JP4338254B2 - 重質油の水素化処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属分および硫黄分を含有する重質油の水素化処理を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原油の蒸留などによって得られる残さ油などの重質油は、通常、硫黄分やニッケルやバナジウムといった金属分を含んでいる。このような重質油を、燃料油あるいは分解装置の原料油として用いるためには、これらの金属分および硫黄分の除去が必要であり、通常は水素化処理によってこれらを除去した後に、各用途に使用される。しかし、近年、重質原油の処理の必要性の増加に伴い、重質油中に含まれる金属分、硫黄分あるいは残留炭素分の量は上昇しており、重質油水素化処理プロセスに用いる触媒への負荷は大きくなっている。その一方、環境を保護する観点から、燃料油に対する低硫黄化への要求はますます強くなっている。
【0003】
このような重質油の水素化処理では、触媒上への金属析出あるいはコーク析出に起因した触媒細孔の閉塞や活性点被覆による活性低下が大きな問題となっており、水素化処理装置の長期安定運転のためには活性劣化への対策が必要不可欠である。そのため、長期安定運転を目的としたさまざまなプロセスが開発されており、例えば、水素化脱硫を主目的とする反応塔の前段に、脱金属を主目的とする反応塔を組み合わせた、多段式の重質油水素化処理プロセスなどがある。
【0004】
このような二つの工程から成る水素化処理装置において、第一工程の生成油は直接第二工程へと流れ込むため、第一工程の脱金属反応塔内の水素化反応効率が第二工程の性能や寿命を左右する重要な要素となっている。例えば、第一工程反応器内で原料油から十分な脱金属反応が進行しない場合、第二工程の脱硫触媒への金属分のスリップが生じ、触媒活性の劣化が生じる。このような金属による失活の場合、第一工程の生成油の金属濃度を管理することで、失活の可能性を予期することができる。
【0005】
一方、第一工程反応器内で原料油中の特に重質な成分への水素化反応が十分進行しない場合にも、コーク前駆体が生成し、第二工程に流れ込むため第二工程の触媒はコークによる失活が発生する。しかしながら、コークによる失活は、装置の長期運転を実現する上では金属による失活と同様に解決すべき重大な問題であるにもかかわらず、従来このような触媒の失活を予期する具体的な基準が示されていなかった。
【0006】
水素化処理装置における原料油炭化水素への水素付加を促進する技術としては、原料油へ水素供与性溶剤を添加する方法が知られている( 例えば特開昭63−154795公報) 。しかし、この方法は主として水素化処理( 水素化分解) 装置の生成油中に炭素質あるいはドライスラッジと呼ばれるトルエン不溶分が生成するのを抑える技術であり、炭素質析出による触媒の失活を抑制するものではない。
【0007】
一方、反応塔内の気液あるいは気液固の混合相( 以下、混合相) の流動状態が不均一なため、第一工程反応塔内で水素化反応が十分進行しない場合がある。触媒粒子が固定された反応塔形式の場合、液とガスの流れが交互に起きる脈動流と呼ばれる流動状態、あるいはチャネリングやバイパスによる混合相の流れの不均一が生じることがある。このような流動状態になるのを防ぎ、理想的な灌液流を維持するためには適切な液質量速度およびガス質量速度を維持するとともに、液体の物理物性にも注意する必要がある。一方、触媒粒子が流動・懸濁する反応塔形式では、気相は気泡となって反応塔内を分散しているが、気泡の融合による気液接触面積の減少や脈動流あるいは気相のチャネリングが発生するのを防ぎ、気泡の均一かつ微小に分散した気泡流を維持するためには、同様にガス質量速度および液体の物理物性の最適化が必要となる。
【0008】
しかし、水素ガスは脱硫、脱金属反応に必要な水素を供給すると共に、反応熱を除去し原料油の流通を良好にする役割を持ち、さらに装置設計上および経済性の面から見て、混合相流動状態に応じて水素ガス流量を変動させることは困難である。また、原料重質油は経済性や生産計画などによって決定され、その物性を調整することは難しい。
【0009】
