キシレン100質量部に溶解させた後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷却固化した後、粉砕しトナー用樹脂原材料(R−1)とした。(R−1)の分析値を表1に示した。
【0098】
一方、高分子量のポリプロピレンを熱減成することにより得られた低分子量ポリプロピレン40質量部と、高分子量のポリエチレンを熱減成することにより得られた低分子量ポリエチレン60質量部をキシレン溶媒中で加熱溶融状態で混合した。この混合物400gに対し、無水マレイン酸3.2gを加え、さらに2質量%のジ−t−ブチルパーオキサイドのキシレン溶液を100g加えることにより変性して得られたワックス(W1)(酸価3.5mgKOH/g、160℃における溶融粘度110mPa・s)を用意した。
【0099】
上記トナー用樹脂原材料100質量部、上記ワックス(W1)7質量部、球形磁性酸化鉄100質量部、下記式に示される金属モノアゾ型化合物2質量部を予め均一に混合し、これを100℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練した。この混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、更にジェットミルで微粉砕した後、得られた粉砕物を風力分級し、重量平均径D4が6.9μmの分級粉を得た。
【0100】
【化3】
【0101】
この分級粉100質量部に対し、疎水化処理シリカ微粉体1.2質量部を乾式混合外添し、トナー(T1)を得た。
【0102】
このトナー(T1)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0103】
[実施例2]
ワックス(W1)の代わりに、高分子量ポリプロピレンを熱減成することによって得られた低分子量ポリプロピレンを無水マレイン酸で変性したワックス(W2P)(酸価4.0mgKOH/g、溶融粘度(160℃)120mPa・s、軟化点139℃)3質量部と、高分子量ポリエチレンを熱減成することによって得られた低分子量ポリエチレンを無水マレイン酸で変性したワックス(W2E)(酸価3.5mgKOH/g、溶融粘度(160℃)220mPa・s、軟化点115℃)4質量部にした以外は実施例1と同様にして、トナー(T2)を得た。
【0104】
このトナー(T2)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0106】
このトナー(T3)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0107】
[実施例4]
低分子量重合体として、スチレン72質量部、アクリル酸−n−ブチル19質量部、アクリル酸9質量部をモノマーとし、開始剤として、ジ−tert−ブチルパーオキサイド2質量部用いて重合して得られたスチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体(L−2)(Mw=9800、PMw=10500、Mw/Mn=2.9、Tg=61℃)を75質量部、高分子量重合体(H−1)を30質量部として溶融ブレンドして得られたトナー用樹脂原材料(R−2)(分析値は表1参照)を用い、また、ワックス(W1)添加量を11質量部とした以外は実施例1と同様にして、トナー(T4)を得た。
【0108】
このトナー(T4)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0109】
[参考例5]
ワックス成分を0.6質量部にした以外は、実施例4と同様にして、トナー(T5)を得た。
【0110】
このトナー(T5)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0111】
[参考例6]
スチレン87質量部、アクリル酸−n−ブチル13質量部、及び、ジ−tert−ブチルパーオキサイド2質量部より得られた低分子量重合体(L−3)(Mw=9700、PMw=9900,Mw/Mn=2.6,Tg=63℃)を75質量部と、スチレン70質量部、アクリル酸−n−ブチル30質量部、ジビニルベンゼン0.003質量部、及び、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(半減期10時間温度97℃)0.1質量部より得られた高分子量重合体(H−2)を25質量部を溶液ブレンドすることにより得られたトナー用樹脂原材料(R−3)(分析値は表1参照)を用いた以外は実施例1と同様にして、トナー(T6)を得た。
【0112】
このトナー(T6)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0113】
[参考例7]
ワックス(W1)の代わりに、ワックス(W2P)10質量部と高密度ポリエチレンを無水マレイン酸で変性したワックス90質量部を溶融状態でブレンドすることにより得られたワックス(W4)(酸価3.5mgKOH/g、溶融粘度(160℃)2300mPa・s、軟化点130℃)を5質量部にした以外は実施例1と同様にして、トナー(T7)を得た。
【0114】
このトナー(T7)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0115】
[参考例8]
ワックス(W1)の代わりに、高分子量ポリプロピレンを熱減成することにより得られた低分子量ポリプロピレン30質量部と高分子量ポリエチレンを熱減成することにより得られた低分子量ポリエチレン70質量部をキシレン溶媒中で加熱溶融状態で混合し、これを無水マレイン酸により変性したワックス(W5)(酸価55mgKOH/g、溶融粘度(160℃)300mPa・s、軟化点105℃)をワックス成分として7質量部にした以外は実施例1と同様にして、トナー(T8)を得た。
【0116】
このトナー(T8)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0117】
[参考例9]
ワックス(W1)の代わりに、高分子量ポリプロピレンを熱減成することにより得られた低分子量ポリプロピレン30質量部と高分子量ポリエチレンを熱減成することにより得られた低分子量ポリエチレン70質量部をキシレン溶媒中で加熱溶融状態で混合して得られたワックス(W6)(酸価0mgKOH/g、溶融粘度(160℃)350mPa・s、軟化点126℃)をワックス成分として7質量部にした以外は実施例1と同様にして、トナー(T9)を得た。
【0118】
このトナー(T9)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0119】
[比較例1]
トナー用樹脂組成物として、20%のTHF不溶分を含むスチレン−アクリル酸ブチル−ジビニルベンゼン共重合体(R−4;ピーク分子量30000、酸価0mgKOH/g)を用い、ワックス成分として、酸価を有しないポリプロピレン系ワックス(酸価0mgKOH/g、溶融粘度(160℃)200mPa・s、軟化点150℃)のみを4質量部用いた以外は実施例1と同様にして、トナー(T10)を得た。
【0120】
