JP4342148B2 - 一酸化炭素除去触媒および一酸化炭素除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ガス、ナフサ、灯油等の炭化水素類及びメタノール等のアルコール類を改質(水蒸気改質、部分燃焼改質等)して得られる改質ガスのように、水素(H2)ガスを主成分とし、少量の一酸化炭素(CO)ガスを含む混合ガスから、一酸化炭素ガスを主に酸化除去する一酸化炭素除去触媒および一酸化炭素除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、天然ガス等の化石燃料を原燃料として、水素を主成分とする改質ガス(水素を40体積%以上含むガス(ドライベース))を製造する燃料改質装置にあっては、原燃料を、連設した脱硫器、水蒸気改質器で、脱硫、水蒸気改質することで、水素を主成分とし、一酸化炭素、二酸化炭素(CO2)、水分(H2O)等を含む改質ガスを得ていた。また、アルコール類、例えばメタノールを原燃料とする燃料改質装置は、メタノール改質触媒を内装したメタノール改質器を備え、メタノールから、水素を主成分とし、一酸化炭素、二酸化炭素、水分等を含む改質ガスを得ていた。
【0003】
ここで、リン酸型燃料電池に供する改質ガスを製造する燃料改質装置にあっては、一酸化炭素の存在によって、燃料電池の電極触媒が被毒することが知られている。従って、電極触媒が被毒されることを防ぐために、水素を主成分とするガスを一酸化炭素変成器に導入し、一酸化炭素変成反応によって、一酸化炭素を二酸化炭素(CO2)に変換し、ガス中の一酸化炭素濃度を所定値以下(例えば、0.5%)にして、改質ガスを得ていた。
【0004】
しかし、固体高分子型燃料電池に供する改質ガスを製造する燃料改質装置にあっては、固体高分子型燃料電池が約80℃という低温で作動することから、微量の一酸化炭素が含まれていても電極触媒が被毒されてしまう。従って、改質ガス中に含まれる一酸化炭素を更に低減する必要があり、一酸化炭素変成器の下流に、一酸化炭素を酸化除去する一酸化炭素除去触媒を収容した一酸化炭素除去器が設けられていた。これにより、一酸化炭素変成器で処理された改質ガスが、空気等の酸化剤を添加された状態で一酸化炭素除去器に導入され、この一酸化炭素除去触媒の存在下で、一酸化炭素が二酸化炭素に酸化され、一酸化炭素濃度を所定濃度以下(例えば、100ppm以下)にまで低減した改質ガスが得られていた。
【0005】
この種の一酸化炭素除去触媒としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等をアルミナ等の担体に担持した貴金属触媒が用いられていて、従来は、触媒の活性化処理を施さないまま一酸化炭素酸化除去に用いていた。或いは、一酸化炭素除去触媒を水素を主成分(50モル%以上)とするガス雰囲気下において前処理し、その後空気に触れさせることなく使用する活性化方法が提案されていた(特開平10−29802号公報参照)。これは、空気に触れることで触媒としての活性が低下すると考えているためであると思われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の一酸化炭素除去触媒を使用して上述のような改質ガスから一酸化炭素をその濃度が10ppm以下になるまで除去するには過剰な酸化剤(酸素)を添加する必要があった。更に、一酸化炭素除去触媒を低温(例えば、100℃付近)で使用する場合には、触媒としての活性が低く、一酸化炭素を良好に除去できないという問題があった。従って、より多くの一酸化炭素を除去しようとすれば、一酸化炭素除去触媒を高温域(約200℃付近)で使用して活性を高める必要があった。
【0007】
上述のような水素と一酸化炭素とを含む混合ガスから一酸化炭素を除去する場合、使用される一酸化炭素除去触媒は、一酸化炭素を除去するという有用な効果だけでなく、混合ガスに含まれる水素を消費して、一酸化炭素、メタン、水を生成する副反応(それぞれ、一酸化炭素の逆シフト反応、二酸化炭素のメタン化反応、水素の燃焼反応と呼ばれる)を起こすことが知られており、これらの反応を抑制することも求められている。特に、これらの副反応は、一酸化炭素除去触媒の温度が高い(例えば、200℃以上)と起こり易いという問題がある。
【0008】
従って、より多くの一酸化炭素を除去することを目的として一酸化炭素除去触媒を高温域で使用した場合には、上述のメタン化反応が非常に増進されるという問題が生じる。これは、メタン化反応が増進された場合、燃料電池において必要な水素がメタン化反応によって消費されてしまうという点に問題があると共に、メタン化反応の反応熱よって更に触媒層の温度が上昇するという点にも問題がある。
【0009】
また、一酸化炭素除去触媒の鉄被毒を避けるためには、導入される反応ガスの温度を100℃以下にして、反応管内で鉄カルボニルが生成されることを抑制することが好ましい。ここで、一酸化炭素除去触媒が鉄により被毒される機構は、次のように考えられている。まず、水素と一酸化炭素とを含んだ混合ガス中の一酸化炭素が一酸化炭素除去器までの配管や、一酸化炭素除去器の反応管を構成するステンレス鋼材などに含まれる鉄と結合し、鉄カルボニル(Fe(CO)5)のような形態の化合物が生成される。この鉄カルボニルが上記混合ガスと共に移動して、一酸化炭素除去器の触媒部分に付着することによって、一酸化炭素除去触媒が被毒すると考えられている。このことから、一酸化炭素除去触媒を鉄被毒から守るための方法も要求されている。
【0010】
以上のように、従来は一酸化炭素を良好に除去するために一酸化炭素除去器をどのような使用条件下で用いるかに主眼が置かれており、その一酸化炭素除去器が備える一酸化炭素除去触媒自体については大きな改良が為されていなかった。
【0011】
また、一酸化炭素除去器に導入する反応ガスに多量の水分が含まれていると、一酸化炭素除去器入口に導入される反応ガスの温度を例えば100℃以下に下げたときに配管内や一酸化炭素除去器内で水分が凝集して結露し、これにより、配管内や一酸化炭素除去器内における反応ガスの通路の断面積や容積がランダムに変化し、一酸化炭素除去器に供給される反応ガスの流量がランダムに変動したり、一酸化炭素除去器に収容された一酸化炭素除去触媒が凝集水に濡れて活性が低下するという問題もある。
【0012】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、担体にルテニウムを担持した触媒において、触媒表面に金属(0価)の状態で存在するルテニウムの割合が所定の値に調整された一酸化炭素除去触媒を提供する点にある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明に係る一酸化炭素除去触媒の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項1に記載の如く、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスから一酸化炭素を除去するために使用される一酸化炭素除去触媒であって、担体にルテニウムを担持させて触媒1gあたりのCO吸着量が0.33cm3以上となるように製造した後、前記混合ガス中の一酸化炭素を酸化剤と触媒反応させて酸化除去する反応に使用する前に、触媒表面層に金属の状態で存在するルテニウム原子の割合を増大させるための活性化ガスを用いた前処理を施すことで、ESCAにより測定可能な前記触媒表面層におけるルテニウム原子の内の50%以上が金属状態のルテニウムとして存在している点にある。
