JP4340140B2 - 印刷原版 - Google Patents

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Description

本発明は、デジタル情報からネガまたはポジ画像を有するフィルムを介することなく直接平版印刷版を製造することが可能な、インクジェット方式による平版印刷版の印刷原版に関するものである。
近年のコンピュータ技術の進歩によって、印刷分野における情報のデジタル化が急速に進み、コンピュータなどから出力されるデジタル情報から、製版用フィルムを用いることなく平版印刷版を製造し得る製版方法が注目されている。このような製版方法として、インクジェット方式により印刷用インキ受容性の画線部を直接形成する方法が提案されている。インクジェット方式は、複雑な光学系を必要としないので装置を単純化することが可能であり、メンテナンスも少なく、製版コストを大幅に下げることが期待できる。
インクジェット方式により印刷用インキ受容性の画線部または非画線部を直接形成する製版方法としては、例えば、印刷原版(支持体)の表面に、硬化性シリコーン等の印刷用インキ反発性の材料をインクジェット方式によって付着させることにより、印刷版を作製する方法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
また、感脂性成分を含有する水性インクあるいは油性インクをインクジェット方式によって印刷原版に付着させることにより親油性(感脂性)の画線部を形成する方法が知られている(例えば、特許文献3、特許文献4及び特許文献5参照。)。
更に、画像信号に対応した電気信号により、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、アルキドアクリレート及びウレタンアクリレートから選択される硬化性成分が5〜40重量%、反応性希釈剤が10〜60重量%、光重合開始剤が0.1〜10重量%、溶剤(溶媒)が10〜80重量%及び染料が30重量%以下となる組成に調製した感光性インクを、インクジェット方式によって印刷版材上に付着させて画線部を形成し、その画線部を光照射により硬化させる方法が知られている(例えば、特許文献6参照。)。この製版方法は基本的には次の3過程、(1)製版すべき原稿画像をデータ化し電気信号化する過程、(2)(1)で得られた電気信号に従って、インクジェットヘッドを作動させて、印刷版材上に感光性インク画像を形成する過程、(3)感光性インク画像を有する印刷版材を露光して感光性インク画像を硬化させる過程から構成される。
特開昭51−84303号公報 特開昭56−113456号公報 特開平7−304278号公報 特開平8−324145号公報 特開平9−24599号公報 特許第2542500号公報
しかし、上記特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、製版の結果得られる印刷版は、印刷原版の表面上に形成された印刷用インキ反発性材料を非画線部とした平凹版印刷版である。従って、印刷される画像はシャドウ部またはリバース部の解像力に劣る。また、この方法では印刷版表面の大部分を占める非画線部全体に印刷用インキ反発性の材料を付着させる必要があるので大量の作像用インクが必要となる。
また、上記特許文献3、特許文献4及び特許文献5に記載の技術では、従来の平版印刷版に使用される印刷原版が共通して用いられ、印刷原版の表面は、親水性・保水性を良好にするべく砂目立て、陽極酸化、親水化などの種々の処理が行われる。従って、印刷原版の表面に付着させた作像用インクの広がりを十分に抑制することができず、作像用インクの滲みによる解像度の低下が問題になる。そのような作像用インクの滲みを抑えて、親水性の印刷原版の表面に直接インクジェット方式により画線部を形成するために、作像用インクとして表面張力の非常に高いインク組成物を用いることも考えられるが、そのようなインク組成物で形成された画線部上には、印刷時に印刷用インキが十分に着肉せず、結果として良好な印刷物が得られない。
