JP4343355B2 - 熱伝導材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品等の発熱体からの放熱を促すため、その発熱体に対して接触するように配置して使用される熱伝導材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の熱伝導材として、シリコーンゴムやEPDM等のゴムに熱伝導フィラーを充填し、混練・成形してなる熱伝導材が考えられている。この種の熱伝導材は、電気・電子装置の内部において、例えば、発熱源となる電子部品と、放熱板や筐体パネル等といったヒートシンクとなる部品(以下、単にヒートシンクという)との間に介在させるように配置して使用される。このように熱伝導材を配置した場合、電子部品等が発生する熱をヒートシンク側へ良好に逃がすことができる。このため、この種の熱伝導材は、例えばCPUの高速化等のために不可欠な素材として注目を集めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の熱伝導材では、熱伝導フィラーの充填率を上げて熱伝導率を向上させる研究がなされているが、熱伝導フィラーの充填率には限界があり、せいぜい7〜8W/(m・K)程度の熱伝導率しか実現できない。これは、熱伝導フィラーの充填によって熱伝導性を付与する場合、フィラー同士の接触面でしか熱が伝導されないためと考えられる。また、熱伝導フィラーを高度に充填すると、熱伝導材が硬くて脆いものとなり、耐久性や電子部品等への密着性が低下してしまう。
【0004】
そこで、本発明は、極めて良好な熱伝導性を有し、電子部品等への密着性や耐久性においても優れた特性を示す熱伝導材の提供を目的としてなされた。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達するためになされた請求項1記載の発明は、直径7〜10μmのフィラメントを束ねて糸状にした後で平織りしてなる織物状に構成されたアルミナ繊維と、0.8〜3.0W/(m・K)の熱伝導性を有するシリコーンゴムによって構成され、上記アルミナ繊維を被覆することによってそのアルミナ繊維の形状を保持する被覆層と、を備えたことを特徴とする熱伝導材、を要旨としている。
【0006】
このように構成された本発明は、直径7〜10μmのフィラメントを束ねて糸状にした後で平織りしてなる織物状に構成されたアルミナ繊維を備えている。アルミナ繊維は、その繊維方向に極めて良好な熱伝導性を有しているので、本発明の熱伝導材もそのアルミナ繊維の繊維方向(すなわち、上記織物の面に沿った方向)に極めて良好な熱伝導性を有する。
【0007】
しかも、上記アルミナ繊維は、0.8〜3.0W/(m・K)の熱伝導性を有するシリコーンゴムの被覆層によって被覆され、その形状が保持される。更に、本発明では、アルミナ繊維が平織りの織物状に構成されているので、そのアルミナ繊維は経糸方向または緯糸方向に極めて良好に保持される。このため、本発明の熱伝導材は、上記経糸方向及び上記緯糸方向に極めて良好な熱伝導性を安定して有する。
また、本発明の熱伝導材では、上記アルミナ繊維によって充分な熱伝導性が確保されるので、上記シリコーンゴムには熱伝導フィラーを多量に充填する必要がない。このため、上記シリコーンゴムが有する弾力性・柔軟性等の機械的特性が保持され、本発明の熱伝導材は耐久性や電子部品等への密着性にも優れている。従って、本発明の熱伝導材は、極めて良好な熱伝導性を有し、電子部品等への密着性や耐久性においても優れた特性を示す。このため、電子部品等が発生する熱をヒートシンク側へ極めて良好に逃がし、CPUの高速化等を極めて良好に推進することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成に加え、未硬化の上記シリコーンゴムを、上記アルミナ繊維に含浸させてから硬化させることによって、上記被覆層が形成されたことを特徴としている。
本発明では、未硬化の上記シリコーンゴムをアルミナ繊維に含浸させてから硬化させているので、上記シリコーンゴムによってアルミナ繊維の隙間(網目や単繊維同士の隙間等)を極めて良好に埋めることができ、アルミナ繊維の形状も一層良好に保持される。
【0009】
従って、本発明では、請求項1記載の発明の効果に加えて、熱伝導性及び耐久性を一層向上させることができるといった効果が生じる。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成に加え、上記アルミナ繊維が、上記被覆層に被覆されることによって平面的なシート状に形成されたことを特徴としている。
【0010】
本発明では、被覆層による被覆によって平面的なシート状に形成されているので、その取り扱いも極めて容易であり、汎用性に富んでいる。
【0011】