【0014】
上記課題を解決するための本発明に係る一酸化炭素除去触媒の第二の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項2に記載の如く、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスから一酸化炭素を除去するために使用される一酸化炭素除去触媒であって、担体にルテニウムを担持させて触媒1gあたりのCO吸着量が0.33cm3以上となるように製造した後、前記混合ガス中の一酸化炭素を酸化剤と触媒反応させて酸化除去する反応に使用する前に、不活性ガスまたは50体積%未満の水素ガスを含み残余ガスが不活性ガスである水素含有不活性ガスと接触させる前処理を施すことで、前記前処理の後の、ESCAにより測定可能な触媒表面層におけるルテニウム原子の内の50%以上が金属状態のルテニウムとして存在している点にある。
【0015】
上記課題を解決するための本発明に係る一酸化炭素除去触媒の第三の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項3に記載の如く、上記第一または第二の特徴構成に加えて、ESCAにより測定可能な前記触媒表面層における前記ルテニウム原子の内の65%以上が金属状態のルテニウムである点にある。
【0016】
上記課題を解決するための本発明に係る一酸化炭素除去触媒の第四の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項4に記載の如く、上記第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記担体がアルミナである点にある。
【0017】
上記課題を解決するための本発明に係る一酸化炭素除去方法の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項5に記載の如く、請求項1から請求項4の何れかに記載の一酸化炭素除去触媒を備えた触媒層を筐体内に設けた一酸化炭素除去器に、前記混合ガスに酸化剤を添加した反応ガスを導入する導入工程と、前記一酸化炭素除去触媒上で前記酸化剤と前記混合ガスとを反応させて一酸化炭素を除去する除去工程とを含む点にある。
【0018】
上記課題を解決するための本発明に係る一酸化炭素除去方法の第二の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項6に記載の如く、上記第一の特徴構成に加えて、前記導入工程において、前記反応ガスが100℃以下で導入される点にある。
【0019】
上記課題を解決するための本発明に係る一酸化炭素除去方法の第三の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項7に記載の如く、上記第一または第二の特徴構成に加えて、前記反応ガスの露点が60℃以下である点にある。
【0020】
以下に作用並びに効果を説明する。
本発明に係る一酸化炭素除去触媒の第一の特徴構成によれば、一酸化炭素を含む混合ガスと酸化剤とを一酸化炭素除去触媒上において反応させて上記混合ガス中の一酸化炭素を酸化除去する前の、一酸化炭素除去触媒の表面に存在するルテニウム原子の内の50%以上が金属状態のルテニウムで存在していることで、ルテニウム触媒表面における一酸化炭素除去触媒としての機能が活性化された状態にすることができる。その結果、従来の一酸化炭素除去触媒よりも一酸化炭素を広い温度範囲で、しかも、より低い濃度まで良好に除去することができる。具体的には、従来は触媒としての活性が低かった、一酸化炭素除去触媒の使用温度が約100℃〜約120℃という低温域であっても、一酸化炭素を1〜10ppm以下という低レベルにまで低減させることができる。このように、一酸化炭素除去触媒を低温域で使用しても一酸化炭素を良好に除去できることから、高温で使用していた場合に問題となっていた二酸化炭素の逆シフト反応やメタン化反応などに代表される副反応を抑制することができ、一酸化炭素濃度を選択的に低減させることができる。
【0021】
ここで、本発明に係る一酸化炭素除去触媒において、その製造時に湿式還元処理を施せば、粒子径が小さく高分散な状態で担体に担持されたルテニウムを得ることができるため好適である。その結果、一酸化炭素除去反応の活性点が多い触媒を得ることができる。
【0022】
本発明に係る一酸化炭素除去触媒の第二の特徴構成によれば、不活性ガスまたは50体積%未満の水素と不活性ガスとを含んだ水素含有不活性ガスと接触させる前処理を施すことで、一酸化炭素除去触媒の表面層にあるルテニウム原子の内、前処理前には10%程度であった金属の状態で存在するルテニウムの割合を50%以上にできることから、ルテニウム触媒表面における一酸化炭素除去触媒としての機能が活性化された状態となり、その結果、従来の一酸化炭素除去触媒よりも一酸化炭素を広い温度範囲で、しかも、より低い濃度まで良好に除去することができる。具体的には、従来は触媒としての活性が低かった、一酸化炭素除去触媒の使用温度が約100℃〜120℃という低温域であっても、一酸化炭素を1〜10ppm以下という低レベルにまで低減させることができる。
このように、一酸化炭素除去触媒を低温域で使用しても一酸化炭素を良好に除去できることから、高温で使用していた場合に問題となっていた二酸化炭素の逆シフト反応やメタン化反応などに代表される副反応を抑制することができ、一酸化炭素濃度を選択的に低減させることができる。
【0023】
ここで、本発明に係る一酸化炭素除去触媒において、その製造時に湿式還元処理を施せば、粒子径が小さく高分散な状態で担体に担持されたルテニウムを得ることができるため好適である。その結果、一酸化炭素除去反応の活性点が多い触媒を得ることができる。
【0024】
本発明に係る一酸化炭素除去触媒の第三の特徴構成によれば、一酸化炭素触媒の表面に存在するルテニウム原子の内の65%以上が金属の状態のルテニウムとして存在していることで、ルテニウム触媒表面における一酸化炭素除去触媒としての機能が更に活性化された状態となり、その結果、一酸化炭素を良好に除去することができる。
【0025】
本発明に係る一酸化炭素除去触媒の第四の特徴構成によれば、担体がアルミナで構成されることで、その構造上の特徴から触媒の有効表面積の増大という効果を得ることができる。その結果、触媒表面における触媒反応を多く発生させることができるため、一酸化炭素を良好に除去することができる。
【0026】
本発明に係る一酸化炭素除去方法の第一の特徴構成によれば、水素と一酸化炭素を含む混合ガス中の一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去触媒から構成される触媒層をその筐体内に形成した一酸化炭素除去器に、前記混合ガスに酸化剤を添加した反応ガスを導入する導入工程と、前記一酸化炭素除去触媒上で前記酸化剤と前記混合ガスとを反応させて一酸化炭素を除去する除去工程とを有する一酸化炭素除去方法において、一酸化炭素触媒の表面層のルテニウムの内の50%以上が金属の状態で存在していることで、ルテニウム触媒表面における一酸化炭素除去触媒としての機能が活性化された状態にあり、その結果、導入工程において一酸化炭素除去器に導入されてきた一酸化炭素を良好に除去することができる。具体的には、従来は触媒としての活性が低かった、一酸化炭素除去触媒の使用温度が約100℃〜120℃という低温域であっても、一酸化炭素を1〜10ppm以下という低レベルにまで低減させることができる。このように、一酸化炭素除去触媒を低温域で使用しても一酸化炭素を良好に除去できることから、高温で使用していた場合に問題となっていた二酸化炭素の逆シフト反応やメタン化反応などに代表される副反応が発生することがなく、一酸化炭素濃度を選択的に低減させることができる。