また、上記特許文献6に記載の技術では、溶剤が感光性インクの粘性を調整する目的で添加されている。従って、このような溶剤等の非硬化成分が混合して存在する条件下では、光重合性材料は光重合効率の低下が免れられず、紙などの記録体に対する定着性を改善する程度の効果はあるものの、印刷版としての耐久性を発揮するほどの効果が得られない。また、この従来技術では、印刷版材(印刷原版)として酸化亜鉛を塗工した従来公知のオフセットマスター版材、シリコーン化合物が塗工された水なし平版材、砂目立てアルミニウム版材等が用いられている。従って、例えば、砂目立てアルミニウム版では、表面の親水性・保水性を良好にするべく砂目立て、陽極酸化、親水化などの種々の処理が施され大小の凹凸が形成されるが、その凹凸のサイズは感光性インクの分子サイズに比べれは十分大きいので、印刷原版の表面に付着した感光性インクはそのまま凹凸に入り込み、入りきらない感光性インクは表面に沿って広がり、滲みが発生して解像度が低下する。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、インクジェット方式による印刷版の製版において、強度、解像度及び感脂性に優れた画線部を備えた印刷原版を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明による印刷原版は、特許請求の範囲の請求項1に示すように、光重合性成分である複数のモノマー又はオリゴマーと、非光重合性成分である両親媒性の溶媒を3〜50重量%含有し硬化した後の表面が親油性の作像用樹脂を付着させる印刷原版であって、アルミニウムを主成分とする基材と、該基材上に厚さ方向に延在する孔径100Å〜500Å、深さ25μm〜50μmの複数の細孔を有する吸液性且つ耐水性のアルマイト層を設け、アルマイト層が溶媒を吸収し、作像用樹脂のうち光重合性成分のみが基材の表面に盛り上がり、インク着肉層を形成する構成とした。
これによると、画像パターンを形成する過程では、溶媒により作像用樹脂の粘度を比較的低く調整することができるので、インクジェット記録ヘッド等を用いて作像を行う際に大きな吐出力を必要とせずに記録ヘッド(ノズル)から作像用樹脂を容易に吐出させることが可能であり、また、作像用樹脂を微細な液滴として印刷原版に付着させることができる。更に、印刷原版に付着させた作像用樹脂を硬化させる前に、硬化を阻害する非光重合性成分である溶媒を分離するので、作像用樹脂の光重合性成分の重合効率を向上させて堅牢な画像パターンを形成できると共に、作像用樹脂の滲みを防いで高解像度の画像パターンを形成できる。
つまり、作像用樹脂を印刷原版に付着させた後、溶媒のみを効率良く多孔質層(アルマイト層)に浸透させて作像用樹脂から分離することができる。更に、孔径が印刷用インキの粒子よりも小さいので、印刷工程において印刷用インキが孔内に侵入して印刷汚れの原因となることを防止することもできる。
本発明によれば、インクジェット方式による印刷版の製版において、強度、解像度及び感脂性に優れた画線部を備えた印刷原版を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2は、本発明の作像用樹脂及び印刷原版により画像パターンを形成する工程を模式的に示す図である。これらは、印刷原版の構成において異なるが、その他の構成については概ね同様である。
図1において、印刷原版102は、アルミニウムを主成分とする基材103と、その基材103の表面に設けた多孔質層104とからなる。多孔質層104は、微細孔を有する無機材料微粒子(例えば、アルミナまたはアルミナ水和物と多孔性シリカとの混合物)と耐水性のバインダとで構成する。
アルミナまたはアルミナ水和物としては、画像パターン形成工程において非重合性の溶媒106を吸収し、かつ印刷工程において湿し水を吸収保持するために、半径30〜100Åを有する多孔質のアルミニウム酸化物やその含水物を用いることができる。このとき、細孔物性の測定手段として窒素吸着法(定流量法)を用いて、アルミナまたはアルミナ水和物の乾燥固形分の細孔径分布を測定することができる。ここで、アルミナゾルを乾燥することによって得られるゲル状物は、本発明に用いるアルミナまたはアルミナ水和物として好適である。中でも凝ベーマイトは、本発明の多孔質層に用いる物質として最適であり、特に、ゾルを乾燥して得られる擬ベーマイトゾルが好ましい。尚、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶質または非晶質の何れでもよく、その形態としては不定形粒子や球状粒子等適宜な形態を用いることができる。
多孔性シリカ粒子としては、上記アルミナまたはアルミナ水和物と同様に、画像パターン形成工程において非重合性の溶媒106を吸収し、かつ印刷工程において湿し水を吸収保持するために、平均粒子直径2〜50μm、平均細孔直径80〜500Å程度のものが好ましい。