従って、本発明では、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、熱伝導性を一層向上させると共にその熱伝導性を安定して保持することができ、更に、汎用性も向上させることができるといった効果が生じる。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の構成に加え、上記シート状に形成された後、屈曲または巻回されてから更に上記シリコーンゴムが硬化されたことを特徴としている。
【0012】
本発明では、請求項3記載の熱伝導材を屈曲または巻回し、その後で更に上記シリコーンゴムを硬化させている。このため、上記シート状の熱伝導材に容易に厚みを付与することができ、利用範囲を一層拡大することができる。従って、本発明では、請求項3記載の発明の効果に加えて、汎用性を一層向上させることができるといった効果が生じる。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1または2記載の構成に加え、上記アルミナ繊維が全体として筒状に構成され、上記被覆層に被覆されることによって中空部に発熱体を挿入可能な筒状に形成されたことを特徴としている。
本発明では、アルミナ繊維が全体として筒状に構成され、被覆層が形成された後も熱伝導材が全体として筒状に構成されている。そして、その熱伝導材の中空部には発熱体を挿入することができる。このため、本発明の熱伝導材は電子部品等の発熱体に極めて容易に装着することができ、その装着状態も安定して維持することができる。しかも、その発熱体が発生する熱を逃がす効果や耐久性も、請求項1または2記載の発明と同様に優れている。
【0014】
従って、本発明では、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、電子部品等の発熱体への装着を一層容易にすると共に、その装着状態を一層安定して維持することができるといった効果が生じる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を、図面と共に説明する。図1(B)は、本発明が適用された熱伝導材1の構成を表す断面図であり、図1(A)は、その熱伝導材1を構成するアルミナ繊維3の構成を表す斜視図である。
【0016】
アルミナ繊維3は、図1(A)に示すように平織りの織物状に構成されている。このアルミナ繊維3は、純度98%のアルミナ繊維からなる直径7〜10μmのフィラメントを、束ねて糸状にした後で平織りしたものである。なお、本実施の形態では、上記フィラメントを500本ずつ束ねたもの、1000本ずつ束ねたもの、及び2000本ずつ束ねたものをそれぞれ作成し、個々に次のような熱伝導材1を作成した。
【0017】
図1(B)に示すように、熱伝導材1は、アルミナ繊維3を0.8〜3.0W/(m・K)に配合した液状シリコーン5に含浸して、その液状シリコーン5を硬化させて被覆層とすることによって構成される。なお、アルミナ繊維3に液状シリコーン5を含浸させる方法としては、コーター,スクリーン印刷,ディップコート等、周知の各種方法を適用することができる。
【0018】
アルミナ繊維3は、その繊維方向に極めて良好な熱伝導性を有している。このため、上記のように構成された熱伝導材1では、アルミナ繊維3の繊維方向(すなわち、熱伝導材1の面に沿った方向)に極めて良好な熱伝導性を有する。しかも、アルミナ繊維3は織物を構成しているので、そのアルミナ繊維3の繊維方向は、経糸方向及び緯糸方向に極めて良好に揃った状態に保持される。また、アルミナ繊維3は液状シリコーン5に含浸されているので、液状シリコーン5が硬化することによって、アルミナ繊維3の配列は一層良好に保持される。このため、熱伝導材1は、上記繊維方向に極めて良好な熱伝導性を安定して有する。例えば、シリコーンゴムに多量の熱伝導フィラーを充填すると共にガラスクロスによって補強した従来の熱伝導材に比べて、熱伝導性の飛躍的な向上が確認された。
【0019】
更に、熱伝導材1では、前述のようにアルミナ繊維3によって充分な熱伝導性が確保されるので、熱伝導性を付与するために液状シリコーン5に多量の熱伝導フィラーを充填する必要がない。このため、液状シリコーン5が硬化したシリコーンゴムは、そのシリコーンゴムが本来保有する弾力性・柔軟性等の機械的特性をそのまま有しており、耐久性や電子部品等への密着性が低下することもない。このため、熱伝導材1は、発熱源となる電子部品等と放熱板や筐体パネル等といったヒートシンクとの間に介在させるように配置された場合、その電子部品等が発生する熱をヒートシンク側へ良好に逃がし、CPUの高速化等を極めて良好に推進することができる。
【0020】