このように公知の技術には問題点が多く、脱金属を主目的とした第一工程と脱硫を主目的とする第二工程で構成される重質油の水素化処理装置では、重質な原料油を処理する場合、第二工程の触媒活性の低下を防ぎ、装置の長期安定運転を可能にする明確な管理手段を採用することが必要不可欠であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記の問題点を解決し、脱金属を主目的とした第一工程と脱硫を主目的とする第二工程で構成される重質油の水素化処理装置において、第二工程の水素化処理触媒への炭素質の析出を抑え、活性の劣化を抑制することを可能にする明確な指針を与え、重質油の水素化処理装置を長期間にわたり安定に運転する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究した結果、以下の知見を得て本発明を完成するに至った。まず、第二工程の水素化処理触媒の活性劣化を防止するためには、第一工程の生成油中に存在するアスファルテンの芳香族指数と呼ばれるアスファルテン分子構造を示すパラメータを、一定値以下に管理することが極めて重要であることを明らかにした。アスファルテンは石油学会法JPI-5S-22 によって定義される、重質油中のヘプタン不溶かつトルエン可溶の重質高分子成分であり、触媒上に析出するコークと重要な関係にあることは広く知られている。
【0012】
一般的に、重質油中のアスファルテンは水素化処理工程によって、アスファルテン量の減少を伴いながらアスファルテン分子中の全炭素原子数に対する芳香族炭素原子数の割合が増加する。これはアスファルテン分子の芳香族性が増加していることを意味し、アルキル基および多環縮合芳香族で構成されるアスファルテン分子から、アルキル基の脱離反応やナフテン基の脱水素反応によるものである。特に、アスファルテンに十分な水素化が進行しない場合、熱履歴のみを受けるためアスファルテン分子の芳香族性の上昇が顕著になる。
【0013】
芳香族指数はこの芳香族性の度合いを示すものであり、[アスファルテン中の芳香族炭素原子数]/[アスファルテン中の全炭素原子数]で定義され、炭素13核核磁気共鳴分光法(13C-NMR) によって算出することができる。この測定方法は例えばASTM( アメリカ材料試験協会規格)D-5292 に規定されている。
【0014】
実験の結果、原料油中のアスファルテン芳香族指数が0.50以上の場合脱金属処理によって芳香族指数の高いアスファルテンに変化しやすく、芳香族指数の増加したアスファルテンは触媒上へのコーク析出につながる炭素質前駆体となり、後段の第二工程へ流入し、第二工程の水素化処理触媒上への炭素質析出を促進する事を明らかにした。また、第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数が0.65以上の場合に、このような炭素質析出が特に顕著に見られることを明らかにした。さらに、原料重質油に、水素供与性溶剤や低動粘度留分を添加した原料油(以下、混合原料油)を用いたところ、上記のような、アスファルテン芳香族指数が0.50以上のものであっても、第一工程の水素化処理生成油中のアスファルテンの芳香族指数が高くなる事を抑え、第二工程の水素化処理触媒の活性劣化防止に大きく貢献することを明らかにした。
【0015】
すなわち本発明は、硫黄分および金属分を含有する石油系炭化水素で構成される重質油を水素化処理して、主として金属分を除去する一又は複数の反応塔を用いる第一工程、及び主として硫黄分を除去する一又は複数の反応塔を用いる第二工程を有する水素化処理方法において、原料重質油中のアスファルテンの芳香族指数が0.50以上とし、第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数が0.65以下とすることを特徴とする重質油の水素化処理方法である。ここで、第一工程において、「主として金属分を除去する(脱金属する)」は、水素化脱金属反応の他に水素化脱硫反応もある程度は生起しているが、水素化脱金属反応を主として実施することを意味し、第二工程において、「主として硫黄分を除去する(脱硫する)」は、水素化脱硫反応の他に水素化脱金属反応もある程度は生起しているが、水素化脱硫反応を主として実施することを意味する。
【0016】
また、本発明は、上記水素化処理方法の発明において、第一工程の反応塔形式が沸騰床、気液上向流方式固定床、気液上向流方式移動床のいづれかであり、その反応条件が、温度350 〜450 ℃、圧力10〜22MPa 、LHSV0.1 〜1.0 h-1、水素/ 油比160 〜1000Nm3/m3、および使用する水素ガス純度65容量%以上である、重質油の水素化処理方法である。