バインダの材料としては、主としてポリビニルアルコールを用いるが、その他カチオン変成、アニオン変成及びシラノール変成等の各種変成ポリビニルアルコール、デンプン誘導体及びその変成体、セルロース誘導体、スチレン−マレイン酸共重合体等を適宜単独或いは混合して使用することができる。
上記のような印刷原版102を製作する場合には、アルミナまたはアルミナ水和物と多孔性シリカ粒子との混合物を調製してバインダと共に基材103に塗布する方法を用いるのが通常である。塗布手段としては、例えば、エアナイフコータ、ブレードコータ、バーコータ、ロッドコータ、ロールコータ、グラビアコータ及びサイズプレス等各種の方法を用いることができる。
ここで、アルミナまたはアルミナ水和物の使用量は、多孔性シリカ粒子に対して5〜50重量%程度を採用するのが適当である。使用量が、その下限に満たない場合には、本発明の目的を十分達成し得ず、逆にその上限を超える場合には吸収速度が遅くなり好ましくない。また、アルミナまたはアルミナ水和物及び多孔性シリカ粒子の細孔径を印刷用インキの色材よりも小さくすることによって、印刷工程において細孔に印刷用インキの色材が入り込み印刷汚れの原因となることを防止することができる。こうして作製した印刷原版102の多孔質層104は、無機材料微粒子の微細孔並びに無機材料微粒子及びバインダが形成する微小な間隙で構成される毛細管構造が縦横に広がった構造をしている。
尚、図1に示した印刷原版102の多孔質層104は、微細孔をもつアルミナまたはアルミナ水和物のみをバインダと共に塗布した構成も可能である。また、上記のように耐水性のある細孔直径80〜500Å程度の微細孔を持つ多孔質材料であれば基材上に塗布して印刷原版を形成できることは言うまでもない。
また、図1において、作像用樹脂101は、光重合性成分である複数のオリゴマーあるいはモノマー、重合開始剤及び反応性釈剤等105と、非光重合性成分である溶媒106とから主としてなる。この作像用樹脂101は、紫外線照射により光重合反応を起こす液状の紫外線硬化型樹脂であり、溶媒106として炭化水素、アルコール、ケトン、エーテルアルコール、エーテル及びエステル等を8重量%含有する。
ここで、作像用樹脂101のオリゴマーとしては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート及びウレタンアクリレート等を用いることができる。このようなオリゴマーやモノマーは高粘度であるため、インクジェット方式によって印刷原版102に付着させる場合に高速で微小な液滴にすることは困難である。そこで、低粘度の反応性希釈剤及び溶剤によって粘度が4〜30センチポアズ(cP)程度となるように調整する。また、光重合開始剤は、光エネルギ(紫外線)によりラジカルを発生し、これがオリゴマーやモノマーの反応基に反応し重合を開始させるものである。
尚、本実施の形態では、作像用樹脂101の粘度を適性に調整すると共に、後述する作像用樹脂101からの溶媒106の分離が容易となるように溶剤の含有量を8重量%としたが、これに限らず溶剤の含有量は、反応性希釈剤の添加量及びインクジェット方式により吐出させるのに最適な粘度を考慮して3〜50重量%の範囲で選択することができる。また、作像用樹脂101に暗反応を防止するための重合禁止剤、消泡剤等の各種調整剤を添加することで、長期保存性及び安定性を確保することができる。
上記のような印刷原版102上に画像パターンを形成する場合には、図1(a)に示すように、インクジェット記録ヘッド等の吐出手段(図示せず)から作像用樹脂101を微細な液滴として印刷原版102の表面に向けて吐出させる。印刷原版102の表面に到達した作像用樹脂101は、図1(b)に示すように、多孔質層104に付着した後、多孔質層104の細孔の毛細管現象により横及び深さ方向に浸透する。このとき、作像用樹脂101を構成する溶媒106の分子サイズは、多孔質層104の細孔径に比べて非常に小さいので、細孔の壁との相互作用が小さくトラップされることなく縦横に浸透していく。一方、光重合性成分105の各材料の分子サイズは、溶媒106の分子サイズに比べて大きく、細孔の壁との相互作用(例えば、ファンデルワールス力やクーロン力といった吸引力)がより大きくなり、細孔の壁に容易にトラップされて浸透しにくい。その結果、作像用樹脂101を構成する光重合性成分105と溶媒106とが分離され、多孔質層104上では、作像用樹脂101が付着した位置に光重合性成分105が概ね留まり、その周辺部に広がるように溶媒106が存在する。