【0027】
本発明に係る一酸化炭素除去方法の第二の特徴構成によれば、水素と一酸化炭素を含む混合ガス中の一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去触媒から構成される触媒層をその筐体内に形成した一酸化炭素除去器に、前記混合ガスに酸化剤を添加した反応ガスを導入する導入工程と、前記一酸化炭素除去触媒上で前記酸化剤と前記混合ガスとを反応させて一酸化炭素を除去する除去工程とを有する一酸化炭素除去方法の前記導入工程において、100℃以下の前記反応ガスを、前記一酸化炭素除去器に導入すると、前記配管等を構成する鉄分と一酸化炭素との結合が起こりにくくなって鉄カルボニルの生成が抑制されると考えられる。又、前記鉄カルボニルが生成したとしても、その沸点が103℃であるので、前記反応ガスの温度を100℃以下に保つことで気化が抑制され、前記配管の下流にある前記一酸化炭素除去器内への流入を抑制することができる。その結果、一酸化炭素除去触媒の鉄被毒を抑制することもできる。
【0028】
本発明に係る一酸化炭素除去方法の第三の特徴構成によれば、前記一酸化炭素除去器入口に導入される前記反応ガスの露点がプロセス圧力において60℃以下になるようにしておくと、鉄被毒を防ぐために低温の反応ガスを前記一酸化炭素除去器に導入する場合でも一酸化炭素除去器内部で反応ガス中の水分が結露することを防止することができる。従って、前記一酸化炭素除去触媒が濡れ難くなるので触媒機能の活性が低下し難くなり、又、前記配管内や一酸化炭素除去器内における前記反応ガスの流量の変動幅を非常に小さく抑えることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下の実施形態では改質ガスを使用して発電を行う固体高分子型燃料電池システムを例に挙げて、本発明に係る一酸化炭素除去触媒の構成とそれを使用した一酸化炭素除去方法について説明する。
【0030】
図1は、天然ガス(都市ガス)を原燃料として水素を主成分とする改質ガスを生成し、次にその改質ガスに含まれる一酸化炭素を除去した後で、改質ガスを燃料電池に供給して発電を行うような燃料改質システムのブロック図である。具体的には、天然ガスなどの原燃料を供給する原燃料供給系1、脱硫触媒を収容した脱硫器2、改質触媒を収容した改質器4、一酸化炭素変成触媒を収容した一酸化炭素変成器5、一酸化炭素除去触媒が収容された一酸化炭素除去器6がステンレス鋼などの配管を通じて連接されている。この燃料改質システムを通過して改質された改質ガスは水素を主成分とするガスであり、固体高分子型燃料電池7に供給されて、発電が行われる。
【0031】
ここで、原燃料供給系1はガスボンベやガス管などと接続されることで所定の原燃料を供給するものである。また、脱硫器2では上記原燃料に含まれる硫黄成分が除去される。脱硫器2を出たガスは水蒸気発生器3から供給される水蒸気と混合された後に改質器4に搬送され、改質触媒と接触して、原燃料中のメタンが主に水素、そして副生成物としての一酸化炭素と二酸化炭素とに改質(水蒸気改質)される。このようにして得られた改質ガスは水素に富むものの、副生成物としての一酸化炭素を十数%含むので、このままの成分のガスを固体高分子型燃料電池7に直接供給することはできない。そこで、一酸化炭素変成器5において、鉄−クロム系触媒や、銅−亜鉛系触媒などの一酸化炭素変成触媒と接触させて、一酸化炭素を二酸化炭素に変成させ、一酸化炭素濃度を0.5〜1体積%程度にまで低減させる。
【0032】
更に、一酸化炭素濃度が0.5〜1体積%に低減された改質ガスは、酸化剤供給器9から供給される空気(酸素が酸化剤として作用する)と混合された後に、反応ガスとして、配管を通じて一酸化炭素除去器6に導入される。この一酸化炭素除去器6は、一酸化炭素除去触媒から構成される触媒層12をその筐体内に形成し、反応ガスが触媒層12を通過するよう構成したものであり、本実施形態では後述するようにルテニウムをアルミナ球等の担体に担持したものを用いた。
【0033】
図2に一酸化炭素除去器6の構成図を示す。
一酸化炭素除去器6は、SUS製反応管11内に一酸化炭素除去触媒を充填して形成した触媒層12を設け、筐体である上記SUS製反応管11を加熱するためのヒータ又は熱源、並びにSUS製反応管11を冷却するための冷却器を備えてなる温度調節手段8をSUS製反応管11の外周に設けて構成される。触媒層12の温度は熱電対などの温度監視手段13などによって監視され、その監視結果に基づいて温度調節手段8が作動することで触媒層12の温度が調節される。また、触媒層12の温度だけでなく反応管11の温度を監視し、調節するような機構を設けることも同様にできる。
【0034】
例えば、触媒層12内に流入した鉄カルボニル等の含鉄化合物や金属鉄が一酸化炭素除去触媒表面に付着して活性を低下させることを抑制し、又、二酸化炭素のメタン化などの副反応を抑制するために、触媒層12の最高温度が130〜180℃、好ましくは、150〜180℃になるように、温度調節手段8で調整する。
【0035】
一酸化炭素濃度が0.5〜1%に低減された改質ガスは、酸化剤と共に一酸化炭素除去器6の筐体内に流入され、ここに形成された触媒層12に接触する。触媒層12には一酸化炭素除去触媒が収容されていて、ここで一酸化炭素除去触媒の触媒反応によって、主として、一酸化炭素が酸素と反応して酸化され二酸化炭素となる。また、一部の一酸化炭素は水素と反応してメタンとなる。このようにして、改質ガス中の一酸化炭素は除去され、最終的には、固体高分子型燃料電池7に供給される。
【0036】
又、一酸化炭素変成器5と一酸化炭素除去器6とを連結する配管の一部又は全部の外壁面には熱交換器10が沿設されていて、熱交換器内を配管の壁面を介して混合ガスや反応ガスと熱交換可能に伝熱媒体(例えば、空気や水等)が流通する。熱交換器10を設ける位置は、図1に示すように酸化剤が混合ガスに添加されるより前の段階であってもよく、或いは、混合ガスに酸化剤が添加されて反応ガスとして流通している部位であってもよい。熱交換器10内を流れる伝熱媒体と配管内を流れる混合ガス又は反応ガスとの間で熱交換が起こることによって、混合ガス又は反応ガスは冷却されるので、配管に流入する混合ガス又は反応ガスの流量、温度等を予め測定して伝熱媒体の流量等を適切に調整する、或いは所定の流量等で伝熱媒体を流通することによって、熱交換器10が設けられた部位より下流側の配管内を流れるガスの温度を100℃以下、好ましくは、負荷変動等を考慮して80℃以下に調整する。尚、一酸化炭素除去器6の設置環境や使用する熱媒体の温度等の要因に基づいて、反応ガスの温度(下限)は定まる。
【0037】
前述したように、触媒層12の温度を130℃以上180℃以下に調整するか、一酸化炭素除去器の上流に接する配管の温度を100℃以下に調整するかの何れか少なくとも一方を実施することで一酸化炭素除去触媒の鉄被毒を大幅に抑制して、一酸化炭素除去触媒の長寿命化及び活性改善を図ることができるが、両方を実施することで相乗効果が得られて、更に一酸化炭素除去触媒の長寿命化し活性を改善することができる。
【0038】