【0017】
また、本発明は、上記各重質油の水素化処理方法の発明において、第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数を管理するために、原料重質油に水素供与性溶剤を1 〜30容量%添加することを特徴とする、重質油の水素化処理方法である。
【0018】
また、本発明は、上記各重質油の水素化処理方法の発明において、第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数を管理するために、原料重質油に50℃における動粘度が500mm2/s以下の低動粘度留分を1 〜30容量%添加することを特徴とする、重質油の水素化処理方法である。
【0019】
さらに、本発明は、前記各重質油の水素化処理方法の発明において、第一及び第二工程に使用される触媒が、アルミナ担体に6 族および9〜10族金属を担持した柱状触媒あるいは球状触媒である、重質油の水素化処理方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態とその作用について説明する。
本発明では、主として金属分を除去する一つまたは複数の反応塔による第一工程、および主として硫黄分を除去する一つまたは複数の反応塔による第二工程で構成される重質油の水素化処理方法において、第二工程の触媒のコークによる失活を防止するために第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数を管理する。
【0021】
具体的にはアスファルテンの芳香族指数が0.50以上の原料重質油を脱金属処理した第一工程生成油からアスファルテンを抽出し、核磁気共鳴分光法測定により、[アスファルテン中の芳香族炭素原子数]/[アスファルテン中の全炭素原子数]で定義される芳香族指数を算出する。この芳香族指数が0.65を超える場合、第二工程の水素化処理触媒上への炭素質析出が顕著になり、触媒活性の低下が著しく進行するため、芳香族指数を0.65以下になるように管理する。芳香族指数は低いほど第二工程の触媒の活性劣化を防止する効果が大きい。
【0022】
本発明において、第一工程に含まれる反応塔には反応器体積に対して或る程度以上の割合の体積を持つ、主として脱金属を目的とした水素化脱金属触媒が充填されている。このプロセスの脱金属反応塔には、触媒粒子を固定した形式として、原料油と水素ガスが下方に向って流れ落ちる気液下向流並流充填層方式(灌液流) の固定床型反応塔の他に気液向流充填層方式(気体が上昇、液体が下降)、気液上向並流充填層方式( 気体、液体ともに上昇) が一般的に採用されている。また、劣化した水素化処理触媒を運転中に反応塔内から抜き出すことが可能な、触媒粒子が液相で流動・懸濁する形式の移動床あるいは沸騰床型反応塔が採用されることもある。
【0023】
本発明における第一工程の反応器は、水素化処理プロセスとして商業運転されている一般的な気液固三相から成る多相系の固定床あるいは流動床であるが、好ましくは水素ガスが気泡として分散する沸騰床、気液上向流方式固定床、気液上向流方式移動床のいづれかである。これらの反応器形式は、原料油の滞留時間が長いため反応の過酷度が高く、気泡流のため混合相の流動状態が悪化しやすいため、本発明は沸騰床や、気液上向流方式の固定床あるいは移動床において最もその効果を発揮する。
【0024】
本発明は、水素化処理装置の反応条件は実際に操業されている重質油水素化処理プロセスの反応条件を用いることができる。第一工程は、好ましくは反応温度350 ℃〜450 ℃、さらに好ましくは360 〜430 ℃の間で運転される。また、第二工程の反応温度は好ましくは350 ℃〜450 ℃、さらに好ましくは370 〜420 ℃の間で運転される。また、水素分圧は好ましくは第一、第二工程とも10〜22MPaの範囲で運転できる。水素化処理に用いられる水素ガス純度は、好ましくは65容量%以上、さらに好ましくは80容量%以上のものとする。
【0025】
