JP4341220B2 - ピリジンチオールスルホナート類及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なピリジンチオールスルホナート類及びその製造方法に関する。本発明のピリジンチオールスルホナート類は、防腐、防黴、殺菌、静菌、防藻剤として使用することができ、また、それを含有する防腐、防黴、殺菌、静菌、防藻剤組成物として使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、チオールスルホナート類は数々合成され(非特許文献1)、また、ヘテロ環を含有するチオールスルホナートも合成され(特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)、それらの抗菌活性も調べられているが、抗菌力はあまり強くなく(非特許文献4)、工業用抗菌剤としての使用に耐え得るものは少なかった。
【0003】
【特許文献1】
特開昭60−11480号公報
【非特許文献1】
化学、第26巻、第1号、52〜64頁(1971)
【非特許文献2】
J.Med.Chem.,10,1167−1170(1967)
【非特許文献3】
SYNTHETIC COMMUNICATIONS,16(13),1709−1722(1986)
【非特許文献4】
J.Med.Chem.,7,671−673(1964)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、抗菌スペクトルが広く、抗菌力の強い新規なチオールスルホナート類及びそれを含有する防腐、防黴、殺菌、静菌、防藻剤組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、式(1)
【化5】
(式中RはC1〜C3アルキル基である。)で表される新規なチオールスルホナート類を合成し、その生物に対する生長抑制効果、殺生物効果について検討し、本発明を完成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の式(1)で表されるピリジンチオールスルホナート類は、以下の反応式に従い製造することができる。
【化6】
式(2)で表されるジスルフィドに式(3)で表されるスルフィン酸ナトリウム(式中RはC1〜C3アルキル基である。)及び式(4)で表される塩化第二銅を反応させ、式(1)で表されるピリジンチオールスルホナート類(式中RはC1〜C3アルキル基である。)を製造するものである。Rで示されるC1〜C3のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピルが挙げられる。
【0007】
本発明方法に用いられる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられ、好ましくは、アセトン、メタノールである。これらの有機溶媒には必要に応じて0〜60%の範囲で水を加えてもよい。
式(2)のジスルフィド、式(3)のスルフィン酸及び式(4)の塩化第二銅の総量は、
0.5〜25%が好ましい。
式(2)のジスルフィドに対する式(3)のスルフィン酸及び式(4)の塩化第二銅の仕込み量は、式(3)のスルフィン酸が70〜130モル%、式(4)の塩化第二銅が35〜65モル%がよい。
反応温度は、0〜100℃が適当で、20℃〜溶液の還流温度が好ましい。反応時間は、20分〜8時間が好ましい。反応の終末は、TLC(薄層クロマトグラフィー)でチェックを行う。
反応終了後、式(5)で表される銅ピリチオン等の反応系の不溶物は、親水性PTFEメンブランフィルター(0.45μm)でろ過し、更に目的物との溶解度の差を利用して除去可能である。また、必要に応じてODS(オクタデシルシリル化シリカゲル)カラムで精製を行う。
【0008】
式(1)で表される化合物としては、ピリジルN−オキシド−2−メタンチオスルホナート、ピリジルN−オキシド−2−エタンチオスルホナート、ピリジルN−オキシド−2−プロパンチオスルホナート、ピリジルN−オキシド−2−イソプロピルチオスルホナート等が挙げられる。
【0009】
本発明の組成物には、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、ジクロルグリオキシム、ジメチルジチオカルバメートナトリウム塩、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、ビストリブロモメチルスルホン、N−ベンジル−2,3−ジクロロマレイミド、メチレンビスイソチオシアネート、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン、1,5−ペンタンジアール、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン及びその塩化マグネシウム塩又は塩化カルシウム塩、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン及びその塩化マグネシウム塩又は塩化カルシウム塩、2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−イソフタロニトリル、3−ヨード−2−プロピニル−N−ブチルカルバメート、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルホニルピリジン、N,N−ジメチル−N’−(ジクロロフルオロメチルチオ)−N’−フェニルスルホアミド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール等の公知の工業用殺菌剤から選ばれた一種類以上の化合物を含有していてもよい。
【0010】
本発明のピリジンチオールスルホナート類と、これら公知の工業用殺菌剤のうち、5−クロロ−2−メチル−イソチアゾリン−3−オン及びその塩化マグネシウム又は塩化カルシウム塩、2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン、メチレンビスイソチオシアネート、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル−N−ブチルカルバメートとの併用が好ましい。