更には、配管にドレントラップを設けて、一酸化炭素除去器6に導入する反応ガス中の水蒸気を凝縮させ、反応ガスの露点をプロセス圧力において60℃以下、好ましくは、40℃以下にすると、配管や一酸化炭素除去器内で結露することを防ぐことができる。
【0039】
次に、本発明に係る一酸化炭素除去触媒と、それを用いた一酸化炭素除去方法について具体的に説明する。
【0040】
まず、一酸化炭素除去触媒の調製方法について以下に説明する。
直径2〜4mmの球状のγ−アルミナ担体を三塩化ルテニウム水溶液に浸漬し、含浸法よりルテニウムを担持させた。これを乾燥させた後、炭酸ナトリウム水溶液に浸漬して担体にルテニウムを固定化して、水洗、乾燥し、前駆体を得た。この前駆体をヒドラジン溶液に浸漬して前駆体表面のルテニウム(アルミナ担体に担持されたルテニウム)を還元し、再度水洗し、乾燥させてルテニウム/アルミナ触媒を得た。担持されたルテニウムは数十μm〜数百μmの厚さに堆積され、表面層付近ではルテニウムの酸化物、塩化物、水酸化物等のようなルテニウム化合物が金属状態のルテニウムと混在している。ここで、担体に担持されるルテニウムの担持量は、好ましくは0.1〜5重量%であり、更に好ましくは0.5〜2重量%である。尚、本実施形態では担体としてアルミナを用いたが、シリカ、チタニア、ゼオライトなどの担体を用いることもできる。また、出発材料であるルテニウム化合物も特に限定されず、三塩化ルテニウム以外の化合物を用いることもできる。
【0041】
また、アルミナ担体に塩化ルテニウムを担持した前駆体に対して、ヒドラジン溶液を用いた湿式還元(液相還元)を施すことで、粒子径が小さく高分散な状態(ルテニウムの表面積が大きい状態)でアルミナ担体に担持されたルテニウムが得やすくなる。また、湿式還元を採用したことで、気相還元を採用した場合に必要な、取り扱いに注意が必要である水素ガスなどの還元用ガスの後処理の問題が無くなる。尚、本実施形態では湿式還元にヒドラジン溶液を用いたが、ホルマリン、ギ酸、水素化ホウ酸ナトリウム溶液などの還元剤を用いることもできる。
【0042】
上記ルテニウム/アルミナ触媒(一酸化炭素除去触媒)8ccを、内部に外径6mmの熱電対挿入用鞘管を有する内径21.2mmのステンレス鋼製の反応管(筐体)11に充填して触媒層12を形成して一酸化炭素除去器6を作製した。この一酸化炭素除去器6の入口から筐体内部に導入されたガスは、触媒層12を通過して、出口から筐体外に放出される。
【0043】
この実験に用いた触媒は上述の一酸化炭素除去触媒の調製方法に従って製造された以下の表1に示す5種類の触媒A〜触媒Eであり、それぞれ触媒表面に存在するルテニウム原子の内、金属の状態で存在するルテニウムの割合が異なる。尚、表1に示す5種類の触媒A〜触媒Eはこのままの状態で一酸化炭素除去反応に使用されず、後述する前処理工程が施された後で一酸化炭素除去反応で使用される。従って、表1に示す金属の状態で存在するルテニウムの割合も前処理前の値である。
【0044】
【表1】
【0045】
尚、本実施形態において平均細孔径は、micromeritics社(島津製作所)製のAutoporeII 9220を用いた水銀圧入法により測定した。測定に際しては、水銀と測定試料との接触角を130度とし、水銀加圧圧力3.447×103Pa(0.5psi)〜4.137×108Pa(60,000psi)まで変化させた。これにより得られた一酸化炭素除去触媒の細孔直径の範囲における全細孔体積(V)と全細孔比表面積(S)とから平均細孔直径(4V/S)が導出される。また、一酸化炭素の吸着量は大倉理研社製全自動触媒ガス吸着量測定装置(MODEL R6015)を用いて測定し、BET表面積は、大倉理研社製全自動粉体比表面積測定装置(AMS8000)を用いて測定を行った。
【0046】
以上のように構成した一酸化炭素除去器を用いて一酸化炭素の除去を行うのであるが、一酸化炭素除去反応を行うに先立って、その前処理として活性化ガスを用いて一酸化炭素除去器内の一酸化炭素除去触媒を活性化することが行われる。この前処理(活性化処理)を行うことで、担体に担持された、触媒として作用する原子の内の金属(0価)の割合が増大するため、触媒としての作用がより大きく発揮されると予想される。前処理を行った場合の金属(0価)の存在割合と、その場合の一酸化炭素除去の効果について以下に実験結果に基づいて説明する。
【0047】
本実施形態では、触媒表面に存在するルテニウム原子の内、金属(0価)の状態で存在するルテニウムの割合をESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により測定した。ESCAはX線光電子分光法(XPS)とも呼ばれ、得られた光電子スペクトルから試料に含まれる元素を同定するだけでなく、その元素同士の結合状態を知ることもできる。また、試料にX線を照射することにより発生する光電子の内、試料外部へ脱出することのできる光電子は所定の深さよりも浅い位置で発生された光電子であるため、測定された元素は試料の表面層に存在する元素のみである。ESCAにより、触媒として主に作用していると考えられる触媒の表面層部分のルテニウムの状態を測定することができる。尚、ESCAにより測定された、価数が0の状態(金属の状態)と、それ以外の状態(酸化物、塩化物、水酸化物等の状態)で存在しているルテニウム原子の比率をスペクトル分離して、金属の状態で存在しているルテニウムの存在割合を求めた。
【0048】
本実施形態では、PHI社(Physical Electronics Industries, Inc.)製のPHI 5700ESCA Systemを用いてESCA測定を行った。測定条件は以下の表2および表3に示す通りである。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
(前処理)
上記一酸化炭素除去触媒A〜Dを活性化するために、それらを備えて構成された一酸化炭素除去器6に水素含有不活性ガス(水素9.5体積%、窒素90.5体積%)を1L/分の流量で導入しながら、上記温度調節手段8により反応管の温度を100℃、180℃、220℃、または250℃で1.5時間または2時間保持するという活性化処理を行った。その後、一酸化炭素除去器6に窒素ガスを流しながら触媒層12の温度を70℃にして、触媒層12の表面層の金属の状態で存在するルテニウムが酸化などの作用を受けることがないようにした後に一酸化炭素除去特性を測定した。尚、ここでは前処理工程における水素含有不活性ガスが10体積%以下(9.5体積%)の水素を含んでいるが、水素を含まない不活性ガス、または50体積%未満の水素を含んだ水素含有不活性ガスを用いても、所定の処理温度や処理時間を選択することによって同様の前処理工程を実施することができる。
【0052】
ここで、水素含有不活性ガスにおける水素の割合(体積%)の上限値を50体積%未満とする理由は、一酸化炭素除去触媒を、水素を主成分とするガスを用いて活性化するとすれば、前記一酸化炭素除去触媒の活性化のためだけに高濃度の水素ガスを多量に必要とする上、この活性化処理に用いられたガスを系外に排出するにあたり、水素の爆発限界範囲(4〜75体積%)の濃度になる虞れがあるので、後処理を必要とするという問題が存在するためである。また、水素の割合が10体積%以下の水素含有不活性ガスでも十分に前処理の効果は現れ、この場合は、一酸化炭素変成触媒などの還元処理と、一酸化炭素除去触媒の前処理とを同時に実施できるという利点がある。
【0053】