上記のような印刷原版102に作像用樹脂101を付着させて画像パターンを形成する過程及びその作像用樹脂101から溶媒106を分離する過程の後に、更に、光照射によって画像パターンを硬化させる過程を経て印刷版の製作が完了し、その印刷版は平板印刷機(輪転機)での印刷に使用する。印刷の際には、まず印刷用インキの滲みを防止するために印刷版の画像パターンが無い部分に湿し水を供給する。従来の印刷版では、画像パターンが無い部分の表面には親水性材料を塗布した大波、中波と呼ばれる凹凸があり、この凹凸が水を保持する役目を担っていた。しかし、本発明の印刷原版により製作した印刷版は、表面が耐水性であると同時に保水性(吸水性)を有する多孔質層104を備えるので、供給した湿し水を吸収保持して従来の親水性の凹凸と同等の性能を発揮する。また、作像用樹脂101の光重合性成分105が硬化した部分は、親油性であるため湿し水を弾き、一方、その周辺に広がる溶媒106が存在する部分は、溶媒106が両親媒性であるため湿し水が付着する。その結果、光重合性成分105が硬化した部分からなる画線部以外に湿し水が付着することになる。
次に、印刷版に印刷用インキを塗布する。このとき印刷用インキは油性であるため、湿し水が存在する部分は印刷用インキを弾き、硬化した作像用樹脂101の光重合性成分105が存在する親油性部分にのみ印刷用インキが付着する。最終的に、この印刷用インキを塗布した印刷原版102をゴム製のブランケットに押し付けて印刷用インキのみをブランケットに転写し、ブランケットに転写された印刷用インキを再度紙に転写して印刷が終了する。
一方、図2において、印刷原版107は、アルミニウムを主成分とする基材の表面をアルマイト処理して多数の微細孔108を設けた多孔質層を有するものである。この多孔質層の毛細管構造は、縦方向(印刷原版の厚さ方向)に延在する無数の微細孔108及び表面の凹凸が形成する微細溝で構成される。
ここで、微細孔108の孔径及び深さは、アルマイト処理に用いる薬品やその処理時間によって種々の変更が可能であるが、本実施の形態では、孔径を100Å〜500Å、深さを25μm〜50μmの範囲で選択した。微細孔108は、光重合性成分105の材料の分子との相互作用が大きくなるように、可能な限り光重合性成分105の材料の分子サイズに近い孔径とし、また、付着する作像用樹脂101の液滴に含まれる溶媒106を確実に吸収できる深さとすることが望ましい。従って、最適な孔径は、作像用樹脂101の液滴に含まれる光重合性成分105の材料の分子サイズにより、また、最適な深さはその液滴の容量により選択される。
その結果、印刷原版107上に画像パターンを形成する場合、図2(b)に示すように、印刷原版107に付着した作像用樹脂101は、その殆どが微細孔108の毛細管現象によって深さ方向に浸透し、残りのわずかな量が表面の凹凸が形成する微細溝によって横方向に浸透する。そのため作像用樹脂101は、付着直後の液滴の広がりを保持したままで図1の場合と同様に作像用樹脂101を構成する光重合性成分105と溶媒106とが分離される。そこで、微細孔108の表面付近に光重合性成分105がトラップされ、微細孔108の深部に溶媒106が存在することになる。このように、作像用樹脂101から溶媒106の分離が完了した状態では、画像パターンが形成される微細孔108の表面近くに概ね光重合性成分105のみが存在し、溶媒106を排除しているため、光(紫外線)照射により効率よく光重合性成分105を重合させることができる。
図3は、本発明の印刷原版を用いる製版装置の一例を示す図である。ここでは、便宜上、製版装置の印刷版作製部の概略構成のみを示してある。この印刷版作製部は、印刷原版201の非画線部(記録領域外)と係合して印刷原版201を搬送する挿入ローラ202及び搬送ローラ203を備えた搬送機構(搬送手段)と、その搬送機構により搬送される印刷原版201を横切るように設置したステータ204及びそのステータ204に沿って移動するスライダ205からなるリニアモータ206(走査手段)と、スライダ205に搭載され、液滴状の紫外線硬化樹脂を吐出する複数のノズルを備えたインクジェット記録ヘッド207(記録手段)と、印刷原版201の横幅よりも広い照射幅を有し、印刷原版201に吐出させた紫外線硬化樹脂を硬化させる紫外線ランプ(硬化手段)208とから主として構成される。