第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数を管理するために原料重質油に添加する水素供与性溶剤は、水素供与性を有するいかなる溶剤も用いることができる。水素供与性溶剤は、気相中の水素の代わりに原料油中分子への水素移行反応を促進することができる炭化水素を含む溶剤であり、多環芳香族炭化水素あるいは環式脂肪族炭化水素を含む留分が高い水素供与性を持っている。
【0026】
従って、例えば石油精製における水素化処理装置からの各種製品あるいは接触分解装置からの分解軽油留分を用いることができる。また、本水素化処理装置における第二工程からの生成油を蒸留し、各留分に分けた後、一部を抜きとった留分をリサイクルして用いることもできる。水素供与性溶剤は、第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数が0.65以下になるように原料油に対し1 〜30容量%添加することができる。添加量が少なすぎると効果が小さく、多すぎると処理量低下による経済性低下や軽質分の分解によるガス発生や製品収率の変化による装置上の制約の発生もあり、不利である。
【0027】
本発明における低動粘度留分は、いかなる石油系炭化水素留分も利用可能である。例えば、蒸留装置からの直留留分や水素化処理装置からの各種製品あるいは接触分解装置からの分解軽油留分を用いることができる。また、本水素化処理装置における第二工程からの生成油を蒸留し、各留分に分けた後、一部を抜きとった低動粘度留分をリサイクルして用いることができる。低動粘度留分の動粘度は原料重質油より低いことが必要であり、好ましくは500mm2/s(50 ℃) 以下、さらに好ましくは100mm2/s以下(50 ℃) である。
【0028】
また、低動粘度留分の沸点は、好ましくは180 〜450 ℃の範囲である。低動粘度留分としては鎖状脂肪族炭化水素、環式脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素のいずれの成分を主成分としてもよいが、環式脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素を含む留分を用いる方が原料重質油との相互作用に優れ、また水素供与性溶剤としての効果と相乗的に働き、原料油およびアスファルテンへの水素化反応効率の改善効果が大きく、炭素質前駆体の生成を抑制する効果が大きい。低動粘度留分は、第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数が0.65以下になるように原料油に対し1 〜30容量%添加することができる。添加量が少なすぎると効果が小さく、多すぎると処理量低下による経済性低下や軽質分分解によるガス発生や製品収率の変化による装置上の制約の発生により、不味である。
【0029】
本発明で使用される第一、第二工程の触媒はいずれも一般的な重質油の水素化処理プロセスに用いられる、アルミナを担体とし、6 族金属および9〜10族金属を活性金属として担持している多孔質の柱状触媒、あるいは球状触媒を使用することができる。また、必要に応じてゼオライトなどの固体酸触媒やリン、アルカリ金属といった第三成分を含有していることもある。第一工程に使用する水素化処理触媒は水素化脱金属能を有し、分子サイズの大きい重質油中の含金属分子を補足するために、アルミナ担体の平均細孔径は8nm 〜50nm、好ましくは10nm〜30nmの範囲である。また、第二工程の水素化処理触媒は水素化脱硫能を有し、アルミナ担体の平均細孔径は5nm 〜30nm、好ましくは5nm 〜20nmの範囲であり、第一工程の触媒の細孔よりも小さい場合が多い。
【0030】
本発明に使用する水素化処理触媒に担持する活性金属量は、通常の重質油の脱硫触媒に用いられている量を採用することができる。すなわち担体の重量を100 重量%として、9 〜10族金属を元素換算で1 〜10重量%、好ましくは3 〜6 重量%含有し、また6 族金属を元素換算で3 〜30重量%、好ましくは6 〜15重量%含有する。なお、金属量および6 族金属と9 〜10族金属の担持量およびその比率は、活性、失活速度および経済性の面から見て最適な量が存在する。
【0031】