以上のように活性化処理(前処理)を行った場合、および行わなかった場合について、それらの一酸化炭素除去器6の一酸化炭素除去能力を、一酸化炭素除去器6の流入口と流出口における一酸化炭素濃度の変化から測定した結果を以下に示す。その測定方法は、一酸化炭素除去能力を測定するために、水素や一酸化炭素を含む反応模擬ガスを一酸化炭素除去器6に対して供給し、一酸化炭素除去器6の流出口において反応模擬ガス(出口ガス)を経時的に採取し、出口ガス中の一酸化炭素濃度を、熱伝導度検出器(TCD)及び水素炎イオン化検出器(FID)を搭載したガスクロマトグラフ装置を用いて測定した。尚、このガスクロマトグラフ装置による一酸化炭素の検出下限は、1ppmである。
【0054】
ここで、反応模擬ガスとは、一酸化炭素変成器5から排出されたガスに酸化剤である空気を添加したガスを模擬したガスであり、その組成は一酸化炭素0.5%、メタン0.5%、二酸化炭素21%、酸素0.75%、窒素3.0%、残部が水素である。このような反応模擬ガスを空間速度(GHSV)7500/時間となるように一酸化炭素除去器6に流入させた。一酸化炭素除去器6に流入させる反応模擬ガスの組成は一酸化炭素濃度を含めて全ての実施例で一定であることから、流出口における一酸化炭素濃度を比較することで、それぞれの触媒による一酸化炭素除去特性を判定することができる。尚、本実施形態では反応模擬ガスを空間速度(GHSV)7500/時間で一酸化炭素除去器6に流入させたが、空間速度は500〜50000/時間であればよく、更には空間速度が1000〜30000/時間であれば好ましい。
【0055】
上記酸化剤としての空気に含まれる酸素の量は、上記反応模擬ガス中の一酸化炭素と上記酸素とのモル比(O2/CO)が好ましくは3以下に調整され、より好ましくは2以下に調整され、最も好ましくは1.5以下に調整されている。
【0056】
尚、以下の図面に示すグラフは、離散した測定値を単純な近似線によって結んだものであり、それぞれの測定値間に描かれた曲線は本願発明を正確に表しているとは限らない。例えば、図3に示すA2のグラフは触媒層12の温度が約120℃の付近で急激に変化しているが、触媒層12の温度が100℃から120℃の間で温度を変えて細かく測定を行えば100℃付近で急激に変化していることも起こり得る。従って、測定値が急激に変化している温度域においては、一酸化炭素除去器6の流出口における一酸化炭素濃度が10ppm以下となる臨界温度について測定温度(約10℃〜約20℃間隔)間隔程度の誤差が含まれていると考えるのが適当である。
【0057】
(実施例1)
実施例1は、触媒Aを前記反応管11に充填して触媒層12を形成し、以下の表4に示す条件で前処理を行い、或いは前処理を行わずに、ルテニウム触媒の表面層において金属の状態で存在するルテニウムの割合を異なるように作製した一酸化炭素除去器6(A1〜A5)について、一酸化炭素除去の特性を調べたものである。尚、水素含有不活性ガス(水素9.5体積%、窒素90.5体積%)による上述の前処理工程を行わなかったA3に対しては水素ガス(1L/分)を流しながら70℃に昇温し、そのまま水素ガスを流しながら1時間保持した後に一酸化炭素除去反応を行わせ、同じくA4に対しては一酸化炭素変成器5出口の模擬ガス(一酸化炭素0.5体積%、メタン0.5体積%、二酸化炭素21体積%、残部が水素)(1L/分)を流しながら70℃に昇温した後に一酸化炭素除去反応を行わせ、同じくA5に対しては窒素ガス(1L/分)を流しながら70℃に昇温した後に一酸化炭素除去反応を行わせた。
【0058】
尚、以上のように作製された一酸化炭素除去器6(A1〜A5)について、それぞれ一酸化炭素除去反応を行わせる前の一酸化炭素除去触媒の表面に金属の状態で存在するRu(ルテニウム)の存在割合をESCAを用いて測定した。その結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
A1〜A5の一酸化炭素除去器6に前記反応模擬ガスを導入して一酸化炭素除去反応を行わせた結果(一酸化炭素除去器6の出口での各ガスの濃度)を図3に示す。図3に示すように、金属の状態で存在するルテニウムの割合が大きい程、一酸化炭素の除去効果が大きいことが分かる。ここで、グラフの縦軸は一酸化炭素除去器6の流出口における一酸化炭素濃度(ppm)であり、横軸は触媒層12の最高温度(℃)である。金属の状態で存在するルテニウムの割合が大きい場合(A1、A2)は触媒の活性と副反応の抑制という点に鑑みて好ましいと考えられる約100℃〜約180℃(特に、約120℃〜約180℃)という触媒層12の温度域において、一酸化炭素を10ppm以下のレベルにまで低減させることができていることが示されている。他方で、金属の状態で存在するルテニウムの割合が小さい場合(A3〜A5)は、触媒層12の最高温度が約170℃以上になれば、一酸化炭素濃度を10ppmという十分に低い値にまで低減させることができるが、温度が約180℃以上になると、後述するようにメタン化反応が増進されるという問題が発生するため実用には適さない。
【0061】
また、代表例として、一酸化炭素除去触媒A1およびA4との試験結果を表5および表6にそれぞれ示す。上述したように、以下の表5および表6から触媒層12の温度が上昇するにつれてメタン化反応が増進され、触媒層12の最高温度が約180℃を超えた辺りから二酸化炭素のメタン化反応が始まっていることが分かる。二酸化炭素のメタン化が起こると、反応模擬ガス中の水素が消費されるという点で好ましくなく、更に、二酸化炭素のメタン化が連鎖的に進行し、反応熱によって触媒層12の温度が更に上昇してしまうという問題もある。
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
従って、触媒層12の最高温度が約180℃以上になれば二酸化炭素のメタン化が増進されることが確認されたことから、一酸化炭素除去器の流出口の一酸化炭素濃度が例えば10ppm以下に低減されていたとしても、その温度域において一酸化炭素除去器6を使用することは不適切であると言える。
【0065】
(実施例2)
実施例2は、触媒Bを前記反応管11に充填して触媒層12を形成し、以下の表7に示す条件で前処理を行い、或いは前処理を行わずに、ルテニウム触媒の表面層において金属の状態で存在しているルテニウムの存在割合を異なるように作製した一酸化炭素除去器6(B1〜B3)について、一酸化炭素除去の特性を調べたものである。尚、水素含有不活性ガス(水素9.5体積%、窒素90.5体積%)による上述の前処理工程を行わなかったB3に対しては一酸化炭素変成器5出口の模擬ガス(一酸化炭素0.5体積%、メタン0.5体積%、二酸化炭素21体積%、残部が水素)(1L/分)を流しながら70℃に昇温した後に一酸化炭素除去特性が測定されている。
【0066】
尚、以上のように作製された一酸化炭素除去器6(B1〜B3)について、それぞれ一酸化炭素除去反応を行わせる前の一酸化炭素除去触媒の表面に金属の状態で存在するルテニウム(Ru)の存在割合をESCAを用いて測定した。その結果を表7に示す。
【0067】
【表7】
【0068】
B1〜B3の一酸化炭素除去器6に前記反応模擬ガスを導入して一酸化炭素除去反応を行わせた結果を図4に示す。図4に示すように、図3と同様で金属の状態で存在するルテニウムの割合が大きい程、一酸化炭素の除去効果が大きいことが分かる。金属の状態で存在するルテニウムの割合が大きい場合(B1、B2)は触媒の活性と副反応の抑制という点に鑑みて好ましいと考えられる約100℃〜約180℃(特に約110℃〜約180℃)という触媒層12の温度域(触媒層12の最高温度の温度域)において、一酸化炭素を10ppm以下のレベルにまで低減させることができていることが示されている。他方で、金属の状態で存在するルテニウムの割合が小さい場合(B3)は、触媒層12の温度が約160℃以上になれば、一酸化炭素濃度を10ppmという十分に低い値にまで低減させることができるが、温度が約180℃以上になると上述したように、メタン化反応反応が増進されるという問題が発生するため実用には適さない。