図に示すように、リニアモータ206は、ステータ204に設けた複数の永久磁石209、スライダ205を支持案内するリニアガイド210、リニアスケール211及びスライダ205に取り付けたリニアセンサ212から構成され、リニアセンサ212でリニアスケール211を検出し、検出された信号はケーブル213を通じて、ここには図示していない制御回路に送られる。制御回路では、リニアスケール211の検出信号によるスライダ205の速度及び位置と、スライダ205に設けた記録ヘッド207からの紫外線硬化樹脂の吐出を制御する信号との同期がとられる。同時に、制御回路は、スライダ205および記録ヘッド207の動作に合わせて挿入ローラ202及び搬送ローラ203の動作を制御し、印刷原版201上に帯状に形成される紫外線硬化樹脂による画線部の繋ぎ合わせを正確に行う。
尚、画線部の繋ぎ合わせをより正確なものとするため、通常のインクジェットプリンタにおける各種制御と同様の制御が必要に応じて行われる。また、リニアモータは、ここに示した永久磁石を用いた構成に限らず、種々の方式のものを用いることができる。或いは、回転モータとベルトを用いた回転運動を直線運動に変換する機構も適用可能である。
紫外線ランプ208は、紫外線ランプ本体214と反射カバー215とで構成される。反射カバー215は、放射される紫外線を印刷原版201向かって効率よく照射するためのものであり、その一方で、不要な紫外線が、記録ヘッド207に到達してそのノズル部の紫外線硬化樹脂に当たり、紫外線硬化樹脂が硬化して吐出が行えなくなるのを防止する。また、紫外線ランプ208は、リニアモータ206、記録ヘッド207、挿入ローラ202及び搬送ローラ203と同様の制御回路により印刷原版201の移動に従って制御される。
尚、より小型の紫外線ランプをリニアモータ206のスライダ205に搭載することも可能であり、或いは、外部に設けた光源から発せられた紫外線を、光ファイバ等の導光手段を介してスライダ205に保持させた所定の照射部(導光手段の開口部)から照射する構成も可能である。これにより、印刷原版201に付着させた紫外線硬化樹脂をスライダ205の移動時に硬化させることができる。また、この印刷版作製部は、製版が完了した印刷原版201を保護するためのガム液を塗布する装置を備えていないが、必要に応じてガム液塗布装置を紫外線ランプ208の後に備えてもよい。また、紫外線ランプ208と同様に、より小型のガム液塗布装置をスライダ205に搭載し、印刷原版201上の硬化が完了した紫外線硬化樹脂にガム液を塗布することも可能である。
次に、上記のように構成した印刷版作製部の動作について説明する。
まず、印刷原版201が搬送機構の挿入ローラ202まで送られると、挿入ローラ202は、印刷原版201の画線部(紫外線硬化樹脂が付着する領域)に傷等をつけないように両端の非画線部を上下から挟み込むようにして回転することで印刷原版201を送り出す。印刷原版201の先端が挿入ローラ202を通過し、搬送ローラ203まで達すると搬送機構は停止し、リニアモータ206が作動する。ここでは、複数ライン単位で形成される紫外線硬化樹脂による画線部が乱れないように、リニアモータ206のスライダ205の移動と記録ヘッド207による紫外線硬化樹脂の吐出が同期するように制御する。更に、複数ライン単位で形成される画線部の繋ぎ合わせを精度よく行ない、画線部の不連続をなくすように各種の制御方法を用いる。こうして、事前に印刷すべきページ単位でラスター化された描画信号に従って、紫外線硬化樹脂を吐出させ、印刷版の画像に相当する部分に紫外線硬化樹脂を付着させる。
印刷原版201に付着した紫外線硬化樹脂は、印刷原版201の多孔質層の細孔に吸収され、紫外線硬化樹脂から溶媒が分離され、紫外線硬化樹脂中の光重合性成分のみが多孔質の表面付近に盛り上がり、印刷用インキの着肉層を形成する。この着肉層の形成には、多孔質層の構造及びインクジェット記録ヘッド207から吐出される液滴の量が深く関係しており、例えば、アルマイト処理により形成したアルマイト層の場合、微細孔の密度と深さが重要となる。微細孔径が光重合性成分の分子サイズよりも比較的大きく、しかも深い場合には、溶媒は十分に分離されず、光重合性成分を含む液滴はすべて細孔に吸収されて多孔質層の表面に光重合性成分が残らない。このような場合には、印刷版の表面の画線部に印刷用インキが付着せず適性に印刷を行うことができない。一方、細孔が比較的浅い場合には、液滴はその多くの部分が細孔に吸収されず、しかも溶媒も十分に分離されないので、表面に残った紫外線硬化樹脂が周囲(非画線部)に広がり、必要な解像度で画像を形成できなくなる。更に、付着した紫外線硬化樹脂中に存在する多量の溶媒によって、紫外線を照射しても十分な硬化が起こらない。