また、熱伝導材1では、液状シリコーン5をアルミナ繊維3に含浸させてから硬化させているので、シリコーンゴムによってアルミナ繊維3の隙間(織目や短繊維同士の隙間等)を極めて良好に埋めることができ、アルミナ繊維3の形状も一層良好に保持される。このため、熱伝導材1では、熱伝導性及び耐久性が一層向上する。また更に、熱伝導材1は、平織りの織物状に構成されたアルミナ繊維3に液状シリコーン5を含浸して硬化させることによって平面的なシート状に構成されている。このため、熱伝導材1は、その取り扱いも極めて容易であり汎用性に富んでいる。
【0021】
図2は、本発明が適用された他の熱伝導材11の構成を表す斜視図であり、図3は、その熱伝導材11を構成するアルミナ繊維13の構成を表す斜視図である。図3に示すように、アルミナ繊維13は、前述のように糸状に束ねたアルミナ繊維を円筒状に編み上げることによって、円筒形の網状に構成されている。そして、前述の液状シリコーンをこのアルミナ繊維13に含浸・硬化させて被覆層とすることによって、本実施の形態の熱伝導材11が構成される。
【0022】
このため、図2に示すように、熱伝導材11は全体として筒状に構成され、中空部11aを有している。しかも、熱伝導材11は、前述のようにシリコーンゴムが本来保有する弾力性・柔軟性等の機械的特性をそのまま有しており、中空部11aの大きさも、アルミナ繊維13の径を適宜設定することにより電子部品99の外周に隙間なくはまる大きさとなっている。従って、熱伝導材11は、発熱体としての電子部品99に上からかぶせるだけで極めて容易に装着することができ、その装着状態も安定して維持することができる。
【0023】
以上、本発明を実施の形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、液状シリコーンの代わりにエポキシ等を使用してもよい。また、アルミナ繊維3,13の代わりに、繊維同士が交差する位置で互いに固定された漁網状の網を使用してもよく、アルミナ繊維13の代わりに、平織りしたアルミナ繊維を円筒状に丸めたものを使用してもよい。但し、平織り状のアルミナ繊維を使用する場合、その経糸方向及び緯糸方向の熱伝導性を極めて良好に向上させることができる。
【0024】
更に、前述の熱伝導材1は、図4(A)に示すように蛇腹状に屈曲させて使用したり、図4(B)に示すように巻き寿司状に巻回して使用したりしてもよい。熱伝導材1をこのように構成するときは、図1(B)に示すようなシート状に構成した時点で液状シリコーン5をある程度硬化させ、充分に塑性変形可能な状態のままで図4(A)または(B)の形状に整えてから、液状シリコーン5を更に硬化させるとよい。熱伝導材1をこのように構成した場合、容易に厚みを付与することができる。従って、熱伝導材1の汎用性を一層向上させることができる。
【0025】
また更に、上記各実施の形態では、アルミナ繊維3の織目またはアルミナ繊維13の編み目をシリコーンゴムによって完全に埋めているが、この織目または編み目(漁網状のアルミナ繊維を使用した場合は網目)に応じた位置に穴が形成されるように被覆層を形成してもよい。ヒートシンク及び本発明の熱伝導材による放熱に加えて、ファン等による空冷を行う場合、熱伝導材にこのような穴が形成されていた方が放熱効果が高い場合もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が適用された熱伝導材の構成を表す斜視図及び断面図である。
【図2】 本発明が適用された他の熱伝導材の構成を表す斜視図である。
【図3】 その熱伝導材を構成するアルミナ繊維の構成を表す斜視図である。
【図4】 図1の熱伝導材の変形例の構成を表す斜視図である。
【符号の説明】
1,11…熱伝導材 3,13…アルミナ繊維
5…液状シリコーン 11a…中空部
99…電子部品
Claims (5)
- 直径7〜10μmのフィラメントを束ねて糸状にした後で平織りしてなる織物状に構成されたアルミナ繊維と、
0.8〜3.0W/(m・K)の熱伝導性を有するシリコーンゴムによって構成され、上記アルミナ繊維を被覆することによってそのアルミナ繊維の形状を保持する被覆層と、を備えたことを特徴とする熱伝導材。 - 未硬化の上記シリコーンゴムを、上記アルミナ繊維に含浸させてから硬化させることによって、上記被覆層が形成されたことを特徴とする請求項1記載の熱伝導材。
- 上記アルミナ繊維が、上記被覆層に被覆されることによって平面的なシート状に形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の熱伝導材。
- 上記シート状に形成された後、屈曲または巻回されてから更に上記シリコーンゴムが硬化されたことを特徴とする請求項3記載の熱伝導材。
- 上記アルミナ繊維が全体として筒状に構成され、上記被覆層に被覆されることによって中空部に発熱体を挿入可能な筒状に形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の熱伝導材。
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