【0069】
(実施例3)
実施例3は、触媒Cを前記反応管11に充填して触媒層12を形成し、以下の表8に示す条件で前処理を行い、或いは前処理を行わずに、ルテニウム触媒の表面層において金属の状態で存在しているルテニウムの存在割合を異なるように作製した一酸化炭素除去器6(C1〜C3)について、一酸化炭素除去の特性を調べたものである。尚、水素含有不活性ガス(水素9.5体積%、窒素90.5体積%)による上述の前処理工程を行わなかったC3に対しては一酸化炭素変成器5出口の模擬ガス(一酸化炭素0.5体積%、メタン0.5体積%、二酸化炭素21体積%、残部が水素)(1L/分)を流しながら70℃に昇温した後に一酸化炭素除去特性が測定されている。
【0070】
尚、以上のように作製された一酸化炭素除去器6(C1〜C3)について、それぞれ一酸化炭素除去反応を行わせる前の一酸化炭素除去触媒の表面に金属の状態で存在するルテニウム(Ru)の存在割合をESCAを用いて測定した。その結果を表8に示す。
【0071】
【表8】
【0072】
C1〜C3の一酸化炭素除去器6に前記反応模擬ガスを導入して一酸化炭素除去反応を行わせた結果を表9〜表11に示す。表9〜表11に示すように、図3および図4と同様で金属の状態で存在するルテニウムの割合が大きい程、一酸化炭素の除去効果が大きいことが分かる。金属の状態で存在するルテニウムの割合が大きい場合(C1、C2)は反応管11の温度が約70℃〜約100℃という低い温度であっても、十分に一酸化炭素の除去反応が行われるのに対して、金属の状態で存在するルテニウムの割合が小さい場合(C3)は、反応管11の温度が約70℃〜約100℃の温度域ではほとんど一酸化炭素の除去反応が行われていないことが分かる。
【0073】
【表9】
【0074】
【表10】
【0075】
【表11】
【0076】
(実施例4)
実施例4は、触媒Dを反応管11に充填して触媒層12を形成し、その触媒層12に水素含有不活性ガス(水素9.5体積%、窒素90.5体積%)を1L/分の流量で導入しながら、上記温度調節手段8により反応管11の温度を調整して所定時間保持するという活性化処理(前処理)を行った。前処理における温度と処理時間の条件は以下の表12に示す。尚、水素含有不活性ガス(水素9.5体積%、窒素90.5体積%)による上述の前処理工程を行わなかったD2では、窒素ガス(1L/分)を流しながら95℃に昇温した後に、その一酸化炭素除去特性を測定した。また、以上のように作製された一酸化炭素除去器6(D1〜D2)について、それぞれ一酸化炭素除去反応を行う前の一酸化炭素除去触媒の表面に金属の状態で存在するルテニウムの存在割合をESCAを用いて測定した。その結果を表12に併せて示す。
【0077】
【表12】
【0078】
また、前処理を行い、或いは前処理を行わずに、ルテニウム触媒の表面層において金属状態で存在しているルテニウムの存在割合が異なるように作成した一酸化炭素除去器6(D1およびD2)について、一酸化炭素除去器6に模擬改質ガス(一酸化炭素0.5体積%、二酸化炭素20体積%、酸素0.75体積%、窒素3体積%、残部が水素である混合ガス1L(Normal)/分に湿りガス中の水蒸気濃度が10体積%となるように水蒸気が添加されたガス)を導入して、一酸化炭素除去反応を行った結果を表13および表14に示す。
【0079】
表13および表14に示すように、前処理によって、使用前に触媒表面のルテニウムの内の50%以上(ここでは77.0%)が金属の状態で存在するように調整された触媒(触媒D1)では、非常に高い一酸化炭素除去反応活性が得られることが分かった。特に、二酸化炭素の逆シフト反応の影響の少ない低温域(例えば、触媒層の最高温度が180℃以下)での活性が高いため、一酸化炭素除去器6の出口CO濃度を非常に低くすることができた。一方で、前処理を行わずに、金属の状態で存在するルテニウムの割合が小さい場合(D2)は、一酸化炭素除去反応の活性が低く、特に、触媒層の最高温度が120℃以下の温度域ではほとんど一酸化炭素の除去反応が行われていないことが分かる。
【0080】
【表13】
【0081】
【表14】
【0082】
以上の実施例1〜実施例4から、前処理工程を行って、触媒表面に金属の状態で存在するルテニウムの割合を増大させることで二酸化炭素のメタン化などの副反応などを発生させることなしに、良好に一酸化炭素濃度を低減できる一酸化炭素除去器6を提供することができた。前処理工程は、その一酸化炭素除去器6を得るために、9.5体積%の水素と不活性ガスとを含んだ水素含有不活性ガスを触媒層12に接触させることで実施された。尚、本実施形態では前処理工程において使用される上記水素含有不活性ガスに含まれる水素の比率を9.5体積%としたが、不活性ガスや50体積%未満の水素と不活性ガスとが含まれている水素含有不活性ガスを用いても前処理の効果を得ることができる。
【0083】
以上のように触媒表面における金属状態のルテニウムの存在割合が異なる試料について一酸化炭素除去特性を測定したが、図3および図4、並びに表4〜表14に示したように金属状態のルテニウムの存在割合が約50%以上になれば、触媒層12の最高温度が約100℃〜約180℃の範囲において一酸化炭素除去器6の流出口における一酸化炭素の濃度を約10ppm以下という低い値にすることができる。更には、金属状態のルテニウムの存在割合が約60%程度以上になれば、例えば試料C2の測定結果から分かるように一酸化炭素除去の効果が更に現れ、金属状態のルテニウムの存在割合が約65%程度以上になれば、例えば試料A1の測定結果から分かるように一酸化炭素除去の効果が更に現れる。また更には、金属状態のルテニウムの存在割合が約70%以上になれば、例えば試料C1の測定結果から分かるように一酸化炭素除去の効果がより明確に現れていることが分かる。尚、表4、表7、表8、および表12に示したように、この金属状態のルテニウムの存在割合は前処理工程における前処理温度を上昇させることで増大させることができる。但し、高すぎる前処理温度は触媒をシンタリングさせてしまう恐れがあるので好ましくない。また、前処理時間を長くすることでも、触媒表面に金属の状態で存在するルテニウムの割合を増大させることができる。
【0084】
触媒表面における金属の状態で存在するルテニウムの割合を増大させるために、不活性ガスまたは50体積%未満の水素ガスを含んだ水素含有不活性ガスによる一酸化炭素除去触媒の活性化(前処理)を約80℃〜約400℃の範囲で行なうことが好ましいが、以上のように前処理温度のより好ましい温度範囲を見出すことができた。具体的には、表4〜表14および図3、図4に示すように約100℃以上(例えば約100℃〜約220℃又は約100℃〜約250℃)で前処理を行って触媒表面における金属の状態で存在するルテニウムの割合を増大させることが好ましい。
【0085】
<別実施形態>
<1>
上述の実施形態では、反応模擬ガスとして水蒸気を含まないガスを使用していたが、反応模擬ガスに水蒸気が含まれていても同様の一酸化炭素除去効果が発揮されることを以下に説明する。
【0086】