アルマイト処理によるアルマイト層の微細孔径が、光重合性成分の材料の分子サイズよりも若干大きい程度で、しかも溶媒を十分吸収可能な深さである場合には、紫外線硬化樹脂から溶媒が適性に分離され、紫外線硬化樹脂中の光重合性成分のみが多孔質の表面付近に盛り上がり、最適なインク着肉層を形成することができる。例えば、1200ドット/インチの解像度で画像パターンを形成する場合には、紫外線硬化樹脂の液滴サイズを2ピコリットル以下にする必要がある。このとき、アルマイト処理で形成された多孔質層の細孔は、直径が100Å〜500Å、深さが20〜25μmと極めて小さな孔であることが望ましい。
リニアモータ206のスライダ205の移動に伴って、記録ヘッド207が印刷原版201の一端から他端まで移動して紫外線硬化樹脂の付着を終了すると、リニアモータ206は方向を転換してステータ204に沿ってスライダ205に搭載した記録ヘッド207が元の位置に戻る。記録ヘッド207が元の位置に戻る動作中は、記録ヘッド207による紫外線硬化樹脂の吐出は行わずに、搬送機構のみが動作する。挿入ローラ202及び搬送ローラ203により印刷原版201の新しい部分(作像していない領域)が記録ヘッド207の下方(作像位置)にセットされると、再び挿入ローラ202及び搬送ローラ203は停止する。そして再びリニアモータ206により記録ヘッド207が印刷原版201の一端から他端まで移動して紫外線硬化樹脂の付着が行われる。このように搬送機構で印刷原版201を間欠的に搬送しながら、記録ヘッド207により繰り返し紫外線硬化樹脂の付着が行われる。
印刷原版201の紫外線硬化樹脂による作像が終了した領域は、その後、搬送機構によりリニアモータ206に平行して設けられた紫外線ランプ208まで送られ、紫外線硬化樹脂が紫外線ランプ208から照射される紫外光に曝露され硬化する。
印刷原版201の全面に渡って紫外線硬化樹脂の付着及び硬化が終了すると印刷版の製作は完了し、その後、その印刷版は通常の輪転機にセットされ、必要部数の印刷が行われる。
上記実施の形態では、スライダ205の往復動作の往路においてのみ記録ヘッド207が作動して作像する方法を示したが、スライダ205の復路においても記録ヘッド207により紫外線硬化樹脂を吐出して作像することも可能である。この場合、スライダ205の往路の動作が終了した時点で搬送機構のみが動作し、挿入ローラ202及び搬送ローラ203により印刷原版201の新しい部分が記録ヘッド207の下方にセットされた後、再び挿入ローラ202及び搬送ローラ203は停止する。このような動作を繰り返して印刷原版201の全面に渡って紫外線硬化樹脂の付着及び硬化を行うことができる。
本発明に係る印刷原版は、インクジェット方式による印刷版の製版において、強度、解像度及び感脂性に優れた画線部を備えた印刷版を提供可能とし、デジタル情報からネガまたはポジ画像を有するフィルムを介することなく直接平版印刷版を製造することが可能なインクジェット方式による平版印刷版の印刷原版として有用である。
本発明の印刷原版による画像パターン形成工程の一例を示す模式図 本発明の印刷原版による画像パターン形成工程の別の例を示す模式図 本発明の印刷原版を用いる製版装置の一例を示す図
符号の説明
101 作像用樹脂
102、107 印刷原版
103 基材
104 多孔質層
105 光重合性成分
106 溶媒
108 微細孔

Claims (1)

  1. 光重合性成分である複数のモノマー又はオリゴマーと、非光重合性成分である両親媒性の溶媒を3〜50重量%含有し硬化した後の表面が親油性の作像用樹脂を付着させる印刷原版であって、
    アルミニウムを主成分とする基材と、該基材上に厚さ方向に延在する孔径100Å〜500Å、深さ25μm〜50μmの複数の細孔を有する吸液性且つ耐水性のアルマイト層を設け、
    前記アルマイト層が前記溶媒を吸収し、前記作像用樹脂のうち光重合性成分のみが前記基材の表面に盛り上がり、インク着肉層を形成することを特徴とする印刷原版。
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