本発明のピリジンチオールスルホナート類及びその組成物は、溶剤溶液、乳化分散液等の希釈製剤として使用に供される。また、粉剤、顆粒剤、徐放化剤、練り状製剤等、各種の形態に製剤化して用いることもでき、浸漬、塗布、加圧注入等の方法によって使用することもできる。一般的には、希釈して使用されるが、希釈せず直接対象物に添加する等、使用形態には特に制限がなく種々の方法を採用することができる。これらの化合物は、純品でなくともよく、市販の防腐、防黴、殺菌、静菌、防藻剤を用いることもできる。
【0011】
これらの製剤化に際しては、溶媒、界面活性剤、担体、補助剤等の種々の薬剤を使用することができる。
例えば、紙・パルプ工業の抄紙工程や各種産業の工業用冷却水等の水系にエマルジョン塗料、樹脂エマルジョン、金属加工油、糊料、コーティングカラー等の水系製品に添加する場合には、有効成分の溶解性、分散性を考慮して、希釈剤として水、親水性有機溶媒、界面活性剤又は分散剤を用いた液剤とするのが好ましい。
親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−フェノキシエタノール等のグリコールエーテル類、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシメチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、プロピレンカーボネート、グルタル酸ジメチル等のエステル類、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン類及び水等を挙げることができる。
分散剤としては、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤が適当であり、製剤としての安定性及び泡立ちが少ない点でノニオン性界面活性剤が好ましい。
また、殺菌対象系が木材、油性塗料等の油系の場合には、親油性溶媒を用いることが望ましい。
このときの親油性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、リグロイン、灯油、軽油、スピンドル油、ナフサ、ケロシン等の石油系溶媒等を用いることができ、上記分散剤を添加してもよい。
壁紙、シャワーカーテン等の軟質塩化ビニル製品に添加するときは、ジオクチルフタレート等の可塑剤を溶媒として使用することができる。
更に本発明のチオールスルホナート類又はそれを含有する組成物は、固体希釈剤や担体と混合し、微粉状、顆粒状、練り状の製剤としてもよく、これらの固体希釈剤には、タルク、粘土、クレー、ベントナイト、CMC、珪藻土、カオリン、炭酸カルシウム、ゼオライト、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等を用いることができ、更に上記分散剤を添加してもよい。
【0012】
本発明のピリジンチオールスルホナート類及びそれを含有する組成物は、エルギノーサ(aeruginosa)、シュトゥツェリ(stutzeri)等のシュードモナス種(Pseudomonas species)のバクテリア、エアロバクター エアロゲネス(Aerobacter aerogenes)等のバクテリア及びエシェリヒア コリ(Esherichia coli)等のバクテリアの繁茂を阻害するのに有効である。
また、ペニシリウム(Penicillium)種、サッカロマイセス(Saccharomyces)種、カンジダ(Candida)種、フザリウム(Fusarium)種、アスペルギルス(Aspergillus)種、セファロスポリウム(Cephalosporium)種等の真菌(黴)類にも有効である。
また、クロレラ ピレノイドサ(C.pyrenoidosa)等のクロレラ種(Chlorella species)のような藻類の繁茂を抑制するためにも使用することができる。
【0013】
【実施例】
以下、合成例、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
合成例1
ピリジルN−オキシド−2−メタンチオスルホナートの合成
【化7】
温度計を付した1,000mL四つ口フラスコに2,2′−ジチオビス-(ピリジンN−オキシド) 7.0g、メタンスルフィン酸ナトリウム2.83g、塩化第二銅1.87g及び70%アセトン水680gを仕込み、20〜25℃の温度で約150分間攪拌反応を行った。反応終了後、反応混合物を親水性PTFEメンブランフィルター(0.45μm)でろ過することにより不溶物を除き、母液を結晶が出始めるまで濃縮した。結晶析出後、更に結晶を充分熟成させた後、ろ別、水洗い、メタノール洗浄をした後、減圧乾燥して、TLC(薄層クロマトグラフィー)でシングルスポット(Rf=0.37)の薄淡緑色のピリジルN−オキシド−2−メタンチオスルホナートを2.38g得た。図1にそのIRチャートを示す。
【0015】
〔質量分析〕
EXACT MASS:204.99
〔TLC条件〕
薄層板:メルク社製、シリカゲル60F254sを予め塗布したHPTLC板
検出:展開後乾燥し、UVランプでスポットの確認を行う。ヨード漕に入れ発色させる。
展開相:トルエン、酢酸エチル、メタノール(体積比率=2:1:1)
【0016】
実施例1
液体振とう培養法によって、合成例1で得られたピリジルN−オキシド−2−メタンチオスルホナートの供試菌に対する抗菌力を評価した。
本検体をDMSO又はDMFにて1,000ppmより希釈し、2倍希釈系列を調製する。
試験管に上記培地を分注し、120℃、20分間オートクレーブ滅菌を行う。その中に一定量の検体を所定の濃度になるように添加する。
その後、別途、前培養しておいた供試菌を各試験管に接種し、各々の菌の培養条件にて振とう培養を行い菌の生育を阻止した最小の濃度をMIC(μg/mL)とした。その結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【発明の効果】
本発明のピリジンチオールスルホナート類は、抗菌スペクトルが広く、抗菌力が強いため、黴、木材腐朽菌、酵母、バクテリア等の広範囲の微生物に対して有効な工業用抗菌剤及びそれを含有する抗菌剤組成物とすることができる。
【0019】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、実施例1で合成されたピリジルN−オキシド−2−メタンチオスルホナートの赤外吸収スペクトル図(IRチャート)を示す。
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