一酸化炭素除去器6としては、上記触媒Aを上記反応管11に充填して触媒層12を形成し、水素5体積%、窒素95体積%の組成である水素含有不活性ガスを用いて200℃で1時間前処理し、触媒層12の表面のルテニウムの内、69%が金属の状態で存在しているものを使用した。ここで使用される反応模擬ガスの組成は、一酸化炭素0.5%、メタン0.5%、二酸化炭素21%、酸素0.75%、窒素3.0%、残部が水素である混合ガス1L(Normal)/分に湿りガス中の水蒸気濃度が20体積%、5体積%、または0体積%である。他の測定条件は上述の実施形態と同様である。尚、GHSVがドライベースで7500/時間となるように反応模擬ガスを流した。
【0087】
図5に示すように、反応模擬ガス中の水蒸気量が増加すると、特に低温での一酸化炭素除去特性は低下するが、一酸化炭素除去器6の流出口での一酸化炭素濃度を10ppm以下という低い値にまで十分に一酸化炭素を除去することができる。
【0088】
<2>
上述の実施形態では、一酸化炭素除去触媒の前処理を行った後、触媒層12が酸化作用を受けることがないように、一酸化炭素除去器6内部を窒素ガスで置換していた。しかし、ここでは前処理後に触媒層12を空気に触れさせることを行い、その触媒層12を使用した一酸化炭素除去器6の一酸化炭素除去特性を測定することで、触媒層12を空気に曝しても触媒表面のルテニウム原子の内、金属の状態で存在するルテニウムの割合が50%以上であれば一酸化炭素除去触媒としての特性にほとんど影響が無く、一酸化炭素除去の効果を継続して保持することができることを説明する。
【0089】
(触媒A’)
触媒A’は、表1に示した状態の触媒Aに対して水素含有不活性ガス(水素9.5%、窒素90.5%)を1L/分の流量で導入しながら、上記温度調節手段8により反応管の温度を220℃で1.5時間保持するという活性化処理を行った後、窒素ガス(流量1L/分)で内部を置換した状態で一酸化炭素除去器6の触媒層12の温度を室温まで低下させ、そして、窒素置換を中止し、触媒層12を室温で空気に30時間曝すことで得られた。空気に30時間曝した後の触媒表面における金属の状態で存在するルテニウムの割合は68.3%であった。その後、上述の実施形態と同様に窒素ガス(1L/分)を流しながら70℃に昇温した後に一酸化炭素除去器6の流出口での一酸化炭素濃度測定を行った。他の測定条件は上述の実施形態と同様である。その測定結果を図6に示し、触媒層12を空気に曝したことによる影響について考察する。
【0090】
図6には、触媒層12が実用的な温度域である約100℃〜約180℃の間で一酸化炭素を10ppm以下のレベルにまで低減させる効果を保持していることが示されている。従って、触媒層12を空気に曝しても触媒表面の金属の状態で存在するルテニウムの割合を50%以上で維持できれば一酸化炭素除去の特性が極端に悪化することがないといえる。
【0091】
(触媒A’’)
触媒A’’については、表1に示した状態の触媒Aに対して水素含有不活性ガス(水素9.5%、窒素90.5%)を1L/分の流量で導入しながら、上記温度調節手段8により反応管の温度を180℃で1.5時間保持するという活性化処理を行った後で、先ず一酸化炭素除去に使用して、一酸化炭素除去器6の流出口での一酸化炭素濃度測定を触媒層12の最高温度を123℃にして行った(空気に曝す前の測定)。次に、窒素ガス(流量1L/分)で内部を置換した状態で一酸化炭素除去器6の触媒層12の温度を室温まで低下させた。そして、窒素置換を中止し、触媒層12を室温で空気に24時間曝した。空気に24時間曝した後の触媒表面における金属の状態で存在するルテニウムの割合は59.5%であった。その後、上述の実施形態と同様に窒素ガス(1L/分)を流しながら70℃に昇温した後に一酸化炭素除去器6の流出口での一酸化炭素濃度測定を行った(空気に曝した後の測定)。他の測定条件は上述の実施形態と同様である。触媒層12を空気に曝す前後での測定結果を図7に示し、その影響について考察する。
【0092】
図7には、空気に曝す前の一酸化炭素除去特性と、空気に曝した後の一酸化炭素除去特性を示すが、何れの場合も触媒層12が実用的な温度域である約100℃〜約180℃の間で一酸化炭素を10ppm以下のレベルにまで低減させる効果を保持していることが示されている。従って、触媒層12を空気に曝しても触媒表面の金属の状態で存在するルテニウムの割合を50%以上で維持できれば一酸化炭素除去の特性が極端に悪化することがないといえる。
【0093】
<3>
次に、上記前処理(活性化処理)を施した一酸化炭素除去触媒の活性化及びルテニウムの状態が、一酸化炭素除去反応を行うことによってどのように変化するかを、反応模擬ガスに水蒸気が含まれている場合と含まれていない場合について調べた結果を示す。
【0094】
上記触媒Aを8mlに対して水素を5体積%含む窒素ガス中(水素含有不活性ガス中):1L(Normal)/分で220℃で1.5時間前処理することにより、触媒表面のルテニウム原子の内の金属の状態で存在するルテニウムの割合を70%以上(ESCAによる測定)とした触媒層12を備えた一酸化炭素除去器6に上記反応模擬ガスをドライベースでGHSV=7500/時間となるように導入し、一酸化炭素除去反応を行わせた後で、再度、ESCAにより触媒層12表面の金属の状態で存在するルテニウムの割合を測定したところ、その存在割合は70%以上を維持していた。このことから、一酸化炭素除去反応を行わせたとしても触媒表面のルテニウムの状態は維持されると言える。
【0095】
上記触媒Aを8mlに対して水素を5体積%含む窒素ガス中(水素含有不活性ガス中)で:1L(Normal)/分で220℃で1.5時間前処理することにより、触媒表面のルテニウム原子の内の金属の状態で存在するルテニウムの割合を70%以上(ESCAによる測定)とした触媒層12を備えた一酸化炭素除去器6に、湿りガス中の水蒸気濃度が5体積%(露点33℃相当)である水蒸気を含んだ上記反応模擬ガスを導入し、反応管11の温度を140℃にして触媒Aの耐久性能を調べた。尚、この時の触媒層12の最高温度は160℃であった。調べた結果、4000時間に渡って一酸化炭素除去器6の流出口における一酸化炭素濃度は5ppm未満を維持した。このように、本発明に係る一酸化炭素除去触媒は長期間に渡って安定した一酸化炭素除去性能を示すことが分かった。このことから、水蒸気が含まれた雰囲気中で一酸化炭素除去反応が行われたとしても、触媒表面のルテニウムの状態(金属状態として存在するルテニウムの割合)は維持されると言える。
【0096】
<4>
次に、一酸化炭素除去触媒の活性化(前処理)を行った場合の触媒表面のルテニウムの状態が、一酸化炭素除去反応で使用することによってどのように変化するかを長時間にわたって調べた耐久試験結果を示す。また、比較例として、前処理を行わなかった場合の耐久試験の結果も示す。
【0097】
(触媒D:前処理あり)
反応管11に触媒Dを8ml充填して触媒層12を形成し、触媒Dの表面のルテニウム原子の内の60%以上が金属の状態となるように前処理を施した後、一酸化炭素0.5体積%、二酸化炭素20体積%、酸素1体積%、窒素4体積%、残部が水素である混合ガス1L(Normal)/分に湿りガス中の水蒸気濃度が20体積%となるように水蒸気を添加した反応模擬ガスを反応管11に供給し、触媒層12の最高温度が120℃になるように反応管11の温度を調整して、触媒の耐久試験を長期間行った。その結果、17500時間の間、反応管11の出口CO濃度を5ppm以下に維持することができた。また、17500時間の耐久試験の後の触媒Dの表面状態をESCAで調べたところ、ルテニウム原子の60%以上が金属の状態で存在していた。