本発明が適用できる原料重質油は、原油の蒸留によって得られる常圧残さ油、減圧残さ油などの沸点350 ℃以上の留分である。原料油に含まれる硫黄分および金属分の量、動粘度およびアスファルテン含有量は特に限定されないが、通常の原油の常圧蒸留装置残さ油の場合は硫黄分1 〜10重量%、金属分10〜1000重量ppm 程度である。また、原料油の50℃における動粘度は、100 〜8000mm2/s である。アスファルテンの分取方法は石油学会法JPI-5S-22 で定義される。本方法は、重質油試料に対し規定量のヘプタンとともにヘプタン沸点で規定時間加熱した後、ヘプタンに不要な成分のうちトルエン可溶分を濃縮した成分である。原料油中のアスファルテン含有量は、通常の原油の常圧蒸留装置残さ油で1 〜10重量%である。
【0032】
生成油の硫黄分の量は必要に応じて任意に定めることができ、反応温度、圧力、液空間速度等の反応条件を最適化することにより必要とされる脱硫率を達成できる。
【0033】
本発明では、水素供与性溶剤あるいは低動粘度留分の導入方法は特に限定されない。例えば、原料重質油と水素供与性溶剤あるいは低動粘度留分を混合した後、加熱炉によって所定の温度まで加熱し反応塔に注入する方法や、個別に加熱炉によって所定の温度に上昇させた後、第一工程の反応塔の前で混合した後反応塔に注入する方法を採用することができる。
【0034】
【実施例】
本発明の実施形態を実施例によりさらに詳細に説明する。
[実施例1]
第一工程として、内径1インチの第一反応管にγ―アルミナ担体100 重量%に対してニッケル1 重量%(Ni換算)とモリブデン3 重量%(Mo換算)を担持した1/20インチ柱状触媒を200 ml充填した。第二工程として、内径1インチの第二反応管にγ―アルミナ担体100 重量%に対してニッケル2 重量%(Ni換算)とモリブデン7 重量%(Mo換算)を担持した1/20インチ柱状触媒を200 ml充填した。これらの触媒をそれぞれジブチルジスルフィドを含む直留軽油(硫黄分3 重量%)を用いて300 ℃、14MPa、LHSV( 各触媒容量に対して)=0.3h-1、水素/ 油比360Nm3/m3 の条件下で、24時間、予備硫化した。
【0035】
これらの二本の反応管を連結し、中東系の常圧残さ油(硫黄分=4.1重量%、バナジウム分=60 重量ppm 、動粘度(50 ℃)=1733mm2/s 、アスファルテンの芳香族指数= 0.53)を原料油とし反応管温度( 第一、第二反応管とも)=380 ℃、圧力( 両反応管とも)=14MPa、LHSV( 全触媒容量に対して)=0.25h -1、水素/ 油比( 両反応管とも)=360Nm3/m3 の条件で第一反応管を気液上向並流、第二反応管を気液下向並流で通油して水素化処理した。通油1000時間後の、第一工程の生成油の硫黄分は2.5 重量%、第二工程からの生成油の硫黄分は0.95重量%であった。この生成油から380 ℃〜440 ℃の沸点を持つ留分を蒸留により採取し、前出の常圧残さ油に10重量%混合し、混合原料油を調製した。水素化処理には、水素ガス純度99%の水素ガスを用いた。
【0036】
採取した留分の性状を表1に、混合原料油の性状を表2に示した。この混合原料油を表3に示す反応条件で第一反応管を気液上向並流、第二反応管を気液下向並流で通油して水素化処理した。通油1000時間後の第一工程および第二工程生成油の硫黄分、第一工程の脱金属率、第一工程生成油のアスファルテン芳香族指数を表4に示した。さらに通油1000〜2000時間における第二工程の脱硫率の低下速度を合わせて表4に示した。第二工程における脱硫率は《{[ 第一工程生成油中の硫黄量(g)]−[ 第二工程生成物中の硫黄量(g)]}/[第一工程生成油中の硫黄量(g)]》×100(%) と定義した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
[参考例1]
接触分解装置で生成する、沸点200℃〜350℃の分解軽油留分を前出の常圧残さ油に10重量%混合し、混合原料油を調製した。分解軽油留分の性状を表1に、混合原料油の性状を表2に示した。この混合原料油を表3に示す反応条件で第一反応管を気液上向並流、第二反応管を気液下向並流で通油して水素化処理した。通油1000時間後の第一工程および第二工程生成油の硫黄分、第一工程の脱金属率、第一工程生成油のアスファルテン芳香族指数を表4に示した。さらに通油1000〜2000時間における第二工程の脱硫率の低下速度を合わせて表4に示した。水素化処理には、実施例1で用いたものと同じ純度の水素ガスを用いた。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