このトナー(T10)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0121】
[比較例2]
比較例1で、ワックス成分をパラフィンワックス(酸価0mgKOH/g、溶融粘度(100℃)6mPa・s、軟化点80℃)のみを7質量部用いた以外は比較例1と同様にして、トナー(T11)を得た。
【0122】
このトナー(T11)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0123】
[比較例3]
比較例1で、ワックス成分をライスワックス(酸価8mgKOH/g)のみを3質量部用いた以外は比較例1と同様にして、トナー(T12)を得た。
【0124】
このトナー(T12)をDSCで分析した結果を表2にまとめて記した。
【0125】
(評価)
このようにして得られたトナーを用いて、評価を行った。また、プリントアウト試験・定着性・耐オフセット性試験は下記の要領で行った。
【0126】
<プリントアウト試験>
高温高湿(32.5℃・80%RH)、低温低湿(15℃・10%RH)の各々の環境下で、市販のレーザービームプリンターLBP−950(キヤノン製)を以下の構成に改造し、下記条件でプリントアウト試験を行った。トナー切れに際しては、カートリッジ上部のトナー容器部分に切り込みを設け、そこからトナーを補給することによってプリントアウト試験を続けた。一次帯電を−670Vとして静電潜像を形成し、感光ドラムとトナー担持体(磁石内包)上のトナー層を非接触に間隙(290μm)を設定し、交流バイアス(f=2000Hz;Vpp=1600V)及び直流バイアス(Vdc=−500V)として現像ドラムに印加した。プリントアウトの速度は、50枚(A4ヨコ)/1分となるように改造した。得られた画像を下記の項目について評価した。
【0127】
▲1▼画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に20000枚プリントアウト終了時の画像濃度維持により評価した。なお、画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
【0128】
▲2▼カブリ
リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、低温低湿(15℃・10%RH)環境下において、10000枚耐久画出しした後のベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
【0129】
▲3▼定着性
定着性は、4.9kPaの荷重をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)で評価した。
◎:5%未満
○:5%以上10%未満
△:10%以上20%未満
×:20%以上
【0130】
▲4▼耐オフセット性
耐オフセット性は、画像面積率約5%のサンプル画像をプリントアウトし、画像上の汚れの程度により評価した。試験紙として複写機用普通紙(64g/m2)を使用した。
◎:未発生
○:ほとんど発生せず
△:わずかに発生
×:著しい汚れが発生
【0131】
▲5▼定着器加圧ローラー・紙搬送コロ部材へのトナー付着の程度
低温低湿(15℃・10%RH)環境下で填料として炭酸カルシウムを15質量%含む複写機用普通紙(80g/m2)を5000枚、1分間に1枚の割合で間欠的に画出しした後に、定着器加圧ローラー及び紙搬送コロ部材の表面を目視で観察し、ローラーへのトナー付着の程度により評価した。
◎:未発生
○:ほとんど発生せず
△:端部のみにトナー付着
×:全面にトナー付着
【0132】
また、プリンターの定着ユニットが充分に冷却された状態であることを確認した後、紙を通紙して、その紙上へ吐き出されたトナー塊による汚れを評価した。◎:未発生
○:1mm以下の汚れが5点以下
△:1mm以下の汚れが10点以下
×:1mm以上の汚れがある
【0133】
以上の評価方法により、実施例1、2、4、参考例5〜9、及び、比較例1〜3のトナーの評価を行った。結果を表3にまとめて記した。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明は、定着性及び非オフセット性のバランスに優れたトナーであり、かつ、いかなる環境下においてもカブリの少ない高品質の画像を長期間に渡って提供することを可能とし、複写機、プリンター等の装置中の各部材へのトナー付着・融着等が発生したり、また、融着したトナー塊が転写材上に吐き出されたりすることのない高度に耐久可能なトナーを提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトナーのワックス由来の吸熱ピークを表わした説明図である。
【図2】本発明のトナーのワックス由来の吸熱ピークを表わした説明図である。
Claims (5)
- 少なくとも結着樹脂及びワックスを含有するトナーにおいて、
示差走査型熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて、吸熱ピークの最低オンセット温度が60℃以上であって、80〜150℃の温度領域において最大吸熱ピークの1/10ピーク強度以上になる温度部分の合計が50〜70degであり、
該ワックスの含有量が該結着樹脂100質量部に対し、1乃至15質量部であり、該ワックスは、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステルまたはマレイン酸無水物の少なくとも1種以上から選択される酸モノマーにより変性された酸価が1〜70mgKOH/gであるワックスを含有し、
該結着樹脂は、その酸価が0.5乃至50mgKOH/gであることを特徴とするトナー。 - 示差走査型熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて、80〜150℃の温度領域において最大吸熱ピークの1/2ピーク強度以上になる温度部分の合計が30〜70degであることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
- 該ワックスの160℃における溶融粘度が50乃至2000mPa・sの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
- 該結着樹脂が、実質的にTHF不溶分を含まず、THF可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラム)において、少なくとも分子量3×103〜3×104の領域にメインピークを有し、且つ分子量1×105〜3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー。
- 該結着樹脂が、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、マレイン酸無水物の少なくとも1種以上から選択される酸モノマーを構成成分として有するビニル系重合体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
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