【0098】
比較例:
(触媒B:前処理なし)
上記触媒Bに対して前処理なしに窒素ガス中で70℃まで昇温した触媒層12を備えた一酸化炭素除去器6に、湿りガス中の水蒸気濃度が3体積%(露点25℃相当)である水蒸気を含んだ上記反応模擬ガスを導入し、その後、反応管11の温度を80℃として一酸化炭素除去反応を行わせた。この時、反応開始直後の一酸化炭素除去器6の流出口における一酸化炭素濃度は4600ppmであり、12時間経過した後でも流出口における一酸化炭素濃度は4600ppmであった。尚、12時間経過後の触媒層12を取り出してESCAにより触媒表面の解析を行ったところ、触媒表面のルテニウム原子の内の11.4%が金属の状態で存在するルテニウムであった。このように、前処理が施されていない触媒の一酸化炭素除去性能は低く、また金属として存在するルテニウム原子の割合も低いままであった。
【0099】
(触媒D:前処理なし)
反応管11に触媒Dを8ml充填して触媒層12を形成し、前処理を行わずに、窒素を流しながら反応管11の温度を100℃に昇温した後、一酸化炭素0.5体積%、二酸化炭素20体積%、酸素1体積%、窒素4体積%、残部が水素である混合ガス1L(Normal)/分に湿りガス中の水蒸気濃度が20体積%となるように水蒸気を添加した反応模擬ガスを反応管11に供給し、触媒層12の最高温度が120℃となるように反応管11の温度を調整して、一酸化炭素除去触媒の耐久試験を行った。その結果、100時間の間、反応管11の出口CO濃度はほぼ300ppmであった。また、100時間後の触媒Dの表面状態をESCAで調べたところ、触媒表面のルテニウム原子の内の金属の状態で存在するルテニウムの割合は12.7%であった。
【0100】
<5>
次に、図1に例示した燃料改質システム(以下には、都市ガス改質システムと記す)において、一酸化炭素除去触媒を活性化させる前処理を行い、一酸化炭素除去器6の出口での一酸化炭素濃度を長時間測定した結果について説明する。
【0101】
定格出力1kWの固体高分子型燃料電池(PEFC)に改質ガスを供給するための、脱硫器2と、水蒸気発生器3と、改質器4と、一酸化炭素変成器5と、熱交換器10と、一酸化炭素除去器6とから構成される、都市ガス(天然ガス)改質システム中の上記一酸化炭素除去器6に一酸化炭素除去触媒としての触媒Eを充填した。尚、都市ガス(天然ガス)改質システムの運転前に、2体積%の水素と98体積%の窒素とを含む水素含有不活性ガスを都市ガス(天然ガス)改質システムに25時間導入し、脱硫器2に充填されている脱硫触媒の還元と、一酸化炭素変成器5に充填されている一酸化炭素変成触媒の還元と、一酸化炭素除去器6に充填されている一酸化炭素除去触媒(触媒E)の前処理を同時に行った。この一酸化炭素除去触媒(触媒E)の前処理温度は100℃であった。
【0102】
前処理が終了した後の一酸化炭素除去触媒としての触媒Eの表面のルテニウム原子の内の金属の状態で存在しているルテニウムの割合は、ESCAで測定したところ50%以上であった。脱硫触媒の還元、一酸化炭素変成触媒の還元、及び一酸化炭素除去触媒の前処理が終了した後、都市ガス13A(天然ガス:メタン88%、エタン6%、プロパン4%、ブタン2%)4.2L(Normal)/分を、上記都市ガス(天然ガス)改質システムに導入して、上記PEFCに供給するための改質ガスの製造を行った。尚、改質反応は、S/C(スチーム/カーボン比)=3.0の条件で行われた。また、一酸化炭素変成器5の出口ガスに一酸化炭素除去反応用の空気(酸化剤)0.8L(Normal)/分が加えられて、一酸化炭素除去器6に導入された。その結果、4000時間の間、一酸化炭素除去器6の出口ガス中のCO濃度は1ppm以下に維持されていた。また、4000時間運転後においても、一酸化炭素除去触媒(触媒E)の表面のルテニウム原子の内の金属の状態で存在しているルテニウムの割合は50%以上であった。
【0103】
<6>
尚、本実施形態ではESCAを用いて触媒表面において金属の状態で存在するルテニウムの割合を測定したが、ルテニウム触媒の表面層の測定深さが同程度であれば他の分析方法を用いて測定を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施可能な燃料電池システムの概念図である。
【図2】一酸化炭素除去器の構成図である。
【図3】触媒層の温度と一酸化炭素の濃度との関係をルテニウム(触媒A)の存在割合毎に示すグラフである。
【図4】触媒層の温度と一酸化炭素の濃度との関係をルテニウム(触媒B)の存在割合毎に示すグラフである。
【図5】触媒層の温度と水蒸気が含まれている雰囲気中の一酸化炭素の濃度との関係を水蒸気の存在割合毎に示すグラフである。
【図6】触媒層の温度と一酸化炭素の濃度との関係を示すグラフである。
【図7】触媒層の温度と一酸化炭素の濃度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 原燃料供給系
2 脱硫器
3 水蒸気発生器
4 改質器
5 一酸化炭素変成器(CO変成器)
6 一酸化炭素除去器(CO除去器)
7 燃料電池
8 温度調節手段
9 酸化剤供給器
10 熱交換器
11 反応管
12 触媒層
13 温度監視手段
Claims (7)
- 水素と一酸化炭素とを含む混合ガスから一酸化炭素を除去するために使用される一酸化炭素除去触媒であって、担体にルテニウムを担持させて触媒1gあたりのCO吸着量が0.33cm3以上となるように製造した後、前記混合ガス中の一酸化炭素を酸化剤と触媒反応させて酸化除去する反応に使用する前に、触媒表面層に金属の状態で存在するルテニウム原子の割合を増大させるための活性化ガスを用いた前処理を施すことで、ESCAにより測定可能な前記触媒表面層におけるルテニウム原子の内の50%以上が金属状態のルテニウムとして存在している一酸化炭素除去触媒。
- 水素と一酸化炭素とを含む混合ガスから一酸化炭素を除去するために使用される一酸化炭素除去触媒であって、担体にルテニウムを担持させて触媒1gあたりのCO吸着量が0.33cm3以上となるように製造した後、前記混合ガス中の一酸化炭素を酸化剤と触媒反応させて酸化除去する反応に使用する前に、不活性ガスまたは50体積%未満の水素ガスを含み残余ガスが不活性ガスである水素含有不活性ガスと接触させる前処理を施すことで、前記前処理の後の、ESCAにより測定可能な触媒表面層におけるルテニウム原子の内の50%以上が金属状態のルテニウムとして存在している一酸化炭素除去触媒。
- ESCAにより測定可能な前記触媒表面層における前記ルテニウム原子の内の65%以上が金属状態のルテニウムである請求項1または請求項2に記載の一酸化炭素除去触媒。
- 前記担体がアルミナである請求項1から請求項3の何れか1項に記載の一酸化炭素除去触媒。
- 請求項1から請求項4の何れか1項に記載の一酸化炭素除去触媒を備えた触媒層を筐体内に設けた一酸化炭素除去器に、前記混合ガスに酸化剤を添加した反応ガスを導入する導入工程と、
前記一酸化炭素除去触媒上で前記酸化剤と前記混合ガスとを反応させて一酸化炭素を除去する除去工程とを含む一酸化炭素除去方法。 - 前記導入工程において、前記反応ガスが100℃以下で導入される請求項5に記載の一酸化炭素除去方法。
- 前記反応ガスの露点が60℃以下である請求項5または請求項6に記載の一酸化炭素除去方法。
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