[参考例2]
n−テトラデカンを前出の常圧残さ油に10重量%混合し、混合原料油を調製した。n−テトラデカンの性状を表1に、混合原料油の性状を表2に示した。この混合原料油を表3に示す反応条件で第一反応管を気液上向並流、第二反応管を気液下向並流で通油して水素化処理した。通油1000時間後の第一工程および第二工程生成油の硫黄分、第一工程の脱金属率、第一工程生成油のアスファルテン芳香族指数を表4に示した。さらに通油1000〜2000時間における第二工程の脱硫率の低下速度を合わせて表4に示した。水素化処理には、実施例1で用いたものと同じ純度の水素ガスを用いた。
【0041】
[比較例1]
実施例1と同じく、中東系の常圧残さ油の水素化処理を行った。通油1000時間後の第一工程および第二工程生成油の硫黄分、第一工程の脱金属率、第一工程生成油のアスファルテン芳香族指数を表4に示した。さらに通油1000〜2000時間における第二工程の脱硫率の低下速度を合わせて表4に示した。水素化処理には、実施例1で用いたものと同じ純度の水素ガスを用いた。
【0042】
[比較例2]
実施例1と同じく、常圧残さ油の水素化処理を行った。LHSV( 各触媒容量に対して)=0.45h -1とした。通油1000時間後の第一工程および第二工程生成油の硫黄分、第一工程の脱金属率、第一工程生成油のアスファルテン芳香族指数を表4に示した。さらに通油1000〜2000時間における第二工程の脱硫率の低下速度を合わせて表4に示した。水素化処理には、実施例1で用いたものと同じ純度の水素ガスを用いた。
【0043】
実施例1及び参考例1は水素供与性溶剤および低動粘度留分の両者の効果を確認したものである。また、参考例2は低動粘度留分の効果を確認したものである。いずれの水素供与性溶剤あるいは低動粘度留分を用いた場合でも、第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数を0.65以下に抑え、第二工程の、触媒の脱硫活性の低下を抑制することができる。また、第一工程の反応塔内で効率よく原料油への水素化が進んだ結果、第一工程での脱硫率および脱金属率が向上し増加した。参考例2は、添加する低動粘度留分は鎖状脂肪族炭化水素でも効果があるが、芳香族炭化水素あるいは環式脂肪族炭化水素を含む留分の方が、より効果が大きいことを示している。
【0044】
以上の結果から明らかなように、本発明は第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数の増加を抑制し、炭素質前駆体への変質の抑制に有効であり、第二工程の水素化処理触媒の劣化防止を可能にするものである。
【0045】
【発明の効果】
第一工程に脱金属を主目的とする反応塔を含む重質油の水素化処理装置において、本発明を採用することにより第一工程から第二工程への炭素質前駆体の流入を抑え、水素化処理装置の安定な長期運転を可能にする。
Claims (3)
- 硫黄分および金属分を含有する石油系炭化水素からなる原料重質油を一又は複数の反応塔を用いて主として水素化脱金属する第一工程、及び一又は複数の反応塔を用いて主として脱硫する第二工程を有する水素化処理方法において、原料重質油中のアスファルテンの芳香族指数([アスファルテン中の芳香族炭素原子数]/[アスファルテン中の全炭素原子数])が0.50以上であるときに、前記第二工程生成油を蒸留して得られる沸点が180〜450℃、且つ50℃における動粘度が500mm 2 /s以下である水素供与性を有する低粘度留分を原料重質油に1〜30容量%添加し、第一工程生成油中のアスファルテンの芳香族指数が0.65以下とすることを特徴とする重質油の水素化処理方法。
- 第一工程の反応塔形式が沸騰床、気液上向流方式固定床、気液上向流方式移動床のいずれかであり、その反応条件が、温度350〜450℃、圧力10〜22MPa、LHSV0.1〜1.0h- 1、水素/油比160〜1000Nm3/m3、および使用する水素ガス純度65容量%以上である、請求項1に記載の重質油の水素化処理方法。
- 第一及び第二工程に使用される触媒が、アルミナ担体に6族および9〜10族金属を担持した柱状触媒あるいは球状触媒である、請求項1又は2に記載の重質油の水素化処理方法。
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